アナザーワールドSRS・リプレイ
■ 熾天の箱庭シリーズ『 マインドフォレスト 』 2ページ目 ■
2015年11月29日




 ●オープニングフェイズ3/全員 〜日常の終わり〜

GM/あれから1週間ぐらい経ったある日のこと。君達は12月を迎え忙しい時期、それでも安定して過ごしていました。
芳江/12月に入りましたね。論文が佳境です。煙を利用して新たな≪ミラクルドロー≫の開発をしています。
煙々羅/この時期に執筆……卒論かな?(笑) 煙ぷはー。あ、そこ誤字だよ。
芳江/あっ、本当だ。ありがとう、けしけし!
GM/魔術ってプログラムと同じで少し呪文を間違えるとバグって発動しないから、誤字脱字の修正大変そうだよね(笑) さて、魔術書執筆に忙しい君達ですが、同僚から話を聞きます。
芳江/はい。
GM/佳歩がリーダーを務める部隊が全滅したとのこと。10人編成のチームが異端狩りをしに行ったところ、佳歩さん以外全滅だそうです。佳歩さんは重傷、命からがら帰ってきたそうですね。
煙々羅/うわー!?
芳江/あわわ!? でも帰ってきていらっしゃるんですね、良かった……。
煙々羅/銀之助さんの様子は?
GM/いつも通り食事の準備をしていますが、オロオロしてます。
煙々羅/可愛い! チーズとかねじり込みたい!(笑)
芳江/……佳歩さんが運ばれた部屋に行くよ! 手を繋いで行きましょう!
煙々羅/サササササッ!
GM/すぐ来てくれた。……ベッドに包帯グルグルで寝かされている佳歩さんは、【HP】は1点の状態です。寝ていたけど芳江さん達が来たら「あ、芳江……?」と起き上がるよ。
芳江/起き上がっちゃダメです! 無理はいけません! 休んでいてください……。
GM/「ごめんね、お見舞いに来てくれたの……ありがとう」
芳江/お、お体の具合は……?
GM/「ダメだね。普通に、負けちゃった」
芳江/……わ、私は佳歩さんが帰ってきてくださって本当に良かったです。ううぅっと涙ぐんでしまいます。
GM/「じゃあ、今のうちに私の姿を焼きつけておくといいよ」 佳歩は、芳江さん達の方を見ずに言います。
煙々羅/えっ? ど、どういうことですか?
GM/「私、いなくなるんだ。……9人も仲間を殺しちゃった。そりゃあ大罪で怒られるよね。処分の対象だよ」
芳江/そ、そんな……。
GM/「芳江も知っているAさんやBさんもCさんも、私の判断ミスで殺しちゃったんだよ」 サバサバした彼女らしく呆気なく言いますが……その口調は責任感に満ちて、とても後悔に満ちたものです。「さすがに今まで頑張ってきたし、あの子を産んですぐに復帰できたつもりだったけど……これは、ダメだわ」
芳江/うぅっ……。な、何も言えない……。佳歩さん、わ、私に出来ることは、ないですか?
GM/「……ねえ、芳江。あんた、家族は外にいるの?」
芳江/いえ、誰も。……あ、ここに。
煙々羅/うんうんっ! ここにいるよ!
GM/「あ、芳江はそういうこと言っちゃう子なんだ? サーヴァントのことを家族って言っちゃう子なんだね」
芳江/……彼がいなかったら、私はこの機関でとっくに生きていなかったと思います。だからどうしても、彼だけは特別なんですよ。
煙々羅/ふえ……芳江ちゃぁーん(笑)
GM/「今から言うことは、意識が朦朧とした私に独り言なんだけど」
芳江/はい……。
GM/「……ここは、そのうち大きなことをする。大勢を使って、大変なことをする。そういう計画をしているの、私、それなりに上の人と付き合っちゃったから聞いてる」
煙々羅/うっ、うわぁ。
GM/「家族がいるなら、早く決断した方がいいよ」 具体的なことは何一つ言いません。のちの『AW』の歴史で語られることになる邪神召喚とか、数百人単位の死者が出る事件とかは、佳歩は口にしません。だけど間接的に「ここに居ちゃいけない」「出た方がいい」「出るように」と仕向けるような言葉だと察せます。
煙々羅/……貴方は良い人ですね。そんなこと、ちゃんと教えてくれるんですから。
GM/「そういうのやめてよー。でも、芳江。もし彼を生かしたいのだったら……」
芳江/……私は、機関で死んでもいいって思っていました。ここだけが私の居場所でしたから。
煙々羅/芳江ちゃん……。
芳江/でも、他の未来もあるんですよね……きっと。……それが貴方が私に言ってくれた言葉なら、貴方が教えてくれたこと、私は大事にしたいです。
GM/「私には未来が無いけど、貴方にはあるんだから。どうか貴方は、良い未来を作っていって……。なにより、一番最初に私の見舞いに来てくれた良い女なんだから生きてもらわなきゃ困るわよ!」
芳江/はいー!(笑) あ、でも銀之助さんもお見舞いに来たがってましたよ。
GM/「えー? 来る訳ないじゃない、あんなシャイな子がー」 そう言いつつも佳歩さんは嬉しそうな顔をしてます。
煙々羅/すっごい来たがってましたよ!
GM/「教えてくれてありがと。……ほら、見治めしたら、行きな」 暫くすると、佳歩さんの包帯を取り換えにくる人が現れたりします。
芳江/……はい。では、ありがとうございました。
GM/「じゃあね、バイバイ。……もし良かったら、霞をよろしくね」
芳江/うっ。
煙々羅/うっ。……カスミン、どうなるの?
芳江/……霞様。まだ小さいのに……。
煙々羅/機関に残されてしまうの?
