ルリルラノイシュタルトハイ・リプレイ・異次元メルト
■ 第1話 『転成ヒイロウズ』 ■
2008年11月8日




【リプレイ「異次元メルト」とは?】
メアリー/このリプレイは、キャンペーンタイトル『異次元メルト』と呼ばれる連続TRPGセッションを編集したものでーす。
市/今回のテーマは「TRPGクロスオーバー」です。別作品のものを同一作品の中で共演させ楽しむパロディのことをクロスオーバーと言います。今回は、TRPGシステムでそれを行っています。
メアリー/だから……元になったTRPGシステムを知っていれば知っているだけ面白くなるってことね!
市/すべてのTRPGシステムのルールブックを読むってとても大変です……。でも、全部読んだことある人なら凄く楽しいでしょうね。
メアリー/読んだことなくても面白いわよっ!
市/今回のキャンペーン『異次元メルト』では、プレイヤー内で以下の条件でTRPGシステムを選択されています。
@TRPGサークル「サイコロ倶楽部」で、サークル所有されているTRPGルールブックであること。
Aプレイヤーキャラクターとしての使用システムは、必ず1度以上は実際にプレイしたことがあり、またそのシステムを愛していること。
Bプレイしたことないプレイヤーのために、いつでもルールを解説できる環境であること。



【プレイヤー紹介】

 今回、キャンペーンで活躍する参加者様をご紹介します。

GM/マーサー
よく遊ぶシステム→『ガンドッグ』『巨神戦記ギガントマキア』『ゴーストハンター02』その他、トークゲーム全般。
 サークル4年生。過去にガンドッグ、ギガマキ、ゴーストハンターなどで長編リプレイを発行し、「4年目でもまた長編キャンペーンをやりたい!」という野望からルリルラ立卓を決意。「口からデマカセ」が出来るTRPGが大好き。
 なお、このリプレイ本の編集全般をしています。趣味は3日でリプレイを作ること。「ジェバンニ」は褒め言葉です。

▼PL/
よく遊ぶシステム→『アルシャードff』『ダブルクロス2nd』『アリアンロッドRPG』『ソードワールドRPG』。
 サークル4年生。2年生のときにアルシャードで長編キャンペーンのGMを体験。今作では、アルシャード出身のパンツァーリッター・英雄ヴォルトを演ずる。
 GMのマーサーとは同学年で、リプレイ処女作から表紙イラストやキャラクターカットなどを担当してもらってます。速筆で頼りになるメインビジュアルさん。実は今回、マーサーのキャンペーン初参戦。

▼PL/すずか
よく遊ぶシステム→『ゲヘナ』『特命転攻生』『アリアンロッドRPG』『巨神戦記ギガントマキア』。
 サークル2年生。1年生のときにゲヘナで長編キャンペーンのGMを体験。しかし今作は「歌」に関係があるルリルラということで、特命転攻生出身のロッカー・英雄の石巻翔吾を演ずる。
 今回のリプレイでは校正と、NPCイラストを描いてもらってます。可愛らしいNPCや、不思議な生き物をどうぞお楽しみあれ。

▼PL/辰巳
よく遊ぶシステム→『ガンドッグ』『エムブリオマシンRPG』『アリアンロッドRPG』『ダブルクロス2nd』。
 サークル2年生。様々な世界観のゲームに挑戦し、単発でサイコロ倶楽部の公式リプレイでGMを担当した。今作は、ガンドッグ出身のコマンダー・英雄ビクトルを演ずる。
 今回のキャンペーンにGMから無理言って参加してくれたのも関らず、校正までしていただきました。ところどころに入るガンドッグ的な台詞のチェックは『メルト』の楽しみ方のひとつですよ。

▼PL/ユウ
よく遊ぶシステム→『ニルヴァーナ』『ゴーストハンター02』『ゆうやけこやけ』『ソードワールド2.0』。
 サークル2年生。1年生のときにニルヴァーナで長編キャンペーンのGMを体験。今作では、ゆうやけこやけ出身の狸・歌姫きずなを演ずる。キャラ描写が巧いので多くのNPCを演じてもらってます。

▼PL/まりも
よく遊ぶシステム→『ゴーストハンター02』『ギア・アンティーク』『アリアンロッドRPG』『Aの魔法陣』。
 サークル1年生。今作では、ゴーストハンター02出身のミスティック・歌姫の春日市を演ずる。まさしく今回のヒロインとも言える「あわあわ、でも負けません!」な女の子を演じてくれました。

▼PL/ひろ
よく遊ぶシステム→『ローズトゥロード』『エムブリオマシンRPG』『迷宮キングダム』『幻奏戦記ルリルラ』。
 サークル1年生。今作では、ローズトゥロード出身の丘小人・歌姫メアリーを演ずる。ライトなヤンデレロールは天下一品。人を振り回すギャグと萌えを掴んだ演技をご覧ください……。


【GMの言葉】
 こんにちは、マーサーです。
 今回のキャンペーン『異次元メルト』はいつになく特殊なTRPGリプレイとなっています。
 まず、先にも語っていますが他のTRPGリプレイのクロスオーバーシナリオであるということ! これはゴチャマゼカオスが大好きな人ならたまらないコメディ要素ですが、反面、元になった作品を知らない人には理解不能なネタが満載になっているかと思われます。
 そのため、途中で原作ルールブックの注釈や解説を入れられるだけ入れようと努力を重ねました。興味が出ましたら原作を確認してみてください。皆様にとって楽しいリプレイになればと思います。
 今回のキャンペーンのテーマは……「異世界交流」と「異なった人種との理解」、そして「メイク愛」でございます。
 狸や丘小人などファンタジー特有の用語が大量に出てきますが、色んな言葉に変換してみてください。何かを感じ取ってもらえたならば幸いでございます。
 それではどうぞ、お楽しみくださいませ……。


 ★オープニング きずな


GM/それでは、ルリルラ・ノイシュタルトキャンペーン『異次元メルト』、始めたいと思いまーす。
一同/よろしくお願いしまーす!
GM/セッションを始める前にいくつか解説するけど、今回のキャンペーンでは特殊なステージで遊んでもらうためにオリジナル能力を用意しました。そのため、ゲームスタート時のキャラクターメイキングが通常と異なっていることをここでお話しておきます。

 通常、『ルリルラ・ノイシュタルト』ではキャラクターを作成するときに好きな能力を6つまで自由に選択できる。
 しかし今回は2つ、GMの指定した「ステージに似合った能力」を獲得し、他4つを自由にプレイヤーが選択する方式をとっている。
 そのGM指定の能力というのが1つ目[○○出身]という、元の世界(ゲームシステム)を表現したものと、2つ目[その世界特有の特殊能力]となっている。


GM/それでは一番最初のオープニングは……たぬき、いこうか!
きずな/たぬっ!

◆ステージ名/『ゆうやけこやけ』
◆システム説明/略称は『ゆうこや』や『ゆうやけ』。著者は神谷涼(つぎはぎ本舗)。
 とある日本の田舎町「一名町」。人間よりも、兎や狸が多く遊んでいる平和な世界。町の人々は動物達と共存し、子ども達は何の気兼ねもなくもののけ達と遊び、老人はあたたかくそんな子ども達を迎えてくれるという、「ほのぼのあったかろーるぷれいんぐげーむ」。
 戦闘などの殺伐としたシーンが一切発生しない、絵本のようなやさしい世界観をテーマ。PCは人間に化けることが出来る『変化(へんげ)』になり、困っている人を助けていく。『ごんぎつね』や『つるのおんがえし』などの日本昔話をイメージする日常描写TRPG。
◆オリジナル能力/[ふしぎと想い]
 条件→[ゆうやけこやけ出身]がある。
 効果→シナリオ中自由に、以下の3つの効果を使用できる。
@「おかね」→木の葉やどんぐりをお金に見せることができる。
A「なんでもへんしん」→茶釜や岩、人(まねっこ)などのような道具や自然物に化ける。
B「ゆめまぼろし」→たぬき的な幻を周囲全てに見せる。ただし、消費コストは消耗チェック気力×2回か2D10MP消費とする。あくまでたぬき的演出に則る。

GM/ここは……一名町。夏休み真っ只中の青空の下、遊び甲斐のある日です。いつも遊んでいる小学生達がきずなを誘いにやってきます。
きずな/あっ、熊の田吾作たぬか! 今日は何をして遊ぶたぬ〜?
GM/「野球しようぜ!」と言いながらもテニスラケットを持ってきたりバトミントンの羽やサッカーボールを持ってきてる。
きずな/色々混ざりあってるたぬー!(笑) いつものようにみんなとワイワイガヤガヤ遊びます。
GM/平和な田舎の夏休み風景です。子供達が遊んでいると、きずなと一緒に住んでるおばあちゃんが「きずなやー。スイカが冷えてるよー。みんなで食べなー」と呼びかけてくれます。
きずな/わーい! スイカ食べるたぬ、瓜も食べるたぬー! パタパタみんなで食べに行きます。
GM/モシャモシャみんなでがっつきながらスイカタイム。「今度はあれで遊ぼうぜー」と熊の田吾作達が言ってる中で。……ある女の子がキョロキョロと誰かを探しているのを見かけます。
きずな/たぬ? どうしたたぬか? 女の子の顔を覗き見るよ。
GM/その女の子の名前は……おんぶちゃんといいます。

