クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 Vendetta4L 』 2ページ ■
2022年4月11日




 ●シーン2:捜査本部

 新たな事件発生を受けて、捜査本部では会議が開かれた。
 しかし、重苦しい空気が漂う中で、事態の進展はほとんど無いままに終わる。
 マスコミの報道は過熱し、犯罪の残虐さ以上に警察の無能さを批判するものが多かった。捜査本部は苛立ちと諦めの暗雲が立ち込めている。

実散/うう、マスコミさぁ〜。みんな顔色が悪いねえ。
天鴻/捜査も進展がなく「新たなガイシャが出ましたー」だけですもんね……。俺達がこれからしなきゃいけないのは、「九重がスクラブルだ」という証拠集めですかね。
KP/ぶっちゃけ「会議は以上! これからも頑張ろうな!」で終わります。
実散/善処しまーす……。俺達は九重ミツグを見て一回殺されたけど、それはこの世界では無かったことになってるしなぁ。
KP/草摩が、話し合っている2人に話し掛けてきます。「調子はどうだ?」
天鴻/あ、草摩さん。お疲れ様です。
実散/兄ちゃん、検死の報告とかあった会議お疲れ〜。
KP/「今朝から2人は仲良しだな。ずっとヒソヒソしている」
実散/俺達仲良しだからね〜。
天鴻/ね〜。……実散さん。草摩さんにはスクラブルに会った話をしてみます?
実散/……いいんじゃないかな、兄ちゃんなら。ねえ、兄ちゃん。今までの被害者について改めて調べることはできる?
KP/「今までの事件現場の遺留品を確認したいなら上と掛け合うぞ。被害者についても……何が知りたい?」
実散/被害者は全員芸術関係だったかどうか調べられる? 進学先とか就職先とかそういうの。
KP/OKです。家族や同僚、関係者から事情聴取した資料があるので<目星>ロールで判明します。
天鴻/やった!(ころころ)<目星>、89。失敗……しょんぼり。
KP/よしよし、春だし草まんじゅうをあげよう。
実散/草摩だけに?
天鴻/草摩んじゅう……えーん、ありがとうございます美味しい(笑)
実散/<目星>なら(ころころ)36、成功しました!

 <目星>→実散が成功。
 被害者は全員30歳。そして、高校3年生のとき一度は東京芸術大学を志望校に選択していた。
 だがしかし、全員別の道を進んだと周囲の者達は話している。性別も住む場所も職業も違う。だが一度は芸大を目指した者達のようだ。

