アナザーワールドSRS

AW 3rd edition

◆ GMガイド
◆ Q&A一般教養編 ◆ Q&A世界の謎編

GMガイド

 ここでは、GM向けに書かれたテクニックについて解説している。戦闘の参考にしてもらいたい。

【エネミーデータ集】 敵データリスト。

【エネミーパワー集】 敵専用特技リスト。


▼敵の【HP】の量はどれくらいがいいか?
 敵キャラクターの【HP】の量を決定するには、2つの要素が関係してくる。
 ひとつは、戦闘に必要な時間(ラウンド数)だ。そしてもうひとつが、PCが敵キャラクターに与えられるダメージ量である。
 PCのデータがGMの手元にある場合は、一回の攻撃でキャラクターが出せる最大のダメージを計算してみるとよいだろう。PC全員分のダメージを合計すれば、そこからPC達が1ラウンドで与えられる大体のダメージ量が算出される筈だ。
 あとは、戦闘に必要なラウンド数をその数値に掛けることで、ボスキャラクターに必要な大体の【HP】が算出される。
 ただし、プレイヤー達のダイス目が悪く、平均値以上にダメージが出ないという事態もまま発生するので、ボスキャラクターの【HP】は算出された数値よりもやや低めに調整するとよい。

 例:『ラブアゲイン』組こと、灯也&アイザック&奏志&琴子の4人パーティーのダメージ算出。
 ●灯也:片手武器/物理3D+5
●アイザック:浄化の一撃/霊力2D+1(2体)
●奏志::巨大武器/物理2D+19(範囲)
1Dの期待値は4である。3Dということは期待値は12、つまり灯也は1回のダメージで17点を出すことになる。
その計算で算出していくと、灯也&アイザック&奏志が一斉にダメージを算出すると17点+9点+26点、合計52点のダメージが与えられる。せめて2ラウンドをもたせたいと思ったなら、【HP】を80〜100点に設定しなければ総攻撃をされたらすぐに落されてしまうだろう。
なお、この計算には令呪(達成値+20)が含まれていない。また、【HP】を増やすだけではなく【防御点】や敵キャラクターの数で対策を練ることができる。

▼戦闘値を決定の仕方は?
 戦闘値を決定する際に、一概にこのようにせよというのは困難だ。
 なぜなら、ボスキャラクターの戦闘値は演出や戦闘スタイルにも左右されるからである。
 そのため、【回避値】、【防御点】は低めに、【命中値】、【攻撃力】、【HP】は高めに設定するというのが一般論としては基本といえる。
 PCの【回避値】より2以上高い【命中値】を持っているキャラクターは、PCたちに攻撃を当てることができるだろう。
 PCの【命中値】より2以上低い【回避値】を持っているキャラクターには、PC達は確実に攻撃を当ててくるということだ。

 例:『ラブアゲイン』組こと、灯也&アイザック&奏志&琴子の4人パーティーの【HP】。
●灯也:21
●アイザック:22
●奏志:29
●琴子:15
●琴子の持つダメージ軽減の念動障壁/1D+1軽減)
 大抵のキャラクターの平均【防御点】は少なければ2、高ければ10である。灯也を一撃で倒すには、1回のダメージで30点を越さなければならない。
 しかしPC側にはダメージ軽減特技を持っていることが多い。琴子は1回で5点はダメージを軽減させる。なので、一撃で灯也を倒すには35点のダメージが必要になる。令呪(+20)を使用されれば55点が必要だ。
 どれくらいのラウンド間、戦闘を続けたいかに関わってくるが、大抵の戦闘は3〜4ラウンドが基本だ。令呪は2〜3ラウンドで無くなってしまうので調整が必要である。

 例:『ラブアゲイン』組こと、灯也&アイザック&奏志&琴子の4人パーティーの【HP】。
●灯也:命中6、回避5
●アイザック:命中7、回避5
●奏志:命中9、回避6
●琴子:命中8、回避4
 回復支援役である琴子は念頭におかない。
灯也が命中することができるキャラクターは「回避4」、灯也に攻撃を与えられるキャラクターは「命中7」だと算出できる。

