アナザーワールドSRS・リプレイ・ワンダフルワールド
■ 『 バッドルイド 2 』 6ページ ■
2011年12月21日




@アリスはイギリスのとある田舎町で生まれた。彼女の存在は幼い頃からその土地では有名だった。

千歳/10歳頃から天才美少女と名前が知られていた、っていう話でしたね。

Aアリスが有名な理由は二つ。一つは、彼女は生まれつき人形師の才があり、カラの器にいかなる命も吹き込むことができた。更には、どんな体からも魂を抜き取ることもできた。

まりさ/……なんとなく凄いって判るけど、つまりどういうことだ?
GM/「彼女は、魂の入っていないカラの体に魂を入れる技と、魂の入っている肉体から魂を抜き取る技をマスターしていた」 『デイズ』で登場した『イベントキー:人形師の魔術書』に書かれている秘術を、生まれたときから修得していたということだ。
千歳/魂を引き抜いたり押し込めたりする秘術を、生まれたときから……。そういう魔法が使える血を持っていたんですね。
まりさ/「いかなる命も吹き込み、どんな体からも抜き取ることできた」って……それ、怖くないか。「どんな人間からも魂を抜き取って、どこにでも押し込める」って……。
GM/まりさはアリスと一緒に戦闘をしていたなら知っている。アリスは複数の人形を同時に使役することができた。それらの人形に入っていた魂は、アリスが『独自で収集』していたものだった。彼女は彷徨える魂を自作の人形に移し、魂達を洗脳することで攻撃していた。
千歳/『独自で収拾』……? その魂達って、何者?
GM/[霊媒師]なら判ると思うんじゃが、案外この世界には体を持たずにこの世界をウロウロしている連中がいる。成仏せずに居座っている幽霊が多い。そういう奴らを捕まえて入れてたようじゃ」
千歳/この病院にも結構な数、居そうですよね……(笑)
GM/『パラドックスの椿』でも、至る所に無害な霊が沢山居たよな。『アナザーイブ』にも被害者の霊とはいえ、普通に街中に居ただろ。
千歳/怨霊や悪霊は異端分類なので討伐されるけど、ただの幽霊は[稀人]カウントだから退治されないし……。アリスさんは、そんな幽霊達を収集しては人形に入れて操っていた、と。

B彼女が有名人だった二つ目の理由は、彼女が『銀色の髪で右目が緑色、左目が紫色の女児』だったからだった。教会に登録している顔写真は≪日常の復元≫で姿を変えているものである。

千歳/銀髪で、緑と紫のオッドアイ? なんとアンバランスなカラーデザイン(笑)
GM/ここで2人とも、【理知】判定をしてくれ。難易度は16の『至難な行為』。成功すれば、『世界に関するあること』を最初から知っていることにする。なお、この判定には[魔術師][世界遣い][稀人]1クラスにつき+2の達成値ボーナスが発生する。
まりさ/まりさは[稀人]だからプラス2か。(ころころ)12で失敗。
千歳/私は[魔術師][世界遣い]なので、プラス4のボーナス付きで判定します。(ころころ)達成値17で成功です。
GM/千歳さんは勉強熱心に『この世界の神について』の書籍を読んだことがあった。だから『アンバランスなカラーリング』にピンときた。
千歳/……まさか。
まりさ/何か知ってるの?
GM/「知らなくても仕方ない、お伽噺のような話だからな。だが様々な時代や国の文献で、こんな記述が発見されている。『この世界の神は必ず、目か髪の色がある色をしている』『それゆえに、それらの色を持って生まれた者は、超越的存在に近いものとされ特異な才能を持っている』という記述がな」
千歳/成功したので、千歳も判っている前提で話しますね。……人の前に現れる超越的存在の姿は、必ず目か髪が紫、銀、金、赤、緑、橙色のどれかなんです。この6つの色を、『神の六色』や『六色の光』などと言います。
まりさ/へえ……。知らなかったのでそうなのかと思うよ。
千歳/生まれつき紫色の目だ、紫色の髪をしている人は、超越的存在かもしくはそれと同等の力を持つ……という話ですね。
GM/そう。そして今回、このようなデータを用意した。

 ≪六色の光≫
 タイミング:セットアップ
 判定:自動成功  対象:自身  射程:なし  代償:なし
 超越的存在の証である銀・金・赤・橙・緑・紫の六色を持つことを表わす特技。
 髪色か瞳色が以上六色のいずれかであれば、色ごとに、セットアップのたびに戦闘値+10D6する。
 銀:【命中値】 金:【回避値】 赤:【行動値】 橙:【攻撃力】 緑:【防御点】 紫:【自由選択】


千歳/うわあ、凄く強力だけど面倒なデータ……。ちなみに、現代日本が舞台の『AW』のキャラクターシートに「髪色/瞳色」を書く欄がわざわざある理由も、この設定があったからです。そんなシステム製作者の裏話でした(笑)
まりさ/髪色を染めてたり、カラコンを付けたりじゃ駄目なんだよな?
千歳/もちろん。生まれつきの色に相応します。「金髪」という表記にも色んな色があると思うけど、大まかな括りなのでキャラ作成者の判断に一存します。ただどれも「普通の人間にはありえない色」です。不思議な色をしているだけで「普通よりも超越的存在に近い」と見なされることになるでしょう。
GM/それに普通の人間でありうる組み合わせは、金髪碧眼ぐらいだろう。
まりさ/このデータに則ると……ロリやルージィルは、セットアッププロセスごとに【回避値】と【防御点】を+10D6してるのか。恐ろしいな。
千歳/もしアリスさんがこの特技を使えたとしたら、銀と緑と紫だから【命中値】と【防御点】、それともう一つ何でも+10D6できるってことか。紫は、最も高等な意味ですから六色の中でも特別扱いなんですよね。
GM/「お前さんはよく知っとるのぉ。その通り、紫は最高神の色ということで特別視されておる。まあ、そんな雑学はともかくな。この六色のうちどれかを持って生まれるというケースは、どの時代でもどの世界でも少ない確率じゃが『たまにある話』だった」
まりさ/[稀人]の特技じゃない、本当の意味での『突然変異』ってことか?
GM/「両親共に黒髪黒目だったにも関わらず、生まれた子は真っ白の髪……銀色に輝いていたという話。まるで異形のように真っ赤に光る目をしていた話。探せばいっぱいあるわい。どうしてそのように変わってしまうのか、それこそ神様の悪戯なのかもしれないが、どんなところでもたびたびある話だった。そしてそのような者が幸福な幼少期を過ごせるケースは……」
千歳/……とても少ない、でしょうね。
まりさ/あ、アリスはどうだったんだ……?
GM/「彼女の両親は村の聖職者じゃった。常に神秘は身近にあった。だがそんな両親であったとしても、娘の普通ではない姿に戸惑いは隠せなかった。娘ではない者達はもっと許容できなかった。特別な外見故に忌み嫌われた。両親との関係は険悪ではなかったが、決して良いものではなかったという」
まりさ/…………。
GM/「彼女は、生まれ故郷では忌み嫌われていた。特異な外見をしていたがために」 そう言って温水は、手元の資料からとある写真を出す。そこに写し出されているのは、まりさもよく知っているアリスの姿だ。教会に提出していた、真正面を向いた証明写真。金色の髪に、光が当たると紫に輝く黒い目の少女がいる。
千歳/千歳的には、髪の色は変装していたから違っていてもエリスさんその人なんですね。
GM/「そう。彼女は簡単に変装することができる。本当の姿の写真は一枚も残っていない。アリスが残そうとしなかったからな。彼女は金髪黒目という、現実でも有り得る姿になろうとしていた」
千歳/大変だったでしょうね……。

