クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 やさしい朝をくださいね 』 1ページ ■
2022年8月7日




 ●オープニングシーン



 クトゥルフ神話TRPG 『やさしい朝をくださいね』
   シナリオ製作者:榎日シユ 様 シナリオ掲載サイト



 「仕方ないよ、君のためだったんだ」

 もっと知りたい誰かと君のための夜、あるいはちょっと切ない初めましてをしたい二人へ。
 どうか、ふたりのためのやさしい朝を見つけてください。




天鴻→KP/お待たせしました! ではでは、始めていきまっしょい。
格/はーい、よろしくお願いします! タイマンのシナリオだなという感じが……しますね……。

 ありふれた一日も終わりに差し掛かった、夜の道。
 今日は空に月が無く、街灯のほのかな明かりばかりが行く先を照らしている。

KP/格くんと天鴻は夜道を2人で歩いているというシチュからスタートなのですが、何かご希望のシチュエーションとかありますか?
格/飲みにいった帰りですかね? いやあ美味しいお酒でした! ごちそうさまで〜す! 白南さんと飲むお酒は実に美味です! 今日も奢ってもらったご機嫌の格です!
天鴻/それは何より。今日は少し郊外のバルで恒例の飲み会をしていた訳だけど、毎度良い酒を頼むよな、お前は……。
格/だんだん舌も肥えてしまってもう安酒には戻れないかもしれませんね〜。はっはっは! 食事も美味しい、酒も美味しい、良い店でした!
天鴻/あそこ紹介してくれた実散さんにはお礼を言っとかなきゃ。
格/良いお店をご存知ですよね〜。実散さんが見つけてくるお店はセンスが良いです。鉢合わせると困るからデートに使いづらいことくらいしか難点が無い。
天鴻/デートで使う前に実散さんに「今日ここいます!?」って確認しなきゃな(笑) そのうち冷やかしに来られそうだし。
格/来そう。草摩さんが来そう……。
天鴻/草摩さんとか親みたいな顔でいそう。
格/当然のように相席してきそう……。
天鴻/何なら先回りしてるまである。
格/「遅かったな」って言ってきそう。ホラーですか?(SANチェックころころ)94で失敗ですね。
天鴻/ファンブルじゃなくて良かったな(笑)
格/ファンブルなら怖くて泣いてましたね……。
天鴻/彼女の前で泣いたら大惨事だな。
格/フラれて結局その店で草摩さんと食事することになるんですよ。どうしてこうなった?
天鴻/「格と俺とでデートだな」とか言いそう。大丈夫、きっと慰めてくれるよ!
格/草摩さんのせいなんだよな〜!?(笑)

 そんな会話をしながら夜道を歩く2人。
 店から最寄りの駅前では少し距離があった。木々の多い公園の横の歩道をてくてくと歩き進んでいく。
 駅に向かっていると、ふと木々の葉が揺れる音が届く。

格/風があるのかな。酔っ払いには心地良いです。
KP/広大な敷地をぐるりと囲むように並んでいる高く伸びた木々。ざわわ、と夜の公演に葉音が響く。<聞き耳>ロールをどうぞ。
格/(ころころ)20、成功した!? おれの探索技能は探索者にあるまじき低さなので成功すると驚いてしまう!

 <聞き耳>→格が成功。
 木々のざわめきに混じって、遠くかすかに違う音がするのに気付く。
 意識を注げば、それは森林公園の方からする人の声だと分かる。高低の異なる数人分の声が、怒気のような色を乗せて荒々しく飛び交っているようだ。

