クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 やさしい朝をくださいね 』 2ページ ■
2022年8月7日




 ●シーン2

 花を手に、扉を2人でくぐれば、その先にあったのは先程までとほぼ変わりのない部屋だった。
 けれど、その部屋の詳細を頭に入れる前に、かちゃり、背後から錠の回る音がした。

格/思わず後ろを振り向いてみてしまう。
天鴻/あれ? ……開かないな。

 隣の天鴻が振り返り、ドアノブに手をかけるが回ることはない。花を近づけたところで結果は変わらず、どうやらくぐった扉は施錠されたらしい。
 広がる部屋は、先程までの目覚めた部屋とよく似ているように見えた。
 白い壁、白い床。部屋の中央にはテーブルが置かれ、その上にはティーカップやポットが見える。
 そして、テーブルを超えた向かい側の壁には、今くぐったのとよく似た扉が一枚ある。
 ただ、部屋の端々に置かれた数少ない家具の類だけは、見覚えのないものになっていた。
 ふと、時計の秒針の音が降った。見上げれば、自分たちがくぐった扉の上にアナログ時計がかけられており、その針は一時過ぎを指している。

 ■探索可能箇所
 【本棚】 【水槽】 【扉】 【テーブル】

天鴻/あんまり変わり映えのしない部屋だな?
格/猪突猛進にまず扉から確認してみましょうか! きっとまだ開かないのでしょうがガチャガチャ。
KP/猪突猛進! 猪突猛進!(笑)

 ■扉
 変哲のない、白く塗られた木製のドアだ。ドアノブはあるが、そこに鍵穴のようなものは見当たらない。
 ここもやはり、何かに拒まれるようにして途中までしかドアノブが回らない。鍵がかかっているようだ。

格/前の部屋と同じですね〜! では前の部屋と同じ要領でサクサク行きましょうか〜、まずは本棚から!

 ■本棚
 PC達の背丈ほどある棚で、先程の物とは違い、ぎっちりと分厚い本ばかりが詰まっている。
 並ぶ本の背表紙を見ていけば、医学書の類が多く並んでいると分かるだろう。
 だが、開いてみれば、どれも中身は白紙のものばかりだ。

格/急募:草摩さん。
KP/オー人事オー人事(笑) より詳しく捜索するなら<目星>ロールでどうぞ。
格/(ころころ)66、失敗です。白南さんもお願いします!
天鴻/はーい(笑・ころころ)3、クリった!

 <目星>→天鴻が成功。
 本の中に紛れたクリアファイルを見つける。なお、天鴻には白紙にしか見えないものである。
 格が見れば、紙には「発表用原稿」と書かれているが分かる。

格/ほうほう確認します!!

 ◆発表用原稿
 実際、VR技術が活用されているのは娯楽分野だけではありません。
 医療分野、その中でも精神面の治療においては実際に活用が進んでおり、既に20世紀には退役軍人のPTSD治療プログラムに使用されています。
 これらは主に、「暴露療法」と呼ばれる、患者が恐怖心を抱くものに対して危険を伴うことなく直面させるという技法のために用いられます。
 娯楽として高層ビルの高さを体験するというVRアトラクションがありますが、プレイヤーは「実際は落ちることはない」という絶対の安全を約束されています。
 これは、高所恐怖症患者への治療にも流用できる内容だということです。
 ただし、これらもやはり利用するのは「記憶の再固定」です。
 即ち、ある出来事を思い出した脳が再度それを固定する際に、「これは安全である」という体験により書き換えてしまう。
 またそれ以外にも、薬剤の投与によりニューロンや受容体の働きを阻害して、記憶の詳細を不鮮明にすることでトラウマ記憶の想起を防ぐ研究が進んでいます。
 しかし、それらの方法では、(ここで紙は途切れている)

格/……長いけど、話が繋がってきた気がします。VRを利用することで安全性を確保しつつトラウマに接させて、トラウマ治療の新しい可能性を開く……というような話で。VRクソダサチラシと雑誌の切り抜きの内容が繋がりました。だから何だというとよく分かりませんね〜!
天鴻/ふーん。VRって娯楽だけじゃなくて治療とかにも使えるんだな。トラウマの治療、ね……。
格/新たな知見ですね〜。これちゃんと治療として確立されるなら受けてもいいな。クモを克服しないと一生山遊びができなくなってしまいますしね。
KP/キャンプに行けない(笑) 他に本棚のものを調べるのであれば<図書館>ロールをどうぞ。
格/は〜い。(ころころ)30、失敗……あっ、惜しい! 妖怪1たりない、『はらからきょうきょう』からついてきちゃったの!?
天鴻/お帰りください! お帰りください!(笑・ころころ)76、成功。……あ、ここ、何か並び順が変だな? 一番高い所に手を伸ばす。
格/一番高い棚の本を取るのに台がいらない人だ。

 <図書館>→天鴻が成功。
 医学書の背表紙を見ていくと、発行年順に並んでいた列の中に、一箇所だけ順番が前後している箇所を見つける。
 そこを直そうと手に取れば、本と本の隙間から何かがひらりと床へ落ちた。見ると、小さなメモのようだ。

KP/天鴻は格くんにメモを渡します。落ちたメモはなんだか殴り書きのように短い文章が並んでいます。

 ◆殴り書きのメモ
 ・記憶の定着は睡眠中に起きる
 ・人は見た夢を忘れてしまう→記憶の整理は睡眠中に行われている?
 ・記憶を司る海馬に働きかける神経がある→これが夢の記憶を残りにくくする
 ・記憶を特定してこの神経を利用できれば?→覆うでは不安定 不鮮明では不十分 必要なのは完全な対処
 ・人間への応用は難しいとされている→彼らに「技術協力」を得れば?

