アナザーワールドSRS・リプレイ
■ 熾天の箱庭シリーズ・第1作『 杏色の空から 』2ページ目 ■
2016年5月29日




 ●ミドルフェイズ 〜1週間〜

GM/扶桑との交流に使う能力値は何にしますか?
コハク/能力値はオール4なので、【意志】にします。

『AF判定:扶桑との交流』
 ・使用能力値:【理知】【意志】
 ・難易度:30
 ・ラウンド制限:1ラウンド

※「扶桑と交流」演出に成功すること。


エセル/協調行動をするヨ。(ころころ)ヨシ、出目で6。達成値10で成功!
コハク/世話をするって言ったら……食事を運ぶとかか?
エセル/扶桑は座敷牢から出られないの?
GM/うん、閉じこめられているっぽい。お手洗い的なものは牢の中にあって、処理する係の人がいるよ。食事はコハクが運んであげないとね。
コハク/ガチ監禁なのか……。1日目は、とりあえず持って行けばいいんだろうって≪食糧調達≫で食事を運ぶ。
GM/「まあ……ありがとうございます」 牢に来てくれたコハクに丁寧に、静かに頭を下げます。
コハク/俺は≪機関「朱指 所属」≫に所属している兵士だ。雑用をこなしている第五部署『食導』とは無縁だ。なんでも≪武人の知恵≫を使って力で解決することしかできない男だ。……何か至らぬことがあるなら言ってくれ。言いながら扶桑に≪シンパシー≫を使います。
GM/イエスかノーで答えられる質問をしてみる特技ですね。扶桑は君に不満は何一つも無いようだよ。でも……。
エセル/でも?
GM/「……前の世話役の方は、話も何もしてくれない方でした。……わたくしは何も知りませんし話せることもありませんから、お話だけでもしてくれると……」 そう言うけど、途中で扶桑は「失礼しました、忘れてください……」と訂正します。
コハク/…………。GM、今の季節は?
GM/じゃあ、そろそろ寒くなりつつある冬が来る時期で。11月1日に狭山から命令を受けたことにしようか。虚弱体質っぽい扶桑は身を縮めている季節です。
コハク/ここ、寒くないのか。俺は≪熱血の防壁≫があるから疎い。寒かったら言え。
GM/「えっ……」
コハク/それぐらいなら何も知らなくても話せるだろう? ……言いたくなったら言う、話せることがあったら話す。それぐらいラクな気持ちで接してくれると……その、俺が助かる。
GM/「……貴方が、助かる?」
コハク/どうせなら……話をするのも、いいじゃないか、って。……コハクも話は苦手ながら、考えて話します。全然知らない彼女だけど、嫌いどころか好意を抱いている相手なので……それぐらい頑張って言います。
GM/クールだと思ったけど、なんでも言ってくれるコハクに扶桑は「……お優しいのですね」って言います。
コハク/お前が言ってくれないと俺が処罰されるからな。必要だから言ってるんだ……と、赤くなっている顔を隠しながらも言う。
GM/心配性だ(笑)
エセル/しかも赤い顔を扶桑には隠している(笑) エセルはそのコハクの様子を≪全方位視覚≫+≪見通す眼≫でどこでも監視してるゾ!
コハク/……扶桑の体は弱いのか? もし体調が悪いなら≪肉体復元≫で回復できるものならしたい。
GM/残念ながら、コハクの力では治療できない体の弱さかな。
エセル/だよなぁ。……コハク! 薬が必要になったら言エ! 航センセイに言って処方してもらいに行くし、エセルも≪痺れ薬≫と≪睡眠薬≫なら出せるゾ!
コハク/その薬はいらん、何に使えばいいんだ?(笑)
GM/エセルも座敷牢に来てくれているなら、扶桑が話し掛けたいな。「ご一緒にいらっしゃる方は……? お名前を教えていただけますか?」
コハク/ああ、あいつは……。
エセル/エセルドレーダ! コハクの監督者ダ! 気にするな、エセルは見張っているだけだカラ! もしどっちかが変なコトしたとしたら≪光の一手≫で打ち消すし≪鋼神の鉄槌≫で叩きのめすから安心シロ!(笑)
コハク/そんなことされたら≪片手武器≫で防ぐから(笑)
GM/その会話を聞いたとしたら「仲がよろしいのですね……」と扶桑は微笑みます。大人しく淑やかな女性という印象はそのまま、君達は「普通の女性だなぁ」と思いますね。
エセル/……コハク! 前にエセルが渡した≪お守り≫があるダロ!
コハク/お守り?
エセル/それ、渡してヤレ! 扶桑は悪いヤツじゃナイ! あげるの許可してヤル!