格/夜間で盛り上がってるカップルだったらヤだなと思ったんですけど全然そんな感じじゃなかった。喧嘩か?
天鴻/……こんな時■に? ……■■でもしてるのか?
格/……白南さん? 今なんて?
KP/ざざざ、と天鴻の声が聞き取りづらくなった、気がした。
格/ええと……とりあえず、トラブルなら様子を見ませんと。やれやれ、非番の日まで職業病ですねえ。
天鴻/こんな■■に■■った■らだな。……ちょ■■見に行くか。
格/電波の悪い環境で通話してるときみたいになってる。……何かおかしいぞ。
KP/開かれた口から吐き出された言葉は、今もなお異様な雑音に食われている。天鴻は格くんを先導するように森林公園の中に入っていきます。
格/あ、ちょっと……追いかけます!
天鴻/■番の■ぐらい■■■り■■いよなあ。■■とか■■■きゃ■■けど。■は■に■っても良いぞ。
格/……もう殆ど何を言ってるか判らない。
KP/困惑する君を置き去りにして、目の前の人物は涼しい顔のまま言葉を続ける。月明かりの無い夜の森林公園は暗く、静かだ。
格/白南さん、おれの言ってること聞こえてます?
天鴻/格? ■■■■? ちゃ■と聞■えてるぞ?
格/ちゃんと……聞こえてる? おかしいのはおれの耳か。……おかしい。突発性難聴って感じではないし。
KP/その口唇の動きも、合わせて動かされた指先の所作も、ただ自然に何一つ滞りなく滑らかに再生されていく。なのに、音だけが、どうしてこんなに、音だけ、だったのに。
格/……え。
天鴻/■■■か? ……あれ、■■。

 歪んだ。視界が。
 結ぶ像が揺らいで、映した情景に異様な線が走る。聞こえる音が途切れる。抱える意識が千切れる。
 これは何だ? 違和感なんて言葉ではもう誤魔化せなくなっていく。

格/……変だ。白南さん、実散さんと草摩さんに連、ら、く……。

 ざ、ざざ、ざざざざざざざ。
 見えていた視界が崩れる。立っていた世界が壊れる。
 全てが綻んでいく世界で、嫌な雑音に侵し尽くされた聴覚が、

KP/最後に明確にとらえた声は、悲痛にも似た天鴻の……。格くんは1d6を振ってください。
格/(ころころ)5です。
KP/貴方を呼ぶ声を最後に、格くんの意識は真っ暗な闇に落ちていきます。
格/……白南さん。あ、また心配かけるな、これ……と、思いつつも何もできない。意識がブラックアウトしました。


 ●シーン1

 ……音、が。する。
 あの耳障りな雑音とは違って、淡々と。音階も旋律も無く、ただ、一定間隔に音が降る。
 そこまで至って、ようやく混迷していた意識は目覚める。

格/……あれ。ここは……?

 ゆっくりと走る感覚が、どうやら自分は座っているらしいと気が付いた。
 腕が重くて、頭がやわらかな温度に触れているのは、自分の腕を枕にしているからだろう。
 そこまで理解して、君はやっと、鈍い上半身を上げていく。

格/う……。腕が痺れる姿勢で寝てしまった……。ゆっくり、起き上がります。

 目を覚ました。
 見知らぬ部屋。白い壁、白い床。そう広くはない部屋は、あの夜の続きと呼ぶにはひどく不可思議だった。

格/おっ、長時間いると発狂するタイプの部屋か?

 見渡せば、部屋にはわずかばかりの家具だけがある。
 そして部屋の中央に、今、自分が座っている椅子と、伏せていたテーブルが置かれている。
 白を基調としたテーブルには、いくつかの皿やカップが並べられていて、その向こう側、君と向かい合うように置かれた椅子に一つ、人影が見える。
 先程までの君のようにテーブルに伏せ、穏やかに眠る人影が白南天鴻だということはすぐ理解できるだろう。

格/白南さん! 起きてください! 朝かどうかは分かりませんが起きる時間ですよ白南さん! おはようございます! クソデカ大声!
天鴻/うわ!? ……え、は、格? なんで? 酒飲んで寝落ちした?
格/分かりません! あの公園で白南さんの声にノイズが混じって聞こえて、なんかおかしいな〜と思っているうちに気絶して今ここ! です! どこでしょうねここ!
天鴻/元気だなあ(笑) ……ノイズ? 公園? ううん?

