アナザーワールドSRS
■ 『 アナザーワールド シナリオ作成講座 』 ■
2017年7月19日




【はじめに】

 このページは、『アナザーワールドSRS(以降、AW)』のシナリオの作り方について簡単な解説をしていきます。
 『AW』でのシナリオを作る際に、最初に決定すべき項目を確認していきましょう。
 多くのセッションでは、PC達が惨劇(解決に臨む事件のこと)に挑むことになります。
 まずは「惨劇を乗り越えてエンディングに到達する」という骨組みを元に、大まかな流れを決定していきます。



【TRPGのストーリーを作る】

(1)PC達が立ち向かう惨劇とは何か?
(2)PC達が惨劇を止めなければどうなるか?
(3)誰が起こした惨劇か、何が目的の惨劇か?
(4)どうすれば惨劇を止められるか?(シナリオクリアー条件)


 以上4つは、『AW』に限らずTRPGシナリオを作るにあたって考えなければならないことです。
 一つ一つを、例を挙げながら解説していきましょう。
 ※『シナリオ管理シート』に記入しながらのシナリオ作成をオススメしています。ダウンロードしてご利用ください。

    ◆

(1)PC達が立ち向かう惨劇とは何か?
 まずは、事件の全容を決めましょう。
 PC達が越えなければならない課題を決定し、その解決策を考えていきます。
 TRPGのシナリオを作るときは始めに「PC達が到達してほしいエンディング」を考えると良いとされています。ゴールを先に考えておけば、どうやってゴールまで走るか考えやすいからです。

 例:幼馴染のヒロインAが異端Bに命を狙われている。異端Bによるヒロイン殺人事件が惨劇だ。
 エンディングは異端Bを討伐することでヒロインを救出し、平和な日常に戻れるようにすることにしよう。


    ◆

(2)PC達が惨劇を止めなければどうなるか?
 PC達が惨劇に挑まなければどのような事態になるか。これを決めておくことで、事件を解決する意欲が上がります。

 例:異端Bを止めなければ、大切なヒロインAは殺されてしまう。
 また、ヒロインAだけでなく多くの人も、そして自分自身も殺されてしまうかもしれない。


    ◆

(3)誰が起こした惨劇か、何が目的の惨劇か?
 犯人の動機を決定していきましょう。犯人の目的や性格設定を決めることで、犯人に至る情報について考えやすくなります。

 例:この惨劇の犯人は異端Bだ。
 異端BはヒロインAを殺すことでレベルアップをし、大きな力を得た後にさらなる大量殺人を行なおうとするだろう。


    ◆

(4)どうすれば惨劇を止められるか?(シナリオクリアー条件)
 エンディングの具体案を考えていきましょう。

 例:ヒロインAが殺される前に異端Bを討伐することで、シナリオはクリアーできる。
 PC達は異端Bを討伐する手段を得なければ、シナリオをクリアーできないことにしよう。




【AWのストーリーを作る】

(0)シナリオタイプを決定する。
(1)セカイが廻る(時間跳躍する)理由は?
(2)いつセカイが廻るか(時間跳躍するか)? どうすればセカイが廻れるか(時間跳躍できる)?
(3)タイムリミットは?
(4)ループの代償は何か?


 次に、『AW』のストーリーを作っていきましょう。こちらも一つ一つを、例を挙げながら解説していきます。

    ◆

(0)シナリオタイプを決定する。
■シナリオタイプ:【ループ】
 巡廻もの。スタート地点[A]から進み、[B]に到達したときシナリオクリアーフラグが満たされていなければ、スタート地点[A]まで時を戻すシナリオタイプ。[B]までにシナリオクリアーフラグを満たせば、シナリオクリアーとなる。
■シナリオタイプ:【リトライ】
 再挑戦もの。惨劇[B]を回避するため、惨劇が起きる時間[A]まで時を戻すシナリオタイプ。惨劇[B]を回避すればシナリオクリアーとなる。惨劇[B]を回避できなければ、幾度とも『ループの代償』を払って再挑戦することができる。
■シナリオタイプ:【タイムスリップ】
 時代跳躍もの。現代[A]では解決できない事件を、現代ではない[B]時代へワープして解決するシナリオタイプ。事件を解決し、現代[A]へ帰還できればシナリオクリアーとなる。