芳江/……ですね。どうしたらいいんだろう……どうしたらいいんだろう。
煙々羅/芳江ちゃん。逃げるなら多分、今じゃないかな……。
芳江/そう思います……でも……霞様はどうしよう……。
煙々羅/カスミンを抱えて逃げたいところなんだけど、それは……
芳江/逃亡が難しくなりそうな気がします……。佳歩さんから「逃げてほしい」って言われて……霞もよろしくって言われて……。
GM/母親としての声と、知り合いとしての声がどっちもぶつかった矛盾した言葉だよね。
芳江/でも霞様をここにおいておくとなると、霞様の未来は……ええっと、何がいいんだろう……。
煙々羅/霞ちゃんは可愛いよ!
芳江/知ってます!(笑) 霞様をこんな所に置いておいちゃいけないなって思うよね! でもサーヴァント達の未来を背負う覚悟はありますが、お仕えしている坊ちゃんの未来を背負う覚悟まで今までしていなかったのです!
GM/……お悩みのようなので、先にこれからのことをお話しましょう。今回のセッションでは、「機関のある本丸から抜け出して山奥の森を抜けていくというマップ戦闘」をします(そう言って、B4サイズの巨大マップをテーブルに置く)。
煙々羅/マップ戦闘だー!?(笑)
芳江/わーい!?(笑) 結構大きい! 複雑なマップだ!
GM/時刻は真夜中。スタート地点は芳江さん達のお部屋からです。機関の本丸の外に出て、警備を掻い潜って森を抜けて、マップの端にあるゴール地点まで行けたらエンディングフェイズに移行します。2人揃って到着でハッピーエンド、1人到着でグッドエンドでしょう。
煙々羅/ふええ、2人揃って森を抜けたいねぇ……。
GM/外に出るためには扉を通らなければなりません。扉には近寄った者を警備員に知らせる結界が張ってあるよ。結界は【体力】判定難易度15に成功すれば解除できます。なお、≪鍵の番人≫を所持しているキャラクターなら自動成功です。
芳江/うわ、≪鍵の番人≫って迷ったけど取らなかった特技だー!? 悔しい! 逃げるシナリオならいるかなって思ったけど≪本のクチ≫と悩んだの!(笑)
煙々羅/無いなら無いなりに頑張ろう!(笑)
GM/そして逃亡戦を始める前に、1人1回だけ、自由にシーンを作ることができます。どんなことをしても構いません。名残惜しいものがあればここで演出しておくといいです。
芳江/…………。霞様、今どうしているんだろう。きっと誰かが世話をしている筈だけど……。
GM/乳母さんが霞のお世話をしています。今は乳母さんがいるお部屋で眠っているでしょう。
煙々羅/カスミンな……見に行く?
芳江/……カスミンを連れて、機関から出よう。「連れて行かない」という感情がもう芳江からは消えている。乳母さんに正直に話したら……いや、乳母さんを巻き込むのは良くない!
煙々羅/……銀之助さんか一本松さんに会いたくない?
芳江/あ、会いたい。けど一本松さん達って、救えるのかな……?
GM/救おうとすれば救えるよ。このシナリオではPC達の動き次第で誰でも救えます。でも自由な行動は1人1回だから合計2シーンまでだからね。
煙々羅/芳江ちゃんが優しいのは知っているけど、全ての命は救えない気がするんだ。
GM/そういうこと言ってる煙々羅くんはどうなの?
煙々羅/煙々羅くんはー、芳江ちゃんとランデブーしたいよー。一緒に住みたいよー!(笑)
芳江/ううう……ちょっと待って、状況を確認しよう! GM、NPCがどういう立場か教えてくれませんか?
GM/了解です。佳歩さんは、聯合こと処刑が確定しています。現在は大怪我をして某部屋で寝かされていますが、このまま明日になれば彼女は死にます。
芳江/はい……。
煙々羅/佳歩さんを救うには……処刑を止めることが必要かな? でもそれ大変そう……。
GM/は、信頼がおける乳母さんによって預けられています。乳母さんは佳歩さんが聯合されることを知りません。大怪我をしたというので一時的に預かっているだけの、優しいおばさんです。
芳江/乳母さんは巻き込みたくないなぁ……(笑)
GM/一本松は、芳江さんと同い年の悩める青年です。機関の聯合のやり方に対しては不満を持っていますが、それを変えるだけのことは出来ずにいます。孤独と戦っているようなので後押しがあれば違うかもしれませんが。なお一本松さんと仲良しなのは、芳江さんです。
芳江/芳江が獣人の子達を引き取った一番の理由は、一本松さんを甘やかしかったからです!(笑)
GM/銀之助は、佳歩さんを心配して悩んでいる少年です。機関の食導という、職員達の衣食住をサポートする部署に所属しています。それだけの人なのですが色々機関のあれこれについて詳しいかもしれません。なお銀之助さんと仲良しなのは、煙々羅くんです。
煙々羅/そうなんだよなー。
GM/まだまだ芳江さん達のことを信用してないけど可愛い兎と犬と猫の子供がいます。ただいま夜なので寝てます。
煙々羅/NPC、多いな!?(笑)
芳江/ループしないと全員救出は無理だな!?(笑)
煙々羅/それな!(笑) ……子供達は、フォロミーすれば自分達でついて来てくれるんじゃない?
芳江/自分で走れる年ですしね! 「生き延びたいならついて来て」ってハッパを掛けるとか。……とりあえず芳江は、カスミンを助けたいです。
煙々羅/……銀之助さんと話がしたいな! オラオラァ!(笑)


