アナザーワールドSRS・リプレイ・アウトロウ ファミリア
■ 第0話『 プロローグ 』 ■
2015年10月17日




 ●プリプレイ

 『アナザーワールドSRS・リプレイ〜アウトレイジエリア』をサイト公開した2日後。
 セッション会場となる某カラオケにて、GMのマーサー、プレイヤーとして参加するにとに子ぷぇの3名が集まっていた。


マーサー(以降、GM)/それでは『アウトレイジエリア ver.2』、始めていきまーす。
一同/よろしくお願いしますー!
GM/突発的なメンバー募集にも関わらず集まっていただき、ありがとうございます! 『アナザーワールドSRS(以降、AW)』の大好きな自作シナリオ『アウトレイジエリア』のGMをもう一度してみたいとツイッターで呟いたところ、「やってみたい!」と言ってくださったので急遽セッションすることになりました。
プレイヤー1・にとに子/だから、まだ公開されたリプレイは読んでません!
プレイヤー2・ぷぇ/冒頭部分だけは読んだけど、内容は全然知らないから新鮮な気持ちでプレイするよー!
GM/以前やった『アウエリ』はキャラクターレベル10の中編シナリオでしたが、今回は単発セッション用にキャラクターレベル5用に改変してきた『ver,2』で遊んでもらいます。判定難易度が下がっていたり、戦闘はしないドラマ重視のシナリオになっています。
プレイヤー1・にとに子/戦闘特化ではないんですね?
GM/する予定は無いです。でもAF判定はいっぱいするからね、戦闘ができるようなキャラクターで作っておいて演出する分には損は無いですよ。まずはハンドアウトをご覧ください!



 アナザーワールドSRS シナリオ名『アウトレイジエリア ver,2』



【レギュレーション】
 『4版』ルール使用。キャラクターレベル5で開始。
 2人シナリオのため、PCが分断される展開が多い。そのため、単独行動のできるPCであることが望ましい。
 シナリオの元ネタは、ミステリーアドベンチャーゲーム『Remember11』。

 PCの2名は初対面スタート。舞台は12月の東北。種族クラス[稀人]と[異端者]を選択してもいいが、必ず種族は人間であること。
 
【ハンドアウト:PC1】
 コネクション:アイバ シュウガ   関係:興味   推奨クラス:魔術師or聖職者

 推奨職業:社会学部、法学部、人文学部などの学生

 君は、青森県にある異端刑務所に見学に向かった。
 そこは少人数の、異能事件を起こしてしまった受刑者達が収容されている隔離施設シズ。2年前、世間を騒がせたあの連続殺人鬼も居るという。
 勉強のため、自分の好奇心のため、飛行機に乗り込んだ君。殺人鬼に会いに行くという、不安な旅が始まる。
▼NPC1:アイバ シュウガ
 クラスは[狂戦士/処刑人/異端者]。2年前に起きた病院での大量殺人事件の犯人。
 DID(解離性同一性障害。いわゆる多重人格)と診断され、罪に問われず医療施設『シズ』へ隔離された青年。
▼NPC2:ハシモリ ヒナタ
 性別・年齢はPC1が自由に決めてよい。
 君が乗った飛行機の、隣の座席に座っていた。PC1と親しくなるところから物語が始まる。

【ハンドアウト:PC2】
 コネクション:タシロ マナ   関係:尊敬   推奨クラス:世界遣いor処刑人

 推奨職業:警備員、看守、医者、施設研究者、用務員、栄養士など
 君は、青森県平鷲島にある医療施設(と言う名の異端刑務所)で働いている。
 本土から少し離れた孤島で住み始めているが、すぐに本土に戻れるし親しい人との電話のやり取りもできることから生活に不自由は無い。
 毎日変わらぬ生活を送っていた君だったが、突然、目の前が真っ暗になった。
 激しく吹雪が吹き荒ぶある日、君の――君達の平和な日常は、幕を閉じた。
▼NPC3:タシロ マナ
 年齢は30〜40代の、人妻。クラスは[魔術師/聖職者/処刑人]。
 1ヶ月前に、隔離と保護のための特定精神医療施設『シズ』の看護師として赴任してきた。かつては教会のエージェントとして活動していたが、今は看護師業に専念している。
▼NPC4:カシワギ カオル
 性別、年齢はPC2が自由に決めてよい。
 PC2の幼なじみ、同僚、恋人のような親しい間柄で、いっしょに『シズ』で働いている。休みがお互いあったら会うぐらいの仲。

【注釈】
※追加クラスの[アーティスト]、[イレギュラー]禁止。
※追加ライフパス特技取得禁止。
※異端堕ちルール解禁。
※戦闘よりも探索、演出メインのシナリオを予定。キャラメの方針はバランスよりも、キャラの動かしやすさを重視していただきたい。


GM/『アウエリ』をしたときは3版ルールでしたが、今回は4版を使用してキャラクターメイキングをしてもらいます。なので異端堕ちルールは使いますが、4版追加要素は禁止します。
一同/はーい。

 ※注意!
 このリプレイは、『アウトレイジエリア』を読了前提に進んでおります。
 『アウトロウファミリア』プロローグであるこのページは、『アウエリ』の内容を知っている状態のダイジェストでお送りしています。
 まだ『アウエリ』を読んでいない方は、そちらを先に目を通してからご覧ください。


GM/それでは、キャラメが終わったようなので、まずは自己紹介をしていきましょう!

プレイヤー1・にとに子(以降、円子)/キャラクター名が、円子 慎也(まるこ・しんや)です。高校3年生の18歳の高校生。クラスが[魔術師]2レベルの、[異端者]3レベルです。≪鬼の肌膚:物理≫があるので【物理防御点】ならある程度は耐えられます!
GM/「マルコ」くんって名字が可愛いな。「慎也」の慎むという字の名前も素敵だけど。
円子/なら上の名前で呼んでください!
プレイヤー2・ぷぇ/≪鬼の肌膚≫取ったんだ。固い! コンコン固ーい!(笑)
円子/生みの親に捨てられて、引き取られた神社で化け狐を食べちゃった男の子です。≪−50ナンパ≫を取ったので、凄い人見知りです。外見は、いつも狐面を被っています。お面を外されると嫌がります。
GM/狐をモグモグしたの?(笑) 素顔を隠しているのか。お顔はどんなの?
円子/狐の影響なのか凶悪ですね。かつて人を食っていた狐を取り込んだ結果、顔が凶悪なものになりました。
GM/なるほど。では、円子くんがシズに来た理由を教えてください。
円子/えっと……異端に関わる仕事がしたいんです。一歩間違えたら自分も異端刑務所にブチこまれたんだろうなという好奇心と不安で、先に刑務所の世界がどんなものか見てみたいという見学です。
GM/舞台が冬、12月なんだよね。高校3年12月の社会科見学か。
円子/ヤバイっすね。そろそろ本当に将来を決めないと……。
プレイヤー2・ぷぇ/だからこそ本物を見に行こうと思ったのかもね!

