アナザーワールドSRS・リプレイ・ワンアンドアナザー
■ 第5話『 蘇れ平安時代編 』 1ページ ■
1998年〜2004年(仮想リプレイ公開2017年12月30日)




 ●プリプレイ

オーウェル/あー……ちょっと次のセッションのことについて話があるんだけど、いいか?
サブGM/次のセッションのGMは私じゃないけど、それでも良ければ相談に乗るよ。
オーウェル/オーウェルが……やり直すことって、出来ないかな?
サブGM/やり直す?
オーウェル/オーウェルって死んじゃったよな。……死んでしまったことを無かったことにできないかな。第4話は楽しかったけど、でもオーウェルを退場させるのがどうしても悔しくて。
サブGM/気持ちは判らないでもないけど……でも今まで遊んだ時間を無かったことにするって、ちょっとアレかなぁって……。
オーウェル/「死んだら時間を巻き戻して生き返らせればいい」って考えをまかり通ったらゲームにならないのは判っているよ。勝ち負けがあってのゲームだしさ。……やっぱり難しいかなぁ……。

 死んでしまったことを無かったことにするのは、いけないことなのか。
 今まで遊んだ時間を無かったことにするのは、いけないことなのか。
 「死んだら時間を巻き戻して生き返らせればいい、負けたら負けを取り消して勝つまですればいい」 そんな考えがまかり通ったら、ゲームが成り立たない……。
 ――このときの台詞が何故か強く胸に刺さり、何かを突き動かす力になった。

サブGM/……確かに負けを認めなかったら、勝ち負けを決めて遊んでいるゲームが成り立たなくなるからいけないと思うよ。でも、『スーパーマリオ ブラザーズ』でマリオがクッパ手前で死んだとしても、それでゲームは終わりじゃないよね。もう一回「最初からやり直す」って代償を負って再開できるよね。
オーウェル/うん。それは『マリオ』だけのゲームの話じゃないな。
サブGM/死んだとしても、何度も何度も挑戦してクリアーしたら、楽しいよね。私は一発で『マリオ』をクリアーできないぐらいアクションゲームは下手だけど、何度もプレイし直せばクリアーできるもん。クリアーできたら嬉しいし、そのやり直した努力の時間は楽しい。
オーウェル/一発クリアーも気持ち良いけど、躓いたとしても試行錯誤してゴールを目指すのも良いよな。
サブGM/そんな努力の過程を「邪道だ」とか「いけないことだ」って言われたくはないよなぁ。……「クリアーを目指すために時間を巻き戻してやり直すこと」、良いと思うよ。

 第4話セッションで経験した大勢の死……。
 これが、のちの『アナザーワールドSRS』の基盤を作る大きな要因になった。


サブGM/ただし、復活の代償は払ってもらおうかな。
オーウェル/代償か。『仲間を復活させるための金』とかにするか?
サブGM/『ドラクエ』的にお金を払って蘇らせてくれるシステムにする? あれは戦闘不能を回復させる資金だからなぁ……オーウェル達は本当に死亡しちゃったんだし。お金じゃなくて違うものを支払ってもらおうか。
オーウェル/片目ぐらいならあげるぞ。
サブGM/あ、それ良いね。片目の視力が無くなったという演出で【反射】や【知覚】が下がったことにしようか。……体が炎に焼かれたんだから【体力】でも良いかな、火傷だらけとかの外見変化なら【幸運】でも良いかも?
オーウェル/あの炎の中から復活して良いのか?
サブGM/うーん、それってシチュエーション的に難しい? あ、それならさ、そこから死なないうちに救出する方法って……。

 という訳で。本編の第5話の前に、『オーウェル救済シナリオ』という番外編が挿入されることになったのだった。
 さて、番外編はとあるカラオケの一室で行なわれることに。
 この当時カラオケボックスはまだ珍しく、「このときがカラオケに入るのが初挑戦」というプレイヤーもいたということを覚えていてほしい……。


サブGM→GM/……では番外編セッションをやるよー! 以前やった、平安時代タイムスリップみたいなミニセッションをするよー。

▼PC1:ジーク(キャラクターレベル7)
 クラス[感応力師3/霊媒師4/異端者1]
 霊媒師より、主特技≪風霊操作≫、副特技≪地霊操作≫を取得。

▼PC2:スウィフト(キャラクターレベル7)
 クラス[魔術師7]
 魔術師より、主特技≪暗黒の渦≫、副特技≪魔の結界≫を取得。

▼PC3:オーウェル(キャラクターレベル7)
 クラス[闘士5/稀人1/聖職者1]
 聖職者より、主特技≪式神返し≫、副特技≪小さな眼≫を取得。

ジーク/わー、オーウェルだー! 久しぶりー!
スウィフト/久しぶりー! ……って、オーウェルはキャラロストしちゃったけど復活できるの?
GM/今回はオーウェルが復活できるかのミニセッションをするよ。さっきも言ったけど、前にトプさんとユーキと一緒に遊んだ平安時代タイムスリップ編みたいなのノリのを想定している。
オーウェル/今後どうなるか判らないが……前と同じによろしくお願いします(笑)
GM/どうなるかはみんな次第だねー。さて、ここでジークとスウィフトに確認をしておきたい。オーウェルを復活させたいと思う?
ジーク/もちろん!
スウィフト/死んでほしくはないよ。
GM/即答だった。……ありがとう、その一言で3人でのセッションが始められるよ。


 ●オープニングフェイズ1 〜事の始まり?〜

GM/「オーウェルを復活させたい」 そう思ったジークとスウィフトは、いつの間にか異空間に投げ出されていた。上も下も右も左も渦が巻いたような不思議な空間だ。
スウィフト/わっ、いきなりどこだ!?
ジーク/うーわー、何なんだここはー? ふよふよー。
GM/通常の世界とは違う、時間の流れも普通とは違う空間だ。……とある渦に飛び込めば、ここじゃない世界に行けるかもしれない。2人の第六感がそう告げる。
ジーク/じゃあ飛び込む!
GM/早っ!?(笑)
ジーク/ぐるぐるあーれー。
スウィフト/予想の数倍早い!(笑) せめてどんな世界に行けるかとか確認してから行こうよ!? ジークは即決・即断・即行動すぎるよっ!
GM/渦の中に入って行くジーク。……いや良いんだけどね、動いてくれなきゃシナリオが進まないからね(笑) スウィフトもジークを見習って、どうぞ。
スウィフト/アッ、ハイ(笑) 普通は「ここはどこだ?」「どうすればいいんだ?」とか話し合ってから進めないかなぁ……ジークらしくて良いけど。よいしょっとジークが飛び込んで行った渦に入ります!
GM/そうして2人はここではない世界へと飛んでいくのだった。
オーウェル/…………。
スウィフト/…………。
GM/……オープニング、終了。
ジーク/短くね?
GM/無駄なく短縮してくださったのはジークさんのおかげですよ?(一同爆笑)


