ゴーストハンター02・リプレイ・パラドックスの椿
■ 第1話 『ウズマキ』 ■
2007年5月17日




 今日もまた、多くの命が生まれ、死した。
 それはこの世界の当然の式。この式が乱されることはない。
 でも、世界だって許さない形がある。
 世界にだって規則はある。
 そんな在り方、認めない、そう思うのも無理はない。
 変えなきゃ。世界にも、己を護りたいと想う心があるのだから。



 ★オープニング/村上昌幸


 村上昌幸。
 十七歳という若さにして大学院を卒業、そんな素晴らしい頭脳を持つキミは――ニート?


GM/……ニートなの?(笑) 一体彼の人生に何があったんだか。
昌幸/色々あったんです! 学会のクソジジイども……!(笑)
GM/村上くんは秀才だが揉め事が起き学会を退く……そんなプー太郎気味のキミ。日々の生活としては職を探す毎日なのかな。求職しても「お前十七歳じゃん? 高校行かないで何やってんだよ」と言われる毎日だ。
昌幸/ああ、日本って視野が狭いなぁ……最近まで親の都合で海外にいたんです。大学院を卒業しても行く先ないんだよね、ぶっちゃけ! 今のところ親は暖かい目で見てくれています。
GM/日本に来て転落人生、昔テンサイ今ニート。お母さんは「ねえ、マー君。この仕事いいんじゃないかしら?」と優しい目でキミを見守っている。旅立ってくれることを夢見て……そう、貴方はまだ未来があるセブンティーンなんだから!
昌幸/……こんな枯れた十七歳も嫌だ(笑)
GM/悲しいね、キミ。
昌幸/言わないでください、自分で判ってますから!(笑)
GM/しかもキミ、実家暮らしなんだよね。――では、二〇〇七年四月六日、朝八時十五分……毎日悲しい視線に襲われながら今日も朝を迎えるようです……けど。
昌幸/けど?
GM/一軒家の2階が貴方の部屋。下の階から「マー君、おはよー!」なんて優しいお母さんの声は、今朝は……聞こえない。
昌幸/……変だな、いつもなら「朝ご飯できたよ」ぐらい言ってくれるのに。ふあー……よいしょっと。下に降りて確認します。
GM/下に降りるため廊下に出る……外は、凍り付いたように冷たい。
昌幸/なんだこりゃ? ……4月にしては寒いような……。
GM/階段を下りるとリビングへのドアがある。いつもそこで朝ご飯を食べ、新聞を読んでるお父さんがいて、ニュース番組の音がしているのに、……シーンと静まりかえっている。
昌幸/おはよう……ガチャッ。
GM/ドアを開けると、鼻につく匂い。例えるなら……雨の日の錆びた工場のような。もちろんここは家の中、雨なんて降っている訳ない。
昌幸/ううん? お母さん、いないのー? 父さん……?
GM/両親を探してリビングに入る。奥の方までやって来ると……。
昌幸/……来ると。
GM/真っ赤だ。
昌幸/んっ!?
GM/『ひしゃげたユリ』。そんな印象を君はいだいた。――倒れている母親に対して。
昌幸/えっ!? か、母さん! 揺する!
GM/揺する、するとぐるり女性の体が曲がる。捻れた足、飛び出した腸……吐き出された血液は、絨毯のように広がっている。
昌幸/え、えぇえ……け、警察っ!
GM/警察、と電話の方を向けば、……知っている男の人の体がある。貴方の……。
昌幸/と、父さんっ!? え、ええええぇっ!
GM/ええ、父親だ。たくましい体も無惨な姿で横たわっている。手首がすっぽり無い、大根をスパーンと切った感じだね。――恐怖、……そして、君の後ろに、すっと何かが動く音……。
昌幸/だ、誰かいるのかよっ!? 振り向く!
GM/振り向く?
昌幸/……振り向いちゃいます。
GM/……そこには、凶器を持った何かが……!

 ガシュッ。
 ……楽しい楽しいスイカ割りのように、貴方の頭を……。

 ★オープニング/浅霧優斗

 浅霧優斗。志木第一高等学校2年生、十六歳。成績優秀な奨学生であるキミは貧しい家計のためにバイトをしている。親孝行な面もある彼の担当は……ユーマや魔術。


GM/優斗くん、幽霊が大好きというのでもなく真面目に学校に行きバイトに精を出す――そんなに二〇〇七年四月十日のキミ。午後四時五〇分、ホームルームが終わりこれからバイトに向かわなきゃって時間だね。
優斗/はーあ。最近編集長、いちいち僕の記事に文句言うんだよなー。
GM/荷物をまとめて愚痴ってるところに、仲の良い友達達が話し掛けてくるよ。「オーイ優斗、今日ちょっと付き合わねぇ? ゲーセン行こうぜ」
優斗/悪ぃ、用事あるんだ。そんな金あったらメシ買ってるよ。……奢りなら考えるけどな?
GM/「いや、そんなら行ってこい。……でもどうせなら途中まで一緒に帰ろうぜ」
優斗/それならいーよ。ああ、……ったく、あの先生ウゼーよなー。ペチャクチャ喋りながら行きます。
GM/駅から徒歩数分の新座市の志木第一高校。電車に乗って隣駅の北朝霞まで乗ったところに優斗のバイト先の編集社がある。友人達も隣町の大きなゲーセンに向かうみたいだ。まぁ、途中まで一緒ってことで駅に行く……と。「そういやさー、田中んちの近くでスッゴイ事件あったらしいぜ」
優斗/田中ってクラスメイトの名前だよな、何だよ?
GM/「今朝のニュースで見たんだけどさ、……一家惨殺があったんだって」
優斗/……うえっ。
GM/「パトカーがうるせーわ、マスコミが来るわ……通り魔とか言ってたな。酷い殺され方されたらしいぜ。つーか『一家惨殺』っていう四字熟語からしてねぇ」
優斗/そんな言葉使われるぐらいなんだから相当だよね……田中も災難だったな。しっかし怖いな……。
GM/「男の人は腕もがれてるわ、女の人は捻れてるわ、息子さんは頭を……」そんな感じで志木駅に到着、ホームで貴方達は無駄話をしている。
優斗/へー。ま、僕の担当じゃないから記事はまわされないだろうな。
GM/その時、――貴方は感じた。……ひやり。
優斗/……うん?
GM/氷が背中に触れるような感覚に、背筋が凍った。周りは何事もなく、友人は話を続け、アナウンスがホームに流れる。「2番線に電車が到着します。黄色い線より内側にお下がりください……」プオー。
優斗/……。
GM/貴方は感じている……ひやり、背中が冷たい。物凄い冷気。凍り付いた手の感触。そして……ドンッ!
優斗/ぃっ!? うわああああああぁっ!