格/「彼ら」ってなんだ……。走り書きのメモですね。読み上げます。
天鴻/今度は夢? 技術提供って何……?
格/いやそれですよ、人間ではない彼らとか技術協力とか何? オニキスのような……?
天鴻/オニキスは猫だよ……そういうことにしておかないとSANが減っちゃう。
格/あ、そうだった、そういうことになってるんでした! 可愛いネコチャンでしたね。吸ったら出目も良くなりますし! また会いたいです!
天鴻/今吸いてえな……エアオニキスを吸うしか。
格/不審者では?
天鴻/今は俺と格しか居ないからセーフじゃない!?
格/それもそう……か? では、水槽を見に行きます。

 ■水槽
 棚と一体になったかなり大型の水槽。青々とした水草や、巨大な流木が配置されているアクアリウムのようだ。
 だが、どこを探しても熱帯魚の姿はない。

KP/では<知識>ロールをどうぞ〜。
格/(ころころ)55、成功です。

 <知識>→格が成功。
 ぼんやりと水槽を見ていると、ふと頭を過る話がある。
 確か……「水槽の脳」だっただろうか?

 ◆水槽の脳
 思考実験の一種。
 「人から取り出した脳を培養液の水槽の中に入れ、電気刺激によってその脳波を操作する。そうやって操作されている水槽の中の脳は、現実世界と何ら変わらない五感を伴う意識を生じさせる。ならば、私たちが現実だと思っているこの世界もまた、水槽の脳が見ている夢なのではないか?」という仮説のこと。

格/……水槽の脳はVR?
KP/胡蝶の夢、的な?
格/おれと白南さん、2人で不思議な部屋を探索しているつもりですけど、実はこれは電気刺激によって見ている夢かもしれない……的な?
天鴻/ふむ? アンドロイドは電気羊の夢を見るか、みたいな話だな?
格/おれとしてはオカルト体験であるよりは科学技術的な話であってくれた方がいいような気がしないでもないですね。
天鴻/ん〜。でも、そしたら何で俺達は「こんな夢」を見せられてるんだろうな?
格/それこそ、「治療」ですかねえ。
天鴻/……なんの?
格/トラウマの?
天鴻/それにしたって、状況が意味不明すぎんか?
格/それは本当にそう。「実験」でないことを祈ってますよ。
天鴻/変な奴らに攫われて実験〜とかありそう! 何故ならこれはCoCだから!
格/おれの自我を得体の知れないやつに侵されたくない。おれはシノビガミなら「信念:我」ってキャラシに書くタイプのPCなので(一同笑)
天鴻/お前がそんなことになったら俺が助けに行くから安心しろよ
格/期待してますよ。まあ逆もしかりですが。そしておれたち2人が同時に捕まったとしたら花園兄弟が助けに来てくれますが。
天鴻/安心感〜(笑) うっかり4人全員で捕まっても、それならそれで4人いたら脱出できそうだしな。
格/固まっていた方がチームとして動けますしね〜。ここに草摩さんが欲しい。
天鴻/水槽はこんなもんか……っと、あれ?

 天鴻が指を差した先、水槽のはまっている台と床の間に何か白い紙が挟まっているのが見える。
 <SIZ>15との<STR>対抗ロールで水槽を動かし、紙を取り出すことができる。

格/白南さん! お願いします!(一同笑)
天鴻/はいはい。俺が水槽を動かすから、ぱぱっと取ってくれよ。65以下成功で(ころころ)57、成功。よいっしょっとお!
格/お見事! ぱぱっと取りました! 読むぞっと。

 取り出したそれは、何かのノートの一ページのようにも見える。
 その一行目にある「計画書」の文字が読めるが、肝心の内容は一部の文字が意図的に読めないようになっている。

格/計画書……?

 ◆「計画書」
 *対象
  ・カルトは不死を求めている
  ・XX病院における輸血用血液窃盗事件
  ・各県での家畜の失踪報告
  ・決行日は新月/場所は森林公園 =対象は豊穣の女神■■■■■■■■
*対抗策
  □□が成立する前に止めるのがベスト
  失敗時を考え△△の呪文を唱えられる者を最前線に
*注意事項
  ■■■■■■■■はひどく巨大な体躯を持つ
  直視しただけで正気を失い、廃人と化す危険性あり
  出来る限り公園の周囲にも人払い用の人員を割く
  ただし、緊急の合図があれば彼等も前線へ

格/……新月の、森林公園。2人で飲んだ後に通りかかったあの公園で、何かあったのかもしれません。
天鴻/……公園? 公園になんか行ったっけ?
格/え?
天鴻/公園の近くは通ったよな。でも、公園の中なんか入ったか?
格/…………。おれの気のせいかもしれませんね! さっきの部屋で目覚めたとき、ちょっと頭がぼ〜っとしてたので!
天鴻/大丈夫か?
格/ただ、これにはあのとき近くを通った公園で、何かこうオカルトじみた儀式を行うといったような内容の計画書……が書いてありまして。
天鴻/え、やば。最近そういう事案多くない? CoCだからです。
格/多いですよ! 嫌になっちゃいますね、平和に生きてえ〜! でもセッションは嬉々としてする。

 ■テーブル
 近づいたテーブルは、前の部屋で見たものとあまり変わりはないように思える。
 2つのポットと2つのティーカップに砂糖やミルクピッチャーが置かれている。
 更に机の中央には、空のガラスのコップが一つだけ置かれており、その下には小さなメモがあるのが分かる。

格/これまた前の部屋と似た感じですね……メモを確認します。

 ◆ガラスのコップの下のメモ2
 「残すことなく 召し上がれ 満足できたら 鍵をあげる」
 テーブルには先程のクッキーポットが無い代わりに、2つの皿にそれぞれパイのような物が置かれている。2人分のナイフとフォークも用意されているようだ。
 また、片方のパイの近くに1つの白い封筒を見つけるだろう。封筒はやはり何の文字も模様も見当たらない。開けば、便箋が1枚だけ入っている。