 円子 慎也(プレイヤー名:にとに子)
 クラス:[魔術師2/異端者3]
  体力:11(+3)  反射:10(+3)  知覚:12(+4)
  理知:13(+4)  意志:15(+5)  幸運:12(+4)
  HP最大値:23  MP最大値:29  正気度:9
重要キーワード:寺社  背景:(古文書)を読める
特徴:本の虫である  ボーナス効果:≪L:ファンブル無効化≫
職業:高校生  性別:男  年齢:18
 スキルウェポン→≪魔法剣≫
 魔術師→≪幻想式≫ ≪魔の感知≫ ≪すりぬけの式≫
 異端者→≪鬼の肌膚:物理≫ ≪異形の触手≫ ≪毒の魔弾≫ ≪野獣の鼻≫ ≪飢えし甲冑≫ ≪器の支配≫
 一般特技→≪−50ナンパ≫

プレイヤー2・ぷぇ(以降、小夏)/キャラクター名は、美淑 小夏(みよし・こなつ)です。性別は男、年齢は23歳。[感応力師]2レベル、[狂戦士]1レベル、[異端者]2レベルです。治療と防壁を張ることができます。あとは≪生体侵入≫を持っていて、同意した仲間の体内に入ります。
GM/PCで≪生体侵入≫を本格導入している人は初めてだよ!
小夏/仲間の中に入り込んでいる間は、敵の攻撃を受けません。中から支援をしようと思っています。いつも君の身近にいるぜ!(笑) 中に潜んでいるときは相手のダメージアップにもなるよ。
円子/おー、凄い!
小夏/≪過去視≫や≪最奥の記憶≫、≪暴食≫と≪食鬼≫を取得しているのですが、小夏の正体は……情報を食べる異端です。
GM/ふむふむ。情報を食べるってどんなもんなの?
小夏/食べた書類の情報を自分のものにできるという異端です。『負の感情』がこめられた書類が好物なんですが……かつて、教会の資料をゴソッと召し上がったことがありまして!
GM/め、迷惑!(笑)
小夏/教会のエージェントに≪生体侵入≫して、いただきまーすをしたら捕まりました。それ以後、「おおっぴらに迷惑になる形では食べない!」と決めました。
円子/ちゃんと更正したんだ……(笑)
小夏/異端刑務所に入れられましたが、今はシズの研究員として働いています。ここに入ってきた情報を管理しています。頑張って適応しようとしています。でも書き損じやいらない紙があったらちょうだい! 食べちゃうから!(笑)
GM/……あれ? なんで[狩人]の≪無の射撃≫を取ってるの?
小夏/ライフパス特技の≪エルス≫を≪魔王の落とし子≫で取得したから。異端だから魔王と繋がりあるし、知識を取れるエルスにも所属したことがあって……。
GM/あのさ、ハンドアウトの注釈に「追加ライフパス特技取得禁止」って書いてあるの、気付かなかった?
小夏/えっ。……あ、本当だ!?
GM/えーと……スキルウェポンを考え直すとまた時間が掛かるから、今回はこのままでいこうか。『今回のシナリオには追加ライフパス特技を使えない理由』があったんだけど……まあ、なんとかなるかな。

 美淑 小夏(プレイヤー名:ぷぇ)
 クラス:[感応力師2/狂戦士1/異端者2]
  体力:16(+5)  反射:13(+4)  知覚: 5(+2)
  理知:11(+3)  意志:13(+4)  幸運:21(+7)
  HP最大値:28  MP最大値:25  正気度:7
重要キーワード:記憶  背景:(燃えるゴミの削減)だけは上手
特徴:土地勘である  ボーナス効果:≪L:魔王の落とし子(エルス&特技取得)≫
職業:シズ研究員  性別:男  年齢:23
 スキルウェポン→≪エルス:無の射撃≫
 感応力師→≪肉体復元≫ ≪念動障壁≫ ≪過去視≫ ≪最奥の記憶≫
 狂戦士→≪暴食≫ ≪食鬼≫ ≪単一化≫
 異端者→≪生体侵入≫ ≪魔印≫
 一般特技→≪−50天真爛漫≫ ≪強化手術:幸運≫

GM/次に、4人の主要NPCの確認をしていきます。このセッションは「ハンドアウトにいるNPCに『±50副特技』を1つ設定する」という特別ルールがございます。なのでNPC1人につき1つ好きな特技を付けてあげてね。
円子/なんという!(笑) せっかくなのでダイスを振って決めてみていいですか?
GM/うん、どうぞ。まずNPC1の名前は、相庭 脩駕(あいば・しゅうが)。性別は男性固定です。2年前に起きた病院での大量殺人事件の犯人。どんな人にしたい?
円子/年齢は……20歳で。±50副特技は(ころころ)≪+50美形≫になりました。これは騒ぎになる注目の少年Aですわ(笑)
小夏/キラッキラで絶世の美男子だね! やべぇ!(笑)
GM/現在の年齢は20歳。つまり18歳のときに事件を起こしちゃったんだ。2人目のNPCは、キャラメ段階で女の子希望って言っていたね。名前は、橋守 ひなた(はしもり・ひなた)ちゃん。
円子/10歳の女の子でお願いします。円子が人見知りをするタイプなので、元気な子だと絡みやすいかな? ロリが登場したとなったらPC1として守らねばならない!(笑)
小夏/ロリは貴重な財産だー!(笑)
円子/ひなちゃんの副特技は(ころころ)≪+50イタズラ≫でお願いします。
GM/可愛い!(笑) 彼女が一人で飛行機に乗っている理由は……青森県に住んでいるおじいちゃんやおばあちゃんの家に遊びに行くことにしよう。3人目は、田代 マナ(たしろ・まな)さん。こちらも性別は固定の女性で、人妻です。
小夏/こっちも貴重な財産だな(笑) マナさんは……≪+50英紙颯爽≫がいいな。アネゴ肌でササッと仕事ができるような、カッコイイサバサバしている女性でお願いします。
GM/キビキビ働く女性だね。
円子/肩から白衣を掛けてそうなカッコイイ女性ですね!
GM/最後NPC4は、柏木 カオル(かしわぎ・かおる)さん。……希望は、40〜50歳の男性のお医者さんだったっけ?
小夏/はい。年齢的には小夏のお父さんぐらいです。小夏にはお父さんがいないので、父親として慕っています。カオルさんの言うことは大人しく聞く感じ。
GM/小夏さんを面倒見ていた主治医さんで、今ではすっかり親しい間柄になって「休みがお互いあったら会うぐらいの仲」になるほどです。
小夏/カオルさんは≪+50文学才能≫でお願いします。小夏に「知識に飢えているなら」と色んな本を紹介してもらっていて……そうやって折り合いの付け方を教えてもらいました。
円子/おおー、俺はライフパスが「本の虫である」だったから話が合いそう!(笑)
GM/更正してシズの職員として働く小夏を信頼しているカオルさんです。……NPCの年齢が「ひなた10代、脩駕20代、マナ30〜40代、カオル50代」ってバラバラなんだね。
小夏/バラバラで個性豊かなのは良い!
GM/そうだね。それでは本編を始めていきましょう……。

