アナザーワールドSRS・リプレイ・ワンアンドアナザー
■ 番外編『友情編』 3ページ ■
2005年(仮想リプレイ公開2020年3月21日)




マァサ/どうも〜。GM、順調に進んでる〜?
GM/予想外すぎて困っている。
ユーキ/何にそんなに? ストーリーが凄く楽しいって盛り上がっているみたいだけど。
GM/ちょっとNPCが出遅れたというか、PCに食われたというか……。これこれこういう理由なんだけど……。

 ――GM、説明中。

ユーキ/えっ。それって……大事故なんじゃ?
マァサ/超事故ってるね。逆においしすぎてストップがかけられない事故じゃん。
GM/そうなんだよ、ここで「それヤメてください」って言いたくないぐらい良い展開で……でも……。
マァサ/あー……気持ちは判るけど、そういう進め方で突き進んじゃったんだからこのままでいこう。きっとプレイヤー達も楽しんでくれるって。というか正直、私は「オーウェルの中の人(鉄)が航先生と戦うセッション」をすると聞いていたんだけど、全然そんなことないね?
ユーキ/「先生と(いっしょに)戦うセッション」だから、間違いではない。
マァサ/そういう意味でリクエストしたんじゃねえだろ、あれ……(笑)


    ◆


GM/それでは後半戦、始めます。【HP】や【MP】、特技回数は回復してくれ。前半戦から時間が何年も経った設定にする。
P-27/皆さんは年を取るけど僕だけは自在に姿は変更できる設定なので、敢えてここは「あまり変化が無い」というやつにします。いつまで経っても青年のまま。そして機関から抜けて、マスターの仕事の手伝いを始めました。
鉄/俺は何年経っても変わらず教会で専業エージェントをしている。異端討伐で世界各国をまわっている。
P-27/自分は≪バベルの唄い手≫を取得していますので、通訳で活躍できますよ。
GM/何年経っても一同は友人のまま。キャシーと航とも関係は変わらないままだ。定期的に会っては交流したり、一緒に仕事をしているだろう。……だが、GP-01だけは会えないことにする。
鉄/会えないのか。
GM/会えないけど、航からは「無事治療できたよ」と言われてるよ。では月日がだいぶ経った頃……「マリアベルとサクラが日本に来ることになる」後半戦を始めよう。


 ●後半戦オープニングフェイズ1/マリアベル&サクラ

 半年前から、キャシーと音信不通になった。
 何の連絡も無かった。「また会おう」と言い、「また連絡するわ」と返された。キャシーはいつも電話をくれた。だというのに、彼女は消えてしまった。
 3ヶ月が経過した頃から、キャシーの行方を探した。アメリカ、ネバダの本住所があるという彼女の実家にも訪れた。家族や彼女の近しい友人達も、彼女がどこに行ってしまったか分からないという。
 あっという間に、半年目の歳月が経過しつつあった。

GM/マリアベルは『イベントキー:歳月』を入手する。

 ハンターという仕事上、危険な所に赴くと彼女は何度も笑い話にしていた。
 今までも数ヶ月姿を消すことは、決して珍しい話ではなかった。しかしもう半年が経過したことから、マリアベルは決心がつく。

マリアベル/……しっかりとプレゼントは保存してたわ。『イベントキー:箱』を、誰も居ない自室で開けます。

 箱は、リボンで包装された普通の箱。魔法で封印されている訳でもなければ、特殊な鍵が用いられているものでもない。
 それでもキャシーが「絶対に開けちゃダメ」と言ったものだ。何故そんなものをマリアベルに渡したかは、何十年経っても見当もつかないが。
 意を決して、マリアベルは開封する。
 ……中身は、細長いプレゼントボックスに入っているという予想通り、『十字架のネックレス』だった。

マリアベル/普通のネックレス? ……他に目新しいものはないの?
GM/十字架のネックレスにマリアベルが触れる。すると、マリアベルは一瞬意識を失った。
マリアベル/あっ。
GM/≪ソウルデバイス≫+≪パミュートメモリ≫。……[狩人]で[イレギュラー]のキャシーは、どこにでも売っていそうな普通っぽいネックレスに『ある記憶』を忍ばせていた。その記録が、ビデオテープを見たかのように脳裏に再生される。

 これは、ビデオレターだ。マリアベルは瞬時に理解する。
 彼女の実家に訪れたマリアベルは、ビデオレターの映像の場所がどこか分かった。キャシーが心から安全だと思っている、実家の自室。彼女はそこで、マリアベルに向けて話していた。