 ●オープニングフェイズ2 〜再会、そして?〜

GM/えーと……色んな説明をしてから本編に入りたいので、もう少しオーウェルは出番を待っていてくれませんか(笑)
オーウェル/うん……何か色々と飛ばし過ぎて俺が登場できなくなっているのを察したから、頑張れ(笑)
GM/その通りだからね! 今度こそしっかりとシーンをやっていくよ!(笑) さて、ジークとスウィフトが渦に飛び込んだ後……気が付くと、見たことがない場所に立っている。あの渦は、見知らぬ場所へのワープの入口だったようだ。
ジーク/やっぱりな! どこかに繋がっているとは思ってたんだ!
スウィフト/そのどこかが一切判らないままワープしてきちゃったね(笑)
ジーク/上も下も右も左も判らないような場所でどこかに繋がっていたか判ると思う? 行ってみなきゃ判らないもんだよ。
スウィフト/それは同意だけど……。で、ここはどんな場所?
GM/街灯は一つも無い。でも一直線の整備された道がある。コンクリートではなく砂と土の道だけど、一直線に伸びて整理された建物と道の区画を見て……発展した人々が生活しているなと思う。曲がり角の無い四角い街だな。どこかは判らないけどどこか見たことがある造りだ。
ジーク/つまり……どういうこと?
スウィフト/GM、住所が判りそうなものは見つかる?
GM/残念ながら電信柱も無ければ看板も無い。そんな近代的な物は見当たらない。道幅は10メートルぐらいあって、それが一直線に伸びて人々が行きかっており……周囲を見渡せば、着物姿の日本人達の姿がある。
ジーク/ははぁ、ここは日本は日本でもやっぱタイムスリップしてる感じだなぁ。
スウィフト/……平安京じゃないかな? 四角くって広い道があって日本ぽいけどしっかりした街並みなんでしょ?
GM/うん、その通り。スウィフトは……ここが平安京と呼ばれる場所っぽいなと思った。周りの人々が旧時代的な衣装なのも判りやすいね!
スウィフト/ジーク。また1000年前にタイムスリップしてきたみたいだよ。
ジーク/えー、今度タイムスリップするなら500年前か1500年前に行きたかったよー。いつか出来るようになるかな!?
スウィフト/なんだよその自信。……きっと渦の中で住めるようになれば自由にタイムスリップできるようになるよ。根拠は無いけど。
GM/そんな会話をしていると、周囲の人達がヒソヒソヒソヒソと話し合っているのが見える。
スウィフト/おっ、なんかヒソヒソされたよ。
ジーク/すみませーん! 皆さんどうしましたかー!?
GM/(ヒソヒソしていた人達になって)「うわっ! こっち来た!?」「何かデッカいのがこっち来た!?」「鬼じゃね!? 逃げろー!」「陰陽師を呼べー!」
スウィフト/怯えられてる。
ジーク/おーい! 俺が陰陽師なんだけどなー!?
スウィフト/……あれって、僕達を見てヒソヒソしてたやつだよ(笑)
ジーク/やべっ、このままだと陰陽師が来てグルグル簀巻きにされるよ。
GM/陰陽師が来てジークはグルグル簀巻きにされました。
スウィフト/既に!? された!?(一同笑)
ジーク/早い早い早いっ!?(笑) 少しは人の話を聞いてから行動しなよぉー!?
GM/狙って言ったとしてもお前が言うな(笑) という訳で、駆けつけたこの時代のおまわりさん的能力者の陰陽師さんがやって来たんだけど……。ジークをグルグル簀巻きにした男が「うん? 君達は、もしや……」と言うよ。思いっきり聞いたことある声だよ。
スウィフト/うん? 聞いたことある声の陰陽師さんって……。
ジーク/もしかして! もしかしなくても! いつかのリーダーさん!? ここにトプさんがいたら「ドクターTが!」って喜んだよ!
GM/それは知らんわ(笑) はい、いつかのリーダーこと、陰陽師の橘さんが登場です。(橘になって)「君達、まさか京にやって来ていたのか? またそんな大勢にジロジロ見られそうな目立つ格好で……!」
スウィフト/お、お久しぶりです……って言うべきなのかな?
GM/ジーク達的には1週間も経ってない。けど彼は「半年月ぶりだな、変わりなくて何よりだ」と手を合わせるよ。
ジーク/おーおー、つい最近ぶりー! 村での鵺退治が終わったの? だから都会に戻ってきたのかな? 簀巻きのまま見上げて話すよ。
GM/「鵺退治は君達がしてくれたからな、暫く周辺地域の警備と復旧活動をして……全部の任務が終わったのは2ヶ月ぐらい前か。あのときは君達に苦労を掛けた、感謝してもしきれないぐらいだ」 簀巻きのまま見下ろして話すよ。
スウィフト/ジークをほどいてあげてください(笑) ……ここは、京都であってる?
GM/「ああ、ここは京だが。……判らないまま来たのか? あそこに門があっただろ?」
スウィフト/京の門っていうと、有名どころで羅生門?
ジーク/羅生門ってアレだろ! 鬼が住んでいる所!
GM/「その通りだが……頼光四天王が倒した茨木童子の話か、もう何年も前の話だが覚えている奴は覚えているんだな」 あの伝承は安倍晴明最盛期と同じ頃で、この時代はあれから約10〜20年後ということにしている。……正直GMはその辺の歴史が曖昧なので間違ってたらごめん(笑)
スウィフト/とりあえずここが1000年前の京だって判った。鬼も討伐された後の平和な京都なんだね?
ジーク/そっかー、平和なのに俺「鬼じゃね!?」って疑われたのかー(笑)
GM/この時代の日本人には2メートル近い鼻の高いドイツ人は怖いと思うよ……(笑) 橘さんは「君達、これから何か予定はあるのか? どこかに行くとか、何かしなければならないといった予定は」と尋ねます。
スウィフト/それが、ぜーんぜん。
ジーク/何故この時代に来たのかも判らないんだな! とりあえずタイムスリップしてきただけだしね!
GM/「もし良ければ、また君達の力を私に貸してくれないだろうか」
ジーク/いいよ。
スウィフト/まず最初に話を聞こうよッ!(一同笑) まず! 最初に! 話をしてください!
GM/う、うん……(笑) 「悪名高き鬼の頭領が討伐されて既に10年以上が経過したが、この京では人外の数が多いのは君達も知っている通りだ」
ジーク/そうなんだ。
スウィフト/そうなんだ。
GM/そうなんだよ。「人外は忌み嫌われる。人間とは決定的に道理が異なる生き物だからな。『負の感情』を好物とし、人々を痛めつけて苦しんで餌とする妖怪もいる。だが、そうでない人外もいる」
ジーク/そうなんだ。
スウィフト/ジークもオーウェルもドレークもトプさんもユーキもそういう人外でしょ。ドリスや広く見たら魔術師の僕だって真人間とは言えないよ。
GM/ほんとこの卓、人じゃないもの多いよな……(笑) 「私は友好的な人外達と関係を持つようになった。鵺のような恐ろしい妖怪は人々の為に狩らねばならんが、いずれ協力関係を築き上げたいと考えている」
スウィフト/……凄いことを考えてますね?
ジーク/出来る大人っぽい。
GM/きっと出来る大人なんだよ、この人。「まずは……私は彼らから、人間には無い知恵をくれないかと交渉した」
スウィフト/へえ、『人間には無い知恵』?
GM/「長く生きた異形の中には、人知を越えた知恵を得ている者もいる。我らの知らない高度な技術を多く持っているから、無知な人間に恵んでくれないかと先日交渉したばかりなんだ」
スウィフト/な、なんか凄いことをしてるね……?(笑)
GM/「先日妖怪達と交渉した結果、知恵を分けてやってもいいがその代わり『自分達を楽しませろ』と言われた。そして……『欲しいものがあるなら戦って勝ったらくれてやる』という話になった」
ジーク/シンプルな要求だ! 『戦って勝て! 勝ったらくれてやる!』、判りやすい!
GM/「そこでツワモノを募ったんだが……残念ながら一人も集まらなかった。集まらないものは集まらなかったんだから仕方ない。私一人で行くだけだ。しかし君達が良ければ協力してくれないだろうか?」
スウィフト/……どうするつもりだったのの、一人も集まらなくて?
ジーク/さくっと言ってるけど……お兄さん、一人で勝てるの?
GM/「一人だが勝つしかなかろう。しかし手助けがいてくれたらどんなに心強いか」
ジーク/んー、鬼退治したらお宝を持ち帰るのが定番だよねー! きっと何か良い物が貰えるよねー! 参加して無意味ってことは無いと思うなー!