 背中からの衝撃。足が宙を浮くキミ。
「おいっ!?」
「優斗ぉ!?」
 大声を上げる友人。
 転がり落ち、そして――プシュウウウウウゥ……。

 ★オープニング/青森恐一

 青森恐一。雑誌「女性ヘブン」で記事を書いているゴシップ専門のライター。平凡の生活が好きな四十三歳の……オッサン。


GM/現在進行形でアレを逃していると聞いています……アレって何ですか?
恐一/はい、婚期を逃しています……カノジョがいません!(笑)
GM/ええ、とても素晴らしいことだと思います。でも、婚期を逃していても四十三歳だし、ちゃんとした職業も就いてるんだからそれなりのマンション5階に住んでいる。一世帯の高級マンションで、仕事としても使っているから立派な部屋だ。
恐一/ライターだからな。仕事場兼自宅だから部屋中には本が山積みになってたり。マンションの名前は……「みどりハイツ」で。
GM/それなりに仕事も出来るし充実した生活をしている……そんな四月十三日、午後三時……来訪者のチャイムがなった。ピンポーン。
恐一/あん?
GM/ピンポーンピンポーンピンポーン。ピンポピンポピーンポーン。
恐一/うっせえな! ああもう……誰だよ。
GM/ダンダンダンダン!「おじさーんっ!」……聞き覚えのある『いつもの』声だ。「おじさーんおじさーん! 3時だよ、おやつの時間だよー!」
恐一/うっせえよお前は! 静かに来られないのかよ!
GM/「うん! だって3時じゃん!」小学生の貴方の姪、名前は?
恐一/……サキ。はぁ、またたかりに来たのか、大したモンはねーぞ?
GM/ランドセル背負った女の子はたたたーっと元気にキッチンの方へ走っていく。「おじさん何か食べるー? あー、冷蔵庫の中にカステラあったー! おじさんはどれくらい食べるー?」
恐一/俺はいらないっつーの! ……多分カステラは仕事先で渡された甘い物です。他は酒とかツマミがいっぱい並んでます。
GM/時刻は三時。小学生には帰宅時間、テレビつけてもニュースがポツポツやってるくらいかな。中途半端な時間だからあんまりいい番組ないよね。
恐一/テレビ、つけます。
GM/流しますと……短いニュースがやってるね。「四月十日、志木駅にて高校二年生の少年が投身自殺」……その次には交通事故があったり特集で数日前の一家惨殺の事件が組まれてる。
恐一/はー……若いのに自殺か、大変だな。最近危なっかしいなぁ、お前は大きく育てよ。
GM/キッチンの方から「なーにー?」
恐一/なんでもない。食っとけ、そしてデカくなれ。
GM/「ねー! おじさんはコーヒー、砂糖何本いれるのー?」
恐一/砂糖とミルクいっぱい入れとけ!
GM/「はー……」い、と言う前に、――音が消えた。
恐一/……おっ? どうしたんだ?
GM/……。
恐一/……なんだ? おいサキ、返事ぐらいしろ! サキ! ……キッチンに行きます。
GM/キッチンの方には……いるよ、サキちゃん。ちょっとボーっと突っ立っている。
恐一/……サキ、どうした。
GM/おじさんの方を向きます。「あはは……えっとね、えーっとね。わたし……大好きよっ!」
恐一/は? いきなり……バカ言ってるんじゃねーぞ。
GM/「バカ? ……私のこと、好きじゃないの?」
恐一/……好きじゃない訳じゃねーけど。
GM/「嫌いなの?」
恐一/あのな、お前は可愛い姪っ子だ。……どうしたんだ、お前?
GM/「わあっ、嬉しいなぁ! 私、すっごく嬉しい! ずっといっしょ……」たったった。
恐一/サキ……っ?
GM/「大好き!」――ザクゥッ!
恐一/ぐぅっ!?