格/全部食えって書いてあります。今回は日本語だといいんですけど。読みます。

 ◆テーブルの上の手紙2
 この部屋にまで来てくれてありがとう。
 そしてまたこの手紙を読んでくれていることにも、お礼を言わせて欲しい。
 準備の時間はまだもう少しだけ必要だ。ここでもまだ、君の力を貸して欲しい。深い話の方がきっと、時間はかけられるはずだろうから。
 どこかで君は察しているだろうけれど、君たちが知らないことをこちらは知っている。
 君たちはまだ知るべきじゃない。でも、君は知るべき時が来る。そのためにこの部屋はあって、そしてこの時間を必要としている。
 準備ができたら、君には話す。そこで最後の頼みがある。
 それまでどうか、彼と話して、もっと彼を知って欲しい。多分それが、君にも必要なことだと思うから。

格/…………。パイのレシピですね。
天鴻/そんな難しい顔で読むようなレシピなのか!?(笑)
格/料理のレシピ、興味無いから理解するのが大変で。でも美味しそうですよ。いただきましょう。
天鴻/そ、そっか〜。あ、じゃあそのレシピ覚えて帰って草摩さんに教えたら作ってくれるんじゃないか?(笑)

 ■皿の上のパイ
 噛めば、焼きたてのパイ生地が音を立ててほどけるように口内へ広がっていく。
 その層の間に挟まれたアーモンドクリームが、滑らかに舌の上を滑りながらナッツの香ばしさを伝えていく。

KP/<幸運>ロールをどうぞ。
格/本当に美味しそう。(ころころ)26、成功です。やったー!

 ふと、パイに刺したフォークの先に何かが引っかかる。
 よく見てみれば、パイの中に何か小さな半透明のカプセルが入っていると分かる。
 取り出すなら、さらにそのカプセルの中に折りたたまれた紙が入っていることにも気付くだろう。

KP/ちなみに失敗すると「ガリッ」ってカプセルを噛みます(笑) 地味に痛いやつ。
格/美味しそうなパイなのになんか入ってる……カプセルを開けます。
KP/カプセルの中にはメモが1枚。内容は前の部屋で行ったような質問項目の一覧のようです。

 1.今までの人生で後悔していることは?
 2.死んでしまった人はどこへ行くと思いますか?
 3.神様はいると思いますか?
 4.何を犠牲にしてでも叶えたい願いはありますか?
 5.嘘はどんな場合でも許されないと思いますか?
 6.一人の大切な人と百人の他人、どちらを殺しますか?
 7.誰かを忘れることと忘れられること、どちらが辛いですか?
 8.自分がこの世に生まれてきた意味は?
 9.明日で世界が終わるなら、どこで誰と何をしますか?
 10.人生で最も忘れてしまいたい記憶は?