 ふと耳に、目覚めたときにも聞こえていた音が降りそそぐ。
 そちらを見やれば、壁にかけられた時計の秒針が、その無機質な音を絶えず紡ぎ続けていた。
 不可解な断絶を迎えた夜、そして見知らぬ部屋で迎えたその続き。我が身に起こった異変に、SANc0/1d2

格/おや、時計はあるんですね。(ころころ)38、成功です。一人だったらいざ知らず喋る相手がいるのでおれは結構元気です!
天鴻/(ころころ)79、SANチェック失敗だ。

 【現在SAN値】
 天鴻:65→64(1点減少)


天鴻/は? 何ここ。また変な部屋? やだもう……。
格/「また」ときましたか。前にもこんな感じの部屋に閉じ込められたことがおありで?
天鴻/うーん、部屋って言うか……変な電車に閉じ込められたことなら。
格/それはおれも身に覚えがあるな……。
天鴻/よく分かんねえけど、取り合えず怪我とかは無さそうだな。格も大丈夫か? 気分が悪いとかないか?
格/そうですね。身体的ダメージはゼロで精神的ダメージもまだゼロですが……このまま閉じ込められたままなら大丈夫ではないかもしれませんが、今のところはピンピンしてます!
KP/ちなみに、手荷物の類は見当たりません。着の身着のままって感じ。
格/おれの財布、スマホ、タブレット、家族写真が……貴重品が盗られてるのだとしたら、やっぱり大丈夫ではないですね。
天鴻/「俺と格が揃って酔い潰れてるところを誰かが貴重品を盗っていった」ならまだ分かるが……こんな部屋に連れ込まれるのは、どう考えてもおかしいよな?
格/揃って酔い潰れるような飲み方するときは店に行かないし、大の男2人移動させる労力もおかしい。そもそもなんだこの部屋……何時だろう。時計を見ます。

 白い部屋は学生時代の教室を思い出すほどの広さで、目につく家具もそう多くない。
 自分たちが目覚めたテーブル、本棚、書物机と、一枚だけある扉で構成されている。
 また、扉と逆側に位置する壁にはアナログ時計がかけられており、長針短針共にてっぺんを指していた。

格/正午……? いや、それより扉がある。開くんだろうか。

 ■探索可能箇所
 【本棚】 【書き物机】 【扉】 【テーブル】

天鴻/もしかしたら俺達がここに居る手がかりも見つかるかもしれない。
格/じっとしてても何も変わりませんし、とりあえず調べてみましょうか。まずは扉から……こういうのはすぐにドアが開かないのが定石ですけどね!

 ■扉
 変哲のない、白く塗られた木製のドアだ。ドアノブはあるが、そこに鍵穴のようなものは見当たらない。
 ドアを開けようとドアノブをひねっても、何かに拒まれるようにして途中までしか回らない。鍵がかかっているようだ。

格/ガチャガチャガチャ。うーん、鍵穴が無いのに鍵が掛かってますね!
天鴻/外鍵、か?
格/草摩さんのキックが唸れば鍵を壊して出られるかもしれません。
天鴻/キックなら俺だって出来るのに〜。
格/白南さんのキックが唸ったらそれはゴブリンの巣穴に火を放つTRPGセッション即終了しぐさかなって。
天鴻/格もキックすれば成長チャンス到来だぞ?(笑)
格/確かに。キックしてもいいですか?(ころころ)53、失敗です。
KP/先に言っておきますが、クリティカルしても別に扉は開かないです(笑)
格/勢いよくキックしましたがダメですね〜!(笑) 不思議な力に守られているかのような頑丈な扉です! 白南さんも一応扉にキックを試していただいて……。
天鴻/お、いいの?(ころころ)52、成功。ダメージは2d6で(ころころ)4点……ダメだな。丸太でも持ってくるか。
格/白南さんでもダメなら本当に物理では開かないんだなって納得できました。では、書き物机を見てみます。