 「このSDをマリーが観ているということは、アタシがマリー達の前から姿を消したということね。
 おそらくアタシは、何者かに消されました。
 アタシはある『事件』について追っていました。その事件の犯人が、追いかけているアタシを嗅ぎつけて抹殺しにきたと思います。あいつらのやり方だ、死体も残ってないんじゃないかな?
 本当ならこの記録は……アタシが集めていた『事件』の重要証拠は……全部アタシの手で廃棄しておくべきだと分かっています。
 でも、重要なものだから、もしアタシが廃棄してしまったら……大きな事件が、闇の中に消えていくことでしょう。
 凄く悩んだけど、アタシは手放したかったけど……記録を残すことに決めました。
 現在集めた全ての証拠をこのネックレスに込めてあります。今から言う『呪文』をネックレスに向けて唱えたなら、ネックレスは違う記録を再生できるようになるでしょう。バックアップというやつです。
 ……なんでこんなものをマリーに押し付けたかって? そりゃあ、マリーがアタシにとって一番信頼できる人だから。
 アタシが無事なら二度とこのネックレスの事実に気付かないで済むし、アタシが消えたら『事件』がうやむやにならずに済む。
 もしマリーが『変なことにアタシを巻き込まないで』というなら、ネックレスをメチャクチャに壊せばSDの再生機能も失われます。

 アタシは逃げるだけ逃げて、無茶を友人に押し付ける酷い人です。ゴメン。
 でも、鉄と航の2人を見ていたら、『こういう手段もあるな』って思いついちゃって。そしたらやりたくなっちゃったの。
 アタシの遺志を継ぐか、永遠に眠らせるかは、マリーに任せます。
 以上、言い訳はおしまい。…………今まで一緒に遊んでくれてありがとね、マリー。みんなによろしく」

 最後の最後に、キャシーは手を振って別れの挨拶をした。
 この上ない、遺言だった。
 だが残念なことに、マリアベルには『呪文』を完全に聞き取れることはできなかった。≪ソウルデバイス≫を扱う[イレギュラー]の独自の知識が無かったからだろう。

マリアベル/…………。『呪文』は、聞き取れなかった……?
GM/聞き取れない。[イレギュラー]ではないマリアベルには事件の記録を再生することができない。ネックレス自体には鍵が無くて誰でも再生でいる仕組みにしてあったが、事件についてはしっかりとプロテクトがしてあるようだ。
鉄/……鉄は[イレギュラー]だ。俺なら再生できるか?
GM/鉄なら再生できる。マリアベルが知っている[イレギュラー]のクラスのキャラクターは、鉄しかいない。つまり解明するなら鉄に直接ネックレスに触れてもらうしかないと思い至る。

 マリアベルは、自室でひとり、反芻する。
 『アタシの遺志を継ぐか、永遠に眠らせるかは、マリーに任せます』
 溜息をついて、ネックレスを胸に抱いた。

 「航がいつも嘆いていたのを思い出したわ。……『君、いつも僕にそう無茶ぶりするよなぁ』って。
 文句を言いながら、航は笑っていた。だから私達も笑っていたけど……。頼られるって、嬉しいものなのよね。だからつい笑っちゃうんだわ」

 日本へ向かう。決意したマリアベルは、早かった。


    ◆


 サクラは、エルスと機関の共同開発兵器を見物しに来日していた。
 異能研究開発会社瑞鶴理化学研究所。客人に配られた専用カードキーを通し、施設に入室する。
 地方都市郊外にある専門研究施設にサクラほか数人は招かれ、広い格納庫のような空間にそびえ立つ魔導兵器『ギガース』を仰ぎ見た。

 素晴らしい発明だった。とんでもない傑作だった。
 見たら誰もが絶賛する『魔道具の新世界』が広がっていた。
 戦闘データをもとに作られた戦闘アルゴリズムが組み込まれ、完全な自律行動がとれるほか、外部からの遠隔操作も可能という無人自律行動人型兵器。
 人間を遥かに超える反応速度、人体が耐え得る以上の高G機動が可能。精密無比な攻撃力と併せて、有人機を圧倒する新兵器だ。
 これは誰もが欲しくなる。機関だけでなく多くの場所で金が動く音が、サクラにも聞こえた。

サクラ/あの会合で協力してから、たった十数年でモビルドールを造ってしまったんだろ。純粋に凄いなと称賛するしかないな。

 エルスの研究員も何人か機関に派遣し、いくつもの技術提供をしながらも製作した傑作が……既に量産体制に入っている。
 しかし、良い話ばかりではない。サクラは傑作が仕上がるまでの報告書に目を通し、眉を顰めた。
 たった十数年とはいえ、莫大な研究費が掛かっていること、少なくはない事故が発生していること、話には聞いていたが……派遣していたエルスの研究員にも被害が及んでいるとのことだった。

 魔力を帯びた大型兵器の稼働実験は、危険が付き物だ。
 科学的に説明がつく動力だけではなく、未知のエネルギーに手を出せば未知の失敗にも見舞われる。片手を上げるという簡単な動作をテストしただけでも爆発し、共に学んだ同僚達が死亡したという記録が残っていた。

 ――その数、■■人。
 少なくはない、いや、これは多すぎる……異能が絡んだ研究の為、この死の数は公に発表できない。表向きには違う死因と公表され、闇に葬られる死者の数が■■人もいる。
 あまりの多さに、時には冷酷な研究者であるサクラでさえ、眩暈を覚えた。

サクラ/……この研究には、人が死にすぎている。これは誰に文句を言ったらいいんだ……?
GM/機関の偉い人に文句を言うのなら、機関という研究施設の所長である上門所長に言うしかないな。簡潔に「ここまでの進歩に必要な犠牲だった」と返されるけど。
サクラ/……そうだな。私も言われたら、お約束のようにそう返すだろう。……ギガースのお披露目会ができるぐらい、出来上がったんだ。ここは敢えて文句は言わず……。

