クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 21's gun 』 1ページ ■
2021年12月2日




 ●プリプレイ

KP/『庭師』PCでもいけるオススメできるシナリオは、『21's gun』です。タイマンシナリオで、例えば私がKPをして草摩さんがPCで参加した後、トモ天丼さんがKPでPCの実散さんと遊ぶデスピタゴラ装置ができますよ!
草摩/やります!

 『庭師』セッションを終えたKPによる推しシナリオ紹介。その直後、PC参加表明をした草摩。
 そうしてプレイヤー参加をしたセッションから……わずか1週間後。初『CoC』のKPをする花園 草摩が現れた。


草摩→KP/このセッションは、夢オチにします。
実散/夢オチ確定ですか。
KP/夢オチ確定です。先日きりあきさんがKPで『21's gun』にPC参加してきましたが、そのときも「ロストしても影響が出ないようにします」って言ってくれたので。俺もそれを採用します。初KPで下手して実散を殺したくないので。
実散/はーい、了解です。夢オチと判って挑戦するのって不思議な感覚だな〜。
KP/……めっちゃ緊張してきた。
実散/頑張れ。TRPGのGM自体は何度もやってきたでしょ。『CoC』もイケるって。
KP/GMだってもう何年もやってないんだけど。そもそもTRPGだって去年10年ぶりに再開したんだし……。
実散/イケるイケる! 先週きりあきさんと同じシナリオを遊んできたんでしょ? そのときのログを参考にやっていけばいいよ〜!
KP/頑張る……俺は頑張れる。吐きそう。
実散/が〜ん〜ば〜れ〜(笑)

 これは正義の銃口である。
 これは正義の銃口である。
 これは救済の銃口である。
 これは断罪の銃口である。

 この銃口はあなたが持ちうる天秤である。



 クトゥルフ神話TRPG 『21's Gun』
   シナリオ製作者: Balal 様 シナリオ販売サイト



 ●オープニング

 近頃、とあるニュースが世間を騒がせていた。
 『各地で頻発する不可解な死』
 捩じれた遺体が各地で発見されているのだ。経緯も死因も不明。
 被害者たちの年齢や住居、職業にも一貫性はない。警察は未だに捜査を続けている。


実散/わ〜、怖い〜。

 事件発生より1ヶ月後。実散にとある捜査に加わって欲しいと指示があった。

草摩/ところで、みちるは朝ご飯に何を食べたい?
実散/朝? 実散は朝ご飯にこだわりないタイプだよ。
草摩/先日から草摩と新しいマンションで一緒に住むようになった。だから俺が朝ご飯を作る。何食べたい?
実散/メニューを決めろときたか。えー……じゃあ、朝の負担にならない程度の軽く作れるやつ。
草摩/カボチャシチューはどうだ?
実散/カボチャシチュー! 美味しいやつだね! 昨晩から煮込んでたの?
草摩/朝5時に起きて作ったできたてほやほやだ。
実散/早起きだね!?(笑) でもできたて美味しいね! シチューで体があったまるしそれにトーストあれば完璧だよ〜!
草摩/兄弟一緒のマンションで過ごし始めた。だから、俺が飯を作る。
実散/あはは、嬉しいな〜。俺も出来るだけ協力するけど、兄ちゃんの方が手先器用だからご飯作るの美味しいし甘えちゃう〜。俺、朝はいつもコーンフレークかプロテインかベースブレッドだったからありがたいよ〜。
K草摩/シチューは鍋にいくらでもある。食べたかったら好きに食べてくれ。
実散/はーい! ……同居生活いきなり幸せか?(笑)
草摩/仕事が終わったら何食べたい?
実散/至れり尽くせりかな? 凄く幸せだがこのままだとセッションがいつまで経っても始まらないのでござる!(笑)
草摩/みちるの仕事が終わったら食べるやつ、作っておいてやる。みちるの好きな物を作る。何だ?
実散/ん……じゃあ、ご褒美っぽいの。苺のチーズプリンタルト。
草摩/タルト?
実散/いま食べたい物で思い浮かんだのがFLOのタルトだったから。……子供の頃、俺はあまり外出できなかったけど、苺狩りに行った思い出があるんだよね。
草摩/苺狩り……確かに昔、行った気がする。
実散/俺、小さい頃は自宅と病院を行き来する生活だったし旅行や遊びに行くことなんてまず無かったけど、ビニールハウスの苺狩りに連れて行ってもらったことは覚えてるんだ。そんなに体を動かさない行楽でしょ?
草摩/確かに。
実散/その帰りに食べた記憶が思い出深いから。……それに、兄ちゃんが作ってくれた苺のタルト、美味しいし。
草摩/作る。得意だ。みちるが好きなものだっていうなら、なおさら。
実散/あ、ありがと……。
草摩/俺は苺狩りに行ってもビニールハウスの仕組みや造りに夢中になって苺どころじゃなかった。
実散/わかる、兄ちゃんは機械や装置を凝視するタイプの子供でしょ(笑)
草摩/そのタルトですが冷蔵庫に冷えてます。
実散/料理番組か!? 既にもうご用意してあります!?(笑)
草摩/なので、この仕事が終わったら食べよう。……という訳で、仕事だ。ちなみにリモートワークで行なう。
実散/警察署に出勤いらずの仕事なの!? このご時世にありがてえな!?(笑)
草摩/ちゃんとシチューを食べ終えたか?
実散/うん、美味しくいただいたよ。ごちそうさま〜!
草摩/じゃあ仕事の話を始める。ここ最近不可解な死が世間を賑わせているのは知っていると思うが……。まずはこの2つの資料を見てくれ。

