クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 21`s gun 』 2ページ ■
2021年12月2日




 ●A区画

 煌びやかな摩天楼が広がる区画だ。隙間なく詰められたビルが威圧感を与えているような感覚を覚えさせる。
 地下への階段も多く、地下空間も広いことが伺える。
 しかし、あちらこちらにエネミーの姿も見受けられ、戦闘音が鳴り響いている。

 侵入不可エリアに辿り着けば、そこには鉄の塔が立っていた。一見ビルのようにも見えるが、窓も扉もなく、確かに”塔”という呼称が良く似合う建物だ。


KP/<目星>をどうぞ。
実散/(ころころ)62、成功。
KP/その鉄の塔の側面に何か文字が刻まれている事に気が付く。

 ▼【謎のコード】
 e382A2e382BAe383A9e382A4e383Bce383AB e69BB8e789A9
 e7949fe880850d0A e7AeA1e790860d0A0d0A
 e6AdBBe880850d0A0d0A e89887e7949f0d0A

実散/これもどこかの座標?
KP/<コンピューター>、または<知識/4>でどうぞ。
実散/コンピューター? こういうのはいたるくんの出番だな〜。(ころころ)59で失敗。わっかんないよ〜!
草摩/……待ってろ。(ころころ)4、決定的成功。
実散/兄ちゃん!? クリティカル!?(笑) 兄ちゃん凄い! 兄ちゃん偉い! 兄ちゃん天才!
草摩/どや。コンピューター得意な格も俺のこと褒めてくれるだろう。
実散/いっぱい褒めてもらおうね〜!

 <コンピューター>
 これが16進数で書かれているという事に気が付く。解読する事も出来るだろう。
 ▼【コード-解読後】
 e382A2e382BAe383A9e382A4e383Bce383AB e69BB8e789A9
    ア ズ ラ イ ー ル      書 物
 e7949fe880850d0A e7AeA1e790860d0A0d0A
    生 者        管 理
 e6AdBBe880850d0A0d0A e89887e7949f0d0A
    死 者       蘇 生

実散/凄い〜! けど……これ、何?

 周囲に煩わしくアラームが鳴り響く。
 不協和音の中、空から青く輝く何かが降りてきた。
 それは、まるで天使かの如く羽根を広げて降り立つと、無味な音で貴方に向かって告げる。

実散/これ何……って、え!? アラーム!?

 『ハジメマシテ。オマワリサン』
 『アナタは当該ワールドにはふさわしくないと検知されました』
 『ヨッテ、楽園から追放致シマス』


実散/……オマワリサン!? なに……なんで、正体……。
草摩/なッ!? そいつ、こっちの情報にないエネミーだぞ! みちる、気を付けろ!

 【Type-MB】【Type-SB】との戦闘、開始。

実散/戦闘……!?

 謎のエネミー2対との戦闘が始まる。実散はすかさず<拳銃>で応戦した。
 命中クリティカルや連射を駆使し、2体を素早く撃退していくが……。


実散/よし、オーバーキル……!

 『無事で…………か?!』
 敵を倒し一息をついた時、声が響く。しかしノイズが酷い。
 『??、?、!』
 ガタリ、と何かが大きくぶつかる音が、微かにノイズから聞こえる。
 次の瞬間。

  ば ち り

 一瞬の眩暈のあと、強い頭痛が貴方を襲う。
 締め付けられるような痛みと強烈な吐き気に、視界が点滅する。
 ばちり、と頭の奥でなにかが迸るような感覚と共に、貴方の意識は暗転した。


実散/……あ……暗転……にい、ちゃ……ばたり。


 ●マンション

KP/実散は、目を覚ます。自室のベッドの上で寝ていてください。
実散/……むにゃ?

 「やあ、目が覚めたようですね」
 実散が目覚めたことに気が付いたのか、近くにいた人物……斉田一が、実散に向かって話しかけてきた。


実散/斉田さん!? なんで、うちに……?
KP/「草摩さんから救援を貰って、その後すぐに彼からの連絡が途絶えたので心配になりまして」
実散/……あ、連絡を受けて、来てくれたんですか。
KP/「実際に来てみたら、彼はいないし貴方は気を失ってるしでびっくりしましたよ」
実散/兄ちゃん……花園 草摩が、いない?
KP/「草摩さんは、私があなたを発見した時には既にいませんでした」
実散/……どこかに行った様子は?
KP/「残念ながら私には判りかねます」
実散/……そ、そうですか……。
KP/「何か私とお話がある。そう連絡を受けて私は来ました。本題に、入ってもよろしいでしょうか?」
実散/あ……そ、そうですね。失礼しました。エデン計画について、その言葉に何か聞き覚えなどはありますか? そのことを聞きたかったんです。

 『エデン計画』について問い詰めるのであれば、彼は不敵な笑みを浮かべながら、真実を話し始める。
 「私は未来よりやってきた人間ではない知的生命体です。この土地には研究の為に訪れました」

実散/……はい?