KP/ころり、と卓上に10面ダイスが転がったのを格くんは見付けます
格/変な形だな、これサイコロか? 一般人ムーブ(一同爆笑)
天鴻/見たこと無い形だけど、数字が書いてあるからそうなんじゃないか? 一般人ムーブ(笑)
格/これを振って答えていけばいいんですかねえ……ほいっとな(1d10ころころ)6です。一般人にしてはなかなか上手にサイコロが振れました。
天鴻/6なので、「6.一人の大切な人と百人の他人、どちらを殺しますか?」。……なんつうか、ヘビーな質問ばっかだな。
格/初っ端から嫌な質問ですね。トロッコ問題みたいで嫌ですが……多分おれはこれ、大事な人の方を手に掛けるんだと思います。
天鴻/……そうなのか。
格/そのあと自分ものうのうと生きようとは思わないかもしれませんが。状況次第ですね
天鴻/……俺は、選べないなあ。選べないから、きっと「自分の命でどうにかならないか」って言うと思う。
格/言いそう。ぶっ飛ばします。
天鴻/ぶっ飛ばされる!?
格/ぶっ飛ばします。すぐ自己犠牲に走るの良くないですよ。貴方を大事に思う人達が生きた心地しないので。
天鴻/でも、例えば格と見知らぬ他人100人どちらか殺せって言われたら、俺は自分の命を天秤に乗せるぞ。
格/そこで白南さんが自分の命を代償におれと100人を救ったら、そのあとおれが生きてる保証が無いですよ。
天鴻/う……大事な人も100人も生き残るんだから良くない?
格/おれ、法治国家に生きて警察官をやってることの誇りがかなりストッパーになっているタイプなので法に関係なく命を選択して、損なわれる局面になったら何するかちょっと判らないというか最悪その100人も殺して自分も死ぬのでやめてくださいね。
天鴻/格……意外と過激なんだな。
格/あっはは! そうですね、過激派です! だからいつもニコニコ笑って生きてるんですよ。
天鴻/もし自分が天秤に乗せられる側だったら、自分から死ぬだろうなあっていうのは黙っておこ……。えーい! 次! 次だ!(1d10ころころ)1……「1.今までの人生で後悔していることは?」。おいこらダイス。
格/ははは……振り直しても誰も怒りませんよ。
天鴻/(1d10ころころ)2……「2.死んでしまった人はどこへ行くと思いますか?」 おいこらダイス。
格/振り直しても誰も怒りませんよ。
天鴻/(1d10ころころ)「10.人生で最も忘れてしまいたい記憶は?」 おい以下略。
格/面白くなってきてしまった。ダイスが「逃げるな」と圧をかけてきてる。
天鴻/『庭師』から逃げるな(笑) ……最も忘れたい記憶は、一度もう忘れてしまっていたから……二度と忘れちゃいけないと思う。
格/律儀ですね〜! 忘れても怒りませんよ。
天鴻/忘れたいなんて言える権利無いだろ、俺には。
格/つらい記憶は誰だって忘れたいでしょ。白南さんは言えない性格をしているな〜とは思いますが。
天鴻/俺一人の辛い記憶ならな。でも、そうじゃないだろ……辛い記憶でも覚えていなきゃいけないものもあるんだ。
格/……つらい記憶を一人で抱えてる訳じゃないってことに救われてる部分はあるので、積極的に忘れてほしいとは思いませんが。記憶は時間とともに風化していくものですし、痛みもやわらいでいくものです。そんなに気に病まないでほしいなと思ってますよ。
天鴻/……格は、それで良いのか?
格/はい。おれ、事実関係はけっこう嘘も方便で誤魔化しまくりますけど、自分の感情は偽りませんよ。末永く友人でいたいので、おれの顔を見てストレスを感じてほしくないんですよね。
天鴻/逆に格は俺といてストレスじゃねえの?
格/え? 全然。
天鴻/軽いな!?
格/白南さんが気に病んでるな〜と感じるときはちょっと気を遣いますけど、気に病むなと言って逆にプレッシャーを感じるようでしたら、ちょっとくらいは気に病んでも構わないです。別にどちらでも、貴方の楽な方で。
天鴻/……ごめん。俺は、自分がしたことを忘れられないし、自分の事は一生許せないままだと思うそれでも、お前にそう言って貰えて、少しだけ、楽になる。
格/それなら良かったです。なんでもかんでも背負いこんでいたら、ぶっ飛ばしますからね☆
天鴻/ぜ、善処する……。
格/パイがうまい。これも2回ずつサイコロを振りますか?(1d10ころころ)1。
KP/「1.今までの人生で後悔していることは?」
格/乗り越えずに逃げたことは人生で再び壁となって現れる……みたいなことを感じますね?(1d10ころころ)1。
KP/「1.今までの人生で後悔していることは?」 
格/ダイスの女神から「これでいけ」と主張されてる(笑) その場その場では最良の選択をして生きてきたと思っているので、反省することはありますが、後悔することはあまり。……でも玲子のことはもっと早く草摩さんに聞いてみれば良かったと思いますね。これかな、後悔。
天鴻/そう、だな。
格/人を信用するのに時間を掛けすぎるところ、直すべきだなと反省しました。
天鴻/でも、その慎重なところが格の良いとこでもあるしな。
格/そう言っていただけると、少し心が楽になりますね。
天鴻/それに、なかなか仕事の同僚が生き別れの妹と繋がってるとは思いつかないと思うぞ?
格/ははっ! そうなんですよね……まさかでしたよ。ありえないなんてことはありえない、CoCシナリオでは……。
天鴻/それな〜。おし、次いくぞ。(1d10ころころ)「4.何を犠牲にしてでも叶えたい願いはありますか?」 ……あるにはあるが、怒られそうだから絶対言いたくねえな。黙秘権を行使します。
格/怒られるから言いたくないって顔してるな……。
天鴻/あ〜、パイ美味いな〜!(1d10ころころ)「7.誰かを忘れることと忘れられること、どちらが辛いですか?」
格/忘れられてもいいから自分は全部覚えていたい派ですね〜。
天鴻/俺も忘れる方が嫌だな。……もし叶うなら、格と妹さんを会わせて……一緒に暮らせるような…そんなやり直しが出来たなら、なんて言ったら絶対ぶっ飛ばされるから言わない。
格/お互い自立した大人なので一緒に暮らすかどうかは置いておいてと言ったら台無しになるやつだなあ、と思った。人間、人の記憶から消えるときが本当に死んだときって言うじゃないですか。そう思うと、覚えていたいですよね。自分が忘れられるのはどうでもいいんですけど……どうでもいいと言うと語弊があるかもしれませんが、おれは死後の世界とか信じてないので自分が知覚できない範囲のことはどうでも良くて。
天鴻/格、その辺さっぱりしてるよな。
格/はい。わりと薄情だな〜と自分でも思いますが。今目の前にあるものだけ大事にしたいというか……身の丈を越えるほど多くのものは抱えられませんからね。物は言いようなので!
天鴻/ふふ、良いんじゃないか、そういうの。自分が出来る範囲の事をちゃんと分かってるってことだろ。
格/良いように言っていただいて嬉しいです(笑) 自分の身の丈に合わないものはチームで解決すればいいですしね。
天鴻/助け合いって大事だよな。俺も草摩さんも実散さんも、コンピューター関係で詰まると「格〜!」って助けを求めるし。
格/そうなんですか(笑) <コンピューター>ももっと育てますね。95まであと7か、いける。
KP/めっちゃプロ(笑) ではそんな話をしていると、ふと、視界の端で見覚えのない色が踊った。
格/……お。
KP/見れば、テーブルの中央。何も入っていなかった筈のガラスのカップで、花が一輪、揺れている。何の花か知るには<知識>ロールをどうぞ。
格/赤い花だ。(ころころ)92、失敗。うーん、知らない花ですね。白南さん、ご存知ですか?
天鴻/赤くて綺麗な花だな〜。(ころころ)10、成功。何か知ってた(笑)

 <知識>→天鴻が成功。
 グラジオラス、アヤメ科グラジオラス属の植物の総称。
 名前は古代ローマの剣であるグラディウスに由来し、葉が剣に類似していることが根拠といわれる。

天鴻/さっきと同じならこの花がカギになるのかな?
格/そうでしょうね。さっ、行きましょう! そろそろ外に出していただいてもいいんですがね〜。ガチャガチャガチャガチャオープン!


 ●シーン3

 テーブルに現れた赤い花を手に扉へと近づけば、かちゃり、と錠の回る音がした。
 扉の向こうからは何の音も聞こえない。花を手にして扉を2人でくぐれば、その先も、先程までとほぼ変わりのない部屋だった。
 そうしてやはり、その部屋の詳細を頭に入れる前に、かちゃり、背後から、錠の回る音がした。

天鴻/また鍵が掛かったな。
格/施錠されましたね〜。何部屋あるんだろう?