▼敵は令呪をどれくらい持っているべきか?
 PC達と同じ人数、もしくは+1人ぐらいが相応しい。
 『ラブアゲイン』組なら令呪を使えるのは2人。なので敵キャラクターも2人〜3人が妥当だ。この場合、達成値+20の恩恵が2人なら6回、3人なら9回も使えることになる。
 敵キャラクターの令呪は、ダメージに使った方が盛り上がるだろう。その際はPC側のダメージ軽減がどれぐらいか、戦闘不能回復ができるかを見極めてから使用すること。

▼その他
 戦闘値以外にも戦闘を盛り上げる要素は多い。
●距離
 多くの攻撃は至近、PCが一度に移動できるのは20メートルである。つまり、30メートル程度距離を置くことで、移動という行動を挟まなければ攻撃することができない。
 遠距離から攻撃してくるキャラクターを用意するのも効果的だ。
●増援
 ラウンドの経過や敵キャラクターの行動により、増援の敵キャラクターが現れる。効率よく手早く敵を倒していかなければ不利な状況になるというわけだ。
●戦場
 戦闘を行なうシーンの状況設定で、刺激的な演出をすることができる。例えば、暴走する列車の上、吊り橋など危機的な状況では普通に戦闘をすることができない。状況に合わせたルールを設定するとよいだろう。
●AF判定
 戦闘値を駆使して戦う以外に、AF判定に参加させるのも手だ。他のPC達が戦っている横で爆弾解除のAF判定をさせたり、大勢の救助活動のために戦闘行為をせずAF判定をするといったシーン演出ができる。

 いかなる状況でも、GMはルールを明確にプレイヤー達に示さなければならない。
 事前に特別ルールは書き起こすなどして明文化しておくとよいだろう。

▼最終的な確認
@戦闘に掛けたいラウンド数を設定する。
APC達の最大ダメージを確認する→敵【HP】を決定する。
BPC達がどれほどのダメージで【HP】が0になるか確認する。
C中心となるPC1人の【命中値】にマイナス2したものを敵の【回避値】とし、また、PC1人の【回避値】にプラス2したものを敵の【命中値】とする
D令呪の数、戦闘の状況を設定する。


Q&A 一般教養編

▼高坂に答えてもらいました!



 『AW』は、何をするゲームなの?
高坂/『異端』と呼ばれる悪しき種族と戦う、特殊能力者達の異能力バトルを演出するTRPGだ。
 現代日本を舞台に魔術や超能力を操るPC達が、人々を危機に陥れようとする化け物と戦う。特徴として「時間」がキーワードになっているRPGだ。「神様によって与えられた寿命を捻じ曲げてくる悪者に殺される前に事件を解決する」というのが一般的なスタイルかな。

 『異端』って、何?
高坂/『異端』とは、魔物、化物、怪物、怨霊、悪霊などとも呼ばれている存在のことだ。共通してるのは「他者を傷付けることで己の欲望を満たそうとする種族」だということ。
 この世界の生き物は、「感情を得ること」で成長する。様々な経験を経てレベルアップするのは、人間も同じだ。
 だが異端は「苦しい」「辛い」「痛い」「イヤだ」などの『負の感情』を好物としている。人を殺すという経験を積みレベルアップをするだけではなく、わざと人を苦しめ殺したいと本能的に考えている。自分の快楽のために他者を傷付ける、恐ろしい存在だ。

 『異端』は、人外だけなの?
高坂/人間でも異端と同じように、負の感情を手に入れて他者を傷付けようとする者達がいる。『異端テロリスト』と呼ばれる連中で、己の快楽や探究のために人を巻き込み不幸にするような奴らだ。能力を使って他者を傷付けたなら、たとえ種族が人間でもそいつは立派な異端だ。
 逆に、種族が異端でも悪さをせず真っ当に生きようとするなら異端ではない。本能に溺れず日常を送ろうとするなら[異端者]のクラスのPCとして扱うことができるんだ。