 ●ミドルフェイズ1/芳江 〜救出〜

GM/では始めに……芳江さんが自由にできるシーンから始めましょう。芳江さんは何をしたいですか?
芳江/カスミンを奪取したいです。ただその前に、獣人の子供達に声を掛けたいです。
GM/それは「霞のイベント」と「子供達のイベント」の実質2シーン分になってしまいます。なので、【幸運】判定で……難しい判定を成功していただきましょう。難易度は12です。
芳江/ありがとうございます。≪幻想式≫を使います。
煙々羅/ワーオ、本気だ!(笑)
芳江/【幸運】判定をします!(ころころ)おお、出目が良い。達成値16です!
煙々羅/出目で余裕成功じゃん! 「至難な行為」に成功してるよ!(笑)
GM/うわ、15以上を出してるじゃん……クリティカルじゃないけど、ちょっとボーナスをあげたいな。
芳江/やったー!(笑)
GM/……獣人の子供達は、芳江さんの管理下に置かれています。なので檻に捕らわれることもなく、芳江さんが「ここで過ごしなさい」と言った普通の部屋で眠っています。
煙々羅/兎と猫と犬が「兄ちゃん寒いよー」「お腹空いたよー」って言ってるんだね!
芳江/ちゃんとご飯はあげているよ! 寒くないように毛布もあげてるもん!(笑)
GM/ほら、12月だから寒いんだよ(笑) さて、夜の12時過ぎにそろっと彼らのもとへやって来た芳江さんですが。
芳江/ササっとやって来て、彼らの居る部屋にそーっと扉を開けます。……おいで。
煙々羅/(獣人の子供達になって)「んにゃ?」「ねむー……」「くぅーん……?」
芳江/静かに。……私は今日、この機関を出るつもりです。
GM/びっくり。
芳江/貴方達は……この先も生きていたいなら、私と一緒に来てちょうだい。
GM/3人はびっくりびっくり。兎ちゃんが「うん!」と頷く……けど、賢い犬くんは「ダメ」とボソリと言う。「……そんなことやめて。貴方が、死ぬ」
煙々羅/き、気遣ってくれた!?  犬は賢いなー!?(笑)
芳江/あああっ! 可愛いなぁー!(笑)
GM/兎ちゃんは「行かないの? 行こうよ、こんな所に居たくないよ!」って顔。猫ちゃんは「ふにゃー……どうしよにゃー」と困り顔です。
芳江/ふええ、可愛い(笑) ……ここにこのまま居ても、貴方達は殺されてしまうわ。だから……私と一緒に生きてほしいの!
GM/では判定を。本来は難易度8なんですが、ここはボーナスイベントなので……【理知】判定で難易度12にします。
芳江/(ころころ)よっしゃ、12以上が出ました! 達成値12で成功です!
煙々羅/やった!(笑)
GM/……犬くんは、コクリと頷きます。兎ちゃんは「一緒に行く! ありがとね!」とウサウサ抱きついてきます。猫は「んにゃー! 独りは嫌! 私も行く!」とついて来ます。
煙々羅/みんな可愛いねぇ! めっちゃ可愛い!(笑)
GM/ということで芳江さんは、『イベントキー:子供達』を入手してください。

