シノビガミ・リプレイ
■ 『 出口なし 』 1ページ ■
2013年7月31日




 ●プリプレイ

GM/それでは、今回『シノビガミ』シナリオ、『出口なし』をやっていきたいと思います。
ぷぇマーサー/宜しくお願いしまーす。
GM/早速ですが、今回予告を読んでいきましょう。

 とある地方の山中。ぽつりと建つ古びた木造の病院の入院病棟、2階の203室。
 ベッドに腰掛けた患者の傍らに、ひとりの医師が腰掛けて話を聞いている。
 患者は言う。何か大きな罪を犯したのに、それが何なのか思い出せない。
 静かな病室で、カウンセリングは続く。

 病室の外に人影はない。長い廊下を見渡しても、階下に降りたとしても。
 生きて動く者は一人もいない。
 ただ、203号室から、話し声がぽつぽつと無人の廊下に漏れ聞こえている。

 (――数か月前、忍務の帰途で大怪我を追った忍者をこの病院の医師の1人が保護した。
 隠れ潜む忍者であったその医師は、同情か仁愛か気紛れか、傷ついた忍者が身元を隠して心身を癒せるように尽力した。
 病院の人々は患者をあたたかく遇し、忍者は生まれて初めて味わうような静かで安らかな日々を過ごした。
 その束の間の静穏が、壊れる日までは)

 その日壊れたものは、ほんとうは何だったのだろう。
 真実は何処に?

 ――さあ、先生。貴方の患者が待っています。


 シナリオ名『出口なし』
 タイプ:対立型  リミット:2  プライズ:『記憶』


【レギュレーション】
 「基本ルールブック」使用。PCは中忍(GM、PL全員が了承するならもっと上にしてもよい)。
 一般人不可、下位流派あり、背景あり。
 ★キーワード:記憶の混乱、妄想の錯綜/キャッチボール的ドラマ作成

●プライズはPC2が所持している。プライズの【秘密】は持ち主のみ閲覧可能。
●プライズの移動は戦闘の結果によってのみ行われる。勝者は戦果として「プライズを相手に渡す」ことを選んでもよい。
●互いの【居所】は入手済で開始。
●クライマックスは2サイクル目の終了後に自動的に発生する。

【ハンドアウト:PC1】
 貴方は数ヶ月前PC2に救われ、この病院に入院している患者である。
 何か大きな罪を犯したのに、それが何なのか思い出せない。
 何らかのショックによる一時的な記憶障害だろうと医師は言う。
 貴方の【使命】は記憶を取り戻すことである。
 使命:記憶を取り戻す。

 一色 椋 (プレイヤー名:ぷぇ)
 年齢:10歳  性別:男
 流派:鞍馬神流(魔王流)  表の顔:入院患者  信念:忠
特技:≪身体操術≫ ≪骨法術≫ ≪潜伏術≫ ≪詐術≫ ≪見敵術≫ ≪異形化≫
忍法:【接近戦攻撃≪身体操術≫】 【頑健】 【闇鎌斬≪異形化≫】 【春雷≪骨法術≫】 【魔血】 【長肢≪異形化≫】 【獣化≪異形化≫】
 名前:一色椋(いっしき・むく)。
 両手足が義肢の少年。1人では歩くことも儘ならず、食事を取ることも難しいことから病院でリハビリをし、その最中記憶障害を改善するためにPC2の元でカウンセリングも受けている。
 かつては幼いながらも忍びとして生きてきたが、今はただの入院患者として静かな病室での生活をしている。
 性格は物静かで、自己主張が乏しく抑えめ、小動物的で常におどおどしている。身長135cm。

【ハンドアウト:PC2】
 貴方はこの病院の医師である。
 何らかの理由で隠れ潜む忍者であった貴方は、同情か仁愛か気紛れか、数ヶ月前にPC1を匿い、その主治医をつとめてきた。
 体の傷が癒えたというのに、PC1は何らかのショックで起きた記憶障害に悩んでいる。
 貴方の【使命】はPC1に記憶を取り戻させることだ。
 使命:記憶を取り戻させる。