 ▼『捜査資料』
 今までの被害者がまとめられた資料だ。死亡日時と共に、被害者の名前や概略が載せられている。
 ・秋村美香 (26) アバター名:ミケル
  死亡推定時刻:×月××日 15時前後 (一月前)
  死亡場所:自宅の寝室
 ・和田倫也 (28)  アバター名:Rid
  死亡推定時刻:△月□□日 15時前後 (二週間前)
  死亡場所:ショッピングモールの階段
 ・鶴馬陽斗 (19) アバター名:トルハ
  死亡推定時刻:△月△△日 15時前後 (一週間前)
  死亡場所:自宅
 ・伊部仁 (32)  アバター名:JB
  死亡推定時刻:△月○○日 20時半前後(昨日)
  死亡場所:職場の休憩室

 ▼『検死結果』
 死因は内臓破裂による失血死。肝臓や腎臓などが破裂しているだけでなく、身体中の骨が折れている。まるで全身を異常な力で捩じられたかのようである。
 また、身体全体の皮膚が寄せられ、大きな一本の縦皺が身体を縦断するように現れている。

実散/……朝ご飯を食べた後にすぐこれ見せるんだね、兄ちゃん?
草摩/食べて元気つけた後じゃないとダメだろ?
実散/そりゃそうですけど……。何かな、この死因。
草摩/変な死因だよな。
実散/うん。……あれ? 1人だけょっと死亡時刻が違うんだ?
草摩/ああ。そこも変な死に方だ。
実散/変だね〜。……俺達、こういう会話を朝食後のリビングでしてるのか。
草摩/出勤しなくていいって良いよな、リモートワーク。
実散/便利な世の中になったもんだ……というか警察もリモートワークできるんだね?(笑)

 <SAN>
 資料には現場写真も何枚か貼られていたが、どれも異様なものだった。
 首から下が大きく捩じれ、四肢も異様な方向に捩じれていたのだ。まるで大きな力で絞られたかのよう。
 皆一様に目が裏返っており、顔には苦痛が刻まれている。彼らの壮絶な死を否が応でもうかがい知ってしまうだろう。SANc(0/1d2)。

実散/やっぱSANチェックするんじゃん。(ころころ)62、成功。……まあ、こういうの慣れてるからね。
KP/朝食を食べた後で良かっただろ? 次に、<アイデア>を振ることができる。
実散/(ころころ)83、失敗。ありゃりゃ?
KP/分からない……が、みちるはだいたい見当がついている。1人だけズレてる死亡時間のことが気になる。
実散/最後の1人だけ、なんか違うよね。
草摩/他殺とも病死とも言えない死に方で、正直捜査の手は進んでいなかった。だが、調べるうちに一つの共通点があるというのが分かってな。
実散/ほうほう?
KP/草摩は実散にゴーグルのようなものを差し出す。<知識>、もしくは<コンピューター>でどうぞ。
実散/<知識>で(ころころ)57、成功。

 <知識>
 昨今流行のVRゴーグルのようだ。身に着けることによって、ゲームの中にいるような没入感を得ることが出来る。
 値段が張るが、コアなゲームファンや新しい物好きの人々の間で流通し始めている。

草摩/『EDEN』というVRゲームは知っているか? 彼らはどうやら皆そのゲームをプレイしていたらしい。そこで、みちるにはそのゲームに潜入捜査をしてもらいたい。
実散/なるほど、この人達はオンセ仲間なのか! いや、オンセというかネトゲか。
草摩/今回の事件は、サポートとして開発者の一人である斉田 一(さいだ・はじめ)さんについてもらうことになっている。
実散/へえ、開発者の人が来てくれるんだ?
草摩/そろそろその斉田さんと通話する時間だ。早速だけど通話するか?
実散/リモートワークってほんと便利……(笑) お話しましょ!
KP/草摩はパソコンを操作して、ビデオチャット画面を出す。画面の向こう側では柔和そうな男性が微笑んでいた。「初めまして。私は斉田と申します。この度はどうぞよろしくお願いします」
実散/初めまして、警視庁特殊犯罪捜査零課の花園 実散と申します。本日は捜査よろしくお願いしますね。
KP/「はい、よろしくお願いします。本日はどうしても外せない会議がありまして、このような形での御挨拶になりましたことをどうかお許しください」
実散/いえいえ、あはは、ご協力していただけるだけで助かりますよ〜。
KP/「まず、あなた方にはそちらのゴーグルを使って、我が社のVRゲーム『EDEN』にログインして頂きます」
実散/はーい。
KP/「その中で捜査をして頂くだけでなく、健康状況もモニタリングします。被害者の方が何が原因で、あのような死に方になっているか分かりませんから。原因調査と健康チェックを兼ねて、という事です」
実散/そうですね……。
KP/「ですので、基本的には一人の方がゲームにログインしてもらい、その間にもう一人の方が補佐をしつつ、健康状況のモニタリングをするという形になります」
実散/なるほど。俺がゲームにログインして、兄が補佐をすると。どういうゲームなんですか?
KP/「近未来をモチーフにしたMMO RPGです。若い方がターゲットなのですが、現在は80万人の方が登録されています」
実散/繁盛してますね。その中の4人が被害者……うーん、多い方なのかな?
KP/「では、ゲームを始めてよろしいですか?」
実散/はい、早速入ってみないとなんとも言えませんもんね。

 椅子に腰を掛け、手渡されたゴーグルを装着する。
 ベルトを装着し機材の電源を入れれば、一瞬のノイズの後、黒い背景に青い文字が映し出されていった。

 LoAding...