 『異端テロリスト』は事件後、どうなるの?
高坂/人間として日常に戻れないほど破壊活動を行なうような異端なら、現行犯処刑される。そうしないと他者の日常が危ういからな。
 でも更正の余地があったり、罪を償わせることができる状態だったら『異端刑務所』に送られる。
 そこから先は、一般的な司法の世界と同じだ。犯罪者は裁判にかけられる。異能事件を取り扱う弁護士と、異能事件に詳しい検事と、決断を下す裁判官の元で、正しい処罰を下されよう。
 人間の意思を持ち、戸籍を持った人間であれば、普通の人間として罪を償う。能力者だからって身構える必要は無い。
 ちなみに『異端刑務所』ってのは「能力者が逃げられないような細工がしてある刑務所」ってだけで、他は何も変わらないぞ。

 異端と戦う組織『教会』って、何?
高坂/日本で一番メジャーな、異端から人々を守る秘密組織が退魔組織『教会』だ。
 教会は日本各地に支部を置いている異能事件専門機関だ。能力者の集まりで、異端を討伐し、人々を守ることを目的としている。一般的な事件を扱う警察とも繋がっているから、変な事件が起きたらすぐ教会が動けるように手を回してくれるよ。
 教会という名前だが、某宗教の建築物に限った話じゃない。これはただ同名なだけで、日本ならどこにでもある集落センター(教会、寺、学校、商店)を借りて活動しているんだ。
 秘密組織ではあるけれど、不可思議な事件の駆け込み寺だから一般人がやって来ることも多い。ゲーム的なことを言うと、能力値2の[一般人]でも期待値が出れば調べられる難易度6ぐらいで発見できる組織だ。能力者じゃなくてもインターネットの裏サイトや、情報通の人ならすぐに調べ出すことが出来るだろうな。

 教会以外に退魔組織は無いの?
高坂/退魔組織なら教会以外にもいっぱいあるぞ。
 日本で一番メジャーな組織が教会なだけで、他にも秘密結社や能力者組合は沢山ある。
 だが分かりやすく警察バックアップを得られるため、『AW』のPCでは基本的に教会に所属している者達としよう。

 教会の内情はどうなってるの?
高坂/教会は『エージェント』と呼ばれる活動員によって支えられている。スカウト形式で人員を採用しているんだ。
 教会にエージェントとして登録しておくと、事件を紹介されることがある。あくまで紹介なので強制的に事件を解決しなきゃいけないことはないが、事件解決にピッタリな人材に声を掛けているから是非仕事を受けてやってほしい。
 教会は表向きには、善意のボランティア団体として活動している。ゴミ拾いや地域イベント支援、街の相談所として動いてるな。
 一般人も教会に協力していることもあるが、大半は能力者が関わっている。異端と戦うにあたって、身を守る手段の無い一般人だと教会内で動きづらいだろうしな。
 それと、保護した能力者に能力の制御法を身につけさせるため訓練してくれる者達もいる。日常から離れてしまった人々が無理なく社会に溶け込めるよう指導をすることもあるんだよ。
 ……余談だが。昔、教会と異端刑務所は、汚職を働いたことがある。刑務所に送られた受刑者を死刑にしたと見せかけて、とある異端の一族の元に送り、そこで人体実験に使われたり食材として卸されていた……という過去がある。
 2006年1月にこの事件は発覚し、それ以後、第三者組織の介入や警視庁の監視を義務付けるようになった。現在はクリーンな団体として胸を張っているから、安心するといいよ。

 教会の仕事って、報酬が発生するの?
高坂/もちろん給料は出る。
 ゲーム的にはお金のルールが無いが、下は時給600円前後の最低賃金レベルから、上は日給1億円まで。生命の危機と隣り合わせだから、1シナリオの相場は200万円ぐらいだろう。
 学生や未成年のエージェント相手には「大人になってから一括で払う」や「月に数万ずつ渡す」など対処している。いきなり通帳に200万が入ったら、能力者だって知らない親御さんはビックリするだろ? そこは人によって契約が異なるな。
 だけど、現実では無償報酬で活動しているエージェントが過半数を占めている。専業エージェントやアルバイトとして教会の仕事をしている子以外は、「人々のため」や「己の修行のために」無償で仕事を受ける人が多いんだ。
 毎日のように退魔業をしているエージェントなんていないからな。毎日200万円が稼げるとは思わないでくれ。