 ■書き物机
 書き物をするスペースがないほど、天板に大量の紙が山のように積もっている。
 適当に拾ってみれば、真っ白な便箋や、白紙のレポート用紙が多い。

KP/より詳しく調べるなら<目星>ロールをどうぞ。
格/何も書いてない……?(ころころ)78、失敗です。白南さんも<目星>お願いします!
天鴻/判断が早い(笑・ころころ)11、成功。……んん? 真っ白な紙しか出てこないぞ……四つ折りのチラシだ。格に手渡す。
格/えっ? 開きます。
KP/開くと、その内側はカラーで印刷されたチラシになっていた。『VRで遊ぼう!』とレインボーなクソデカフォントで書かれています。イメージ的にはワードアート&いらすとや。
格/カラフル! ワードアートを使うな!(笑) いや実はゴーグルが嵌まってますみたいな展開じゃないでしょう? 眼鏡を上げます。
KP/視界がボヤけます。手元のチラシの細かい字が見にくいなー。
格/視力、年々下がっていくんだよな。
天鴻/ろうが……なんでもない。
格/足を踏みます。
天鴻/痛っ!?
格/ぐりぐり。
天鴻/ごめんて!(笑)

 『VRで遊ぼう!』
 今流行のVR、貴方はもう経験してみましたか?
 現実世界ではできない体験も、VR世界ではリスク無しに楽しむことができます。
 全身で味わうスリルを満喫? エキサイティングなアクションにチャレンジ? さあ、貴方も貴方の知らない世界を楽しみましょう!

 ●アクティビティ一覧
 ・仲間と協力! 友達と対戦! V-SPORTS
 ・運命は君の手で! エージェントビブリオン24
 ・地上300m! 高層ビル間綱渡り!
 ・脱出不可能!? 絶恐呪霊村ツアー

 ○VRって?
 「VirtualReality」の略で、「仮想現実」とも訳されます。
 現実と見紛うような環境を、体験者の五感を通じて体験できる最新技術です。
 ゲームや映像広告、また医療分野でも使用され、さらなる発展が期待されています。

KP/という内容がいらすとやの絵と共に書かれています。
格/クソダサチラシでなければなかなか興味を引かれる内容ではあるんですが、最後のはカイジかな?(笑) 内容が良くてもこれでは台無しですよ、もっと年齢の若い現代的なセンスを持つ新人に作らせれば良かったのに、民間企業なら予算も出るでしょうに……。
天鴻/大人しく外注すれば良かったのに……(笑) 熱心に見てるけど、なんか書いてあったのか?
格/白南さんも読みます? チラシを見せます。
天鴻/……いや、白紙じゃね? え、なに? 格には何か見えてるの!?
格/……薄々そんな気はしていました! おれにはこれ、クソダサワードアートといらすとやのチラシに見えてるんですよ! 読み上げますね〜。
天鴻/親切〜(笑) へー、VRねえ。楽しそうだな。でも何で格には見えてるんだろうな? クソダサチラシ……俺が見えないのか、格が見えちゃってるのか。
格/はっはっは、怖。次にいきましょう、次!
KP/あ、格くん。<幸運>ロールをどうぞ。
格/(ころころ)83、失敗です。不運でした!
天鴻/天鴻も<幸運>を振ります。(ころころ)64、失敗。残念、判らん。
格/本棚……にしましょうかね。

 ■本棚
 前列の棚がスライドする可動式の本棚。いくつかのファイル類が並んでいる。
 ファイルを手に取れば、白紙を挟んだだけのファイルやバインダーが主であるようだと分かる。