 こうして、円子 慎也と美淑 小夏と名乗る2人の男子の『アウトレイジエリア』が開始された――。

GM/円子くんって空港に入るときも狐面を被ってるの?
円子/ずっと被ってますよ。
GM/あ、怪しい(笑) 色んな人に「ん?」「ざわざわ……」とされながら、円子くんは飛行機の中に入りました。窓際の席に座ると、オナラがプペァと鳴ります。
円子/にゃっ!? び、ビックリして立ち上がります!
GM/ケツの下に何かが置いてあって音がなったらしい。隠れていた女の子がピョーンと現れて「鳴ったー! 引っかかったー!」と喜んでます。
円子/これ君が仕掛けたの……? ブーブークッションを取って、尋ねます。
GM/「うん! その席、確保してたの! ひなた窓際がいいー!」 円子くんが持っている搭乗チケットに書かれた席番号は、間違いなく窓際の席だと告げています。
円子/…………。じゃあ、俺と席、代わろうか?
GM/その言葉を待っていたという顔になる幼女。「いいの!? お兄ちゃんいいの!? やったー! 狐のお兄ちゃんありがとうー!」 ……搭乗員さんは「すみませんお客様。ご迷惑をお掛けします。彼女はお一人の小さなお客様で……」と簡単に説明した後に、「席を交代するぐらいならOKです」と許可をくれます。
円子/は、はい。……君、一人?
GM/「そうだよ! ひなた一人旅だよ! 狐のお兄ちゃんも一人なのー?」
円子/う、うん。俺、青森の離島に行くんだ。
GM/「ひなたはね、青森のおじいちゃんちに行くんだよー! おばあちゃんの誕生日があってね、一人で行くの初めてなんだけどね、なんとかなると思うー!」
円子/な、なんとかなる? こんな小さな女の子1人で大丈夫かなぁ……(笑) お父さんとお母さんはどうしたの?
GM/「お父さんとお母さんは急なお仕事が入っちゃったから飛行機乗れなくなっちゃったの。でもひなた、もうおっきいから一人でも行ける!」
円子/そっかぁ……。でも……こんなに小さな女の子が一人で旅行って、本当に大丈夫なのかなぁ……?
小夏/すっかり心配なお兄ちゃんっぽいね(笑)
円子/心配だなぁ……。そ、そうだ! それじゃあお兄ちゃんの狐のお面をあげよう! 今日から君は狐2号だ!
GM/彼女はまじまじと狐面を見つめた後、突然のプレゼントに嬉しそうに笑ってカポッと顔に着けちゃいます。「コーン! ひなた、狐になっちゃったー!」

 飛行機で青森に向かう円子は、ひなたと出会い……。

GM/シズの職員として働く小夏さんは、シズに隣接した社員寮で一人暮らしをしているよ。今日は午後出勤なので朝からのんびりできるね。
小夏/その恩恵に預かって、食べかけの本を……。
GM/「読みかけの本」じゃなくて「食べかけの本」なんだ(笑) ちなみに今朝の朝食は?
小夏/『ノルウェーの森』をモグモグ。人間関係がドロドロして負の感情を全面に描いている本が好き! 好物は『ドグラマグラ』です!(一同爆笑)
GM/お前はお腹が空いたらブックオフに行くのか(笑)
円子/100円マックのかわりに100円の文庫本を食べるんだ……(笑)
GM/小説をモリモリ食べていると、電話が鳴ります。カオルさんからです。
小夏/わしゃっ。もしもーし?
GM/(電話先のカオルになって)「……今、食事中だったのな?」
小夏/もぐっ。そうなんですよ、さっき起きたばっかりなんでー!
GM/「ちゃんと野菜ジュースだけでも飲んだかい?」 小夏さんの健康を気遣っているカオルさんは、第一にそんなことを言ってきます。もう主治医でもないのに彼は「健康でいてくれないと困るよ」とヤレヤレ笑っています。
小夏/お父さんみたいに気を遣ってくれるんですね。カオルさん、今日シズに戻るんですか? 帰ってきた後に一緒にメシとかどうすか? 人と一緒に食事をしないとちゃんとしたご飯が食べられないんで(笑)
GM/「いいね、夕飯は一緒にしよう。健康的なご飯を食べような。今、東京にいてこれから飛行機に乗るから何か土産が欲しいなら買っていくが……?」
小夏/そうだなぁ、土産は……。
GM/「本はダメだから」
小夏/ええっ!?
GM/「本はいつもあげているだろう」
小夏/はぁーい……じゃあオレ、とらやの羊羹が食べたいでーす。ノルウェーの森をモグモグしながら言いまーす。
円子/……野菜の本とか食べたらいいんじゃないかな?(笑)

 シズの宿舎で暮らす小夏が、カオルの帰りを待ち……。

GM/心霊治療の手術に向かうマナや小夏さんに連れられていた脩駕ですが、廊下の途中で……立ち止まります。
小夏/ん? どうした?
GM/脩駕は「……何か、聞こえません?」と尋ねてきます。
小夏/何が?
GM/「何か……音が、ゴゴゴゴゴという音が聞こえてきません?」 最初は何も聞こえなかった。でも、そのうち小夏さんの耳にも聞こえてくる。……まるで、新幹線がこちらに突っ込んでくるんじゃないかという轟音が。
小夏/……ぴぃっ?

 吹雪が舞う空を飛んでいた飛行機は、不自然な運転をし始め……。

GM/機内がガクンと揺れます。シートベルトをしていない添乗員さんが頭をガンッとぶつけます。頭から血を流して倒れる添乗員さん、そして声も掛けられないほどにガタガタと揺れ出す機内……。
円子/うっ!? ざ、座席に掴まります!
GM/ひなちゃんも笑っていられません。周囲が恐怖に満ちていく中、彼女も「怖い!」と泣き始めてしまいます。その間にも酸素マスクが頭上に落ちてくるほど機内は揺れて……。
円子/あっ、頭を守るんだ! い、いや、ひなちゃん! ま、まずは酸素マスクをつけるんだ……! え、えっと……それとどうしたらいいんだ!?
GM/いたる所で悲鳴が上がり、飛行機の中はパニックです。ひなたもボロボロと泣きながら、「狐のお兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……!」と座席を掴む君の手を掴んできます。「怖いよ、怖いよ、ひなた達……死んじゃうの……!?」
円子/だ、大丈夫、大丈夫だよ……! いざというときは……俺がひなたちゃんを守るからっ!