 教会の経営はどうなってるの?
高坂/教会はボランティア団体だ。寄付で成り立っている。
 「教会を支援すべき」と思っている財閥や組織が複数あるから、そこから経営資金を得ている。依頼人から金を取ることはまず無い。かと言って、経営は困難かと言ったらそうでもないぞ。

 『能力者』って何?
高坂/普通ではない力を扱う者、それを大まかに『能力者』と呼んでいる。
 能力者がどうして能力を使えるのか、それは人による。「自分の家は代々魔法を操る血を継いできた」という子もいれば、「生まれつき超能力が使えた」「突然変身できるようになった」という子もいる。「吸血鬼に噛まれて吸血鬼の力を使えるようになった」「ジェイソンの子孫だ」「魔法使いの祖母から魔法を教わった」「異端の研究のせいで異端者になった」という人もいたな。そもそも「異世界から来た」っていう子もいるぐらいなんだ。
 能力者と呼ばれる人達に共通しているのは、「その力で誰かを傷付けないこと」と「誰かを守れること」。これが一番大事だな。

 『ウズマキ』って何?
高坂/不干渉の式、時空鞘、異界の貯蔵庫……色んな言い方があるけど、俺達は渦が巻いたような異空間だから『ウズマキ』と呼んでいる。
 ウズマキは、能力者なら持っている概念だな。異端を倒すための武器を保管できる、虚空のロッカーのことだ。いつでも物を仕舞えるし、好きなタイミングで取り出すことができる。【スキルウェポン】を取得した能力者なら、ウズマキの扱い方をマスターしていると言っていい。
 「ウズマキの中は時間が流れていない」と言われている。だからって食べ物は入れたらダメだぞ! あそこは無限の空間なんだ。物を入れても、その物を認識しないと取り出すことが出来ない。もし存在を忘れてしまったり、正確に知覚できなければ一生ウズマキから取り出せなくなるんだ。
 もちろん、人を入れることもダメだ。もしかしたらあらぬ時代や異世界に飛ばされるかもしれないからな……。

 『供給』って何?
高坂/生命力を回復する手段のことだ。
 生命力は日々減少する。生命力が無ければ活動できない。回復するためには充分な食事と睡眠を取ること。それと『供給』だ。
 2人以上の人間が体液を交換するんだ。それだけで生命力はみるみるうちに回復していくぞ。
 握手での汗の交換、吸血、性交渉などの様々なやり方がある。お母さんが腹痛の子のお腹をさすってやることや、スポーツマンのハグやハイタッチで喝を入れるのも供給行為の一つだな。

 『契約』とは?
高坂/魂と魂の結びつけて霊的な主従関係を作ることだ。
 主人(マスター)になった者は、配下(サーヴァント)になった者を従えることができる。サーヴァントはマスターの命令に絶対従わなければならなくなるが、その代わり、マスターから大きな力を授かることができる。それが令呪だ。サーヴァントはマスターに絶対服従という代償を支払う代わり、3回だけ超越的現象を起こせるようになるんだよ。
 契約は必ず、自分の意思で結ばなければ完了しない。洗脳状態のような意識が無い場合では契約できないんだ。
 契約するとマスターになった人間の体に「令呪刻印」が生じる。サーヴァント1人につき1つ、痣のようなものが発生するんだ。どこに浮かぶかは人によるな。
 体に生じているとはいえ、契約は魂の繋がりのこと。どんなことがあっても繋がりは消えることはない。契約の破棄したい場合は、「刻印箇所を切り離す」「心霊治療を受ける」「令呪によって契約破棄の命令を下す」など方法があるよ。契約は計画的に!


Q&A 世界の謎編

▼ロリこと龍の聖剣に答えてもらいました!