◆おんぶちゃん
 いつもアワアワ慌てている、ふわふわの髪の毛をゴムで結んだ女の子。その正体は、道怪(みちのけ)という、土地に住む下級の妖怪。
 『ゆうこや』のサプリメントブック『もののけこやけ』のサンプルキャラクターとして掲載されている主役級の存在で、物怪チームの顔ともなっている。


GM/「えーと……あーと、うう……いない?」
きずな/おんぶちゃん、どうしたたぬか? 何を探してるたぬ?
GM/「あう……いない……い、いなくなっちゃった」
きずな/いない? おんぶちゃんが?
GM/お、おんぶいる! おんぶはいるもんっ! いないのは……スミレちゃん、いない!
きずな/スミレちゃん?
GM/名前を言われれば判る、スミレちゃんという女の子が確かに居なくなってます。その声を聞くとスイカを食べていたみんなも「あれ、いないね」「そういえばいないねー」と騒ぎ出す。
きずな/あれー……どこ行ったたぬか。みんなで探すたぬ!
GM/「かくれんぼかな?」「今まで遊んでいたのになんで?」
きずな/探すたぬ。鍋のフタを開けたり、引き出し開けてみるたぬ。
GM/……そうしていると、もう夕方になってしまいました。
きずな/わっ……全然見つからないたぬ。
GM/「先に帰っちゃったんじゃない?」「もうオレ、時間だから帰らなくちゃ」とみんな言い始めます。
きずな/たぬはもうちょい探してみるたぬ!
GM/「じゃあ神社の方にも行ってみるのじゃ!」と狐の女の子が提案。するとみんなはトコトコと神社に続く山路を駆けていき……。
きずな/ま、待って〜! みんな、足が速いたぬ〜! ポテポテ……。
GM/「スミレちゃーん!」「どこー?」とみんなが言う中で……。

 パチン。
「たぬっ!?」
 突然の閃光。目を閉じて、気付いたときにはきずなは……先ほどとは全く違う、見たことのない山道に取り残されていた。
 近くにあった杉の木は、変なサボテンのようになっている。初めて見る世界。そこは、昭和後期の風景ではなかった。


きずな/……たぬ? またみんなどっか行っちゃったたぬね!
GM/少し歩いてみますが、みんなもいないし向かっていた神社も見当たりません。あるのは荒野と、サボテンだけ。
きずな/変な木たぬ……触ると痛いたぬ。じくんじくん。
GM/そこに、バイクのようなブルルルという轟音が近寄ってくる。
きずな/た、たぬっ? 轢かれるたぬ……!
GM/――それじゃ『アルシャードff』のヴォルトさん、自由に出ていいよ。

◆ステージ名/『アルシャードff』
◆システム説明/著者は、井上純弌(F.E.A.R.)。
 北欧神話に出てくる神々の力を受け継いだ英雄『クエスター』と、宇宙を蝕む虚無の勢力『奈落』との戦いを描いたファンタジーRPG。
 バイクや重火器などテクノロジーが比較的発達したミッドガルドという舞台で、悪の帝国や世界の敵と戦いながら理想の世界『アスガルド』を目指して冒険する。
 近代的軍隊や未来風ガジェットの導入した『ファイナルファンタジー』シリーズをイメージした新世紀スタンダードTRPG。
◆オリジナル能力/[加護]
 条件→[アルシャードff出身]がある。
 効果→1シナリオに1回、2つの効果のうち1つを使用できる。
@「ヘルモード」→自由なグリッドに瞬間移動できる。
A「トール」→ダメージに「10D6÷2(切捨)」を追加する。(通常のダメージダイスに6面体を追加する)

ヴォルト/え、自由に出ていいってドコでどう!?(笑)
GM/ヴォルトさんも見知らぬ土地で迷っているっていう設定で。どうしてこんなところにいるんだろうとでも思ってて。
ヴォルト/……あんな所に子供がいる、近寄ろう。何をやってる?
きずな/たぬっ? 頭には変な狸耳を付いてる女の子がいますよ。……スミレちゃん、ゴツくなったたぬね?(笑)
ヴォルト/……スミレちゃんって、誰だ?
きずな/じゃあドコ行ったたぬ? たぬはスミレちゃんを探していたたぬ。お兄ちゃんはスミレちゃんを知っているたぬか?
ヴォルト/……知らないな。
きずな/じゃあお兄ちゃんは誰たぬか。……たぬはきずなっていうたぬ。6歳たぬ!
ヴォルト/……俺の名前はヴォルトという。
きずな/ぼぉ、ぼるとぉ……?
ヴォルト/無理に言わなくていい。
きずな/で、ここ……ドコたぬか? きずな、神社に帰りたいたぬ! みんな行っちゃったたぬ!
ヴォルト/じ、ジンジャってなんだ(笑) ……俺にもここがドコなのか判らないんだ。
きずな/神社には真っ赤な鳥居があるたぬ! 鳥居があって……コマイヌさんがいて……狐さんがいて……おんぶちゃんがいて……うわーん! みんなのところに帰りたいたぬーっ!
ヴォルト/ああ……泣かないでくれ。
きずな/なんでここ、たぬしか居ないたぬかーっ! お兄ちゃんは一体誰たぬかーっ!
ヴォルト/今さっき名乗っただろう(笑) うーん、困ったな……。
きずな/ひっく……たぬう。
ヴォルト/……ここがどこだか判らない限り話にならないから、人が居る場所を探さないか? ちょっと落ち着きたいしな。
きずな/たぬぅ……判ったたぬ。
ヴォルト/ヒョイッと抱き上げてバイクに乗せて、人を捜します。
GM/では、ヴォルトさんはきずなを抱き寄せたときに感じる。……なんだかこの人、他人とは思えないような……全然知らない人の筈なのに知っているような、不思議な感覚がする。
きずな/……ハッ! じ、実はボォールトさんは、お父さんたぬか!? 生き別れになった父たぬか!?
ヴォルト/うーん、ごめんな……知らないわ(笑)
きずな/違うたぬか……じゃあお兄ちゃんでいいたぬ!
ヴォルト/ああ、お兄ちゃんにしてくれ。
GM/ブウンとバイクのエンジンをかけます。暫くたぬを乗せて運転しますが、ヴォルトさんから見ても周りの景色は枯れた全然見知らぬ土地です。
ヴォルト/砂漠は何度か見たことあるんだがな……ここは一体。
GM/ドカーン!
きずな/ビクゥッ!?
GM/という爆発音がして、きずなとヴォルトのシーンは終わります。


 ★オープニング メアリー


GM/じゃあ次のチームのオープニング、いくよー。

◆ステージ名/『ローズトゥロード』
◆システム説明/略称は『RtL』。著者は、門倉直人(エンターブレイン)。人間以外に妖精、小人、獣人、鬼などが暮らす『ユルセルーム』という架空の大陸。様々な神や種族がいる世界で生まれ持った能力や財産、魔法の能力を用いて自分の運命に対し立ち向かっていく。
 日本初の国産ファンタジーTRPGの直系であり、繊密で幻想的名世界を堪能できる。
◆オリジナル能力/[魔法]
 条件→「ローズトゥロード出身」がある。
 効果→セッション開始時、自分のシーンになったら2D10を行い、その値に相当する「歌術」を全ランク使用できる。ただし、シナリオ終了後に自動的に消滅する。一部の歌術についてはGM判断で使用不可になる。

GM/『ローズトゥロード』のメアリーさん、貴方はどんな生活をしてますか。
メアリー/そりゃもう丘小人ですから飲んで! 食べて! 踊ってアハハウフフみたいな生活を能天気に超ほのぼのしてます!
GM/それじゃあ早速アハハウフフで飲んでください。
メアリー/(グラスを片手に)ルネッサーンス!(一同笑)
ヴォルト/(丘小人の男になって)ルネッサーンス! イイ酒が入ったぜぇー(笑)
きずな/(同じく丘小人の仲間達になって)ぷっはー、マジ酒うめぇーっ!(笑)
メアリー/飲ーんで飲んで飲んで! 豚の丸焼きをテーブルにドカッと置いて、ハーイケーキ入刀ぉーっ!(笑)
一同/(酔っ払いの集まりのように)イエェーッイ!(笑)
GM/……そう楽しく飲んでいる最中、ふわっと何かが舞い、ヒヤッと涼しい風がメアリーの首元をかすめます。
メアリー/……ひゃっ!
ヴォルト/(丘小人の男になって)あぁ? 何やってんの?
きずな/(同じく丘小人になって)どした、酒が無くなったかぁ? 飲めよぉ〜。
メアリー/う、うん。飲む飲むぅ! そのまま飲み直しちゃいます。
GM/気にせず飲み続けるか。強い酒ばかり飲んでいるので体はポカポカです。寒さなんて感じなーい……けど、妙に体が涼しい。
メアリー/ううん? なんかキモチワルーイ! もう全部飲んじゃえーっ!
GM/プハーッ! 変な気分を一掃させるために酒を煽って周りを見渡してみると――貴方は湖にいます。
メアリー/……ええっ!?(笑)
GM/周りには飲み会していたバカ共は居ません。誰一人として居なくなってますね。
メアリー/酔いも覚めるよーっ!(笑) って、なんで居なくなってるのぉ? じゃぷじゃぷ……ぷるぷるっ。
GM/辺りを見渡しますけど、見たことのない湖だ。水浴びなどをするような、ファンタジックな湖です。
メアリー/どこ、ここぉ? ああん、折角の酔いが覚めちゃったよぉっ! 上着の中から酒を取り出して、もっかい飲み直します!
GM/……上着から酒、出てくるんだ?(笑)
メアリー/体が濡れてるから暖まらなきゃ! お酒をラッパ飲みでごっごっご!
GM/そこに、ガサガサッと草むらが揺れる。音がした方を見ると、そこには一人の男性が。――『ガンドッグ』の人、出てきてください。