スウィフト/ジークって前向きに自分の好きな解釈するよね……(笑) えっと、妖怪から貰える知恵って……具体的にはどんな知恵なの? それと戦ってでも欲しい知恵って何?
GM/「何でも斬れる刃の鍛刀技術、どんな怪我でも治してみせる魔法の薬の調合、より強力な護身九字、手を使わずとも物を動かす超能力、吉凶天変地異の予言法、魂の転移、高望みするなら空間転移・空間歪曲・時間跳躍の呪言を教授願いたいところだが……」 おや、2人はその中で『どんな怪我でも治す薬』と『時間跳躍』が気になったね。
ジーク/漢字が多い話はちょっとやめてくれない?
GM/陰陽師なんだから漢字ぐらい努力しなよ!(笑)
ジーク/時間跳躍をタイムスリップって訳すぐらいの優しさが欲しい。ドイツ人にしては努力してることを評価してほしいなって。
スウィフト/なんでジーク、そんな堂々としてられるの……?(笑) あのさジーク、妖怪は時間跳躍の知識があるんだって。教わったらさっき言ってた「自由なタイムスリップ」が可能になるかもよ。
ジーク/あ、それ便利じゃん! 戦って勝てば手に入るんだったら戦わなきゃだな!
スウィフト/さらに言えば……どんな怪我でも治す薬があれば、死ぬぐらいの大怪我をしても治せるかも?
GM/橘さんは「それが一番欲しい知恵なんだ」と言います。彼はおまわりさんでもあり僧侶とかお医者さん的な立場でもあるので、医療技術の向上には大変意欲的みたいだ。ちなみに、平安時代頃から日本最古の医学書とか薬学書とかは編成されているらしいよ。
ジーク/おまわりさんで僧侶でお医者さんって忙しい人だな。
スウィフト/それで妖怪と戦うって、何かこの人……色々凄すぎないか。
GM/「私が天才だから為せるワザだな」
オーウェル/こ、こいつ……(笑)
GM/でもって名字からして貴族だしな。「どうだ、一緒に来てくれないか? もちろん無償で働かせることなどしない。礼はする」
スウィフト/僕達にもその知恵をいくつかくれるって言うなら……この時代に来た価値があるって言えるだろうしね。
ジーク/むしろそのためにタイムスリップしに来たのかも!? 手伝おう!
GM/「手伝ってくれるのか、ありがとう。以前一緒だった仲間達はいるか? 彼らにも協力をしてもらいたいんだが」
スウィフト/あー……ユーキとトプさんは。
ジーク/あいつらならいないよ。
GM/その言葉を「今は、いない」と受け取ったか、それとももっと悲しい意味で受け取ったか……君達には判らないけど、橘さんは「そうか」と静かに短く頷いておく。「では約束している羅生門に向かおう。交渉に応じてくれた彼らは、今夜現れると言っていた」 今の時間は夕方4時ぐらい。そろそろ暗くなる頃だ。
ジーク/夜に戦うんだねー、頑張らないとだねー!
GM/「君達がいてくれたなら良い結果が生まれるだろう……」と話している橘さんは、妖怪が待っている羅生門に行こうと言い始めるんだけど、そこで「止まれ」と歩みを止める。
ジーク/うん? どうした?
GM/「……迷える魂がいる。天に昇ることが出来ずに彷徨っている哀れな霊だ」
スウィフト/幽霊……?
GM/「ヒトは死ねば天に還る。また新しい生を受けるまでこの世とあの世の狭間を巡る。しかし無念のうちに死んだ者は現世が名残惜しくて、なかなか天に逝けないんだ。……おそらくあれは不慮の死を遂げた魂なのだろう」
ジーク/地縛霊ってやつかなー。
GM/橘さんは呪文を唱える。するとその呪文のおかげか、薄暗くなっていた中で……ホワッとヒトダマが飛んでいるのを2人は目で確認することができた。ふわふわと光が飛んでいる。
スウィフト/姿が無い……魂……。
GM/その魂がオーウェルです。オーウェルはシーン登場してください。
オーウェル/…………俺っ!?(一同笑)
GM/ジークとスウィフトは「あれオーウェルじゃね?」って不思議な力で気付いてください。
ジーク/不思議な力で? メタの力で?(笑)
スウィフト/なんか重要NPCとかこれからのボーナスイベントとかでもなく仲間だった!(笑) お、オーウェル! ……の魂! オーウェルもタイムスリップしてきたのー!?
オーウェル/え、えーと……。
GM/どうぞシーン登場してください。
オーウェル/…………。えっと…………。いや、無茶言うな。体が無いシーン登場って難しいぞ(笑)
GM/予想以上に戸惑われてGMは驚きである。そう、あれです、オーウェルは炎の鳥によって燃やされて死にました。魂がウズマキの中に収容されました。ふよふよしているうちにジーク達と同じく平安時代にタイムスリップしたんです。魂だけ。
オーウェル/た、魂だけ……?(笑)
GM/なので今日のオーウェルは……バスケットボールぐらいの大きさの光でよろしく。
ジーク/わりと大きかった!? 野球ボールぐらいの大きさだと思ってた! 魂って大きいんだな!?
スウィフト/待って、僕は卓球の球ぐらいの大きさだと思ってたんだけど!?
オーウェル/それだと俺、小さすぎね!?(笑) せめて……大玉転がしぐらいの人型サイズぐらいあると嬉しいんだが。
GMジークスウィフト/それデカすぎるから却下。
ジーク/じゃあバスケットボールぐらいの光が現れて……俺が真っ先に気付くよ! わぁー!? オーウェルじゃんー! 久しぶり、1週間ぶりー!?
オーウェル/そんなフランクに話し掛けられても!?(笑) え、えっと……ここは……俺は一体……?
スウィフト/よく自分の体を見るといいよ、バスケットボールぐらいの光だから。……光だけど目があるんだよね?(笑)
オーウェル/な、なんだこれ……俺が光の球体になってる……よく判らねぇ……(笑)
ジーク/上から下まで球体の光だ。服でも着る?
オーウェル/全裸なのか俺!? ……いや、もうツッコまないぞ……光の球体に衣服も何も無いし……(笑)
GM/橘さんは「そうか君達の知り合いなら私を手伝ってくれるよな」と超納得します。
スウィフト/話が判る人だな!?(笑)
GM/断ると「私の味方じゃないならこのまま成仏させるまで!」と言って速攻、天に還します。
オーウェル/有無を言わさず殺される気がする!?(笑)
ジーク/オーウェル、もう死んでるけどね!(笑)
GM/……もう! あれだよ! このセッションは妖怪と戦って勝って何か貰ってそれでタイムスリップなり復活すればいいじゃんってやつだよ! そういうやつです、よろしく!
オーウェル/GMにぶっちゃけられた……うん、頑張って魂のまま戦って勝つよ……(笑)
スウィフト/途中まで平安時代の雰囲気作りとか頑張っていたのに……(笑)
ジーク/前もそうだけどなんで平安時代なんかに来たの?
GM/ジークが謎の陰陽師推しをするからそれっぽく努力したんだけど!?(一同笑) それでは今回のミニセッションのルールを説明するよ。……ところで、ここはどこでしょう?
オーウェル/平安京?
GM/いえ、ここはカラオケボックスです。せっかくなので、カラオケをして採点機能で勝敗を決めます。
ジーク/マジで!? 俺、カラオケって初めてなんだけど!?(笑)
GM/私もカラオケはしたことあるけど採点機能を使うのは初めてなんだ! どうしよう0点とか出たらショックで寝込む!(笑)
スウィフト/大丈夫だよ、カラオケは声が出ていれば50点が出るから(笑) どうやって勝敗を決めるんだ?
GM/……平安時代って言ったらあれですよ、雅でエレガントでやんごとない歌バトルが日常茶飯事な訳ですよ。
スウィフト/……お、おう。
GM/知識の長けた物の怪の皆さんも、貴族の橘さんも、歌ぐらいバンバン詠めちゃう訳ですよ。だからみんなもそれで戦ってもらいます。
オーウェル/……俳句とか読めない現代人の俺達が絶対不利だし、俺らに協力をさせなくても橘さんだけで勝てるんじゃ……?(笑)
GM/いやいや、そこは未来人による未知の歌パワーが勝利の要になる訳で。
スウィフト/未来人による未知の歌パワー!?(笑)
GM/スキルウェポンで妖怪を倒しつつ俳句を詠む。優雅に物の怪が退散する。力と知恵のやり取り! 戦いにもエレガンスが求められるこの時代! 何より人と妖怪の間に生まれた和睦の道に純粋な力勝負はいらない訳で! 知恵を求めたこの応酬には武力以外の解決は必要でしょう!?
ジーク/GM、平気?
GM/ごめん、自分でも何を言ってるかもう判らない。
オーウェル/無理しないでもう概要だけ話してくれないか……(笑)
GM/はい、話します。つまりこういうことだよ……。