 --- 個体データセットアップ 10%...
 個体名:登録  状態補正値:登録  バイタルチェック:グリーン
 HR PR BP RR BT:異常なし  個体ステータス設定:完了
 メモリーバックアップ起動  スキルシステム起動

 --- 個体データセットアップ:100%...
 ディスプレイ視認角度:修正完了  地形データ:ロード完了

e5908ce69c9fe5Ae8ce4BA86
e382A8e38387e383B3e8A888e794BBe38080

 All Entry Complite...

 ------ DIVE START ------


実散/なんかそれっぽいぞ! 凄いー!


 ●ポータル

 ……目を開けると、貴方はビル群の中心に立っていた。
 あちらこちらに並んだ高層ビルは現実によく似ていたが、空を見上げればオートバイや車が飛び交い、道は、地面に埋め込まれた青い光で照らされている。


実散/ほわー、凄いリアル!

 行きかう人々は皆?等身ほどの大きさになっており、シャツやパーカーなど現代的な格好の上から誰もが銃や巨大な刀を携帯していた。
 否が応でもここが現実世界ではなく、ゲームの中にいる事は理解できるだろう。


実散/……俺の子供の頃にこんなリアルな体験ができるゲームがあったら、きっと病室でのめり込んでいただろうなあ。体はベッドから動けなくてもいっぱい遊べただろうしね。
草摩/聞こえるか?
実散/あっ、兄ちゃんの声?
KP/辺りを見渡していると、耳元に付けられたインカムから声がする。
実散/うん、ちゃんと聞こえまーす。感度良好でーす。
草摩/「これから、探索者にはこのゲーム内部で調査をしてもらう。その前に操作確認をしよう」

 ▼ゲームルール説明
・このゲームはいくつかの区画に分かれています。斜線が入っている区画にはエネミー(敵)が出現する可能性があります。
・区画の移動は宣言だけで出来て構いません。
・敵と戦うためには、武器を作る必要があります。
・分からないことはKPCに伝えることで、調べてみることが可能です。
・HPが0になるとポータルに戻されます。その際にHPは全快します。ゲーム内では戦闘に負けてもデメリットはありません。
・ゲームはいつでもログアウトできます。

実散/ほう、ゲームはいつでもログアウトできる……安全だね。
草摩/「まずは……試しに武器を作ってみようか。とりあえず銃とかどうだ?」
実散/武器が作れるんだ?
KP/1d100をどうぞ。
実散/(ころころ)57です。
KP/手に力を込めると、銃が掌の上に現れる。しかし、やけに軽い。
実散/わっ、凄い! あはは、なんかカッコイイ銃が出たよ〜!
草摩/あ、ランクを上げるの忘れてた。それ失敗だ。ちょっと待っててくれ。
実散/……失敗?
KP/その声とともに、クリック音やキーボード音が聞こえた後、男性とも女性ともとれるような機械音声が響いた。

 『技能<武器錬成:70%>を追加。錬成アイテムを解放。銃・刀・グローブ・ブーツ・救急セットを錬成可能』
 『武器錬成 を追加してください』
 ▼銃:Aランク
 技能:<銃関係> ダメージ:2d10 射程:20m 
 攻撃回数:2 耐久値:10 装弾数:なし 故障ナンバー:98
 ▼救急セット:Aランク
 技能:なし 回復値:1d6+1


実散/あらら……なんか兄ちゃんが凄いことをしてる。兄ちゃん、よくそんな操作とか覚えたね?
草摩/醒ヶ井さんに教わった。
実散/醒ヶ井さん?
草摩/零課の先輩だ。中の人は、きりあきさん。俺が『21's Gun』を草摩でプレイヤー参加したときのKPCで、『庭師』のHO4だった女性だ。
実散/兄ちゃんとは同じハンドアウト仲間の人!(笑) なるほど、この世界線では零課の先輩キャラなんだね! 俺もそのうち会いたいな〜!
草摩/凄く良い女性だ。俺達より年上のお姉さんで、とても俺は助けられた。その人から色んな仕事を教わった……という設定にしている。
実散/いいねいいね、兄ちゃんの先輩か、素敵な女性だろうな〜! ……えっと、まずは俺、どうすればいいのかな?
草摩/とりあえず、良い武器を作ってくれ。1d100で70以下を出せば武器が作れる。その武器が無いとここでは戦えない。
実散/とにかく70以下を出せばいいのかな?(ころころ)29で成功したよ!
草摩/「銃:Aランク」ができた。さっきの失敗作とは段違いの性能だぞ。
実散/2d10ダメージの銃だもんね! 元々の俺の<拳銃>スキルが生かせるといいけど。
草摩/補助アイテムも作れる。初心者に回復アイテムは必須だろ? いっぱい作っておいた方がいい。醒ヶ井さんも「作りたいだけ作った方がいいですよ」とオススメしてくれた。
実散/醒ヶ井さんお墨付き……(笑) それなら信用して作ってみるかな!(ころころ)49、成功!
KP/救急セットが作れた。
実散/やったー。
草摩/いくつでもいいぞ。
実散/……じゃあ、2つ目。(ころころ)49、成功。
KP/2つ目もできた。3つ目も作る?
実散/……いくつ持っているべきなのか分かんないんだけど。
草摩/俺はいっぱい持つべきだと思う。回復アイテムはカンストするまで持つべきだ。ヒーラーとしてそう思う。
実散/そういや兄ちゃんは『庭師』のポジション的にはヒーラーなんだっけ……特攻かましてたから前線アタッカーのイメージだったよ(笑・ころころ)と思ったら、95で失敗でござる。
KP/まだ作ろう。頑張れ。
実散/裁定が甘いなあ……(笑・ころころ)43で成功。
KP/3つ目もゲット。……ちなみに武器とかアイテムがゲットしていた実散が居る場所は、「ポータル」と呼ばれている。煌びやかな光に照らし出された場所だ。
実散/ポータル。ゲームの入口か。

