ギガントマキアFP・リプレイ・ファネスプロジェクト
■ 第5話 『白に堕ちる』 ■
2006年12月12日




 頭の中が真っ白だ。ひとつも残ってはいない。空虚な色。
「俺たちが君に声をかけよう。他ならぬ君に。なんにもない君に居場所を与えてあげる」
 ……少女は、疑うことなく、手をとった……。

「……ほら、こういう風にやるんだよ。簡単だ、迷っている子はすぐ手をとろうとする」
「……ふぅん、なんだか子供の時に見た特撮の悪役みたい」

「特撮?
 まぁ、お前が参考になるんだったらそれのようにやってみるといいよ。じゃあやってみな。まずはツーデル、次はノーデンメーア……。この辺がお前でもできるんじゃないかな?」


 ★ヴァロード


「貴方の命もつれていくー!」
 そう叫び、光に散ったカグラ。……ヴァロードは、今、真っ白な空間に立っていた。
 上を見ても下を見ても周りを見ても真っ白、色があるのは自分だけ。何もない世界、けどヴァロードには判った。――鋼魔の彼女の魂が、この世から消えていくのが。散り散りになって砕けていく彼女の魂が。
「私は、また、同じことを……っ」
 同じこと、――形は違えど、3年前に友人ラメルを刺し殺した時と同じだ。……そしてあの時も、こんな風な夢を見た気がする。この夢から目覚めた後、右手には……聖印が刻まれていたのだった。
 あれは3年前の出来事。今、同じ空間にいる。
「貴方はあの人を殺した」
 どこからともなく、優しい声が聞こえてきた。とても優しくてやわらかくて、あたたかい声が。
「でもね、別に貴方が悪いんじゃ無いわ。……全て、世界が間違っているのよ」
 聞き覚えのある可憐な声、顔を上げると黒髪の少女がいる。
「だってそうでしょう? 貴方は頑張って今まで彼女を助けようとしたじゃない。なのにどうして報われない」
「世界が悪いのか、……どっちが正しいんだろうな」
「疑うの? 貴方ばかりが不幸を背負わなければならないか……考えたことはない?」
「……いや、自分が不幸かどうかなんて、自分はどう感じるかによるんじゃないか」
「どう思うかって?」
「形は違ったとはいえ同じことをしてしまった私はどうしようもなく自分に苛立ちを覚える……けどこの力を誰かを守ることに繋がるというのだったら、私は喜んで自分の手を汚そう」
「そう、そうなの……? じゃあ」
 少女は近寄ってくる。とても優しい目の、黒髪の少女が顔を寄せた。
「手を汚す手助けをしてやってもいいわ。この世界は間違っているのよ、千年前からね……血壁に守られし、幻想の結界によって捻じ曲げられたこの世界は、全ての真実を隠している。そしてそれは、貴方のような自分の手を汚そうとしてでも正しき道へ進もうとする人を間違った道へと導く」
「間違った道……?」
「本物の世界はこんな面倒なシステムはないわ。便利な力だって原理を理解して努力で成し上がる……それは科学って言うんだけど。まぁこの世界に住んでいるんだもの、この世界のルールの中で思う存分動きましょう? ……そして今、貴方は大きな力を手に入れられるところにいるわ」
 少女が手を伸ばす。
 ヴァロードの手を掴むように。
「鋼魔になりなさい。そして、血壁を壊して、外の世界にゆきましょう……」
 優しい声で、何もない世界に差し伸べてくる掌。
 しかし、……ヴァロードはその手を払った。
「それは間違っている。そんなの……してはいけないことだということぐらい判る」
「……貴方は鋼魔が好きなんでしょう?」
「好きだよ。けれどなろうと思わないね。私が鋼魔を愛しているのは……」
「……罪の意識を感じているからなんでしょう? 貴方は鋼魔となった親友を助けられなかった。だから貴方は鋼魔を愛そうとしていた。友人やその恋人といっしょにはなりたくないの?」
「お生憎様。……この力は仲間の為にと言ったんだ、カグラに」
 ヴァロードは、……無いと思っていた己の剣を抜いた。
 目の前の少女は、先程と違う目の色で立っている。優しい声などどこにもない。あるのは、敵意だけだ。
 瞬間、――眼前が白い霧で覆われる。少女を抱くように現れる白い……影。真っ白な空間にもう一人、――男が現れた。
「……ダメじゃないか、マナ。もうちょっと慎重にいかないと怪しまれるだろう。お前は直ぐに感情的になる」
「ご、ごめんなさい。私なりに頑張ったんだけど……」
「『特撮の悪の幹部っぽい演技』ってやつをしてるからだ。もっと自分の感情を込めて言えば相手はわかってくれる筈だ……さっきの女はそうだっただろう?」
「む、むぅ……むぐ」
 訳の判らない会話。踏み出すにもそこに地は無かった。
 白い世界が黒く染まっていく。心地良かったあたたかい世界は、どんどん闇につつまれ――。
 ……気付くと、そこはサイレンスの自室だった。
「あ、れ。私は一体……」
「あっ、ヴァロード様が目覚めました!」
 ベッドの上、目を覚ましたことに驚くヴァロードつきのマシンネイチャー、タウロス。バタバタと動き回るメディック達。……痛む体。包帯だらけの自分。起きあがろうとするとそれをタウロスが止めた。
「私は、どうしてここに……?」
「マンジが撃墜されて機体から飛び出しちゃったんですよ! 傷だらけなんですからもう少し休んでください」
 搭乗員の必死の声に、ヴァロードは再び横たわった。
 自分は無事ここに戻ってきた。――自分は、打ち破ったのだ。


 ★クロン


 そこは黒い世界だった。上を見ても下を見ても周りを見ても黒、色があるのは自分だけ……。
 いや、違う。自分の前には誰かがいる。二人、話をしていた。クロンはただ見ているだけで何も出来ない。……ただ、二人を見る。
「……ダメじゃないか、マナ。もうちょっと慎重にいかないと怪しまれるだろう。お前は直ぐに感情的になる」
「ご、ごめんなさい。私なりに頑張ったんだけど……」
 一人は見覚えのある少女。
 黒髪で、ある男に窘められ落ち込んだ顔を見せる。……とても自然な表情の少女だった。
 その隣にいるのは……。
「さて、□□は□□に来るらしい。なら□□まで□□きてもらうことは出来るか? マナ、お前ならできるだろう。□□を使えば大丈夫だ。□□まで行ければ、そこから先は□□が――」
 何も出来ない、ただ二人の姿を見るだけ。
 クロンは目を細めた。黒い空間に、白くぽうっと浮かぶ何か。マナの隣はよく見えない。男だと判るのに、わからない。クロンは目を凝らし、――気付いた。
「……待て……」
 息を呑む。
「……ちょっと、待て……!」
 マナの隣にいる、その男は――。
 ……気付けばクロンはサイレンスの天井を見ていた。
 ここは医務室。数日前に風邪で倒れてからお世話になっている部屋に、――パイシースが、両手にネギを持ちこちらを見ている。
「あっ。クロン様も目覚めましたよ、良かった〜!」
「パ、パイシースさん……とりあえずネギはむこうにやってくれませんか」
 声は普通に出た。嗄れた声でもなく、頭の痛みも咳もない。半身を起こすと、やけに軽く感じる。
「クロン様は艦長に怒られている最中倒れちゃったんです。熱ぶり返しちゃったんですね、でももう熱も下がったみたいで平気ですよ〜」
「あ……ああっ、ヴァロードさんはどうなったんですかっ?」
「ヴァロード様なら先程お目覚めになったと連絡が入りました。安心してください」
「……俺は、一体どうしたんですか? ヴァロードさんが襲われて、出撃して、戦ったのは覚えてるんだけど……」
「……覚えてないんですか? ハナシロのこととか、艦長に怒られたこととか。と、とにかく皆様に連絡しますね〜!」
 バタバタと慌ただしく外へ伝えに部屋を出ていくパイシース。
 風邪は治ったが、ひんやりとした濡れタオルは心地よく感じる。何度も深呼吸をし、……ふと医務室にある鏡を見た。
「……」
 鏡は、少し頬が赤くなっている自分の顔が映している。
「……誰」
 黒髪の、自分の顔が。
「……これは、誰」