(1)GMが難易度を[1D6+3]×10で設定する。
(2)PCがカラオケの採点で、GMが設定した難易度以上の点数を叩き出せば勝利。
(3)難易度以下の点数を出して敗北した場合、難易度設定の際に出した[1D6+3]点の【HP】ダメージを受ける。
(4)羅生門で立ちふさがる妖怪達は全部で4体。


オーウェル/これって……もしGMが1D6を振って6を出したら、カラオケで90点以上を出さないと勝利できないのか。
GM/その通りだよ。私の出目が低くなることを祈れ。
ジーク/順番はどうやって決める?
GM/先にGMが難易度を設定するから、その後に誰が勝負するか決めていいよ。という訳で橘さんに連れられたジークとスウィフト、オーウェルの魂は噂の羅生門にやって来ました!
スウィフト/うわー、立派な門だなー。
GM/……羅生門ってボロボロなんだっけ? まあ物の怪達の住処っぽく禍々しく格好良い感じです! そこには4人の刺客が待ちわびていた! 君達の勝負を受けて立つ妖怪四天王が!
ジーク/お前らが、カラオケ四天王か!
GM/そう言われると安っぽいなぁ!?(一同笑) 「よくぞ来たな……人間ども、我々の高位な知恵が欲しいという身の物知らずで浅はかな連中め。半数は人間ではないように見えるがよく来たな!
スウィフト/1人はオーガ族で、1人は魂だけだもんなぁ(笑)
オーウェル/お、俺……魂だけなのにカラオケしなきゃいけないのか(笑)
ジーク/滅多にいない挑戦者だから番組的には大盛り上がりだよ。橘さん、とりあえずあいつらに何か言ってあげて。
GM/(橘になって)「本日はカラオケ大会にお集まりいただき誠にありがとうございます」
スウィフト/(妖怪達になって)「いえいえ幹事さんお疲れ様です」(一同爆笑)
オーウェル/普通に懇親会じゃねーか! もっと妖怪大戦争っぽいもんじゃなのか!?(笑)
ジーク/いいじゃん仲良くやれそうで。どんな妖怪が集まってるの?
GM/えーと、実は私……モンスター関係に全然詳しくなくってね。妖怪とか物の怪とか怨霊っていったらアレでしょ……エントリーナンバー1番、菅原道真。
スウィフト/いきなり来ちゃいけない人が来ちゃったよぉ!?(笑)

 菅原道真。
 平安時代(800〜900年代)の貴族であり、学者であり、政治家。平将門、崇徳上皇に並ぶ日本三大怨霊の一人。
 死後に天変地異を多発したことから朝廷に祟りを成した怨霊として知られる。学問の神として有名。


オーウェル/……知恵を与えてくれる怨霊としては、学問の神だし確かに適任とも言える(笑)
GM/あとね、菅原道真が没してまだ100年程度しか経ってないんだ。妖怪や物の怪・怨霊界ではニューフェイスでございます。だからトップバッターなの。
スウィフト/そっかぁ……ならお手柔らかにお願いします。菅原道真と歌バトルって凄いことになってるぞ……(笑)
GM/(道真になって)「えへへ。歌を唄いながら戦うなんて斬新な新企画、まさかのトップバッターでドキドキしていまーす。よしなに!」
ジーク/うんうん! 自分の出せる力を出しきれると良いね! お互い頑張ろう!
スウィフト/日本三大怨霊に対してフレンドリー!(笑)
GM/「一番、道真! 歌いまーす!」「イェーイミッチー頑張れドンドンパフパフー!」 なんだこれ。
オーウェル/GM、もうちょっと頑張ろう!(笑)


 ●ミドルフェイズ1 〜至高の歌バトル・ジーク編〜

GM/では早速、バーサス道真の難易度を設定するよ。1D6を振って(ころころ)……2! ありゃ、これはPC側に持っていかれたかな。
ジーク/おっ、低い。……50点以上出れば勝ちか!
スウィフト/あ、これイケる! 勝てるぞ!
ジーク/トップバッターは俺からにさせてくれー! カラオケは初めてなんだー! 勝てそうなところで勝負しておきたい!
スウィフト/じゃあ最初はジークから頼んだ!
ジーク/(歌本をパラパラと捲りながら)知っている歌……知っている歌……キンキキッズの『フラワー』とか?
GM/お、キンキだ! それでいく?
ジーク/とりあえずこれで! ……いくぞー!