Cアリスが8歳のとき、魔術師の家系であるブロッサムズ家に引き取られ、養女となった。
D魔術師の家系・ブロッサムズ家と親交のあった人物として、異端研究や使い魔・ホムンクルスの研究分野で高名であったスコット=バートンの名がある。


千歳/ここでスコット=バートンの名前が! アリスさんの「お師匠様」ってここに繋がってるんだ……。
GM/「研究者の家であるブロッサムズ家は、伝説の色と不思議な力を持ったアリスに目を付け、引き取った。理解の無い生まれ故郷よりも「スゴイスゴイ!」と持て囃される裏社会の方が生きやすいだろうという提案だった」
千歳/養女になったんだ……。
GM/「アリスはその声を受け入れ、アリスの両親もすんなりブロッサムズ家に引き渡すことになったという。ブロッサムズ家は力のある能力者を欲していたから、優秀なアリスのことを快く受け入れた」
千歳/本当のお家から離れる……苦しかったのかな、それとも助かったと思っているのかな。
まりさ/それは判らないな……。アリスはちょっと自信家だったけど、努力家だった。こんな過去があったからだと思えば納得できる。
千歳/自分の姿を隠す手段も、魔術師のお家で教えてもらったんでしょうね。それ以来……普通っぽい「金髪黒目の女の子」に変身するようになったんだ。
まりさ/……それからアリスはブロッサムズ家の能力者として、天才美少女として人形師の力で活躍。そのうちあたしに出会った、と?
GM/「そういうことになっている。だが」
千歳/だが? まだアリスさんの過去に何かあるんです?
GM/今までGMは、時間をぼかして話していたのでここでハッキリと確認していこう。アリスが事件を起こして投獄されたのはいつだ?
まりさ/……2年前?
GM/そう、2年前。アリスとまりさは同い年。まりさは今14歳だから、2人が12歳のときの話だ。まりさは10歳くらいには教会のエージェントとして活動し始め、それからアリスに会ったんだから、初めて2人が会ったのは10〜11歳とする。
千歳/今から4年前ぐらいに2人は出会ったということ、だよね。
GM/アリスがブロッサムズ家に入ったのは、2人が出会う1〜2年前。
千歳/アリスが8歳のとき……だもんね。今から5〜6年前か。
GM/「話は変わるが、現在ブロッサムズという家は無い」
千歳/……えっ? なんで?
GM/「彼女は今もアリス=ブロッサムズと名乗っているが、実はブロッサムズ家は……今から5〜6年前に『教会のとある事件で解体の対象になっている』んじゃ」
まりさ/……それって、異端刑務所の汚職事件!?
千歳/千歳は[聖職者]なので、その事件については自動成功で知っていていいですよね? 彼女の家って……教会が解体したっていう異端の家だったんですか!?
GM/「正確には、ブロッサムズ家全員『機関』のメンバーであり、とある宗教に傾倒していたという。ブロッサムズ家の人間……アリスの養父達は、アリスを教育させるために交換留学させたのではない。表向きには教会づての交換留学生だったのかもしれんが、『いかなる魂の抜き差しもできるアリス』を日本のとある山奥にあった『機関』に送り込みたかったからなんじゃ」
千歳/……まさか、捕らえていた能力者の魂を抜き取るためですか?
まりさ/えっ!?
GM/「その通りじゃ」
まりさ/な、なんだって!?
千歳/……『機関』は、異端刑務所から送られた能力者を、非人道的な人体実験の材料や食材として扱っていた。能力者の体を弄んで、耐えきれずに生命活動をやめたら、今度は魂を……。
まりさ/それって……つまり。
千歳/酷い実験や改造手術や、食材にするために体を傷付けたら人って死にますよね。死んで無念のまま彷徨える魂を、自由に引き抜くことができるアリスが収集して……『再利用』ということで人形に入れて操って駒にして……? 死ぬまで痛めつけられるだけじゃなく、死んだ後も人形師の道具として扱われるって……。
GM/「『機関』の事件は、能力者が死ぬまで痛めつけられていたものだと思われていた。だが実際は、死んだ後も『機関』の手駒の人形として働かされていたんじゃろう」
千歳/……巡一郎がアインというホムンクルスを造ったけど、色んな思い入れを込めてアインを造ったに違いない。「自分達が殺しておいて、魂が余っているから再利用して道具として使う」……なんて身勝手で強欲な。
まりさ/……なんでこの情報、すぐに判らなかったんだよ! 『機関』解体のときに調べたんじゃないのか? この事件については自動成功なぐらい全公開された情報なんじゃなかったのかよ!
GM/「アリスの能力は、ブロッサムズ家に引き取られたときに解明された。多くの者達がこの手段を用いて能力者から魂を抜き取る作業をしていた。アリスが『機関』での作業をしていたのではない。彼女は日本に来て技術提供をしただけじゃな」 ……今は、健吾くんが持っているあの魔導書を読んで学べば『魂の抜き取り技術』が修得できる時代になっている。
千歳/健吾くんが持っている魔導書は、アリスの技術提供あっての発行……というか『機関』が記したものかもしれない。あのイベントキーの魔導書はアリスがいたから作られたものだった……か。全然違うシナリオのアイテムを、よくここまで『AW』の設定に絡めたね(笑)
GM/「ブロッサムズ家は『機関』のメンバーだったために解体となったが、アリスは元あった能力を養父に言われた通り見せていただけ。当時10歳以下の少女だったことから、処罰の対象にはならなかった。養父達、彼女の新しい家族は全員刑務所行きだったがな」
まりさ/…………。
GM/「交換留学生という名目で日本に来ていたアリスだったが、本国に帰る家が無くなった。生まれ故郷に帰る選択肢は端から無かったしな。だからとりあえず日本に居続けることになった。教会の宿舎に住み、同じような年のエージェントと共に任務をしながら生活を送ることになり……」
千歳/そこで、まりささんと出会った。……アリスさんは、間接的に『機関』と関わっていたんですね。
まりさ/…………。でも、だから、なんだよ。
千歳/まりささん?
まりさ/……ごめん。ありがとう、ジジイ。アリスの過去は判った。元から妙な力があったことも、訳あって魔術師の家に養女になったのも、その家が変な組織に加担して解体されてしまったのも判った。
GM/「そうじゃな」
まりさ/でも……今は「だから何?」だよ。アリスのつらい過去は判ったけど、だけどアリスが事件を起こしたことや脱走したこと、千歳の家を襲ったことは見えてこなかった。……調べてくれたのはありがたいけど何にも進んでないから、そう言う。
千歳/言われてみると、そうでした……。
まりさ/……アリスにとっては知られたくない嫌なことばかりを探られたよな。自分の外見が変だったとか、あんまり恵まれた子供時代だったとか、家族が異端に加担してたから刑務所行きの犯罪者になったとか。ごめん、アリス……。ここに居ないけど謝る。
千歳/……温水さん、色々話してくれてありがとうございます。この情報を元にアリスさんのことを更に調べていきますね。まだ全容は見えてきませんが、何かヒントになると思いますから。
まりさ/ああ……ごめん、変なこと言って。千歳も温水さんもありがとう……。
千歳/大丈夫です、まりささん。次の調べ物を頑張りましょう!
GM/温水は、比較的落ち着いている千歳にアリスの過去についての資料を渡す。さっき温水が話したことがそれに書いてある。
千歳/頂きます。……アリスさんは、『機関』に対してどんな感情を抱いていたんでしょうね?
まりさ/どんな感情って……。
千歳/「自分を認めてくれた養父の組織だったからなんとしても力になりたかった」と思っていたなら、そのうち機会を伺って……復讐や報復、組織の復活計画を練り始めるかもしれません。その計画の何かの為に、大勢の人を傷付け始めたとか……例えば≪贄の儀式≫をするためにとか。
まりさ/……考えたくはないが、無いとは言えない話だな。GM、まりさが知っている範囲で、アリスが『機関』に傾倒してたような様子や、何かに執着していることがあった……とか思い出せないか?
GM/無いね。
まりさ/判定の余地も無いのかよ。
GM/まりさはハッキリと、「アリスにそのような様子は無かった」と思うよ。もしかしたら訓練された演技に騙されてたかもしれないけど。
まりさ/……結局、何にも判らない。
GM/いや、まりさは新しいイベントキーを入手できるよ。