◆ステージ名/『ガンドッグ』
◆システム説明/略称は『銃犬』。著者は、狩岡源(アークライト)。
 舞台は近未来2016年。テロや凶悪犯罪、紛争の横行によって、数多くの国や企業が苦しみ、加速する情勢不安が世界中の人々の心を荒廃させていた。国際的保険会社組合がテロ対策のために傭兵『ガンドッグ』を雇い、様々な事件を解決していく。
 ガンアクションを中心としたハリウッド映画風な事件に関わり任務を遂行させていくSFチックなRPG。
◆オリジナル能力/[クラスアーツ]
 条件→[ガンドッグ出身]がある。
 効果→1シナリオに1回、2つの効果のうち1つを使用できる。
@「ガンアクション」→2回行動。自分のターンが終了した後、もう1度即座に行動ができる。
A「シャープシューター」→1ターンの間、武器使用成功率に+40%の修正を得る。

ビクトル/作戦行動中だっていうのにインカムが使えない! さっきからずっとオペレーターに話しかけてるのに答えないし……ここはドコだよ!?
GM/ガサガサと草むらを掻き分け迷彩服の男性がぴょこっと顔を出す。……男性の目から見ると小さな子供が酒飲んでる風に見えるね。
ビクトル/あ、あー? ……なんだ、ガキか。
メアリー/全長五十センチが酒捨てて立つよ! お前、人間だなぁ!
ビクトル/予想以上に小っちぇえ!?(笑) 人間だろってお前だって人間だろ……って、おいガキが酒飲むんじゃねぇ!(笑)
メアリー/え、オジチャンも飲む?
ビクトル/いらねーよ!(笑) 没収って言うかここはドコだ!?
メアリー/えぇ〜、オジチャン知らないのぉ〜? ……メアリーもワカンナイ! とりあえず飲んで落ち着こうよ!
ビクトル/そんな小っこいのに酒飲む奴がいるか! 嬢ちゃん、持ってる酒を全部出せ。ガキが持ってるもんじゃねえ。
メアリー/えー……。上着から三十本出します。
ビクトル/どんだけ持ってんだよ!?(一同笑)
メアリー/うるさい、弁慶の泣き所蹴りっ! べーっだ、バイバイ!
ビクトル/あたっ! ったく、イヤなガキだなぁ! ……とりあえず現状を把握しないとな。切り株にでも腰掛けて考えます。
メアリー/(戻ってきて)なんで追いかけてこないの!?(一同爆笑)
ビクトル/いや、こういう時はな、下手に歩き回っちゃいけないんだ。そういうもんなんだって。一応そういう筋の者だから言うぞ。
メアリー/ほんとぉ? じゃあオジチャンと待ってるぅ。とりあえずオジチャン飲もうよぉ!
ビクトル/ダーメ、ガキが酒飲んじゃいけません! 俺は飲むけど!
GM/……ちなみに。隣に彼女が座られたビクトルは感じた。どこか心地良い何かを……交感能力的に。
ビクトル/……。
メアリー/……。
ビクトル/……。
GM/……ちなみに、ビクトルさんは外見は良い。[能力/性的魅力]があるから。
メアリー/……オジチャン、超カッコイイ。結婚しよう!
ビクトル/早っ!?(笑) じ、嬢ちゃん。そういうのはあと十五年ぐらい待ってジェットコースター乗れる身長になってから言おうな。
メアリー/ワタシ、もう十三歳だし大人だよっ! あとオジチャン、お腹すいた!
ビクトル/……簡易食料を与えます。化学調味料的な味しかしないやつだけど。
メアリー/何これぇ。変な匂いするし食べたことない。マズイからいらなーいっ!
ビクトル/貴重なカロリーメイトがぁっ!(笑) お前、コレ食ったことないのか……。
GM/まあ、そんな掛け合いをしているときにドカーンと爆発音がする訳ですが。……君ら、行ける?(笑)
メアリー/オジチャン、抱っこして!
ビクトル/作戦行動中にそんなん出来るか!(笑) お前はそこにいろ。草むらに隠れろ。
メアリー/ついて行くよ! だってオジチャンが迷っちゃったら大変でしょっ!?
ビクトル/迷わねーよ!(笑) 訊くが、お前だって迷ってないって言えるのか?
メアリー/だってってことは迷ったことを認めるんだ。オジチャン迷ったんだ、――プッ!(笑)
ビクトル/そもそもここどこだか判らないしよ!(笑) 行くとしたら俺が先に行くから! これでもちゃんと銃を持ってるからな!
メアリー/行くよオジチャンっ! ……疲れた。おんぶして!
ビクトル/作戦行動中のフル装備の俺に背負えと!? 携行値1×1も無いだろうけど!(笑)
GM/それじゃあ、君達も爆発の方に向かってください――。


 ★オープニング 市


GM/さて、最後の1組……大正時代にいこうか!

◆ステージ名/『ゴーストハンター02』
◆システム説明/略称は『GH』、著者は安田均(グループSNE)。
 悪霊や亡霊と戦う「ゴーストハンター」になって、怪奇な事件や怪異を探索し、解決する本格的ホラーRPG。主に1920〜30年代、人類が二度の世界大戦を経験する経済やモラルが変動する時代。機械が発展し、アヤカシの神秘性が失われ、黒魔術などが人々の噂で語り継がれる中、次々起きる伝奇事件を探索していく。
◆オリジナル能力/[Aのトランプ]
 条件→「ゴーストハンター02出身」がある。
 効果→1シナリオに1回、3つの効果のうち1つを使用できる。
@GMにシナリオ解決のヒントを貰う。
A1人の通常&負傷HP、MP、そのPCの奏甲全HPを完全回復。
B1人の蟲化ポイントを即座に0にする。

GM/ここは跡見学園、時刻は放課後。リンゴーンと優雅な鐘の音がして授業が終わる。白髭の教授が今日の学園生活を終える挨拶をする。そうして「ごきげんよう」と皆、女子生徒達が帰路へつく……。
市/それでは皆さん、ごきげんよう。
GM/「ごきげんよう、お市さん」と袴姿で編み上げブーツのクラスメイトに手を振られる中。貴方の元に下級生がやってきます。……名前はユカリ。貴方の妹分です。
市/あら? どうしたの、ユカリちゃん。
GM/「え、えっと……お姉様。ご、ご一緒に……その」一緒に帰りたいと言いたそうにモジモジしてます。
市/ああ……ニコッと笑います。構わないですよ、ユカリちゃん。一緒に帰りましょう? 手を引いて歩きます。
GM/手を引かれて「きゃっ!」と声を上げるも、嬉しそうに頬を染めるユカリちゃん。
ビクトル/(口うるさい女教師になって)「まあ、春日さん! 何をしているんですか、そんな事では立派な淑女になれませんわよっ!
きずな/(温厚な女教師になって)「いやいやカケイ先生、そんなに口うるさく言わなくても。ホラ、春日さん達、行っていいわよ!」(笑)
市/あ、ありがとうございます!(笑)
GM/お手々繋いで、嬉しそうに笑うユカリちゃん。「お姉様。このままお帰りになられるのですか? 宜しかったらカフェにでも……」
市/そうですね……お店に寄ってお茶をしてから帰りましょうか。
GM/「はいっ。あのミステリー小説の新刊を持ってきたのです! もし宜しければそこで……」とイチャイチャします。そんな大正時代の放課後inお嬢様学校。
市/クラスメイトに挨拶をしながら、カフェの方に向かいます。
GM/では、学園を出ようと門に向かっていると……校門に警察と思われる制服を着た人達が集まっているのが見えます。
市/あら……何かあったんでしょうか?
GM/「あ……なんでも、2日前から1年生の子が帰らないという話を聞いています。それだと思いますよ」
市/え。行方不明……ですか?
GM/「そうみたいですね。最近は物騒と先生方も仰っていますし……しかもこれは、なんでも一度や二度ではないとか」
市/そうなんですか? 前にもあったのですか。
GM/「お姉様はご存知ではありませんか? この学園が創立し立ての頃……生徒が消えたという事件があったそうです。家出の手紙も何も無く、朝に行ってきますを言ってそのまま帰らなかったそうです」
市/まあ……そんなことが?
GM/「1875年にこの跡見学園が創立されていますから、もう五十年近く前の話ですけどね。なんでもその時と色々類似する点が多いそうで、研究部では噂で持ちきりです」
市/そんな……初耳です……。もしかしたら今回の事件と何か関係があるのかもしれませんね。まだ犯人は見つかってないんですか?
GM/「はい、ですから噂になっているんですよ。……あの時も合唱部の子だったっていうし」
市/……え?
GM/「噂では……その消えた生徒は、合唱部でとても美しい歌声を持っていたと聞きました。こうして言うと、なんだかミステリー小説みたいですね」
市/そうですね。物騒な話ではありますけど……。
GM/「もしかしたら単に恋仲の方がいて、駆け落ちをしたのかもしれません。……そういえばお姉様は婚約者の方とはどうなんです?」
市/え? そ、そんな……まだ私も会ったことないので、どういう方なのか判らないのです。
GM/「確か軍関係のお仕事をなさっている方でしたよね。お手紙はとても綺麗な字だったと言っておられましたし」
市/ええ、とても誠実な方だと思います。名前は確か……。
GM/「……んっ?」突然、ユカリちゃんが遠くの方向を見ます。
市/あら、どうしました……?