 『イベントキー:子供達』
 タイミング:オート  射程:視界  対象:単体  回数:1シナリオに3回まで

 【HP】ダメージを受けたときに使用する。対象が受ける【HP】ダメージを0点にする。使用するごとに獣人の子供達が1人ずつ死亡する。


GM/肉盾というやつです。体力のある獣人達だからね。「お姉ちゃん危なーい!」と言って庇ってもらうことができます。
煙々羅/ひでえ!?(一同笑) 抜け目ないルールだな!?
芳江/つらい! なるべく使わずに行こうね!(笑)
GM/あ、でもおいしいことを敢えて話すなら……このように特技の効果で死亡するようなデータになっているため、敵キャラクターは故意に狙われて死ぬことはないです。エキストラ全員死亡特技を使われても死亡しないようになってます。
煙々羅/確かに! PCが死亡させるを選択しない限り、みんな生きていられるね。
芳江/みんなで機関を抜け出すけど……ちょっと行ってくる場所があるから、待っててね。そう言って私はカスミンが寝ている部屋へ行きます。
GM/では本題へ。時刻は夜12時過ぎ。霞は夜泣きすることもなくぐっすりスヤァです。この1週間のうちに霞と遊んだ君達なら「あいつ頑丈だしあんまり騒いでも泣かない」ことぐらい判っていてください。
煙々羅/カスミン強い!(笑)
芳江/霞様、とても逞しい……(笑) 抜き足、差し足、忍び足で近寄ります……。乳母さんは寝ていますか?
GM/霞も乳母さんも寝てますね。こっそり霞を奪っていくなら【体力】判定、説得して預かるなら【理知】判定です。どちらも難易度は10です。
芳江/【理知】判定で口車に乗せます。……すみません、起きてください!
GM/ハッと乳母さんは起こされます。「ど、どうかしましたか?」
芳江/……佳歩さんの容態が! 貴方を呼んでいます! 霞様は、私が見ていますので……急いで! ≪幻想式≫2回目を使用して【理知】判定をしますよ。(ころころ)よっしゃ、達成値15か!
GM/おっと出目が良い! 君の言う通りに彼女は動きます。芳江さんの真剣な顔を見て、「判ったわ。霞様をお願いしますね」と言い……彼女は去って行きました。
芳江/おんぶ紐でササッと背負って部屋を去ります! 霞様が起きないように、そーっと、泣かないでいただけるように!
煙々羅/さすがでござる!(笑)
GM/カスミンは頑丈で肝の据わった子供なので起きないし泣きません。なんあの女が産んだ赤ん坊だからな。
芳江/さすがです、霞様!(笑)
GM/ここで「霞は誰が背負っているか」の宣言をしてください。背負っているキャラクターが戦闘不能になった場合、「そのキャラクターを戦闘不能にした人物の所有物」になります。戦闘不能から回復しても、戦闘不能にした攻撃をした人が持っていることになります。同じ要領で奪い返してください。
芳江/はい。……私がこのまま霞様を背負っていていいよね?
煙々羅/いいよ。芳江ちゃんが持っていた方が安心だ。お願いするよ。