 『イベントキー:アリスへの鍵』ゲット。

千歳/やっと『世界滅亡ポイント』以外のイベントキーが出た!(笑) えっと……これから私達はどうすればいいのかな?
まりさ/怪しいと思った『山』に行って怪しい物を発見したんだから、今度は『N市マンション街』に行って怪しい物を発見すればいい。
千歳/そうだ、それがあった。次のシーンは『N市マンション街』での探索をしましょう。
GM/……さて、千歳さん。君は不穏な話を聞いてしまった。数年前の話だけど、巨大な陰謀が自分にとって身近な教会で渦巻いていたという話。それを聞いてしまった君は不安感に襲われる。
千歳/あの汚職事件は、知識として知ってはいたけど改めて聞いてしまうと……うう。
GM/途轍もない負の感情に襲われた君に、このイベントキーの出番だ。

 『イベントキー:世界滅亡ポイント2D6』ゲット。

千歳/きた。やっぱり、負の感情を得たときに配布されるんだ。(ころころ)まさかのまた10です。出目良すぎだよ、私……。
GM/おっ。合計50ポイントに到達した。
千歳/到達すると何なの?(笑)
GM/……まず、7以上を出した千歳さんは……視界が真っ黒になる。何故なら、君は巡一郎に押し倒されたからだ。
千歳/……ええええっ!?(一同爆笑) ちょっ、きゃっ、巡一郎! そんな! 押し倒され! って! きゃあ、そんな強引な巡一郎でも私は……!(笑)
GM/押し倒されたおかげで、君は炎に焼かれることはなかった。
千歳/……え?
GM/突然の爆発。爆風に吹き飛ばされる。でも咄嗟の判断で愛するお嬢様を守った執事のおかげで、君は一旦炎に巻き込まれることは無かった。爆弾による即死は免れた。
千歳/……見上げて、巡一郎の顔を見ます。
GM/痛みによって顔を歪めてはいるが、君と目が合って、「良かった」という安堵の表情になる。だがそれも一瞬。彼の全身を襲った衝撃波によって、苦痛には耐えきれず、君を見つめたまま、死ぬ。
千歳/……あ……。
GM/自分を庇って、相手が目の前で死んだ。庇われたからと言って自分に押し寄せている死が回避された訳ではない。炎に巻かれ、今にも崩れ落ちそうな屋敷は……。
千歳/……自分の身の危険なんてどうでもいい! 目の前で死んだ巡一郎を……巡一郎を!
GM/一方まりさは、突然病室で叫び声を上げる千歳を見る。
まりさ/お、おいっ!? 大丈夫か千歳! 前にアクセンが祭にやっていたみたいに千歳の体を揺さぶる。
GM/千歳さん、現実に戻ってきていいよ。
千歳/……耐えきれずに、涙を流して叫びながら泣きます。まりささんの胸を借りて、わんわん泣きます。やだやだ! 巡一郎死んじゃやだ! まどかも篤史も死んじゃやだ……!
まりさ/えっと……そっか、『サークルビショップ』だと万里様以外は屋敷の外に出られなくて死んだんだっけ。でもそんなこと判らないから……どうしたんだよ、何があったんだよと必死に呼び掛ける。
千歳/ぐすっ……。最悪な夢を見た……こんなの、ある訳が無い……。そう、ずっとまりさの胸を借りて泣いてる。
GM/温水さんもオロオロ。だけどハッとして「お前さん、こっちにおいで」と千歳を手招きする。まりさも来るように言うよ。
千歳/涙を必死に止めながら……でも巡一郎とまどかと篤史のことを考えてボロボロ泣きながら……温水さんに近付きます。
GM/「お前さん達……ワシの代わりに【理知】判定を振って何かを思い出させてくれんかのぉ?
まりさ/ジジイ、どこまでもメタだよな!(笑・ころころ)達成値12だ。
千歳/温水さん大好き!(笑・ころころ)達成値13です。
GM/「2人とも達成値12以上か。ワシはやるぞ」
まりさ/何か判らんが、頑張れジジイ!(笑)
GM/ぬんっと温水は、千歳に向かって≪心霊治療≫。千歳に腹にさくっと手を入れる。その手は千歳の中に貫通する。
千歳/きゃっ!?
GM/何かを探るように手が体の中を動くが、霊的な治療なので痛くも痒くもない。ただお腹にじいさんの手が刺さっているので視覚的には痛い。
千歳/し、≪心霊治療≫をしなきゃいけないって……やっぱり河川敷で噛まれたときに、まだ何か入ってたってことですか?
GM/「……ついつい傷口である腕ばかり見ていたせいか気付かなかったが、これは……」 温水は千歳の体の中から、紫色に怪しく光輝く一枚のお札を取り出す。
まりさ/お札ぁ!?
千歳/お札……ですか? こんな物が私の体の中に? 言いながら、全然痛くない刺されたお腹を擦っています。
GM/「これは、『何らか条件』が重なると何かの魔術トラップが発動するようになる札じゃ」
千歳/……河川敷にあった物と同じですね。おそらくアリスさんが設置した物です。
GM/温水はじっくりとそれを見て、言う。「何らかの条件……それは、どうやら『必要以上の負の感情を得たとき』と設定されているな。その条件が満たされると、トラップである≪抉る幻≫が発動するようになっておる」

 ≪抉る幻≫
 悪夢やトラウマなど幻を魅せることで、精神的な打撃を与えることができる、[異端者]の副特技。
 対象の【MP】に1D6点のダメージを与える。


千歳/負の感情を受けて、そんなものを見せられたら、更に負の感情が発生しちゃうじゃないですか……。でも、なんでそれが私のお腹の中に?
GM/「何が何でもお前さんに負の感情を与えたいと思った奴がいるんじゃないかのぉ。……もしかしたらお前さんだけじゃなく、お前さん達の仲間にも入ってるのではないか?」
千歳/祭さんにも美砂さんにも美月さんにも……アクセンさんにも入っていると?
まりさ/なんで……。ああ、色々判ってきたことはあるけど、全部が繋がらないなぁ! なあ、全員分の札を除去することってできるのか?
GM/温水は、千歳さんのお腹にニュッと札を戻します。
千歳/わっ!? 戻しちゃった!?
GM/「すまん、ワシの下手な治療で呪いの除去などしたら後遺症になるだろう。今は一時的に抜いてはみたが、やっぱり無理じゃ。完全に削除するにはちゃんとした施設で除去手術をするべきじゃ。もしくはこれを施した術者に解いてもらうか、術者を退治するかしないと……」
千歳/そう簡単にはトラップの札は取れないってことですね。ちゃんとした施設って、教会ですか?
GM/「教会は令呪の強制除去手術などを行なってくれる。だがしかし、治療するにも1日作業だから5人となると……」 ラスボス倒せば全員自動解除だから頑張れ。
まりさ/ストレートに言われた(笑) 5日かかるし、1日中手術台の上になる。交代で手術を受けるのもいいけど、他に呪いを解く手段を探した方が得策か……。