 2枚目の扉を抜けた先の部屋も、今までの部屋とよく似ているように思えた。
 白い壁、白い床。部屋の中央にはテーブルが置かれ、その上にはティーカップやポットが見える。
 けれど、部屋にはそれ以外の家具はない。ただ、殺風景な部屋の向こうに、一枚の扉だけが待っている。
 ここでもまだ、絶えず、時計の秒針の音が降りそそいでくる。見上げれば、自分たちがくぐった扉の上のアナログ時計が、2時過ぎを示していた。

KP/先ほどの部屋のように本棚や水槽など他の家具はなく、探索可能箇所はテーブルのみのようです。
格/一部屋一時間かけている計算。ふむ。シンプルですね。ではテーブルを確認します。

 ■テーブル
 見慣れ始めたデザインと大きさのテーブルだろう。
 その上にも、見慣れた2つのポットと2つのティーカップに砂糖やミルクピッチャーが置かれ、
 更に机の中央には、空のガラスのコップが1つだけ置かれている。けれど、その下に今までのようなメモは無い。
 テーブルの両側には今まで通り椅子が2脚あるが、テーブル上には片側の1人分だけ皿が置かれ、その皿の上に、白い封筒が1つ置かれている。封筒に封はされておらず、中を開けば、便箋が3枚入れられている。

格/今回は便箋が多いですね……。読みます。

 ◆テーブルの上の手紙3
 準備は整った。君に、全てを話そう。
 僕たちは、ある神様と対抗している組織だ。あの夜、その神様を呼ぼうとしていた集団がいて、僕らの仲間はそれを止めようとした。
 結論から言えば、止めることに仲間たちは失敗した。正確に話せば、神様はもう退散させたから既にこの世界にはいない。
 でも、『神様を呼ぶことを止める』こと自体は叶わなかった。退散の呪文が成立するまでの十数秒だけ、確かにあの神はこの世界に姿を表してしまった。
 あの森林公園の、木々を突き抜けるほど巨大な姿をもって。

格/椅子に座って、読み続けます。

 神様を退散させた後の仲間たちは、公園の近くの道路で君たちを見つけた。
 気絶して横たわる君と、その隣で……いわゆる、発狂状態にあった彼だ。
 そして理解した。その状態のどちらもが、あの神の仕業だと。全ては、君たちを守れなかった僕らの責任だ。

 ◆テーブルの上の手紙3−2
 仲間たちが君たち二人を運んできたのが、僕がいる病院だった。
 組織の研究施設でもあるこの病院で、僕は一つの研究をしていた。
 「人間を狂気に至らせた記憶を封印すれば、人間は狂気ごと忘れることができるのか」
 出来る訳ないと思うかい? 同じことはたくさん言われてきた。
 でも、人間の脳は思うより不思議と可能性でできている。
 僕はそこに賭けて実験を続けてきて、だからこそ仲間たちもこの病院を選んだんだろう。君たちを……狂気に落ちた彼を、救いたいと僕らは願った。
 この部屋の話をしよう。君たちがいるのは、いわゆるバーチャル空間だ。
 難しいことを説明する時間はないから、簡単に言ってしまえば、君たちが意識だけで操作しているゲーム空間だと思ってくれていい。
 僕たちは今、その空間の外側で君たちの脳を軽く制御していて、そして、ここまで君たちのことを見守っている。

 最後に、君に頼みたいことがある。ううん、君に選んで欲しいことがある。
 彼を連れてこの部屋を出るか、彼を残したこの部屋に鍵をかけるかだ。

 ◆テーブルの上の手紙3−3
 この部屋での行動は、現実世界の君たちの脳に強く影響を与えるようにできている。
 ここにいる彼は、「あの神様を見てしまった前後の記憶」と同一と思って欲しい。
 君がこの部屋に彼を残し、そして鍵をかける場合。僕らは同じようにその記憶に鍵をかける。彼が二度と思い出せないように。
 僕の仮説が正しければ、現実世界での彼はその記憶と共に、そこから至った狂気をも忘却する。それから、この部屋で君と過ごした記憶も一緒に忘れるだろう。
 君が彼を連れてこの部屋を出る場合。話した通り、この部屋にいる彼は狂気に至った記憶と同一だ。あの神様を見た時の記憶を、現実世界の彼は取り戻すことになる。
 そこからは彼次第だ。その記憶とそこからの狂気に、彼の精神は打ち勝つかもしれない。その場合は、ちゃんと君と過ごしたこの夜の記憶も思い出すことができる。
 けれど……あの神に因って、彼の精神が永久に失われる可能性も十分にある。
 タイムリミットは夜明けまでだ。それ以上は、君たちの脳がこの機械との接続に耐えられない。時間切れになった場合の彼の処置は、その時の状況でまた判断するだろう。
 でも、発見した時の状態のままの彼を、そのまま社会に戻すことはできないとだけは言える。
 今、君の記憶のロックを解除して、彼の記憶のロックを緩和した。この部屋の中であれば、これまでの手紙に書いてきたことを話しても構わない。
 いくら話されたところで彼は明確に思い出すことができないから、発狂することはない。でも、きっと理解はできる。忘れていても、覚えていることはあるから。
 だからどうか、二人で選んで欲しい。
 この部屋で彼と過ごして、君が知った彼のために。……彼のための優しい朝を、どうか。