 『AW』には、基本的には3つのシナリオ傾向があります。
 他にも色んなシナリオを作ることができますが、この3つから選択すると作りやすいでしょう。
 オススメのシナリオタイプは、「リトライ」です。
 PCは惨劇のことを知っていて、訪れる惨劇を避けるために奮闘するシナリオ構図は他のTRPGシステムのシティシナリオと似通うものが多く、作りやすいでしょう。

 例:シナリオタイプ「リトライ」で作ってみることにした。
 ヒロインAが異端に殺されるという殺人事件を回避するため、ヒロインが殺される前の3日前まで時を戻ることになったPC達。
 ヒロインAが死ぬ3日後までに異端Bの居場所と討伐方法を発見しなければならない。もしまたヒロインAを殺されたら、幾度とも『ループの代償』を払って再挑戦しよう。


    ◆

(1)セカイが廻る(時間跳躍する)理由は?
(2)いつセカイが廻るか(時間跳躍するか)? どうすればセカイが廻れるか(時間跳躍できる)?
(3)タイムリミットは?

 『AW』の世界では、異端によって悲しい命が生まれたとき、その悲しい事件を回避するために時間跳躍を行なうことができるとされています。
 例外はありますが、異端によってPCやPCの大切な人が殺されたり不幸になるようなことがあれば、悲しい命を救いたいという神の意思が働き、『龍の聖剣』といった超越的存在が力を行使し、惨劇が起きる前へ時を戻すことができます。
 時間跳躍ができるのか理由があるだけで、PC達の事件へのモチベーションが変化でしょう。

 例:ヒロインAが殺されたらPCを始め、多くの人が悲しむことになるだろう。
 ヒロインAが死んだら時間跳躍をしてまだ死んでいない3日前に戻ることができる。
 惨劇を止めるタイムリミットは3日間だ。具体的に言うと、1ラウンド以内に止めないとまた惨劇が発生してしまう。


    ◆

(4)ループの代償は何か?

 惨劇が止められなくてもまた時間跳躍すれば、それを何度も繰り返していけば、いつか惨劇を止めることができるでしょう。
 しかしその好待遇にペナルティを付与することで、「早く惨劇を止めなければならない」という危機感やゲーム性を生み出すことができます。

 例:ヒロインAが殺されて惨劇が発生し、時間跳躍を巻き戻す際、龍の聖剣は時間跳躍の通行料を求めてくる。
 『ループの代償』は、片目や片腕・片足の喪失などの肉体的消耗や、友達との絆を失ったり人格が変貌してしまうなど精神的消耗が考えられる。具体的に言うと、【能力基本値】マイナス3だ。
 時間跳躍をするたびに目や腕を失くしていけば、平和な日常を取り戻すことができなくなってしまうかもしれない。また、減少した能力値でボスである異端Bに勝利することは困難だ。




 以上でシナリオの基盤が完成しました。
 次に、実際セッションで遊ぶために必要な情報収集パート(ミドルフェイズ)のデータを作っていきましょう。



【AF判定リストの作り方】

 AF判定の総数は、シンプルなシナリオなら3〜4つあるとよいでしょう。
 ここでは3つのAF判定を作成していくシナリオにしたいと思います。
 1つには『イベントキー』が無ければ挑戦することができないAF判定にして、そのAF判定に成功すればクライマックスフェイズに移行できるようにするといいでしょう。

 1つ目のAF判定には、ボスに対する情報が手に入るようにします。
 2つ目のAF判定には、ボスに勝つための『イベントキー』が手に入るようにします。
 3つ目のAF判定には、ボスに挑むためのクライマックスフェイズに向かえるイベントが発生できるようにします。

 例:
『AF判定:異端Bを調査』→成功すると、異端Bがどのような敵であるか発覚する。この情報を元に異端Bを倒そう。
『AF判定:異端Bの居場所』→成功すると、異端Bがどこに潜んでいるか発覚する。『イベントキー:居所』を入手。
『AF判定:異端Bの捜索』→『イベントキー:居所』が無ければこのAF判定は行なえない。成功すると、異端Bを発見できる。クライマックスフェイズに突入し、異端Bに勝利すれば、エンディングに移行できる。
 ※1シーンにつき、1日が経過する。3シーンが経過すると1ラウンドが終了。1ラウンドが終了ごとに、ヒロインAが異端Bに殺される惨劇が発生する。