 ●ミドルフェイズ9/アクセン 〜束縛〜

GM/さて、アクセンのシーンになる。……時系列が変わるぞ。
千歳→アクセン/また変わるのか。今度はいつになるんだ?
GM/さあ? 判らない。今、君は……まりさに殴られている。
アクセン/……えっと?(笑)
まりさ/またアクセンを殴るのかよ?(笑) 今度はなんで?
GM/まあ聞けよ。アクセンは夕暮れの病院の屋上に立っている。目の前には、顔を真っ赤にして涙目で君を殴った後のまりさが居る。殴った後のまりさは、涙を拭いながら屋上を後にする……。
アクセン/あ……ああ、ミドルフェイズ4のシーンか? ということはこの後、私は吐き気を催して……。
GM/アクセンは悪寒を感じ、耐えきれなくなって水道前で倒れてしまう。頭がグルグルするし胸はムカムカするし手足はガクガクする。
アクセン/嫌な光景に震えながらも、この後……。えーと、どうなった?
まりさ/そこでシーンが切れたんじゃなかったっけ?
GM/うん。ミドルフェイズ4ではここでシーンが終わった。なのでその後のシーンをやるよ。
アクセン/その後……。皆の後を追うため、口を拭って血を拭いて……立ち上がる。頭がクラクラするけど深呼吸して落ち着けよう。
GM/落ち着かない。
アクセン/……落ち着くまで頑張ろう。
GM/落ち着かない。ずっと頭がグルグルする。
アクセン/……その場で腰を下ろして、落ち着くまでなんとか……。
GM/【意志】判定、難易度10。
アクセン/(ころころ)10でピッタリ成功。
GM/アクセンは傷一つ無い自分の手を食べながら、「私の血ってこんな味だったっけ?」と思った。……グルグルグルグル。視界が真っ黒になっていく。意識が吹っ飛ぶ。聞こえてくるのは、誰か判らぬ声が聞こえる。
アクセン/どんな?
GM/「……つらい……」「……苦しい……」「……憎い……」という声。
アクセン/……これは? なんだ、一体……。
GM/いつの間にかアクセンは、真っ暗闇に立っている。……同じように、アクセン以外の誰か、少女も立っている。
アクセン/……君は誰かな。
GM/人形を抱いた少女は、声に答えない。髪の色は金……にも見えるし、茶にも見えるし、銀にも見える。抱いた人形と見つめ合っている14歳ぐらいの少女の足元には、無数の人形が転がっている。
アクセン/……その一つを拾い上げよう。
GM/「それ、私が造ったの。これから魂を入れるわ」 少女は宙に浮かぶ青い光を掴むと、人形に押し込む。すると人形が生き物のように動きは始める。
アクセン/……生き物を生んでいるかのような、神秘的な光景だ。まるで君は神様のようだな。
GM/「貴方、人形に興味あるの? 私も人形が好き。一番とは言わないけど、好きな物は人形。だって私の言うことを忠実に聞く道具だから」
アクセン/口応えもしないし、自分に対して嫌なことをしてこないから?
GM/「ええ。貴方はどう?」
アクセン/私も人形やロボットは好きだよ。決められたことをこなしてくれる存在は、安心感があるからな。だが君が造っている人形は魂があるものだから……個性が出るんじゃないか?
GM/「出るわね。勝手に動くこともあるけど、そのときは無理にでも私の思う通りに操るわ。……貴方、規則が好きなら、個性は嫌い?」
アクセン/好きだよ。皆それぞれ違った方が良い。安心感は無くなるが新鮮さが得られるようになる。忠実な人形も個性豊かな生き物も、どっちも好きだよ。
GM/「……実は私もそう思ってたの。私達、話が合うわね。気に入ったわ」
アクセン/気に入ってくれたか、私を。
GM/「ええ。だから……世界の中央に居た人間だけど、今は殺さないでおいてあげる。だって話次第で『本物が』味方になってくれそうなんだもの」
アクセン/無意味に敵になったりしないよ。
GM/「それにもう、『一度入れることができた』から用も済んだわ。それに私は女の子の方が好きだから、彼女達を生贄として手に入れることにするわ」
アクセン/……ふむ、不穏なことを聞いてしまったね。
GM/「さよなら。ずっと眠っていなさい。世界が滅亡するその日まで」 真っ暗な世界だったそこは、だんだんと……。
アクセン/あっ、消えてしまうのか。待ってくれ、もっと話をしようと止めようとする!
GM/止まらない。……が、【幸運】難易度12でもう少しここに留まれることにする。
アクセン/(ころころ)はい、14! ……待つんだ、アリス。まりさのことで話がしたい! 率直に彼女だと断定して呼んでみる。