 ユカリが見た方向を向いた瞬間、バチッと光が走る。
 瞬時に起きた何かに、当然の如く目を瞑った。
 そして瞼を開けてみると、そこは――断崖絶壁だった。


市/えっ……あ、きゃああぁっ!? 後ろに倒れます!
GM/街の風景は一転、電柱も一本も無い崖の上です。さっきまで隣にいたユカリちゃんもいません。
市/え、えっ、……ここドコっ!? 皆さん、ドコに行ったの!?
GM/そのとき、……視線の端に誰かが居たような気がした。
市/……あれは?
GM/ふわりと何か蝶のようなものが舞った……女の子のような気がする。
市/そちらに振り返ります。ユカリちゃん……?
GM/しかし、振り返ってみると女の子は居らず……そこには、不思議な格好をした男の子がいます。
翔悟/――出ていいですか!?
GM/どうぞ、『特命転攻生』の世界からワープしてきてください!

◆ステージ名/『特命転攻生』
◆システム紹介/略称は『特命』。著者は坂東真紅郎(エンターブレイン)。特殊な能力を持つ学園の生徒になり、全国各地の学園で発生する事件に立ち向かう、学園潜入バトルTRPG。
 多感な若者たちの集う学園では、周辺の異世界化をもたらす『震龍』が問題視されていた。その早期発見と排除を行うために、政府は密かに『文武省』を発足。提携する十個の「特務高校」が震龍の捜索を目指すことになる。『魔法少女学校』『ミュータント学校』『オタク学校』など個性溢れる学校から、問題のある学校に転校し、潜入。正体を隠しながらも派手に事件を解決していく。
◆オリジナル能力/[EPP]
 条件→[特命転攻生出身]がある。
 効果→全ての判定で「1」が出たら、出た数だけ上方ダイスロールが追加される。同時に、出た数×5Pの蟲化ポイントを獲得する。

翔悟/ロッカーなんで唄ってます! オレ野外ライブ真っ最中! 盛り上がってるかーい!?(一同笑)
市/えええっ、その状況下で、一人で!?(笑)
翔悟/超ノリノリで唄う! 唄い終わった! 周りを見……観客ひとりぃ!?(一同爆笑)
市/あ、あの……すみません。ここ、どこか判りますか?
翔悟/新宿……駅じゃねえぇーっ!(一同爆笑) 新宿の! アルタ前で! 陣取って! 唄ってたのにぃ! マジ新宿崩壊したわ!
市/あ、あのー……貴方は?
翔悟/え? オレロッカーキミ大和撫子?(一同爆笑)
市/ろ、ロッカーっていうのは何でしょう?(笑)
翔悟/ソウルとラブを愛の伝道師みたいな。
市/ラブと愛が重なってる!(笑) と、とにかく……愛に溢れる人なんですね? えっと、私……春日市と申します。
翔悟/そっか、イッチー。
市/イッチー!?(一同笑)
翔悟/オレの名前は石巻翔悟。これはオレの歌姫エレキギターのクリストファー3世、ヨロシク!
きずな/(いきなり出てきて)ちょっと待て、クリストファー3世ってエレキなの? もう音出ないじゃないか! お前、エアで何やってたんだよ!(一同爆笑)
翔悟/あっれー、どーりでインカムから音が出てこないなって思ったよ! ベロンっていう音だったけどすっごいノリノリだった!(笑) いやー、オレ自分の世界入ってたわー。
市/あ、あの……私、ここがどこか判らなくて。
翔悟/奇遇だ、オレも判らない!
市/こ、これからどうしましょうか……。私達以外に人がいないので、とりあえず誰か人間を捜しませんか……?
翔悟/だよね! それ賛成、オッケー! 握手しよう!
GM/――2人は握手すると何故か胸のドキドキが止まりません。
翔悟/これは何だ……俺のハートがビートしている!?(一同爆笑)
市/凄く……胸がドキドキする? 何かを不思議な気持ち……。
翔悟/ねえ、なんでそんな格好してんの?
市/私のところではみんなこういう格好しています。
翔悟/……御茶ノ水?
市/あ、跡見です。
翔悟/なんか親戚のねーちゃんが行ってたような行ってないような! 新座にあるトコでしょ!
GM/お市ちゃんがいるのはまだ場所が遷る前だね(笑) それに新宿って言われてもアルタって何なのか全然判らない。
翔悟/お台場冒険王は? 東京タワーは? 食い倒れ人形は!? テラパネェお嬢!?
市/お、お嬢様って言われるとどうなんでしょうね、私(笑)
GM/そんなときドカーン! あっちの方で爆発音!
翔悟/うわ! 訳判んねーけど行くぜクリストファー&イッチー!


 ★シーン1


 6人が爆発のした方向に走り寄ると、そこは煙の上がる山路だった。
3つのトラックが停まっており、1つ目のトラックからは炎と煙が上がっている。そして、2つ目のトラックには3メートルほどの虫のような禍々しい生き物が被り付いていた……。


GM/それでは、3組の出会いのシーンいきます。――トラックにガジガジと食いついている巨大な虫を、貴方達は目の当たりにします。
ビクトル/む、虫……なんだアレは?
市/あ、アレは……怨霊? 退治しなくては!
翔悟/えっ、アレってオームじゃないの。パネェジブリ!(一同爆笑)
GM/そんな貴方達に向けて、3つ目の無傷のトラックの方から男性の声がします。「お前ら、コッチに来い! 頼む、応戦してくれ!」
きずな/誰たぬか? 声がした方を見ます。
GM/無傷ですが必死の形相をした若い男性が叫んでいます。「3メートルぐらいの小蟲だったら奏甲に乗らなくても倒せる見込みがある! すまんが手伝ってくれ!」
ヴォルト/……了解した。ランスを構える!
ビクトル/こ、こちらも了解! 持っていたSMGを撃ちます!
GM/――早速ですが個人戦闘をやってみましょう。相手は1体の小蟲です。自分達の持っている武器で戦ってみてください。

『ルリルラ』は奏甲と呼ばれるロボットでの対戦をメインとしたゲームだが、奏甲に乗らない状態でも戦闘を演出できる。
 その場合、【敏捷】が高いキャラクターの順番から攻撃ができ、「白兵武器(1D10+【筋力】修正)」と「射撃武器(1D10+【器用さ】修正)」の好きな方を選んで相手にダメージを与えることができる。判定の仕方は、「50+武器スキルの値」以下の数値が、上の位と下の位を設定した2D10で出れば成功したことになる。


翔悟/んじゃ行ってきまーす! 白兵武器のギターで、行っくぞークリストファー!(ころころ)……00。

 なお、「00」は自動失敗である。何がなんでも失敗する。

GM/クリストファー、バキィッ。
市/折れたぁー!?(一同爆笑)
翔悟/オレのクリストファー3世がトンデモナイことにぃー!?
ビクトル/そこのガキ、退け! [銃スキル]で(ころころ)4点分のダメージ!
GM/SMGで撃ち込むと、ビチビチッと変な汁を出し蟲が踊ります。
ビクトル/よし……そのまま遮蔽とります!(一同笑)
ヴォルト/液体を撒き散らされているところに近付いてランスで攻撃。(ころころ)ダメージ15点、ドンッ!
GM/グチャッ! イケると思った……が、残念。4+15点で、この蟲のHPは20なんだよね。
きずな/じゃあたぬがドングリでも投げるたぬ! お兄ちゃんをいじめるなー!
メアリー/ならワタシも酒瓶を投げる!
市/だ、だったら私も石投げます!(笑)
GM/……歌姫3人で投げれば1点ぐらいはいくよね。じゃあプシャー、ドーン(笑)
ヴォルト/あ、倒れた(笑)