 格納庫でギガースの様子を眺めて溜息をついているときだった。
 試運転をしていたギガースの動きがおかしい。先ほどまでお披露目していたスムーズな動きではない。
 人型ロボットらしくないぎこちない足の動き。歪な揺れ。咄嗟にサクラは、身の危険を感じた。
 『グガアアアアアアアア』
 決められた動きを取っていたお人形だったものが、突如、暴れ出した。

 暴れた拍子に振り回した腕が、白衣の研究員を数人、押し潰す。
 途端、中央が爆発。心臓が破裂した。……胸の中が爆ぜたおかげで、ギガースは完全に機能停止する。
 ほんの1分の出来事だった。その1分で、何人が死んだだろう。

 そして、サクラは見る。
 ギガースの破裂した心臓部には――何者かがいた。十字架に架けられているように拘束されたヒトの影が。

サクラ/……上門所長は、無事だな?
GM/無事だ。一番安全な所で見ていた。サクラは、所長ほどではないが比較的安全な場所から見物していたから、被害は一切無い。蚊帳の外で暴走風景を眺めることができた。(上門所長になって)「お見苦しいところを見せしてしまいました。申し訳無い」
サクラ/無事なら、率直に訊こう。ギガースは無人自律行動兵器と聞いていたが、中にヒトが居たようだ。『有人兵器』を『無人』と書くのはいささか問題があるのでは? もちろん私の目が見間違いをした可能性があるし、それならきっぱり訂正してほしいのだが。
GM/「見間違いではないでしょう。ですがご安心を。『人間は搭乗しておりません』。中に入っているのは、エルフ族です」
サクラ/…………。そうか、回答ありがとう。
GM/どういたしまして。
サクラ/機関のど真ん中で口論する気は無い。ここではそれで流す。だが分かった。『こいつらは、そういう連中なんだ』と。

 サクラの身体は消毒し、書類を渡し、身体検査を行なわれ、カードキーを返却……面倒な施設からようやく離れられた。
 施設に車がいくつも入ってくる。ギガースを支えるためのものでも運んでいるのだろうか。それらを抜けて、サクラは機関を去った。
 さて。ホテルに到着し、ノートパソコンを開くとEメールが届いている。
 差出人はマリアベル。日本に向かうと決意した彼女から、「大事な話がある」という切り出しのメールだった。


 ●後半戦オープニングフェイズ2/鉄&P-27

 1月の深夜。怨霊を討伐する仕事帰りの車内から、子供の影が見えた。
 もう既に0時を過ぎている。だというのに、まだ5歳ぐらいの子供が夜中を歩いているだろうか。
 鉄は先ほどまで怨霊退治をしてきた。その後だから、敏感になっているのかもしれない。しかし目を凝らせば凝らすほど、あの子供が実体のあるものだと自信がつく。
 ……なら、単純に事件なのではないか?

鉄/車を降りて、子供に近づく。
P-27/その仕事の助手をしていたので、助手席に乗っていました。いきなり運転手がいなくなったので自分も追いかけますよ。
鉄/いや、車で待っていろよ。不法駐車になるだろ。
P-27/マスターは子供の相手をできる大人なんですか? 無理じゃないですか? 僕無しでしっかり交渉できる人ですか? ニコニコ。
鉄/……ちゃんと鍵を掛けてついて来い。

 深夜の、郊外の道路は鉄達以外に人影も車影も無い。
 車外から出てきた2人の姿に、子供はビクリと驚いて跳ね上がり、逃げて行った。
 しかし歩幅の差もあってか、あっという間に鉄に捕まる。その子供は……頭にタオルを乗せて、顔を隠そうとしていた。

鉄/お前! ……幽霊とかじゃないよな? 訳ありで逃げているのなら、力になってやってもいい!
GM/【理知】で交渉判定を。達成値10以下だと警戒心を抱かれ、10以上なら少し落ち着いて話をする。
鉄/(ころころ)失敗。……ルージィル、頼む。
P-27/やっぱり私が来て正解だったではないですか。(ころころ)成功です。貴方が悪い怨霊でないというのなら、私達は危害を加えませんよ。お話しましょう。ニコニコ。
GM/「あたし……逃げてきて……」 タオルで頭を隠している彼女は、冬の格好とは思えない薄着をしている。
P-27/車の中でお話をしませんか? 見知らぬ人の車に乗り込むのは怖いでしょう。信頼しろと言ってすぐ信頼してもらえるすべもありませんが。
鉄/子供を攫う変態じゃないって証明する手段なんて無いからな。……なんならすぐ、警察に通報してやってもいいんだが。とりあえず近場の自販機で、あったかい飲み物を買う。
GM/彼女は、2人を信用する。……『人ではないP-27』を見て、少し安心したからだ。
P-27/おや。見抜きましたね。