 ――ジーク 歌唱中――。

GM/はい、お疲れ様ー!(拍手ぱちぱちぱち)
スウィフト/わーわー(拍手ぱちぱちぱち)
オーウェル/わー、今からすげー自分の番に緊張してきたー(拍手ぱちぱちぱち)
ジーク/わーわー(拍手ぱちぱちぱち) ……何やってるんだろ、俺。
GM/そこで冷静になるなよ。歌、良かったよ! 初めてなのに凄く上手かったし! で、点数は……。
ジーク/…………。
スウィフト/…………。
オーウェル/…………。
GM/…………。点数は?
ジーク/……あれ?
スウィフト/点数が出ないぞ?
オーウェル/カラオケの点数って歌った後に出るんだよな?
GM/そうでないと採点にならないからねー……あれぇ……?(操作法を調べる)

 当時、まだカラオケボックスに行ったことのなかった田舎者一同は、カラオケの操作に四苦八苦すること数分。
 「採点モードを起動しなければ歌っても採点されない」ということに気付くのは、それからさらに数分経った後の話――。


GM/……えー、つまり、採点は無しです。
ジーク/……ただ歌っただけになった?
GM/そういうことです。……ごめん、これはGMの確認ミスなので、0点じゃなくて……不戦勝にしてもいいですか?
ジーク/不戦勝でいいの? もう一回歌えじゃなくて?
GM/道真さんはジークの歌声を聞いて「なんて前衛的な歌なんだ……」と感動しその場で泣き崩れてしまいます。
オーウェル/道真さん泣いちゃった!?
GM/「評価なんていらない! 私は彼の歌には勝てない! 『僕らは愛の花咲かそうよ 苦しいことばっかりじゃないから』なんて歌詞は書けない! 『こんなに頑張ってる君がいる 叶わない夢は無いんだ』なんて素晴らしい! 満点だ、どうか勝利してくれー!」 感涙のあまりジークの圧倒的勝利を収めます。
スウィフト/勝利したジークさん、一言どうぞ。
ジーク/仲間達が応援してくれたおかげです。
オーウェル/腑に落ちないような顔をしながら言うなよ。
ジーク/イェーイ、勝っちゃったー。……唐突に『だんご三兄弟』で勝負を挑みたくなった。だんごの歌詞をどう褒めてくれるんだろう?
GM/GMの語彙力を試すような挑戦はやめてくれ。


 ●ミドルフェイズ2 〜至高の歌バトル・??編〜

GM/道真さんはジークの歌にえらく感動したのでジークにサインを強請ります。
ジーク/ハハハ、はしゃぐな、はしゃぐな。
GM/しかしここで負けてられない! きっちり採点モードになっているのも確認した! なので次のバトルにいきます! エントリーナンバー2、玉藻の前!
スウィフト/また凄い有名どころが来たなぁ!?(笑)

 玉藻の前。
 平安時代の鳥羽上皇の寵姫。九尾を持つ妖狐の化身。若い女性ながら大変な博識と美貌を持ち、各国の諸王を誑かせる大妖怪。
 安倍晴明が唱えた真言によって変身が溶かれ、正体を現し、那須野で討伐された。


スウィフト/そうか、玉藻の前も賢者として有名なんだっけ。でもって天皇付きの才女なら、多くの知恵も歌の才能も持ってそう……。
GM/(玉藻の前になって)「オホホホ、私に敵うと思って?」 セクシー美女なお狐様が勝負を仕掛けてくるよ。おっぱい大きいうっふん美女ってやつです。呪術も使うパーフェクトウーマンです。いかにもオーラが超強そうな大妖怪だ。
ジーク/普通に戦ったら勝てそうにない相手っぽいな。
GM/しかしここは雅なバトルだ。それでは難易度設定を……(1D6ころころ)わっ、5だ。
オーウェル/80点以上で勝利か。高いな。
スウィフト/ここは……頑張ってもらうしかないね。
GM/誰に?
スウィフト/橘さんに。
GM/……はいいぃ!?(笑) えっ!? なんで!? なんで私が決めた難易度に私が参戦するの!?
スウィフト/だって4人いるんでしょ。そしたら橘さんも参戦しなきゃダメじゃん。
オーウェル/あ、確かにそうだな?
GM/いやっ! そこはちょうど良く3人いるんだから不戦勝で勝ったジークが本番をやればいいじゃん!?(笑)
ジーク/俺はさっき勝ったし。道真さんに書くサインで忙しいし。
GM/何分間サインを書いてるんだよ!?(一同笑) ……でも、カラオケ採点は楽しそうなんで挑戦してみるね(笑)
ジーク/橘さんファイトー! ……玉藻の前は陰陽師の安倍晴明によって化けの皮が剥がされてるんだよね。陰陽師に対する風当たり滅茶苦茶強いと思う。
スウィフト/(玉藻の前になって)「あいつだけには絶対に負けねぇ! 絶対呪い殺してやるッ!
GM/歌で! 歌で勝負をお願いします玉藻さん!(笑) まぁきっと橘さんは「こんな素敵なお嬢さんの前では負けてしまうかもしれないな……だが最善を尽くすだけだ」とサラっとしてますが。
オーウェル/いい奴ロールしやがった。
ジーク/橘さん、この中じゃ一番の美形だろ?
GM/じゃあ美形で。
スウィフト/この時代で博学で官僚やってるなら家柄も良い。性格も正義感が強くて良い。なおかつ美形。
ジーク/陰陽師達のリーダーもしてる。妖怪とも渡り合っている。俺達の風当たりも滅茶苦茶強いと思う。
GM/えっと、そろそろ選曲するね……?(笑) 私が歌える曲を探した結果……野猿の『Be cool!』でいいかな?
ジーク/橘さん……。
スウィフト/橘さん……。
GM/なんだよその目は。野猿は良い歌だぞ。

 ――GM 歌唱中――。

GM/うわ、思ったよりこれめちゃくちゃ恥ずかしい。そして無駄に緊張する! 採点結果は……おおっ、88点!?
ジーク/おおおーっ! おめでとうー! ありがとう勝利ー!(拍手ぱちぱちぱち)
オーウェル/こ、これ……後々どんどんプレッシャーが掛かってくる……(拍手ぱちぱちぱち)
スウィフト/さすが現役の貴族は違う!(拍手ぱちぱちぱち) という訳で玉藻さん、負けてしまいましたがコメントをどうぞ。
GM/(玉藻になって)「過ちに気付いているのさ、いつでもどこでも愚かな時代! 深いわぁ……!
ジーク/「神よ! そこにいたら何か言ってくれ!」って、この陰陽師は結構激しい歌を唄うよね。
オーウェル/しかもラップだしな。
スウィフト/陰陽師がラップするとは思わなかった。
ジーク/呪文を唱えたりするからラップぐらい楽勝だよ! 橘さん顔も良いから相乗効果で勝利したんだよ! 歌がうまい男はモテる時代だし! 100人ぐらい女を抱いたことあるんだろ!? いよっ、88点!
GM/「さすが私」
オーウェル/否定しねーし!(笑)
GM/なんだろう……今更だけどこんな戦闘にしてごめん……(笑) つ、次のバトルにいこうか!