 暫く小蟲はビチビチともがいていたが、やがて動きを止める。
 そうして助けを求めてきた男性は爆発したトラックにいた者達を救出し始めるが……全員が遺体として発見された。


GM/……ガンドッグのビクトルとクエスターのヴォルト以外の人は、遺体なんて関係無い一般人だよね。ショッキングな光景を目にしてしまったということで、【精神力】判定をしてください。
市/恐怖判定ですね。(ころころ)成功しました。
きずな/うぅ、ヒドイたぬぅ……(ころころ)なんとか成功。
翔悟/(ころころ)成功。うわー、ナマ銃って初めて見たわー。
メアリー/(同じく成功して)なまちゅう? あるけど飲む?
ビクトル/だから酒は飲むなって!(笑)
GM/……ではビクトルさん。貴方だけは、救助を求めてきた男性を知ってるような気がした。「手伝ってくれてありがとう。……ところでお前、前に一緒に仕事をしたビクトル=キタオカじゃないか?」
ビクトル/ん?
GM/「覚えているか? 俺のコードネームは……ハウンドだ
ビクトル/は、ハウンドぉ!?(一同爆笑)


◆ハウンド
 バイクに跨る黒いボディスーツの男。パイロットとしてサンプルキャラクターで掲載されている。詳しくは、『ガンドッグ』基本ルールブック参照。
 2008年7月に『ガンドッグ・ゼロ』という第2版が発売されたとき、多くのサンプルキャラクターが1版から流用されたというのに、ハウンドは何故か消滅した。そのため「消された人」として一部のネタでは有名になっている。


ビクトル/アンタ……ハウンドじゃないか! 覚えてるぞ、確かに前に一緒に仕事をしたな!(笑)
GM/「ああ……。お前は2016年のあの世界から来たんだな?」
ビクトル/……あの世界? って、ここは2016年じゃないのか?
翔悟/ええっ、2016年って……オレ、2002年なんですけど?
きずな/たぬ、1980年代っておばあちゃん言ってた!
市/私は1920年代、大正時代なんですが……?
翔悟/た、大正ぉ!?
ヴォルト/(メアリーを見ながら)……おい、タイショーとかセンナントカとか判るか?
メアリー/ワカンナーイ!
GM/ハウンドは全員を見渡して言います。「ああ、お前ら。今日来たばかりなのか? この世界に……」
ヴォルト/……そうだな、そういうことだと思う。
GM/「そうか。……ここで話をするのも難だ。4キロほど行ったところに砦があるからそこで落ち着こう」
メアリー/えー、4キロも歩けなぁい! オジチャン、抱っこして!
ビクトル/ああ? 判ったよ……。
ヴォルト/一人ぐらいならバイクに乗せてやる。そう何人も乗せられないがな。
きずな/たぬっ……ポンッ! 狸モードで小っちゃくなります。
ビクトル/え、ええーっ!?(笑)
翔悟/ああ、テラジブリ!(一同爆笑)
メアリー/あー、獣人族だったんだね! でも見たことなーい。
ヴォルト/じ、獣人か……なるほど、ちょっと納得(笑)
市/もしかして……物の怪!? た、退治しないと!
きずな/たぬぅっ!? た、退治されるのはイヤたぬー!
ヴォルト/おい、やめてくれ。……この子が今何かした訳じゃないだろう。何もしないでやってくれ。
市/は……はい。判りました。
翔悟/大丈夫だよイッチー、狸とでも仲良くできるよ。
ビクトル/お前はもうちょっと驚け! 順応高いな!(笑)
ヴォルト/……もう何が起こったって不思議じゃないだろう?
GM/「それじゃあ、トラックが1台まだ動くからバイクの兄さん以外は乗ってくれ。バイクとトラックで飛ばせば砦まで直ぐ着くさ」
翔悟/あ、トラックがまだ1台あったんだっけ。……バイクでなびく袴を見ながら歩く気満々だった(一同笑)


 ★シーン2


 ハウンドのトラックに乗せられてやって来たのは小さな集落。
 そこは即席で造られた家々が並ぶ寄せ集めの町……周りを見渡せど、多少の木々と、崖と砂漠と荒野の世界には変わりなかった。


市/こんなところ、見たことがないです……まるで映画で見た西部劇のよう……。
きずな/たぬー。銃を持ってる人は怖い人たぬ。びくびく。
翔悟/……パネェナウシカ!
ビクトル/あの格好はコスプレじゃねえよなぁ? 何なんだ、ここは。
GM/「この宿を使え。この世界のルールとして、訳が判らない人間にはちゃんと事情を説明してやるという助け合いの精神があってな。困ってる新参者がいたら助けてやるようにと俺も教わってきた」
きずな/たぬっ、相互扶助ってゴンちゃんも言ってた!
翔悟/……ゴンちゃん、何者?
きずな/ゴンちゃんは浪人生たぬ。…………子供相手に赤い思想とか語っちゃう人。
ビクトル/あー、学生運動真っ只中だー(笑)
GM/「今夜の宿代は俺が奢ってやるよ。とりあえず部屋を取ったところで。……何が知りたい?」
市/……まず、ここはどういった世界なんですか?
GM/「ここは『アーカイア』という世界だ。お前達の世界とは違う」
メアリー/あーかいあぁー?
GM/「アーカイアは、違う世界から人を引っこ抜くらしい。なんでかは判らないけど召喚されるんだ」
きずな/……しょーかん? それ、されたら……おばあちゃんのところに、帰れないの?
GM/「ああ、帰る手段は……無い」
メアリー/エーッ!? みんなで酒盛りしてたのにぃ!
GM/「もう判ってると思うけど、様々な世界がある。例えば『完全に機械化された世界』とか、『高校生までしか特殊能力者になれない世界』とか、『グリモアって力で遺跡を探索する世界』とか……な」
ヴォルト/ふーん……似たような話は聞いたことはあるな。
GM/「そして、かなり重要な話をしよう。……ここでは、生きてるだけで死んでいく」
市/それは……どういうことです?
GM/「空気中に……幻糸(アーク)という物質があって、それを吸いこんでしまうと、モンスターになってしまう」
きずな/たぬっ!?
ヴォルト/……もう口を塞いでも無駄だ。既にいっぱい吸ってしまっただろ?
きずな/……ぷはっ!(笑)
GM/「……普通に呼吸をしただけで毒素が溜まっていくらしい。この世界に居るだけで人間はどんどんモンスターになっていくんだ。そのモンスターを、『蟲』と呼ぶ。そして蟲に変化してしまうことを『蟲化』と言う」

 本来『ルリルラ』の世界設定では、アーカイアで生まれた女性歌姫は蟲化することはありません。
 ですが、異世界から来た人間は「蟲化ルール」が適用されるため、今回のキャンペーンでは全てのキャラクターが蟲化の可能性があるものとしています。


GM/ということで皆さん、今までの分として2D10の蟲化ポイントを判定してください。(全員でころころ)
翔悟/うわ……デカイ声で唄っちゃったからオレ、15点も稼いじゃったよ。腹式呼吸してるよ!(笑)
GM/「まあ、直ぐにモンスターになるって訳じゃない。ある程度、幻糸の濃度が高いところに行くほど変わりやすくなるという」
ヴォルト/……さっき戦ったやつが、蟲だな?
GM/「あれは特に小さかった。いつも我々が戦っていたのは、5メートル以上だ」
きずな/蟲化するっていうんだから……アレもたぬ達みたいなヒトだったたぬか?
GM/……コクリと頷く。「十メートルほどの蟲もいる。それに対抗する手段は……勿論ある。それが、トラックに積んでいた『奏甲』だ」

 ハウンドがトラックに掛けてあった布を引くと、そこには十メートルの巨大なロボットが眠っていた。
 それは、『運命づけられし2人』を大きく震わせる存在になる。

GM/「空気中に含まれている幻糸は、吸いすぎると蟲になる。が、うまく操れば特殊な力……『歌術』という魔法を使役することができる。その歌術を2人で操れば、この巨大ロボットを動かせるんだ」
翔悟/……そうやって、蟲と対抗する?
GM/「ああ。このロボットは、『フェイト』と呼ばれる、運命の赤い糸で結ばれた2人でなければ動かすことができない。……お前らはもう出会っているみたいだな?」
きずな/たぬぅ……お兄ちゃんを見ます。
メアリー/オジチャンにくっつきます!
市/……翔悟さん。

 アーカイアでは、必ず自分と運命付けられたパートナーがいる。
 ロボット――奏甲を操るのが英雄。護るのは歌姫。
 一生のうち一度は出会うという運命の2人。それに気付くかは2人次第。出会い、言葉を通わせあうことによって、蟲と戦える大きな力を得ることになる。