 「貴方が先ほどまでプレイしていたゲームも研究の一環で作成したものです。私は確かに『EDEN』の中にいくつかのオーバーテクノロジーを仕込みました」

実散/え……あ、はい……?
KP/「しかし、プレイヤーの方々に危害を及ぼすために入れたものではありません。今回あなた方に協力を申し出たのも、我々の研究に異物が入り込んでいると感じたからです」
実散/えーと……。斉田さんは、協力者ですか?
KP/「もちろんです。貴方達をサポートすべくいます」
実散/あ、ありがとうございます……。
KP/「A区画の侵入禁止エリアについてですが、あそこにはユーザーデータのサーバーが設置してあるのです。仮のもので、次の大型アップデートの時には移動する予定だったんですよ。入りたいと言っても、管理者区域ですから、ユーザーは入れません」
実散/管理区域、ユーザーは入れない……。
KP/「本来はダンジョンとして作っていたんです。順次公開予定のものでして。ほら、何か訳の判らないものがあるとユーザーは気になるでしょう?」
実散/考察がはかどりますね〜(笑)
KP/「……む? ああ、失礼。警察の方からご連絡が。新たな被害者が出てしまったそうです。ガイシャの名前は白井風李。16歳の高校生とのことです」
実散/…………。スーラちゃん、ですね
KP/「貴方が接触した人物に間違いありませんね」
実散/はい。名前だけしか知りませんでしたが……15時に死にました。
KP/「自宅でゲームをしていた所で、急に苦しみだし、病院に運ばれるも、そのまま……ということらしいですよ。死体の状況は今までのものと同一。丁度ゲームをプレイ中だったからでしょうか」
実散/…………。その、これから……どうしましょうか。また、ゲームの中に入って調査を?
KP/「それをお願いしたいところですが……貴方をサポートする草摩さんが行方知れずです」
実散/……兄ちゃん、どこ行ったんだろ?
KP/「お帰りになるのを待つか、それとも探しに行くか……。それ以外の調査をするか、貴方にお任せします」
実散/はい……。
KP/ここから先は現実世界での探索になる。情報があるのは『草摩の部屋』『警察署』です。という訳で、斉田はさよならします。
実散/お見送りします! あ、ありがとうございました〜! ……俺、兄ちゃんの部屋に入れるの?
KP/引っ越したばかりの2人きりの新居の部屋です。では、どこに行きますか?
実散/警察署は……もちろん行くべきなんだろうけど、斉田さんがお帰りになって、すぐに行けるとしたら……兄ちゃんの部屋だな。部屋に入ります!


 ●草摩の部屋

 最初に入っていた時と様相はほとんど変わっていない。【机】も【椅子】もそのままになっている。

 <SAN>
 コンピューターの前に草摩が立っていることに気づく。
 しかし、瞬きをした瞬間に消えてしまっていた。突如人が消えたことに驚いた貴方はSANc(0/1)。

実散/……あれ、幻?
KP/幻ですね。幻でもSANチェックです。
実散/うわ、兄ちゃんに会いたすぎてSANが削れてる……(ころころ)18、成功。
KP/部屋全体を見るなら<目星>です。
実散/(ころころ)46、成功。

 <目星>
 草摩のコート類やかばんや持ち物などが全てそのままになっている。
 携帯や財布などの貴重品もおきっぱになっているようだ。

実散/……外に出る訳が無い、ってこと?
KP/普通に考えたら、出るような準備をしてないということだ。
実散/おかしいな。というか、倒れた俺をおいてどっかに行く兄ちゃんかな? ……とりあえず机を見るよ。

 ▼机
 【コンピューター】が載せられた机。コンピューターは起動されたままになっている。
 キーボードの隣には【メモ】が置かれていた。

実散/……メモには何て?

 ▼メモ
 草摩の筆跡だ。事件についてのメモを取っていたようで、『エデン計画 A区画 エイダ』などの単語がまばらに書き連ねられていた。
 また、その下には、幾つかの無意味な半角英数の文字列が並べて書かれている。

KP/<アイデア>をどうぞ
実散/(ころころ)47、成功。

 実散はこれがゲームのログインパスワードではないかと気が付く。
 念のためにと、何度か変更していたようだ。最後のパスワードらしきところには乱れた丸印が付けられている。


実散/俺のログインパスワード……後で使うのかな?
KP/ここでの情報は以上かな。あ、あと……冷蔵庫にタルトと鍋にシチューがあるので食べてください。
実散/…………。食べません。仕事が終わってからね。
KP/せっかくタルトが冷えてるのに……。
実散/ここで手に入る情報が以上なら、警察署へ行きます。


 ●警察署

 本庁では刑事たちが変わらず、忙しそうに走り回っている。しかし、どれだけ見渡そうとも草摩の姿はどこにもない。

実散/お邪魔しまーす。ちゃんと出勤してまーす。さて、警察署にも兄ちゃんの姿はないか……。
KP/<幸運>ロールどうぞ。
実散/(ころころ)38、成功。

 ▼スーラの中の人の情報
 ・白井 風李(16)  アバター名:スーラ

  死亡推定時刻:××月××日  15時前後  死亡場所:自室

実散/……確かにスーラちゃんは死んだ。でも、それだけしか判らないや。
KP/他にもアバター名から本名を探すことができる。
実散/他にも?
KP/例えばムースとか、例えばエイダとか。
実散/ムースは……ギルドリーダーさんだっけか