 胸に刺さった包丁。小さな一撃に、ぱたりと倒れる大人の体。
「うふふ……あはははは、いっしょ、大好き、あははははははは!」
 その目は、血の如く真っ赤に彩られていた――。

 ★オープニング/里山勇規

 里山勇規。二十一歳の、一度留年したことがある大学生2年生。推理小説同好会に所属しているごく普通の大学生だ。


GM/父親とは二人暮らしで、ちょっと苦労をしている男の子……頭がいいんだろうね、里山くん。
勇規/でも何かと人に言われないと思い出せない性格です。推理小説も読み専だし。
GM/……普通、同好会の人って書くよね?
勇規/読むのが好きなんですよ。部室でいつも読書してます。
GM/じゃあ、同好会にも部室があることにしましょう。部室には変な人形が置いてあったり、ムダに大きな水槽が置いてあったり、どう考えてもこれは推理小説と違うだろっていう小説が置いてあったり……そんな四月十六日、午後五時二十分のクラブハウス。読書をしていると、隣にいた部長さんが話しかけてきます。名前は……。
勇規/3年生の……サユリさん。学年は上だけど同い年の部長ですか。
GM/そのサユリさんがウンウン唸っている。「そういえばさ、里山くん。今年の文化祭の部誌のテーマ、何がいいと思う? 文化祭で何か発表しないと部が潰れるでしょ。作家調べもいいけど、もうあらかたやりつくした感があるわねー……昔の事件を洗い直しにしてみるとか?」
勇規/……でも、この部は推理小説だろ?
GM/「あ、ちょっとジャンルが違うか」うーんうーんとメモっているメガネの女の子。「昔の事件……あ、そういえばさ。この街、最近大層な事件ばっかだと思わない?」
勇規/ああ……テレビで見たような気がするな。
GM/「つい最近、一家惨殺あったし今朝もマンションで事件があったし。……もうっ、里山くんも同好会存続の為にテーマ案ぐらい出してよ! そっちももう2年生なんだから」
勇規/うん、適当に考えておくよ……。パラパラ本を読みながら上の空で返事をしてる。
GM/「……何、読んでるの?」
勇規/コナン・ドイル。内容、全然判らないけど。
GM/「っていうかソレ、3日前も読んでなかったっけ?
勇規/……あれ?
GM/……カワイソウな子!(笑) そこに、ぷるるるるる……と鳴り出すサユリさんの携帯がなる。「あ、ゴメン! ……もしもし? あ、お母さん……うん、そっちはもう平気でしょ? うん、私全然心配してないから」
勇規/……ぱらりぱらり。
GM/「ごめんね、里山くん。クラブハウスって電波悪いから外出てくる! すぐ帰ってくると思うけど荷物番、頼める?」
勇規/いいよ、行っておいで。
GM/「ありがと!」携帯だけを持って、部室を出ていくサユリさん。……カタカタ。
勇規/……カタカタ?
GM/……カタカタ、カタカタ。部室の棚が揺れている。
勇規/地震か? 何か入ってるとか……とりあえず開けてみます。
GM/ガラッ、開けてみる。……けど特別おかしな物は入っていない。すると、……カタカタカタ。今度は水槽だ。
勇規/えっ、なんなんだ……?
GM/水がピチャピチャ、……キャッキャ……ピチャン。
勇規/これは……まさか、ポルターガイスト! 絶対そうだよ! うわ、俺……初めてポルターガイスト見た! 感動っ!
GM/感動するの?(笑) 目を輝かせる貴方の周りが……ガタガタ。
勇規/でもな、どうなんだろコレ。水はねてるし、危ないのかな……。
GM/ピチャン、水槽には熱帯魚が泳いでいる。泳いでいる訳だけど……貴方の顔にとんでくる。
勇規/冷たっ……。
GM/水槽が、貴方に向かって。
勇規/……えっ?
GM/ピチャン! ビチャッ! 水が、貴方を追ってくるように……水の塊が貴方の体を襲う!
勇規/呆然として……部室を出て、どこかに逃げようとします!
GM/出ようとした、その時……水が! がぽっ……まるで貴方はヘルメットを被ったかのように。
勇規/ぐっ!
GM/がぼっ、がぼがぼがぼ! ……息ができない。
勇規/……それでも、入り口の方に、向かう……!
GM/がぼがぼ、がぼ……。

 ――パタリ。少し家具がズレた部屋で、水浸しになった一室で倒れるしかなかった――。

 ★オープニング/三日原望彦

 三日原望彦。実家は除霊師……退魔の家系だ。魔術を扱う血を受け継ぎ生まれたけれど、怖さ故に目を背けてきたキミ。


望彦/なんとか幽霊なんて見ないように見ないように生きてきました。親父が魔術を覚えろ覚えろって言ってくるけどイヤだって逃げてきました……こんな家、出て行ってやるー!
GM/逃げるように実家を飛び出した三日原くん。大学近くの新座市で、実家に一切頼らぬ一人暮らしをしている……故に、赤貧だ。
望彦/仕送りも無いよ。貯金もそろそろ使い果たして……本格的にヤバイ。大学よりバイトの方がメインだけど不真面目なんであんまり。
GM/そんな四月十八月日、午後二時。一人暮らし先は、倒壊寸前のアパートだ。……家賃は九千八百円。
望彦/……人死んでるよ絶対!(笑) 常に下を向いて過ごしてます。
GM/窓を見たら絶対幽霊がヤッホイしてるね。そんな愉快なボロアパートで過ごしているところに。……プルルルル、電話だ。
望彦/誰だろ……もしもし?
GM/「もしもし、望彦。元気にしてる?」……お母さんの声です。「お母さんはね、今、沖縄にいるの。4月なのに暖かいわよ〜」
望彦/母さん? ……旅行もいいけどそろそろ帰らないと親父寂しがるよ。
GM/「それはお母さんからも言いたいなー。それはともかく、後でシークアーサーとちんすこう3ヶ月分でも送っていい? ちゃんと食べて元気にしなきゃダメでしょ」
望彦/あ、マジで? それは赤貧には嬉しい。ありがとう。
GM/「……それとね、電話したのは貴方が通っている大学で事件が起きたって聞いて。望彦と同じぐらい男の子が学校で事故に遭ったってとか聞いたからね。ちゃんとウチの子は生きてるのかしらって確認したくて」
望彦/あー、辛うじて生きてるよ。それは俺も聞いた……変な事件だったけど。
GM/「心配だから、ちんすこう3ヶ月分じゃなくて4ヶ月分にしようかしら。とにかく、体大切にしてね、事故に遭わないでね、ちゃんと大学行かないとダメよ!」とお母さんの心配性トークが続く。
望彦/母さんも気をつけろよ。。
GM/「沖縄の次はどこ行こうかしらー」カチャリと……電話が切れます。げほげほっ。
望彦/じゃーねー……ん?
GM/げほげほっ。貴方は咳払いをした。
望彦/なんだろ……ごほごほ。喉が詰まる感じ?
GM/ええ。げほげほ……ひゅー、ひゅーっ、貴方は息を吸う。必死に息を吸う。
望彦/深呼吸ー……。
GM/吸えません。
望彦/ぐっ!? な、なんだ……お前らか! 幽霊の方を向く!
GM/「エエェッ? ボ、ボクラジャナイヨ!」と近くの幽霊達はふるふる首振ってる。その間にもげほげほ、げほげほ……どんどん息が吸えなくなっていく。
望彦/あ……う……膝をついて倒れ込む……救急車……。
GM/だんだんと脈拍が上がってくる。目の前が真っ赤になってくる……そこにぷるるるるーと電話の音。
望彦/電話、取ろうと手を伸ばす……。
GM/だがその手は届かず、コールが数回終わり、自動的に留守電モードになってしまう。「望彦ー、言い忘れたけどシーサーが五十匹ぐらい貰えそうなの! 魔除けにはなるわね、かさ張るけどちゃんと受け取るのよー!」
望彦/……受け取れなくなりそう! それより救急車を……!