GM/それでは、幻糸の説明をしたので、きずなの『ふしぎ』、お市ちゃんの『霊能力』、メアリーの『魔法』がルリルラワールド的にコンバートされました。これからは自由に歌術が使えるようになります。……あ、メアリーは『魔法』決定の2D10振ろうか。
メアリー/ハーイ!(ころころ)えーと、11だからぁ……[転移とリンクの歌・金と銀と鋼の組曲]?
GM/では第1話の間、そのランク全てを使用可能となります。
メアリー/わーい、マジパネェッス!(笑)
きずな/ねえねえ、ハウンドさんには運命の人……いないたぬか?
GM/「ああ、俺はまだ……出会ってないな。気付いていないだけかもしれないが……」運命の人は、出会ったとしても離れてしまうかもしれないんですよ。
きずな/ヨシヨシ。きっとハウンドさんの良さを判ってくれる人がいるたぬよ!(笑)
市/……元の世界に戻る方法は無いって言いましたよね。それって本当なんですか?
GM/「ああ。ぶっちゃけ、無い」
市/……。
GM/「ただ、噂では…………ある」
メアリー/あるのっ?
GM/「あくまで噂だ。だが俺の旅団もその噂を信じてトラックを走らせていた。もう俺しかいないから無理な話だが」
ビクトル/……どんな噂だ?
GM/「今、俺達がいる『ファゴッツ』から北の方角へ行くと『悲嘆山脈』という場所がある。そこは幻糸濃度がとても濃い場所だ。だが、先ほど説明したが、幻糸の濃度が濃くなるほど、使える歌術の力も強くなるんだ」
ヴォルト/ああ……確かにそうなるな。
GM/「……その悲嘆山脈に、転移とリンクの歌術を使える歌姫がいるらしい。幻糸が強い場所ならば強い歌術が使える。その歌姫はより強力なテレポートの歌術が使えるという話だ。ただ……蟲化する可能性も山脈に近付けば近付くほど高くなって危険になる」
翔悟/あー……ご愁傷様です。
GM/「今晩は俺の旅団の金で泊まっていけ。どうせ俺しかいなくなっちまったんだ。一日目のお前らに使ってやるよ」
市/あ、ありがとうございます……。
ビクトル/すまねえな、ハウンド。
GM/「早く帰りたいとは思ってたんだがな。じゃないと、『ガンドッグ・ゼロ』の撮影終わっちゃうだろ?
ビクトル/ハウンドごめん! もう終わってるんだよ!(一同爆笑)
GM/「何言ってんだ。(サワヤカに)俺がいないとパイロットの役、撮れないだろ?
きずな/ぱ、パイロットはもういないんだよハウンドー!(一同爆笑) たぬのドングリあげるたぬー!
メアリー/ぶわぁっ、可哀想なハウンド! とにかく酒飲め飲めー!
ビクトル/おい、どっから出した!?(笑)
ヴォルト/まあとにかく……帰るためにはそこを目指した方が良さそうだな。
市/はい。とりあえず今晩はハウンドさんのご好意に甘えましょう。


 ★シーン3


GM/それでは、宿で男女別の部屋を取ってもらったところで『ランダムイベント表』に参りましょう! 『ランダムイベント表』とは、その名の通り事件を起こすチャートです。2人でサイコロのどっちかが上の位、どっちかが下の位になって振ってください。出目が高ければ高いほど良いことが起き、低ければ低いほど悪いことが発生します。
翔悟/それじゃイッチー、俺が上の位を振ろうか?
市/はい、私が下の位を振ります。
翔悟市/せーのっ!(ころころ)

◆翔悟&市の結果→12『やきもち』
 英雄が他の人に優しく接するのを見て歌姫がやきもちをやきます。「自分は〜〜なのに……」
 歌姫とその対象のPCの仲が一時的に悪くなります。ただちに消耗チェック絆×2回を行います。対象が歌姫である場合、その対象も消耗チェック絆×1回を行います。

GM/翔悟さん、お市ちゃん以外の誰かと仲良くなってください。それを見て嫉妬したお市ちゃんは消耗チェックをしてね。
翔悟/……ここは相手が歌姫の方が消耗値的には厳しいけど、話的には面白くなるよね?(笑)
きずな/たぬとファミコンの話でもする? たぬはゴンちゃんがやってるところ隣で見てたたぬよー!
翔悟/ゴンちゃん、勉強した方がいいよ(一同爆笑) じゃあ懐ゲーの話をしつつドングリでも拾いに行くかって話になった!
きずな/たぬー、ドングリドングリー! キャッキャしながら翔悟に肩車をしてもらいます。
市/あ……ちょっと待って。翔悟さん……。
翔悟/(振り返って)あれぇ、イッチー拾いに行かないの?
市/あ、う、うーん……。
きずな/お市ちゃんも来るたぬか?
市/……い、行きたい……です!
翔悟/じゃあ行こうかっ! 一緒にドングリ探しに行こうぜー!
GM/仲良さそうだけど、一応ルールだから消耗チェックはしようね。

◆ビクトル&メアリーの結果→69『捜索』
 町で情報収集をしたり、外で探索している最中に、宝箱、隠し財産など何やら珍しい物を発見します。
 両者【知力】チェックを行ってください。どちらか1人でも成功すれば、GMが指定したアイテムを無料で獲得できます。

ビクトル/うお、いいやつきたぁ!(ころころ)よし、【知力】判定成功!
メアリー/オジチャン凄い、カッコイイー!(笑)
ビクトル/それじゃ、悲嘆山脈について情報収集をします。そこらのオッサンに話しかけるけど、大した情報は掴めなかった。はぁ……なんかここの銃は俺のトコで扱ってるモンと違うみたいだな?
メアリー/オジチャーン、ジュウってなぁ〜に? ドーン!
ビクトル/勝手に触るんじゃねーよ!(笑) 路地裏に連れて行って説教すんぞ!
GM/そうして路地裏にメアリーを連れてくるビクトルさん。……あれこれはなんだろう? 路地裏に置き去りにされた箱があるぞ。
ビクトル/ん? 箱を調べます。
GM/どうやら人形のようだ……ビクトルさんは、[歌術アイテム/歌人形]を手に入れた!

◆歌人形
 20センチほどの人形。2体で1組の、遠くに離れた仲間とも会話ができるようになる特殊なアイテム。現代で言うトランシーバー。


ビクトル/あー……ハイハイ、嬢ちゃん。コレあげるからなー、おとなしくしようなー。
メアリー/わーいありがとー。でもデッカイよぉ。メアリー、全長五十センチだもん(笑)

◆ヴォルト&きずなの結果→60『ハイテンション!』
 歌姫はいつもに増して元気。この冒険もかなり頑張るつもりです。
 シナリオ終了時まで全てのNG行動が無視できます。ただし歌術などの消耗チェックは行います。

ヴォルト/凄えのが出た!(笑) NG行動が無しは凄い!
きずな/やったー、これで奇声蟲と戦えるー!(笑) 翔悟と一緒にドングリ拾ったらテンション上がったたぬー!


 ★シーン4


GM/――夜になりました。宿でお夕飯として出されたメニューは……女性陣にとっては粗雑な料理に思える。環境劣悪なアーカイアの食事を楽しみましょう。
市/うう、ちょっと大味です……。
きずな/油っぽいたぬー。野菜が欲しいたぬー。おばあちゃんの煮っ転がしが食べたいたぬー。
メアリー/お酒いっぱい飲んだよー。
GM/さて、ハウンドさんが用意してくれた部屋に女性陣3人が入ると……誰か、人影が居ることに気付きます。
メアリー/あれっ? 先客が居るよ。
きずな/え……誰たぬ?
GM/長いスカートに長い髪。たぬなら見たことある女の子です。
きずな/えっと……まさか、スミレちゃんたぬか?
市/たぬちゃんのお知り合い?
GM/あ、お市ちゃん。恐怖判定お願いします。……スミレちゃんは幽霊なので。
市/……ええっ!?(笑)


◆スミレちゃん
 ロリータ服に身を纏った十歳ほどの女の子。正体は、シーツおばけ。
詳しくは、おんぶちゃん同様ゆうこやサプリメントブック『もののけこやけ』参照。少しポヤーッとした、生気の抜けた喋り方をする不思議系女の子。