 ●ミドルフェイズ3 〜至高の歌バトル・オーウェル編〜

オーウェル/……さ、先に唄っていいかな……唄わなきゃいけないっていうプレッシャーが……もう……(笑)
GM/あ、うん、さっきから胃が痛そうな顔をしているからオーウェルが次に唄おうね(笑) という訳で3回戦です。お相手は、茨木童子です。
スウィフト/えっ、ここで登場しちゃうのかよ。

 茨木童子
 平安時代に京都を荒し回ったとされる鬼の一人。「羅生門の鬼」として有名。


ジーク/俺、よく歴史のこと知らないけど、羅生門のボス的な鬼なんだよね? 3回戦で出て大丈夫?
オーウェル/というか茨木童子は10年ぐらい前に安倍晴明に倒されたんじゃないのか。
GM/羅生門の茨木童子を倒したのは渡辺綱って言われてるね。安倍晴明は「鬼が何かしてるよー」って茨木童子達の悪さを暴いた人。この茨木童子はかつて倒された鬼の亡霊です。しかし強いのには変わりないよ!(1D6ころころ)……4だ。
スウィフト/70点以上出せば勝ちか。イケるだろ。
オーウェル/だからプレッシャーを掛けるなよ……(歌をペラペラと探しながら)ブラックビスケッツの『Timing』なら知っている歌だ。
GM/「タイミングなら振りつけ判るし踊れるぜ」と茨木童子が言います。
スウィフト/踊ってくれるの!?
オーウェル/なんで対戦相手が踊るんだよ!?(笑) 一応バトルなんだよな、これ!? もうちょっといがみ合うとか……!
GM/平和の歌を前にして戦争は無意味なんだよ。自分でももう何言ってるか判らないし茨木のキャラも定まってないから早く唄って。
オーウェル/酷いGMだ……(笑)

 ――オーウェル 歌唱中――。

GM/わーわー、お疲れ様ー。(拍手ぱちぱちぱち)採点結果は……お、77点! 勝利だ!
オーウェル/よ、良かった。勝てた……本当に良かった(笑)
スウィフト/お疲れー。(拍手ぱちぱちぱち) 相当なことが無い限り50点以下ってカラオケでは採点されないのかな?
ジーク/大きな音を出すだけで採点は上がるって聞いたことあるよ。負けちゃった茨木さん、コメントをどうぞ。
GM/えっと……なんだっけ、あれだ。「人生、我がいっぺんのくちなし?」
オーウェル/何もかも間違っているしキャラ定まらなすぎだろ(笑)


 ●ミドルフェイズ4 〜至高の歌バトル・スウィフト編〜

GM/さて、ラストバトルはスウィフトの番で。
ジーク/(←部屋にあったタンバリンをシャンシャンシャンシャン鳴らし始める)
GM/うるせえ! なんだそのタンバリンめっちゃうるさいな!?(笑)
ジーク/(タンバリンをシャンシャンシャンシャン鳴らしながら)スウィフトの点を少しでも上げようと思って!
スウィフト/(タンバリンをシャンシャンシャンシャン鳴らされて)うるさいなぁ!?(笑) 応援だけしてくれればいいから! タンバリン置けよぉ!
GM/えーと……四天王の最後の一人がやってきます。ラストは大御所です。名前を荼枳尼天さんと申します。
ジーク/ダキニテン?
スウィフト/……GM。1人だけジャンルが違う。
GM/菅原道真と玉藻の前と茨木童子の時点で物の怪ジャンルも何も無いと思うんですが。
オーウェル/自覚あるなら最初から天狗と河童あたりにしておけよ……(笑)

 荼枳尼天。
 仏教の神。夜叉(鬼神の総称)の一種。
 豊穣を司る女神で、人の魂を食う代わりに欲望を叶えるという欲の神。好戦的かつ貪欲な姿勢から開運出世、商売繁盛、福財をもたらす者とされる。


オーウェル/橘さんは「神様自ら知恵をご教授してくれるなんて」と頭を下げていそうだな……。
GM/(橘になって)「交渉してみるもんだな。私って凄くね?
スウィフト/「菅原道真と玉藻の前と茨木童子と荼枳尼天とカラオケしに行ったことあるけど何か質問ある?」ってスレが立てられる世界唯一の平安陰陽師。
GM/スレタイ長すぎ。
オーウェル/そういう問題じゃねえ。
GM/荼枳尼天さんは、玉藻の前とは違ったセクシー美女です。玉藻お姉さんが女の色気って感じなら、こっちの彼女は凛々しい女戦士って感じ。「ククク、人間どもよ、よくここまで生き延びてきおった。褒めてつかわそう……」と大変、上から目線!
ジーク/(←突然バタンとカラオケの部屋を出て行くプレイヤー)
GM/…………。
スウィフト/…………。
オーウェル/…………。
ジーク/(←ジュースのおかわりを持って帰ってくるプレイヤー)あれ、まだ選曲決まってないの?
GM/突然いなくなったから荼枳尼天もビックリして言葉失ったわっ!?(一同笑)
ジーク/だって時間が押してるしジュースおかわりしたかったし。荼枳尼天さんコーラ飲む? 昔の人には口の中、痛いと思うけど?
GM/荼枳尼天にコーラを渡すと「捧げ物とは判っておるなゴクゴクなんじゃこりゃああああ口の中プチプチするううううううう!?」とさらにビックリしちゃうわ。
スウィフト/「荼枳尼天にコーラ飲ませた人間とオーガ族とのハーフのドイツ人陰陽師だけど何か質問ある?」ってスレが立てられるよ。
オーウェル/後半の情報だけで「把握した」って書き込まれるぐらい具体的だな(笑)
GM/時間が押してるって判ってるならラストバトルいくぞ!(1D6ころころ)……うおっ、5だ。80点以上で勝利だよ!
オーウェル/高い! さ、先に唄っておいて良かった……!(笑)
スウィフト/わあ、微妙なラインだ。唄う曲は決めてある、機動戦士Vガンダムのオープニングテーマ『STAND UP TO THE VICTORY』にするよ。
GM/わーい! GM、その歌好き! 歌詞も大好き!
スウィフト/よく歌ってたし聞いてたから歌詞も大体判る。ノリが良いから勢いで点数が稼げそう。
オーウェル/おー、頑張れー。