KP/より詳しく調べるなら<図書館>ロールをどうぞ。
格/はーい。(ころころ)92、失敗です。ダメですね、<図書館>技能をもっと伸ばさないとな……。
天鴻/天鴻も振っておく。(ころころ)98、ファンブル……あだだだだだ!
格/白南さんが痛そうにしている。もう踏んでませんよ?
KP/ファンブルした天鴻は高い所にあったファイルを取ろうとして本棚の中身をぶちまけました。ハードカバーのファイルの角って頭にぶつけると痛いよね。HPを減らします。
格/うわっ、ちょっと大丈夫ですか? しょうがないな〜、格が本を片付けます。
天鴻/いたた……悪い悪い。あーあ、中身ぶちまけちまったのもあるな。つっても、これも白紙か
格/白紙でないものを探せば……何か手がかりになるのでしょうかね。白南さんから奪って読みます。
KP/天鴻が白紙だと言って差し出した紙には、文章やイラストの切り抜きが並んでいます。よく見れば周りに散らかった紙も同じようなもののようで、何らかのスクラップブックのようだと格くんは察するでしょう。

 ◆スクラップブック
 男は、かぎたばをわたして言いました。
 「全ての戸だな、全てのへやはお前の自由にするといい。
 だが、このいちばん小さなかぎ。ただひとつ、この小べやだけは、けっしてあけてはならないぞ。それをやぶれば、おれはどんなひどいことをしてしまうかわからない」

格/『青髭』

 「おねがいしましたのに、やぶってしまったのですね。
 ごおんをお返ししようとむすめのすがたになりましたが、もういっしょにはいられません。さようなら、どうかあなたがたは幸せに」
 おじいさんとおばあさんはむすめを止めようとしましたが、もうそこにはだれものこっていません。

格/……『鶴の恩返し』、じゃなかった。

 「貴方が裸であるのを誰が知らせたのか。そうか、あのように命じた木の実から、貴方は知ってしまったのか。
 ああ、貴方はなんということをしたのだろう。ならば貴方は、もうここにあることはゆるされない。貴方はもう、かえることはできないのだ」

格/『失楽園』
KP/リアル知識で分かられてしまった。正解です。そうした物語の断片を集めたもののようです。
格/……これ、スクラップブックのように見えます。「禁を破って楽園を追い出される」系の物語ばかりですね。子供向けの昔話とか童話とか聖書とか……採集地域は節操ないようですが、内容はおおむねそういう……。
天鴻/そうなのか? そういう寓話とかの研究でもしてたのか、な?
格/そういう研究分野もありますが、うーん……白紙の紙ばかりだというのがどうにも解せません。
KP/動かした本棚を戻そうとした天鴻が「あれ?」と怪訝そうに本棚の奥を覗きこみます。本棚を戻そうと思ったらレーンに何か引っかかってるみたいだ。
格/そのままでもいいのでは? と言いつつ、レーンを確認してみます。
KP/棚のスライドレールの隙間に何か挟まっているのが見えます。紙片のようです。取り出すには<DEX×4>ロールに成功すること。失敗しても入手はできるが、無理な体勢を強いた腰から悲鳴が上がるため、HP−1。クリティカルで取れたらHP減少なしにします。
格/白南さん、紙が挟まってますよ。どうぞDEXを振っていただいて。
天鴻/天鴻のDEXは12なので、48%以下で成功です。(ころころ)99、ファンブル! あっ、ちょ、結構奥に!? とれ、た、ゴキッ! ファンブルなのでHP2点減らしますわ(笑)
格/白南さん!?(笑) すみませんでした、座っててください。紙片は預かりますね……。この辺の紙束、整理されてるのにこれだけ何だろう? 見てみます。

 一枚目◆雑誌の切り抜き
 Q.散歩中に大きな犬と喧嘩をして以降、その場所である公園を怖がって近寄れなくなってしまいました。
 元々大好きな場所だったので、また遊べるようになれたら良いのですが……。
 A.ワンちゃんたちも私たち人間と同じように、トラウマを抱えることがあるといいます。無理強いはしたくありませんが、また遊べるようになってくれたら嬉しいですよね。
 最初は少しずつ近づいて行き、近づけたらおやつをあげたりおもちゃを出したりと、その場所に対して「楽しい」という感情を結びつけてあげるようにします。その記憶を別の体験や感情で塗り替えてあげましょう。