 ★クロウディア


 クロウディアは一息ついた。ヴァロードとクロンの看病ももう平気だとマシンネイチャーに言われ部屋に追い返されてしまった。サイレンスの自室にて、ベッドに寝転んでボーっと天井を見る。
 どうしよう。
 ウェストシティに行く前とまったく同じ悩みを抱えていた。
「失礼します、ヴァルゴです。イシュアール様、宜しいですか?」
「あ、はい。……なんで名字で呼んだんですか?」
「何とお呼びすればいいのか迷いまして。――クロウディア様、で宜しいですか?」
「はい、今はクロウディアです」
 扉の前に立ったまま、ヴァルゴは口を開く。ただその喋りは、クロードにはいつもの事務的なものとは違うものに感じた。
「もし宜しいのならこちらから皆様に事情を説明する方法もできます。いかがしましょう?」
「い、いえ! 自分で言います! ……その方が、ちゃんと認められるでしょうし」
「……認められる、ですか。クロウディア様のやり方で皆様にお話すればそれでいいのではないでしょうか。皆様、貴方を仲間として認めているのですから」
「それはクロードです。……クロウディアではありません」
 クロードなら部隊の一員として認めてもらえてるだろう。けど、クロウディアはまだ認められていない。……勿論そんな事を認めないような人達ではないと判っている。仲間だから、自分の正体を告白しようとは、思うのだが……。まだ、言えない。
「――では。ヴァロード様とクロン様がお目覚めになりましたので任務についてお話しに行きましょう、メインフロアにお集まり下さい。失礼します」
 ヴァルゴが出ていく。クロウディアの服を着て、自室を――クロードの部屋を出る。廊下では病み上がりのクロンとヴァロードがいた。
「ばばばばばろおどさん、大丈夫ですかヴァロードさーん! 怪我とか、怪我とか怪我とか平気ですか!」
「だ、大丈夫ですよー……ってガックンガックンやらないでください!」
 ……本当に大丈夫かと思ったが二人とも元気そうだ。近寄って、クロンの頭をポンとたたく。
「クロンさん、落ち着いてください」
「あ、クロードさん……じゃなかった。クロウディアさん、そちらは大丈夫ですか!」
「ええ、とても良好ですよ」
 それを見たヴァロードが、首を傾げた。戦闘中、通信で挨拶はしたものの少々感づかれてしまったかもしれない。
「ヴァロードさんは多分初対面ですね。ウェストシティで一緒に戦ってくれたミンストレルのクロウディアさんです。クロードさんは風邪でダウンしまして、……ってクロードさんは平気かー!」
「大丈夫ですよ。クロードは安静にしてるんで、心配する必要はないです」
 ヴァロードに手を差し伸べる。初対面の握手だ。ニッコリ笑いかけるも、……まだヴァロードは首を傾げている。
 宜しくお願いしますと誤魔化すように笑って、メインフロアへと向かった。


 ★カミール


 寝息を立てていた。
 ヨリーからの手記の纏め。ウェストシティ文化財の復興作業員手配。連日の忙しい日々。微かだが与えられた休暇というのに慌ただしい毎日。……一人きりの空間に、ウトウトとしてしまった。
 その時、夢を見た。
 ――ある人物の夢を。
「……」
 ある村にて、エルフの里。
 大切な少女。彼女と暮らす幸せな日々。
 襲いかかる悲劇。それは……鋼魔化。
「……ミルティア……どこに」
 目の前から消えた少女。目を覚ましても彼女の姿はどこにもない。
 何故なら、そこはサイレンスのメインルームだからだ。
 頭を振るう。3人が来るまで待つ数分の間に悪夢を見てしまったようだ。……何度も見た悪夢を、また今日も。


 ★メインルーム


GM/では艦長がウトウトしていたところに3名やって来て下さい。
クロウディア/失礼しまーす。……あれ、カミールさんが微妙に寝てた?(笑)
カミール/寝てない。……襟元を正して向き直る。
ヴァロード/というか、少々顔色が悪いですよ。大丈夫ですか。
カミール/大丈夫だ、……本当に大丈夫だ。
GM/4名が揃ったところで、ヴァルゴもメインルームに入ってきます。「では任務についてお話をさせて頂きます。艦長、宜しいですか?」
カミール/構わん、話せ。
GM/「元々言われていた任務は、我らがノーデンメーアとブライトインゼルに行っている間に別働隊が解決しました。なので新しい任務としてハウフェトに向かいます。――その新しい任務というのが、血壁の強化です。この度、初の試みですが破壊されつつある血壁強化実験を行うことになりました」
クロウディア/強化の実験ですか?
GM/「アークでは血壁の研究が長く行われてきました。そして3日後、列島の周りに張られている結界を強くする目的の『霊格リンク』を行います。その場所が、列島のヘソと呼ばれるハウフェトのデシード寺院です。それ以外にも理由があるのですが……」
ヴァロード/どのような?
GM/「必ずどの都道府県にもアーク支部があります。そのアーク支部は、イーストシティなら国会議事堂のように西暦の遺跡をそのまま使っています。……他の地域は殆ど、電波を流す遺跡を使っているんです」
クロウディア/電波……ですか?
GM/PL的には『テレビ局』『ラジオ局』だと思ってください。何故なら、そこに最新の機械があるからです。文明が発達したものが使えるのは文明がゼロのこの世界ではとても重要なことですから。……で、デシード寺の近くに電波塔があります。高度な文明の近くで行えば西暦の眠る力、バリアーがより強く張れるのではないかという予測です。
クロン/……よく判りませんが、デシード寺で行われるのが一番適してるんですね?
GM/そういうことにしておいてください。「艦長とイシュアール様はマスターからお話されたと思いますが、西暦の時代に作られたバリアーである血壁は新しく作ることはできない。ですからこの実験が成功すればどれだけ素晴らしいことか、お解り頂けますね。
 西暦の科学の力はまだ完全に活用できない。だから我らは魔法も使い血壁を新たに作り出すのです。そのためには列島中を包み込むほどの巨大な力が必要だ。――多くの魔力が必要なのです。
 霊格の高い僧侶たちや、クルースニク達が世界中から集まります。力を魔法陣に込め、西暦の力も発動させ、列島全土を覆うほどのマジックバリアーを張るのです。……完全な血壁にはなりませんが、少しでも列島を守る力になります。ですので、とにかくクルースニクの数が必要になります」
クロン/3日後に仮血壁を作ると。今日中にはハウフェトに着くのかな?
GM/「はい。ハウフェトに発生していた鋼魔は別働隊が退治したので戦闘はないかと」霊格値が2や3であっても、一般人は0以下です。多少なりとも魔力を持っているのでクロンやヴァロードも協力してほしいんですね。
ヴァロード/前の戦闘でコンバインアタックをしましたけど、それですね?
GM/無意識のうちに貴方達もやっていたんですね。「宿泊の方はアークがご用意しました。そろそろハウフェトに着くようですし、3日後まで街でごゆっくりしてください――」
カミール/了解した。全員、いつでも出られる準備をしておけ。