▼テンプレート『AF判定:?????』
 ・使用能力値:【??】【??】
 ・難易度:??
 ・ラウンド制限:?
※「?????」演出に成功すること。
 成功した場合、?????。
※協調行動:OK or NG。難易度:??。



【AF判定の詳細の作り方】

(1)使用能力値について
 どの能力値を使って演出をしてほしいかを決定しましょう。
 色んなPCが活躍できるよう、指定能力値は2つほど提示していると演出の幅が広がります。

(2)難易度について
 多くラウンドを掛けたいときは高めに、簡単にさくさくクリアーをしてほしいときは低めに設定しましょう。
 キャラクターレベル3のPCが取得している特技数は、おおよそ8つです。8つ全部使用すると難易度は16も減少することができます。
 また、キャラクターレベル3のPCの能力判定の期待値は10です(判定ダイス2D6+平均能力値4)。
 難易度20なら、PC1人が特技を5つほど使ってなんとか成功できる並の難しさです。
 難易度30だと、PC1人が特技を全て演出に使用し、なおかつ達成値上昇特技などを使用して成功する程度でしょう。
 複数回に分けて判定させたいなら、難易度50〜60ならば、2シーンかけて成功できる圏内でしょう。

(3)協調行動について
 AF判定に複数人で挑戦することができるルールが『協調行動』です。
 1つの事柄を仲間同士で協力して演出すれば、仲間意識が芽生え、事件解決への作業が大いに盛り上がることでしょう。
 2人で1つのAF判定を行なう際、難易度減少率が単純に2倍になります。もし協調行動を取り入れるなら、難易度は通常の1.5〜2倍にするといいでしょう。

(4)ラウンド制限について
 一定のラウンドが経過した後では挑戦できなくなるAF判定も存在します。
 ラウンド制限を設定することで、PC達の緊張感をコントロールすることが可能です。



【クライマックスフェイズについて】

 クライマックスフェイズでは、惨劇を止めるためのイベントを発生させます。
 このイベントをクリアーすることで、惨劇は終わり、エンディングフェイズに移行することができます。
 ボスとの戦闘シーンを設定したり、ボスとのやり取りを演出するAF判定でクライマックスフェイズを盛り上げることもできるでしょう。

(1)戦闘データによるバトルを行なう場合
 ルールブックP.97の「GMガイド」や、「簡易エネミーメイキング」を参照し、ボスのデータを作成してください。
 「エネミーガイド」に敵として使えるサンプルデータもあるので、PCのキャラクターレベルに応じて配置するとよいでしょう。
例:ルールブックP.94の「魔7/霊2/処3(レベル12)」のボス1体と、ルールブックP.93の「魔1/闘1/世1(レベル3)」のモブ3体を配置。
 PC達は同一エンゲージ、エネミー4体も同一エンゲージから開始。双方のエンゲージは10メートルずつ離れている。
※2ラウンドのクリンナップになった時点で戦闘が強制終了。異端BがヒロインAを殺してしまう。


(2)AF判定によるバトルを行なう場合
 高難易度のAF判定を設置して、それをクリアーすればボスを討伐できるという方法もあります。
例:『AF判定:異端B討伐戦』
 ・使用能力値:【体力】【意志】
 ・難易度:100
 ・ラウンド制限:2ラウンド
※「異端Bを倒す」演出に成功すること。
 成功した場合、異端Bを討伐することができる。
※協調行動NG。【行動値】順に判定を行なう。
※PC達はメジャーアクションでAF判定を行なう。異端Bはセットアップ、メジャーアクション、クリンナップごとにダメージロールを行なう。PCが【HP】が0になったらAF判定には参加できない。
※2ラウンドのクリンナッププロセスになった時点で戦闘が強制終了。異端BがヒロインAを殺してしまう。




 以上で、シナリオが完成しました。
 次に、セッションを遊んでもらうための準備をしましょう。



【導入ハンドアウトを決定する】
 ハンドアウトはシナリオに参加するPCをイメージしてもらうために必要なものです。GMはハンドアウトを通じて、直接的な要求をすることができます。
 どのようなPCを作ってほしいか明言するようにすると、GMもPC側も滞りなくセッションに挑むことができるでしょう。