格/……『いぬのきもち』?
KP/そうですね、ペット情報誌の切り抜きのようです。2枚目もあります。
格/もう1枚はまさか『ねこのきもち』!?(笑)

 二枚目◆酷く掠れて読みにくくなった新聞の切り抜きらしきもの。一部だけ内容を読み取れる。どうやら投稿欄のもののようだ。
 その時、祖母は私の服の袖をくいくいと引っ張ってこう耳打ちしました。
 「ねえ、あの素敵な人はどなたかしら?」
 そうして指差したのは、なんと私の祖父■■祖母の旦那さんだったのです。痴呆であらゆることを忘れてしまったはずの祖母は、でも祖父への恋心だけは忘れられなかったのでしょう。
 その後は祖母と、まるで同年代の友達のように恋愛話で盛り上がってしまいました。本当に強い思いはどこかに残ることもあるんだなと、そう感じた出来事でした。(埼玉県・21歳)

格/うーん……? トラウマの塗り替え、健忘症、強い思いは残ることもある……。これ、雑誌や新聞の切り抜きみたいですが、これも見えませんか?
天鴻/首を傾げる。
格/白南さんが見えないのか、おれが見えちゃってるのか……どっちでしょうねえ。こういう記事でしたよ〜と説明はしておきます。記憶についての話なのかなとは思いますが。
天鴻/記憶か。なんだ、脳科学とかそういう話になるのか?
格/あー、そうかもしれません。なぜかペット雑誌と新聞の投稿欄の切り抜きですが……。さっきのスクラップブックとはまた別分野ですね。まだ、手がかりが不足してる感じがするな……。
天鴻/こういうの、草摩さんとか実散さんが得意そうなんだけどな。とりあえず体を動かして探すだけ探すか!
格/よし手を動かしましょう! あとはテーブルでしたかね!

 ■テーブル
 白を基調とした、二人用と思わしきダイニングテーブルだ。
 その上には2つのポットと2つのティーカップ、砂糖やミルクピッチャーと陶器の瓶が置かれている。
 さらに机の中央には、空のガラスのコップが一つだけ見える。
 また、空のコップの横には白い封筒が一つ置かれている。表面にも裏面にも何の文字も無い。封はされていないようだ。

格/ポット、ティーカップ、砂糖やミルクピッチャー。コップだけが浮いてますね。封筒の中を見ます。
KP/封筒の中には白い便箋が一枚だけ入っています。文字は書いてあります。ただ天鴻は「白紙だが?」という反応をします。

 ◆テーブルの上の手紙
 この手紙は、君にしか読めないように書いている。
 突然のことで驚かせてしまって申し訳ない。それでも、君が読んでくれると信じてこれを書く。

格/…………。黙読します。

 君への頼みはまず一つ。君と目覚めた彼を連れて、最後の部屋まで来て欲しい。
 この手紙のことは、なるべく伏せながら。
 制限時間はある。でも、用意が整うまでの時間が要る。
 机の上の食事は、君たちのための時間稼ぎだ。上手く有効活用して欲しい。
 まだ説明ができないことは謝る。でも、今はこちらを信じて従って欲しい。君も同じように、彼を救いたいと願うのなら。

格/理由を理解できない命令に従うのは納得できない方なんですが、白南さんを人質に取りやがってるようなもんだな、コレ。……言う通りにしてやるか。
天鴻/どうかしたのか?
格/これドイツ語ですね。
天鴻/それは俺も読めないな!(笑) ドイツ語ならそれこそ草摩さんの出番じゃない? 医者だし。
格/第二外国語がドイツ語だったおれの技能が火を噴くかもしれませんので、ちょっと座って待っていてください。

 ■探索可能箇所
 【ポット】 【ガラスのコップ】 【陶器の瓶】

格/間を揉む。ポットって紅茶とか入ってるんですかね。ちょっと見てみます。

 ■ポット
 中を見れば、それぞれにコーヒーと紅茶が入っていると分かる。
 どちらもポットはあたたかく、淹れたばかりのように香りが広がる。
 匂いを嗅いでも中を凝視しても、怪しいものは何も入っていないと分かる。