 ムース→瀬生 萌(せお・もえ)
 20歳。現実では女子大学生。

実散/女の子だ!? へー、カッコイイ男性アバターでも女の子! ネカマならぬネナベか〜! 悪くない、王道だね!(笑)

 エイダ→間戸 彰(まど・あきら)
 30歳。サイバー犯罪対策課二係所属。

実散/おや?
KP/警察の人間だということが明らかになる
実散/……同僚じゃん? 間戸くん……って調べれられる? 知ってる人とか探せる?
KP/間戸の経歴とか、警察署だしすぐ出せる。どうやら3年前の事件に関わっていたようだ。
実散/3年前の事件?

 ▼『教団テロ未遂事件』
 とある宗教団体から大量の火薬と毒薬、武器の類が見つかったという事件。
 この事件の前にネット掲示板で、犯行予告があったところから、事件解決につなげている。
 実散や草摩、格や天鴻、相模原 涼も突入に参加し、犯人である教団員たちを確保した事は覚えがあるだろう。
 間戸はその犯行予告から、教団の場所を割り出すのに一役買っていたようだ。

実散/なんか凄い事件が出てきた。……涼ちゃんと働いた事件。……あー、そんなこともあったねえ。
KP/サイバー犯罪対策課に行けば、間戸に会えるかも?
実散/……行きましょうか。

 サイバー犯罪対策課に行くと、カタカタとキーボードが鳴る音が実散を迎える。
 実散に気が付いたスタッフの一人が、実散の方に向かってくるだろう。
 「はい、なんか用ですか?」


実散/失礼しま〜す。すみません、間戸くんっていませんか? ちょっとお仕事でお伺いしたい件がありまして。
KP/「間戸ですか? 間戸は1年前から休職中ですよ」
実散/休職中?
KP/「なんか、結婚間近の恋人が事故で亡くなったそうで。恋人が亡くなったのを聞いたのは、死んでから2週間も経った後だったみたいで、呆然自失になってそのまま休職ですよ」
実散/…………。そうですか。
KP/「事件の直後『看取ってすらやれなかった』とぼやいていたのを聞きましたから。……あっ、もしかして、間戸の家に行ったりします?」
実散/……会いたいなって思ってたんですけど、住所は知らなくて。教えてもらえます?
KP/「マジすか、やった! 頼みたいことがあるんすけど、良いですよね? 『1ヶ月ほど帰ってこない、家賃の滞納がある』という連絡がアパートの大家から入っているので、ければ詳細を確認してきてほしいです!」
実散/……ええ、判りました。住所、貰います。
KP/ではそのとき。ある資料が目についた。

 ▼『other_beacons.exe』
 押収日:2017年2月22日  押収品:ディスク  記載者:間戸彰

 ・2017.03.01
 宗教団体から押収。現在ディスク内部を調査中。中に格納されているプログラムは二つ。
 フラクタクル動画エンジンと、もう一つは論理ループと反復ルーチンの、無意味に近い寄せ集めのようだ。
 しかし、さらに調べようとすると、動作停止をしてしまうため、調査が困難。引き続き調査予定。

 ・2017.04.11
 調べていくうちに、このプログラムは門のような効果を持っていることが判明。
 何らかの移動用プログラムが組まれているようだ。このプログラムは非常に高度で、魔術めいたものを感じる。

 ・2017.11.24
 担当が休職により、調査停止。

KP/そして、壁に貼り出されている地図が目に入った。それはなんてことはない、都内の犯罪情報マップだ。何故かそれに既視感を覚える。
実散/……ふむふむ?
KP/見覚えのある地図を見た実散。<アイデア>もしくは<ナビゲート>を振ってください。
実散/(ころころ)58、やった! ついにアイデア成功!

 <アイデア>
 区の区切り方が、『EDEN』のマップに非常によく似ている事に気が付く。
 否、『EDEN』の区画の区切り方が、都内の区の区切り方によく似ているのだ。
 ゲームのマップと現実のマップを照らし合わせると、「ポータルが渋谷区、A区画が新宿、B区画が千代田区、C区画が中央区、D区画が港区」のようだ。

KP/つまり、侵入不可の区域は新宿です。
実散/ほうほう、なるほどなるほど。実際にAの座標に行ったら侵入不可な何かあったりするのかな〜?
KP/いい勘だ。……さて、どうする?
実散/新宿にも行ってみたいけど……まずは、間戸くんの家だよね。


 ●間戸の家

 住所を辿ると、アパートの一室に辿り着いた。
 不思議と鍵は掛かっておらず、まるで空き部屋のようにすら感じるだろう。ポストには大量の新聞や広告が詰まっている。


実散/鍵が掛かってないんかい〜!(笑) 都合が良いねえ。遠慮なくお邪魔しまーす。
KP/中は、まるでモデルルームのようだった。家具や装飾品はほとんど何もなく、簡易的な机と、ベッドが置いてあるだけ。<目星>どうぞ。
実散/(ころころ)70、成功。