 ●ミドルフェイズ2/煙々羅 〜交渉〜

GM/お次に……煙々羅くんは自由なシーンで何をする?
煙々羅/銀之助さんに会いに行く!
GM/即答だった。……夜の12時すぎ。煙々羅くんは厨房に向かう。こんな時間でも真面目な彼は豆電球の下で勉強をしているよ。いつもの復習だけど、眠れないから勉強しているみたいだね。
煙々羅/そーっと……豆電球を煙に巻いてみますが。
GM/偶数が出たら煙々羅くんの存在に気付こう。(ころころ)2、気付いた。「……何ですか」
煙々羅/……銀之助さんは、佳歩さんのところに行きましたか?
GM/「いきなり何ですか。……佳歩さんの看病は、僕の仕事ではありません」
煙々羅/多分、今……会っておいた方がいいと思います。
GM/「聯合されるからですか」
煙々羅/判っているじゃないですか!
GM/「……明日、聯合されることが決定したと聞きました」 クライマックスフェイズが終わったら、佳歩さんは殺されます。その処刑は一本松が受け持つそうです。なお、一本松はわりと取り乱しているそうです。
芳江/うっ……そうなんだ……。
煙々羅/貴方は、取り乱さないんですか。……取り乱していますよね。佳歩さん、凄く良い人ですよね。とっても優しくって……。
GM/「機関に所属している以上、ここのやり方は佳歩さんも承知の上です。聯合されて大勢の知識の一部になる。そういう掟です」
煙々羅/いいんですか、行かなくて。
GM/「何が言いたいんですか」
煙々羅/僕は、会いに行った方がいいと思うから言いに来ただけです。
GM/「他に何か用事があって来たんじゃないんですか。何かを訊きたいとか、知りたいとか、押し留めたいとか」
煙々羅/いいえ。僕は、銀之助さんに悔いの無いように……動いてほしいだけです。僕も悔いが無いように、芳江ちゃんを生かすために動いてますから。
GM/「……本当に僕に、何も訊かないんですか?」 あの、GMとして確認したいのだけど……銀之助を、利用しないの?
煙々羅/銀之助さんが佳歩さんのことが好きなら顔を見に行ってほしいし、ついでに会話もしてきてほしいだけです!
GM/…………。「貴方は、難しいことを言いますね」
煙々羅/ごめんなさい。でも難しいことでも、やらないよりはマシなんじゃないですか。
GM/凄く予想外なことを言われている。でも嬉しい。……ここは、難易度12のところを難易度8まで下げた【理知】での交渉判定をしてもらおう。ダイスロールをお願いします。
煙々羅/(ころころ)おお、達成値14ですね。
GM/……煙々羅くんとの会話を、銀之助はずっと目も見ずノートと見つめ合ってしていました。銀之助は、ペンを置きます。
芳江/ぎ、銀之助さん……。
GM/キビキビとした普段から肩に力が入った態度ではなく、ふにゃっと柔らかい声になります。「どうしようかなぁ……僕、頭は良い方じゃないんです……でも、今のうちに伝えたかった言葉を言わなきゃですよね……何を言ったらいいんでしょう?」
煙々羅/……何でもいいんじゃないですか? 銀之助さんの言葉なら。
GM/勉強していた椅子から立ち上がります。「本日の貴方の夜食は、用意できそうにないです。行ってきます。……ありがとう」
煙々羅/……銀之助さん、今までおにぎりご馳走さまでした。

 『イベントキー:銀之助』
 タイミング:常時

 銀之助がクライマックスフェイズに登場しない。


GM/なお、銀之助の戦闘データがございます。敵として出てきたら厄介なデータです。でも彼は佳歩さんに最期の挨拶に行くため、クライマックスフェイズには登場しないことにします。
煙々羅/去って行く背中にペコッとお辞儀をします。バレないようにそのまま煙になって消えていきます……。