 ビルにはネオンの看板が立ち並び、立っている広場の床は様々な模様に移り変わっている。
 【大型のビジョン】が4基、広場の正面に設置されており活気に一役買っていた。
 ログインしたアバターはひとまず広場に現れるようで、人の出入りが激しい。
 ゲームセンターやショッピング街などの娯楽施設もこの区画に集まっている。【BAR-SidrA】という名のバーに数多の人が出入りしている様子が見える。

 ビジョンにはゲームのアップロード情報や、キャンペーン情報が流れている。また、ゲーム内の天気情報も流れている。今日は晴れのようだ。


実散/へー、こっからどこのエリアに行くか考えるんだねー。どうしよっかな〜?
KP/<アイデア>どうぞ。
実散/(ころころ)88、失敗。なんか今日は冴えない日だな。
草摩/失敗したみちるは、俺の好きなところを1つ挙げることにした。どうぞ。
実散/罰ゲームか何か?
草摩/成功しなかったからそういうルールにした。どうぞ。
実散/失敗すると羞恥プレイを強いられるシステムなの!?(笑)
草摩/どうぞ。
実散/え、えー……。ってこれ、確か斉田さんもモニタリングしてるんじゃなかったっけ!? 他人に聞かれるのでは!?
KP/失敗した実散、どうぞ。
実散/KP権限が強くない!?(笑) に、兄ちゃんの好きなとこ……その、早朝から美味しいカボチャシチューを作りつつも、こうしてちゃんと、先輩から勉強させてもらった業務を真剣に仕事してるとこ……尊敬できるし好きだよ……。

 ■BAR-SidrA■
 店内に入ると、心地の良い薄暗さと軽快なジャズが貴方を出迎えた。
 青いライトがカウンターに置かれたグラスや酒瓶を神秘的に照らし出している。人の入りはそこそこのようだ。

実散/反応は何も無いのぉ!?(笑)
KP/バーで何か聞けます。何か聞きますか?
実散/兄ちゃんさぁー!?(笑) ……えー、マスター、すみませーん。
KP/「いらっしゃいませ。何か飲んでいくかい?」
実散/まずは注文だよね……ジンジャエールを1つ。俺、人探しというか、知り合いを探しているんです。知り合いの知り合いを探すのでもいいんですが、『人探し』ってここってやってますか?
KP/「へえ。人探し。力になれるかもしれないな」
実散/本当ですか?
KP/「なんて名前の人を探してるんだい?」
実散/ミケル、Rid、トルハ、JBっていう4人です。4人の知り合いでも構いません。知っている人、いませんかね?
KP/<幸運>ロールをどうぞ。
実散/(ころころ)71、成功。ヨシ!

 <幸運>
・JB、Ridはクラン『黄金の大海』に所属していた。
・ミケル、トルハはクラン『カナン』に所属していた。
・クランとはゲーム内におけるユーザーの集まりの事。
・クランの拠点はB区画に集まっている。
・情報を求めているのなら『大型図書館』に行けば、何かあるかもしれない。

実散/クランっていうのは……ギルド的なやつかな?
KP/そう。クランはギルドって意味です。

 ▼『黄金の大海』
・中規模のクラン。クランの中では古参の部類。
・クランリーダーの名前はムース。
・少々閉鎖的で、現在は人員は募集していないようだ。
・拠点はB区画にある。
 ▼『カナン』
・大規模なクラン。
・初心者対応なども行う開放的なクランのようだ。
・人の出入りが多く、噂などの情報が集まりやすい。
・拠点はB区画にある。

KP/「とりあえず、クランを訪ねてみるのはいいんじゃないかい?」
実散/おわあ、ありがとうございます。助かります! どっちのクランも拠点はどっちもB地区にあるんだね〜。
草摩/そうだな。Bに移動するか?
実散/うん! とりあえずギルドに向かってみよう〜!