 <目星>
 ベッドの下に、【写真立て】が落ちている事に気が付く。
 また、机には【手帳】が置かれている事にも気が付くだろう。

実散/……写真立てを見ます。

 ▼【写真立て】
 若い男性と女性が笑顔で映っている。仲睦まじく繋がれた右手の薬指には、同じデザインの指輪が嵌っている。
 裏には、『間戸 彰・土師 若葉』と書かれていた。

実散/……恋人の写真か。手帳も、見よう。

 ▼【手帳】
 手帳には、予定は殆ど書き込まれていない
 ただ、後ろのメモ欄に、備忘録のように、数行書き足されていた。

 開発した量子サーバーに『アズライールの書』と名付けた。
 これを『EDEN』のユーザーデータに紐付すれば、データをコピーできるはずだ。
 収集した情報を統合し、神話のアズライールの書を再現できれば……若葉のデータを書き加えることで蘇らせられる筈だ。
 イス人どもには感謝をしよう。
 懸念点があるとすれば、『EDEN』のユーザーデータは現実での魂と繋がっている。データを弄る事で、現実の人間に何かがあるかもしれないが……

 和田が死んだ。
 酷い死に様だったらしい。
 予測が当たった。やはり、IDに特定の列を持つ人間に影響が出るようだ。
 僕はその恐れを理解しながらも、彼の命を踏み台にした。戻れない。誰が死のうとも、……若葉のためなら。

 計画は順調だが、一人想定外の死者を出してしまった。
 イスの計画や技術に気づきはじめていた彼はどうしても邪魔だった。仕方ない、というのは言い訳にしかならないのだろう。
 アズライールの書の完成は間近なのだ。一課も動いているはずだ。今不安要素を残すわけにはいかない。
 あと一人。要となるユーザーが登録すれば、悲願が叶う。

実散/…………。「収集した情報を統合し、神話のアズライールの書を再現できれば。若葉のデータを書き加えることで蘇らせられる筈だ」。
KP/そう書かれている。
実散/……間戸くんは、死んだ恋人を生き返らせようとしている? 「あと一人。要となるユーザーが登録すれば、悲願が叶う」……? はあ。溜息が出る内容だな。
KP/実散が溜息を零した、そのとき、ガシャアアアアアンという騒音。
実散/何の音!?
KP/外に出る?
実散/すぐ確かめに行くよ!

 ビルに青い光が走り、ピクトグラムで模された敵が空から降り注ぐ。
 貴方はその天からのものを見たことがある。『EDEN』のエネミーだ。


実散/……は?

 エネミーたちは、ゲームと全く同じように周囲の人々に襲い掛かり、そして周囲の建物を破壊していく。
 あちらこちらで、瓦礫音や爆発音、悲鳴が轟いていく。
 それはさながらゲームの世界が、現実にも侵食したかのような光景だった。


KP/このような異様な光景を見た実散はSANc(0/1d3)。
実散/おわあ!? あれ何してんの!? どうしてそうなってんの!?(ころころ)45、成功!
KP/さすがSANチェックは失敗しないな。
実散/SAN90は伊達じゃない! でも普通に驚くよ!? なんでゲームのエネミーが現実に!?
KP/何ものかによって侵食が成功してるからだ。ゲームと現実をリンクさせて蘇らせようとしている何者かによって。
実散/……なんだそれっ!

 実散の前にも、エネミーが三体降りてくる。
 それはまるで審判の時は告げに来た天使かの如く。背後には瓦礫、眼前には敵。逃げ場はなかった。

 そのとき。
 「使え」

 誰かの声が耳元で聞こえたと同時に、手の中に、何かを握っている事に気が付く。
 銃だ。そうだ。それはゲームの中で使用していた、銃だった。


KP/ここから、ゲームで使用していたアイテムが全て使用可能になります。
実散/お……おおおお!?
KP/以降、エネミー3体との戦闘となります。
実散/3体と戦闘ですか! 1対3はキッツイなー!
KP/……でもこの戦闘、シナリオを読むと逃げられるらしい。「全員撃破、もしくは<DEX*5>で逃走した時点で戦闘は終了になります」って書いてある。
実散/わあ、逃げられるの? 試しにやってみようかな。(ころころ)1、決定的成功(一同爆笑)
KP/そりゃ逃げられますわ。逃げました。戦闘おしまい。
実散/なんかごめん(笑) でもありがとう、逃げました!
KP/クリティカルを出た実散は……エネミーが、Aの塔に……現実にあるビルに群がっていることに気づく。ゲーム内で侵入不可とされていた場所だ。
実散/よし、手掛かりはあそこしかない! 新宿に向かおう!