GM/エセルドレーダは偉そうな子供キャラなのか、可愛いな(笑)
エセル/実際監督者だからエセルドレーダの方が偉イ! ……そして、コハクのコトが心配だから≪お守り≫を事前にプレゼントしているぐらいだ(笑)
コハク/……以前、いらないって言ったのに無理矢理渡された、どっかの神社で買ったみたいなお守りを出します。扶桑に……「だ、そうだ。やる」って言いながら握らせます。
GM/扶桑はお守りをニギニギ。そして「……あの、やっぱりいただけません……」と断ります。
エセル/ナゼ!? ≪移動力上昇≫でズズイとするヨ!
GM/ズズイってされたら扶桑はビビるわ(笑) 扶桑はただ、「……だって、大切な物を頂くなんて……そんなの、申し訳ないです……」と心苦しくて断ってるだけです。
コハク/その渡してきたエセルがやれって言ったんだ。貰ってくれ。……それに。
GM/それに?
コハク/俺は楽しいことを何一つ考えられん。お前を楽しませたいと思っていても、飯を持ってくるぐらいしかしてやれることもないからな。少しでも考えてくれたエセルに感謝してやってくれ。
GM/……扶桑は、少し言葉を失います。
コハク/どうした?
GM/「……わたくしを楽しませたいと、思ってくれているのですか?」
コハク/うっ。
GM/扶桑はエセルのお守りを掌の中にしまいながら、「……お優しい方」と微笑みます。ふわりと笑う、とても病弱そうな彼女。……『現在難易度:4』ですよ。
コハク/……変な顔ばかり見せるところだった。
エセル/つまり変な顔ばっかするぐらい顔が赤くなってるってことダナ?(笑) コハク、惚れてる顔してるゾ。
コハク/絶対に声に出して言うんじゃないぞ。(ころころ)達成値12、成功です。
GM/無事、扶桑との交流ができました! 判定成功です。……君達にとってそれは何気ない会話かもしれなかった。でも1週間、君達は共に時間を過ごした。少しずつ扶桑と心を交わしていく。
エセル/扶桑は全然変なヤツじゃないし、安心して仲良くナル!
GM/どんなにぶっきらぼうな世話役でも、監禁生活を続けている謎の存在でも、共に時間を過ごして会話をしていけば親しくなっていくもの。好意だって抱かれていくもの。……コハクは『イベントキー:好意』を入手してください。明らかに扶桑はコハクに心を許し始めます。
コハク/コハクも……1週間後には、普通に扶桑と会話ができるようになってきた。
GM/では、扶桑と出会って1週間後の夜。11月7日。……コハクと扶桑の2人きりのシーンを立てさせてください。
エセル/ハーイ。
GM/夜、お世話をするとしたら……やっぱり夕食を持ってくることかな。君は既に慣れた様子で彼女の為の夕食を、座敷牢の間に持ってきます。
コハク/今日はエセルは頭垓の仕事で出ている。1人で訪れよう。
GM/7日目の夜、いつものように彼女は彼女の居場所に座っています。食事を渡されると静かに食べます。
コハク/飯、食べろ。
GM/静かに、普段通りの少し震えたか細い可憐な声で「ありがとうございます、コハク様……」って言うよ。少しだけ嬉しそう、でも切なそうなのは変わらず。ご飯の間、コハクはどうしている?
コハク/何も話し掛けられなかったら、食べ終わるまで待ってる。布団を敷く作業を横でやってるぐらいかな。世話役だし。
GM/もし去ろうと言うなら、「暫くここで、一緒に居てくれませんか」と言うつもりだった。7日もすれば一緒に居たくなるもの、ってことで。
コハク/……呼び止められなくても、居てやる。
GM/「……あ、ありがとうございます……」 ちょっと照れながらお礼を言う扶桑。そして訪れる無言。世話役をしてくれている君が布団を敷いたりと作業をする背中に、「……コハク様」と静かに名前を呼びます。
コハク/何だ。振り向かず言う。
GM/「コハク様がわたくしの世話役になってくれて……7日目が経ちました」
コハク/そうだな。最初は兵士の俺に何が出来ると思ったが、案外早いものだ。
GM/「コハク様に……未来はありますか?」
コハク/……どういうことだ?
GM/「コハク様には、やりたいことが……夢が……成し遂げたいと強く想っているものがありますか? 生きたいという強い願いはございますか……?」
コハク/…………。残念ながら、無いな。今の俺は……悩んでいるから。
GM/「……悩んでいるのですか」