格/…………。

 手紙の最後の一文を読み終わって、君は、思い出す。
 そこに在ったことさえ忘れていた景色が、鮮明な色彩を纏って焼き付いていく。
 聞こえていたことさえ覚えていなかった声が、鮮烈な感情を伴って響いていく。
 あの月の無い夜。確かに自分たちは隣を歩いていて、くだらない話を続けていた。
 そうして、ある森林公園の近くを通りかかったその時だった。
 「実散さんおすすめのレストランにデートで行って鉢合わせしたら気まずいよなあwww」
 なんて、ごくごく普通の、雑談を交わしながら駅に向かって歩いていただけだったのに……聞こえた諍いの声。不審に思った自分たちは、首を傾げて、それから、
 「なんだ? 喧嘩か?」
 「様子を見に行きましょうか」

 まず聞こえたのは、何かが軋むような巨大な音。夜の静寂を引き裂いた音は、森林公園の中から続く。
 地面が割れていくような鈍い轟音、木々の太い枝が呆気なく砕けていく悲鳴。
 疑いようの無い異変に、二人してそちら側に意識を向けようと、して。視界の端、木々の輪郭が大きく蠢いて、
 「……格!」

 思考が揺れる。響いたその音が自分の名前だと気が付いたのは、身体が大きく傾いた後だった。
 ひどく強い力が己の後頭部を押さえ付ける、夜の地面を映した視界がぐらつく、
 2人分の靴が見えて、自分を抱き寄せた手のひらの熱を感じて、呼吸を思い出せなかった唇が開く、心臓が穿つ、無理矢理頭を上げようとして、
 「だめだ、あたま、上げるな」
 その瞬間……この身の細胞全てを塗り潰すような悪寒が襲う。
 皮膚と粘膜が爛れ落ちる感覚、剥き出しになった内蔵が全て引っくり返るような吐き気、天地を見失う、頭蓋骨が握り潰されるような激痛、最後に残ったのは指先で縋ったもう一人の体温で、逃げ出すように、君は意識を放り投げる。
 君は、思い出す。
 ああそうだ、あの瞬間自分の意識は途絶えた。姿こそまともに見ずとも、其処に在るだけで生命を放棄したくなるほどの絶望に。
 ……ならば? ならば、自分をかばったことで、あの存在を直視したかもしれない白南天鴻は? 彼は、今、どうなっている?

格/…………。

 解錠された記憶が、手中の手紙の文字と結び付いていく。
 開いた視界へ、不思議そうに自分を見やる天鴻の顔が映る。
 その姿の向こうの壁に、この夜を刻んで終わりに近づく時計の針が見えた。SANc1/1d6

格/SANチェック。(ころころ)81、失敗です。

 【現在SAN値】
 格:47→41(6点減少)


格/最大値を叩き出すな!(笑) いや、分かる。
KP/おっと、なんということでしょう! 一時発狂ですんで、とりま1d10をどうぞ(笑)
格/(ころころ)9です。

 9:異常食欲(泥、無機物、人肉など異様なものを食べたがる)

KP/今このお部屋で食べれそうなものと言ったら……!?
格/この部屋、なんもないけど何を食べよう? ……自分、かな。
天鴻/格? どうした? 顔色が悪いぞ……。
格/顔色が悪い。苛々したように眉根を寄せて、がじ、と親指の爪を噛む。がじ。がじ。がじ。何か考え込むように目が泳ぐ。視線は合わない。がじ。がじ。指を噛んだ。血が滲む。
天鴻/ちょ、格!? おい! 何してんだ! やめろ! 格の手首を掴んで口元から離す!
格/血を舐める。少しだけほっとしたように一拍置いて、また噛みつこうとして、阻まれる。
天鴻/バカ! 何してんだ……!
格/……仕方ないんです。貴方はおれを罰しないでしょう。こうするしか、な……。
天鴻/格の口に自分の指を突っ込む!
格/ムグッ。
天鴻/<精神分析>しよっか!(ころころ)36、成功! 落ち着け、大丈夫だから……。
格/大丈夫じゃ……大丈夫じゃなかったんです……大丈夫じゃない。
天鴻/……何が書いてあったんだ、それ。お前がそれだけ取り乱すってことは、ケーキのレシピや外国語の文章なんかじゃないんだろ?
格/……あの日、夜の森林公園でいったい何があったのか。書かれていて……思い出しました。
天鴻/……何が、あったんだ?
格/白南さんにも知る権利はあると思うので、お話します。……あの夜、公園で、いわゆる邪神の召喚が行われていたようでして。
天鴻/なんか、そういうの多いな……。
格/そいつはもう送り還すことに成功しているものの、僅かな時間こちらに顕現していました。……おれたちが目撃したのはそれです。
天鴻/なる、ほど?
格/正確には……目撃したのは貴方で。おれは、貴方に庇われたので、まじまじと見た訳ではないんですが……。「それ」は、目撃しただけで精神を壊すような凶悪なものだったようで、つまりですね。
天鴻/ああ。
格/まーた自己犠牲でおれを庇いやがって一発殴らせろ。<こぶし>を握ります。
天鴻/えー!?(笑) えっ、ちょ、まっ!?
格/おれは有言実行の男なんですよねぶっ飛ばしまーす!(ころころ)9、成功です!
KP/出目が良い!(笑) 天鴻は困惑しているので<回避>できません。ダメージをどうぞ、1d3+ダメージボーナスかな?
格/ダメボは0だな! なんて優しい拳!(ころころ)ダメージ1点です。くらえ白南天鴻ォー!
天鴻/やさしい拳をくださいね!? あいたっ!?
格/スッキリしました。じゃ、そういうことで貴方のことはちょっとここに置いていきますね。大丈夫です。すぐまた会えますよ。
天鴻/まままま待って!? 判断が早い!(笑) 置いていくって何!?
格/……この部屋でちょっと待っていてください! すぐ戻りますよ。大嘘。
天鴻/その顔! なんか企んでる時と同じ顔じゃん!?
格/まっさか〜! 生まれてこのかた企みごとなんてしたことのない善良で純粋無垢な男ですよおれは! 信じてくれないんですか、悲しいなあ〜。
KP/嘘だあ!?(笑) KP的に確認です。「このまま事情を説明せず、天鴻をこの部屋に置いて鍵を閉める」で良いですか?
格/白南さんが「説明して!」って言わない限りはそうですね。「自分を忘れられるより自分が覚えていたい派〜〜」って話をしている時点で選択肢は一択だなと思いまして。
天鴻/偶数が出たら「説明を求む!」、奇数なら聞く間もない犯行だった……。(ころころ)1。ちょ、格! ちゃんと説明ー!
格/じゃ! また後で! 白南さんだけは何があってもおれのことを信じてくれると思ってます! 花を持ってガチャバタン。
KP/天鴻が「説明しろー!」と言うよりも早く、格くんは鍵となる花を持って部屋を出て行きました。