(1)例:PC1ハンドアウト
 コネクション:ヒロインA  関係:恋愛  推奨クラス:前衛系(ヒロインを守るべく戦ってほしいため)
 君にはヒロインAという幼馴染がいる。
 12月24日のクリスマスにヒロインAが何者かに殺されてしまった。
 その惨劇を止めるために龍の聖剣の手を取った君は、殺される3日前の12月21日にやってきた。
▼セカイのイベント:ヒロインを救おうとする(PC1に必ずやってもらいたいことを指定する)
▼コネクションNPC1:ヒロインA
 PC1の幼馴染(どのようなキャラクターかここで簡単に説明する)

(2)例:PC2ハンドアウト
 コネクション:異端B  関係:敵対  推奨クラス:処刑人(具体的なクラスを指定してもよい)
 君は教会のエージェントだ。異端Bを処刑せよという命令を受けた。
 12月24日に殺されたヒロインAの死因は、異端Bの攻撃によるものだ。
 このままだと更なる被害が出る。異端Bを討伐するためにも、PC1と協力しよう。
▼セカイのイベント:異端B討伐の依頼を受ける
▼コネクションNPC2:異端B
 教会が指名手配している悪しき異端。



【最後に】

 『AW』のシナリオを作るにあたって、以下の順番をお勧めします。

(1)惨劇の内容、ヒロインとラスボスの設定を決定する。
(2)シナリオクリアー方法を決定する。
(3)AF判定リストを決定する。
(4)クライマックスフェイズの詳細データを決定する。
(5)導入ハンドアウトを決定する。


 ハンドアウトを作成したら、「セッションがどのような流れか」シミュレーションをしてみるとよいでしょう。

    ◆

例:ヒロインAを救うセッションのシナリオフローチャート

(1)オープニング:PC1
 PC1は夢を見る。12月24日、幼馴染であるヒロインAが殺された夢だ。目が覚めると12月21日。PC1の前には、龍の聖剣がいた。
 龍の聖剣「12月24日にヒロインAは死ぬ。けれどセカイはその死を認めない。PC1、貴方ならヒロインAを救うことができるわ」
(2)オープニング:PC2
 PC2もPC1と同じ夢を見ていた。目覚めた12月21日、PC2は教会から依頼を受けた。
 高坂「異端Bが現れた。街の人々が襲われる前に異端Bの行方を探り、討伐してくれ」
(3)オープニング:共通
 PC達が合流し、ミドルフェイズの情報収取に向けての準備をする。
 状況の確認、ミドルフェイズに行なうAF判定のリストを掲示、『契約ルール』の確認などを行なう。
 また、1ラウンド終了で3日が経過(12月24日になる)というタイムリミットを宣言。
(4)ミドルフェイズ
 PCが挑戦できるAF判定は、『AF判定:異端Bを調査』『AF判定:異端Bの居場所』『AF判定:異端Bの捜索』の3つ。
 しかし『AF判定:異端Bの捜索』を挑戦するには『イベントキー:居所』が必要なため、PCは先に『AF判定:異端Bを調査』と『AF判定:異端Bの居場所』を攻略していく。
 『イベントキー:居所』を入手して『AF判定:異端Bの捜索』をクリアーすれば、クライマックスフェイズに移行できる。
(5)トリガーイベント(重要なイベント)
 クライマックスフェイズへ移行できる『AF判定:異端Bの捜索』を未クリアーの状態で、1ラウンドが終了してしまったため強制イベントが発生。
 ヒロインAが異端Bに殺されてしまった。
 PC達の前に龍の聖剣が現れ、時間跳躍を提案する。承諾したなら3日前に時間を戻すが、断った場合、ヒロインAを救えないバッドエンドに移行する。
 龍の聖剣「私の手を取ってくれれば、12月21日まで記憶を保持したまま時を巻き戻すことができるわ。ただし、ループには代償が必要よ」
 代償として差し出したペナルティ(能力値減少)を演出しつつ、ミドルフェイズを再開する。
(6)クライマックスフェイズ
 『AF判定:異端Bの捜索』をクリアーしたため、ボスである異端Bと直接対決する。
 クライマックス戦闘を行なう。どうすればクライマックスフェイズからエンディングフェイズに移行できるか宣言すること。(例:異端Bを戦闘不能状態にする、など)
(7)エンディングフェイズ
 シナリオクリアー条件が達成したなら、エンディングの演出を行なう。
 PC2は異端Bを討伐したことを教会に報告。街が平和になったことを実感した。
 PC1は無傷のヒロインAと共に、平和な12月24日を過ごすことができた。




以上