 ●B区画

 高層のビル群が立ち並んでいる区画だ。主要施設が揃っているらしく、ポータルと同じく人の出入りが激しい。
 【クラン】が集まっているほか、どうやら【大型図書館】もあるようだ。


KP/では……2つのクランと大型図書館、どれに行く?
実散/んー……クランにいきなり行くのってありなのかな?
KP/いきなり押しかけてもいいと思うし、図書館で情報を集めてからでも無駄ではない。
実散/確かに。(ころころ)ダイスで決めたら図書館に行けってお告げがあったから、まずは図書館に行くよ〜。

 ▼大型図書館
 巨大な図書スペース。ここではゲームのさまざまな情報にアクセスできるようだ。
 また、【掲示板】を閲覧できるスペースもあり、ユーザー間で情報がやり取りされている。
 ▼掲示板
 ユーザーたちのさまざまな書き込みで溢れている。
 『エリア攻略情報募集!』『パーティ募集!』などの攻略に関する話題のスレッドの他、『EDENの【七つの噂】!』『BArのマスターの新しいグラについて』などの雑談も見受けられる。

実散/中の人はMMOを碌にやってないからいまいち感覚が分からないんだよね(笑) 一時期『メイプルストーリー』と『ラグナロクオンライン』に誘われて遊んだことあるけど、ちょっと難しくて長続きしなかった……。
KP/雰囲気で遊べばいいよ。ここでは<図書館>ロールできます、どうぞ。
実散/<図書館>技能が無いや。どうしよ〜。
KP/じゃあ<知識>でいいよ。
実散/(ころころ)1、決定的成功!
KP/クリティカルだ。何かおまけ情報も付けよう。
実散/やったー! 俺はこういうの読むの好きだったのかもしれない! 攻略ウィキとか好きそう(笑)

 <図書館>
 掲示板に妙な書き込みを発見する。このスレッドに対してはコメントの書き込みは不可になっているようだ。

 【謎の文】
 投稿日時:2日前  投稿者:JB  CB-1056.786.2672

実散/ほわ? ……投稿者、JB?
草摩/JB……被害者のアバター名だな。
実散/だよね。1人だけ死亡時刻がズレてる人だ。32歳で、俺達と同い年の人……って、昨日死んだばかりの人だ! その人の書き込み?
KP/クリティカルだからここまで言おう。最後の文字列、座標だ。
実散/座標?
KP/とあるマップの位置を示す数字だな。
実散/特定のマップを示す……? 兄ちゃん、この場所に何がある?
草摩/それは行ってみないと判らん。だがC地域の場所を示しているということは確かだ。
実散/……そこに何かある? 行ってみれば判る? 兄ちゃん、教えてくれてありがとう。座標ってことが判ると俄然行きたい欲がわいてくるね。
草摩/ちなみに、みちるはなんて名前のアバター名にしてるんだ? 俺は醒ヶ井さんとログインしたとき「ソーマ」にしてた。そのまま「ミチル」でやっているのか?
実散/本名はちょっと……。うーん、じゃあ「ベリー」で。
草摩/ベリー?
実散/さっき苺タルトの話をしたから。
草摩/かわいいな。
実散/兄ちゃんのソーマが安直すぎるんだよ。思いっきり本名じゃん。
草摩/ちなみに「草摩」というキャラ名は「<医学>系のハンドアウトを貰ったからヒーラーとしてPCを作ろう」と思ったときからソーマにしようと考えていた。元は名字が「草摩」だったけど『庭師』HO1の名前が花園 実散でその双子設定になったから、名字じゃなくて名前に変更された。
実散/へー!? ソーマってあれか、インド神話の!

 ソーマ(サンスクリット語)
 ヴェーダなどのインド神話に登場する神々の飲料。なんらかの植物の液汁と考えられるが、植物学上の同定は困難である。
 また、その植物を神格化したインドの神でもある。ゾロアスター教の神酒ハオマと同起源。
 ベーダ祭式(ソーマ祭)における飲料であり、その原料となる植物、さらにその飲料を神格化した神名。神々と人間に栄養と活力を与え、寿命を伸ばし、霊感をもたらすという。


実散/うわ、医療系かつ植物要素、まんま兄ちゃんじゃん!(笑) 実散は『魔法使いの約束』のクロエがキャラのモデルで、ミチルという弟キャラもいるからそれから貰っただけだよ! 先日同輩に「病弱だから親御さんが生かすために縁起の悪い名前を付けたんだね」って言われて感動したぐらい何も考えてなかったよ!
KP/実散は名前がかわいいから良い。ここで、<幸運>ロールしてください
実散/(ころころ)79、成功。

 ▼『エデンの七つの噂』
・BAR-SidrAのマスターのレア台詞
・クラン群に現れる?!レアエネミー
・超Sアイテム「アズライールの書」
・A区画の侵入不可エリアの謎
・羽の生えた謎エネミー
・武器錬成時の特殊演出
・募集中

KP/こんなのが聞けました。情報は以上です。
実散/……ゲームのこと判らないから、何が重要なのかもさっぱり判んないなー。
草摩/そうだな。でもとりあえず座標に行くのはいいと思うぞ。勘が働いたんだしマイナスにはならない筈だ。
実散/そうだね、座標に行こう! なんか発見できて嬉しいし早速行ってみるのはアリかな!