 ●シーン4

 扉を開けば、その先にもう部屋はなかった。ただ、真っ白な空間だけが果てを知らずに続いている。
 一歩、踏み出した。けれど地につくはずのつま先から溶けるように、感覚が消えていく。
 つま先、脚、胴体。上へ上へと水に浸っていくように、順々に感覚はおぼろになって、だからこそ、最後に残った聴覚に届いた、
 かちゃり。遠く響いた音の意味を、君は誰より知っている。

格/さっ、記憶が消えた白南さんへの言い訳も用意しないとな!

 音が、降る。曖昧な感覚が、遠く、濁ったような音ばかりを聞いている。
 無機質な音、ばたばたと激しい足音と、いくつもの言葉を繋いだ誰かの声。鼓膜に届く音を引き寄せて、……意識も明瞭になっていく。
 身体がひどく重いように感じた。そこに腕や脚があることは分かる。でも指先の輪郭を思い出せないほど、肢体の感覚は鈍く、重い。

格/……起き上がれない。

 それでも感覚をひとつひとつ拾い上げて、自分自身を思い出して、そっと、目を開いた。
 見知らぬ部屋。白い天井。そこまではあの記憶と一緒で、けれど、視界を焼くような強い照明に目が眩む。横たわる自分を見下ろすいくつもの機械が、無機質な電子音を絶えず降らせてくる。
 周囲を見回そうとして、でも、身体がなんだかひどく重い。せめてと視線だけを動かして、自分の体にいくつも繋がるコードの数々に気が付いたとき、
 「おはよう。気分はどうかな」
 唐突に聞こえた声の方を向けば、白衣の見知らぬ男性が立っていた。

格/清々しいです。身体は重いですが。
KP/「無事に目を覚まして良かったよ。僕の名前は、菱川 深白(ひしかわ・みしろ)。君達をこの機械に繋いだのも、君が読んだ手紙を書いたのも僕だよ」
格/貴方が。それはそれは、この度の尽力に感謝します。
KP/「いや……そもそも僕らが君たちを巻き込んでしまったために起きた事件だ。本当に申し訳ない」
格/それこそ不可抗力でしょう。致命的に運の悪かった自分達を助けていただいてありがとうございました。……もう一人の方も、大丈夫そうですかね?
KP/「ああ。今、あの手紙に書いたように、彼の記憶をロックしている最中だ。絶対とは言い切れない。でも、必ず最善を尽くす。……だから、待っていて欲しい。君一人に、あんなことをさせてしまって申し訳なかった。……君だって、苦しかったろう」
格/お任せするしかないようなので、全面的に信じてお任せします。彼に何かあったら恨みます。どうか助けてやってください。……よろしくお願いします。
KP/「……ああ、全力を尽くすよ。だから、君にも最後に問いたい。君が望むなら、もう一度君にこの機械を使うことができる。接続が終わったばかりの今なら、まだ間に合う。これを使えば、君も記憶にロックができる。この夜のこと、あるいは彼と出会ってからの全ての記憶へ遡って。ここには君と僕しかいないから。だから、君の思ったままに答えればいい。それが、君のためでもあるんだから、君はこの夜を、あるいは彼の全てを忘れることができ……」
格/は? いりませんよ。
KP/返事早いな!?
格/ご厚意でしょうから有難くお気持ちは受け取りますが、忘れるくらいなら死んだ方がマシだって思い出が色々あるんですよ。
KP/「……そうか、そういう思い出は……忘れてしまうのはいけないね」
格/この夜のことも、忘れる必要はありません。あの人の善意は、庇ってもらったおれが一番覚えていなくてはいけないことなので。
KP/「分かった。それが君の答えなら、僕たちはそれに応えよう」
格/はい。よろしくお願いします。

 菱川はその選択を受け止めると、君を検査室へと案内すると言い出す。長時間機械に接続されていた脳の様子を見るためだという。
 いくつかの検査を終えて、君は「異常無し」と診断された。
 検査を終えた後、菱川は君に真剣な顔をしてこう伝えた。

 「たとえこの後、白南天鴻が目を覚ましたとしても、決して話してはいけないことがある。
 あの夜、森林公園で儀式に巻き込まれ、邪神を目にしたこと。
 機械に繋がれ、あのバーチャル空間の部屋の中で君と過ごしたこと。
 記憶に鍵をかけ、彼はあの夜から朝までの出来事を忘れていること。
 その事実を伝えてしまえば、封じている彼の記憶が戻り、また狂気に陥る可能性がある。だから、決してその事実は伝えてはならない。……彼をあの夜から守りたいのなら」