 ★ハウフェト


GM/ハウフェトに着きました。戦艦は消えます……。
クロウディア/あ、消える前に。――ワタシ、クロードさんが起きてるかどうか見てきますね!
ヴァロード/では私もクロードさんに会いに……。
カミール/いや、クロウディアだけで十分だ。お前らは外に出る準備をしておけ。
クロン/はい……これから行くハウフェトってどういう所ですか?
カミール/一言で言うなら温泉街だ。ネギとコンニャクと饅頭とかある。板きれでお湯をかっぽかっぽしている女性がいる。
クロン/はあ、……よく判らないけど、癒しのスポットなんですか?
GM/そうですね。ではそんな話をしているとパタパタとやってくる一人の……少年。
クロード/クロードが来ます。どうも皆さん、すいません!
ヴァロード/あっ、クロードさん大丈夫ですか? 体の調子は……。
クロード/ええ、マシンネイチャーの皆さんが看病してくれました。クロウディアさんは違う部隊の任務に戻りますので、また4人でお願いしますね! さぁ皆さん、先に行きましょうか!
カミール/……あ、ああそうだな……。という訳で少し歩いてハウフェトの街に着く。宿泊は用意していると言ってたな?
GM/アークがデシード寺のある山に近い、温泉のあるホテルを用意してくれました。アミュレットからの案内で直ぐにホテルに到着できます。
クロン/ヴァロードさん、変な匂いしますねー。あ、温泉饅頭と温泉玉子ってやつ食べないと!(笑)
ヴァロード/桶とタオル持って行きます!(笑) 任務までまだ日があるんだから温泉に行きましょうー!
クロード/……そんなに、楽しみなんですか? こっちは気乗りしないのに(笑)
クロン/あれ? クロードさん、顔色が悪いですけどどうしました? 温泉入らないんですか? 艦長もなんか上の空って感じだし。
カミール/温泉に入りたいなら入りたい奴だけで行ってこい。
クロン/艦長は行かないんですか?
カミール/返事をせずに部屋に入って、鍵を閉める。ガチャリ。
クロン/艦長っ? ……何だか様子がおかしいですね、平気かな。
クロード/大丈夫、ボクが見ておくからクロンさん達は温泉に入ってきてください。……GM。ホテルは大部屋ですか、個人部屋ですか?
GM/ヴァルゴの気遣いで個人部屋を用意させて頂きました。
クロード/ありがとう、ヴァルゴさん……。ボクはまだいいですから、行ってらっしゃーい。
クロン/あ、はい。じゃあヴァロードさん、一緒に楽しみましょうー!
クロード/――二人が行ったのを確認して。艦長の部屋にノック、コンコン。
カミール/誰だ。
クロード/……ボクだよ。誰か探しに行くんでしょー?
カミール/……何故知ってる。
クロード/何年もの付き合いなんだから、なんか探しているぐらい気付くって。彼らが帰ってくるまでに帰ってくる自信があるなら、今行けば? 
カミール/……。ガチャッと開けて、外に出る。
クロード/一人で行く? ボクも一緒に行こうか?
カミール/勝手にしろ。
クロード/じゃあついていくよ、邪魔はしないからね。ヴァロードさんの部屋の扉に手紙貼っておこーっと。『ちょっと出かけてくるから心配しないでね』と。
GM/温泉街に出ますか。ホテルを出ると似たようなホテル郡。露店があったりして人はそれなりにいる。……観光地らしく色んな種族が楽しく歩いています。
クロード/艦長についていきます。誰を捜しているのか判らないから適当に。
カミール/……彼女を捜す。ミルティア……どこにいるんだ。
GM/ではそこで、――街中に、カミールには見覚えがある長い髪の女性の後ろ姿が見えた。
カミール/……駆け出す!
クロード/えっ、いきなりですかカミールさん……!
GM/走り出すカミール、……街中を歩く女に何事もなく追いつくことが出来ます。
カミール/……後ろからトンッと肩をたたく。
GM/振り返る女性。
カミール/……顔は?
GM/貴方の知っているエルフの女性だ。呼ばれて少し驚いてる。
カミール/……。
GM/「……」
カミール/……すいません、私が捜していた人と大変似ていたもので。失礼ですが、名前は?
GM/「……私の名前ですか? ミルティアと申します」
カミール/……ミルティアさん。私のことを、覚えていますか?
GM/「……いえ。すいません、判りません。あなたは?」
カミール/私はカミール、カミール・クライアスです……その名に聞き覚えはありませんか?
GM/「カミール・クライアス……? すいません、覚えてないです」
カミール/……そうですか、どうやら人違いのようです。
GM/「そう、なんですか? もしかして、貴方は私のことを知っている人なんですか?」
カミール/「貴方は……、どこのご出身ですか?」
GM/「……すいません、判りません。私は……自分のことを全く覚えていないんです」
カミール/もしかして貴方は、記憶を?
GM/「はい……今は頼りになる方のところにいるのですが。貴方は私のお友達だったんですね?」
カミール/……。
GM/――と、やっているところに一人近付いてくる影。ミルティアの隣に着て、じっとカミールを見る……見覚えはないマシンネイチャーの少年。ミルティアはそれに気付いて少々畏まる。
カミール/……誰だ?
GM/「やいやーい、オレオレ」
カミール/……。
GM/「オレだよ、オレオレ」
カミール/その挨拶の仕方はやめろ!(笑)
クロード/近付いて行きます。貴方、ヨリーさんですか?
GM/「どうも、――ヨリーです」外見は二人とも、一度も見たことがないですが話し出します。「データだけ適当なカラに入れてみた。マシンネイチャーって便利だろ?」
カミール/本気で便利だな(笑) どこにいてもオレオレ言うのはお前だろうが、……どうして彼女とお前が? 知り合いなのか?
GM/「うん。頭が良い子だから使わせて……いやいや、協力してもらってる」
カミール/ヨリー、――彼女とはどういう関係だ。話せ。
GM/「ヤだ」
カミール/何故だ。
GM/「教えたくない」
カミール/……どうして。
GM/「ゴメンね、教えると不利益になるから」
カミール/……不利益?
GM/「うん。――ところで。今、ヒマかい?」
クロード/暇といえば暇ですけど。
GM/「みんなが揃ったところで話がしたいな。ダメ?」
クロード/みんなってクロンさんとヴァロードさんのこと? ……ホテルに来る?
GM/「うん、行く。ミルティアも行こう」「あ、はい……」彼に言われて、ミルティアは大人しくそれを聞きついていきます。クロードの方に向かって「あ、あの……私、ミルティアです。初めまして?」
クロード/えっと、初めまして。ワタ……いえ、ボクはクロードって言います。
GM/「クロードさんっていうんですか? ……男の子っぽい名前ですね、もしかして男の子っぽい格好をしてるのと関係してるんですか?」
クロード/え。えっ、え、ええぇ!(笑)
GM/「き、聞いてはいけなかったことですか? すいませんっ!」
クロード/だ、大丈夫です。……みんなの前で言わなければいいですよ。故郷の風習ですから、お気になさらず。