実散/……今回の被害者も急に心変わりしたんだっけ。
天鴻/受験前になって進路を変えた? 他にやりたいことが見つかって進路を変えたとかなら、よくある話だけど。
実散/でも、揃いも揃って全員同じ大学を目指して、変更した? ……そんな子達が、どうして今30歳になって? 何かそれ以上の関わりがあるってことかな。
天鴻/リアルな話、芸大を目指して予備校に行ったら周りの高レベルさに心折れるのは珍しくない。でもそれと「被害者に選ばれた繋がり」が分かんねえっすよね。逆なら、何となく分かるんですけど。
実散/逆?
天鴻/芸術家を目指したけど挫折した人が、成功している芸術家を殺すパターン。
実散/ああ、確かに! でも、成功して個展を開いているような子が、挫折した子達を殺してるんだよね? やっぱ「ただの同級生以上の関係」なのかな。……でね、兄ちゃん!
KP/「なんだ?」
実散/……何て話そう、たかひろくん!?
天鴻/ふふ、ノープラン(笑)
実散/だって……どう話したらいいのか。あんなことあったらさ。
KP/草摩は話を聞いてくれる様子ですよ。「天鴻、もっと草まんじゅう食べろ。みちるも食べろ。」
天鴻/草摩んじゅう、うめえ!(笑)
実散/草摩んじゅう、コラボカフェに出してね。実散の苺タルトも出して
KP/百合人のカクテルも出す
天鴻/……草摩さん。その、九重 ミツグって男を知りませんか? 捜査線上に上がったことはありません?
KP/「九重ミツグ? アーティストの?」
実散/兄ちゃん、知ってるの?
KP/「ネットのニュースで見た程度でしか知らないが……捜査線上には出てないな。なんでその名前を? 刑事の勘ってやつか?」
天鴻/実は……俺達は犯人に一回殺されてるんだ。
実散/……あのね、俺達、その子に一度殺されたの。九重 ミツグに殺されて、白い所に行って、謎の声がして、その声の人に力を貰って時間が戻って、今があるの。
KP/「…………」 えー、KPが1d100を振って50以下が出たら「現状の草摩の設定に乗っ取ったロールを」します。51以上が出たらシナリオ上のNPCっぽい「知らねーよ」のロールをします。
実散/つまり……普通の兄ちゃんはこの現状を知ってる!?(一同笑)
KP/うん。知ってるんですよ、花園 草摩は……過去のセッション歴で(笑) なので1d100を振ります。(ころころ)33、出た!
天鴻/知ってた! さす草!(笑)
KP/「それはイス人だ」
実散/普通に答えた!(笑) そっか、そういや兄ちゃんはイス人に知り合いがいたね!?
天鴻/いるんだ?(笑)
KP/『21's Gun』で知り合った奴がいて、そこの技術をちょっと教わってるんですよね。なので草摩は好意的に答えられるんですよ。
天鴻/ほ、ほーん? 本当に何なの草摩さん……(笑)
KP/ぶっちゃけシナリオ的は話なんですけど、PCにはイス人のことを知る機会が用意されていないのでここでネタ明かしをしておきたいです。PCにネタを教える機会を設けたいので草摩に話させますね。
天鴻/普通に遊ぶと「謎の人から不思議パワーを貰ったよ!」だけで終わるんですね。ありがてえ。それに草摩さんが知ってるんじゃ仕方ないな!(笑)
実散/自分もシナリオ製作者が仕込んだネタは全部明かされてほしいタイプなので、兄ちゃんによる説明は助かる!
KP/「イス人は、人間に比較的友好的な種族で、時間に介入することができるのが特徴だ。この世界の主導権を握っているほと反映している人間の営みを研究するため、今ある世界をかなり重要視……大切にしてくれる。人間が危険だと思ったら、手を貸してくれるほど優しいんだ」
実散/めっちゃいい人達じゃん。
天鴻/親切じゃん。
KP/「だが、人間というものをあまり理解できていない。案外、的外れなこともしたりしてな。……でも、イス人自体が人間を攻撃することはまずない。安心して付き合うといいぞ」
天鴻/人間と動物みたいな理解度ってこと? 俺達が「猫ちゃんかわいいね〜!」って言うわりには猫の気持ちは全然判らん的な。
実散/分かりやす〜い!
天鴻/つまり……イス人にとって、俺達は猫?
KP/「イエス。お前達がイス人から力を貰ったと言ったが、猫にSwitchをあげたようなもんだな
実散/猫に小判……にゃーん。ああ、俺の手が痛くなったりするのもこのSwitchは猫向きの玩具じゃないから?(笑)
KP/「猫の手でも遊べるようなコントローラーにしてくれただけ、優しい種族だろ?」
天鴻/便利ではあるんだけど、俺達が使いこなすにはちょっと難しい。だから使うと疲れちゃうんだな。
KP/以上。「イス人はこのシナリオ上では信用していいよ」という解説ターンでした! 力、信用して使っていいよ(^ε^)-☆Chu!!
実散/「信用していいよ」という情報はめっちゃありがたい! ありがと!(^ε^)-☆Chu!!
天鴻/職場でチュッチュしないでくださーい。家に帰ってからやってえ?
実散/し、職場ではしてないもーん! 今のはイス人さんにしたの!
天鴻/虚空に向かってチュッチュしても不審なのよ。
KP/「……俺、実はイス人なんだ」 チュッチュしたい顔をする草摩。
実散/嘘つきにはキスしませーん!
KP/めそめそしながら草摩はシーン退場します。
天鴻/泣いちゃった!(笑)
実散/帰ったら! するからね! お仕事みんな頑張ろうね!
天鴻/するんだ……。
KP/するんだ……(笑・ころころ)91。
天鴻/謎の人はいいひとだったって分かって良かったな。……で、その1d100は何?
KP/草摩は91個の草まんじゅうを置いて去りました。
天鴻/多いわ!(一同爆笑) 草摩さんの出目だ……うわっ、捜査本部の机の上に草摩んじゅうのピラミッドが!?(笑)
実散/なんでそういう出目に限って多いの!? ……署の人みんなに配ろうか 皆さんお疲れ様でーす
天鴻/差し入れだ(笑)
実散/……たかひろくん、やっぱ兄ちゃんに話して良かったね。不思議な声の人が怖い人じゃないって判って良かった。俺達に味方がいるって安心する。
天鴻/うん。草摩さんなら少なくとも頭ごなしに否定しないと思ってたけど、思った以上に判ってくれて助かったな。でも、サイコメトリーはあまり乱用しない方が良いのは変わらないな。
実散/そう? 確かに手はしびしびするけど……。
天鴻/いざって時に拳銃が撃てなくなったら大変だぞ?
KP/サイコメトリー使用後は5分ほど利き手に激痛が走り、戦闘・運転など利き手を使う技能に−20される。
実散/た、確かに……!
天鴻/俺は拳銃を使うの苦手だからさ。万が一のときは実散さん頼みになっちゃうし。それに、実散さんだって疲れるだろ? ご遺体や遺留品に触るたびに凄惨な現場を見たらいくら実散さんのメンタルがタフでも参っちゃうよ。
実散/あはは、ほんと優しい〜。便利になったんだからどんどん使え〜なんて言わないんだ?
天鴻/言わないよ。
実散/どこまでいっても優しいたかひろくん、甘えるよ。ありがとね。
天鴻/ん。……九重の個展、行ってみます?
実散/うん、行こう! ネットで個展のニュースしてるぐらいだもん、すぐ調べられるよね!
KP/個展が開催されている場所はネットで検索すればすぐに出てきます。それでは、個展に向かいましょう。