 薄着の子供は、車の後部座席に座りながらも頭にタオルを被って、あったかいココアの缶を啜る。
 大人の鉄に怯えながらも、微笑むP-27に少しだけ心を開き、たどたどしく話し始めた。
 「あたし、お父さんとお母さんと、おじいちゃんとおばあちゃんと、お姉ちゃんと弟と、みんなで住んでた」
 「鷹山村。あんまり人いないとこ。小学校まで行くの、すっごく遠い。来年から小学校、遠いけど、いっぱいバス乗って行く」
 「おととい。夕ご飯食べて、お風呂入って、出たら、人が来た。いっぱい来た」
 「お父さん。いっぱい来た、おまわりさんぽい人達に…………刺された」
 「車に乗せられて、みんな縛られてて、車の中が寒くって、ずっと車の乗せられてて……」
 「でもさっき。お母さんとお姉ちゃんが、縛ってたの、ほどいてくれて、車から、ぽーんって、あたしを投げて」
 「逃げなさいって」
 「……逃げなさいって、言われたから、逃げなきゃって、それで……何日も、何日も、ひとりで逃げてた……」

 涙ながらに語る彼女の頭から、タオルが落ちる。両耳が人より長い。妖精族・亜人であるとすぐに分かる。
 「来年から、小学校、行くようになるから、人間の姿をできるようになりなさいって、ずっとお母さんに言われてたのに」
 「それが人間と一緒に過ごしていく中で、一番大事なことだって、教わってきたのに」
 「今は怖くてできないの。隠せないの……」
 気が動転し、へんげができないのだと、鼻を啜りながら彼女は告白した。

鉄/……いっぱい人が来て、お父さんを刺した。お父さんは抵抗したから殺されたのか?
GM/そのようだ。何人かが彼女の家を来襲し、家族全員を誘拐した。トラックで運ばれているところを、決死の覚悟で母親達は彼女だけを逃がした。さて、どうする?
P-27/さて、どうしましょうね。警察に通報しますか?
GM/警察に電話を掛けるなり、彼女を警察署に連れていって保護してもらう行動をすると宣言すれば、その通りに行なおう。
鉄/……したくないな。「おまわりさんみたいな人」に、お父さんは刺されたんだろ。お巡りさん……警察官の格好をしていただけの人じゃなくて、本当に警察官が誘拐犯だったら。
P-27/警察官が誘拐犯であると言い切れませんよ。世の中、良い人もたくさんいます。
鉄/警察官が誘拐犯じゃないと言い切れない。世の中、悪人もたくさんいる。
P-27/僕は「絶対に良い人で嘘をつかなくて安全だ」という人を知っています。その人に預けてお母さん達を探して助けてもらうのはどうでしょう。
鉄/誰だそいつ。
P-27/貴方です。助けられるんじゃないですか、マスターなら。
GM/「お母さん……探してくれる? 助けてくれる……?」 父親をあっさり刺し殺した連中に、家族を連れられた。逃げろと言われたが、母親達が心配だ。助けてほしいという目で見る。
鉄/助ける。
P-27/おや、即答。「なんで俺が」とか「俺ができるのか」という葛藤すらないのですね。
鉄/助けてくれるかと言われて助けない奴がいるか。
P-27/はい、マスターは話が早くて何よりです。……貴女、いっぱいお話を聞かせてもらうことになりますよ、ご覚悟を。そして貴女のお名前は?

 「……志塚 名美。お願い……みんなを助けて……」
 ナミ。名乗った彼女は、タオルで涙をグイと拭きながら2人に向き直った。
 少なくとも車に無理矢理押し込んだ者達よりは信頼を得なければ。2人は自宅に向かう。
 すると……留守電が2件入っていた。1つはマリアベルから「日本に行くから、会って」というもの。もう1つはサクラから「日本にいるから、会え」というもの。
 信頼できる女の知り合いが同時にやって来る。鉄達にとっては、ラッキーな話だった。

P-27/……マスターはこの何年も、こうやって人を助け続けてきたんでしょうね。
鉄/人助けをしたくてやっているんじゃなくて、目についた人を助けてるだけだぞ。
P-27/そうやって助かった人が何人もいますよ、きっとね。僕もそうかもしれません。
鉄/……GP-01もその一人だといいんだが。命は助かったんだから、カウントしていいよな?
GM/それでは、後半戦ミドルフェイズを開始する。今回もAF判定を3つ用意しているので、好きに演出してもらいたい。なお、AF判定の名称をキャラ名にしているが、鉄とP-27は共に行動しているので「鉄」のシーンにはP-27も含まれているものにする。

『AF判定:マリアベルとサクラの合流』
 ・使用能力値:【体力】【理知】
 ・難易度:25

※「マリアベルとサクラが日本で再会する」演出に成功すること。
 成功した場合、とあるイベントキーを入手でくる。


『AF判定:サクラと鉄の合流』
 ・使用能力値:【理知】【幸運】
 ・難易度:25

※「サクラと鉄が日本で再会する」演出に成功すること。
 成功した場合、とあるイベントキーを入手できる。


『AF判定:鉄とマリアベルの合流』
 ・使用能力値:【体力】【意志】
 ・難易度:15

※「鉄とマリアベルが日本で再開する」演出に成功すること。
 成功した場合、クライマックスフェイズへ移行できる。
※このAF判定は『イベントキー:子供』が無ければ選択できない。