GM/「故郷のことですか……一体どういう?」
クロード/ボクのエルフの里は、大人になるまで中性的にふるまえっていう風習があるんです。運命の人を見付けて結婚するまでですね。
GM/「まぁ、それは素敵な……」とクロードと話すミルティアの姿は明るい。最初カミールに話し掛けられ固まっていたのも無かったかのように、――非常にあたたかい彼女がそこにいる。
カミール/……懐かしいと感じつつも何も言わない。ホテルに帰ろう。
GM/ではホテルに戻ると……お風呂上がりの二人がいたりする。
ヴァロード/はあー、いいお湯でしたね。浴衣着てポカポカしてます。
クロン/ロビーあたりで牛乳くぴくぴ飲んで、プハーッ! あ、ヴァロードさん。ちょっと話があるんですが。
ヴァロード/何か?
クロン/……カミールさんとクロードさん、何か隠し事をしてますね。
ヴァロード/感じましたか? ……特にクロードさん、あやしいと思いませんか?
クロン/ま、話したがらないのだから気付かないフリをしてあげましょうよ。でも一番心配なのはカミールさんなんですよ。
ヴァロード/何かあったんですかね……とりあえずちょっと警戒しておきましょうか。
GM/そんなロビーのソファでの風景。お客を2人連れて、4人で帰ってきます。
ヴァロード/おかえりなさいー……あれ、なんか増えてる? お客様ですか?
GM/「オレオレ、ヨリーです」
クロン/あ、ヨリーさんですか。姿形が違うじゃないですか?
カミール/マシンネイチャーは中身が同じであれば体はどれでもいいらしい。話したいことがあるそうだから、私の部屋に来い。
クロン/は、はい。一度艦長の部屋へ行きます。――あ、これ宿の人から饅頭を沢山頂いたんですよ。明らかに食べられそうにないんでお客さんもお土産にどうですか?
GM/「あ、ありがとうございます。みんなで食べましょうか。……どうぞ、カミールさん」ミルティアが饅頭を渡してきますよ。
カミール/……ありがとう。
クロン/……クロードさん、あの女の人は誰ですか?
クロード/えっと。見付けた時、艦長が輝いて見えました(笑) 爆走して彼女を捕まえてましたよ。
クロン/艦長が輝く!?(笑) どこが輝いたんだ、しかも何その青春!
GM/シャイニング艦長は今結構ダークだったりするんですけどね。……ではどっかりと少年がソファに座って話し出します。「なんで西暦が滅んだか知りたくない?」
カミール/……唐突に何を言い出すんだ?
GM/「知りたいなら教えてあげてもいいよ。どうして一度世界が滅びて今の世界があるのか。どうして今の種があるのか……興味無い?」
クロード/……すっごい興味あるんだよねぇ。歴史大好きだしさ。
GM/「知ってるかもしれないけどデシード寺院のすぐ側に西暦の――電波を出す局があるんだ。ちょっと関係者以外立ち入り禁止だけど、オレが関係者になってあげてもいいよ」
カミール/……つまりは?
GM/「そこに行かないかってコト。オレ、中に用があるんだ。そこまで護衛して」
カミール/……そこには何があるんだ。
GM/「実際見た方がいいね」
クロード/アークの正式な任務は3日後からですが……その遺跡はどれぐらいで行けるんですか?
GM/「デシード寺院のある山の別方向だから、半日あれば行けるんじゃない? 知りたいか知りたくないか、行くか行かないか、それはまかせるよ。けど、今の状態だと今後知ることもなく一生を終えちゃうだろうし。オレはそのチャンスをあげているだけ。――どうする?」
クロン/お茶をずずず……コトン。――どうして、それを俺達に話すんですか?
GM/「……」
クロン/……。
GM/「きまぐれ」
クロード/はぁ? じゃあ、全て貴方の気紛れということですか?
GM/「うん。護衛のお礼かな」自信満々で頷ずきました。――ではここで! 『何か』に気付きたい人は【感知】&【直感】で判定をしてください、超難しく難易度50です!
カミール/50!? 無理だろう!(ころころ)霊格15。
クロン/高すぎだ!(ころころ)17です。
クロード/全員がカードを足すか、諦めるしかないですね……(ころころ)霊格16です。
ヴァロード/(ころころ)感知で20。クリティカル出てもちょっと50は無理ですね……。
GM/では何事もなく、不思議な少年を言葉に何言ってんだコイツという印象を受けた。「どうする、行かない?」
ヴァロード/関係者になってやってもいいって言うけど、それ関係のツテでもあるのか?
GM/「うん、そういうことにして。今からでも行こうか」現在時刻は昼過ぎです。
クロン/どうしますか、艦長?
カミール/行きたい奴はいるか?
クロード/ボクは行くなら早く行ってお風呂入りたいです。
ヴァロード/艦長の意見に従います。
クロン/……ヨリーさん、貴方を信じて良いんですね?
GM/「信じるって何? よく判らないけど誰かを信じるのって個人の自由じゃないかな?」
クロン/……溜息つきます。艦長、俺はヨリーさんを信じることにします。行きましょうか。
カミール/ではヨリー、その遺跡まで案内を頼む。……ところで、ミルティアはどうする気だ。ここにおいて行く気か?
GM/「ううん、連れてく。遺跡だからモンスター出るかもしれないけど、護衛してくれるでしょ?」
カミール/……連れて行くのか? ミルティアの方を見る。
GM/「え、えっと……そちらがそう言うのでついて行きます」
カミール/……まるで言いなりだな。では十分後に出発する。それまでに着替えておけ。
クロン/はーい。……浴衣のまま戦闘でも面白そうだけどなぁ(笑)
カミール/装甲値が0だ、着替えろ!(笑) ――全員が部屋を出て行ってからヨリーに話し掛けよう。おい。
GM/「なになに? そんなにミルティア気になる?」
カミール/……彼女とは知り合いだったんだ。一体どこで会って、どうして記憶喪失なんだ?
GM/「彼女は道ばたで拾ったんだ」
カミール/……まさか、茜色の空をバックにした道で拾ったとか言うなよ?
GM/「アレ、なんで判るのスゴーイ。……ま、あれかな。人体が代わるって凄いショックだと思わない?」
カミール/……ピクリ。
GM/「凄いショックを受けると記憶喪失になるじゃん。でもって鋼魔になった後、元の姿に戻るのって大変なワケよ。凄いショックなワケよ。記憶飛んじゃってもおかしくなくないよ? ……なんで鋼魔になったかそれまでの課程は知らないけどねー」
カミール/……私は、それまでの課程を知っている。
GM/「そうなんだ。とりあえず拾った時には彼女はカラッポだったワケ。だから彼女に居場所を与えてあげたの。――他ならぬ彼女に」
カミール/……彼女は今、鋼魔ではないな?
GM/「そうだね、君と同じカタチをしてるんじゃない? よぉく彼女の口の中、見てごらんよ」
カミール/……見る。
GM/「カミールさん、皆さん用意が出来たそうなので行きましょうか」明るく話し掛けてくるミルティアの、舌を見るとそこには――刻印が。
カミール/そんな、ライフパス【死】っ? 一度死んで生き返っただと? ミルティア、それは……。