 電話に手が届かず。助けの声も届かず。
 息が止まった体は、そのまま生態活動さえもできず。
静かに動きを止めるのだった――。


 今日もまた、多くの命が生まれ、死した。
 在る場所では産声が上がり、また在る場所では認められた死。
――しかし、私はあのような乱れを許さない。
 数は多い。けれど、一つずつ正していかなければ…………。
 世界だって許さない形はある。


 ★???


 貴方達は、ある場所にいる。
 暗い、渦を巻いた空間。でもハッキリとした居場所。貴方達は貴方達の足で地に立ち、ここにいる。しかし、そこはどこだろう。
 誰もが思ったとき――貴方達は、貴方達が見えた。


GM/渦巻く空間に、男達が立っている……お互いの姿が見えました。
昌幸/……あ、どうも。
勇規/どうも……こんにちは。
望彦/どうもって……え? アンタら誰だよ!
GM/「だ、誰でしょう?」……そう、貴方達は6人。何もない、黒い空間に……でもお互いの姿はハッキリと見える場所に立っている。
優斗/……6人? 6人いるのか?
GM/貴方達5人と、……金髪の男の子がいる。「あ、アンタ達は?」
恐一/っていうか俺は、サキに刺されて……。
望彦/……あれ、苦しくない?
優斗/そういや、僕はホームに落とされて電車に……。
昌幸/と、父さん! 母さんは! ……え、ここはどこだ?
勇規/えっと……よく判らないけど、自己紹介とか意味不明にやっちゃう?
恐一/……ああ。なんでこんな所にいるのかサッパリ判らないが、一応やっておくか。俺は青森恐一、四十三歳。ライターを仕事にやっている。
優斗/あ、同業者だ。僕、高校生なんだけど編集社にバイトしてるんだ。名前は、浅霧優斗。どう呼んでくれても構わないよ。
GM/自己紹介をし始めたので、金髪の少年も話し出すよ。「えっと、ボクの名前は……春原タロウです。趣味は散歩で、特技は足の速さが自慢です!」
優斗/へえ……金髪だけど、それ色抜いてるの?
GM/「う、うん……そんな感じ?」
勇規/年はいくつ?
GM/「え、えーとね……十六かな? さっきまで散歩していた筈なんだけどなんでかここにいるし……」
勇規/……俺は里山勇規。大学生だ。
望彦/あ、アンタも大学生なんだ。俺も大学生、三日原望彦っていうんだけど。小岩井大学な。
勇規/……ん、同じ大学だ。奇遇。
恐一/若いなお前ら。……で、そこの落ち着いてないお前は誰だよ?
昌幸/誰って失礼ですね! アンタの方が年長者のくせに落ち着きなく見えますよ! 俺は、村上昌幸っていいます。
優斗/高校生? 僕と同じぐらいかな。
昌幸/あ……高校生じゃないんだ。……ちょっと職探し中。
望彦/……バイトか。生暖かい目で見る……生きてくって大変だよね。
恐一/まっ。少年よ大志を抱けってヤツ?
勇規/オッサンに言われたくないよ。……ともあれさ、ここどこなんだろ。真っ当な場所じゃないのは判るんだけど。
GM/真っ暗だけどお互いが判る渦巻いた世界。――そんな中、声が聞こえる。貴方達全員に……男とも女とも判らない、けれど確かに聞こえてくる声。「……チカラだ」
恐一/なんだっ?
GM/「チカラという概念。人や動物にもともと備わっている、自らの動き、または他の物を動かす働きかけのこと」
望彦/声がした方を向く、誰だっ!?
GM/「そうだな、――では」貴方達の中央に、……一筋の剣が突き刺さる。中世の中剣から大剣にかけてのもの。いかにもファンタジックな剣が話すかのように声がする。
昌幸/ええぇっ! 剣が突き刺さるって……エクスカリバーかっ?
GM/ピクリ。「……なんで知ってるの?
昌幸/えっ? あ、いや、なんとなく言っただけなんだけど!(笑)
勇規/なんてベタな……というか、剣って話すもんだっけ。
GM/剣は話し始める。「……お前達は、死んだ。生態活動を止められた。肉体を切り離された者もいれば、機械に臓器を押し潰された者もいる、水圧に負けてしまった者もいる。何らかの作用により、肉体は死亡した」
望彦/……やっぱり死んだんだ。ということはまさか、ここは死後の世界!?
GM/「だが、お前達の魂……エーテル体はその死を認めなかった。
 それは、通常の世界であれば認められぬ死だったからだ。お前達が受けた死は、この世にあってはならぬ式。間違いだ。お前達は誤った形で死を迎えてしまった。
 世界はそれを許してはならない。例えば、重力があるものは比重を反転させることは許されない。世界が許す作用……風などが逆らうのであれば目を瞑ることはできるが、あらぬものによる力は世界を壊す。システムを破壊する。破壊する要素を決して世界は許さない。許してはならない。システムの崩壊、それは世界自体の崩壊だ。
 だから世界は、一つずつ正していくことを決めた。
 誤りを正す。単純に其れを行う。まずはテストプレイだ。死に逝く六百のうちの六つを正そう。あがなえ、正せ、あるべき姿に……」
昌幸/……。
望彦/……。
恐一/……。
GM/「……意味、判らない?」
勇規/……わりと。
優斗/……あの、剣が「判らない?」って訊いたの?
GM/「うん」
恐一/……えっと、お前、誰? 何? 男、女? ……一個ずつ話していこうか。