 ●ミドルフェイズ1/サクラ 〜来訪者〜

サクラ/クライマックスフェイズに行くにはイベントキーを入手しなければならないが……どっちも入手できそうだ。どちらでもいいなら、まず私から行動をしよう。
マリアベル/じゃあ、私とサクラが会うシーンをしましょうか。

『AF判定:マリアベルとサクラの合流』
 ・使用能力値:【体力】【理知】
 ・難易度:25

※「マリアベルとサクラが日本で再会する」演出に成功すること。
 成功した場合、とあるイベントキーを入手でくる。


サクラ/エルスとして機関に観察しにくるという仕事は終わった。もう本国に帰ってもいいんだが、来日するマリアベルと会う約束になったので数日ホテルで滞在することになった。
P-27/ホテル生活ですね。
サクラ/本を読んで暇を潰します。日本の漫画をたくさん買いあさる。≪特権階級≫だから金はある。
マリアベル/まさかの漫画好き?(笑)
サクラ/『スラムダンク』と『幽遊白書』を全巻読んだ。内容は≪賢者の脳髄≫で丸暗記した。これでいつでもスラダンと幽白のことなら答えられるぞ。
鉄/何に使うんだよ、その知識……(笑)
サクラ/とはいえ、エルスとしてやって来たのだから日本の有力な研究者と研究の話をする。自身も開発者として≪仮初の創造主≫で製作したアーティファクトや≪薬物調合≫の新薬について語ったりな。
GM/あ、ギガースに関する書類は機関から門外不出。まだ公の発表はされていない製品なので、外にも話すんじゃないぞ。
サクラ/話すんじゃないぞ、と言われては仕方ないな。話さないぞ〜、すっごく話したいけど話さないぞ〜。早くマリアベルが来ないかな〜。
鉄/こ、こいつ……(笑)
マリアベル/じゃあ、そろそろ私も登場しようかしら(笑) サクラに教えてもらった部屋に突撃コンコン。
サクラ/どうぞいらっしゃい、≪本能の拐引≫で結界を張ってある私だけの部屋だ。
マリアベル/あら、しっかり結界を張って警戒はしてるのね。
サクラ/何があるか分からないからな。誰かに狙われて消されたりすることもあるかもしれん。だが相手を見抜くことには≪霧暴き≫で長けているからな、私には問題無いだろう。
マリアベル/……誰かに狙われて、消される、ね。メールでは書かなかったけど……結界が張られて安全な場所だと判断したマリアベルは、ここでキャシーのことを全て話します。
サクラ/なんと。……最近キャシーから連絡が無いと思っていたが、そういう事情だったか。
マリアベル/サクラはキャシーのこと、何も知らないの?
サクラ/何も。マリアベルと知識差は無いな。私が教えられることなんて、この≪刻印増強≫で得られた魔術の知識と多少の異端退治、≪異端審問≫の知識ぐらいだ。
マリアベル/……そう……。
サクラ/……だが、話してくれてありがとう。一人で抱え込むより二人で悩んだ方が解決が早くなる。それは確かだぞ。お前もそのつもりで私を巻き込んだのだろう?
マリアベル/まあね。
サクラ/私達は……航も鉄もキャシーも皆、友人を巻き込んでいくスタイルだからな。範囲攻撃的な意味での≪法則拡大≫(笑) という訳で『現在難易度:7』になったし【体力】で振ろう。(ころころ)達成値13で成功。
鉄/実はサクラ、頭の良さの【理知】よりも【体力】の方が高いんだよな(笑)
サクラ/研究職は体力仕事だぞ(笑)
GM/コンコン。サクラのいる部屋にノックがされる。誰かがノックしてる。
サクラ/えっ。……誰だ? ホテル員だったらまず電話があるよな?
GM/ホテルの人じゃない。ちなみに今日はマリアベル以外の来訪予定は無い筈だ。
サクラ/……本当に誰だ。部屋の中から誰か確認はできるか?
GM/できる。10歳ぐらいの子供だ。
P-27/我々がオープニングで保護した名美様ですか?
GM/失礼、名美は5歳ぐらいの女の子。サクラの部屋の前にいるのは、10歳ぐらいの男の子だ。
サクラ/男子児童がこんな所に何の用だ。部屋を間違えてるのか? ……警戒はするが、普通の対応をするかのように出よう。どうした、ボク。何か用かな?
GM/「あの、サクラ・モロロロロンダットさんであってますか!」
サクラ/もろろろろんじゃないぞ、モルゲンズダットだ(笑) ……子供に見覚えは?
GM/全然無い。初対面だ。「サクラさん、先日、ずいずい研究所に来てくれましたよね。お怪我はありませんでしたか?」
サクラ/瑞鶴理化学研究所だろ(笑) それが、何か? ……まさか、10歳で研究所関係者ではないよな?
GM/「こんにちは、初めまして! 僕、上門ときわって言います。前にサクラさんが施設にいらっしゃったとき、僕もお父さんにお弁当を渡そうと来てたんです!」
マリアベル/あら、お父さん。……上門。ほー、お子さんがいたのねー?
GM/「でも、お仕事してる中で大変なコトがあったみたいで、何があったか僕は教えてもらえなかったんですけど、お弁当渡しにいけないぐらい騒ぎになっていて、出口のあたりでどうしよってウロウロしてたら、その、多分サクラさんが置いていった物があったので」
サクラ/忘れ物? 私が?
GM/「はい! 置きっ放しにしてた物です。だから僕がそれ持っておきました! それで、すぐ出て行っちゃった女の人は誰だろうって調べて、その女の人はサクラさんって名前も分かって、サクラさんはどこに泊まってるのか調べて、どの部屋にいるのか教えてもらって……」
サクラ/調べた上に教えてもらったのか。誰にだ。
GM/「自分でやりました!」 子供は、一人で全部やったと言う。調査も情報収集も交渉判定も一人でやってここまでやって来たらしい。
マリアベル/エッヘンしてそうね、凄いわー(笑)
サクラ/……はあ、そうか。で、私の忘れ物って何だ?
GM/「これです!」 カードキーを渡す。
サクラ/これは……施設に入るためのカードキーじゃないか。
GM/施設入室のためのカードキーだ。「退館時に回収します」と言われて置いたものだ。「どうぞ、置きっ放しにしていたやつです! サクラさんのものですよね?」 『イベントキー:カードキー』を入手した。
サクラ/こ、これは……。これは、えっと……?(笑)
GM/「えっ? もしかしてサクラさんのお忘れ物じゃないですか?」 いらない物だと言うなら、『イベントキー:カードキー』は没収する。
マリアベル/あ、ありがとねー。ときわくんと言ったっけ? せっかく来てくれたのだからお菓子食べるー?
GM/「はい! 僕、お菓子大好きです!」
マリアベル/……問題の種になる気がするけど、貰っておいたら何かが起こるかもしれないわ。
サクラ/その何かが厄介事のような気もするが。まあ、これから私は厄介事に首を突っ込む気満々だからな! どんとこいだ!
マリアベル/ときわくん、空港で買ったお土産のお菓子あげるわよ〜(笑) ……ときわくんのお父さんって、とっても偉い人なのかなぁ?
GM/お菓子をもぐもぐ食べながら話す。「はい! 学校でいうなら校長先生、会社でいうなら社長さんです!」
サクラ/あんな偉い人でも子供が届けた手作りお弁当を食べるんだ(笑)
GM/「食べてくれません。……お仕事が忙しすぎてあんまり帰ってきてくれないし、そんなの作らなくていいって言うし、そもそも職場に来るなって言われるし門番さんや警備員さんに追い返されます」
サクラ/それでも行くのか?(笑)
GM/「だって……お話いっぱいしたいですし、聞きたいですし」
マリアベル/あらあら……ときわくんは、お父さんが大好きなのね?
GM/「はい! 尊敬しています! 何やってるか全然知らないですけど、いっぱいお仕事していて凄い人だよって言われてますから!」 だから職場をウロウロしているという。
マリアベル/ウロウロしたついでに情報収集に成功しちゃうぐらい優秀なんて、大きくなったらお父さんの後を継げるかもしれないわよ〜(笑)
サクラ/……何も知らないけど尊敬してるというのは、なんだか複雑だな。父親がしていることを知ったら、この子はどう思うか。
マリアベル/あら、そんなにヤバイことをしてる人なの? ……マリアベル自身は内情を知らないので、そう言うしかない。
サクラ/この子の前では話さないぞ。私達も倫理観に乏しい研究者側だと思うが、非人道的な場所にこんな純粋な子供は近寄ってほしくないな。……だから、ちょっと注意しようか。