 千代田区を過ぎ新宿区に入る。
 『EDEN』と同じように、摩天楼に見慣れない筈のエネミーが次々と降り立っていく。
 夜のネオン街に青い光がともっていく。その光景はさながら絵画で見た、終末にすら似ていると思うかもしれない。

実散/し、新宿がエネミーだらけで建物を破壊していくんだよね……?
KP/そうです。新宿崩壊。中の人の職場があるから凄く困る。助けて。
実散/俺も知り合いがやってるお店とかあるから新宿大崩壊は困る〜!(笑) まだまだ飲みに行きたいお店があるのに〜!?

 その時、聞き慣れはじめた無機質な機械音声が頭の中に響く。
 『アイテムUIに重篤な不具合発生:一部武器使用不可』『ランクAの武器を消去』
 手元を見れば、武器が消えている。今、実散の手持ちには、弾丸が一発しかないあまりにも心もとない銃だけだ。


実散/……1つだけ、残った?
KP/一番最初に作った失敗作の銃だけが残る。
実散/あ、なるほど〜!

 エンジンを握り直し、オートバイを走らせる。そのまま、記憶を頼りにバイクを走らせれば、目の前に巨大なビルが見えた。
 『EDEN』の中で見たような箱型の建物。
 しかし、窓やシャッターが下りているだけで、塔の様には到底思えない。ただ、実散は直感的にあの建物だと感じることだろう。
 再び機械的な音声が頭の中に響く。

 『機体にエラー発生:乗機使用不可』
 あともう一歩、というところでオートバイにノイズが走り霧散していく。
 実散は道路に放り出されてしまうだろう。
 自分の足で立ちあがり、建物に向かって走る。辿り着いた灰色のビルには、小さな鉄の扉が一つ付いているのみだ。


実散/おおお〜! 凄い、映画のクライマックスシーンみたい!

 そして、その扉の前に草摩が、立っていた。
 草摩の口が動く。音は発されない。ただ、実散に何かを伝えようとしていた。


実散/兄ちゃん……!?
KP/<目星>どうぞ。
実散/(ころころ)21、成功。

 『お前の思う、正しいことを』
 そう言うと、彼は再び掻き消える。静寂と、貴方と、鉄の扉だけが取り残された。


実散/……兄ちゃん! 兄ちゃん!? 何を言って……。

 暗く狭い階段を一段、一段足を進めていく。
 薄暗く、細い階段を下に、下に、と歩いて行けば一つの扉に行き当たる。
 扉からは機械的な青い光がちらりとのぞいていた。

 そこは巨大な吹き抜けの空間だった。
 しかし、廃ビルの内部とは思えないほど異質な様相だった。
 部屋の壁には数多のモニターが埋め込まれており、『EDEN』内部の映像や、街の様子や人々が生活する様子が幾千幾万にも映し出されていた。

 それ以上に異質なものが中央に一つ。
 その中央を貫くようにして巨大な筒状の物体が聳えているのが目に入る。
 表面についた緑や青のライトは常に点滅しており、駆動音が静かに周囲に響いている。

 中央には巨大な機械の目が、その目は貴方を真っ直ぐに捕えており、目が合った。
 生きている。あの機械は、生きている。 
 ライトの点滅はまるで、心音のごとく。駆動音はまるで呼吸のごとく。


KP/生きた機械、チクタクマンを見た実散は(1/1d8)。
実散/チクタクマンだー!(ころころ)63、成功!
KP/本当に実散はSANが減らないな……。
実散/いや〜、チクタクマンいいよね。好き神話生物だよ。イス人も大好き神話生物! やっぱ『CoC』は神話生物に会える瞬間が大好きだな〜!(笑)
KP/プレイ時間が超深夜だからテンション上がってきた?

 周囲を見渡した貴方は、黒い塔の前に誰かが立っているのに気が付く。
 部屋を横断するように備え付けられた橋の上で、その人物は柵越しに貴方を穏やかに見下ろしている。

 そして、彼の横に誰かが座り込んでいるのも見えた。
 柵と両手を手錠で繋がれており、ぐったりとした様子で目を閉じている人物に貴方は見覚えがある。
 草摩だ。


実散/……兄ちゃん!? 柵と両手を手錠で繋がれている兄ちゃんは絵になる。
KP/ありがとう。「……やあ。待ってましたよ」
実散/君……間戸、くん? 間戸くんだよね?
KP/「花園チーフ、お久しぶりです。3年前に仕事をいっしょにしただけなのに覚えていらっしゃいましたか」
実散/あはは、顔を見て声を聞いたら思い出してきた。いたるくんと同い年で、いたるくんみたいにコンピューターが大得意な子だったよね。……でも、君も俺のことしっかり覚えてた?
KP/「実は、あんまり」
実散/正直でよろしい。同じ職場の仲、少しお話でもしようか?
KP/<目星>をどうぞ。
実散/(ころころ)44、成功。

 <目星>
 草摩はぐったりと膝をつき目を閉じている。その身体にはいくつかの暴行の痕が見られた。
 また、彼の首筋からコードが一本伸びている事に気が付く。
 そのコードは巨大な筒状の機械の更に後ろのタンクのようなものに繋がっていた。
 そして、彼の後頭部には拳銃が突きつけられている。