 漆嶌 軍冶 (プレイヤー名:マーサー)
 年齢:32歳  性別:男
 流派:斜歯忍軍(御釘衆)  表の顔:医者  信念:我
特技:≪火術≫ ≪仕込み≫ ≪拷問術≫ ≪怪力≫ ≪医術≫ ≪千里眼の術≫
忍法:【接近戦攻撃≪怪力≫】 【頑健】 【爆破≪火術≫】 【殺界】 【星見≪千里眼の術≫】
 名前:漆島軍冶(うるしじま・ぐんじ)
 理学療法士であり栄養士だが、医者と自称している男。
 数ヶ月前に傷だらけで倒れていたPC1を拾い、それから付きっきりの看病をしている。
 本職は御釘衆の魔法使い(星術師)で魔導書を操る。
 性格は豪快で破天荒。口調は荒く、やや身勝手な言動の男性。身長185cm。

GM/それでは、早速ですが導入シーンを始めていきましょう……。


 ●オープニングフェイズ

GM/まずはPC1の椋さん。導入を始めますが……やりたい季節のイメージはありますか?
椋/そうですね……じゃあ、今日が7月31日なので同じ夏がいいです。
GM/判りました。では季節は夏。窓の外から差し込んでくる木漏れ日。遠くでうるさく鳴いている蝉。病室の中は極めて心地の良い温度と湿度に調整されている。そんな夏の昼下がりです。貴方は何をしてますか?
椋/えっと……いつものカウンセリングとリハビリの時間が来るまで、ベッドから体を起こして窓の外から見える中庭の風景をじっと眺めています。
GM/今日はよく晴れた夏の暑い日です。木から落ちる影の色も濃いですね。窓から見た広い中庭にはベンチもあり、テーブルと腰かけられる椅子もある。でも中庭には誰も居ません。普通ならこのくらいの時間なら誰かがお昼を食べていてもいいのに。
椋/誰も居ない、無人の中庭をじっと眺めています……。時計を気にしながら、まだかな……と退屈を持て余しているように待っています。勝手に病室から出ると叱られるんで。
GM/人の気配の無い、蝉の鳴き声だけが響いている病室。そこで貴方は気付く。階段から歩いてくる靴の音に。……そろそろ診察のお時間です。
椋/はい……。
GM/先生、出てきてください。
軍冶/コツコツコツババァーン! 爆破されたかのように開くドア!
椋/んんんんっ!?(笑)
軍冶/メシ食えたか!?
椋/ビ、ビクゥッ!?(笑)
軍冶/どんぶりに山盛りの白米だったけど全部食べたな!? 味噌汁もちゃんと俺が作ったけどちゃんと飲み干したよな!? いっぱいもりもり全部食べたよな!? って大声で超笑顔の32歳白衣の男がやって来ます!
椋/は、はいっ!?(笑) ご、ごはん……ちゃんと食べたから……びくびく。
軍冶/今日の朝メシは生姜焼きを作った! 俺が作った! 医者だからな! 病室に香る生姜のニオイ! うまいっ!
椋/それ、ベッドにニオイがつきそう……(笑)
軍冶/モヤシ炒めはめっちゃソースがかかってる! 量はメチャクチャ多い! 重いっ!
椋/重い!(笑) 絶対入院前より胃袋がでかくなったよ!? ……しかも残すと怒るんでしょ?
軍冶/うん怒る! ガキはもりもり食べて早く元気にならなきゃダメだって怒る! まあ今はそれを全部食べ終えた訳だが!
椋/う、うん。ちょっと苦しそうな顔をしながら頷きます……。
軍冶/おい、気分はどうだ?