 ●シーン3:イベント

 九重 ミツグの個展は、都内某所のミュージアムの一角で行われていた。
 『Vendetta for 』と描かれているのが個展のタイトルのようだ。
 吹き抜けの正面ドアは全面ガラス張りで、雨天だとしても自然光が開放的な印象を与えている。
 奥へ進めば展示スペースはブースに区切られており、開催を祝う花が並べられていた。
 どうやら『恐竜展』も同時開催されているらしく、親子連れも多く混みあっている。

天鴻/恐竜展がやっているのか! いいな!
実散/たかひろくんは絵画展より恐竜さんの方が気になる?
天鴻/恐竜嫌いな男の子おる? クソデカ主語。
実散/いなーい! 俺も子供の頃遊びに来てくれたビヤーキーくんのこと大好きだったー!
天鴻/ビヤーキーくんは恐竜じゃなくない……?(笑) でも今は勤務時間だからね、ちゃんと個展に行きますよ。どんな作風なんだろ?
KP/シナリオを読んだ感じの作風だと、天野喜孝って気がした。
実散/そりゃ不思議な……でも良い絵だね。吸血鬼とかの小説の表紙やってほしいね〜!(笑)
天鴻/伝奇ものの小説の表紙とか描いたらヒットしそう。
KP/そのうちセイバーとか描く。
実散/天野絵セイバーの「コレジャナイ感」凄いよな(笑) えっと、個展の名前が 『Vendetta for 』……復讐って意味?
天鴻/復讐……。芸術関係とかよく分かんないっすけど、30歳で個展を開くのって結構凄いんじゃないですか? それより付けるような男だったのか(笑)

 ――その瞬間、天鴻は激しいめまいに襲われる。
 まるで足元が底なし沼に変わったかのように、バランスを失い、視界がぶれる。

天鴻/わ!?
実散/た、たかひろくん?

 肩車をされ、恐竜のお面をかぶった子供が楽しそうに笑っている。
 ブース内の絵画は斬新な色合いと構図で描かれ、その才覚が確かなものだと告げている。
 一際人が集まっている場所がある。そこに、絵があった。

天鴻/絵? あれは……。

 頭足類を思わせる頭部、無数に蠢く触手、悍ましき異形の神。
 それを見つめる客たちの目は恐怖に見開かれたまま静止し、血走っている。
 ――その時、貴方は見た。真っ赤な林檎が描かれた絵画が火を噴き爆発する。

天鴻/真っ赤な林檎が……?