GM/「う、うん! わかった、一つずつ話していくね!」
優斗/なんかいきなり可愛い喋り方になった!(笑)
GM/「や、やっぱりカッコ付けたら判りづらいよね……えっとえっと! ワタシの名前は、エクスカリバーたんです!
昌幸/エクスカリバー……「たん」!?(笑) 「たん」は必須なんでしょうか!(笑)
GM/エクスカリバーたん、です。もえたんとか、びんちょうたんみたいな感じで。
恐一/パチモンくせえ!(笑) ……俺まで付けなきゃいけないのか?
GM/「だってそういう名前なんだもん!」やっぱりビジュアル的には剣が喋ってます、どうやら女の子の声っぽいね。
望彦/は、はあ。とりあえず……エクスカリバー、たん? 話を続けてくれ。
GM/「うん! ……まっ、ぶっちゃけた話。貴方達の死はちょっと異常なんです。自動的な死である老衰、何らかの作用による死……ウィルスによる病死だったり、人の手にかかったり自然だったり……でも貴方達が迎えた死はその人の為にに与えられるべき『寿命』とは違う死に方なんですよ。ヒトは、必ず『寿命』に向かって生きている。エンディングは決められていて、生まれたその時からその人の寿命まで突き進むようにルートが組まれている。その間、どんな進み方でエンディングに向かってもいい。ヒトの人生の中で決められているのは『必要最低限イベントを通過する』ことと『寿命に辿り着く』ことだけ。それがこの世界のシステムであり、常識です」
勇規/……確かに、常識的に『水が飛んできて死亡』とか考えられないな。
恐一/俺も姪っ子に刺されるなんて……直前まであんなに懐かれてたんだぞ、不自然だな!
昌幸/それは単なる反抗期だったんじゃないんですか? ロリコンとかポリゴンとかそういうの最近流行ってますし?(笑)
恐一/……おい、お前。俺に喧嘩うってるのか。
望彦/……俺も『何も無い所で窒息』なんてしないよな、普通……。
昌幸/俺の頭まっ二つは……そういえば父さん達は!?
GM/キョロキョロ見回してもいませんよ。すると春原くんもハッとする。「そ、そういえば、アイツは!?」
勇規/……なんかあったのか?
GM/誰かを捜して焦っている、村上くんとと同じようにだ。……おそらく彼も『誰と一緒に』死んだんだろう。――エクスカリバーたんは話を続けます。「簡単に言うと、貴方達の死に方は『あってはならない死に方』なんです。エーテル体だけの存在は、世界的にはどうしても困った処理をしてしまう。判りやすく日本語で直すとエーテル体は『幽霊』ですね。幽霊による作用は、世界では認められていません。世界というのは、その名の通り貴方達が住む世界。もっと判りやすく言うと、……セカイたんっていう萌えッコがいるとします
昌幸/セカイたん!?(笑) またそこでもたん付け!(笑)
GM/「セカイたんは一つ一つ規則に基づいて仕事をこなす委員長タイプなんです。リンゴを塔から落としたら下に落ちる、育ちすぎた生き物はヨボヨボになって死ぬ、心臓が傷付いたら死ぬ、とかね。毎日みんなを正そうと頑張っている働き者なんですよ」
恐一/頑張ってるんだな、セカイたん! ドジっこなんだな、セカイたん!(笑)
勇規/……少し黙ってろよ。
恐一/……はい。
GM/「そんな規則が沢山沢山あります、星の数ほど……そんなレベルじゃないぐらい。概念そのものだから沢山あるんだけど、そのリストに載っていない式というのが必ずあるんですよ。
 例えば『姿見えぬ者により押し出され電車に轢かれ圧死』とかは認められたリストに載っていない。その他諸々、悪い幽霊の悪戯を言い出したらきりがない! セカイたんは怒りました。『もー、なんでそんなことするなよー! みんなこんがらがっちゃうじゃないのー!』
 そこで考えました。『もうっ、そんなことしちゃダメ! 今の無し! そんでもって、そんな事した悪い子は仕返ししちゃうぞぉ?』ぷんぷん! ……委員長であるセカイたんはそれを実行することに決めました」
望彦/……『それ』って?
GM/「貴方達は死んだ。しかし、世界はまわり続ける。たった一人の生き物の間違った死など世界は振り向かない……筈でした。
 だけど、世界は振り向いた。『間違いは正そう』と動きを見せたのです。しかし、世界が一つずつ修正を零すには手が足りない。そこで、……これは特例なのです。『貴方達の力で誤りを正すことができたら、死した貴方達の世界を直してやろう』。言葉を砕いて更に言うならば、『死ぬ前に貴方達の死を食い止めることができたら、免除してやろう』……わかる?」
昌幸/それは、生き返らせてくれる……ってことか? 父さん達も含まれるのかっ?
GM/「うん。時間自体を戻してあげるから、『誤り』を起こした張本人は滅せよってコト。それぞれの死にはそれぞれの理由があります。ちょっとだけこっちがいじくってあげるから、『貴方達は生き延びてください』。生き延びるスベを与えましょう。運命を覆すことができたら、貴方達はそのまま普通の……間違いではない生を歩いていける。元の寿命へ進めるの。……これは、特例です。一日6万人の人達が亡くなっているんですよ。でもその6万人の人達を一気に全部助ける訳にもいかないから、貴方達6人はセカイのテストプレイってワケ。――とりあえず、どうかな? やってみない?」