椋/今日は……気分良いです。手足の具合も特に異常はありませんし……。
軍冶/よし、顔色も良いな。ぐしゃぐしゃとちっこい頭を撫でる。
椋/む、むう……。
軍冶/それじゃあリハビリとカウンセリングを始めようか。毎日のように、義手義足が動くかどうかの動作確認をし始める。実際に歩いてみようか?
椋/は、はい……。よろよろと歩いてみたりします。
軍冶/毎日やっているリハビリを暫くして……。本当に気分は大丈夫かって訊こう。
椋/うん……さっきも言ったけど、今日は本当に調子が良いです。それにもう……義肢が付けられてから何ヶ月も経ってるし、だいぶ動かせるようになってきたよ。
軍冶/そっか。それなら退院も近いかなぁ? すっかり元気になりやがって、嬉しいぞぉ。髪の毛ぐしゃぐしゃなでなで!
椋/撫でられて、うううう。……そう、だね。
軍冶/一人でちゃんとお家に帰れるぐらいに元気になったな?
椋/う、うん……ちゃんと帰れる。かも。
軍冶/早く退院できるといいなぁ! まあそれまでは俺が付きっきりで看病してやるよ! 俺は主治医だからな! ……あれからもう数ヶ月経った訳だが、何か思い出したか?
椋/……ちょっとだけ表情を曇らせて、首を振ります。自分が……何か悪いことをした気がする、けど……。
軍冶/けど?
椋/でも……悪いことをしたってことしか判らないです。
軍冶/悪いことなら思い出さなくてもいいんじゃないか?
椋/…………。でも、それだとずっとモヤモヤしたまま過ごさなくちゃいけないから……どうしても思い出さなきゃ。
軍冶/うーん、俺は理学療法士だからその手のカウンセリングは専門じゃないからすまんな。あまりそっちの方は進めなくって……。頭をぐしゃぐしゃ撫でながら言います。
椋/ううう……ぐしゃぐしゃってやられるたびに身長が縮むような気がする(笑)
軍冶/縮んだらその分食ってもっと伸ばせ! 足じゃなく細かい手の作業をするリハビリをやりながらも、カウンセリング的な意味合いを込めてのお話をしています。
椋/…………。
軍冶/おーよしよし。どうした? 何か思い出したか? 何かしたいこととか……。
椋/……そうだ。あの、あとで……中庭に連れて行ってくれませんか。
軍冶/よし行くぞ。椋を俵担ぎして中庭に向かう。
椋/えっ!? 今!? あっ、うんっ!(笑)
軍冶/中庭に行く。何があるんだ?
椋/た、単にずっと病室に居たから……こうやって気分が変わる場所でゆっくりしていた方が、思い出せるんじゃないかなって思って……。
軍冶/そうだな。外で気持ち良い空気でも吸いながら話をしようか。
椋/うん……。
軍冶/フリスビーを持ってきて「ほーら取ってこーい!」でもやるか!
椋/僕、犬扱い!?(笑)
GM/リハビリとは何だったのか。
椋/……中庭にある大きな花壇をチラッと見ます。
GM/中庭の花壇は……この時期だとサルビアやヒマワリ、色鮮やかな夏の花々が咲いている。その隙間を山の冷たい風が吹き抜けて揺らしていく。昼は蝉の声が、夕暮れにはカナカナとひぐらしの鳴き声に変わっていく。そんな山奥です。
軍冶/ヒマワリは燻すと美味い。
GM/まあ美味いけど。
軍冶/ほーれ! とっとこヒマワリの種だぞー!
椋/僕、ハムスターじゃない!(笑)