コハク/本当にこのままでいいか。この機関でずっと武器を握っていればいいか。……やりたいことなど、もう叶えてしまっている。
GM/「叶えているというのは……」
コハク/異端を討伐することだ。もう充分叶えてしまっている。これから強く願い続けられるか、今の自分には判らない。
GM/「……強く『生きたい』ということを思っていない、そういうことでしょうか……?」
コハク/ああ。……何故そんなことを訊く? 作業をしながら会話をしていたけど、扶桑の方を向く。
GM/コハクが扶桑へと振り返ったとき、扶桑は既に君の背後に立っていて手には≪凶々しき武器≫を構えている。
エセル/エエエッ!?
GM/『イベントキー:好意』を持っているなら回避判定が可能です。好きになってしまったコハクへの気の迷いか、照準にブレが生じるってやつですね。『AF判定:扶桑との交流』に成功してなくてイベントキーを入手できてないなら自動失敗で当たります。
コハク/イベントキーを持っているので、避けます!
GM/扶桑の命中判定。(ころころ)14でした。
コハク/回避!(ころころ)あ……13、1足りなくて避けられない……。
GM/惜しい、ダメージロールいきますよ。(ころころ)物理ダメージ19点です。
コハク/それだと……コハクの【HP】は19点で、【物理防御点】が1点なので、1点で生き残ります!
エセル/生き残ったー!?(笑)
GM/おおお、出目が高かったから一撃死かと思ったけど生き残った! では、扶桑は……≪凶々しき武器≫である大きな槍を振り返った君に突き刺した。致命傷を与えた、確実に心臓を貫いたと思ったけど、君にはまだ意識がある。
コハク/でも……残り【HP】は1点、畳の上に血をバラ撒いて、よろけます。……扶桑、何をっ……?
GM/扶桑は一撃で殺せなかったことに、ひどく取り乱します。「あっ……なんで……?」
コハク/それは、俺が聞きたい……!
GM/いきなり女に刺された。そのことに、君は恐怖することでしょう。負の感情に満たされることでしょう。そして、「……こ、コハク様は、強く『生きたい』と思っていないんでしょう……? やりたい夢や、叶えたい未来も無いんでしょう……それなら、わたくしのために死んではくれませんか……」 震えた声で、彼女は言います。
コハク/……それは、何故だ……。
GM/「わたくしのために、です……でないと……!」 扶桑はまた槍を君に突き刺そうとします。「でないと、わたくしに……未来はございません……!」 ここでちょっとした意地悪をしていいですか?
コハク/どうぞ。
GM/ダイスロール直後に、≪機関「チルドレン」≫を使用。さっきのダメージロールにプラス10したい。
コハク/あ、死ぬ。
エセル/どうやっても死ぬじゃーん!?(笑)
GM/んん……でも、これはさすがに、ちょっと後出しすぎるかなぁ……?
コハク/それなら、【幸運】判定難易度簡単の6〜8に成功したら≪機関「チルドレン」≫を使用とかどうでしょう?
GM/お、お優しい! GMにも優しい、ありがたい! それではせめて難易度10に挑戦し、成功したら特技を使用させていただきます。(ころころ)ごめん、達成値12で成功しちゃった……。
コハク/死にましたね。……槍をぐりっと更に体へ捻じ込まれたんでしょう。
GM/エセルドレーダ、すぐに駆けつけることができるかの【幸運】判定をしましょう。簡単な行為の難易度8で。
エセル/せーの!(ころころ)んんんっ!? 達成値……7で失敗!
コハク/あ、死んだ。
GM/死にました。……コハクの体に≪凶々しき武器≫が捻じ込まれていく。その間も扶桑は「早く死んで……早く死んで……」と呪いの言葉を吐いています。
コハク/……その顔は……?
GM/辛そうに、淡い暖色の瞳から涙を流しながら。「お願いです……早く……死んでください……」って苦しそうに、ずっとずっと言ってます。人離れした美しい外見をした女の纏う白い着物は、コハクの返り血を浴びて赤く染まっている。必死に必死に、君の体を殺そうとします。辛そうに、辛そうに。
コハク/…………。そんな姿にすら、綺麗だって思えてしまう。……でも、少し……怖いな。何も判らないけど、早く苦しみたくないって、目を閉じます。
GM/「……コハク……さま……ごめんなさい、ごめんなさいっ……!」 一度槍を引き抜いた彼女。しかし、ザシュッと……確実にコハクを殺すために、もう一度凶器を振り下ろしました。