 ●クライマックスフェイズ 〜別れ〜

GM/深夜2時過ぎになってきました。……君達はついに、この機関を出ます。
芳江/ドキドキドキ、バクバクバク(笑)
GM/さて自室を出て、子供達と霞を連れて、いざ外へ。施設の外を出て、クライマックス戦闘マップに登場……なんですが。君達の前に現れる人がいます。一本松です。
煙々羅/……そうですよね! 来ますよね!(笑)
芳江/あ、あああ……一本松さん、ごめんなさい、本当にごめんなさい……(笑)
GM/子供を連れて、しかも霞を連れて、外に出る支度を済ませた君達を呼び止めない彼ではないよ。普通に芳江さんが出て行くだけなら彼も見送るけど、獣人の子供達と研究サンプルの妖怪と、佳歩の息子であり機関最高責任者の所長の子まで無断で連れていこうとするなら……。
煙々羅/止めますよね……どうする。
芳江/たとえ一本松さんに追いかけられるハメになっても、話しておきたいよ。でも、私がまだ心構えが……説得の手段が……ああああ(笑)
煙々羅/夜2時なんですよね! 一本松さん、いつ寝るの!?
GM/思わず「今でしょ!」って言いたくなってしまった(一同笑)
芳江/せめてお布団の中で寝てください!(笑) ……色々考えましたけど、芳江は、一本松さんに「見逃してください」なんて言えない。狡い手で「融通をきかせてください」って言えない。言えないんですよ……でも外に出たいんですよ……。
煙々羅/ああ、そうだね……。
芳江/……一本松さん、ごめんなさい。前に進みます。
GM/(一本松になって)「芳江。どうしてこんな時間に、外へ……?」 20歳の彼は、問答無用で斬るなんてしない。
芳江/むしろ、問答無用で斬ってくれたらどれだけ心がラクだったか……(笑) 一本松さん。私は一本松さんに、お別れに言わなくてはなりません。
GM/「別れ……?」 彼は、赤ん坊を抱いた芳江を見ます。「何があった……」
芳江/……これは、佳歩さんの最後の望みです。私はその望みを叶えるために、霞様を連れて、ここから去ります。
GM/「お前、何を言っている?」 すぐに問い掛ける。「お前がお前のサーヴァントを連れて出て行きたいというのは判る。外でも研究はできるからな。だが、その赤ん坊は狭山所長の子だろう。そんなことをしたら……!」
芳江/…………。
煙々羅/芳江ちゃんの手をギュッギュしてあげる! どこまでも伸びる、手!
GM/煙だから手もどこまでも伸びる(笑) 一本松は、芳江を気遣って声を荒げます。
芳江/少し前の私なら馬鹿なことを言っていると思ったでしょう。こんなことをする筈が無かった、でも、私は……自分が守るべき大事な命を守りたいですし、私自身も生きていたいんです!
GM/「ここで生きていくと言っていたが……?」
芳江/ごめんなさい……もう、一本松さんを、貴方だけを支えて生きていくことは、できません。
GM/…………。その言葉は、決定打だ。一本松は、口を噤みます。
芳江/はい……。
GM/彼は無言で、ウズマキからスキルウェポンを取り出します。巨大な斧です。多くの血を吸ってきた武器です。
芳江/はい……。
GM/無言で俯いていましたが、彼は視線を上げます。その目は、これからどんな目に遭わされるか判っているな、と言うかのような覚悟を決めた目です。
芳江/はい。見逃してくださいなどと言うつもりはありません。私は……私は……全力で、自分の命と、この子達の命を守ります!
煙々羅/うん、うんっ……! 芳江ちゃん、頑張って……!
GM/……ここでGMはフラグを確認します。『イベントキー:一本松』は持っていますか?
煙々羅/持ってません……。
GM/持ってませんね、事前に一本松と交流するイベントを発生させませんでしたから。ではもう一つ……『イベントキー:子供達』を持っていますか?
芳江/持ってます!
GM/一本松の前に3人の子供がいる。これがフラグの一つです。何も無ければここで戦闘開始なのですが、『イベントキー:子供達』を持っているPCは一本松に【理知】による交渉判定を行なうことができます。この交渉判定で成功したら、一本松は[1D6÷2]ラウンドの間は何もしません。
煙々羅/あああーっ……子供好きなんだね、一本松さーん(笑)
GM/彼は警備として増援を呼んで、逃げる君達を追いかけて戦います。何ターンでその増援がやって来るかを対抗判定で決めるよ。芳江さんが能動側で、一本松が受動側になります。先に芳江さんが振るんだ。
煙々羅/頑張れー! あ、判定直前に≪幻想式≫は使う?
芳江/……芳江は、この判定には魔術を使いたくない。
GM/優しい女だな。じゃあ、判定いこうか。
芳江/(ころころ)……く、クリティカル。
煙々羅/待ってぇ!?
GM/マジでぇ!?

 シリアスもシリアスの沈痛な空気に満たされていた一連のシーンに突如、湧き上がる……悲鳴。
 芳江の出した出目は間違いなく6と6で、一気に緊張の糸が解けて大爆笑になった。

芳江/待って……待って、ここでクリティカル……クリティカルかぁ!(笑)
煙々羅/クリティカルかぁ!? つ、強い女だな! さすがだな芳江ちゃん!(笑)
GM/(ころころ)こ、こっちも出目が4と5で結構良かったよ! ……なのに!? クリティカルだろ、ちょっと待ってぇ!
煙々羅/GMが本当に困ってる!(笑)
GM/だって、ここでクリティカルは……うますぎるよ!(笑) この交渉判定で成功したら一本松は[1D6÷2]ラウンド間は何もしない……つもりだったんですけど!
芳江/は、はい……でもクリティカルだと?
GM/……もしかしたら1が出るかもしれないけど、「1D6ラウンド間は何もしない」……どうでしょう?
芳江/わかりました。(1D6ころころ)……4です。
GM/良い数字だな! ……一本松はこれから4ラウンド間、何もしません。増援も呼びません。
芳江/は、はい……一本松さぁん……(笑)
GM/という訳で、突然屈んで靴紐を結び始めます。
煙々羅/大山さんロリも、みんな靴紐を結ぶのが長い!(一同爆笑)
GM/あっ、本当だ! 全然意識してなかったけどみんなしてたね、ネタ被りでごめん!(笑) でもさ、靴紐を結ぶってさ……その後に全力で走ってきそうで怖いじゃん?
芳江/ですよね! ちょっとだけ待ってくれるけど、終わった後に本気で襲いかかってきそうな感じは怖い!(笑)
GM/一本松はゆったりしています。その間に君達は、結界を解除する【体力】判定難易度15に成功するか≪鍵の番人≫で自動成功をさせてここから抜け出してください。
煙々羅/【体力】判定をします。(ころころ)うわっ、出目が1と2!
GM/ファンブルじゃなかった! 良かった!(笑)
煙々羅/ま、マスター、令呪!(笑)
芳江/……令呪を、あげます。結界を、解除してください。
GM/結界が解除されちゃったね。このままだと出放題だね。うわー、近くに一本松がいたのに、失態だねー。
芳江/い、一本松さんの責任になるんですよね! 本当にごめんなさいごめんなさい!(笑)
GM/そんなの聞いてません。彼は屈んでいるだけです。
芳江/……一本松さん、どうか、御壮健で……。声を掛けて、メジャーアクションで走り去ります!
GM/下を向いているので何も聞いてません。
芳江/……はい! 言えたから満足なんです!
煙々羅/頑張ったね。よしよし偉いぞ。マイナーアクションで≪無音の外套≫を使って隠密化します……!