 ★デシード山


GM/マシンネイチャーに連れられ山の方に向かいますと、デシード寺院に続く石段があります。……がそちらに進まず、舗装されていない木々の方へと進んでいきます。
クロン/ホントにこっちでいいんですか?
GM/ヨリーはこっちこっちと進んでいきます。「遺跡は寺院とは別方向。でも同じ所にあるの。便利」
カミール/ミルティアを心配しながら進む。……木々が生い茂っている中6人で歩いていくんだよな。面倒な。
GM/面倒な山道を歩いていくこと数分。カサカサと草が風で揺れる音と共に、サラサラと水が流れる音が聞こえる。
クロン/川……ですかね? 前に出て見ます。
GM/はい、川です。ヨリーが指差します。「見える? あっちにあるのが電波塔……遺跡だよ」――では川があるんですが、頑張って跳び越えましょうか!
クロード/は、判定ですか? ……【体力】判定じゃないですよね?
GM/【体力】判定ですよ。目標値は15以上です。
カミール/ヨリーさんはどうしますか?
GM/「ガンバるよ」そう答えるとぴょーん! ……直ぐに川の向こう岸までジャンプで移動!
カミール/マシンネイチャーのくせに俊敏な!(笑) ……ミルティアさんはどうなさいますか?
GM/「あの……ちょっと運動には自信が無いです」
カミール/……GM、ミルティアを抱えて飛びます。可能ですか?
GM/可能です。その代わり体力値マイナス3になります。
ヴァロード/とりあえず先を飛びます。(ころころ)17。トウッ!
GM/ヴァロードさんはひょいっと問題なく飛べます。他の人達もどんどんどうぞ。
カミール/ミルティアを抱えて飛ぶ!(ころころ)【愛】6のカードを足して達成値18。しっかり掴まっていてください!
GM/「は、はいっ!」ぎゅっとカミールに掴まって、ぴょーん! ドサッ、問題なく着地。
カミール/大丈夫ですか?
GM/「わ、私は平気です。カミールさんこそ大丈夫ですか? 重くないですかっ?」
カミール/問題ないです。貴方が無事なら良かった。
ヴァロード/……その様子をじーっと見てます。いやぁ、仲が良いなぁ(笑)
クロード/――さてと。みんなが跳び越えちゃったんですけど、ボクの体力値3なんですよ。……クロンさん、お願いできますか?
クロン/ええ、いいですよ。おんぶしまして跳び越えます!(ころころ)17成功、ぴょーん!
GM/……失礼、クロードさんをおぶって跳んでいるんですよね。なら達成値にマイナス3してください。――2人とも落ちた!
クロン/あ。……うわああああぁっ!(笑)
クロード/わああああぁぁっ! ざぱーんっ!(笑)
ヴァロード/ふ、二人とも大丈夫ですかーっ!
カミール/……何をやっている、お前ら。
クロン/バシャアアン! ゲホ、ガハッ! く、クロードさん平気ですかーっ!
クロード/けほけほ、ハイ、ボクは平気です……とりあえず陸へ泳いで渡ります(笑) そっちこそ平気ですかー?
クロン/すっ、すいません! 俺がやっちゃ…………た?
クロード/ん、どうしました?
クロン/……お、んな、の……こ? ……一瞬止まって、ガバッと瞬時に後ろを向く! その後に上着を後ろ手で渡す!
クロード/うわぁっ、何するんですかー!
クロン/着てください、いいから着てくださいっ!
クロード/……ん?
ヴァロード/だ、大丈夫ですかーって駆けつけて、水から出てきたクロードさんを見……て上着を更にかける! バサッ!
カミール/……同じくクロードにタオルを投げる。
クロード/さっきから上着とかタオルとかそんなに投げつけられても! 苦しいだけですよ、もう〜っ!
カミール/……クロード。
クロード/はい?
カミール/服、透けてる。……つんつん。教えて後ろを向く。
クロード/え? ……あ、あああぁっ!
クロン/え、えっと……ごめんなさい! 俺は何も見てません。天に誓って何も見てません!
クロード/あ、ああああの……っ、こちらこそ申し訳御座いませんでした!
ヴァロード/な、何に対してでしょうか?
クロード/う、それはそのー、……みんなのこと騙してた……ことに。
クロン/ま、まあ……少しは判ってはいたことですが。す、すいません。いや、ホラ、ね? 見えませんでしたから……気にしないでください。とりあえず落としちゃってすいません!
ヴァロード/す、過ぎた事は仕方ないです! あれは事故ですから!
クロード/……泣きそうになるぐらい顔を赤くなってます。あのクロンさん、まだ濡れてますよ? ふきふき。
クロン/サッ! 耳をピクピク動かしながら避けます!
クロード/……な、なんか避けられてる雰囲気だ。
カミール/……そろそろ助け船を出すか。お前ら、ほどほどにしとけ。あれは事故だ。――それにクロードが男であっても女であっても何が変わるというんだ、何も変わらないだろう?
ヴァロード/そ、それは、……まあそうですよ!
クロン/当たり前じゃないですか。クロードさんはクロードさんです!
カミール/そういうことだ。いつまでもあーだこーだ言ってないで遺跡に向かうぞ!
GM/――ではそこで「クスッ」と笑う声。判定してください、【感知】&【直感】で難易度40!
クロード/(ころころ)17です。
カミール/(ころころ)高い、けど20!
ヴァロード/難易度はちゃんと減ってますね。(ころころ)でも20です。
クロン/(ころころ)ハイ、無理です。
GM/――マシンネイチャーとミルティアはその愉快な様子を見てクスクス笑っている。だけです。
カミール/仕方ない、大人しく遺跡に向かうぞ。周りを警戒しつつさくさく。
GM/川を抜ければ遺跡までは直ぐです。暫く歩くと石造りの遺跡が見えてくる……石で重厚感があり、何かモンスターがいてもおかしくないような場所だ。
カミール/【気配察知】していいか? ……奴らの声がしないか調べたい(笑)
GM/いいですよ、目標値は20で。
カミール/(ころころ)21。
ヴァロード/(ころころ)23!
クロン/(ころころ)俺も20出た。
クロード/なんでみんなやる気なの!(ころころ)ボクは15、でも頑張った。
GM/20越えが3人もいるのか。では遺跡の入り口前に来て耳を澄ますと、聞こえる。「……ブロー」
カミール/……ヤツらだ。
クロン/……艦長、物凄いキラキラとした目になるのやめてください(笑)
GM/耳を澄ましている中、ヨリーが歩き出します。「じゃ、遺跡の中に入ろうか」てくてく。
クロード/ちょっと待ってください、モンスターがいるみたいですから……。
GM/その声を遮るように言います。「中に、入ろ?」
カミール/……ん?
GM/「ブロッコリーに会いたいの? 大丈夫、お求めの奴らは中にいるから安心して」
クロード/……なんで、そんなこと判るの?
GM/「入らないの? なら今からまた川を跳び越えて帰ろうか?」
カミール/いや、入るが。……明らかに今の様子はおかしいと感じていいか?
GM/おかしいと思いますか? ――では再度、【感知】&【直感】で難易度30!
ヴァロード/(ころころ)21!
クロン/(ころころ)14
カミール/(ころころ)14。
クロード/(ころころ)17……無理か。
GM/「それじゃあ、さっさと中に入ろうかー」てくてくと彼は遺跡の中へ入っていきます。
カミール/……アレは本当に、アレか?
クロード/そもそも、なんだか遺跡に引き込まれているように感じませんか?
クロン/……少し気を付けて進みましょう。何か、おかしいような気がする……。