 周囲は一気に混乱に陥った。悲鳴を上げ、出口へと逃げるもの。スマートフォンで撮影するもの。貴方達も人波に押し流され、展示ブースから雪崩出る。
 二度目の爆発はもっと壊滅的だった。それは人々が殺到した正面玄関を吹き飛ばしたのだ。
 砕け散ったガラスの破片が散弾のごとく、貴方の身体を突き破る。
 ふと、横を見れば、そこには血まみれになった実散が立っている。ズタボロの身体はまだ立っている事すら奇跡だった。ゆっくりと、貴方達は崩れ落ちる。

天鴻/あ、ああ……!

 血。血。血。なにもかもが真っ赤だ。貴方は血の海の中でただ無力に倒れている。そこにあるのは、ひたすらに残酷な死のみだ。
 遠ざかる意識の中で見上げた大時計は、16:05をさしていた。
 そこで我に返った。その片目は炎を宿したような緋色に変わり、何百という針で刺されたような激しい頭痛に襲われる。(SANc 1/1D4)

天鴻/はっ!?(ころころ)78、SANチェック失敗!?
実散/たかひろくんの目が赤くなってる! だだだ大丈夫……!?

【現在SAN値】
 天鴻:59→55(4点減少)


KP/SAN最大値減少!?
天鴻/そりゃあんな凄惨な現場見たらなあ!
実散/初めての超能力ショックがー!? た、たかひろくん……何か、見えたの?
天鴻/林檎の絵が爆発して……逃げた先の正面玄関も爆発して……。そこまで言った後に時間を確認します!
KP/現在時刻、15:45です。
天鴻/爆発は16:05だった。
実散/もうすぐ……!?
KP/今から応援を呼ぶ時間はなく、爆弾処理班などに助けを求める時間もありません。ここでの選択肢は「探索者のみで爆弾を撤去する」か「一般市民が犠牲になるのを見守る」かの2つです。
天鴻/避難させる時間もないってことか……!
実散/俺達で爆弾撤去しなきゃ!? たかひろくん、爆弾解体の経験はある?
天鴻/流石に爆発物処理は無いですね……。最悪、見付けた爆弾を持って逃げれば一般客の犠牲は無くなる。
実散/……林檎の絵の所に行こう!? すぐ探します!
KP/天鴻がウォッチャーで見ているので、すぐに絵を発見できます
天鴻/あ、あそこ! 確かあそこにあった!
KP/絵を発見したなら<目星>+10%でロールをどうぞ。
実散/リンゴちぇーっく!(ころころ)81、成功!
天鴻/(ころころ)2でクリティカルでは!?
KP/クリチケどうぞ! ……林檎の描かれた絵の裏に何か発見します。爆弾です。
天鴻/あった! これは所謂C−4というやつでは……。
実散/知っているのか、たかひろくん!
KP/絵に直接触れて調べている2人のお客を見て、警備員が注意しに来ます。「展示物には触らないでくださーい」
天鴻/すまん、警察だ!
実散/警察手帳を見せます! 警備員さん許して! 事情を説明!
天鴻/警備員に頼んでお客さんを避難させてもらおう! 万が一、解体に失敗したら巻き込んじまう!
KP/行動が素早い。では警察手帳を出している状態なので、警備員に+10%の<説得>か<言いくるめ>か<信用>のいずれかでダイスロールしてください。
実散/<説得>80%で振ります! しっかり対応をして警備員さん!(ころころ)65、成功。みんな騒ぎにならないように逃げてー!
KP/あわわわと慌てる警備員が「はい判りましたー!」と的確に行動します。お客は逃がせましたが時間は刻一刻と近づいていく。……<目星>で判る情報は以上ですが、何かしますか?
実散/……爆弾に対してサイコメトリー!
天鴻/作った奴の記憶が分かれば、解体方法も分かるかもしれない!
KP/OKです。MP−1、SAN−1することで、サイコメトリーができます。

【現在SAN値】
 実散:86→85(1点減少)


 「――こいつは、C−4。いわゆるプラスチック爆弾だ。
 正面玄関用のヤツは、展示ブースに仕掛けた方の起爆をトリガーに5分後に爆発する。つまり、展示ブースのが爆発しなけりゃ、正面玄関は無事ってわけだ」

実散/読み取った記憶を全部音読します! たかひろくんにもこの会話伝われ!
天鴻/……うん?