 ●C地区

 他の区画に比べるとレトロな建物が並んでいる。古式ゆかしき商店街が広がっている場所はあれど、客はエネミーばかりのようだ。
 また、エネミーが出現する区画だからか、雑然とした装飾が多いように感じられる。


KP/座標の場所に向かおう。

 座標を目指して歩いていくと、道がどんどん狭くなっていった。ドラム缶やスチール缶などの廃棄物があちらこちらに散らばっている。
 鉄骨やパイプを超えていけば、路地裏の最奥へとたどり着いた。アイテムが乱雑に積みあがっているのが見える。


実散/なんだろ、ゴミ山なのかな……?
KP/ここでは<目星>ができます。
実散/(ころころ)70、成功。ヨシ!
KP/ゴミ箱やプラ箱や小型コンテナ等の雑物の中から、ディスクと共にテキストデータを見つけることが出来る。
実散/おっ、テキストデータだ。

 ▼『JBレポート』
 『EDEN』七不思議のひとつ、A地区の侵入不可エリアの謎について調査する。
 ゲームの容量がマップやグラフィックの割に大きすぎると思っていたが、あそこに容量を割いているんじゃないだろうか。
 あのエリアはアップデートで解禁になるんだろうが、解析班としては先んじて解析をしておきたい所だ。このテキストをレポートとして保存しておく。
 ゲームのメインサーバをハックしてみたが、無駄なデータが多いように感じる。ついでに開発の際に消し忘れたであろう、
 テキストデータを引っ張り出してくることが出来た。一部がクラッシュしているが、サルベージ出来そうだ。解読に取りかかる。
 サルベージしたものをディスクに保存しておいた。が、こいつはかなりやべえ物を掴んでしまったかもしれない。
 ムースの奴にだけ、ディスクのパスを渡したが、正直気づいて欲しくない気持ちもある。
 だからこのレポートを隠しておく。好奇心旺盛な奴か、詮索好きな奴が見つけるだろう。

実散/……これ、プレイヤーの日記か何か?
草摩/ああ、それっぽいな。
実散/『EDEN』七不思議のひとつ、A地区の侵入不可エリアねえ……?

 ▼ディスク
 ディスクを開こうとすると、『パスワードの入力をお願いします』という警告文が目の前に現れる。

実散/JBって人、何かを知りすぎて消されたのかな?
草摩/かもしれないな。その知りすぎた何かを入れたものが、パスワードが必要で見られない訳だ。
実散/ディスクのパスは……「ムースの奴に渡した」とある。ムースって人名かな?
草摩/さっき、ギルドの情報で見たぞ。
実散/えっ? ……本当だ、クラン『黄金の大海』のリーダーさんだ。うーん、リーダーさんを説得して話をしてみるとか……?
草摩/このディスクの中を知りたいならな。
実散/知りたいねえ……隠してでも探ったやつだもんねえ? 行くしかないね〜?

 そのとき、実散の耳に悲鳴と、戦闘音が届く。
 見れば少女型のアバターが、エネミーに囲まれていた。


実散/おわ?
KP/「助けてー!」と女の子が悲鳴を上げている。「誰か、助けてー!」
実散/……助けないわけにはいかないなあ! とは言っても俺は初心者なんだけどね!?
KP/助ける判定をしよう。実散はさっき作った<拳銃>で判定をどうぞ。
実散/すぐに撃退してあげよう!(ころころ)90、失敗。うふふ、初心者ダメだー!(笑)
KP/エネミーの攻撃。(ころころ)96で致命的失敗。コケた。
実散/ラッキー!

 コケたエネミーに、実散は連続射撃。
 戦闘スタートしたが……少女を襲っていたエネミーは、あっという間に撃退された。


実散/……えへへ、圧倒的だった〜! ゲームの世界だからね! 現実には無理だけど銃がバンバン撃てるのは気持ち良いよね〜。
草摩/そうそう。ゲームの中だから殺したい放題できるぞ。
実散/……ファミコンみたいな画面ならともかく、リアルなVRのゲーム世界で人殺しロールは怖いよ。兄ちゃんは……したことあるの?
草摩/無い。
実散/醒ヶ井さんとのプレイでも、殺さなかった?
草摩/俺はNPCを殺さなかった。殺さなかったから醒ヶ井さんに「殺さなくて偉いですよ!」と褒められた。これで天鴻と格にも怒られない。俺、殺してないから。褒められると思う。
実散/うんうん、今日も兄ちゃんは誰も殺さなくて偉いね〜!(笑) 醒ヶ井さんにも褒めてもらって良かったね〜! 後で「兄ちゃんがお世話になりました」って菓子折り持ってご挨拶しに行かなきゃ……。
草摩/醒ヶ井さんは凄く良い女性だぞ。綺麗だし。小さくてかわいいし。めっちゃ良い匂いしそうな立ち絵してる。
実散/絶対良い先輩だ〜! 後で本当にご挨拶しにいくね! 「兄ちゃんがいつもすみません」って!(笑) って、そうだ!? さっきの助けてちゃんはどうなった!?
KP/「助かりました!」 少女が笑顔で駆け寄ってくる。
実散/君、無事?
KP/「無事です! 助けてくれてありがとうございます! あ、私、名前はスーラって言います!」
実散/どうもどうも、俺はベリーだよ。初めての戦闘だったけど助けられて良かった〜。
KP/「初戦闘だったんですか!? 本当にありがとうございます! 私、回復アイテムを切らしちゃって……あの、お礼をしたくても今は何も持ってなくて」
実散/あはは。いいよ、気にしなくて。あそこで「助けてー!」と言われて無視するのは嫌だっただけだし。
KP/「でもお礼がしたいです! クランにまで一緒に来て頂けませんか? 私が所属してるクラン、B地区にある『黄金の大海』なんですけど
実散/…………。ラッキー。
草摩/ラッキーだな。
実散/え〜? ほんと〜? いいの〜? 黄金の大海ってちょうど行きたかったんだあ〜! ちょっとお世話になっていい?
KP/「もちろんです!」


 ●B地区

KP/「あの、ベリーさん。黄金の大海にちょうど行きたかったって言ってましたが……何か御用でもありましたか?」
実散/えーと。ムースさんって人、知ってる?
KP/「ムースさんはギルドのリーダーですよ!」
実散/実はムースさんとお話がしたかったんだ。お会いできないかな?
KP/「ムースさんにですか? 良いですよ! ちょっと待ってくださいね!」 そう言うと、彼女はどこかへと連絡を取り始める。「アポ取れました! ロビーで待ってるそうなので会いに行きましょう!」
実散/わあ、ありがとうー! スーラちゃんよろしくね〜!