 操縦ができなくなった飛行機は、シズが建つ平鷲島に突っ込み……。

GM/小夏さんとマナさんと脩駕の目の前に、飛行機が現れます。
小夏/……あ? じ……事故だコレェー!?
GM/飛行機爆発ドーン。飛行機が突っ込んだ場所が爆発ドーン。爆発による爆発で爆発ドーン。
小夏/連鎖的な爆発!? え、ええっと……2人を引っ掴んで建物の外に逃げます!
GM/小夏さんは呆然とするマナさんと脩駕を守りながら、なんとか外へ……行くけど、更に後ろが爆発ドーン。爆風で体が吹っ飛ばされながら、吹雪の野外に顔を突っ込み……意識を失ってしまいます。
小夏/……か、カオルさん……夕食の約束、守れそうになくてゴメン……ガクッ。

 墜落した飛行機から投げ出され、唯一生還した円子。
 吹雪の中で、相庭 脩駕と出会い……。


GM/吹雪の中に爆風で投げ出された脩駕の目の前にいるのは、近くには死体を食っている頭のイカれた女。脩駕が後ずさっても無理はない。
小夏/そりゃそうだよな!(笑)
円子/あ、あの田代っていう女の人は惨状で精神がおかしくなってしまったんだ……。つまりな、俺が乗っていた飛行機がシズに落っこちちゃったんだ。落ち着いて現状を確認しよう!
GM/脩駕は慌てながらも、落ち着けようとしてくれている円子くんと話そうとする努力をします。でも、「貴方、飛行機なんて乗ってないでしょ……」と、円子くんの言葉に反論します。
円子/……え?
GM/「だって……さっきまで貴方はシズに居たじゃないですか……マナさんと一緒に居たじゃないですか」
小夏/……え?
円子/さっき? マナさん? ……って、誰? き、君も頭を強く打ったんじゃないか?
GM/「…………。せめて雪から身を守れるような所に行きませんか? あっちの建物なら屋根が崩れていませんし……」
円子/あ、う、うん。そうだね。
GM/崩れていない建物までやって来ると、ある異変に気付きます。……ガラスに見たことのない男が映っている。
円子/……うん?
GM/君は気付く。自分の顔には狐面が無い。顔に手を当てるとお面はどこにも無くなっていた。……同時に、ガラスに移る男が顔に手を当てている。
円子/ウズマキから狐面を取り出して被ります!
小夏/2つ目あるんだ!?(笑)
GM/なら、見たこともない背格好の男がいきなり狐面を被り始めたのがガラスに映った。その男の背格好は……。



小夏/あー!? オレ!? オレの姿になってる……!?(笑)
小夏姿の円子/……え、ええっ、ええええ!? こ、これ……俺の体じゃない……!
GM/職員と思しき男が、俺だ。俺は今、シズで働いていたような軽装の男になっている。上着のポケットには紙片がいっぱい出てくるし、狐面の下の顔は別人だし間違いない、別人になっているんだと確信します。
小夏姿の円子/お、俺……俺は……俺は俺じゃないー!?(笑) そっか、相庭くんが言ってたのは本当だったんだ! 頭を打ったのは俺かもしれないんだー!?

 円子 慎也は、シズの職員として働いていた美淑 小夏になっていた。
 そして美淑 小夏は、墜落した飛行機の中にいた円子 慎也になっていた……。


GM/前からは吹雪、後ろからは燃えた飛行機。
小夏/これなーんだ。
GM/答えは飛行機事故!
小夏/それな!?(笑) ウズマキからカイロを引っ張り出して、燃えてる飛行機から離れようとします!
GM/君が炎から逃げようとしているとき、「うえーん、うえーん」という女の子の泣き声が聞こえてきます。「お兄ちゃーん、お兄ちゃーん、どこー」と泣いているのは、10歳ぐらいの……おそらく飛行機の乗客だった女の子です。寒い格好で泣いています。
小夏/……オレだって寒いけど、しゃーない! 自分の着ていたカーディガンを一枚脱いで彼女に掛けます!
GM/残念、今の君はカーディガンを着ていない。
小夏/あ? ……自分の格好を見て、面を食らいます。あ……え……ええっ?
GM/君を見つけた女の子は「お……お兄ちゃーん! 生きてたんだね良かったー!」と君めがけて突貫してきます。
小夏/あ、明らかに初対面なのに「お兄ちゃん」……? とりあえず女の子の手にホッカイロを握らせます。
GM/「あったか狐のお兄ちゃん、ありがとう!」 それを聞いて鏡になりそうなもの、ガラスを見た君は、自分の姿が自分じゃないことに気付きます。



GM/なんだこの狐面、って思うね。
円子姿の小夏/この体の持ち主、どういう趣味だ!?(一同笑)

 そうして、暖を取れる場所にやってきた生き残った一同。

GM/マナさんと脩駕を連れてきた小夏さんの体の円子くんは、狐面を外した円子くんがひなちゃんとカオルさんと一緒に居るのを発見します。
円子姿の小夏/あああああ!? お、オレだー!?(笑)
小夏姿の円子/ちょっと待って! なんで狐面を外してるんですかぁ!?(笑)
円子姿の小夏/視界が狭いからだよッ!(笑) お面ならカオルさんを救出する段階で早々に取ったよ!
小夏姿の円子/ダメダメダメ! ダメです! お面はちゃんと着けてください!
円子姿の小夏/ならオレが着けてる仮面は取ろう!?
小夏姿の円子/俺は狐面を外しますから俺の体は着けてください! 俺の体にバコッと嵌めます!
円子姿の小夏/判ったよ! ちゃんと着けるから! っていうかオマエ誰!?(笑)
小夏姿の円子/こ、この体の名前は美淑 小夏さんで……。
円子姿の小夏/それはオレだ! オマエは誰なんだよ!?
小夏姿の円子/円子 慎也です! ……その体の本人です!
円子姿の小夏/……オレがオマエで、オマエがオレで……?
GM/その怒涛のやり取りを見ているひなちゃんは、「……お兄ちゃんが狐のお兄ちゃんになった? 逆がお兄ちゃん? お兄ちゃんが逆?」とハテナマークを飛ばしています。
小夏姿の円子/ああっ、ひなちゃん! 生きててくれたんだね、良かったぁ……!