GM/ピタリ。暗闇の中へ消えて行くアリスが、その場で留まる。
アクセン/アリス。君はまりさの親友なのか? 親友なんだろう? そのまりさは、君と戦いたくないと言っているが、戦う気でもいる。君はどうなんだ?
GM/「……まりさ……? まりさは、やっぱり私を追って……戦いにくる。やっぱり……そうなるのね……」
アクセン/逃亡犯であり、伊賀崎家に危害を加えた君を処刑するのが、今のまりさの役割だ。だがまりさは君と戦いたくないようだ。このまま進んだら君は悲しい女の子になるぞ。それでもいいのかね。
GM/「……どうして、私はそんな目に遭わないといけないの……」
アクセン/それは、君が道を違えたからでは……。
GM/「どうして私ばっかり! やっぱりこんな世界は消滅させるべきなのよ!」 今まで動かなかったアリスの周りの人形達が、ギラリと赤い目を光らせアクセンを見る。暗闇の中、大勢の赤い目に取り囲まれる。
アクセン/……怯まない。君は、どうしたいんだ?
GM/敵意を向けてるよ。
アクセン/気にしない。構わず言うよ。……私に手助けできることはあるか? 困っているなら助けになるぞ。私はどうすればいい? 理由があるから君はまりさを悲しませているのだろう?
GM/それを本人の目の前で言うか。「……私が何をすると言ったら、貴方は何かしてくれるの?」
アクセン/ああ。
GM/「……教えてあげない。……貴方がしたいと思った好きなことをすればいいわ。感情を優先しなさい。その方が、おいしくなるから」
アクセン/感情を優先……。
GM/「負の感情になったときの味が良くなるから。……それに、何をしたって変わらないんだから……」 暗い空間に居たアクセンだったけど、今度は真っ白い天井が見えてくる。どうやら今はベッドに寝かされているようだ。
アクセン/真っ黒の次は……白? 天井? 私はどうしてしまったんだ?
GM/首が動かせない。全身動かせない。目は真っ直ぐと天井の白を見つめるだけ。どうしても動きたければ【体力】判定で難易度13。
アクセン/(ころころ)まさかの出目が1・2で、達成値7……失敗。
GM/じゃあ駄目だ。何も出来ずにアクセンは白い天井を見ることしかできない。
アクセン/そんなの……恐怖だ。自分の状況が判らずに、体も動かせないなんて。動けたらパニックで暴れまくるぞ。まあ、動けない訳だが……可能なら泣き喚きたいぐらいだ。
GM/恐怖か。じゃあコレをやるよ。

 『イベントキー:世界滅亡ポイント2D6』ゲット。

アクセン/やっぱりこうなる訳か……(ころころ)5。7以上じゃないから発狂はしないけど、意味が判らない状況になったら怖くて涙が出てくるな……。
GM/そうか。
アクセン/で、どうすればいいんだ?
GM/何も出来ないよ。
アクセン/何も?
GM/動けないし。
アクセン/……動こうとするけど?
GM/動けないよ。
アクセン/…………。
GM/何も出来ない。
アクセン/…………。
GM/…………。
まりさ/…………。
GM/…………。
アクセン/…………。なにこの状況? 意味が判らなくて怖いんだけど?(笑)
GM/ではアクセンのシーンを終えて、まりさのミドルフェイズに……。
アクセン/ほ、ホントにこれで終了!?(笑) 何なんだ!? ……GM! 【幸運】判定で幸運なことに動けたとか何かが見えたとか無いかな!?
GM/いいよ。【幸運】で難易度10。
アクセン/幸福は義務です! 失敗したらオートで≪君に幸あれ≫使ってやる!(ころころ)使わなくても達成値14! さすが私だ!
GM/アクセンは辛うじて首を動かすことが出来た。なので、部屋のドアから誰かの目が覗いているのが判る。
アクセン/ドア……誰かの目……覗いてる。
GM/目が遭う。ドアが開き、誰かが入って来る。
アクセン/……誰だ?
GM/(明るい声で)「わあ、ミイラさんだー! 包帯グルグルー! 美月ちゃんの新しいお隣さんはミイラ男さんなんだねー! よろしくー!」
アクセン/…………。
GM/「……あれ? お兄ちゃん……もしかして、アンパンくれた人?」 そう話している女の子の元に、「こら。勝手に病室に入るなっていつも言ってるだろ。お前の用はお隣さんだろ」と彼女の兄と思しき人が現れ、ベッドで眠る君に「すみません」と頭を下げ、女の子をズルズル引き摺って退室。
アクセン/…………。
GM/「じゃあねー、お兄ちゃん! またお見舞いにくるよー! そしたらお話をしようねー!」
アクセン/…………。