 ▼黄金の大海
 ビルの中に入ると、小綺麗なロビーの光が貴方を照らす。
 受付らしきカウンターには来客対応用のNPCが設置されている。

KP/クランのリーダー、ムースが現れる。カッコイイ男性アバターだ。「スーラを助けてくれたんだってな。ありがとう。それで、俺になにか用だって?」
実散/えっと……何から話すべきやら。JBさんってご存知ですか?
KP/「JBか。何かをずっと探っていたみたいでな。顔を見せやがらねえんだ」
実散/そうなんですか……ちなみに、Ridさんって人もこのクランでのお知り合いなんでしたっけ?
KP/「アイツもクランメンバーだ。最近はずっと『エイダ』っていうアバターとよくつるんでいたな。リアルの友達らしくてな。元気にしてるんならまあ良いけどよ」
実散/エイダさん、ふむふむ。……あのですね、実はJBさんからある物を預かってまして。
KP/「ほう?」
実散/そのある物を見るためにはパスワードが必要なんです。「パスワードが判らなかったらムースさんに聞け」の一点張りなんです。そんな意地悪なこと言われちゃいましたから、ムースさんに教えてもらうしかないな〜ってお訪ねしたんですよ。ディスクのパスワード、というものに心当たりはありませんか?
KP/「ディスクのパスワード? ……ああ、一昨日JBから妙なメールが来ていてな。件名も何もなくてな。ただ一文だけ『TruthEden』と。それかもしれねえ」
実散/TruthEden。それがパスワードだと?
KP/「そうじゃないか? それ以外、思い当たるやつがない」
実散/ありがとうございます! お礼は何をしたらいいやら〜(笑)
KP/「そもそもスーラを助けてくれたお礼をしたいぐらいだ。気にすんな」
実散/そう言ってくれて嬉しいです〜! ……兄ちゃん。俺がテキトーにムースさんと話をして切り上げるから、パスワードをお願い。
草摩/了解。パスワードを入力するぞ。パスワードは『TruthEden』……と
実散/どう?
草摩/……ああ、あいた。

 ▼『エデン計画 工程記録』
 ※本データは「Iレベル」以下のスタッフには開示をしてはならない。
 想定通り登録人数は順調に伸びている。次のアップデートより当計画を発動。以降、同期を開始する為、監視体制を強化。人員を増やす予定。
 開発スタッフの一人を使いテスト。無事、現実世界のユーザーの魂と『EDEN』のアバターが同期されていることを確認。実験を次段階へと進める。
 全登録アバターの同期が完了。以降の自動同期によるデータ更新は毎週水曜15時に設定。新規アバターを同期させるためのコードを埋め込み済み。

 ▼【JBレポート-追加分】
 DB-1356.2780.1167
 興味があるなら調べてみればいい。『EDEN』から出たくなっても良いならな。

実散/……エデン計画? 兄ちゃん、追加レポートの文字列って座標だよね?
草摩/ああ、また特定のマップを示す座標だ。
実散/なんだろうね、この挑戦的なポエムは。
草摩/調べてみろだとさ。……その座標がある場所は、D区画だ。
実散/次の目的地はDか……。よし、スーラちゃんとムースさんにお礼を言って、D区画に行ってみよう!


 ●D区画

 D区画は海沿いにあるらしく、ネオンの街並みを海が映していた。大きな橋やビルが広がっており、奥には巨大な倉庫街も見えた。
 座標を目指して行けば、白く巨大な橋が貴方を出迎えた。夜の空の下、ライトアップされたそれは、どこかで見た事がある造形のように思える。


KP/<アイデア>どうぞ。
実散/(ころころ)80、失敗。なんか今日、ひらめかなさすぎじゃない?
草摩/失敗したみちるは、罰として俺の好きなところを言うこと。
実散/罰としてって言っちゃったよ!?(笑) え〜……兄ちゃんの好きなとこ。いや、改めて考えると恥ずかしい……。
草摩/言うまでDに立ち入らせませーん。
実散/横暴だ……(笑) ……涙腺、緩いところ。かわいい。好きかも。

 ▼オートバイ ルール説明
・オートバイに乗騎中は飛行したり、ビルを走り上がる事も可能になります。
・また、戦闘ラウンド中は、<回避>の代わりとして、<運転:大型バイク>振る事も可能になります。

KP/これを使ってD区間を抜けられます。
実散/無視? ノーコメント? 悦になった笑顔を見せるな!(笑) ……えっと、オートバイで行かなきゃいけないのかな?
KP/そう。大型バイクは1d100で50以下が出たら成功だ。バイクに乗ってDを走ります。このまま座標まで走っていってくれ。
実散/(ころころ)41、成功。『FF7』って感じだ〜!