 ★遺跡


GM/中に入ります。どうやら中は空間がいくつかに分かれており、そのある場所から地下へ続く階段があるようです。階段は結構深く、下へ下へ降りていく。
カミール/気を付けて行くぞ。……ミルティアに大丈夫ですかと手を貸す。
GM/「あ、はい。ありがとうございます」ギュッとカミールの手を握ります。笑顔付きで。
カミール/……それでも思い出してはくれない、か。
クロン/そんな二人を見ながら、クロードさんを見ます。……どうぞ手を、ハイッ。
クロード/え、えーと……凄い恥ずかしいからいいです。
GM/ではカツカツ、カツカツ……下へ下へ、下へ下へと降りていく。
カミール/随分と深いな。ヨリー、この階段はどこまで続くんだ?
GM/「階段なんて辿り着く場所まで続いてるんだよ」そんな屁理屈を聞いていると、階段が終わり広い空間に辿り着きます。天井が、自分達が降りてきた分だけ高い……。
クロード/うわー、たかーい、ひろーい? ヨリーさん、ここは何ですか?
GM/「遺跡だよ」
クロン/……そりゃそうですけど。
GM/「ここまでモンスターが出ると思ったけど出ないね。大体西暦の遺跡には出るもんだと思ったけど、これだと護衛いなくても来られたな。失敗」
クロン/……ヨリーさん、西暦が滅んだ理由を俺達に伝えて、貴方はどうしたいんですか。
GM/「……」
クロン/貴方は、俺達に何をさせたいんだ?
GM/「……危ない所だと思ったから、奥まで護衛として連れて来てほしかった」
クロン/……ただの不法侵入ですか。本当にこの先には何があるんですか、教えてください。
GM/「……西暦の遺物だよ」
クロード/遺物があるんですか? ……しかも貴方は西暦が滅んだ理由を教えてくれると言った。それってヤバイものではないんですか? 遺物を目にしても何もしないと……そう約束しない限りボク達は貴方をこの先に行かせることは出来ません。
GM/「約束? すればいいの? じゃあするよ?」
ヴァロード/……ミルティアさん、貴方はどうですか?
GM/「わ、私は……」もごもごと口をどもらせて少年を見る。「私は、あの人に従うだけです」
クロード/あの人の命令であったら動くってこと? ……約束できないのなら帰ります! 任務ではないのですから帰ってアークに問い合わせます。
GM/もう二人に対して敵意全開ですね。――それでは【感知】&【直感】難易度20!
クロン/(ころころ)21成功!
カミール/(ころころ)同じく21で成功。
クロード/(ころころ)20成功。
ヴァロード/(ころころ)16……でもカードを足して20!
GM/では貴方達は全員気付く。――今まで歩いてきた階段の方に、誰かがいるってことを!
カミール/バッと振り返る! 誰だっ!
GM/ビクゥッ! 全員が振り返って影が飛び跳ねる。「い、いきなり振り向かないでよ、驚いちゃったじゃない!」――そこにいるのは、手に何か四角い箱を持っている黒髪の少女。
クロード/……あの彼女?
GM/あの彼女です。
クロン/……階段の方に近寄って行く。こんにちは。
GM/「えっ? えっと……こ、こんにちは」
クロン/箱を奪う。
GM/「わわっ!」少女の持っていたボタンやレバーがいっぱいある箱を奪うと、……マシンネイチャーの少年がガシャーンと崩れ倒れる!
クロン/はぁ。……ねぇ、君がアレを操ってたの?
GM/「むぐ、うー……うん、このラジコンってやつでちょちょいと」
クロン/君が俺達をここに連れて来たんだね。
GM/「そ、そう……。それに、こういう雄々しいシーンを用意しないと悪役って格好つかないでしょう?」
クロン/君は悪役になりたいの?
GM/「なりたいというか……私はこの世界では悪役になっちゃう人だし」
クロン/……はぁ、ダメだなぁ! 悪役になりたいのならもっと慎重にやらないと!
GM/「む、むぐ、ごめんなさ……」それを聞いて、ハッと少女は目を見張る。
クロン/……どうしたの?
GM/クロンをじっと見つめる。「……アナタは、……いえ、アナタは黒猫」
クロン/? そうだよ。……あのさ、どうして君は悪役なの?
GM/「……世界を壊すことが、私の夢だから。この世界では立派な悪役でしょう? だからいっそのこと気取りたいの」
クロン/……だったらブロッコリーじゃなくてさ、もうちょっと悪役っぽいモンスターを出してくれよ!(笑)
GM/ぶ、ブロッコリーの方が可愛くていいでしょっ!
クロン/そういう問題じゃないしそれって悪役なのか!(笑) ――ねぇ、世界を壊したいなんてどうしてそんな悲しいことを考えてるんだ?
GM/「……そうすることが一番私の願いに近付くからよ」
クロン/君の願いって、何だよ……。
GM/――とりあえず。おいでブロッコリー! コイツラは敵よ、やっておしまい!」
クロン/とりあえず!?(笑) ってやっぱり敵はブロッコリーなの!?
GM/ブロブロ言いながらブロッコリーはマナの前に現れて、言います。「ぶろー、サモン・ギガース!
クロード/ブロッコリーがサモンギガース使うの!?(笑)
ブロッコリー/ブロブロブロー! ブロッコリーの真の恐ろしさ、味合わせてやるブロー!