 ――スウィフト 歌唱中――。

GM/わーわー! お疲れ様ー!(拍手ぱちぱちぱち)……途中でGMも一緒に唄ってしまった。
オーウェル/荼枳尼天も一緒に唄ってたんじゃねーか(笑)
GM/いや、そこはラスボスの荼枳尼天さんは容赦をかけない。敵に塩は送らない女戦士なので、橘さんがスウィフトのサポートしたってことにしてください。
ジーク/2人の合体攻撃で荼枳尼天を討つ、って感じかな!
オーウェル/それはありがたいけど……結局このカラオケバトルは真剣勝負なのか和歌勝負なのか混合戦なのか、どっちなんだ……(笑)
GM/そこは雰囲気で感じ取ってくれよ。さて採点結果は……おおおっ!? 90点ピッタリ!
スウィフト/わー、大勝利だ!(笑)
ジーク/わーわー(拍手ぱちぱちぱち) 俺達の完全勝利だな!
GM/4回戦で全部PC側……人間側の勝利。羅生門、大フィーバー。集まっていた観客の物の怪達もスタンドアップで大盛り上がりです。
ジーク/現に『スタンダップ!』な歌詞だった。
オーウェル/うわっ、超恥ずかしい! あっち行けよお前ら!(笑)
GM/クライマックス戦闘を終えて歌い終えた荼枳尼天は挑戦者スウィフトと熱い握手を交わします。道真さんも玉藻お姉さんも茨木くんも、大きな拍手でみんなを祝福します。
スウィフト/うん……うん……?(笑) な、何事も無く勝てたのは良かった……かな?
GM/優勝したPCチームには何か無駄に大きいお札の形をした横看板と、何か大きいけど軽そうなトロフィーと紙吹雪が贈られます。
オーウェル/クイズ番組のラストで出てくるアレだ!
ジーク/そして倍速で流れるスタッフロール。
スウィフト/番組が終わっちゃう!(笑) た、橘さん! 妖怪達に勝ったよ! 知恵が貰えるよ! テレビカメラに手を振ってないで貰いなよ。
GM/「おっと、そうだった」
オーウェル/忘れるな!(笑)
GM/4人の賢者である偉大な大将達に「人間に知恵を授けてほしい」と再び頼み込む陰陽師。それに対して学問の神や人ならざる力を持った異形達は、「無論だ。試練に打ち勝った貴様らに相応しいものをくれてやろう。感謝せい」とプレゼントフォーユー。
ジーク/やったね。
GM/その結果、彼は多くの知恵を貰いました。傷をいっぱい治せるレベルの高い≪薬物調合≫や、多くの人を守ることができる秘術≪生命の叫び≫、いかなる者も打ち払ってしまう強力な≪爆塵≫や、世界を見渡すことができる≪未来視≫や≪未来の吐息≫、≪繰り糸≫や≪多重跳躍≫の極意すら貰ったかもしれません。
ジーク/ふむふむ、なんかよく判らないけど凄そうなのは判る。
GM/彼はそれを一晩で全部習得します。
スウィフト/……凄くね?
GM/「私は天才だから一晩あれば充分だ。問題無い」
オーウェル/こ、こいつ……(笑)
GM/彼が一晩勉強浸けになっている間、君達は大フィーバーの羅生門で飲んで食べての宴でも楽しんでいてください。
ジーク/わー、鬼に酒を振る舞われたりするやつだー! 絶対この酒、悪酔いするぞー!(笑)
GM/ろくろ首とかぬらりひょんとかがお酌してくれるよ。妖怪なりのご馳走もたくさん出るよ。お腹いっぱい食べてね。
スウィフト/わ、それ嬉しい。妖怪の宴に参加なんて滅多にできないぞ。
オーウェル/俺は魂だけなんで、気持ちだけ貰っておくな……(笑)