 「お父さんが君に『職場に来るな』と言っているのは、危険な目に遭ってほしくないからだよ」
 お菓子のカスが付いた口元を拭ってやりながら、サクラは優しく諭す。
 「危険な目? お父さんのお仕事は危険なものなのですか?」
 「君が施設をウロウロして日も、中は大騒ぎだっただろう? もし勝手に入っていたら、誰かにぶつかって……押し潰されて、怪我をしていたかもしれない。小さいなら尚更だ。
 君がお父さんとお話をしたい気持ちも分かるが、君に何かあったらお父さんが君とお話できなくなってしまうよ。だから、言われた通りお家で待っていなさい」

マリアベル/サクラ……凄く、先生みたい! カッコイイわ!(笑)
サクラ/私が厄介事に巻き込まれるのは大歓迎だが、ピュアな少年が被害に遭う展開はノーセンキューだからな……このGMなら大丈夫だと信じたいが(笑)
鉄/『ワンアンドアナザー』本編で容赦なくグロに進めるGMが多かったからな(笑)

 「……はい……分かりました……うううう」
 ちょっと不満気味に、少年は頬を膨らませる。その膨らんだ口に、サクラはまたお菓子を詰め込んでやった。
 美味しそうにお菓子を頬張る彼を見て笑っていると、これから危険な事件に首を突っ込むことなど、忘れてしまいそうになった。