格/コーヒー党と紅茶党どちらにも配慮が行き届いている……。これ、飲んでも大丈夫そうですよ。
天鴻/じゃあ、ちょっと一休みするか。
格/コーヒーを淹れます。砂糖もミルクもいつも入れないけど、寝起き(?)なことを考慮してミルクは入れておきます。
天鴻/俺もコーヒーを飲む。頭を働かせたいから砂糖をちょっと入れる。
格/……「彼を救いたいと願うなら」って、どういうことだろう。実は今ここにいる白南さんは魂で、本体は大怪我してるとかか? 不吉な想像させやがって……内容が小難しすぎる。本当に草摩さんを呼ぶべきかもしれませんね……。
天鴻/コーヒーごくごく。
格/手紙を閉じます。机の上のものを調べていこうと思います。ではガラスのコップから。

 ■ガラスのコップ
 ありふれたガラスのコップで、模様どころか傷もない。
 ただ手にした際に、その下に敷かれていた小さなメモに気が付く。

格/お、これもおれにしか読めないやつかな……。確認します。

 ◆ガラスのコップの下のメモ
 「どうぞ二人で 食べて話して 満足できたら 鍵をあげる」

格/昨夜も満足するまで食って飲んで喋ったばっかりだが?
KP/それはそう(笑)
格/昨夜の飲み会では満足できないと? 陶器の瓶も調べます。

 ■陶器の瓶
 陶器製の白い瓶のようだ。コルクで栓がされており、表面をよく見れば「COOKIE」の文字がある。
 栓は簡単に開き、中を覗けば、クッキー一つ一つに何やら紙が挟まっていると分かる。

格/フォーチュンクッキーか。
天鴻/お? お茶請け?
格/食べて話して、ってことは、これも食べるべきでしょうね……? きっと議題とか書いてあるのかな。一つ手に取って紙を見ます。
KP/手に取った紙には何か短い文章が書かれているようです。全文はクッキーを食べないと引き抜けないっぽい。食べて1d10をロールしてください。
格/絶対に食わせる仕様だ。バリムシャッ。(1d10ころころ)5です。

 1.家族構成は?
 2.誕生日はいつ?
 3.好きな食べ物と嫌いな食べ物は?
 4.子供の頃の「将来の夢」は?
 5.学生時代の得意な教科と苦手な教科は?
 6.一年の中で好きな季節は?
 7.休みの日は何をして過ごす?
 8.最近買った中で一番高価なものは?
 9.自覚しているけど直せないクセは?
 10.自分と相手の関係性を一言で表すなら?