 ●トリガーイベント 〜闇の渦〜

GM/コハクは死んだ。だけど君の耳にとある声が聞こえてくる。……うっすらと瞼を開けると、そこは上も下も右も左も判らない世界だった。君の知らない世界だ。
コハク/……ここは……。
GM/ここは死後の世界だ。そう思う。
コハク/……地獄に落ちたのか、俺は……。天国だったらもっとキラキラしているもんな。まあ、あんな所に居たんだから仕方ない……。
GM/どこからともなく声がします。「貴方は死んだ。意味も判らず死んだ」
コハク/……声のした方に向く。
GM/「でもそれは仕方ないこと。貴方は死ぬ運命だった。そんな運命、認めたくないんじゃない?
コハク/……そんなの、そうだろう。言われるまでもない。……未来は無いとは思っていたが、あんな死に方じゃあ……。
GM/「運命を歪めてみたくはない? こんなクソな終わり方にしてくれた神様に抗って、人生をやり直してもっと好きに生きてみたくはない?」 そう優しく君を誘う声の方へ視線を向けると、このような少女が微笑んでいます。君は知らない、彼女が『魔境のカケラ』と呼ばれている者であることを。

 魔鏡のカケラ
 誰も居ない空間から現れる、謎の少女。14歳ほどの少女だが、その正体は異端を生み出す『欺く神』の体の一部。
 迷える者の元に楽しそうな話題を提供し、導いてくれる。優しく欲望を囁き、人々を『異端堕ち』させて世界を『負の感情』で満たそうとしている妖艶な魔女。


GM/今まで一度も会ったことのない、とってもふしぎな少女。彼女の存在はとても自分に馴染み深い、まるで母親のような、旧知の幼馴染のような、恋人のようだ。優しく微笑みながら手を差し伸ばしてくる。
コハク/その手を取れば……助けてくれるのか?
GM/「ええ、そうよ。貴方は死んだ。だけど世界はそれを認めている。そんなの嫌でしょう。私はそんな運命を歪めてあげる。貴方が手を取ってくれたのなら……」
コハク/……知りたい。なんで自分が殺されたのか。何故彼女は泣きながら自分を殺したのか。……なにより、怖い。このまま死んで終わりなんて、納得できない。
GM/「そう、なら……」 彼女の指が触れそうになる。それを本当に取るかは、君次第だ。
コハク/……もちろん、取る。指を握りしめる!
GM/君は彼女の手を握った。……その瞬間、君の体が歪み始める。元あるべき姿ではないものへと変貌していく。お好きな【能力基本値】を2D6点減らしてください。これが魔境のカケラが君に課したループの代償、人生を歪めて蘇るための通過料です。
コハク/(ころころ)6と4……10減ります。
エセル/が、ガッツリ減ったな!
GM/もし何の【能力基本値】を減らすか決まらない場合、1D6を振って「1:体力、2:反射、3:知覚、4:理知、5:意志、6:幸運」のキャラクターシートの能力値順に決めるといいですよ。
コハク/ならそのダイスロールで決めてみますね。(ころころ)3……【知覚】が10点減ることになって、【知覚基本値】が2、【知覚】の能力ボーナス2になりました。
GM/【知覚】は、聴覚や視覚などの五感の鋭敏さを表わす能力値です。それを損なうことになります。
コハク/じゃあ……視力を失ったことにしよう。左目はもう完全に視えなくて、右目ももう見えづらくなっているような。
エセル/兵士としては致命的だな。
GM/致命的だね。……では、君は目を覚まします。そこは、廊下です。君は夕食のお盆を手に、扶桑の居る座敷牢へと向かっている最中だ。
コハク/今日の、日付は……?
GM/11月7日。夕飯はホカホカ。今まさに夕食を持って行ってやろうというときだ。……しかし君の目は、ボヤけている。兵士だというのに視力が良くない君。世界は「君の視力は悪いものだ」と書き替わっていたのでした……。