 ●ミドルフェイズ2/鉄 〜少女の正体〜

サクラ/子供キャラは出たが、『イベントキー:子供』はゲットできなかったな。
鉄/なら、もう一つのAF判定でゲットできるんだろうな。俺とサクラの再会にいこう。

『AF判定:サクラと鉄の合流』
 ・使用能力値:【理知】【幸運】
 ・難易度:25

※「サクラと鉄が日本で再会する」演出に成功すること。
 成功した場合、とあるイベントキーを入手できる。


GM/ひとまずこのシーンではマリアベルは登場できないことにする。再会したら最後のAF判定ができないからな。なお、鉄のシーンにP-27は同行できる。
P-27/お二人はどのように会いますか?
鉄/……サクラのいるホテルに向かう。時間はさっきのシーンの直後でいいだろ。
マリアベル/マリアベルは、ときわくんをお見送りしてあげて外に出たからシーンにいないことにするわ。
GM/なら、ホテルの外で「ときわー! どこだー!」と青年が声を上げてときわを探している姿をマリアベルは発見する。どうやら保護者、兄っぽい。
マリアベル/お兄さんが探してくれていたのね〜。じゃあときわくん、お姉さんと一緒に行きましょう。シーン退場〜。
鉄/マリアベルがいなくなって15分後ぐらいに、俺達がサクラの部屋に到着。……よう、久々だな。
P-27/お久しぶりです。お元気でしょうか、サクラ様。
サクラ/おう、元気だとも。相変わらずキラキラしてニコニコしてるな、P-27。いやルージィルと呼ぶべきか。
P-27/お好きな呼び方で構いません。ですがルージィルと愛称で呼ばれた方が好感度は高くなりますよ。そしてこちらはお土産です。クッキーはきっと既にマリアベル様がお土産で持参されておられる気がしたのでお煎餅です。
サクラ/煎餅も私は好きだぞ。母方の家が日本人だからな、たまに食べた懐かしい味だ。鉄は土産は持ってきてないのか?
鉄/その煎餅が俺の土産だよ、ルージィルに持たせていただけだよ……これは、あれか、≪カバー≫になるか?(笑)
GM/……ところで。昨夜出会った名美は連れてきているのでいいよね? 預ける場所がないから、そのまま連れてきていることにしたいんだけど。
鉄/そのつもりでいた。現在時刻は?
GM/名美を保護したのが深夜1時。帰宅してサクラの留守電を聞き、昼間になってマリアベルが来て、ときわが来て……だから、15時ぐらいはどうだろう?
マリアベル/名美ちゃんを保護して、大体12時間経ったところね……。
サクラ/鉄、マリアベルもさっき来たっところなんだ。ちょっと外出しているが、すぐに戻ってくるだろう。帰ってきたら色々話し合おうじゃないか。……なんだその娘は? お前の子か?
鉄/訳アリだ。事情を話すから茶化す前によく聞け。
P-27/ではマスターがサクラ様に名美様のご説明をしている間、お茶を淹れましょう。マスターは寛いでいてください。
鉄/ああ。……なんだ、このクッキーカスだらけのテーブルは。きたねぇ(笑)
サクラ/包装フィルムが散乱してるとかかな?(笑)
鉄/≪クイックコート≫+≪インビジブルマン≫で素早く片付け、≪デュプリケイト≫+≪ヘル≫+≪インドラ≫+≪シヴァ≫+≪軍神の知恵≫相応のダメージで一掃する。
サクラ/……お前、綺麗好きか?(笑)
鉄/綺麗好きじゃなかったら異端を綺麗サッパリ片付ける仕事はしてねえだろうな。
P-27/しかし部屋が綺麗とも限らないのですよ。たまに掃除を怠って大惨事な部屋を見かけますので。
鉄/航ほどじゃねえよ。
サクラ/確かに、航は片付けができなそうな男だ。いかにも研究室を本まみれ書類まみれ薬品まみれにして過ごしていそうな研究者だからな。
P-27/サクラ様は、お部屋は綺麗なのですか?
サクラ/我が家の清掃はメイドがやっているから問題無い。
鉄/えっ、メイドがいるほどの家なのかよ……(笑)
サクラ/自慢じゃないがそういう家なのだよ、もちろん私自身、身のまわりには気遣っているがね。鉄のように便利な執事がついている訳ではないし。
鉄/執事だったのか、こいつ……(笑) 綺麗にしてやったから、名美、お前も座れ。煎餅でも食べてろ。
GM/名美はペコリとサクラにお辞儀をして、着席し、煎餅を食べる。
サクラ/……この子、人外だな。人に紛れて過ごしていた一家を誘拐……か。
鉄/マリアベルが戻ってきたらもう一度説明はする。とりあえず、その子を不安がらせないでやってくれ。……『現在難易度:11』で、【幸運】で振っておくか。(ころころ)成功。

 サクラは鉄が連れてきた女の子を見る。
 まだ小学校に上がる前の、小さな女の子だ。どこにでも居そうな普通の、日本の女児である。
 だが、魔術や霊力の知識に長けたサクラにはすぐ分かった。女児の姿が仮初であることに。
 「姿を欺いているのだな?」 少し目を凝らさなければ分からない。彼女の正体が……エルフだということには。