 円子と小夏の姿と心は、何故か入れ替わっていた。
 未曽有の大事故により、2人の他に生き残ったのは小さな女の子と、怪我をした中年男性、幼児退行した女性と、殺人鬼の青年。
 6人は、生き残るために奮闘し始める。救助を呼ぶため、元の姿に戻るため、行動する円子と小夏……。


 しかし、そう簡単にはいかない。

GM/先ほどまで大人しかったマナの体が、ビクビクビクと痙攣し始めます。……マナは、それきり動かなくなり、息を引き取ります。
円子姿の小夏/……なっ、なんだこれ……。
小夏姿の円子/ま、マナさんは……凍死したんじゃないんですか……?
円子姿の小夏/……違う。でも判らない! なんだ、この死に方……!
GM/困惑している君達の後ろで、脩駕が動きます。そうして不安げに呟く。「……なんだ、この音?」
円子姿の小夏/どうした? また何か聞こえるのか?
小夏姿の円子/耳を澄ましてみましょう。
GM/ゴゴゴゴゴ。……瞬間、壁が弾き飛ぶ。真っ白いものが君達に迫ってきた。
小夏姿の円子/飛行機?
GM/ではない。
円子姿の小夏/……雪崩!?
GM/そう、雪だ。雪崩が発生してここ一帯を襲った。君達は雪に埋まっていく。
円子姿の小夏/なっ!?
小夏姿の円子/と、咄嗟にひなちゃんを庇う!
円子姿の小夏/ね、≪念動障壁≫を張れるだけ張ろうとする……!
GM/そんなの間に合わない。ひなたが「お兄ちゃん……!」と庇ってくれる円子くんに、みんなを守ろうとしてくれている小夏さんに叫ぶ。……しかし、君達は真っ白い雪の中に埋もれていきます。
小夏姿の円子/う、うああああ……!?

 何も出来ずに、全員は死んだ。雪崩に巻き込まれて誰も助からない。
 ……しかし、時間は繰り返す……。


GM/君達は目を覚まします。それは、お互いの姿を発見して指をさし合っているあの瞬間です。
円子姿の小夏/……ハッ!?
小夏姿の円子/ハッ! ……って、狐面を着けてくださーい!(一同笑)

 自分達は死んだ。だが死んでしまったひなたはウズマキの中で、『ルージィル』と名乗る青年の手を取ったという。
 [世界遣い]だったひなたの力で、時は巻き戻った。
 彼女は「お兄ちゃん達を殺したくない」という一心で『ループの核』と呼ばれる存在になった。
 なんとかしなくては。雪崩が起きて死んでしまう前に、マナが謎の死を遂げる前に。もう一度世界をやり直し始める2人。


GM/山口 和義、佐藤 清美、志賀 透時、芦村 凪、要 愛梨、横谷 楓、斎藤 初実……。アナウンサーさんが飛行機の乗客の名前を上げていく放送です。
円子姿の小夏/……うぅ……。
GM/教会の人達も、悲鳴を上げながらもバタバタと動いています。「あの飛行機には100人近い乗客が乗っていたんだろ? なのに生存は絶望的!?」「シズには50人近い職員がいたのに……」
小夏姿の円子/わたしたーちはー、ここにいますぅー♪
円子姿の小夏/フレンドしたい!(一同笑)

 ≪千里眼≫を持つ高坂は目を閉じ、意識を遠くの惨劇に集中させる。
 高坂の目に入る光景は……雪山。爆発。砕け落ちた胴体。バラバラの死体。……彼は、呟く。

「なんだ……あの、真っ青の光は? 青い光……巨大な霊魂? 違う……大きなものじゃない、あれは全て犠牲者の魂なんだ……。危険だ! あれほどの無念の魂が一つの場所に集中していたら、恐ろしいことが起きてしまうかもしれない……!」

 救助しようとする人々はいる。
 しかし彼らが駆けつけてくれる前に、生き残っていなければ。模索する一同。


GM/ひなたが言うには、ルージィルと名乗った男は「私は、異端の前にしか現れない」と話していたらしいです。
小夏姿の円子/「異端の前にしか現れない」……?

 [世界遣い]のひなたは、不思議なことを話す。
 元気に自分のことを話そうとする小さな女の子。しかし、彼女の話に円子は違和感を覚える。


小夏姿の円子/……ひなちゃん。君はおばあちゃんのところには何日ぐらいいる予定だったの?
GM/ひなたは「決めてない!」と投げやりな台詞を言います。
円子姿の小夏/き、決めてない……? ひなちゃん、学校は楽しい?
GM/「楽しいところだと思う!」
小夏姿の円子/……行ってないの? 小学校の名前は?
GM/「覚えてない!」
円子姿の小夏/そっかー、覚えてないかー。よしよしーと撫でながら、ひなちゃんの服に何気なく触って≪過去視≫をしてもいいですか?
GM/OKだよ。小夏さんは≪過去視≫でひなちゃんの服の記憶を視る。……女の子が両親に手を振って旅行に出かける一幕が、脳裏に浮かんだ。「いってきまーす」と笑う彼女。「いってらっしゃい、愛梨」「愛梨、気を付けるのよ」……そう彼女を送り出す両親。
小夏姿の円子/……愛梨!?

 調べによると、「橋守 ひなた」という少女は飛行機の乗客として存在しないことが発覚。
 混乱する2人は、事故現場から機長が残したメモを発見。そのメモを持ち帰ると、奇妙な幼児退行を起こしていたマナが正気に戻ることができた。
 マナが「多重人格者の脩駕の複数ある人格を統合させる手術」を行なおうとしていたことを知った2人は、あることを質問する。


GM/マナは小夏さんに『自己紹介をした』後に、「なんでも質問して。覚えている限りは話すわ」とキビキビと応じてくれます。
円子姿の小夏/あの……相庭 脩駕の人格の中に、「ひなた」という人格はいますか?
GM/頷きます。「ええ、いるわ。ひなたという天真爛漫な子供らしい性格が、確かに存在していた。……[世界遣い]の女の子だった」
小夏姿の円子/……そんな……。
GM/「相庭 脩駕には、[魔術師]の人格や[感応力師]の人格、一般人の人格など様々な人格が入り混じっているの」 1人の体でキャラクターシートが20枚持っているようなものです。
小夏姿の円子/そ、そっかー……そういうことか。でも、ひなちゃんは……。
円子姿の小夏/……うん。ひなちゃんはひなちゃんだ。そこは肯定します!