 ――さて。ここで「ミドルフェイズ7でアクセンが受け取ったメモ」の内容を公開しよう。
 メモには以下の文章が書かれていた。

 「ある一定の条件が揃ったシーンでは、マーサーがアクセンのキャラロールをする際に、【MP】を10点支払わなければならない。
 これにはちゃんとした理由がある。ある描写のため、アクセンは自分の発言をするたびに【MP】を10点も代償にしなければならなくなっている。
 その理由が何なのか理解し、【幸運】判定難易度6に成功、かつその場に相応しい描写ができたなら、【MP】消費をしないで『アクセンがシーンに登場できる』」


GM/以上で、アクセンのシーンを終わりにする。
アクセン/…………。


 ●ミドルフェイズ10/まりさ 〜突入〜

GM/まりさと千歳が話を聞いた直後のシーンにしよう。温水の話を聞いたのは正午すぎのこと。まだ調査を続けることができる時間だ。
まりさ/なら、AF判定を消化してたからまだちゃんと探っていなかった『N市マンション街』を調べてみよう。『山』と同じように普通の判定で調べることができるんだっけ?
GM/うん。その前に、このシーンではどのヒロインになるのか決定してくれ。
アクセン/(ころころ)1だから祭だ。N市に住んでるならやっぱり彼女じゃないと。
GM/では、連日同じようになるがまりさ、祭、美砂、千歳、美月、アクセンの6人で各々N市を調べ始める。もう何度も来ているが、今度はアリスを発見できるよう集中して捜索だ。
アクセン→祭/いくら場所が一部しぼり込めたって言っても、大きな街のマンション群でしょ……探すのは難しいな。GM、難易度は?
GM/【知覚】で難易度12。『難しい行為』だ。
まりさ/(ころころ)よし、12ピッタリで成功!
GM/成功した。では、まりさは……N市にいっぱいあるマンションの中から、下にテナントが入ってるあまり大きくないマンションを発見する。そのマンションからまりさとずっと一緒に居た少女と、同じ魔力の波動を感じる。
祭/ついにご本人登場……? ちなみに、アタシが住んでるところからは遠かった?
GM/うん、同じ市内だけど決して近いとは言えない距離だ。祭が毎日使ってる生活圏内では気付けなかっただろう。
まりさ/……その怪しい波動がするマンションを調べるよ。
GM/マンションの1階のテナントは、どうやら店の名前が『フラワーガーデン』というフリーレンタルスペースのようだ。
祭/フリーのレンタルのスペース? 料金さえ払えば何の集会にでも使ってもいいっていう、そのままの意味のお店?
GM/そう。普通のコンビニぐらいの広さで、中の様子は大きなガラス張りのおかげで覗こうとしなくても見られる。どうやら奥のキッチンスペースではお菓子作りをしているのか料理に励み、手前側では子供やお年寄りが工作をしている。みんなとても楽しそうだ。
祭/ふーん、いかにもって感じの所ね。駅前にはよくこういう習い事教室があるものだけど。
まりさ/(自分で書いたメモを見ながら)……それ、「和菓子作り教室」と「手作り楽器講習会」か?
GM/ご名答。よく覚えてたな。
祭/えっ? ……あ、高坂からオススメされたボランティア活動がここでやっているってこと?
GM/うん。奥の方では羊羹を作り、手前では彫刻刀で木の箱を削って遊んでいる子供の姿が見える。
まりさ/彫刻刀? 木の箱?
GM/オルゴール作りだよ。
まりさ/……オルゴール!?
祭/店の名前は『フラワーガーデン』……「ブロッサム」って花って意味だったよね。それにオルゴールって、露骨すぎるでしょ。隠れている気なんて無いようなアピールの仕方ね。レンタルスペースの中に入ります。
GM/役に立たない程度の小ネタだけどさ、一応オープニングから隠れ家の伏線を入れたつもりだったんだよ。……とりあえず、普通の店じゃないから入っても「いらっしゃいませー」の声は掛からない。一人、女性が出てきて「どなたですか? 誰かのご家族でしょうか?」と尋ねてくる。
祭/ボランティア活動で参加しないかって誘われた、矢島と申します。今日いきなり参加させてくださいっていうのは無理ですけど、今後のことでお話を伺いたくって……と適当に店の様子を見る為にホラを吹きます。高坂さんから書類も貰っているしそれも見せながら。
GM/「ええっと、そういう助っ人募集は……わ、私もボランティアで参加しているだけで、上の人にちょっと話を通さなきゃ」
祭/いきなり押し掛けてすみません。やっぱり先に電話するべきでしたね。せめて、どんなことをすればいいのかだけ見ていていいですか? ちょっとだけでいいので中に入れてもらえませんか、と交渉。
GM/【理知】判定で、難易度8。祭が成功したらヒロイン達とアクセンは全員成功していいことにする。まりさはちゃんと振れよ。
まりさ/あいよ。(ころころ)よし、10で成功だ。
祭/(ころころ)アタシも10で成功だから、全員成功ね。
GM/女性と話していると、気の良いおばあさんが千歳やまりさのような女の子達に「手作り羊羹、食べるかい〜?」と話し掛けてくる。変な人が来たなんて誰も思ってないから、みんなゆっくりしていけと中に通すよ。
まりさ/ありがとうございます。羊羹は好きだから勧められたらウマイウマイって食べる(笑)
祭/……少しでもアリスの手掛かりが無いか調べるよ。
GM/店の中まで来たなら判る。外よりも波動が強い。建物の奥に入ればもっと強くなるんじゃないか。やっぱり何かあるんじゃないかと思う。
まりさ/……潜入しろってことだな。
祭/えっと、怪しまれないように中に入るには【反射】か【幸運】かな?
まりさ/ここに居るのが全員エキストラなら、≪マインドロスト≫で「建物の中に入っていく6人組なんて見ていない、夢だった!」にすることができるよ。
祭/あ、それいいね。面白い。GM、判定は必要かな?
GM/いや、抵抗できるNPCはいないから自動成功でいいよ。ここの教室に居る全員にかかったことにしてもいい。ただ代償は支払ってくれ。
まりさ/1MPだけ消費するよ。……で、建物の奥に入った訳だけど?
GM/一般的にセキュリティがしっかりしたマンションは、住民以外は鍵無しでは立ち入りできない。でも店側から中に入ることができた君達は、ごく普通のマンションのフロントに着く。そんなに高級なマンションじゃないから警備員が常駐しているような所じゃない無人だけど。
まりさ/マンションに入れたから、今度はどの部屋に居るか捜索しなきゃか。
GM/その必要は無い。アリスと共に過ごしてきたまりさは、ここまで来ると判定の必要も無いぐらいどこにアリスが居るか判るからだ。
まりさ/じゃあ……「こっちだ」と言ってみんなの前に立って歩く。
祭/そんな彼女について行くよ……。
GM/まりさが先導する場所は、誰かが住んでいる部屋では無かった。2階へと続く階段の隣に不自然なスペースがあった。ただの壁、何も置かれていない空白の場所がある。
祭/ああ、あるよね。階段の1階目にある妙に空いた場所。
GM/そこに、気を付けなければ見落としてしまいそうなほど細やかな魔術で、≪クリエイトゲイト≫≪圧縮された世界≫が仕掛けられている。これは『イベントキー:アリスへの鍵』が無ければ発見できないものだった。