勇規/やった奴を倒せばいいんだよな? 張本人を消せば……俺達は生きていける。
優斗/要するに、セーブ&ロード。寿命でない死を起こした奴を殺せってことか?
GM/エクスカリバーたんは地面をぴょこぴょこ跳ねます。「その通り。セカイたんは貴方達には寿命まで生きてほしかった。そう最初に決めたんだから予定通りになってほしいと思ってる。けど悪者によって貴方達は生き方を邪魔されてしまった。セカイたんは貴方達が悪役に邪魔される前まで逆行させてあげる。だから邪魔されず、貴方達が彼らを邪魔してほしいの! ……世界の修正に手伝ってほしいのよ」
優斗/時間を逆行して……その『間違った死に方』を迂回するだけっていうのは無理なんだな? 例えば、俺が電車に乗らずに帰ったとしても……。
GM/「駅に行かなくても交通事故で死ぬかも。悪者による『間違った必要最低限イベント』を起こされ、死ぬことになる。『イベント』というのは人間が人生において最低限通らなければならないもののことよ。悪者はセカイたんが認めないイベントを作ってしまう……だから、悪者自体を倒さなきゃいけない。じゃないと貴方は何度その日をやり直しても悪者に殺されてしまうから」
望彦/元を断たなきゃ、生き延びられない……ってことか。
GM/「誤りを正せば、どんな生活をしていてもどんな時間を辿っていても寿命まで到達できる。その元のこと……敵を、幽霊の中でも悪い奴らで『怨霊』って言うの。でも幽霊が全部悪いってワケじゃないんだよ? 悪い幽霊のことを『怨霊』って呼ぶの」
勇規/……そっか、やっぱ本当に幽霊っているんだ。
優斗/いるんだね、やっぱり。僕には見えないけど……僕には僕を殺した怨霊がいて、オッサンにはオッサンを殺した怨霊がいるの?
GM/「そうね。セカイたんは毎日、怨霊で殺される人達がいる今を嘆いている。なんとかしなきゃって思って、重い腰を上げたの」
恐一/いい幽霊も結構いるもんだぞ……あと、オッサンって言うな!
勇規/……オッサンだもんな。
昌幸/そう、オッサンじゃないですか……体無い筈なのに煙草臭いんですよ、貴方。
GM/さっきから村上くんと里山くんが厳しいなぁ(笑)「あっ、一応テストプレイで6人選んだけど、別に単独で戦ってもいいんだよ。その場合、単独の力しか使えないけど。ほぼ同じ日で死んでるんだし、同じ地域で生きていたみたいだから協力するのもいいんじゃない?」
望彦/そうだな、助け合い精神って大事だよな……。
勇規/ここで出会ったのも何かの縁……ってことで。
GM/「うん、――じゃあ次に! 流石に怨霊とポコスカはできないから、貴方達に加護を与えます!」エクスカリバーたんがカツーンとならすと、貴方達の手に……武器が現れます! 既にキャラクターメイキングの時点で選んでもらった武器が手にありますね。
恐一/おっ! 右手に日本刀が……また物騒なものを。
優斗/おお、僕は斧か。ぶんぶーんって振り回してみる! ……片手で扱えるしいいなコレ。
昌幸/なんか、二つも変な機械なんだけど……がちゃがちゃ、ビーム!(笑)
優斗/かっちょええ!(笑) そうだ、この際だからぶっちゃけとこう……僕、白魔術が使えるんだ。死んだじっちゃんが教えてくれたから。
望彦/あ、俺も……黒魔術の方だけど使えるし、怖いものも見える。見ないようにはしたけどな。
恐一/……俺もな、一応霊が見えたりしていた。実家がちょっとな。
勇規/俺の手には銃……があるけど。それは判るんだけどさ、このグローブみたいなのは何?
GM/殴るんじゃない? 里山くんも怨霊を殴る手段とと銃を撃つ知識を得て、村上くんは唐突に心霊機械の知識を手に入れたってことだね。あと武器があるヒトは名前をご自由に付けて構わないよ。名前を付けたら力がこもるって言うし。
恐一/……キョウイチだから、キョウジとかにしようかな?(笑)
GM/ちなみにコレ、お金とります。
一同/ええっ!?(笑)
GM/日本円でいいよ。……ゲームシステム的なことを言うと、現代日本に相応しくないアイテムはこの異空間で購入できます。護符とかね。――この武器は、例え銃を手にしていても、日本刀を手に握っていても、一般人には接触できないし干渉されない、知覚することもできないわ。一般人にはね。
優斗/それに反応するってことは、幽霊?
GM/ええ。斧を振りかぶっていても一般人から見れば「何やってるの?」。持ち歩くことは可能で、もし斧をカバンに入れていても「それ何が入ってるの? ……何も入っていないじゃん」ってことになります。干渉できないんだから、透明でも本当に透明って感じ。何も見えないけど当たるということでもなく、一般人にはスカッ。斬れないし安全です。それと、特別ルールで『ミスティック以外でも全員幽霊を見える』ことにします。これはPLの宣言で行い、【知覚力】素振りで霊感知ができるということです。ですが、通常の【霊能力】はミスティックが使うのがいいでしょう。そして、貴方達が戻る時間は、貴方達が動きやすいであろう時間になります。