「どうしても解体が必要になったら、まず慎重にトランクを開けろ。中に大量の配線があるが、ほとんどがダミーだ。白は無視、オレンジは全部切れ。
 最後は雷管に繋がるのは二本の線だ。運命の分かれ道ってやつだな。
 おい、待て、何するんだ、やめろ! 話が違うだろ! いやだ、殺さな……!」

実散/ふえ……?
KP/サイコメトリーで判る情報は以上です。
天鴻/……なんかおかしい。実散さんが見たことはそのまま言ってくれてるんですよね?
実散/う、うん、そうだよ……?
天鴻/爆弾の処理方法を喋った人物は恐らく殺されてる? ……なんだ、この、爆弾処理解説動画みたいな記憶。まるで、「誰かに見てもらうのを前提にしてる感じ」じゃないです?
実散/あ、確かに……言われてみれば? お膳立てみたい、ってこと?
天鴻/いや、考えすぎかもしれない。とにかく今は爆弾何とかしないと!
実散/う……うん、そうだね! 爆弾は解体しないといけない! 白は無視、オレンジは全部切れ、だったよね! 警備員さん、ハサミとかペンチ持ってきて!
天鴻/実散さん。手の調子、悪いでしょ。解体は俺がやるね。
KP/ですね、実散は手しびしび中です。では言われた通りオレンジの配線を全部切り終えると……赤の線と青の線が残ります。
天鴻/はー、ここまでか。こっから先は実散さんは見れなかったんだよな……。
実散/う、うん……赤と青、どっちを切るの?
KP/「最後は雷管に繋がるのは二本の線だ。運命の分かれ道ってやつだな」としかサイコメトリーで聞けた情報は無かった。さて、どうする? 刻一刻、時間は過ぎる。
天鴻/実散さんはどっちの色が好き?
実散/赤。
天鴻/じゃあ青切るわ。
実散/なんで!?
天鴻/え。だって実散さんが好きな色でしょ?
実散/そ、そういう理由でいいの!?
天鴻/うーん。……多分、青が外れだったら切る直前に分かると思うんですよね。ウォッチャーの能力ってそういう能力でしょ?
実散/ほえ? ……あ、そっか。ここで失敗したら、失敗した死が見える筈か。
天鴻/青を切ろうとします! 青い導線に刃を当てる。
KP/……………………。
天鴻/よし! 何も見えない! パチン!
KP/………………。
天鴻/怖い。
KP/…………。
実散/どきどき
KP/……。

 カチ、と秒針はそこで静止した。
 あたりは張り詰めた静寂に満ちており、その緊張がゆるく、解ける。
 成功したのだ。貴方達はこの瞬間に、危険を顧みずに多くの人々の命を救い上げた。

KP/大成功、乙!(^ε^)-☆Chu!!
天鴻/……は、はは。ぶわっ、と一気に汗かいちゃうな。
実散/ふえ……たかひろくん、たかひろく〜ん! ぎゅうっ!
天鴻/はは、良かった〜。
実散/すごーい! 爆弾解体できちゃったー!(^ε^)-☆Chu!!
天鴻/(^ε^)-Chu!! ……後で爆発物処理班の人に「素人が手を出すんじゃねえ!」って怒られそう!(笑)
実散/そしたら零課チーフ特権で「たかひろくんが全部解決したんですぅ〜!」って言い返してやろー! えへへ、ありがとう〜!
天鴻/こっち解体できたなら、玄関も大丈夫かな?
KP/はい、1つ解体で全部無効化です! それでは通報して、警官達が集まってくるのを貴方達は待ちます。