 ≪クリエイトゲイト≫
 空間をねじ曲げて、遠く離れた自分が知っている場所に繋がるゲイトを作り出す特技。ゲイトは固定しておくも可能で、他人も利用できる。

 ≪圧縮された世界≫
 空間をねじ曲げて、あり得ない筈の空間を作り出す特技。
 2階と3階の間にもう1つ階を作ったり、押し入れの中に体育館並みの部屋を作ることができる。


まりさ/明らかに隠されている部屋があるんだな……。ここにアリスが居る、もしくはアリスの手掛かりがある何かがあるんだ。
祭/……まりさちゃん、行く?
まりさ/……警戒して、行こう。全員分断もされていないし、特に引き返す理由も無い。念の為≪興奮剤≫で【MP】を1回だけでも回復しておきたいんだけど?
GM/許可しよう。ついでにアクセンが調達した≪興奮剤≫もそろそろ使っていいことにする。
祭/ありがとう。じゃあ……アクセンは、≪興奮剤≫を祭に渡します。
GM/アクセンのキャラロールをするなら【MP】を10点……。
祭/しない! しません!(笑)
まりさ/まりさがアクセンに「お前にもやるよ」と余分を渡したら、アクセンは「私よりも彼女達にやってくれ」と言ったってことで! あくまでまりさのキャラロールだからペナルティ無しな!
GM/お前ら、必死だな。

 調達した≪興奮剤≫を祭に手渡ししたのは、祭が≪異常鉱物≫でモブ作成をする妨害タイプのキャラクターだったため、【MP】消費が激しいと見越してのことだった。
 なお、まりさは自分の≪興奮剤≫の1回目を使用し【MP】を5点回復。2回目はアクセンの【MP】を6点、3回目は美砂の【MP】を6点回復させた。


GM/まりさが設置されたゲイトに手を付けると、全員はとある場所へと瞬間移動することが出来た。やって来たのは、暗いコンクリート打ちっぱなしの冷たい部屋だ。人の住んでいるような暖かさは無い場所だ。
祭/さ、寒っ。1月にコンクリそのままのマンションは凍え死ぬ……。
まりさ/部屋に何か無いか、誰か居ないか見渡すよ。
GM/一見、事業が撤退したオフィスのような印象だ。使われていないデスクが出しっぱなし、段ボールが散乱、ガラクタがあちこちにあって、暖房器具が付けられていない空間。窓は一つも無いが、豆電球で辛うじて光源があるので周囲を確かめることが出来る。
祭/……いかにもって感じの怖い場所に、美月ちゃんと千歳ちゃんは寄り添って震えてそう。アタシは率先して変な物が無いか調べるよ。
GM/美砂は一言ないの?
祭/(美砂になって)廃墟スタジオだと思えば怖くないです
まりさ/本気で『アナザーイブ』の皆さんに怒られろ。
祭/嘘です! 美砂は案外薄着なのでクシャミをへっちょへっちょしてます! 「あう〜、またヒドイ風邪引いちゃう〜。でもそうしたらゆーくんがまたいっぱいお見舞いしに来てくれてえへへ」
GM/美砂は本当に強い子だな……(笑) 段ボールの中は無数のガラクタに見えるが、それを一つ一つ見ていくと魔力が込められているのが判る。全部魔道具だ。
まりさ/……これは。
GM/他の段ボールを見ると、何十冊もの本が入れられている。それらもただの本ではない。魔導書だ。普通に流通しているものではない。本、ガラクタにまみれた奥に進んでいくと、本ある人影が見えてくる。人影は女性だ。
祭/……誰?
GM/祭には見覚えがある。スーツ姿のキリッとした雰囲気で、年齢は28歳ぐらい。凛々しい印象を抱かせる女性だ。
まりさ/……速見か。
祭/えっ!? 速見さんと聞いて祭は後ろに下がるよ。怖い人ではないけど……どうしても真正面から顔を見られない相手だから。
GM/どうして?
祭/どうしてって……。自分が眠らせた千速に似ているからと、彼女の家族であるあの人に申し訳無さを抱いているからと、それと……道を誤ったキッカケを作った張本人だから。……怨んではいない。アタシ自身が全部悪いって判ってる。でも……面と向かって話せる相手じゃない。
GM/怖いよな。怖い相手だよな。だって見ていると自分の嫌な感情が湧き上がってくるんだから。じゃあ、祭……このイベントキーを。