実散/……ちょっと。そういうの、ヤメてくれる? 物騒なの、降ろしてくれないかな?
KP/「ここに辿り着くなんて、さすが零課は優秀だ。でも花園チーフ、自分の立場を分かってる?」
実散/ごめんね。まず降ろしてくれないかな? 取り乱しちゃうよ、そんな……拳銃を持って今にも兄ちゃんを撃ちそうな姿をされると。
KP/ふう、と溜息を一つ。「……僕だって、こんなことしたくなかったよ」
実散/そうなの?
KP/「でもさぁ、コイツのせいで苦労したんだ」 ぐり、と銃口を押しつける。「せっかく待ちに待った適合者が現れたのに……まぁそれが、こっちの花園さんなんだけど」
実散/適合者……?
KP/「いつもなら遠隔でラクにハッキングできたのに。なのにコイツが、パスワードを物理的に変更とか小賢しいマネをして。原始的だけど、悔しいくらい効果的だったよ」
実散/兄ちゃん、びっくりするほど優秀だからね。
KP/「ねえ。花園チーフなら僕の気持ち、少しくらいは分かってくれると思ったんだけどな」
実散/何の話?
KP/「テロ未遂事件の後、『庭師』が現れて班員が死んだんでしょう? なら、僕の気持ち、少しは分かるよね?」
実散/……………………。
KP/「分かるんでしょう?」
実散/……「恋人を蘇らせたい」って気持ち? 死んでしまった好きな人を復活させたいって気持ち?
KP/「分かるよね?」
実散/あはは。うん。そうだね……分かるよ。
KP/「やっぱり! じゃあ……僕のしたいこと、応援してくれるよね? 僕の気持ちが分かるなら!」
実散/それとこれとは話が別。君が引き金を引いてその人を殺したら、俺は怒る。当然だよね。君が彼女を喪ったときと同じ悲しみ、分かるでしょ?
KP/…………。
実散/俺もその人を喪いたくないから必死になるよ。そんなの、大事な人がいる人間なら誰だって分かるだろ?
KP/…………。
実散/喪いたくないから抗うよ。君の思い通りに喪わせないように反論するし、抵抗する。言いなりになると思うな。
KP/間戸はうっすらと微笑むと、草摩に銃を向けたまま一歩下がる。背後にあったパネルのようなものを操作しながら、彼は言葉を続けた。
実散/あはは、何をしようとしてるのかな〜?
KP/「今、アズライールの書と、彼に繋がっているタンクの動作スイッチを共に入れたんだ。アズライールの書が完全に起動すれば、若葉は蘇り……そして『EDEN』ユーザーの80万人の人間が、眠りにつく。永遠にね」
実散/……わあ。凄いことしようとするねえ?
KP/「そして、あのタンクの中に入っているのは、プラスチック樹脂だ。タンクの中身がこの人の元に到達すれば血液内に樹脂が入り込み、全身を固めていくことになる」
実散/……そんなことして何になるの。

 「ユースティティア、というローマの女神を知っているかい?
 正義をつかさどる女神でね。司法や公正の象徴とされてきた。
 彼女は手に天秤と剣を携えているんだが、これは『剣なき秤は無力、秤なき剣は暴力』を意味する。
 剣ではないが、幸いにも君の手には『それ』がある。秤はそれであり、君自身だ。

 そう言いながら、間戸はアズライールの書の目と、タンクを一つずつ指差した。
 両方とも、実散の立っている場所からは遠い。
 間戸は人差し指を口元に持ってくると、にこりと微笑み……今度は、実散を指さす。

 「銃なら、届くんじゃないかな。どちらかには。
 よく知る1を救うのか。それとも顔すら知らない80万人を救うのか。勿論ここで僕を裁いても良い。
 選ぶのは君だ、零課の花園さん」

 視界には、装置のタイマーが映る。
 階段を上り二人の場所へ行ける時間は残っていない。
 銃の弾丸は、一発のみ。

 貴方は どこに 銃を向けますか?


実散/……ふふっ。なーるほど。このシナリオの肝はここなんだね! シナリオ製作者の顔色が判るシナリオって大好き!(笑)
KP/きりあきさんが「PCを交代でできるデスピタゴラ装置」って言うのも判るだろ?(笑)
実散/ちなみに、兄ちゃんはこのシナリオを遊んだとき、どっちを選んだの? 多分、1と80万なら、1の方を選ぶかな。
KP/うん。草摩はKPCである醒ヶ井さんを助ける1を選んだ。
実散/だよね。俺達、聞くまでもなく、お揃いだ。兄ちゃんを助ける1を選びます。
KP/草摩を助けるためにタンクを撃つと。
実散/うん。撃ちます。

 その引き金は重く、しかし響いた音はやけに軽い音だった。
 穿たれた弾丸が、真っ直ぐにタンクを貫く。
 その前に居た草摩がピクリと肩を揺らす。彼の生に安堵したのもつかの間……同時に、大きなアラーム音が鳴り響き、部屋はうめき声や悲鳴に包まれた。
 部屋に設置されたモニターからは、先ほどまで生きていた人間達が、苦悶の表情で地面に伏していく様子が映っている。