GM/ブロッコリーが神格機兵を出しました。……十メートルの巨大コンニャクです。ちなみに後ろにささっているネギはビームサーベルです。
クロン/無駄にカッコイイな!(笑) それよりなんでブロッコリーがコンニャク背負ってネギなんだよ!
GM/何言ってるの、群馬だからに決まってるじゃない!
カミール/そういう理由か!? ブロッコリーのくせに召喚とは生意気な!(笑) さっさと倒すぞ、カモン・サイレンス!
ヴァロード/えーと、今日は味噌田楽にしてしまいましょう!(笑) 来たれマンジ!
クロード/はぁー、ブロッコリーと神格機兵戦かぁ……とにかく、おいでフェンリル!
GM/どーんどーんどーんと現れる戦艦達。「さぁ、本気を出しなさいブロッコリー! ここは大人しく捕まるのが私達じゃないわ!」
クロン/……マナ。
GM/「むぐ?」
クロン/君は最初、俺達と話をするって言ったね。本当の目的は、戦うことだったのかい?
GM/「う、……違う」
クロン/違うね。ならどうする?
GM/「つ、連れてきてもらうことが目的だったんだけど……じゃあ、あの子を倒したら全部教えてあげることにするわ! 負けた時に全部謎を明かすってのはちょっと悪役らしいでしょ?」
クロン/そうか。あと一つ質問していいかな。……君は、俺のことを知ってる?
GM/「えっ? う、うーん……『黒猫の』貴方を知ったのは北海道が初めてよ?」
クロン/そっか。……少し俯いて、ブロッコリーを見上げる。約束だよ、コイツを倒したら話をしよう。
GM/「うん、約束するわ。私は悪女だけど、そういうのはちゃんと守る子よ?」
クロン/よし。――みんなああぁ、おでんは好きかあぁーっ! 味噌の準備はできてるか、味の素の用意はできてるかああぁーっ! セレスティアルス、来い! ……って全然シリアスにならねええぇ!(笑)

 ●戦闘/1ターン目
クロード/【チャクラフェイバリット/真眼】をつかってカードを引きます。これでオーバーロードしてください!
クロン/ありがとうクロードさん! ……初っ端からオーバーロード、いきます。艦長、承認を!
カミール/あんな奴らに本気を出すのは気が引けるが、最善を尽くそう。……オーバーロードモード、承認。
クロン/承認。……セレスティアルス、いくぞ! 【フェイバリット/機神融合】【フェイバリット/ソウルバーニング】使用! 【オーバーロードスキル/ゴッデスプレアー】!(ころころ)霊力ダメージ79――いけええぇっ!
ブロッコリー/食らったブロー! 装甲がコンニャクでぷよーん!
クロン/……全然シリアスにならない(笑)
GM/「わー、ブロッコリー頑張れーっ!」マナが下の方で応援してます。
ブロッコリー/ブロロー! 頑張るブロ、応援してブローッ!
ヴァロード/……なんか凄く微笑ましいなぁ(笑) 1歩進んで【フェイバリット/刀渡】!(ころころ)33の物理ダメージ!
ブロッコリー/ぷにゅーんっ! 刀なんて弾いてやるブローっ!
カミール/物理は効きにくいのか、構わん。総攻撃だ! チャージを2回して【フェイバリット/ブレッドミサイル】!(ころころ)物理35ダメージ!
クロード/クロンに【フェイバリット/フェイズアップ】と【フェイバリット/アネモス】を。……とっととやっちゃいましょ?
クロン/はい、【オーバーロードスキル/フェニックスアロー】! 火の鳥よ、頼む!(ころころ)物理ダメージ79!
ブロッコリー/焼かれるブロー、ぷるるーん。マンジに【ネギビームサーベル】いくブロよ!(ころころ)命中45!
ヴァロード/(ころころ)40。
ブロッコリー/ぷよよーん!(ころころ)物理ダメージ70、ザシュウウウ!
ヴァロード/ふざけた顔してるけど強いんですね、侮ってました(笑)

 ●戦闘/2ターン目
クロード/【フェイバリット/ネクター】ヴァロードさん、全回復してください。クロンさん、LP足りてますよね?
クロン/はい、さっさと倒すためにも……【オーバーロードスキル/ソードオブクゥーン】を使用! ――かの者に滅びよ! 【コンバインアタック】をしましょう、誰かダメージ乗せて!
ヴァロード/加勢します!(ころころ)霊力25、ブロ鍋で一杯いきましょうか。【チャクラフェイバリット/烈火】(ころころ)ダメージ25です!
カミール/私も乗ろう。(ころころ)成功、【フェイバリット/ブレッドミサイル】!(ころころ)26ダメージ!
クロン/3人で合体技! 持ってるカードを全部乗せるぞ、くらえええぇ!
ブロッコリー/ブロッ、ブロッ、プルーンプルーン!
クロン/貴方を守り抜いて、貴方を導く風となる。我が名はセレスティアルス、女神のつるぎをいだく者――ソードオブクゥーン!(ころころ)物理・霊力双方にダメージ……175!
カミール/最大火力! 烈火とミサイル、最後に一刀両断! ……コンニャクだけじゃなくネギも刻んでおけ。
ブロッコリー/焼かれ、刻まれ、ブロロロロー! やられちゃったブロオオォ……コンニャクが倒れ込む、ぷるーんっ!
クロード/……流石にあれだけ食らえば死ぬよね。
GM/コンニャクの中からブロッコリーがぽてんっ。「あっ、ブロッコリー、大丈夫ーっ?」
ブロッコリー/ブロロー、熱いブロー。
クロン/神格機兵から降ります。……ミルティアさんはどうしてる?
GM/マナがブロッコリーを抱いている側に寄ってきます。どうやら彼女を気遣っているよう。
カミール/あっち寄りなのか……。戦闘が終わったら話をするという約束だったな?
GM/「……うん、私は守るよ。遺跡のモノには触らなきゃいいのね?」
カミール/……ミルティアは?
GM/「私は……このヒトについて行くだけです」
クロード/……そうですか。一旦貴方達のことは信じます。けれど忘れないでください、――本当に信じた訳ではありませんから。
GM/「うん、貴方達とは敵同士だしね。そう簡単に信じてくれるとはこっちも思ってないわ」
クロン/ところで、……このボタンとレバーの箱は何なの?
GM/「ただのラジコンよ」ピッと押すと、ウイーンとヨリーだった機械が動き出す。『や、オレオレ!』
カミール/危ないからこれは没収しておくぞ(笑) ――じゃあ、奥に行くか。