 『シノビガミ〜出口なし』
 タイプ:対立型  リミット:2  プライズ:『記憶』

 サイクル スタート.......



 ●1サイクル―1/軍冶

GM/それでは、サイクルがスタートします。シーンをやりたい人から先にどうぞ。立候補はいますか?
軍冶/はい、軍冶が先に動きたいです。プライズを椋に渡す目的で戦闘を仕掛けたいです。
椋/は、はい!? いきなり戦闘!? 別に軍冶さんが先でいいけど……。
GM/戦闘シーンですけど、このシナリオには専用のシーン表があるので振ってみましょうか。
軍冶/おう。折角だからシーン表を振ってみよう!(ころころ)5だ。

 『出口なし』シーン表04〜05:古い木造の入院病棟、203号室。ひどく静かだ。会話の間に落ちる静寂が胸に刺さるほどに。

軍冶/戦闘をやるとは言ったけど、ボコ殴ったり血を流すようなシーンにはしない。普通にカウンセリング及びリハビリのシーンをするぞ。
椋/は、はい、判りました。
軍冶/先ほど遊びに行った花壇から2人で病室に戻ってきた。外で犬だかハムスターだかウサギだか判らんことをしてきた君。
椋/すっかり小動物扱いだ……(笑)
軍冶/さっきまで土で遊んでたし、夏場に外に出たんだから汗をかくよね。その汗もちゃんと拭いてやりますよ、医者だもの! だって俺は主治医だもの!
GM/……なんかこの医者、押し付けがましいぞ(笑)
軍冶/汗を拭いてスッキリするよう椋の体をタオルで拭いています。おい、疲れたか?
椋/うー。外に出るとちょっとした疲れは出ますけど……でも、気持ち良かったから大丈夫です。
軍冶/そうか、そりゃ安心した。……お前とリハビリを始めてだいぶ経つな。どれくらい経ったかな?
椋/支障が無かったら半年っていう設定ににしようかと。
軍冶/じゃあそれで。……もう半年も経つな。
椋/うん。こくりと頷く。
軍冶/半年間、俺はお前の面倒をずっと見てきた。……でも、そろそろな。
椋/そろそろ……?
軍冶/別に「お前の面倒を見るのが限界になった」とは言わない。けど、もう前に出るのも良いと思った。
椋/前に……? あの……確かに、あともう少ししたらちゃんと思い出せる気がするんだけど……。
軍冶/今日は本を読むぞ。椋にバラッと本を開いて見せます。その本には見たことのないような文字がばらっと並んでます。
椋/うん……? なにこれ、外国の本?
軍冶/魔導書を見せて惑わせます。はい、SAN値チェック!(笑)

 戦闘シーンのため、プロットを決定するがあくまで描写としては「病室で本を読み合う2人」。
 そうして始まった戦闘の結果は……互いに回避をして、ノーダメージ。勝者無し戦闘となった。


軍冶/軍冶は自分が持っているプライズを椋に渡す目的で戦闘をしているよ。だから勝者になりたいんだけど……。
椋/えーと……じゃあ、椋が脱落すれば軍冶さんが勝者になりますよね? それなら椋、脱落を宣言します。
GM/では勝者は軍冶さんになりますが。戦果は何をしますか?
軍冶/宣言通り、椋にプライズを渡します。……本を見せていたんだけど、いつもの癖で椋の頭をがしがしぐりぐりやってしまってつい≪怪力≫で攻撃してしまいました。
椋/いたたたた! ギブギブ! 巧い具合の鞍馬力で致命的ダメージは避けましたけど痛いっ!(笑)
軍冶/……≪怪力≫で頭をがしがしから首元に手をやり、ちょっと特殊なツボを押します。すると椋の頭の中にとある記憶がぽっと生じます。
椋/おお、御釘さんぽく龍脈を押すんですね。
軍冶/という訳で俺の持っているプライズ……『記憶』を渡す。
椋/それは願ったり叶ったりだけど……(プライズを受け取り、目を通し始める

 椋、プライズ『記憶』を入手。

椋/…………。
軍冶/大丈夫か? どんどん顔色が悪くなっていく椋に言います。
椋/…………。今得た『記憶』を自分の中で噛み締めるように目を閉じます。う、うん、大丈夫……大丈夫だよ。
軍冶/何が大丈夫だ、そんな青い顔をして。
椋/……大丈夫……だよ。
軍冶/おい、ちゃんと晩メシ食えるか? 喉通るか?
椋/……軍冶さんが盛り過ぎなければ。
軍冶/よし! メシ作ってきてやるから待ってろよ。すぐ元気になる晩メシ作ってきてやるから。俺は主治医として椋のメシを作りに病室を出る!
椋/…………。部屋を出る軍冶さんを見て……。椋は、やるべきことをやらなきゃ……。自分に言い聞かせるように言います。
GM/……その呟きは、誰も居ない木造の病院に響いていくのでした。ゆっくりと日が傾いていきます。