 ●クライマックスフェイズ1 〜計画〜

GM/一方その頃。頭垓の研究チームに居るエセルドレーダは……【意志】判定をすることができます。これに成功すると、何か予感という第六感が発動。急にコハクの元に行きたくなります。難易度は8。
エセル/せーの!(ころころ)達成値12! 成功した! 
GM/これからクライマックスフェイズが突入できるんだけど、PC2のエセルドレーダにはここで選択肢がある。1つ目は、すぐにコハクのいる所に駆けつけてコハクの身に何があってもいいように準備するやつ。2つ目は、放棄してしまった方のやっていないAF判定に挑戦するやつ。
エセル/エセルはループ前の記憶は所持してるの?
GM/してない。なので1つ目は「嫌な予感がしたから来たぜ! 当たってぜ!」、2つ目は「そんな気がしたけど知らねーぜ! 自分のことするぜ!」になる。ちなみにAF判定に挑戦するなら、元の難易度より半減してるよ。
エセル/中の人と相談してもいい? ……コハク的にはどっちの方がいいかな?
コハク/うーん……2つ目の方かな。真相が知りたいし、それにエセルの中の人が「航先生が好き」って言ってたから(笑)
エセル/ありがとう!(笑) じゃあ欲求に素直になって2つ目にいかせてもらう!

『AF判定:成果を出す』
 ・使用能力値:【体力】【反射】
 ・難易度:30→半減して15
 ・ラウンド制限:1ラウンド

※「航のもとで機関の一員として成果を出す」演出に成功すること。


エセル/エセルはいつも通り頭垓の研究室に来たけど、嫌な予感のせいでソワソワしてる! だから仕事をするため≪睡眠薬≫を投与して落ち着かせる。
GM/それ仕事になんねーだろ(笑)
エセル/エセルは人外だからビックリ、仕事になるんだよ! ≪痺れ薬≫を使うとテンション上がるんだ!
GM/それ絶対ヤクに貼ってるラベル違うもんやろ。
エセル/いざとなったら眠気に≪光の一手≫をする。
GM/眠気って能動的行為だったのかしら……(笑)
エセル/変な予感がスル。コハクに渡した≪お守り≫と同じ物を握ってソワソワ。
コハク/お揃いのお守りを持ってるんだ……(笑)
エセル/ソワソワしてるけど仕事はしなきゃ! ≪全方位視覚≫で研究員の様子を伺って、疲れてそうなヤツのトコロにお茶を渡しに行ク!
GM/おっ、お茶汲みのメイドロボっぽいことしてるぞ! ……って、エセルがしてる「頭垓での仕事」ってお茶汲みオンリーなの?
エセル/本当は、手から≪鋼神の鉄槌≫相当のハンマードリルを出して攻撃するバリバリの戦闘系。頭垓で生み出されたアンドロイドなんだけど、戦闘ロボってことで朱指のコハクとセットにされた。
コハク/なるほど。
エセル/だから外に出ない待機中のときは、バリバリの≪移動力上昇≫を生かした瞬発力ある二足歩行でお茶を出すのが仕事! おっ、航センセイが徹夜12日目でお疲れだと≪見通す眼≫で発見。お茶を出しに行く!
コハク/1週間経っても寝てないんだ、あの先生(笑)
GM/何故死なないんだ、あの先生。これで特技を8つ使ったから、『現在難易度:1』まで下がったよ。
エセル/もちろん【反射】で判定!(ころころ)ぐ、出目が1・2だったけど達成値7で成功だ!
GM/ギリギリファンブルじゃなかった、お見事。まさかのもうすぐ2週間完徹を迎える航先生は、研究大好きなのでとっても笑顔でお茶を飲んでる。シュークリームうめえし糖分うめえ。
コハク/もう休んで!(笑)
GM/「そろそろコハクくんと最期のお別れはできたかい?」
エセル/…………ワッツ!?(笑) センセイ、相変わらず話が急すぎるヨォ!?
GM/「あれ、もうコハクくんは死んだんだっけ? まだ死んだって報告が頭垓に届いてないけど……」
エセル/どういうコト!? 聯合されるかもっていうのはホントだったノ!? 何を知ってる教えろメガネ!
GM/エセルにガックガック揺さぶられたら完徹12日目の彼はポックリ逝く。
エセル/そうなる前に寝ろッ!(笑)
GM/「エセルドレーダは優しいなー。……はあ、えっとねぇ」 ゆったり喋る航先生は、AF判定に成功したエセルに話し始めます。「昔々、扶桑っていう魔導生命体がおりました」
エセル/今もいるゾ。
GM/「今もいるねぇ」
エセル/扶桑って、魔導生命体だったのか。
GM/ようは創られし者、エセルドレーダと同じようなもんだね。外から獲ってきた異端と[魔術師]の創るホムンクルスを掛け合わせたもの。人形よりかなり人間寄り的で、それでも魔力で動く人外だって言います。
エセル/……機関は異能や異端を研究して、「人々のより良い生活と発展の為に」っていうのが大本の理念だ。そういうのがいっぱい居てもおかしくナイ。扶桑の正体に驚きはするけど、納得ダナ。
GM/「でも残念ながら機関で製造された扶桑は、外には出せない虚弱体質でねぇ。もう少しレベルが上がらないと君みたいに外への任務に出せそうにないんだ」
エセル/そうなんダ。
GM/「ところでこの世界、レベルアップには感情が必要なんだよ」
エセル/ウン。
GM/「戦闘した方がレベルアップするには早いんだよ」
エセル/ウン。
GM/「ホムンクルスと掛け合わせたモノが異端である以上、感情を奪うようなレベルアップの方がおいしく成長できるんだよ。簡単に言えば扶桑を手っ取り早くレベルアップをさせたかったんだ、狭山所長は。ふぅ、何が言いたいか、頭の良いエセルドレーダなら判るかい?」
エセル/…………。コハクが扶桑の世話役になったのは、扶桑を成長させるため。負の感情を味合わせるため。扶桑のレベルアップのためのエサが……コハク。
GM/「聯合される予定だったコハクに白羽の矢が立った。やっぱり頭良いロボットだね、君は」 よしよしいい子いい子ー。
エセル/センセイが造ったモノですカラ。……でも、どうしてコハクは聯合されることになったんです? 何か失敗でも……。
GM/「え、機関に居る人間なんだからいつ機関の為にその魂を捧げても本望なんじゃないの?」 狭山が適当に選んだだけって言います。
エセル/……ああー……もうー……ですよネー……(笑)
GM/航先生は、「扶桑には7日間世話をされてから7日目に殺せと命じてある」ことも話してくれます。なんでって、1週間も交流すればそりゃ好意を抱くよね? 好意を持ってしまった相手を命令で殺さなきゃいけないって、非常に良い感情を頂けるよね。わお、効率的レベルアップ!
エセル/魂の経験積みまくりだよ、レベルアップ間違いなしだよ。……手間で面倒だけどそれだけの、良いお仕事ですネ! って言いながら熱湯でお茶おかわり淹れておきマス!
GM/わーい、航先生のベロが大火傷だー。ってなことをしている一方その頃……コハクの視点に戻そうか。