 幼児退行していたと思われていたマナの体には、相庭 脩駕の赤子の人格が入り込んでいた。
 同じように飛行機事故で死んだ愛梨という少女の体に、相庭 脩駕のひなたという人格が入り込んでいた。
 マナの中に入り込んでいた危険な人格は、『剥奪の魔導書』を使うことでなんとかマナが消滅させることに成功。同時に、円子と小夏も魂の入れ替えをすることができた。
 危機の一つから脱して安心する面々。しかし元の姿に戻っても違和感は拭えない2人。
 奇妙な感覚に襲われながらも、協力し合い島の外への通信機器を復活させることに成功した。


GM/途切れがちの通信ですが、高坂と名乗る男が「すぐに救助しに行くから安心してほしい! そちらの状況を教えてくれ!」と叫んでおります。
小夏/今の生存者の名前と状況を簡潔にお答えします!
円子/あ、あとちょっとで雪崩が来そうなんです! 早く助けてください!
GM/シズ職員の田代 マナ、美淑 小夏。乗客の円子 慎也と柏木 カオルと……と君達は次々と名前を伝えていきます。「生存者は6名か。エンディングフェイズになったら救助隊が到着するからそれまで持ちこたえてくれ!」
小夏/クライマックスフェイズが終わるまで待てってことですか(笑)
円子/あと数時間ですね、それぐらい持ちこたえてやりますよ!(笑)
GM/本土と離島は数キロしか離れていません。距離だけだったら遠泳選手だったら泳いで渡れるぐらいなのよ。だけど吹雪と冬の青森県だから、もう少し天候が良くなってくれれば……。天候が良くなって気温が高くなったから雪崩が起きたんだけどね。
小夏/天候さえ良くなれば、このアウトレイジなエリアともおさらばなんですね!(笑)
GM/そうそう(笑) 君達はホッと胸を撫で下ろすと、通信先からこんな声が聞こえてきます。「……橋守ひなた? そんな乗客はいないぞ?」
円子/あっ……そっか、ひなちゃんの体の本名は違うから。
小夏/……でも、そこは「橋守ひなたちゃんがいます」って言ってあげよう。
GM/「美淑小夏と円子慎也という名前も無いが?」
小夏/……え?
円子/いやいや、確認してくださいよ。俺はシズに面会しに行く約束だったんですよ。
GM/もう一度、通信先の人達は乗客名簿、職員名簿の中から円子 慎也と美淑 小夏の名前を検索します。ですが「そのような名前の人はおりません」と言われます。
小夏/……えっ……。
円子/……ま、マナさん、マナさんの名前は!?
GM/「田代 マナ。シズの職員として登録されております」
円子/あ、相庭くんは?
GM/「相庭 脩駕。シズに収容されている受刑者として登録されております」
小夏/か、カオルさんは?
GM/「柏木 カオル。そのような名前の人はおりません」
小夏/カオルさんっ!?
円子/……マナさん! マナさんとお話できますか!? マナさんは……小夏さんと初対面みたいな顔をしてましたよね!?
GM/その通信を聞いていたマナは、頭を抱えています。困惑と、納得の顔です。あることに気付いてしまって、ショックで何も言えなくなっている表情をしています。
円子/……マナさんっ! 話してください!

 「数時間後に救助が来る」という確信は得られた。
 その安堵も束の間のこと。円子と小夏は、正気ではいられないような事実を突きつけられる。


GM/美淑小夏の体に付けられた職員のネームプレートを見てみましょう。
小夏/……ネームプレートを、見ます。
GM/そこに書かれている名前は、芦村 凪。何故これを自分は「美淑 小夏」と読んだのだろうか。無意識にそのように読んでいたのだろうか。何故そう錯覚していたのか、そのような幻想を抱いていたのだろうか。
小夏/……え……。
円子/……被っていた狐面を外します。ガラスを見てみます。自分の凶悪な素顔が映っている筈ですが……?
GM/この凶悪な顔は円子 慎也だ。……本当に? この顔は円子 慎也なの? なんでこの顔を円子 慎也だと思っていたの? そうだ、一般的な学生なら携帯電話を持っているよね? 携帯電話を見れば自分のプロフィールぐらい確認が取れるんじゃないかな?
円子/……携帯電話を取り出して、映します。
GM/斎藤 初実。
円子/……あ……。い、いや、いやいやいや! 俺は円子 慎也だ! 俺は円子 慎也の……筈だ……!
GM/そのとき、カオルさんは足腰に力が入らなくなったのかガタッとその場に崩れ落ちます。彼の顔面は蒼白です。
小夏/カオルさんっ!? 咄嗟にカオルさんを支えます! ……彼のネームプレートを確認できますか?
GM/カオルさんの着けているネームプレートには、志賀 透時と書かれている。
円子/……[魔術師]の人格も、[感応力師]の人格も……一般人の人格もいるって、マナさんは言ってましたね……。
小夏/……あは、あはははは……。もう、笑うしかないな! オレ達は、全員、相庭 脩駕……!

 救助は、待っていれば来る。
 しかし円子と小夏は、救助の前に戦わなくてはならないものと直面することになってしまった。
 自分達は何なのか、自分達はどうするべきなのかという問題に。


小夏/……オレ達は、消される予定だった相庭脩駕の人格の一つ……。
GM/マナは静かに話し始めます。「相庭 脩駕が今日何をする予定だったのか、貴方達は判っているわね?」
小夏/……20体近くいる人格を統合する心霊治療の手術、でしたよね。
円子/統合するなんて優しいもんじゃないだろ……。相庭くんの主人格以外のものは、みんな殺すってことだったんでしょう?
GM/「ええ。先ほど、私が私の中に入っていた人格を撃ち殺したのは貴方達も見ていたでしょう? 『剥奪の魔導書』を使って魂を引き抜いて、それを削除する手術を行なう予定だった」 主人格以外19枚のキャラクターシートをビリビリと破くつもりだったと話します。
円子/相庭脩駕の体から出てしまって、死んでしまった体に入り込んでしまったから、こうして生きてしまったっていう……。で、でも、確かに俺はお寺に住んでいて……!
GM/『君は、そういう設定だった』というだけです。
円子/お寺……ああ……お寺は何のお寺だったっけ……。マナさん。19人の人格は殺す予定だったじゃないですか。……今でもそう思いますか?
小夏/……うん、オレ達って当初の目的通り殺されるの?
GM/「そ、それは……そんなの、私は……」 君達と長い時間を過ごしたマナは、ハッキリと答えません。