KP/右では男性が、左では女性が、その上のモニターでは子供が。人々が倒れていく音が終わらない。SANc(1/1d6)。
実散/(ころころ)56、成功。

【現在SAN値】
 実散:88→87(1点減少)


実散/俺はいつまでも正気だよ。正気のまま、兄ちゃんを助ける。……大勢を見捨てる。
KP/間戸は動く気配がない。間戸は抵抗せず、ほんのり笑ったまま、尻もちをつくでしょう
実散/駆け寄って、拘束はできますか。
KP/できます。判定はいりません。無力化できますよ。
実散/はーい、間戸くん! そのまま動かないでね〜。と言って、おもいっクソ顔面を蹴飛ばします。
KP/ガンッ(笑)
実散/あはは、これは俺の国に伝わる「こんにちは」なんだよ〜! 異文化交流だから許してね! 拘束します、手錠ガチャリ。
KP/無力化できました。……草摩を支えれば、傷だらけではあるものの、しっかりと息をしていることが分かる。
実散/……兄ちゃん。起きて。
草摩/…………。ん……。
実散/遅れてごめんね、応急手当するよ。……何されたの、こんな所で。
草摩/誘拐された。なんか俺、間戸の計画に必要だったらしい。適合者とかなんとかで。よく判らないし思いっきりディスったらボコボコにされた。
実散/うふふ、俺が顔面蹴っておいたから機嫌を直して。
草摩/……訊いてもいいか?
実散/なーに?
草摩/実散は、80万人を生かす選択肢を取らないのか?
実散/兄ちゃんは同じ立場だったら、もし俺が誘拐されて俺1人と80万人の命を天秤にかけられたら、どうする?
草摩/みちるのために80万人を殺す。
実散/でしょ? 理由は聞くべき? きっと兄ちゃんと同じことを答えるよ。
草摩/だよな。
実散/そうだよ。
草摩/キスしていいか。
実散/やだよ。そういうのは家でやるって約束しただろ。
草摩/残念だ。誘拐されてから弱音を吐かないよう頑張ったのに。……みちる、応援を呼んでくれないか。俺、携帯電話を持ってきてない。
実散/うん。既にたかひろくんといたるくんには連絡を入れておいたんだけどね。新宿だけじゃなくあの騒ぎだと2人も携帯なんて見てる暇は無いかな〜……。

 応援を呼ぼうと携帯に耳をあてる。
 無機質なコール音の後に響いたのは。機械的な音声だった。
 機械音声は今までにも何度か聞いた無機質な声で……静かに実散に問う。


KP/『救イタイデスカ?』
実散/わっ。
KP/『80万人ヲ、救イタイデスカ?』
実散/…………。全部見てたなら、分かるんじゃないですか? 「いいえ」。
KP/いいえ、なのか。
実散/もし俺が正義感に燃えて80万人を救ったとして、きっと兄ちゃん1人を救えなかったことに耐え切れず……ショック死しちゃうと思うんです。だから、いいえ、です。
KP/いいえ、か。
実散/せっかくの観察対象、全部殺しちゃってごめんね? こういう生き物もいるってレポートでも書いてください。

 実散の応えに、電話口からは沈黙が返された。
 ほんの少しの間の後。
 『承知しました。応援は呼んであります。もうしばらくしたら到着するでしょう。お疲れ様でした』
 そして通話は切れ、代わりに遠くからサイレンの音が聞こえてくるだろう。
 やがて、実散は到着した応援の喧騒の中に飲まれることになる。


実散/……ふう。たかひろくんといたるくんに、どう説明したらいいんだろう? 醒ヶ井さんなら判ってくれるのかな〜。

 ――後日。間戸 彰は無事、送検されることになった。
 裁判の日取りも決まり、彼の罪が公になる日もそう遠くないだろう。
 しかし、全てが公になる事はないのだろう。あの常識から逸脱した事件は。彼の心情と共に闇に葬られることになる。

 ただ調書の中で、彼はただ淡々と自分の犯した罪を語っていた。一つ、一つ、事細かに丁寧に。その中で彼は語った。真っ直ぐとした声音で。

 「僕は自分の犯したことが罪であるとは、理解しています。けれども、間違いだったとは思わない。
 あれは、僕の天秤でした。僕の正義は、最愛の人を守る事。本当にそれだけだったんです」