 ――こうして2人は子供達と霞を連れて、広大な戦闘マップへ。
 しかし、どんなに広いマップでも4ラウンドの間も敵が出現しない彼女達を、止めるものは無く。
 多くのトラップを潜り抜けながら……2人は無事、一滴も血を流すことなく、ゴール地点でとなる森を走りきっていくのだった……。


GM/……戦闘を一回もすることなく、君達は出口まで来ました。外へと駆け下りることができます。
芳江/下まで一気に飛んでいきましょうか。
煙々羅/子供達を連れて一気に走り抜ける! 本丸がある下まで来て……見上げると、地獄のような絵があるんだよね。
芳江/振り返ってはいけません。……行きましょう……。


 ●エンディングフェイズ 〜家族〜

芳江/行きましょうとは言うけど、正直……どこに行ったらいいか判らないよね。
GM/まずは寝るところの確保かな? 山の森を抜けて駆け下りた先に……民家があって、そこに気の良い独り暮らしのおじいちゃんがいたりして、「こんな朝方に子供連れでどうしたんじゃ!?」と名も無きNPCが手を差し伸べてくれたことにします。
芳江/あ、ありがとうございます! 俯いて暗い顔をして……おじいちゃんを訊けない状態にします(笑)
GM/訳ありなのが目に見えて判るのでおじいちゃんは「泊まっていきなよ」と言うだけで、深いところまで尋ねません。あったかいご飯と寝床を恵んでくれたりします。
芳江/良い人だ……人の手って暖かいなぁ(笑)
GM/ちなみに、獣人の子供達はフードで耳を隠していることにします。
芳江/良く出来た子達だー。
煙々羅/なるべく……機関のある場所から離れたいよね。
芳江/離れるのもいいけど……敢えて都会のド真ん中に飛び込むのはありかな。人が多すぎて紛れられるよね。
GM/都会に何百人もいるから隠れられると言うしね。なら、暫く匿ってくれたおじいちゃんが援助ってことで少ないですがいくらか握らせてくれます。彼は「出稼ぎに来たけど虐待されて逃げてきた親子」だと思ってますから。
煙々羅/だいぶ盛ったけどあってるよね(笑)
芳江/盛ったというか……減らしたというか、大筋間違ってないよね!(笑) この御恩は一生忘れません……! 出稼ぎに行った所でお中元やお歳暮を贈りたい! 都会の美味しい物を贈ろう!
煙々羅/そうだね!(笑) おじいちゃん、僕達は都会に行くよ!
GM/おじいちゃんはいっぱい応援してくれます。……獣人の子供達も[稀人]と[異端者]のクラスなら成長すれば姿を変える特技を覚えます。なので耳を隠すなどして、普通の人間として振る舞って生活するようになります。
煙々羅/僕が外套シリーズを教えてやろう!(笑) 強く生きるんだぞー!
芳江/変身系の特技を覚えてくれたら、いくらでも働けるし……!(笑) そういや子供達の名前は?
GM/ありません。芳江さん達が自由に兎と犬と猫の名前を付けてあげてください。
芳江/……兎はミミちゃんだね。漢字は「美々」ちゃんで。
煙々羅/なら猫はネネちゃんでいいじゃん。「寧々」ちゃんね。ワンコは……?
芳江/ワンで、イチだから、壱くん!(笑)
GM/お名前を付けてもらえた。そして……確認するけど、霞は、芳江さんが育ててくれるのかな?
芳江/……うん。
GM/埼玉あたりの団地に芳江さんと煙々羅くんは2人で……子供達を連れて、赤ちゃんを抱いて、アパートで過ごすんだね。
煙々羅/ママー! カスミンが泣いてるよー!(笑)
芳江/よしよーし!(笑) ……暫くは霞様と呼んでいたけど、親子になろうと思い始めた頃から「霞」って呼ぶようになる。「志水 霞」になります!
GM/それ嬉しいな。もちろん煙々羅くんはお父さんになってくれるんだよね?
煙々羅/僕なんかがパパなんかでいいんですか?
芳江/いいんです。
煙々羅/煙ですがいいんですか。
芳江/人間の姿になれるでしょ?