きずな/なんだスミレちゃん、こんなところにいたたぬか。スミレちゃんもこの世界に飛ばされてきたたぬね?
GM/……こくり。静かに頷きます。
きずな/見つかって良かったたぬ! たぬ達と一緒に帰るたぬ!
GM/……ふるふる。首を横に振ります。
きずな/たぬ? なんでたぬか?
GM/……ふるふる。
きずな/おばあちゃんのところに帰らないたぬか?
GM/……こくり。
市/えーと……どうしたのかしら?
きずな/……あっ、判ったたぬ! 誰か好きな人ができたたぬね!?
GM/……。
きずな/違うたぬか? できたたぬか?
GM/…………ポッ。こくり。
メアリー/ええーっ、相手は誰なの?
きずな/……判ったたぬ、ハウンドさんたぬ!
GM/「…………でもあの人、気付かないの」
市/……ああっ!(笑)
メアリー/ええっ、ハウンドさん鈍感すぎるっ!(笑)
きずな/きっとハウンドさん、霊感無いんだ……運命の相手なのに気付いてもらえないたぬか!(笑)
市/私は霊能力者だから見えるけど……スミレちゃん、幽霊だし(笑)
メアリー/見えないんじゃ仕方ないなぁ(笑)
きずな/うーん、どうしたら見えるようになるたぬかねぇ?
市/何か手段でもあるのかな……?
GM/「……あるよ」
メアリー/あるの?
GM/……こくり。
市/どうすればいいんですか?
GM/「……もう、用意出来てる」
きずな/そうなのたぬか? 一体何をするたぬか?
GM/……ふるふる。教えてくれません、が「貴方達は……私のこと、見えるんだよね……」
メアリー/そうだね。
GM/「同じ物怪だし、妖精族だし、霊能力者だし……だから見えるんだよね」
市/……そうですね。
GM/「……貴方達は見える……。なら、夜に、森へ来てほしい。他の人達にはナイショで……」
市/はい、いいですよ。私達に出来ることがあるんですか?
GM/「……みんなが寝静まった頃に、丑三つ時に3人だけで来て」
きずな/うん、わかったたぬ〜……。って、ほのぼのと受け答えするけど、凄く怖いよねコレ(笑)
市/でもたぬちゃんの友達だから大丈夫ですよね。
GM/「ありがとう……」と幽霊の彼女は笑います。――では時間を飛ばして真夜中。砦の皆が寝静まった頃になりますが、女性3人は森に向かいますか?
きずな/行くたぬ! ぴょーんと狸モードで部屋から出て行きます。
メアリー/窓から降りよう! ……お市ちゃんも【敏捷】高いし降りられるよね(笑)
市/ハイカラさん凄い(笑) じゃあシュタッとな。
GM/では――別部屋の男性陣にカメラを移します。女性陣が部屋から居なくなったことに気付くかどうかを【知力】で感知判定してね。
ヴォルト/【知力】は低いんだ……。(ころころ)無理だな、失敗。
翔悟/(ころころ)失敗します。十代なんで寝てていいですか(笑)
ビクトル/(ころころ)あ、成功した。俺だけ成功か。
GM/流石ガンドッグ。――お市ちゃんがタタタっと駆けて行ったのに気付いたのかな。
ビクトル/……ヴォルト。アイツら、出て行ったぞ。
ヴォルト/……こんな時間に? 何の用事があるのか知らないが、覗きに行くか?
ビクトル/ああ……と言いつつ装備をガチャガチャと持ちます。
翔悟/何も無く森に行く訳なくね? ドングリだってウンザリするほど拾ったぜ。
ヴォルト/ハウンドを連れて部屋を出ます。森の方へ走っていった3人を追いかけようとしますけど……。
GM/ストップ。カメラは女の子達の方に戻ります。――では森にやって来ると、スミレちゃんの人魂が舞ってるのが見えてきます。
市/……ちょっと怖いな(笑)

 ちなみに、『ゆうこや』のスミレちゃん曰く人魂は「単なるアクセサリー」らしい。
 しかし『GH』では、人魂は立派なモンスターの一種である。GH出身のお市ちゃんが怯えるのも無理はない。
 世界が違うと価値観も全く違うという良い例だ。


GM/ヒュードロドロというBGMがかかりそうな真夜中の森です。浮かぶ炎に導かれるようにやって来た先に、スミレちゃんが浮かんでいます。
きずな/スミレちゃん、来たたぬよ。
GM/「ありがとう……相談なの」
メアリー/なぁーにー?
GM/「……あの人……私に気付かないの」
きずな/うん、そうたぬね。
GM/「貴方達は見えてくれるけど……殆どの人は見えてくれないの……理由は判るんだけどね……私、死んでるし」
市/……うん。生きている人から見れば魂は普通は見えないものよ。
GM/「……判るよ、それぐらい……でも、見てほしいの」
メアリー/うんうん、判るよその気持ち!
GM/「だからね…………死んでもらうことにしたの」
市/え。
GM/その瞬間、砦の建物がドカーンと爆発する!
メアリー/うわぁっ!?
GM/振り返れば、もくもくと煙が上がっている。
きずな/す、スミレちゃん!? あ……あそこ、お兄ちゃん居たっ!
GM/「……うん。ハウンドさんも居た」
市/な、一体何を……?
GM/「……私……ずっとみんなと居たのに、貴方達3人しか気付いてくれなかった……だから」
きずな/で、でも、お兄ちゃん居たのに。スミレちゃんヒドイよぉっ!
市/そこまでする必要……無い、のに……。
GM/「……この世界では、生きていてもそのうち蟲化するって……言ってた……」
メアリー/……うん?
GM/「自我を失って蟲になって生きるより……幽霊になって……私とお話できるようなった方が……いいよ」
きずな/で、でも! ……スミレちゃん、前に幽霊になれる人って少ないって言ってた!
市/……そうなの?
きずな/『ゆうやけこやけ』のルールブックに「なんでなれるか判らない」って書いてあったの。……ハウンドさんが幽霊になれなかったらどうするの!? ハウンドさんどーでもいいけどお兄ちゃんいなくなっちゃうのはヤだー!(笑)
GM/――シーンは変わり男性陣。彼女らを追いかけようと部屋を出たところでいきなり貴方達がいた部屋がドカーンと爆発する!
翔悟/うおっ!?
ビクトル/受身とります、簡易行動で起き上がって(笑) な、なんだ!?
GM/「こ、これは……爆薬か? 俺のデモリッションアイテムが突然爆発した!?
ビクトル/そうだった。ハウンド、お前[デモリッション/パイロット]だったな!(笑)

 ここで演出のこじつけ。
 ハウンドは『ガンドッグ出身』で[爆発物スキル]があり、スミレちゃんは『ゆうやけこやけ出身』で物体を動かす『ことことかたかた』という技能がある。
 遠隔操作で火を点けたという微笑ましい演出だが、もし男性陣が感知判定に全員失敗した場合、5D10のHPダメージを全員に食らってもらう予定だった。


GM/これと同時にとあるアイテムが発動。……暫くするとミシミシミシという不気味な声が聞こえてくる。
翔悟/な、なになになにっ?
GM/そして次には、どっかから羽の音も……。
ヴォルト/……蟲が、飛んでくる!?
翔悟/ええっ! これはテラパネェカンベンしてほしい!

 ▲□●□□A    □→空きマス、▲→歌姫、
 ▲□●□□B    ●→英雄、A&B→蟲
 ▲□●□□□

GM/相手は十メートルほどの蟲です。おそらく、奏甲に乗らない限りダメージが入らないでしょう。
翔悟/そ、奏甲乗りましょう……って歌姫いねーよ!(笑)
GM/戦闘マスは1ターンに1グリッドしか移動できません。イニシアチブは『翔悟&市ペア』→『ビクトル&メアリーペア』→『ヴォルト&きずなペア』→『蟲(AB)』の順番です。では戦闘スタート!
市/一番スミレちゃんに近い関係がたぬちゃんなので……たぬちゃんにこの場は任せて、私は翔悟さんと合流しにいきます。
翔悟/オレも奏甲乗らないとマジ死ねるので、砦の人達を逃がしながらイッチーに近付きます! 森へ走って……合流!
市/翔悟さん!
翔悟/イッチー! どうなってんの!?
市/これは……スミレちゃんのせいなんです!
翔悟/誰っ!?(一同笑)
GM/砦の人達の避難を手伝っているハウンドが叫びます。「あそこに奏甲が待機している! それに乗れっ!」
翔悟/はいっ! ――言われた通り奏甲に搭乗します。
GM/待機していた奏甲のコクピットに2人で乗り込みますと……自由に動かせます。次のターンから攻撃開始できます。
翔悟/す、すげー……ゲームみたいだ!(笑)
GM/――じゃあ次の人。メアリーの番だけど。
メアリー/はい。折角なんでランダム習得した[転移とリンクの歌・金と銀と鋼の組曲]を使います!(ころころ)成功、オジチャンの元に瞬間移動! オジチャン、飛んできたよ!
ビクトル/うわっ! 何が起きた!?(笑)
GM/……ランダム魔法、運良かったね。オジチャンの隣にはメアリーがいつの間にかいます。
ビクトル/え、えーっ! と、とにかく搭乗!
GM/では、ビクトルは移動せずに済んだのでそのまま奏甲に乗れて……攻撃ができるけど、どうする?
ビクトル/じ、じゃあ……[ライフル]の射程が3なので、ここから攻撃します。(ころころ)成功、ダメージは21!
GM/ドォン、と[ライフル]で蟲が撃ち抜かれます。
翔悟/プロかっけぇ!
メアリー/オジチャンカッコイイー!
GM/では次。たぬきの番だよ。
きずな/……スミレちゃんの手を取ります。2人で1マス移動!
GM/「……みんな、死ぬの……ダメ?」
きずな/ダメダメ! お兄ちゃんが居なくなっちゃうのはダメ!
GM/「じゃあ……私が死んでるのは、ダメ?」
きずな/ダメじゃない! スミレちゃんはスミレちゃんだからいいの! 生きてるお兄ちゃんはお兄ちゃんだからいいの!
GM/「う……うん……?」
ヴォルト/……生身で蟲と戦うことはできないから、翔悟と同じく1マス下がってきずなと合流しよう。
きずな/お、お兄ちゃん! 生きてた〜! 良かった……でもハウンドさん死んでないからダメだー!(笑)
ヴォルト/お前はどっちの味方なんだ!(一同爆笑)
きずな/ハウンドさんはね! 死ななきゃいけないの! けどお兄ちゃんが巻き込まれるのはイヤなの! でもスミレちゃんのためには死ななきゃダメなのー!(笑)
ヴォルト/……すまん、ゆっくり話してくれ。
GM/では、たぬがスミレちゃんが以下略という話をしました。ヴォルトさんには魔法的な能力が無いので、スミレちゃんが微妙に居るような気もするけど見えません。
ヴォルト/……そこに居るんだな?
きずな/居るたぬ……。
ヴォルト/あのな……他人の生は他人のものだ。自分が勝手に決めていいもんじゃあない。
GM/「……私達……一緒に……なれないのかな」
ヴォルト/なれるさ、信じてればな。
翔悟/……ハウンドさん、半殺しぐらいの目に遭えば見えるようになるんじゃね?(一同爆笑)
GM/それはおいといて!(笑) ――蟲Aと蟲Bは1マスずつ移動します。で、ビクトル機を狙う。(ころころ)命中、ダメージは8。では歌姫、避けて!