 『イベントキー:世界滅亡ポイント2D6』ゲット。

祭/(ころころ)ま、また10が出た! 4回も2D6振って10が出るってどういうこと!?(笑)
GM/祭の混乱ぷりがよく伝わってくる数値だな。7以上出たから、祭にある描写をしよう。……祭は、ある言葉を思い出す。
祭/ある言葉って……。
GM/君が、事件を起こす数日前に速見から言われた言葉だ。(女性らしい優しい口調で)「ところでね、異端って人間を犠牲にすれば簡単に願いを叶えられるらしいの」 その一言が、祭の『その後』を変えた。
祭/…………。泣き叫んだり暴れたりしない。祭はその場でペタンと座り込みます。
まりさ/だ、大丈夫!?
祭/呆然とあらぬ所を見ている。……速見さんは、本当のことをアタシに話してくれただけ。千速が感応力で植物人間になってしまったこと、千速の隣に居たアタシが[感応力師]だったということ、アタシは[異端者]でもあるということ、[異端者]は誰かを犠牲にすれば願いを叶えられること……。悪いことをしたのも、悪いことをしようと決意したのもアタシ自身……。
GM/そうだね。
祭/弁解のしようがないぐらい、悪いのはアタシだった。……それにアタシは許された訳じゃない。なのにアタシは、まるで普通の人のように生きて……。座り込んで頭を抱えて、ブツブツと呟き始めます。
まりさ/お、おい! ……仕方ない! 美砂、祭を頼んだよ!
祭→美砂/う、うん! 頼まれた〜!
まりさ/みんなの前に出て、速見の前でウズマキから武器を抜く!
GM/(速見になって)「ワタシは何もしてないわ。武器を抜くのはおよしなさい」
まりさ/ああ、あたしにも何が何だか判らない。でもいきなり祭が変になったのは、アンタを見たからだ。「アンタが何かをした」って思っても仕方ないだろ。剣を構えながら……それに!
GM/(速見になって)「それに?」
まりさ/ここはアリスの反応しかしない。アリスはどこに行ったんだよ、答えろ! 言わないと大変なことをするぞ! ……武器で脅して言わせようとする! 必死な形相で!
美砂/り、りっちゃん……頭に血が昇ってるよ〜。落ち着いて〜! 美砂は震えて動けなくなった祭を抱きしめながらあうあうしてるけど……千歳が美月から離れて、ちょっとだけ前に出る。
GM/おっ……?
美砂→千歳/……貴方は渋谷速見さん、ですよね。4月から5月にかけてN市で起こっていた昏睡事件で逮捕された、N市のエージェントの……。
GM/千歳がそうくるか。街の事件に関して予習復習をしっかりしている千歳さんなら言えるか。
千歳/貴方は、まだ刑期中の筈です。なのに何故このような場所に居るんですか? その、祭さんと同じように仮釈放中なんですか。違いますよね? そのような資料は教会にはありませんでしたから。
まりさ/千歳お嬢様はそのうち≪賢者の脳髄≫を取りそうなぐらい、勉強家だな。
千歳/後々[魔術師]レベルを上げたらありうるかもね(笑) でも今は全資料を丸暗記した訳ではないので、自信無く……不安げにお友達に隠れながら言うだけです。それに……ここはまるでアリス=ブロッサムズの工房じゃないですか。犯罪者の彼女が居そうなここに、どうして貴方が……?
GM/速見は、黙ったまま千歳を見る。
千歳/黙って見られて、やっぱり怖くて美月さんと寄り添います。びくびく。
GM/その後に、速見はまりさを見る。……まりさは、あることに気付く。それは長らくアリスを想う中で、まりさの中で生じてきた一つの答えだった。【意志】判定難易度6。
まりさ/何の判定だか中の人は何となく判ってきたぞ。これは判っておきたい。(ころころ)って、ええ!? 1・1でファンブルかよぉ!?
千歳/なんでそこで!?(笑)
GM/「判っておきたい」と言った後のファンブルか!(笑) あまりにおいしいから長く演出していいかな!?
まりさ/「おいしい」とか言われたらアクセンに≪リライト≫してもらう気が無くなるじゃないか! よし、ファンブルのままでいきます!(笑)
GM/ガチでダイスを振ってるんだぜ……それなのに1・1とか、最悪にするしかないだろう(笑) 速見は暫くまりさのことを見つめた。それがどれぐらい長かったかは判らない。速見はやっと口を開く。「……まりさ」と。
まりさ/……なんだよ。
GM/「まりさ……まりさ、まりさ……まりさまりさまりさ! 私……私! 会いたかったよ……まりさに……まりさに、貴方に会いたかったよ!」 彼女は意味不明なことを、涙目で叫び出す。
まりさ/いきなりそんなこと言われて戸惑う。速見と出会ったのは初めてだからビビりまくる。何が何だか判らなくて怖くなる。……ああっ! 中の人は大体検討がついてるのに! ファンブルっておいしいな!(笑)
千歳/じゃあ、この中で一番結論に辿り着きそうな千歳に言わせてください! ……貴方は渋谷速見さんではなく、アリス=ブロッサムズさんなんですね!?
GM/28歳ぐらいの日本人女性が、その問いに肯定するように頷く。ちなみに速見と武器を構えたまりさの距離は、5メートルぐらい。まりさから5メートルぐらいに他のみんながいる。
千歳/10メートル先にいるスーツの女性は、髪の毛の色を誤魔化して私達に近付いたエリスさんには見えない……。これもアリスさんが≪千枚皮≫のような変身特技を使っているの?
GM/[魔術師]の千歳から見て確信する。エリスになっているときは確実に≪日常の復元≫で変身して姿を化かしてしたけど、彼女は変身して速見の姿をしているのではないと判る。
千歳/じゃあ、ホントに速見さんの体にアリスさんの魂がいるってこと……。なんでそんなことが起きてるんですか?
GM/(速見の姿のアリスになって)「もう私の体は、無いから」
まりさ/なっ、なんだそれ!? どういうことだ!
GM/「……ねえ、まりさ。体の調子はどう?」
まりさ/どうって。あたしのことはどうでもいいから、アリスのことを聞かせろって!
GM/「まりさが死んでなくて良かった。貴方は死ぬものだと思ってた。どうして生きているのか判らないけど……ああ、まりさが生きていて良かった……」
まりさ/はっ? 死んでなくてって……。し、死んだけど。
千歳/……死にましたね、オープニングで。千歳達はまりさが死んでルージィルさんに蘇らせてもらったことは知らないので「え?」としか言えませんが。
GM/……これから長い話になる。一度シーンを切ろうか。