 自分達はどうするべきなのか、消えるべきなのか考える2人。
 本来の自分である脩駕と面と向かって話していると、脩駕は「出来ることがある」と告白し始めた。


GM/脩駕は雪が降る外を見ます。「ここの人達……150人、みんな死んだんだよね」
円子/……死んだね。
GM/2人に力強く、脩駕は言い放ちます。「150人も死んだんでしょ……天に昇れない魂がいっぱい漂っている。今なら≪贄の儀式≫できるよ!」
小夏/……えっ!?
GM/「そうだ、今ならひなたが≪世界創造≫ができる! 何でも願いを叶えることができる! 思うが儘にできるよ!」
円子/そ、それは人の命だから良くないことなんじゃ……。でも、でもでも……後悔したりしない!?
小夏/やろうとしたら教会の人に止められるよ。やったら、見逃すことなんてしないと思うし……。
GM/「で、でも……≪世界創造≫をすれば円子くんと小夏さんのこと、救えるかもしれないよ……」 あくまで脩駕は、君達2人を救いたくて言っています。
円子/君の気持ちは凄く嬉しいよ……。
小夏/オレらを救うために提案してくれたんだな……。
GM/そこに、ひなちゃんも駆けつけます。「あのね、ルージィルさんは、お兄ちゃん達の魂が幸せになってほしいって言ってたよ!」 2人のNPCは、君達のために願いを叶えることができると叫んでおります。

 死者の体に乗り移った相庭 脩駕の魂達。
 本来、この世界で一人の人間として生きることができなかった存在。
 この世界には、円子 慎也と美淑 小夏と橋守 ひなたと柏木 カオルという人間はいない。

 2人のために≪贄の儀式≫を使ってもいいと話す彼。
 2人が許可するなら≪世界創造≫を使ってもいいと話す彼女。

 自然災害で亡くなった150人の死。
 異端と関係無いため、世界は巻き戻らない。「この死を使おう」と2人のNPCは誘惑する。
 150人の魂を使った≪贄の儀式≫なら、確実なものとなる≪世界創造≫は何でも願いが叶えてくれる。
 これからの雪崩を回避し、救助されるであろう自分達は……どうするべきか。


GM/それではクライマックス戦闘という名の話し合い、始めましょう。
小夏/こ、これが……ラスト戦闘……(笑)
円子/戦闘特化シナリオじゃないって言っていたのは、これですか……(笑)
小夏/……あれ、異端による死じゃないならどうしてルージィルさんは助けてくれたの?
GM/ルージィルは「食人鬼である赤子によって殺されたマナを救うため」に、[世界遣い]の才能がある人格のひなちゃんに手を差し伸ばしたんです。ルージィルが救えたのはマナさんだけなんです。
円子/そっか。俺達は、おまけで救われただけなんだ……。

 救助が来る前に、最後の話し合いをする一同。

円子/雪がやんだ雪原に出て、大の字で倒れて空を見たいです。
GM/青空にはちょっと遠いけど、良い天気の外に出られるよ。ひなちゃんもそんな円子くんの隣にバターンと、笑顔で倒れてきます。
円子/……あのね、俺はね……自分の体が得られたというだけで、凄く幸せなんだよ。これ以上は求めないぐらい幸せなんだ。
GM/ひなちゃんは、円子くんにぎゅうっと抱きつきます。「本当? お兄ちゃん、今のが……本心? お兄ちゃんは本当に幸せ?」
円子/……うん。この体、失いたくないんだ。もしこの俺を消そうとする教会の人達がいるなら、反抗したい。……逃避行も面白そうだなと思っているよ。
GM/雪の上、大の字に寝そべる円子くんに横からぎゅうっとくっつく小さなひなちゃん。大の字が犬の字になりました。
小夏/かわいい!(笑)
円子/相庭くんもおいでよ。雪の上で寝そべるのってなかなか面白いよ。
GM/じゃあ、脩駕が入ることで太の字になります。
円子/凄いことになってるな!?(一同笑) ……2人の手を握ります。俺は、君達にも幸せになってもらいたい。相庭くんはこれからもマナさんと一緒に更正していってほしい。ひなちゃんは……追われる身になったなら、俺と一緒に逃げてほしい。
GM/ひなちゃんは、ぎゅうっとした手を離しません。「狐2号は狐1号といっしょにいる! じゃないと『なんでお前2号なの?』って言われることになっちゃうよー!」
円子/た、確かに(笑) その責任は俺が取らなきゃいけないな!
GM/「だから、いっしょにいたい!」とひなちゃんは言いますね。脩駕は「……君は俺の今後のことを考えてくれるんだね。優しいな」と君の言葉を噛み締めております。
円子/元々、相庭くんと面談するために俺は来たからね。そういう設定なんだけど。
GM/……脩駕は立ち上がります。「マナさんは俺に優しくしてくれる。お前らのことも気遣ってくれている。もしお前らが逃げるなら、俺が全力でサポートしてやる。だから……安心して逃げろ」

 そうして時が来た。
 円子と小夏は、
「150人の魂を用いた≪贄の儀式≫と≪世界創造≫は使わない」という選択を選ぶ。
 助けにきた船に乗り込む一同。危険人物の脩駕は、無事教会の手によって確保された。
 救助を見た途端、極限状態の中にいたマナは安心したように眠ってしまう。しかし、他の4人は……。


GM/心霊医師によると、「脩駕の中には危険な食人鬼の人格は無くなっている。安全な人格1人しかいない」という見解のようです。言われなくたって穏やかな脩駕だけが生きているということは、君達が一番知っているでしょう。
円子/うん、相庭くんはもう大丈夫だな。
GM/さて、君達はどうするの? これからどうしたい?
円子/……教会の現状はどんな感じですか?
GM/「脩駕の中には1人しかいない。ってことは他の19人の魂はどうしたの? その中には食人鬼の魂もあるんだよね? 怖いよね? 捕まえなきゃ!」 わりと焦っているようです。
円子/うーん! これって正体がバレたら捕まるってことじゃないですかね!?
小夏/これは……早々にトンズラしよう! 九州に行こう。
円子/え、九州? いきなりなんで?
小夏/青森から離れた九州まで行くんです。
円子/ああ、なるほど! なるべく遠くに行って身を隠すんですね! なら新幹線で九州まで向かいました。……飛行機は怖いので(笑)
GM/……つまりみんなは、「願いを叶えるようなことはしなかったけど、手に入れた体のままずっと身を隠して生きる」という道を選んだでいいんだね?
円子/はいっ。
小夏/はい!
GM/……事故現場から斎藤 初実くんや要 愛梨ちゃん達4名の遺体は発見できなかったと正式に発表が出たことにします。斎藤家と要家などはそのうち墓を作ることになるでしょう。
円子/それなら……教会から逃げる中で斎藤くんのお家に行きたいな。家を訪れることはないけど、悲しみに暮れる家族を見て「この体は大事にします」って頭を下げてから、逃げ出します。
GM/ひなちゃんも要家の様子を見て、「ごめんなさい……」と頭を下げて、君達とついて行こうとます。
円子/……狐面をつけた2人が、街の中に消えていきます。
GM/異端っぽいなぁ!(笑) 街から街を歩いていく狐面を被った兄妹って、ちょっとした都市伝説になりそうだよ!?
小夏/もうさ、≪魔王の落とし子≫なんだし魔王に匿ってもらおうよ。
GM/それだ。
小夏/それだ!? 魔王に会えばいいよ!(笑)
円子/えっ……。ま、魔王という言葉からして危険な匂いしかしないんですか?
小夏/結構優しい人だよ。
GM/魔王なら「異端刑務所から逃げてきたんです」って話をしてきたら爆笑して援助を申し出てくれるよ。
小夏/ありがとう! 太っ腹! しかも爆笑したんだ!?(笑)
GM/君達の事情を魔王に説明したら、「誰だよお前」と言う前に大爆笑してパトロンになってくれます。
円子/どこがツボなのか判らない!(笑)
GM/『人外夜会 第2章』で説明があるんですが、この魔王という人はかつて異端刑務所にブチ込められたんですけど、≪魅了の魔眼≫を使って脱獄した過去があるんです。だから「異端刑務所から逃げてきた異端が4匹もいるとか超ウケるー」って大変気に入られます。