 ……数十分後。
 会場には多くの警察官や救急隊員が行き来している。貴方達は、会場の控室で休んでいるように言い渡された。

天鴻/実散さん、もう手は大丈夫?
実散/大丈夫! 5分で治ったよ! たかひろくんも、目は大丈夫……?
KP/手も目もどちらも痛みはもう引きましたね。
天鴻/こっちも大丈夫。寧ろ今は心臓が痛い。爆弾解体の緊張感が今更きたわ(笑)
実散/あはは、緊張って後からドッてくるからね〜。いいこいいこ、なでなで。
天鴻/んー。
実散/かわいい たかひろくん、撫でられるの大好きだもんね。いいこいいこ、なでなで〜! いっぱいみんなに褒めてもらおうね〜!
KP/暫くすると、控室のドアが開き、2人への差し入れを持った草摩が現れる。
天鴻/わ、草摩さん!
実散/兄ちゃんだ〜。
KP/(草摩になって)「続けて」
実散/いいこいいこ〜!
天鴻/続けません〜!(笑)
KP/「俺も参戦していいか?」
実散/いいよ!
天鴻/なんでだよ!?(笑)
KP/天鴻をいいこいいこなでなでしながらロールします。「大手柄だったな。怪我は無かったか?」 いいこいいこ。
実散/うん、無かった! 全部起きる前に解決できたよ!
天鴻/うー……んんっ! 実散さんが爆弾の解体を見てくれたからですよ!
KP/「これは差し入れだ。桜餅でも食べて元気出せ」 兄ちゃんの自作桜餅です。
天鴻/やったー! ちょろい。
実散/桜餅だー! えへへ、イス人さんの力のおかげで頑張れた! 兄ちゃんも和菓子作りながら仕事してたの? お疲れ〜。
KP/「実は、海外ドラマでよく出る台詞を言うことになった」
実散/ほえ?
KP/「良い知らせと悪い知らせ、どっちから聞きたい?」
実散/わあ、刑事さんみたい(笑)
天鴻/やだー!(笑) ……良い知らせから聞くのがセオリー?
実散/だね。兄ちゃん、良いのからちょうだい。
KP/「この展示会場にあった大きな絵だが、事件現場の絵と一致した。『九重 ミツグが一連の事件の犯人で間違いない』と断定された」
実散/……そっか。俺達だけの確信が、警察の確信になったんだ。
天鴻/これで捜査も進むな。
KP/「既に本庁の連中が自宅とアトリエの捜査に向かったそうだ。じきにお縄になるだろう」
実散/あれだけどちらの絵も大々的に展示してればねえ……。
天鴻/自分の個展に爆弾を仕掛けるような奴ですから、突入班は気を付けて欲しいっすね。
実散/そ、そうだね。何人も殺してる奴だから気を付けてほしいな……。
KP/「で、悪い知らせだが。展示会での絵を見てた連中が、どうも具合が悪いらしい。殺人現場にあった絵を捜査員が現場で見た時と同じだ。パニックになったり、一時的に視覚や聴覚がおかしくなった奴もいる」
実散/……みんな、SANチェックに失敗してる? 確かにあれ、普通の人は見ちゃいけないものを描いた絵だからね。
天鴻/そういえば、俺の未来視でもそんな症状を起こしていた人が多かった気がするな。
KP/「にも関わらず、夕方のニュースで各メディアがあの絵を全国放送で流すそうだ
実散/ええっ!?
天鴻/バカなの?
KP/「『有名なアーティストが実は殺人鬼だった! その絵はこれだ!』という報道をしたいらしい」
実散/パニックに陥る人もいるけど、陥らない人からって……でもあの絵はヤバイやつなんだよ?
天鴻/被害者の血で描かれた絵をテレビで流すとか放送倫理的にはどうなんだよ? 他の絵を使うよりも、あの絵を出した方が犯人の異常性が分かるだろうけど……。
KP/「俺は放送に反対しているが、数人が反対したところでどうもできない。という訳で、一度本部に戻れ」
天鴻/あ、そういやここの展示にあった絵は血で描かれてたのかな?
KP/あ、調べることできますよ!

 個展に展示されていた、悍ましき異形の神の絵画。
 今までの事件現場にあった絵と酷似している。
 見ているだけで足がすくみ、不安感が込み上げてくる。あまり長く見つめていると、精神がおかしくなりそうだ。