「というワケで、みんな――頑張って」
 運命を変える。
 世界を在るべき姿に正すのは貴方達。
 死から逃れようとする姿、見せておくれ――。


 ★深夜


 気が付くと、そこはあるマンションの一室でした。
 名前は、……みどりハイツ。


恐一/ここは……俺の部屋だな。
昌幸/オッサンの? むさ苦しい部屋ですねえ。あ、散らかってますよ。こっちには埃が……。
恐一/お前な、姑か!(笑)
勇規/冷蔵庫の中、何か入ってるんだろ。がちゃっ。
恐一/勝手に見るな!(笑) しかもそんなことしてる場合じゃないだろ!?
GM/――とりあえず深夜、真っ暗なみどりハイツ・オッサン宅です。見渡すと散らかっているいつものオッサンの部屋です……テーブルに剣が刺さってる以外は。
恐一/おい、人んちのテーブルに!(笑) 結構高かったんだぞソレ!
勇規/エクスカリバーたんだから干渉されてないだろ、……本当に刺さってないんだからつまんねえな。
恐一/おいそこ! さっきから毒あるぞ!(笑)
優斗/……今、何時なんだろ。テレビでもつけようか?
GM/つけなくても、テレビの下にビデオデッキの時計があるね。時刻は、草木も眠る深夜2時だ。
優斗/何日だろ……テーブルの上にでも新聞がないかな?
GM/じゃあリビングのテーブルの上に新聞があった。書かれているのは、昨日の配達分らしき『4月1日』が……。
望彦/つまり今日は、……4月2日?
GM/それを聞いて春原くんの顔色が変わる。「……俺が死んだ……日?」
勇規/……お前が死んだ日か?
GM/「さ、散歩に行っていたのは4月2日の……早朝なんだ」
望彦/じゃあ、時間に余裕が無い! お前、どこで死んだ!?
GM/「新座市東北1丁目……」春原くんはマンションのカーテンを開けて外を見ます。「ここは、志木駅? ならそんなに遠くはない!」
恐一/俺の車が地下にあるから行くぞ! 行こう!
GM/「あ、ああ!」それでは車に乗って東北一丁目に向かいます。1台の車に6人の男達を乗せて……。


 ★東北一丁目 某路地


GM/ギュルルルー、とオッサンの素敵な運転テクニックにより着く。ドリフトかますぜ!
昌幸/ちょっ! いくら夜だから人通り少ないからって危ないですよ!
恐一/早く着いた方がいいだろが、俺達は瀬戸際なんだぞ!
GM/ええ、――そんな真夜中の路地。人通りは無いところです……早速だけど【霊能力】判定をしてください。
望彦/(ころころ)成功!
恐一/(ころころ)同じく成功。
GM/ではミスティック2人には見えた。……路地の先で何かが蠢いているのを。ぐちょぐちょしたやつがいるのを。
望彦/……なんだ、あれ。
勇規/何かいるのか? そっちを見ます。
GM/ぐちょぐちょ……ぐずらぐずら。なんとも言えないもの、しかし見ているとなんだかどんどん『チカラ』が強くなっていくようにも見え……形を成していくように思える!
優斗/……あれが、怨霊なのか?
GM/そして、あれに反応するかのように、春原くんがガクガク震え始める。「アレに、俺達は……!」
恐一/大丈夫か、春原っ?
GM/「だ、大丈夫です、けど、アイツラに俺達は襲われ……た……」
望彦/……大丈夫だ、俺らで未来を変えるんだ。だから、一気に叩くぞ――!

 ●戦闘/1ターン目
GM/貴方達5人と……4ついる怨霊との距離は十メートル。うにょうにょしたものはどんどん力を増していく、おそらくこれから更に……。怨霊ABCDともに敏捷値は5です。順番は勇規→優斗→昌幸→恐一→望彦だから、怨霊は望彦くんの前ですね。それでは戦闘開始!。
勇規/何かよく判らなくて怖いんで、銃撃ってみます! Aに向かって……(ころころ)44、成功です。ダメージは7!
GM/パァンッ! 里山くんは手の中の銃弾を放つ……と怨霊の体に当たる! どうやら、さっきのチカラが目に見えているように実体化してきているようだ。
優斗/攻撃当たるんだね? よし、僕は前に出る! 移動して怨霊Aに接敵、斧を振り回すよ!(ころころ)30成功、ダメージ11点! うりゃああぁっ!
昌幸/同じく俺も……【心霊機械】の怪光線2いきます! 怨霊Aを倒しますか。(ころころ)58……失敗です。ボスッ! さ、さっきは出たのになぁ?
恐一/次に俺。【霊能力】でエーテルフィストいきます。(ころころ)35成功……6のダメージ!
GM/Aはパンガスドスと3人分のダメージを食らいました。――それでは、怨霊達4匹の行動。(ころころ)Aは優斗に5のHPダメージ。(ころころ)Bも攻撃したけど失敗。(ころころ)Cは勇規くんに3点ダメージ!
勇規/うっ。(ころころ)回避成功なので1点だけ食らいます。
GM/そしてDは、ふよんふよんしている……まだ実体化がうまくできていないようだ。攻撃は優斗の方に(ころころ)4のHPダメージ!
望彦/つまり、DにはMPダメージじゃないと効かないか。でもとりあえず一番最初は全員にダメージのいく【魔術】電撃を使うよ! いいか全員、目を瞑れー!(ころころ)05……大成功?
一同/おおっ!
望彦/ダメージ2倍で……全員に16点のダメージだ、雷をバリバリバリィ!
GM/電撃が怨霊達を襲う! バリバリ直撃し……Aはフッと姿を消した。消滅したらしいね。けどふよふよしているDは食らっていないようだよ。