 ●1サイクル―2/椋

椋/次は椋のシーンですね。PC2の【秘密】を抜こうと思います。(ころころ)シーン表は8。

 『出口なし』シーン表08〜09:古い木造の入院病棟、203号室。2人部屋だがPC1の使っていないベッドは空いている。

軍冶/晩メシはハンバーグを作ったぞー。元気がいっぱい出るようにお肉いっぱい使って作った草履みたいなハンバーグだぞー!
椋/ぞ、草履みたいなハンバーグだ! ビックリだ!(笑)
軍冶/隣に野菜もゴロゴロいっぱいあるぞ! スープもおかわりし放題だぞ! 超笑顔でメシ盛るぞ!
椋/そんなに食べたらぷくぷく太ってツヤツヤになっちゃうよ……(笑) そんなご飯の時間が終わって、一人ぼっちの病室になって……なんとなく心細いような気持ちになります。隣の誰も入院患者が居ない空いたベッドを見て、寂しくなります。
GM/夜になりましたが、どうします?
椋/……軍冶さんのことを探して病室を出ようと思います。軍冶さんはいつもどこに居るの?
軍冶/そうだな、軍冶は花壇の近くで煙草でも吸っていようかな?
椋/じゃあ、そこまで……よたよたとした足取りで行きます。
軍冶/花壇の塀に腰かけて煙草を吸ってるよ。ヒマワリ、お前も吸うか? 「やだあ」。そっかー。ヒマワリにあっち向かれちまった。しょぼん。
GM/なんかファンシーなことやってるぞ、このオッサン(笑)
椋/しかもなんかヒマワリが可愛い(笑) そんな軍冶さんのところに、よたよたと椋がやって来ます……。
軍冶/患者が来たら煙草の煙を消します。おいどうした? もう休まなきゃいけない時間だろが。
椋/し、叱られるかな……俯いておどおどしてます。
軍冶/なんだよ、何か言いたいことがあるのか? 用事が無いなら病室戻すぞ。病室が一番安静に出来る場所だからな。
椋/う、うう……な、なんとなくこう……1人で病室に居るのも、なんか……ごにょごにょ。寂しいって10歳の男子には恥ずかしいので言えずにいます。
軍冶/お前、いくつだ?
椋/……10歳……。
軍冶/じゃあナヨナヨすんなよ。もう大人の仲間入りする年齢なんだから言いたいことがあるならハッキリ言え。もう一回! ワンモアセッ!
椋/「軍冶さんは最高です」とか言わないぞ!
軍冶/それは言わなくていいよ!(笑) おい、何言ったか聞こえなかったぞ。言いたいことがあるならもう一度言えよ。男だろ言えるだろ!
椋/…………。椋、軍冶さんと一緒に話がしたかった……だけです。と言っても……特に話題とか無いんですけど……。
軍冶/…………。
椋/…………。
軍冶/話をしてくれたという意思表示だけで嬉しいぜ。ニカッて笑ってひょいっと椋を俵担ぎします。
椋/うわっ。
軍冶/流石に夏でも日が落ちてきたら寒い。ヒマワリもあっち向いちまったからな。病室で話をした方が良いだろ?
椋/……う、うん。
軍冶/無駄にデカい体の医者が、子供を俵担ぎしながら病室に向かいます。
椋/じゃあ、俵担ぎされている間に……軍冶さんの見えないところで、義肢から黒い影を一滴ポトッと落とします。それが軍冶さんの影に合わさって……すぐに椋の体の中に戻ってきます。
GM/【秘密】抜き取りの演出ですか。
椋/はい。自分の体の一部を相手の中に忍ばせて情報を取ってくるということで……≪潜伏術≫で判定します。(ころころ)4。
軍冶/失敗したね。
椋/……ま、待って! 「神通丸」を使用して振り直します!(ころころ)6で成功。良かった……。
GM/それでは、PC2の【秘密】が公開になりますね。
軍冶/はい、【秘密】どうぞ(言いながら椋に【秘密】を見せる)。