天鴻/……事件現場にあったやつよりも、書き込みが細かくなってる? 準備号じゃなくなったっぽいな。
実散/ついにマスターアップしたか……。この絵をサイコメトリーしても現場の絵と同じ結果になるんじゃって思うよ。
KP/<アイデア>か<幸運>ロールしていいよ
実散/<幸運>で(ころころ)14、成功。
天鴻/<アイデア>で(ころころ)73、成功。ギリギリセーフ!
KP/2人とも成功ならこう思います! 「……事故現場よりハッキリ怖いのが見えそう。トラップだな」
実散/俺怖い やめとくね
天鴻/怖いものは見たら怖いからやめとこ 明らかなSANチェックから逃げるのもCoCよ。
実散/その怖い絵が全国放送されるんだ バカなの
天鴻/モザイク処理しろや!(笑) しかし、個展初日に爆弾を仕掛けるとか犯人は何を考えているんだ?
実散/そうだ、ご本人は個展にいなかったね?
KP/代理人が個展を取り仕切っていただけですね。その代理人なら事情聴取でこってり絞られてゲッソリしています。普通の一般人さんです。
天鴻/可哀想に……。
KP/九重 ミツグの絵は素人目にも「才能がある」と思わせるものです。だから代理人を立ててでも個展をやるぐらいなんです。
実散/うーん、凄い人であることは確かなんだろうけど……って、なんで殺人現場と同じ絵を個展で展示したの? なんでそこに爆弾を仕掛けたの? なんであんなあからさまな解除方法を? やっぱ訳判んないね?
天鴻/才能があってもサイコさんじゃなあ……芸術家はサイコ気質な人多いって言うけどさ。
実散/兄ちゃんを見習え! 兄ちゃんはしっかり刑事してるぞ!
KP/兄ちゃんをサイコと認めた。
天鴻/う、うん、そうだね……でも普通の刑事は職務の合間にまんじゅうを作らんのよ(笑)
実散/今日の兄ちゃんは桜餅も作ってたよ! 凄いね!


 ●シーン4:捜査本部

 警察署へ戻れば、一斉に同僚が振り返った。皆、爆弾テロを阻止したことを知っているのだろう。
 拍手をするもの。肩を抱いて褒めたたえるもの。このところの暗いニュースが続いたせいか、皆が大いに浮かれている。

実散/わ〜! 爆弾処理の主役だもんね、たかひろくんモテモテだよ〜
天鴻/モテ期だ〜。野郎ばっかで嬉しくねー!(笑)
KP/同僚どもは拍手で迎え入れます。(同僚の刑事になって)「凄いぞ! これあげる! 草まんじゅう!
天鴻/さっき食べた!(笑)
KP/「俺も既に1d10個食べた」
実散/全部で91個あるからね……(笑)
天鴻/1人1個配っても余りそうだもんね……(笑)

 どっと沸き起こる笑い声。スローモーションに見える笑顔。
 その時、天鴻はぐらりっと視界が揺らぐのを感じた。

天鴻/え……あっ。
実散/た、たかひろくん!?
KP/声が遠のく。感覚が引き延ばされ、ゆっくりと意識が落ちて膝をつく。こっから先は、未来視です。

 パチパチパチパチと、その拍手はやけに場違いな音で響いた。
 いつの間に入って来たのだろう。そこに立っているのは、満面の笑みの九重 ミツグだ。
 「やぁ諸君。ごきげんよう。おや、どうした? 歓迎もなしか。俺を探していたんじゃなかったか?」

実散/ええええ!? ど、どういうことだよ!?
天鴻/本丸に攻め込んで来るとは良い度胸だな!?
KP/「わざわざ足を運んでやったんだ。感謝の一つあったって罰は当たらないと思うけどねぇ。ちょっとばかり興覚めだ」 和やかな空気が一変する。張り詰めた沈黙はすぐに怒号に変わり、一斉に刑事達が声を上げた。
実散/ぎゃーぎゃー!
KP/(刑事達になって)「捕まえろ!」「この外道が!」「よくも顔を出せたな!」「クズが! 罰が当たるのはお前の方だ!」

 「まぁ、その通りだ。俺はクズで外道でろくでなしだ。だが俺の人生だ。好き勝手に楽しむさ。
 それと、言い忘れていた事がある。ここに来たのは野暮用だ。捕まりに来たってわけじゃない。
 その瞬間、ばじゅんと奇妙な音をたて刑事が一人吹き飛んだ。壁に叩きつけられた身体が水風船のように破裂する。

天鴻/わ。
実散/わあ。

 ――九重を取り囲むように現れたものは、ぬらりと粘着質に光を反射する触手だった。
 触手は人の身体をゴムボールのように、いとも簡単に吹き飛ばす。

実散/触手!?
天鴻/触手セッションだったのこれ!?
KP/殺戮は速やかであまりにも一方的だった。数分もせぬうちに署内は血と肉とが散乱する地獄の様相になっていく。
天鴻/なんだ、これ……?
KP/「さて……どっちだ? アイツに身体を貸してるんだろ? どっちの身体だ?」
天鴻/何の話だ。
実散/……訳が判んないことを言いに来ただけ? 誰もその質問に答えてくれる人なんていないと思うよ?
天鴻/あんたも、彼らの関係者か。イス人とかいう……。
実散/あの優しい人の関係者?
KP/「……優しい? 何を馬鹿なッ!」 激昂。
実散/……あれ?
天鴻/え? キレるポイント、そこなんだ!?