 この世界って、どんな世界?
聖剣/この世界の名前は『ゼフィロス』というの。
 神様がそう名付けたのよ。他にも色んなTRPGがあるけど、この世界の特徴は……「時が巻き戻りやすい」ってことかしら?

 この世界の仕組みを教えて。
聖剣/この世界の生き物は、必ず神様によって寿命が設定されているわ。
 例えば、Aさんという男性がいる。神様が決めた彼の設定を見てみると「20歳のとき美術の学生。50歳のとき事故で入院。80歳で天寿を全う。ポニーテールの女性と結婚する」とあるわ。
 以上の決定事項『世界のイベント』さえこなせば、後は自由に生きていいとされているの。
 ところが、異端は神様が決めた世界のイベントを捻じ曲げる力を持っているわ。
 異端は18歳のAさんを殺すことができる。その結果、20歳のときに美術に関わろうとしていた彼がいなくなる。美術の大学の定員が1人空くから違う人を入学させるわ。50歳の彼がいない世界では、彼が入院させなかったことで病院の利益が下がるでしょう。そもそも結婚する筈のポニーテールの女性は誰と結婚するのかしら……?
 1人男性が死んだだけでも、最低でも3人の人生が変わる。こんなことを続けたら、いつしか世界は滅茶苦茶になるわ。
 だから神様は、「異端に殺される前まで」時間を巻き戻し、能力者達に異端を退治させるようにしているの。これがこの世界と『ループ』の仕組みよ。

 『ループ』って、どういうこと?
聖剣/時間を巻き戻す現象、または巻き戻す行為自体を『ループ』と呼んでいるわ。
 異端によって殺されたままだと、世界は綻び始めて滅茶苦茶になってしまう。だから殺される前に時間を戻す。戻した後は殺される前に異端を倒して、元通り平和に時間を過ごしてもらうわ。
 でも時間を戻しただけだと被害者はまた同じように異端に殺される。そこで「一度経験した世界の記憶」を持ったままループする特別ルールを作ったの。自分が殺されると判っていれば死を回避できるでしょ? 凄く有利になれるルールね。
 これは本来ならご法度行為。そもそも時間を巻き戻すこと自体、いけない行為だということを忘れないで。だってみんなが積み上げたものを無に帰すことだもの。一瞬一瞬を本気で生きていた人に失礼だわ。……でも世界崩壊になったら意味が無いから、特別措置を作って頑張ってもらっているのよ。
 ギリギリのラインを許してもらっている状態だから、みんながみんなループできる訳じゃない。記憶継続できる人は限られるわ。パーティー全員が記憶を持ってループすることがあったら、それは相当頑張らないと回避できない事件ってことね。

 ループの『代償』って、何?
聖剣/時間跳躍は、本当ならやってはいけないことなの。やってはいけないことを取り締まる神様がいるぐらいよ。
 でもペナルティを受ければ「仕方ないなぁ」って許してくれるの。『代償』という名の賄賂を払えば、ループはしやすくなるわ。その分、不利になるんだから事件解決は大変かもしれない。1度目は無償でも許してくれるけど、2度も3度もループはしてくれないわ。そのときは賄賂として代償を支払って。
 代表的なのは、身体的喪失。片腕や片目を無くすなどね。
 他にも、「その人によってペナルティとなるもの」であれば何でもいいわ。決してやってはいけないのは、説得力の無いペナルティね。「男勝りな子が女の命と言われる髪を捨てる」、これは精神的苦痛ではないでしょ? 心が全然痛まないなら却下よ。
 例えば「歌が得意だった歌手が声を無くす」なんて、その人の人生や価値観に関わる超ペナルティね。こんなに大きな代償だったら、ループだけじゃなく他にも好条件を貰えるでしょう。そう、ペナルティが大きければプラス情報が貰えることもあるのよ。