 やがて、日常へと戻った都内を貴方たちは歩く。
 街のビジョンからは一つのニュースが繰り返されていた。『EDEN』の利用者が全員変死したというものだ。



 END B-3 「救済の銃口はただ一つ」


    ◆


草摩/……みちる。起きろ。
実散/んんっ……? あれ、変死のニュースを見て……後日談じゃないの? 俺、寝てた……?
草摩/言っただろ、これは夢オチだって。みちるがどんな結末を迎えても、全部戻ってくる。時間を越えて、元に戻る。
実散/時間を越えて、元に戻る……?
草摩/イス人の斉田さんに苺タルトをご馳走したらそういう技術を教えてくれたとか内緒な。
実散/なにイス人を手懐けて技術を貰っちゃってるの!?(笑) 神話技能が増え過ぎちゃうでしょ!?
草摩/冗談だ。ただの夢オチだ。神話技能が報酬とか無い。……みちるは俺のベッドで寝ている。俺の隣で寝ている。長い夢を見ていた。それだけだ。
実散/自分の部屋のベッドじゃなくて……兄ちゃんの部屋のベッドで寝てるんだね。変な夢だったな〜……。
草摩/ずっと寝ていたから、何か食べたいか。プリンタルトが冷蔵庫で冷えてるぞ。
実散/そうだね、タルト……食べよっか。
草摩/その前にキス……。
実散/タルト食べようか。手作りだから早めに食べようね!
草摩/キスできないのか……(笑) みちる。
実散/タルト食べるため起きようー! ……なーに?
草摩/80万人を殺したことの罪悪感は無いのか。
実散/……夢の中の話、していいの?
草摩/聞きたい。
実散/……あはは。夢オチって判ってるから思考停止したという甘えもあるんだけどさ……すっごい恥ずかしい話をすると、俺、あのとき、兄ちゃんことしか考えられなかった。
草摩/俺のことしか、か。
実散/選択肢に後悔が無い。本心からの、兄ちゃんを救いたい、だったよ。
草摩/……嬉しい。多分、天鴻と格に叱られる。醒ヶ井さんに呆れられる。
実散/かもね。
草摩/でも嬉しい。みちるが俺を優先してくれた。みちるが俺を選んでくれた。何よりも……「みちるが俺とお揃いの考えだった」ことが嬉しい。
実散/……ひどいね、俺達。
草摩/生まれてきてごめんなさい、って感じだな。
実散/いやでも、「だから何?」だよ。大事なものを優先して何が悪いのさ。……間戸くんも、彼の好きな人のことを大事にして行動した。そして結果はどうあれ、歴史に残る80万人殺しをしてみせた。素敵な人だね。
草摩/惚れちゃダメだぞ。あいつは今、新婚生活で忙しいんだ。
実散/……あはは、そうなんだ〜? 間戸くん、夢の中では名役者で格好良かったけど、現実だと奥さんに敷かれる可愛い子なんだ〜?
草摩/かわいい実散が誘惑したら奥さんに悪いだろ。だから間戸には惚れるな。
実散/俺のことかわいいとか言って好きになる人、兄ちゃんしかいないよ……。うーん、久々に間戸くんとか若い部署の子を誘って飲みに行こうかな? 崩壊してない新宿のお店に行きたいし! 知り合いがやってるお店とか!
草摩/ベッドの中、みちるの額にキスする。
実散/キスされる。……んん。タルトを食べに起き上がりたいけど、お布団の中が……兄ちゃんの腕の中があったかくて、動けない。
草摩/……もう一つ、訊きたい。みちるは、夢の中の間戸と同じ手段で……相模原を蘇らせたいと、考えるか? 考えるなら……。
実散/考えるなら?
草摩/俺が、斉田さんの技術と間戸の資料を全部読み解いて、全部再現してみせるぞ。
実散/え。兄ちゃん、天才なの?
草摩/どうなんだ。
実散/…………。とりあえず今は、しなくていいかな。
草摩/いいのか。
実散/したくなったら頼むよ。でも今は……。
草摩/今は?
実散/兄ちゃんに抱かれていたい。兄ちゃんが作ってくれたタルトを2人で食べたい。読み解くの、後でいいじゃん?
草摩/……ああ。食べ終わったら、もう一度どうするか訊くからな。
実散/その次は、夕飯のことを考えるので必死になっちゃうかもね。
草摩/今度は深くキスをする。シーツの中の裸のみちるを撫でる。
実散/んっ……。ぁっ……た、タルト……食べに、起きるんじゃ……?
草摩/嫌なら、やらない。でも、俺のことをとても大切にしてくれたみちると、もっと繋がりたい。
実散/……うー……。俺も……黙ってどっか行ったりしない兄ちゃんと、したい、かも。
草摩/うん。キス、いっぱいする。唇も、舌の上も、首も胸も。
実散/ううう……。な、なんだろ……昨晩もした筈なのに……なんだか、久々の気分……おかしいな。
草摩/みちる。……この数日で、色々なことを思い出したんだ。こんなに俺を大事に想ってくれるみちるのために、頑張るよ。
実散/何を……?
草摩/これから俺がお前のためにすることを。
実散/具体的に言ってくれないと困る。でも兄ちゃんの語彙に期待はできないからな〜。……けれど、それが兄ちゃんが一生懸命することなら、きっと俺はなんでも応援しちゃうよ。
草摩/ああ、応援してくれ。そして『これからの俺』も許してくれ。……大好きだ。




 21's Gun END


→弟が高校時代の先輩と再会する『劇場版 同居人』に続く

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