KP/5なので「5.学生時代の得意な教科と苦手な教科は?」……というのをクッキー食べながら会話していく、というターンです!
格/得意科目は、ぶっちぎり情報ですねー。学年一でしたねー!
天鴻/まあ、だよなあ。さすが。成績自体も上位キープっぽい。
格/白南さんは体育でしょ。
天鴻/体育は得意だよ。あとは……可もなく不可もなくだな。楽しかったのは化学。炎色反応とか楽しくない?
格/楽しいです。
天鴻/ああいうの楽しかった! 苦手な科目は古典。サ行変格活用とか何だあれ呪文か?
格/おれはあんまり「これが苦手」というの無いですね。体育も別に平均くらいでしたし……あ、家庭科? 興味が無くてあんまり記憶無いです。
天鴻/調理実習以外覚えがないわ……。俺もクッキー食べよ。(1d10ころころ)4。「4.子供の頃の「将来の夢」は?」だ。
格/…………。今の子どもってユーチューバーとかになりたがるらしいですね〜!
天鴻/子供の頃の将来の夢……スポーツ選手とかだったかね。学生で出来るスポーツは一通りやってたな。サッカー、野球、バスケ、バレー……。ほら、タッパあったからさ。
格/あはは、勧誘されてる様子が目に浮かびます。さて次……。
天鴻/おーい、格。格の将来の夢は?
格/いやあ自分はそんな白南さんのような立派な実績に伴う将来像があった訳ではありませんしいいのでは?
天鴻/それでも、ほら、あったんじゃないか? 宇宙飛行士とか、パイロット、みたいな。
格/んー……。笑いません?
天鴻/笑わないよ。俺が笑うと思うなら、言わなくても良いけど。
格/…………。“正義のヒーロー”。
天鴻/……そっか。じゃあ、格は夢を叶えたんだな。
格/……そうなのかな。そうだったらいいんですけど。
天鴻/そうだよ。だって、お前はこの間、女の子を一人助けてあげたじゃないか。
格/…………。さ! 次です次!(1d10ころころ)6! 「6.一年の中で好きな季節は?」 強いて言うなら晩秋か初冬くらいが過ごしやすくて好きですね。冬の終わり、春の始まりくらいも気候としてはいいんですけど、仕事が立て込むので気楽さには欠けるかな〜と。
天鴻/ああ、良い季節だよな。涼しくて、身体が動かしやすい。俺は冬の終わりから春先かな、あの頃の澄んだ朝方の空気が好きなんだ。
格/それは分かりますよ。いや本当に春先は犯罪が増えなければ完璧ですからね。
天鴻/ほんとになあ……春だからって犯罪も芽吹かなくて良いっつうの。よし、じゃあ次は俺の番な。(1d10ころころ)「7.休みの日は何をして過ごす?」 日用品の買い出しとか……あとは、トレーニング?
格/「ぽい」ですね〜。趣味とかないんですか?
天鴻/んー、身体を動かすのは好きだから予定が合えば学生時代の友人とフットサルしたりするぞ?
格/めちゃくちゃ陽キャな趣味じゃないですか。納得しかない。
天鴻/ただ、こういう仕事だとなかなか予定合わせずらくてなあ。あとはぶらっとちょっと遠出したり? 海に行きたいな〜つって電車に乗ったりする。そしたらこの間、変なのに乗っちまったんだが。
格/なかなか大掛かりな散歩ですね。
天鴻/格は? 休日は何してんの?
格/休日のスケジュールは隙あらば草摩さんが抑えてくるので(一同笑) 草摩さんと遊んだり草摩さんと遊んだり、映画を見たり積み本を崩したりですかね〜。
天鴻/最近よく花園家に行く機会が増えたな……ご飯が美味しい(笑) 映画はどういうの見るんだ?
格/SFとか好きですね。ゾンビとかサメとかは草摩さんに付き合ってもらいます。絶対デートムービーにならないけど一人で見に行くのはなんか嫌な映画、草摩さんは二つ返事で付き合ってくれるので……感謝してます。
天鴻/草摩さんとコナンの映画を一緒に行ったとは聞いたが。
格/事件ものは職業柄ツッコミどころが目についてしまうので コナンもわりとツッコミ入れながら見てしまうというか。ツッコミどころを語り合いたいので付き合ってもらいました。我々の間ではゼロシコはギャグ映画で有名ですよ。
KP/なんか趣旨と異なった楽しみ方してるな(笑) ぽりぽりとクッキーを食べながらそんな風に話をしていると、ふと、視界の端で見覚えのない色が踊った。
格/お。
KP/見れば、テーブルの中央。何も入っていなかったはずのガラスのカップで、花が一輪、揺れている。花の種類を調べるなら<知識>ロールでどうぞ。
格/はーい。(ころころ)52、成功です。ヨシ!

 <知識>→格が成功。
 ウツギ。アジサイ科ウツギ属の落葉低木。別名はウノハナ。

格/まさかこれが鍵だとでも……? 食べて喋って、満足していただけたんでしょうか。まあ物は試しです。これ持って外に出てみましょう。花を持ってドアノブ回してみます。
KP/花を手に扉へと近づけば、かちゃり、と錠の回る音がした。扉の向こうからは何の音も聞こえない。
格/本当に開いた……。では、出てみましょう。