煙々羅/ウィッス! カスミンの父さんになって授業参観に行きたい! ヤンパパの格好で出たい!(笑)
芳江/カスミンのママとして授業参観に行きたーい!(笑) そして中学卒業のときに「大事な話があります……」って言って、本当の親子じゃないって教えるんですね。
煙々羅/そっか、せめて佳歩さんの名前を教えてあげたいしな……。「実は父ちゃんは父ちゃんじゃなかったんだよ!」って言ったらカスミンは「うん」って頷きますよね!(一同笑)
GM/兎と猫と犬とも血が繋がってないことぐらい判るよ、ケモ耳が無いし……。でも煙はともかく芳江さんに「私は本当の母さんではないの」と言われたらショックで寝込む(一同笑)
芳江/煙はともかく!(笑)
煙々羅/父ちゃんだって頑張って働いて稼いでくるよ! 煙も就職するからな! 父ちゃんから子供達へ葉っぱのお金をやろう!
GM/働け。年頃になるとグレるかもしれませんが、霞達は早々に働いてお母さん達を支えるでしょう。
煙々羅/カスミンも犬も、大きくなったら就職して……。
GM/猫も普通のOLになって、兎も良い男性と出会って結婚して子供を作って独り立ちして……。でも年末年始になったらみんな、芳江さん達が住む実家のアパートに帰ってくるようになります。
煙々羅/みんないつの間にか結婚してらー!(笑)
芳江/幸せだなー!(笑) 4人の子供を抱え……生きていく。なるべく幸せに、異端などに関わらない生活をしましょう。
煙々羅/そんな生活をしていきたいね……。そして、機関が解体した頃に、再びあの地を踏もう。
GM/教会に接してなければ機関解体事件のニュースを聞くことはない。でも「ある山で火事があった」というニュースを見て「もしかして……」と察せるかな。調べようと思えば、一本松や銀之助が亡くなったことも知ることができるだろうし。……では、山火事のニュースを見た実家帰省中の霞が「冬は火事が起きやすいなー」と、おせちを食べながら言う。
煙々羅/あっ……。
芳江/……それで、狭山さんの訃報も見るんですよね。
GM/うん、霞の実の父が死んだことも知るでしょう。しかし事情を知らない4人は楽しそうに正月番組を見るのみ。猫はコタツで丸くなってる。
煙々羅/丸くなってんなー!(笑)
芳江/……佳歩さんがいかに素敵な女性だったか、いっぱい話しましょうね。母さんの憧れの人だったのよって、お墓参りをしながら話します。
GM/では数十年経って君達は思う。……あれから一回も追っ手が向けられることはなかった。赤ん坊や実験サンプルに最適な子供達も連れてきたのに。何故、今まで襲われなかったんだろう?
煙々羅/……誰かが、色々してくれたんじゃないかな。
芳江/…………。お墓参り、絶対に行きましょうね。
煙々羅/うん。行きながら、母ちゃんがみんなを背負って凄かったんだよって思い出話も絶対する! ……はあ、幸せな家族が作れた(笑)
芳江/めっちゃ幸せだ。……芳江のライフパスの『重要キーワード』は「孤独」なんですよ。孤独だったからサーヴァントを大事にしようと思っていたのに、最終的に大家族を作っちゃいましたよ!(笑)
煙々羅/で、最終的に木ノ本アパートに住むんでしょ? 機関解体事件後に教会に父ちゃんは就職しよっと!(笑) 良い家に住むぞ、ローン組んじゃうぞー!
GM/惨劇から逃れ、幸せの家庭が作れた。君達は愛する子供達と一緒に幸せになった。それ以上の戦いや波乱は、もう君達に訪れることもなく……。という訳で、無血『アナザーワールドSRS』セッションこれにて終わります。お疲れ様でしたー!
一同/お疲れ様でしたーっ!


 アナザーワールドSRS・リプレイ
  〜 マインドフォレスト 〜





END

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