 ●クライマックスフェイズ2 〜対峙〜

GM/今のコハクには、扶桑に殺された記憶はある。それはおそらく、数分後の記憶。このまま扶桑のもとへ夕飯を届けに行ったらまた槍で貫かれるかもしれない。視力を失くしてボヤけた視界の中、コハクはそんなことを思います。
コハク/……じゃあ、部屋に行かなければ……?
GM/仕事をしなかった、ということで上からお叱りの言葉を受けるだろう。
コハク/……逃げ場なんて、無いか。だからコハクは前のループと同じように、扶桑のもとへ飯を届けに行く。それしかない。
GM/行くか。……君は色々と結界の張られた座敷牢の間を訪れる。「コハク様、こんばんは……」と声を掛ける扶桑。その声は、今なら判る。いつものように静かな声ではあるけど、震えているようにも。
エセル/命じられた通り、殺して経験値にするって判って迎え入れてたのか。
コハク/……そんなことは知らない。とりあえず飯を出す。
GM/「いつもありがとうございます、コハク様……」 彼女は夕食を頂くよ。
コハク/…………。
GM/…………。もし君が去ろうとするなら「暫く居てくださいませんか、居てくれるだけでいいので」って何気なく全力で止めにかかる。今夜は君に用件があるから。
コハク/……扶桑を見ていよう。
GM/「そ、そんな、穴があくほど見られたら恥ずかしいです……」 こっち見ないでって言うよ。
コハク/…………。
GM/……全ては、君の隙を狙うために。隠密行動でダメージアップを狙って攻撃を……どこかのタイミングでしてくるつもりだと、君は察することができる。
コハク/……扶桑。
GM/「……はい、いかがしましたか」 扶桑は、何事もなく普通に受け答えするかのように薄く微笑みます。
コハク/……膠着状態じゃあ、何も進まない。言わせてもらおう。……殺意が出ているぞ。
GM/「…………」
コハク/それで、死が回避できるとは思えんが。……ボヤけた視界を擦りながら言う。
GM/「…………」
コハク/…………。
エセル/GM! やりたいことがある!
GM/おう、いきなり何だ。PC2は航先生の方へ脱線したから2ラウンド後じゃないと登場不可の予定だぞ。
エセル/エセルには『ライフパス』で「遠くにいる人に通信ができる」っていう設定がある! だからこれを生かしつつ、どんなルールだって無視する勢いの強制力のある令呪を使ってコハクに命令がしたい!
GM/ほう?
コハク/なるほど、令呪を使ってコハクに強制シーン退場をさせるとか?
GM/良いアイディアだね。でも逃げたら「上の命令に背いた」ってことでコハクの立場が危うくなるけど……。
エセル/1D6を振って偶数が出たら「先に扶桑を殺せ」って命じる。奇数が出たら「扶桑に愛の告白して一発逆転回避を狙え」って命じる。
GM/ファッ!?(笑)
コハク/え?(笑)
エセル/だって…………コハクと扶桑の睨み合いだけでもう30分経過してるから、もういっそ令呪を使いたい!(一同笑)