 ★遺跡 奥の空間


GM/ここでいきなりですがクロンさん、2D6をふってください。
クロン/(ころころ)63です、……何?
GM/……ありがとうございました、以上です。それでは奥の、これまた広い空間に入ります。そこは多くの棚に、細長い物がズラリと並べられ何列も何列も、端から端まで続いている。
カミール/何だコレは?
GM/PL的にはUSBメモリー、PC的には小さな棺桶に見える。「西暦人の『脳』よ。人々は心だけを機械に移して生き延びようとしたの」……それがズラリ。
クロード/ズラリ!? ……す、凄く貴重ですね。
カミール/……ココは、一体何だ?
GM/「一般的に『シェルター』って言われるものよ。広くて深いでしょ? ここで暴れても外部には一切被害は無いわ。勿論その逆も言える」
クロン/……一つ一つ説明してくれないか。
GM/「それが約束だったしね。コレは西暦の遺物、『人間』と言われる生物の脳。マシンネイチャーの『データ』になるものよ。
 人間というのはヒューマンによく似た生き物で、西暦の時代を支配していた種族。そこのサムライさんに一番似てるわね。西暦にはそっちみたいなライカンスロープやエルフはいなかったの。だけど『あること』が起きて世界は変わった。西暦は滅び、今の時代が生まれた」
クロード/あること、って?
GM/「艦長さんなら名前知ってるかな? 『黙示録砲』……核爆弾ってヤツ」
カミール/……そうか。西暦にそれを撃った奴がいるのか。
GM/「ブライトインゼルともう一つの国に落とされた経験があったんだけどね。あ、ブルーライはその時の被害者の想いを拾った虫だと思う。……とにかく、西暦が滅ぶキッカケになった爆発は、今までにない一番の爆発だった」
カミール/……西暦の人間は馬鹿だな。あんな物を使えば多くの被害が出ることは目に見えている。
GM/「その爆弾が5つあれば島が一つ吹っ飛ぶっていうのに、何を間違ったか撃ち合いになったの。どうして撃ち合いになっちゃったか、その時の国のお偉いさんにしか判らないけど。――さて突然だけど問題です。ニワトリとタマゴは一体どっちが先に生まれたでしょう?」
クロード/は? ニワトリとタマゴね……。
GM/「生命はどうやって生まれるのかというと、一番有力と言われているのは、『大きな衝撃』が起きて、そのエネルギーの塊が生命になったって言われてる。ドカーンドカーンってやっているうちに星が生まれ、種が生まれた。それは『ビッグバン』って言うの。
 そして数千年後、西暦の時代に多くの核爆弾による第二のビッグバン。世界中のドカーンドカーンは種を滅ぼし、……星の原理さえも新しいものに変えてしまった。……西暦は滅んだ。滅ぼした巨大エネルギーによって生まれたのは、人間とは違うもの。……ヒューマン、ライカンスロープ、エルフ、フェーダ。これは人間の手で起こされちゃった力で生まれた新たな種なの」
クロン/……新しい生命体。
GM/「西暦人はドカーンドカーンの中で、小さなデータになることによって一部生き延びようとした。――けどもう一つやり方があった」そう言うとマナはボタンをポチと押して、ある場所にライトを当てます。そこには……2メートルほどの棺桶がズラリと幾つも並んでいる。
カミール/あれは?
GM/「コールドスリープと言って、人間の体を冷やすと何千年も生き延びられると言われていたの。ドカーンドカーンの後でもデータなんかじゃなくて己の体で生き延びたい人間達はこの方法をとった。……人間はこうやって生き延びることが出来た。でも世界自体が第二のビッグバンによって変わって、人間に行きづらいものになっていた。
 巨大エネルギーによって世界の原理から変えられてしまった。今では普通に使われる『魔法』は西暦では使えなかったわ。人間からしてみればとても信じられないことよ」……ではヴァロードさん。
ヴァロード/はい?
GM/ヒューマンの貴方はなんとなく気付く。――目の前にいる少女は、ヒューマンに似ているけれどヒューマンではないことに。
ヴァロード/ヒューマンではない? ……つまり、西暦の『人間』と呼ばれる種族?
クロード/ボクが一番最初に調べた時『一般人だ』と思ったのは?
GM/彼女は魔法が使えないからクルースニクではない。しかし科学を使って瞬間移動やロボットの操作が出来たということです。……ポケットにはおそらく簡易どこでもドアのスイッチがあるんじゃ?
ヴァロード/この子は、私達が見たことがない種族……か。
GM/そう。「――でね、またドカーンドカーンをして大きなエネルギーが生まれれば、世界はまた違う形になるかもしれないって聞いたの。もしかしたらまた原理が元に戻るかもしれないって。
 だから私は力をいっぱい集めていた。不和を沢山作って鋼魔を作れば血壁を破壊しだす。血壁を破壊すれば下界のモンスターが列島に襲いかかってくる。そうすればまた不和が起こり、やがて大きなエネルギーになる! ――第三のビッグバンの完成よ」
クロン/……君は、君が元いた西暦の時代を蘇らせたい。そういうことか?
GM/「そう」
クロン/だから、この世界を壊すっていうのが夢だったんだね。
GM/「そういうこと」
クロン/けど、……この世界を壊したからといって君が元いた世界が戻れるワケじゃないんだろ。
GM/「それで元に戻らなかったら第四、第五のビッグバンを起こすわ。シェルターにいれば人間は生き続けるようにできてるんだから」
クロン/……君は、永遠にこんなことを続けていくのかい。
GM/「人間は丈夫なの。体力はもちろん、何年か眠っても乗り越えるだけの精神力がある。人間ってなんでもできる凄い生き物だから」
クロン/人間は、だろう。人間じゃない人達はどうする? ……俺達ライカンスロープと呼ばれる種族、エルフ、フューダ、そして人間であって人間でないヒューマンは、そのたびに犠牲になるんだろ。
GM/「……そうね、貴方達は、私の夢の糧となる」
クロン/……なんで、そんな悲しいことをっ!
GM/「わからない? 今とは違う新世界を開拓していくのは高等な夢でしょう。力を持つ者は更なる力を手に入れるよう夢見るように、文明が発展しどんどん便利になっていくように、今無いモノを手にしようとすることは美徳でしょう?」
クロン/……そんなのわからないよ、……俺にはわからない!

「――本当に、君はわからないのかい?」
 突如声がした。
 クロンの前に立つマナ、その姿が見えなくなる――バッと舞う白い霧によって。
 目を見張る、現れたのは――白い男だった。


GM/「新境地を手にする。聖者の血筋ならばそれは当然の夢だ。現状に留まろうとするなんてつまらんとは思わないか?」
クロン/……お前は……っ?
GM/「しかし西暦の女というのは本当におしゃべりだな。……無駄なことまで喋らないと生きていけないのか?」――マナの方に話し掛ける。
クロード/クロンっ!
ヴァロード/クロンさん、離れて!
GM/「もう此処まで来れば届くだろうな。――それでは失礼させて頂くよ、ここの電波を使って世界中に呼びかけなければならないことがあるんでな」
――そう言い、白い男はマナの手を引く。
クロン/マナ……っ!
GM/「じゃあね黒猫。……行きましょうか、白猫」――男は叫ぶ。「ミルティア、来い!」
カミール/止める! 行くな、ミルティア!
GM/彼女は駆け寄っていく。「ごめんなさいカミールさん、……カラッポな私に居場所を与えてくれたのはあの方々。私の居場所は、あそこなんです!」
カミール/違う、お前の居場所はそこじゃない!
GM/ミルティアはその声を捨て、男の腕を掴む。「テレポートコード! 奥に行くぞ――!」
カミール/追い掛ける!

「ミルティアーッ!」
 その声は彼女には届かなかった。
男のテレポートコードにより3人は……白い霧となる。
『奥に行く』その言葉を残し――電波塔の奥へ消えていった。