 オートバイを操り、そのまま橋の柱へと飛ぶ。
 人がやっと乗れそうなその柱の上には、またディスクが一枚乗せられていた。
 ディスクを開けると中には、またテキストデータが入っていた。


実散/橋の柱の上に隠してある情報! まさにゲームっぽいね。

 ▼『エデン計画:観測記録』
 『EDEN』内部のアバターを観測中。現実とゲーム内での比較検証を続行中。
 ネットワーク上ではアバターを介しながらも互いの顔が見えないためか、現実世界のコミュニケーションと多少の差異が見受けられる。
 この差異は人によって大きく変わり、声のトーンが変わる、気遣いが多くなる他、中には性別や人格すらも変え、まるで別人を演じているものも見受けられた。
 更にこの仮想空間でも、我々が敷いたルール以外にも、一定の人数が集まると自然と決まりや暗黙の了解が定められるようだ。
 以上のように、いくつかの検証データが取れている中、ゲームユーザーが気づいていると言った様子もない。『エデン計画』は成功と言えるだろう。
 この収集したデータは我ら種族にとって、興味深い知的財産になりうるだろう。引き続き観測及び収集を続行する。収集したデータとレポートは後に送信予定。
 観測担当:斉田 一

実散/……なにこれ? 「この収集したデータは我ら種族にとって、興味深い知的財産になりうるだろう」……「魂と同期」……? 観測担当:斉田 一。
草摩/斉田さん。……朝にチャットした人の名前だな。
実散/斉田さん、関係者ってこと? この計画の?
草摩/そうみたいだな。……あとで問い質すか?
実散/今から問い質したいね。聞いてるのかな?
草摩/いや、すぐには連絡つかない。だが、連絡をつくようにしよう。待っていてくれ。
実散/助かるよ兄ちゃん。……エデン計画、なんか名前からして怖くて嫌だね。
KP/「ベリーさーん!」 スーラの声がする。
実散/うわっ!? ……えっ、スーラちゃん?
KP/「良かった、また会えて! ほら、さっきの! お礼を渡し忘れちゃったなって」
実散/えっ、お礼持ってきてくれたの!? そんな、いいのに〜!

 ★以下のアイテムを探索者の持ち物に加えてください。
 ▼救急セット:Sランク 技能:なし 回復値:HP全回復


実散/やったー。って、いいの? こんな良いアイテム!
KP/「はい、プレゼントです! 助けていただいたんだから、これぐらいのお礼はしないといけないなーって思いまして!」
実散/ありがとう、助かる! えへへ、色々君のおかげで進展してるから本当にありがたいよ〜。

 そのとき。
 ふいに。彼女のアバターが大きく揺らめいたかと思うと、まるで鱗が剥がれ落ちるように、ぼろり、ぼろりとデータが崩れていく。


実散/……ん?

 ボイスにノイズがかかる。ノイズの向こうから聞こえたのは、ぶつり、ぶつり、と何かがちぎれるような音。
 次に聞こえたのは何かが軋み、折れ、砕ける音。
 その音で想像してしまうことだろう。皮膚が裂け、血管がちぎれ、骨が肉が捩じれていく様を。
 伸ばされた手と共に貴方の目の前にメッセージが表示される。

  『た す け 』


実散/……う……?

 <SAN>
 そのメッセージを最後に、残されたのは貴方と静寂だけとなった。
 しかし、目の前で起きた不可思議な現象が、不気味な音が、貴方の背筋を撫でることだろう。SANc(1/1d3)。

実散/……えっ!? 死ん……だ!?(ころころ)86、成功。

 【現在SAN値】
 実散:90→89(1点減少)


実散/……スーラちゃん? どうしたの!?
KP/彼女が立っていた場所をよく見てみても、何もない。
実散/兄ちゃん! 今の時間は!?
草摩/……15時、ちょうどだ!
実散/15時ぴったり!? JBさん以外の死亡時間と同じ……?
草摩/すぐにスーラというアバターの方法を出す!

・スーラの本名:白井風李という女子学生であると判明する。
・死亡確認は今は取ることが出来ない。

草摩/すまん、これぐらいだ。現状で判るのはこれぐらいだ。
実散/…………。さっきのが、4名の被害者の死亡原因かな? いや、原因は……わかんないな。
草摩/他の被害者も、似たようなことが起きていた可能性があると。
実散/そうなんじゃない? 白井風李、だっけ。スーラの中の人。……これから白井風李さんの遺体があがる。そしたら、そうなるね。
草摩/……結構、いきなりだったな。
実散/何をしていたから死んだ、という当たり判定あるように見えた? 俺には「普通に話していたらいきなり」に見えたよ。
草摩/俺もだ。……ごめん、現時点ではそれ以上のことは何も言えん。
実散/……そっか。
草摩/みちる、調査を進めてくれないか。何か分かり次第すぐにみちるへ連絡する。
実散/調査って言っても……スーラちゃんのいたところには、何もないんだろ?
草摩/……提案がある。侵入不可エリアに行ってみないか?
実散/侵入不可エリア?
草摩/JBレポートは、『EDEN』七不思議のひとつ、A地区の侵入不可エリアの謎について調査していた。そこを調査してみたい。JBが調べていた一端が判るかもしれない。
実散/あ、そっか。……了解、向かおう。A地区の侵入不可エリアね、俺達は侵入できるの?
草摩/俺達は開発者側の権限も持っているからな。入れる。斉田さんのおかげだ。
実散/……その斉田さんとも、もう一度話したいねえ。
草摩/斉田さんには連絡を入れた。追って話す。