 リプレイ文では、さっくりとまとめていますが。
 実際、コハクと扶桑の膠着状態と何気ない淡々とした会話、リアル時間で30分が掛かっています。
 もうエセルが駆けつけたっていいレベル。


エセル/いいよな!? 使っていいよな!? 振るぞ! もう振ーるーぞ! ……よし、中の人達からOKが出たから振る!(ころころ)……6、偶数っ!
GM/よりにもよってそっちかよ!(笑)
コハク/殺せ、の方か……!(笑)
エセル/エセルは自分の契約者が殺されると知った。でもちゃんと書面で「水倉 コハクを殺すことが決定しましたから〜」って連絡を受けてない! けど今まさに殺されようとしている! これは知らなかったから抵抗したって正当防衛だと言い張ればいい! そう考えて、令呪を使って遠距離から「扶桑を殺せ」って命じます!
GM/令呪を1つ消費してください。コハクの魂が、いきなり縛られていきます。令呪……生命力や魔力よりも強大さを持ち、どんな制約よりも拘束力の高い、この世界で最も恐ろしいパワー。その命令は、同じぐらいの力でなければ解除できない凶悪な支配力を持っている。……絶対に従わなければならないギアスが、コハクの体を縛りつけます。
コハク/……扶桑が迷っているのなら。食事を終えて事を成そうとしている扶桑の前に、立ちます。
GM/じっとコハクを見ます。
コハク/……扶桑。すまない。お前が女でも、世話をしなければならない相手でも、か弱い存在でも、心を奪われた相手だとしても、俺は……。言って、手に≪片手武器≫の太刀を持つ。
GM/「……コハク様? 何を……」
コハク/死にたくない。そう、先が無くても……俺は嫌だから、戻ってきたんだ。ただ自分が生き残るために。扶桑より先に武器を握る。そして……。

 ……戦闘開始。
 『イベントキー:好意』を持っているキャラクターは、回避判定を行なうことができる。
 先ほどはたった1の差で攻撃が当たってしまったが、その対決は五分五分。

 つまり、事前の準備と明確な殺意があれば……コハクは、虚弱な女性などいともたやすく殺めることが可能だった。
 3ラウンド目、エセルドレーダが戦闘に参加。それによって追加の令呪を使うことができるようになったコハクに、敗因は無くなった。