 PC2:漆嶌軍冶の【秘密】
 貴方には分かっている。罪を犯したのは実は彼ではない。貴方だ。
 椋は、病院の人々を殺戮されたショックからか記憶に混乱をきたしている。事件の記憶の中の犯人、つまり貴方を、自分自身と取り違えてしまっているのだ。
 主治医として、彼が自ら思い出せるよう少しずつカウンセリングを続けていたが、タイムリミットが迫っている。
 貴方は決断した。彼の記憶を修正し、思い出させねばならない。もう手段は選ばない。彼に憎まれ追われることになろうとも、それが貴方への罰となり贖罪の手段となるだろう。
 貴方の【本当の使命】は、貴方から椋にプライズを渡し、かつ最終的なプライズの所持者となることだ。


椋/…………。
軍冶/何か話をしようか。何かあるか? ああ、話したいことは無かったんだっけ。じゃあ俺が何か話をしようか。
椋/…………。いいよ。椋は、ただこの病室で一人で居たくなかった。それだけなんだから、話は……。
軍冶/いや、ちゃんと話をしよう。もういいかげん俺達は動き出さなきゃいけない。病室に戻って、椋をベッドに腰掛けさせます。
椋/うん……。
軍冶/軍冶はもう一つの空いたベッドにどかっと座ります。……いいか、聞けよ。
椋/…………。
軍冶/半年前、この病院には俺達以外にいっぱい人がいた。だけど俺達以外の人間は全員死んだ。
椋/……黙って頷きます。
軍冶/みんな死んだ。俺が殺したからな。……思い出したか?
椋/……さっきは頷いたけど、その質問には黙って頷きもしません。
軍冶/お前はさ、罪を犯したって……半年間「自分がみんなを殺した」と思っていただろ。違うんだよ。
椋/……そうです。そうなんです。
軍冶/違うんだ。罪を犯したのはお前じゃない。もういいかげん終わりにしよう。それにさ、お前だって……判っちまった以上、もう殺人鬼と一緒に居るなんて嫌だろ? お前ももうすっかり1人で動けるようになったんだから、もうこの時間を終わりにしないとな。
椋/嫌だったらわざわざ探しに行きません。
軍冶/…………。
椋/…………。
軍冶/…………。ああもう、お前は可愛い奴だな。頭よしよし……としようとするけど、ベッドに座ってる距離じゃ出来ないか。頭を撫でようとして手を伸ばして、戻します。
椋/…………。軍冶さんがやりたいこと……あるの?
軍冶/俺は罪を償いたい。死をもって償わせてほしい。「もう手段は選ばない。憎まれ追われることになろうとも、それが贖罪の手段」だからな。
椋/…………。椋も、自分のするべきことをしようと思う。
軍冶/それは何だ?
椋/……今の軍冶さんには、言わない。
軍冶/……なあ、思い出しただろうからハッキリ言うけど、俺は何十人も殺したっていう罪を背負ってるんだ。それは誰かが罰してくれなきゃいけないもんだろ? お前は……忍びなんだから、それが出来る。手元にあった果物ナイフを椋に渡します。
椋/投げます。
軍冶/わ。
椋/違う。
軍冶/お前、殺してくれないのか。俺を。
椋/……罪とか罰とか、椋が望んでいるのはそんなことじゃない。違うんだよ。
軍冶/じゃあお前の望んでることって何だよ。
椋/今の軍冶さんには話したくない! ……お、大声出してすみません。
軍冶/今の俺って何だよ。
椋/…………。ごめん、探しておいてなんだけど、椋はもう休むことにする……。そのまま布団をばさっと被ります。黙って丸く……。
軍冶/ばさっと被った布団を剥ぎ取ります。
椋/わあっ!?
軍冶/椋の顔を真正面から見ます。おいこら、寝るときは「おやすみなさい」だろ?
椋/うっ……。
軍冶/言ってから寝ろ。それぐらい言えないのか。これは主治医としてじゃなく大人として子供に教えなきゃいけないことだから言うぞ。「おやすみなさい」、言えるか? 言えないのか? 言えるよな!?
椋/い、言うから! 言うからグイグイ来ないで!(笑)
軍冶/ハイ言うっ!
椋/お、おやすみなさいっ! ……こ、これでいい?
軍冶/おうっ! おやすみ! また明日な! バタンと笑顔で元気良く病室のドアを閉めて、病室から出て行きます。
椋/……ドアが閉まった後、また布団を被ります。……せめて、あの人が判ってくれたなら……。