 激昂した九重は、太い触腕で襲い掛かってくる。
 「よせ!」
 九重は冷ややかな目で叫んだ草摩を一瞥した。

天鴻/草摩さん!?
実散/兄ちゃん!?

 その意図を汲んだように太い触腕が草摩の頭を鷲掴みにして持ち上げ、そして、意図も容易く粉砕した。
 どさりっと音をたて、首無しになった草摩の身体だけが床へと落ちる。

天鴻/あ……。そ、うまさん……。
実散/兄ちゃんッ!?
KP/「俺は今、人質を取った。ん? 人質を殺したって?」
実散/お前えええ!
KP/「分かるか? 数ある未来の可能性の一つを人質にとったんだ。だが、まだ回避する術がある。そう、俺の要望を飲むことだ」
天鴻/貴様……! やっぱり、こっちの能力のことをある程度把握してる!?
KP/「今から指定する住所にただちに向かえ。すぐに署内から出て来なければ、この光景は現実になる。さて、それじゃ、とりあえず死んどくか?」
実散/はあ!? お前、何を知って……!
KP/そして、蠢く触手は実散の身体に巻き付く。
実散/あっ……。
天鴻/実散さん!
KP/雑巾を絞る気安さで骨と臓器を粉砕する。
実散/……あ、ぐ……。
天鴻/あああああああッ!
KP/実散は悲鳴を上げる間すらなかった。そして、触手は貴方へ……天鴻へ向かって殺到する。
天鴻/てめえッ! 九重の方に向かって突貫する! ……けど、触手に阻まれ、ブラックアウトかな……。

 そこで天鴻は我に返った。
 その片目は炎を宿したような緋色に変わっている。胃がひっくり返るような感覚と、頭蓋骨がぎしぎしと悲鳴を上げるような強烈な痛みが襲ってきた。
 この能力を使い続ければ確実に身体が壊れてしまう。そう実感するには十分だろう。(SANc 1/1D4。頭が割れそうな頭痛によって1d2ダメージ)

天鴻/はっ。(ころころ)SANチェックは18で成功。SAN減少値は……1。嫌な汗でびっしょりだよ。

【現在SAN値】
 天鴻:55→54(1点減少)


KP/現実だったら実散も怒涛のSANチェックをすることになったことでしょう。でもこれはあくまで「天鴻が見た一つの可能性」なだけなので、たった1回のSAN減少のみでOKです。
実散/兄ちゃんや多くの同僚が襲われて死ぬシーンだからね……。でもたかひろくんが凄くつらそうな顔をしてるのには変わりない! たかひろくん、平気!? 座って……!
天鴻/……いや、いや、ダメだ、休んでる場合じゃ無い。ここに居たら、みんな死ぬ……。
実散/え? また爆弾でも仕掛けられた?
天鴻/爆弾じゃない。九重が来て、ここに居る皆を殺していく……それを避けたければ、指定された場所に来いと……。
KP/天鴻は告げられた住所を記憶しています。それは九重 ミツグのアトリエのもので、現在別の警察官達が向かっている筈の場所です。
天鴻/……なんかヤベー奴だった。触手みたいなのでバーンって……。
実散/そんな兄ちゃんみたいなことするの!?
KP/兄ちゃん、触手を使えるの!?(笑)
天鴻/草摩さんも出来るんだ!? 使うか使わないかで言ったら使いそうだが!(笑)
実散/最近オニキスと触手で遊んでいる姿を見たよ。
天鴻/草摩さんは本当に何なんだろう(笑) ……俺達がアトリエに向かえば、少なくともここに居る人達は死なずに済む。アイツの指示に従うのは癪だが、だからってここにいる同僚達を死なせる訳にはいかないだろ。信じてくれ。
実散/……信じるね。九重 ミツグの言う通りにしよう。なんだか癪だけど! なんでこんなことさせるのか判んないけど!
天鴻/何が目的か判んねえが、捕まえた後に聞き出してやろう!
実散/九重 ミツグのアトリエに行こう! 車を出します!