 『ループの核』『ループの知覚者』って、何?
聖剣/時間を巻き戻しているなど「ループの中心」である者のことを『ループの核』。時間が巻き戻ってる、世界がループしてることに気付いてしまった者を『ループの知覚者』と呼ぶわ。
 時間が巻き戻っている事態でも世界中でそのことを知ってるのは、時間を巻き戻してる本人の『ループの核』だけ。事態に気付いてしまった人のことを『ループの知覚者』と言うの。それ以外の人達は、世界が重複してることなんて知らない。違うシナリオでループの核だった人でも、別のシナリオではループしてたなんて気付かず普通に暮らしているものよ。【幸運】判定で成功したなら「あれ? デジャブ?」って勘づくかもしれないけど。
 ちなみに、ループの知識や技術を持っていたり、妙に勘が良かったり第六感が働く人達のことを[世界遣い]と言うの。
 少しでも知識や技術を持っている方が私達のことを理解してくれるから、ついつい私達超越的存在と関わるのは[世界遣い]になってしまうのよ。

 ループの核になる条件はある?
聖剣/厳密な条件は無いけど、選ばれやすい特性はあるわ。
 一つ目は、愛情が深い人物であること。
 愛が無い人は、感情が無いから成長しない。愛を知らない人は生に執着しないことも多いわ。「生き返りたい?」と手を差し伸べたとしても「別に。死んだままでいいよ」と言うなら、私達は去るしかないわ。多くのものを守ろうとする愛に溢れた人の方が、私達も好ましいしね。
 二つ目は、社会的地位が高い人物であること。
 これは単純に、人生を変えるにあたって有利だからよ。異端に殺されないようにするためには、以前の生活とは違う生き方をしなきゃいけない。でも、例えば「刑務所に捕まっている人」が生活を変えることは出来るかしら? まず無理ね。義務教育中の子供も同じよ。変えようと思っても制約が掛かるわね。
 だから多くのループの核は、自分の人生を変えられる立場である人が多い。一番理想的なのは、20〜30代前後の大人かしら。その年頃だと立場に拘らず、周囲を動かす力を持つ人が多いしね。
 三つ目は……女性より男性の方が多いみたい。
 女性の体は弱い。それだけじゃなく、ヒステリーになりやすい。狂気に逃げやすいの。元々出産などで強烈な痛みに耐性がある女性は、ループ生活での度重なる苦痛を防ぐよう無自覚に防衛策を取ってしまう。これは「感情を捨て、成長しなくなってしまう」恐れがあるわ。痛みに強そうに見えて実は廃人だったというケースはいくつもあるわ……。

 どこまでループできるの?
聖剣/何年でも。魂があればどの時代にだって飛べるわ。
 我々がループと呼んでいる『時間跳躍』の種類は、大まかに二つある。
 一つは、過去の自分の体に今の自分の魂(記憶)を入れること。
 二つ目は、魂を含めた体ごとタイムスリップすること。
 一つ目の『記憶入れ替え法』は、私達に頼めば簡単にしてあげられるわ。本人の体に未来の魂を入れることは、結構簡単なことなの。老人の魂を若かった頃の体に入れるのはすぐに出来るわ。
 でも二つ目の『体ごとタイムスリップ法』は、移動させる物が多いから少し代償は多めに払ってもらわなきゃいけないかもね。
 余談だけど、知識や経験はすべて魂に記録されるものなの。そこに肉体は関与しない。「成人までに鍛え抜かれた体があるから[闘士]レベルが高い」ではなく、「[闘士]としての経験が高いから[闘士]レベルが高い」と考えた方が良いわ。だから成人男性の魂を未熟な子供に入れてループする際も、元からある[闘士]のレベルが低下することは無いわ。
 同じように、『契約』のような霊的な記録も全てループで引き継げるの。契約は『魂の繋がり』だから、契約した以前の時間へ跳躍したとしても「お互いが『契約してる』という意識がある限り」関係は継続するわ。ただし、「契約は自意識が無いと結ばれない」のは判ってるわね? お互いがマスターである、サーヴァントであると自覚をしたままループしているなら、主従関係のまま世界を送ることができるわ。