 ●戦闘/2ターン目
勇規/今度は目の前にいるBにリボルバーで攻撃します。(ころころ)あれ、04でクリティカル……ダメージ2倍で20点です!
GM/ぐあ、それはBも消え去ったな。
優斗/兄ちゃん強ぇな! 僕はCに攻撃いくぜ!(ころころ)え、01……キタコレ、絶対成功だ。18点ダメージだよ!
GM/おお、これはいくわ。Cもパァーンと弾けた!
昌幸/俺はMPダメージいけるので……【心霊機械】の生体磁力放射線をDにいきます。(ころころ)成功、ダメージは4点!
GM/ミミミミと村上くんの不思議機械から波動が! ふよふよしているDに確実にダメージが入ったようだよ。
恐一/じゃあ、Dに【霊能力】アストラルフィストで頑張ります!(ころころ)失敗した、すまん!
GM/では、Dの行動。目の前にいる優斗に攻撃いきます。(ころころ)あ、失敗した。
望彦/俺もアストラルフィストしかないな。(ころころ)09って……クリティカルだイヤッハーイ! 10点ダメージでぶん殴る!
GM/ぐはっ。……けどまだDは落ちないよ。

 ●戦闘/3ターン目
勇規/MPダメージが無いので応援する。とりあえずみんな頑張れ!
優斗/僕も回避専念。みんな、やっちまえー!
昌幸/今度こそ生体磁力放射線、いきます!(ころころ)お、成功! ダメージの値は9のダメージ!
GM/ビビビビ、ボフゥッ! ――村上くんのビームをくらってDは光となり……一帯が大人しくなっていくのが判った。
勇規/……終わったな。

GM/人魂らしきものがどんどん形になりつつあったけどもういない。貴方達には判る……ここにはもう危険なものがないことに。時刻は3時くらいかな?
優斗/春原、大丈夫か……?
GM/振り返ると、春原は胸を抑えている。グッと拳を握って怠そうに……ハァハァと息を吐いている。
望彦/ほ、本当に大丈夫か? トリートしてやろうか?
GM/「あ、あぁ……すいません……そういう問題じゃないですので。でもアイツらをしたってことは……襲う奴がいなくなったってことですから……?」
望彦/ああ、とりあえずお前は大丈夫になったってことだな。お前は生き延びたんだよ、春原。
GM/それを聞いて青い顔になりながらもにこり笑う。「良かった……これで、彼女も生きていけるんだ……」
昌幸/……彼女? お前と一緒に死んじゃった人か?
GM/「ええ……もう平気なんですよね……みんなには戦ってもらって、俺一人だけ何もできなくて……助けてもらっただけなんて……ゴメンなさい」
望彦/いいや、これから全員が全員助かるように頑張るんだからいいんだよ。
恐一/ああ、――みんなで生き残ろうぜ!
GM/「そうだな、みんなで……生き残ってくれ」
勇規/……うん?
望彦/ま、まぁ……お前は一足早く生き残ったワケだけど……春原?
GM/――バタンッ! 春原は地面に突っ伏す。
恐一/お、おい春原!? 大丈夫か、起こします……!
GM/起こそう……オッサンが春原の体に手を掛けようと思った時。――もうそこには春原の姿は、無い。
恐一/……えっ!?
優斗/なんでっ? ……エクスカリバーたん、どういうことだ!?
GM/エクスカリバーたんなら車に刺さってますよ。
恐一/俺の愛車に!?(笑) 人の物に刺さるのが趣味なのかエクスカリバーたん!(笑) ……それより、どういうことなんだ!?
GM/エクスカリバーたんは刺さったままうーんとうーんとと悩んでます。「あのね、これはね……テストプレイなのよ」
昌幸/あ、ああ……そう言ってたよな。けど?
GM/「とりあえず世界に味方してくれる力を持つ者として6名選出して、悪い子を懲らしめてもらおうと思ってたの、セカイたんは。だから貴方達は死に逝く中の例外。そしてあのコも例外でね、……特例中の特例だったの」
勇規/……どういうことだ、それは? 春原はどうなったんだ。
GM/「……寿命よ」
恐一/え……あんな若いのに?
GM/「うん、あんな若い『姿にしたのに』。――それじゃっ、次の運命にいきましょうか!」


 ★エンディング


 四月二日の朝、ふたつは走っている。
 たったった。たったった。
「あー、もう、なによ、いきなり元気になっちゃってー」
 はっはっは。
「どうしたの? なんかいいの見付けた?」
 ぶんぶん、ぶんぶんぶんぶん。
 ……はっはっは。
「あんまりこっちは来ないからね、たまにはいいか。毎朝同じ散歩コース行くのも飽きるもんねー」
 はぁはぁ……はっ。
「……大丈夫? 貴方は年だって言われてるんだからぁ……もう十六歳なんだし。そっちは電灯も無くて暗いから気を付けなきゃね。まぁ変な人はいなさそうだし平気か。
 出たら出たで守ってね、タロウ」
 ――わんっ!


望彦/……だから、『特例中の特例』か!
GM/ええ、十六歳って言ってました。実年齢に直すと……尚かつ、一緒に散歩していたところを巻き込まれた言うとった上、金髪とも言ってましたから……。
一同/……ゴールデンレトリバー!