 敵から攻撃を受けた場合、ダメージが奏甲のどの部分に命中したか、歌姫の判定により決定する。高確率でHPが多い[胴体]に命中するようになっているが、歌姫の出目次第では搭乗者がいる[コクピット]にダメージが入ったり、命中に重要な[頭部]、武器を持っている[腕]に当たってしまうこともある。
 部位のHPが0になったとき、その箇所は破壊される。胴体が完全破壊されるか、搭乗者のHPが0になったときに戦闘不能となる。


メアリー/きゃあっ!(ころころ)当たったのは[胴体]だから……防御値の4引いて、4ダメージ入ります。
GM/もう1体。(ころころ)13のダメージ!
メアリー/(ころころ)うわ、また[胴体]当たっちゃったよー!
ビクトル/平気だ、まだいける!

 □●□□A□   ●→翔悟機、★→ビクトル機、
 □□★□B□   ▲→ヴォルト機、A&B→蟲
 □▲□□□□

翔悟/Aさんに集中砲火。[ライフル]で撃っちゃうよー!(ころころ)当たった、27点ダメージ! オレカッコ良くねぇー!?
市/カッコイイですー!(笑)
GM/Aにバスバスと撃ち込む! ……じゃあ次のチームどうぞ。
メアリー/えっと、メアリーは奏甲を回復します。[癒しの歌・花びらの子守唄]使いまーす。(ころころ)……失敗、しょぼーん!
GM/失敗したら、気力のダメージゲージをマイナス1しておいてね。気力ゲージが0になったら気絶するから気をつけて。
ビクトル/またさっきと同じように[ライフル]で撃つぞ。(ころころ)成功、ダメージは14点!
GM/連続で攻撃されて、蟲Aは潰れます。潰れた瞬間にキエエエエという変な奇声を発する!
ビクトル/うわっ!
GM/では全員、抵抗チェックを行います。チェックに成功したら1D10、失敗したら3D10の蟲化ポイントを追加してください。……じゃあ次のチームの番だよ。
きずな/たぬは[戦闘補助の歌・早足のワルツ]を使います。(ころころ)成功、お兄ちゃんの命中値にプラス10させます。
ヴォルト/そのまま[能力/加護@ヘルモード]を使用。シュンッと蟲Bと同マスまで飛んで、攻撃する!(ころころ)命中、ダメージは……18点の防御値無視、ドスッ!
GM/いきなり現れた機体の槍が中心を貫く! 次は蟲Bの番だけど、普通目の前に来たらそっち当てに行くよな……ヴォルト機に向かって(ころころ)失敗。ターン最初に戻ります。
翔悟/よし、撃っちゃおうか!(ころころ)命中、ダメージは……32です!
メアリー/メアリーも[早足のワルツ]を使います。(ころころ)成功、オジチャン頑張って!
ビクトル/命中値が上がったところで、撃つ!(ころころ)命中、ダメージは28点ダメージ!
GM/ではその一撃を食らって蟲Bも落ちます……先程と同じように、倒される寸前にキエエエェェという蟲の鳴き声! 抵抗と蟲化ポイントをチェックし終えたら……戦闘終了です。

 突然、砦に襲った蟲は数体のみ。大惨事にはならずに済んだ。
 その後、爆発した男性陣の部屋からは、『蟲香』という、蟲を呼び寄せる特殊なアイテムが発見されたとかなんとか……。


きずな/……スミレちゃん。ハウンドさんのところに行こうか。
GM/スミレちゃんはきずなに従います。ハウンドと対峙するよ。
きずな/あのね、ハウンドさん。ハウンドさんの運命の人……スミレちゃんなんだよ。で、スミレちゃんは……死んでるの。
GM/「え……それなんてゴースト?」
市/ええ……多分、ハウンドさんには見えてないんですね。
きずな/ふぇ……やっぱり一回死ななきゃダメなのかな!?
ヴォルト/やめなさい(笑)
GM/ハウンドは見えないなりにも彼女を探ります。「……もしかしてこの辺か? なんかここが、暖かい気がする」
きずな/そ、そんなとこ触って……!
市/きゃ、そこは……!
メアリー/らめぇーっ!(一同爆笑)
翔悟/……いや、マジ見えない!(笑)
GM/……しかし、女の子達には見える。ハウンドの手をそっと抱き寄せ、はむはむと甘噛みしているスミレちゃんの姿が。
きずな/お、おいしそう!(笑)
ビクトル/は、ハウンド大丈夫か! 食われてるみたいだぞ!(笑)
GM/「……なんか、暖かい気がしてならない。心が落ち着くのはなんでだろう。と、とりあえず報告だが、被害があったのは多分俺達の部屋だけだ! 部屋には大層なものは置いてなかったし、あったとしてもこの世界では福沢諭吉とか使えないものだから安心しろ」
翔悟/……オレのクリストファーとか。
ビクトル/置いてきて爆発に巻き込まれたのか!?(一同爆笑)


 ★シーン5


GM/こうして、別の宿で一晩を過ごした6人なんですが……。
メアリー/昨晩はお楽しみでしたね!(笑)
GM/うん、目が覚めたハウンドの顔色が薄暗くなっている。
翔悟/せ、生気吸われてるよハウンドさん!(笑)
きずな/その代わり、スミレちゃんがツヤツヤしてるんだよね(笑)
GM/そう。横にはちょっと赤い顔をしたスミレちゃんが。
メアリー/スミレちゃん、幸せそう!(笑)
きずな/幸せそうだね、2人とも!(笑)
GM/「俺……満たされた気分なのは何故だろう。誰かと一緒に居るような気がする……」
翔悟/……もう『ガンドッグ・ゼロ』の撮影なんかどうでもよくなってくるぐらいに?(笑)
きずな/多分ハウンドさん、もう奏甲に乗れるよ!(笑)
GM/「スゲー、俺一人でスゲー。……夢の中で『貴方と一緒に居られればいい』とか声が聞こえてくるのは夢じゃないんだな」
市/ハウンドさん、お幸せに……(笑)
GM/「俺はこの砦で一旦落ち着くことにするよ。……アーカイアで、最後に大事なアドバイスをしよう。自分が良いと思ったら元の世界に戻らなくてもいいんだ。戻るか戻らないかはお前達次第なんだぞ」
きずな/……スミレちゃんは何か一言ありますか?
GM/…………初めてだったの
ビクトル/何が!?(一同爆笑)
メアリー/赤飯炊きまーす!(笑)
GM/「自分自身がどうありたいか最終的に決断を下すのは自分なんだ。お前ら、頑張ってくれよ」
きずな/ハウンドも頑張ってね!(笑)
GM/「あ、ああ……がんばるよ……」と生気の無い笑顔をラストに、第1話終わりにします!
一同/お疲れ様でしたー!

★レベルアップ報告 1→2
 ▼ヴォルト→「渾身の一撃」「身代わり」「九死に一生」
 ▼きずな→「奇声蟲バスター」「不戦歌姫」
 ▼ビクトル→「奇声蟲バスター」「武器エキスパート」
 ▼メアリー→「忌み歌使い」「支配の歌ランク1〜2」
 ▼翔悟→「アイドル英雄」「変な語尾」
 ▼市→「奇声蟲バスター」「読書好き」