 何故、異端は生まれるの?
聖剣/神様から生き物が生まれるように、異端にも親がいる。『欺く神』という親がね。
 欺く神とは元々、デカルトの『省察』に出てくる用語ね。「神とは全知全能完全無欠の超越的存在。その神から生まれる人間はどうして完全ではないのか? それは不完全を生み出す神がいるからだ。人間を苦しめる神がいるから我々は苦しまなければならない」という考えよ。
 欺く神という、人々を苦しめることを目的にした神がいる。彼らによって「幸せを壊すため生み出された存在」、それが異端よ。彼らは己の生まれた使命のため、本能的に破壊活動を行なうの。

 神様が異端を倒せばいいんじゃないの?
聖剣/完全無欠の神様だもの、異端ぐらい倒せるでしょう。でもやってはいけないの。何故なら、神様自身が創作物をコントロールしてしまうと、世界が消滅してしまうからよ。
 TRPGで例えましょうか。GMがプレイヤーにアレしろコレしろと逐一、指示を出す。そんなことされたらプレイヤーは「GM、吟遊詩人すぎる!」って席を立つでしょうね。神の視点からステージ操作したら、PCを動かしている意味なんて無い。セッションをしている意味なんて無くなる。プレイヤー達が席を立ったら、その世界は継続不可能となり、セッションは消滅する……。
 神様は提案を出したりヒントを与えることはできても、生き物たちに「やりなさい」と強制することは出来ないの。だから私達はいつも「手助けしてくれる?」と手を差し伸べているのよ。

 神様はどんな人達なの?
聖剣/神様も、この世界に生きる生き物の一つ。生き物を生む仕事をして、ご飯を食べ、眠り、死んでいく。
 自分の姿は自由に変えられて、数千年は生きる。何でもできて、何でも知っていて、不完全など無い……全知全能完全無欠の存在。
 でも生き物だから、首を絞めれば死ぬの。「神殺し」という言葉がよく神話にはあるでしょ? 不老ではあるけど不死ではなく、死ぬときは死ぬわ。
 [稀人]のように神様も、人間界に紛れて生きていることがあるわ。もちろん、欺く神も。人間として暮らしている神様は、案外近くに居るのかもね……?
 ちなみに、神様は必ず目か髪の毛が「ある特定の色」を持っているの。≪六色の光≫のことね。紫、銀、金、赤、緑、橙。地毛やカラコンを点けずにその色の人がいたら、もしかしたらその人は……。
 そういえば私やルージィルも金髪碧眼ね。というより、普通の人間で有り得る組み合わせと言ったら金髪碧眼ぐらいだと思うわ。目が赤い人って、いかにも禍々しいでしょ?
 余談だけど、この六色って色んなところに現れてるの。≪赤の君≫、≪オレンジの記憶≫、≪紫神の宝玉≫……。ゼフィロス的に紫色は一番高貴な色でね、この世界の最高神の眼の色が紫なの。何かと紫色の物には曰くがあるものよ。

 神様はどうやって生まれるの?
聖剣/生まれ方は全部で三つあるわ。
 一つ目は、神様が子供を作ること。神様同士が子供を作ることもあれば、人との混血の例もあるわね。
 二つ目は、神様によって神様にしてもらうこと。全知全能完全無欠の何でもできる神様が「チチンプイプイ、貴方は人間から神様になーれ」と言ってくれればその瞬間から、神と同等の力を手に入れることができるの。
 三つ目は、神様になるという試験をクリアーすること。「この試験に合格できれば神様になれる」という試験を、何でもできる神様が作り、それに受かればいいの。
 例えば、「46億個の魂を集めろ」とか「3万の人間の血肉を捧げて特定の呪文を唱えなさい」とかあるわね。「四つ葉のクローバーを5つ集めて満月の日にお祈りしなさい」なんて難易度が低いものでも、正式に神様が作ったものならばクリアーしたら神様になってしまうわ。
 あくまで理論的には可能だけど、試験を出す神様なんてまずいないわ。いたとしても、200年に1人いるかいないかの難易度でしょうね。
 私? 私は……一つ目と三つ目の複合ケース、かしら。


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