 ……生死を分ける戦いは、呆気なく終わる。


 ●エンディングフェイズ 〜未来〜

GM/コハクの最後の一撃を受け、扶桑は畳の上で倒れ伏します。激しい戦闘の末に振り乱した黒髪はバラバラと散り、真っ白の着物はすっかり赤い血で染まっています。
コハク/……無言で、倒れた扶桑の元に近寄ります。
GM/扶桑はもう助からない。もし助かるようだったら、令呪の支配力によって君はまた刀を彼女に突き刺すでしょう。君が今、彼女の元に静かに近づけるのは……彼女が死ぬと確定したからです。
コハク/……扶桑。声を掛けます。
GM/扶桑は、君に尋ねます。「コハク様に……未来はありますか……?」 以前のループで、君を殺す前に尋ねてきた言葉と同じことを訊いてくるよ。
コハク/……聞いてどうする。聞いたら、潔く逝けるか。
GM/「……コハク様には、生きたいという強い願いはございますか……? もし……無いのなら……わたくしに生を、譲ってください……」
コハク/……扶桑……。
GM/「わたくしは……この外へ出てみたい……だって、出たことがないんだもの、この目で、空の……下へ……」
コハク/……一度も出たことがなかったのか。
GM/扶桑は明るい色の眼を見開いたかと思うと、カハッと血を吐く。助かりはしない。それでも「譲ってください」と言うということは、これが彼女の心からの本心だったのだろう。
コハク/……俺は、一度死んだ。死んだとき、何もしないで、何も知らないでそのまま死ぬのは嫌だと思った。たとえ死ぬ運命だとしてもその人生を歪めてでも生きたいと思った。あれは、最期だから気付いた本心だったのだろう。
エセル/…………。
コハク/何も未来なんて無い、生きる意思など無いと思ったが……いざ死んでみると俺は臆病だった。死にたくないと思ってしまったんだ。か弱い女を救うこともせず、ただ……自分が生きたいという欲望に突き走る、異端のような存在だったということだ。……お前を一度は愛しいと思った。だが、許してほしい。俺は臆病だから、どうか生かしてほしい。
GM/「…………」 君が最後の言葉を言い切るより前に、扶桑は動かなくなる。だから彼女は君を否定はしない。なんで救ってくれなかったのとか、死んでくれなかったのとか、身勝手なとか言わない。言えない。君に残ったものは、他人を蹴落としてでも生きようと思った強い意思だった。
エセル/……エセルはさっき言った通り、全力でコハクの弁解に走るヨ。もし貴重な魔導生命体を失ったことを追及されたなら、それを上回る戦闘力がコハクにあると推していく。
GM/エセルはコハクを応援していくんだね。
エセル/当然。上司の命令は絶対だ、自分も荒波を立てたくない。でもコハクを見捨てる訳にはいかない。だから、ネ。
GM/「成長の余地のある魔導生命体を、成長の余地が無いと判断された兵士を使ってレベルアップをさせる計画」だったけど、終わってみれば「あの魔導生命体はその程度の存在だった」ということになる。それよりはエセルの言う通り「コハクはまだ使えるだろう」ということで、聯合される話は一切聞かなくなります。
コハク/……コハクは救われたんだ。
GM/ええ、救われます。これから君の意識がどう変化して生きていくか、違う任務で生きていくかは君次第……。

 「……う、うふふふふ! おめでとう、貴方は生き残った!
 自分の体の一部を代償に、可憐な美女の命をも代償に! おめでとう、欲望の中で生きるその姿こそ最も美しい!
 そう、汝が成したいようにやればいい。我欲にまみれて生きていきましょう。そうすれば、いずれこの世界は滅茶苦茶に――」

 どこからともなく、妖しい少女の笑い声と拍手が聞こえてきた。けれどそれは、きっと気のせい……。


コハク/その後、コハクは死にもの狂いで朱指で戦っていくと思います。異端がいるから倒すでなく、任務だから倒すでなく、任務で異端のもと行ってもっと生きていきたいから倒すに変わっていったとか……。
エセル/エセルは結構現状に満足しています! 生きたいからってことはちゃんと勝つ気があって戦ってきて、確実に本丸に帰ってきてくれるってコト! 凄いぞコハク、お前もレベルアップしたってコトだナ!
コハク/お前もレベルアップしたって、何のことだ?
エセル/……ウウン、なんでもナイ! エセルは心の底から扶桑にありがとうって思っておく。可哀想だと思うよりも先に、コハクの今があって良かったって考えるかな。
コハク/何をニマニマしてるんだ。……新しい任務に生き残って帰ってきて、エセルに言う。
エセル/ウウン、なんでもナイってば! ホラ、強いって知られて引っ張りダコのコハクさん、よそ見してるとまた評価下げちゃうヨ。まだ死にたくなんかないでショウ?
コハク/ああ、死にたくないさ。……こんな世界でも、身勝手だと罵られようが死にたくないもんだからな……。


 アナザーワールドSRS・リプレイ
  〜 杏色の空から 〜





END

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