格/わざわざ記憶を封印した意味を無くすようなことはおれだって絶対に避けたいですからね。承知しました。
KP/「ただ、あの夜に帰り道や部屋で口にした話題に触れるだけなら、問題ない筈だよ。君だけが知っている秘密としてね。例えば、子供の頃の将来の話、とか」
格/……貴方がたにはその辺のこと忘れていただきたいんですが……ま、でもいいことを聞きました。いつかしなくてはならない話を、しましたからねぇ。
KP/「守秘義務は守るよ。重要な話はこれでお終い。検査で疲れてるだろう? ゆっくり休むと良い」
格/はい。ありがとうございます。
KP/菱川は頭を下げた後、天鴻がまだ眠っている部屋ー集中治療室の方へと向かっていきます。格くんはどうしますか? この病院で一晩検査入院という形で休んで行っても構いませんし、帰宅しても構いません。
格/白南さんが目覚めるのってどれくらいになる見込みですかね。ついてたいんですが……。
KP/今のところどのくらいで目覚めるか分かりません。記憶ロックの処置が順調に進めば、翌日には目を覚ますかも、ぐらい。
格/ふーむ。では一晩はお世話になります。
KP/では看護師さんが空いている仮眠室に案内してくれます。柔らかなベッドに身を沈めると、ふわふわと眠気が貴方を包み込んで行くでしょ。う
格/草摩さんに「草摩さんが作ったパイが食べたいです〜。たくさん食べれないので一切れだけでいいんですけど最高に美味しいやつを皆さんと食べたいな〜」ってラインを打ってから寝ます。
KP/多分、秒で「(●`・ω・)ゞ<ok!」ってスタンプが返ってきます。
格/早い。「大好き〜!」のスタンプを返しておきました。
KP/その返事を見る間もなく、格くんの瞼は重たくなっていき、スマホを手にしたままぷつりと意識が途切れます


 ●エンディングシーン

KP/ふと、目を覚ますと時刻は8時過ぎ。ちょうど仮眠室にやってきた看護師さんが「おっ」という顔で格くんの方を見ます。
格/おっ、新しい朝が来た。希望の朝だ。おはようございます。
KP/「おはようございます。ちょうど良かった、貴方と一緒に運ばれてきた方、目が覚めたらしいです。お部屋にご案内しましょうか?」
格/ありがとうございます、ぜひ! 飛び起きました。
KP/看護師さんに案内されて廊下を抜け、指定された一つの部屋へと辿り着く。色々な機械が運び込まれた個室の病室、そのベッドの上に彼はいた。
格/白南さん!
天鴻/ふぁ? どうした? そんなに慌てて。頭に包帯を巻いてはいるものの、顔色もよく至って普通です。
格/良かった。いや、良くない。包帯が痛々しい……ベッドまでつかつか歩み寄って、はぁ〜っとでっかく息を吐いて、ベッドサイドに顔を伏せます。
天鴻/なんかよく覚えてないんだけど、公園で腐った木の枝が落ちて来たらしくて……んで、俺がお前を庇った結果、頭にクリティカルヒットしたとか何とか? なに、どしたの格。
格/……そうですよ! なんでそう自己犠牲に走りたがるんですか貴方は! 次やったらグーで殴りますからね! 庇われた方は気が気じゃねーんですよ、馬鹿!
天鴻/う、悪……。いやでも、お前が当たったら大怪我待ったなしじゃん。俺の方が頑丈だし……。
格/うるせ〜! 自分の身もちゃんと守れ〜!
天鴻/自己犠牲っつうか、身体が勝手に動いちゃったんだから仕方ないだろー!
格/馬鹿、もーホント馬鹿心配かけさせんなバーカ!
天鴻/むう……。まあ確かに、人のこと庇っておいて大怪我してたら意味無いよな、うん。悪かった。心配させてごめんな、格。
格/……反省してくださいね、本当に。
天鴻/……はい。
格/……でも。……ありがとうございました。
天鴻/お前に怪我が無くて良かったよ。
格/貴方が怪我したのでおれはまったく良くないです。
天鴻/だから、それはごめんて……でもやっぱ、また同じことがあったらまた同じことしちゃうと思うんだよな。
格/ぶっ飛ばす。
天鴻/もうそういう性分なんだよ。目の前で誰かが傷ついたりするのは嫌なんだ。手の届く範囲に居るなら守りてえじゃん。人よりでっかい身体があるんだからさ。
格/守る手段があれば守るというのは分かりますよ。よーく分かりますけど。ああいやもうダメだこれ……次はウチで飲みましょう。
天鴻/え、格の家で飲んで良いの? やったー!
格/ちょっと肚ァ据えて話し合わなきゃいけないことがたくさんあるようなので。
天鴻/あ、違う、これ説教されるやつじゃない?
格/お説教なんてしませんよ。ちょっとおれの腹の内を懇切丁寧にお話したいだけです。ニコッ。
天鴻/こわいこわい、笑顔が怖い!
格/話し合いがね〜、足りてないと思うんですよおれたち! 飲みに行ってもやっぱり外だし下らない明るい話しかしないので、今度はじーっくり話し合いましょうね。そのためにもさっさと全快してくださいね、人より頑丈なんでしょう?
天鴻/は、はい……。
格/よし、言質とったな。
天鴻/病み上がりだから手加減してえ?
格/善処します。
天鴻/日本人的回答だ!
格/白南さんはしばらく入院ですか? すぐ帰れそうですか? なんかいるもんあったら持ってきますけど。零課にも連絡しておきますね。
天鴻/んー、もうちょっと検査するって言ってたかな。頭を打ってるから、色々精密検査しなきゃならんらしい。世話かけて悪いな、格。
格/いえ。助けていただいたんですから、世話くらいさせてください。草摩さんが4d10個のパイを焼いてお見舞いに来ないように止めておく必要もありますしね。
天鴻/病室がパイだらけになっちゃう!(笑)

 そんな、昨日の夜の続きのように他愛のない話をする2人。
 開いた窓からさわさわと朝の風が入り込み、病室のカーテンを揺らす。
 夜の事を覚えているのは貴方だけだ。貴方が選び迎えた「やさしい朝」はこれから先も続いて行くだろう――。


『 やさしい朝をくださいね END・A 』

 ■SAN値報酬
 PC生還:1d5
 KPC生還:1d5




猫の次は犬になる卓へ続く

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