 ●エンディングフェイズ 〜時間跳躍〜

GM/さて。宴も終わって朝になり、朝日が差し込む羅生門にて……食べて酔って騒いで寝てという君達に、橘さんが「そろそろ話をしても良いかな?」と尋ねてきます。
スウィフト/あ、おはよー。
ジーク/むにゃむにゃ、もう食べられないよ〜。
オーウェル/ありがちな寝言を言った……(笑) あんたは知恵とやらを貰えたのか?
GM/「徹夜で教えてもらったよ。やはり人を超えた者達の知恵は素晴らしい。私では到底理解できないような知識を多く語ってくれた。まだまだ勉強不足だが、この知恵を多くの人達のために使っていこうと思える良い時間だった」
オーウェル/鬼と怨霊から貰った知恵って、ヤバい気もするんだがな……(笑)
ジーク/でも橘さんはお医者さんとして知識が欲しかったって言ってたし、大丈夫じゃない? 医学はいくら発展しても良いと思うよ。
GM/「さて、君達には実験台になってもらおう
オーウェル/実験台っ!?
GM/「……すまない、言い方を改めよう。私は荼枳尼天や玉藻の前に教わったばかりで、どの術もまだ覚えたてヒヨッコだ。新しく覚えた術の練習相手になってほしい」 彼は『ワープの術を覚えたから、行きたい場所はあるか?』とか『治したい傷はあるか?』など提案してきます。
スウィフト/あ、ここでこちらから提案しなきゃだ。
ジーク/あのさ、橘さん。ここにいる魂だけのオーウェル……死んじゃってるんだけど、これを復活させてくれない?
GM/だいぶストレートにお願いしてきたな。「死者蘇生か……それは難しいな。しかし、これをこーして、あれをあーすれば……」とブツブツと独り言を言いながらオーウェル復活の方法を考えてくれます。「おそらく私の持つ知識では、出来て一度きりの大儀式になるだろうが……可能だ」
オーウェル/す、すげぇ……。死んだ人間を蘇生することができるのか(笑)
GM/「死者蘇生とは違う。生涯たった一度きりの大魔術になるだろうが、こんな方法を考えた。オーウェルが死ぬ直前の時間に、ジークとスウィフトの2人を≪多重跳躍≫で送る。そしてジークとスウィフトが死ぬ前のオーウェルを助けて、再び私が≪繰り糸≫+≪多重跳躍≫で戻す」
スウィフト/……むぐ?
GM/オーウェルが死ぬ直前の1000年後に2人を送るから、オーウェルの体が燃やされて死ぬ前に捕まえて1000年前に戻ってきてください。そしたら橘さんがオーウェルの【HP】を回復してあげる。ユウメイイスタディオの炎で焼け死ぬ前にオーウェルを助けて来いってことだね。
スウィフト/お、おおおお……!? なんか凄いことを考えるな!?(笑)
ジーク/行って、捕まえて、帰って来いか。それって……死ぬ直前の時間に送らなきゃダメなの? もっと無事な時間に送るとかじゃダメ?
GM/……えっとね、オーウェルが死ぬ直前じゃないとダメだよ。じゃないとトプさんやユーキやドリスが死なずに助かっちゃう。
ジーク/助ければ? 良いことじゃないの?
GM/オーウェルが死にかけてジークを守って立ちふさがってくれたおかげで、ジークは生き延びた。つまりオーウェルが死ぬ気でユウメイイスタディオの前に立ってくれないと、ジークが死ぬ可能性が跳ね上がる。
スウィフト/……オーウェルが死ぬ気でユウメイイスタディオと戦わなきゃ、今いるジークは生きていないかもしれない。運命を大きく変えたらこの場のジークがいなくなるかもしれない。だから最低でもオーウェルには、ユウメイイスタディオを食い止める『死ぬ直前まで』いてもらわなきゃいけない?
GM/そういうことにして。……メタなことを言うと、このミニセッションはギャグな内容にしたけど「オーウェル救済シナリオ」で「GMが用意した試練をクリアーした報酬としてオーウェルを生かす」目的だから、ついででトプさんやユーキを蘇らせるつもりは無いよ。みんなを救いたければ、それ専用のシナリオを用意するべきだと思っている。
スウィフト/復活させるなら、3人にもそれ相応のことはしないとな。
GM/橘さんは「2人をオーウェルが死ぬ直前の時間に合わせて送る。君達は、死ぬ直前のオーウェルを発見するんだ。送れて1分ももたないが……1分間に彼の体を回収し、そしたら私が君達をこの時代へ連れ戻す」とやり方を教えてくれます。これは一度きりの挑戦で、今後彼は同じような儀式は出来ないと宣言します。
ジーク/一回限りのチャンスだ!
オーウェル/当の俺は……何も出来ないのか。
GM/2人が自分を助けてくれるのを信じて待っていなよ。……という訳で2人とも、準備は良いかな?
スウィフト/それしか方法が無いなら任せるしかないよね。
ジーク/オッケーだよ、やっちゃってー!
GM/橘さんは……覚えたばかりの術を唱え始めます。それは、ジークとスウィフトの2人を特定の時代にタイムスリップさせるという大秘術。こんなのおいそれと出来るようになったらヤバイなんてもんじゃない……そんな超魔術が発動して……。
ジーク/1000年後に、ゴー!
GM/バビューンとワープ。……した先は、炎に包まれる廃墟です。
ジーク/あっつ! 熱い!(笑)
スウィフト/炎が酷い! すぐにオーウェルの死体を探すよ!
オーウェル/まだ死んでないって!(笑)
GM/うん、まだ死んでないオーウェルを探してくれ(笑) 辺り一面真っ赤。こりゃ数分もしないで焼け死んじゃうなって場所へ君達はワープしてきました。早くしないとだね。判定の難易度は……オーウェル、【幸運】判定をして。
オーウェル/(ころころ)11だ。
GM/ジークとスウィフトは【知覚】判定で難易度11以上を出したら発見していいよ。
ジーク/うええええ! 微妙に高い難易度にしやがってー!
オーウェル/ご、ごめん……(笑)
スウィフト/でもそれぐらいなら出せる! 判定直前に≪幻想式≫を出して達成値にプラス4するよ!(ころころ)はい、達成値15で成功!
ジーク/余裕で成功だー!(笑)
GM/魔術によって視覚を冴え渡らせたスウィフトのおかげで、燃え盛る廃墟からすぐさま倒れたオーウェルの体を発見できた。
スウィフト/ジーク、あそこだよ! 回収して!
ジーク/うわぁ〜! 俺、【体力】は無いんだよ〜!
GM/……ついでに、達成値15という高さのおかげで、倒れたトプさんとユーキの体も発見した。
スウィフト/……あっ……。
ジーク/……ここで救えるのは、オーウェルの体だけなんだよね?
GM/うん。申し訳無いけど……発見した2人の体はオーウェルの居た場所からちょっと遠くて、2人を回収している暇も無く制限時間の1分が経過してしまう……ということにします。トプさん達の回収は、不可能です。
スウィフト/……炎の中で2人の体を見つけちゃったけど、見ないようにして、倒れたオーウェルを担ぎ上げます。
ジーク/……ごめんなぁ、狡いかもしれないけど……許してくれよ。
GM/2人がオーウェルを担いだ、そこでピッタリ制限時間1分が経過。気付けば2人はワープして……1000年前の羅生門にいます。
ジーク/あちち……平安京に戻ってきた……。
GM/「成功した! やはり私は天才! ……って凄い火傷だ、早く治療しなくては!」 2人が担いできたオーウェルの体を、橘さんはすぐさま治療してくれます。今にも死にそうな直前の体だから早急な治療が必要のようだ。
スウィフト/た、頼みますー。
オーウェル/お、俺の体が酷いことに……(笑)
GM/ではオーウェルの魂は……橘さんが凄い薬や凄い陰陽術で治してくれた体に入り込めば復活完了だよ。一度死んで復活したということで、ちょっとした代償を負ってもらいます。好きな【能力基本値】1つをマイナス3してください。減少した能力値に相応したものを失ったという描写をします。
オーウェル/あまり減らしたくはないが、【知覚】を減少させよう。少し鈍臭くなる。真っ赤な炎に目がやられてしまったとかで。
GM/視力が落ちたか、片目を失ったかってところかな。……オーウェルの魂が治療を受けているオーウェルの体に近寄っていく。そして胸のところまでいくと、スウッと中へと入り込んでいった。倒れていたオーウェルは、目を覚まします。
オーウェル/……んっ……。
ジーク/起きたー! 起きたなー!
オーウェル/……ジーク、うるさい(笑)
スウィフト/はー、復活できたね。……おめでとう。
GM/まだ体が重いけどそのうち回復していくって感じで復活だよ。「この薬を塗っていけば火傷痕も消えるだろう。もう君は、死ぬことはない」
オーウェル/……復活できたんだな……。
ジーク/おかえりだな!
オーウェル/……ただいま、って言うべきなのか? いや、先に……ありがとうって言っておくべきだな。
スウィフト/どういたしまして。良かった良かった。
ジーク/良かった良かった!
GM/良かった良かった。…………。
オーウェル/……どうした、GM?
GM/……軽率に1000年前にタイムスリップさせて、1000年後に送り返し、1000年前に戻ってきた訳だけど。どうやってまた1000年後に戻そう?
スウィフト/何も考えてないのに程があるだろ。
オーウェル/さっき橘さんは「一生に一度きりのチャンス」とか言ってたしなぁ……(笑)
ジーク/そこは天才なんだからさ、「1000年後に送るだけなら出来るのだ!」とか言って送ればいいじゃん?
GM/それ! そうする! 天才だもんね!(笑) という訳でこれにてセッション終了です。傷を癒したオーウェル達3人は元の時代に送り返されるのでした!
オーウェル/あっちこっち飛んで忙しいセッションだな!(笑)
ジーク/復活させてもらったんだから文句は言っちゃダメだよー。
スウィフト/平安時代、お世話になりました! 橘さん、これからもお仕事を頑張ってねー!(笑)