 ちなみに、このとき言っている『魔王』とは。
 とある事情で一般人のふりをしながら日本に在住している男性のことである。表立って自分が魔王とは宣言していないが、邪神の血を引いていてあらゆる異端を従える能力を有している。
 詳しくは、『人外夜会 第2章』冒頭マスターシーン参照。
 現在は目立った破壊活動を行なっていないが、異端や魔族に対して多大な影響力を持っているため配下となれば強力な支援を受けることができる。その背景を表わしたライフパス特技が、小夏が取得している≪魔王の落とし子≫である。

 プリプレイでGMが「追加ライフパス特技を取得できない理由がある」と言っていたのは、
「プレイヤーがどんなにキャラクターの背景を考えても、それは相庭 脩駕が考えた『設定』であり実際の過去ではないから」だ。
 小夏が≪魔王の落とし子≫を取得していたのは、
ハンドアウトを無視したキャラクターメイキングのミス。本来、小夏という人物は存在しないし、そんな魔王の配下もこの世にはいない。
 セッション時間が無くなるからデータを修正しなかっただけだったのだが、せっかく付けてしまった設定だし、面白いし、ここは……。


円子/まあ、でも悪い人じゃないなら……ひなちゃんの幸せな生活の為なら……支援をしてもらわないと。ワゴン車やキャンピングカーとか買えたらいいな。
GM/いいよ、キャンピングカーぐらい魔王が買ってくれる。ハムのお歳暮とか紅茶のセットを贈るよ。
小夏/どんどん生活が豊かになっていく!?(笑) 凄く優しくしてくれる……。カオルさん、運転免許は持ってますか?
GM/持っているという設定です。
小夏/なら大丈夫だ、魔王の落とし子として頑張ります!(笑) じゃあ……斎藤家や要家の様子を見に行った2人を回収しますね。ブックオフで待ち合わせ!
円子/古本屋で、お腹すいた顔をしている小夏さん?(笑)
小夏/ご馳走を目の前にした子供のようにニコーっと本棚を見ています。
GM/涎を垂らしている小夏をカオルがポカッと軽く殴る。
小夏/痛っ。……食べませんよー! 逃亡生活だと派手なことできませんしねー。
円子/そこに合流しますね。……少しだけ古文書や教科書を持ってきちゃいました。小夏さん、古文書なら食べますか?
小夏/えっ、手土産持参で会いに来てくれたの!? ありがとーご馳走だぁー! 念がこもっていておいしいよー! 教科書も子供の念が入り混じっていておいしいよね!
GM/合流した4人は、住処になっているキャンピングカーに入ります。一番良いキャンピングカーを買ってもらえたので、IHコンロもユニットバスも二段ベッドと屋根裏ベッドがあるタイプだよ(笑) あ、ひなちゃんが「ねえ、100円ショップに行こう?」って提案するよ。
円子/100円ショップに?
GM/「みんなの分のお箸を揃えるの! 家族なんだし! あとお皿と、タオルと、おっきなバッグも買わなきゃ。小夏さんのご飯の本をいっぱい入れられるように」
小夏/優しいな、ひなちゃん!(笑)
円子/……そうだ、あとレターセットも買おう。相庭くんに手紙を出したいな。手紙を出したら届くかな?
GM/届くでしょう。本来なら鑑識に出したりしっかりチェックをするんだろうけど、マナさん宛に出せば問題無い。……マナさんは立場的に君達を捕まえる側だけど、君達を信頼したいし応援したいと思っている。脩駕の将来も大事に思ってくれている人だから、君達の声を確実に脩駕に届けてくれるね。
円子/良かった。それなら「こちらはなんとかやっていけそうだ」って安心させるように手紙を書きますね。
GM/相庭 脩駕に魂には外見が無い。君達の正体を知る人はいないし、探し当てられる人もいない。君達が捕まるようなことは万に一の可能性だろう……君達は日本中を旅していく。
円子/それに、狐面を被ってるからバレないしね!
小夏/魔王のバックアップを有効活用していきます! 超楽しい!(笑)
GM/異端っぽい。
円子/異端ですから!(笑)
GM/たまにパトロンの依頼をこなしていくんじゃないかな。そうやって新たな生活を手に入れたのでした。平和な日常を送る人々に紛れ、君達は影の中で楽しく生きていくことでしょう――。


 アナザーワールドSRS
   『 アウトレイジ エリア ver,2 』   END





 セッションが終わって、帰りの電車の中。
 GM・マーサーと小夏の中の人・ぷぇが、セッション内容を振り返って話をしていたことだった。


マーサー/円子くんの≪鬼の肌膚≫と小夏さんの≪生体侵入≫のコンボは、実際戦闘したら超強いと思うんだよね。戦闘をやらないシナリオだったのが運用できなくて残念だったな。
ぷぇ/じゃあ、セッション2回目をやろう!
マーサー/やろうか。ならこのセッションのサブタイトルを決めたいな。『アウトレイジ エリア』の派生シナリオっぽいタイトルって考えられる? なるべく『アウエリ』っぽい感じで、でも円子くん達らしさが出るようなタイトルが思いついたら……。
ぷぇ/「アウトロウ ファミリア」とか?

 アウトロウ【outlaw】:法の保護や秩序の外にある者。法の恩典と保護を奪われた者。裏の世界の人。手に負えないお尋ね者。
 ファミリア【familiar】:うちとけたさま。家族的。主従関係で成り立つ魔物、使い魔のこと。


マーサー/天才かな?




『アウトロウ ファミリア』第1話に続く