サクラ/エルフ。……ヨーロッパの種族だと思ったが、日本にも妖精族はいるか。
マリアベル/名美ちゃん、和エルフなのね。

 名美の正体を察したサクラは、瞬時に『ある姿』を思い出してしまう。
 ――ギガースの核になって囚われ、巨大な兵器の心臓部に仕立てられていたエルフの姿。
 そして鉄の話と結び付けてしまう。彼女の家族はどうして襲われたか、そして家族はどこへ連れて行かれたか。

GM/サクラの脳裏には、名美の家族がどこにいるか察しがついた。『イベントキー:子供』を入手できる。
サクラ/瑞鶴研究所に向かった車を私は見た。あの中に名美の家族が乗せられていた可能性がある。……察しがついてしまったが、それを鉄に話すべきか。
鉄/話さないのか?
サクラ/話したら、家族を連れ戻しに行くだろう。あの施設の者達と全面戦争になりそうだ。それは困る、が。
P-27/が?
サクラ/……面白いことにはなる。そろそろ機関と手を切りたい気がしていたんだ。それに、このまま機関を野放しにしておくと……大変なことになる気がする。少しぐらいお灸を据えることはできないかと考え始めるな(笑)
鉄/じゃあ話すのか。
サクラ/マリアベルが戻って来て、名美が休んでいるときにでも話すことにしよう。……機関全体を失くすこと、懲らしめることは難しいが。名美の家族を救ってやるぐらいなら、私達でも出来そうだからな。


 ●ミドルフェイズ3/マリアベル 〜封じた記憶〜

マリアベル/では私が戻ってきて、ラストのAF判定をするわ。ただいま〜。あ、鉄達が来てる〜!

『AF判定:鉄とマリアベルの合流』
 ・使用能力値:【体力】【意志】
 ・難易度:15

※「鉄とマリアベルが日本で再開する」演出に成功すること。
 成功した場合、クライマックスフェイズへ移行できる。
※このAF判定は『イベントキー:子供』が無ければ選択できない。


マリアベル/ときわくんをお兄さんのもとに送り届けた後に、帰り道でお菓子を追加してきた〜。これを食べると元気になる、≪生命の叫び≫!
サクラ/クッキー、煎餅ときて今度は何だ?
マリアベル/ゼリーのセットとか? それと……ホテルの部屋に入る前に改めて結界を張って、他の人が介入できなくする。≪氷河の城≫+≪テリトリー≫+≪スーパーテリトリー≫。これでもう『現在難易度:7』で判定するわ。(ころころ)【意志】で達成値11、成功。
鉄/マリアベルに、名美のことを紹介する。
P-27/では、私が名美様と共に違う場所にでも移動しましょう。名美様がいない所でマスター達だけの話をしていただきたい。……ホテルで別室、どこかありますかね?
サクラ/私が泊まる部屋だからな、いくつも部屋があるスイートルームだろう。そこに何日も泊まっているから我が家のように「あっちの部屋を使うといい」と言うぞ(笑)
GM/ならP-27と名美が移動したということで(笑) で、まずは成功したAF判定の結果……マリアベルはキャシーのネックレスを鉄に渡し、新情報を得ることができる。
マリアベル/かくかくしかじかと、私が鉄に会いたがっていた理由を話す。……ということだから、キャシーが何を記録していたか、鉄に引き出してほしいの。
鉄/構わん。
サクラ/鉄ならそう言うと思うが、私は一応止めてみるぞ。……その記録を引き出したら、いわゆる「戻れなくなる」という状態になるぞ。いいのか?
マリアベル/ここで止めて私が引くと思って?
サクラ/思わんが、キャシーもビデオレターで言っていたのだろう。選択肢を二つ出して、どちらでも任せると。一択ではないのだぞ。
マリアベル/……それでも、事件を追っかけていたキャシーが私ならと思って渡してきたんだし、遺志を継ぎたいと思うわ。
鉄/キャシーが死んだと決まった訳じゃない。姿を見せなくなっただけだ。記録を見ることで、キャシーの手がかりが掴めて会いに行けるかもしれない。……キャシーを助けに行けるヒントがあるかもしれない。
サクラ/それは、そうだな。
マリアベル/鉄の前向きさ、凄くありがたいわ。……とってもやる気が出てきた。だからお願い、記録を引き出して。
GM/【幸運】判定でファンブらなければネックレスのSDに込められたロックを解除できる。判定を。
鉄/(ころころ)……達成値14で成功。

 SDに掛けられたロックを解除成功。ネックレスに触れた者は、頭の中で直接ビデオテープを再生したかのように様々なデータを参照できるようになった。
 その場にいた鉄、マリアベル、サクラは記録を読み取る。

 ――どこかの田舎村の光景だった。
 ――都市開発が一切されていない、数百年前から文明が発展していなそうな自然が多い村の様子。
 ――田舎の村。住んでいる村人達は、白人だった。特徴的な耳の長さから、場所は西欧でエルフ達が住まう隠れ里だというのが分かる。

 ――そのエルフ達が、大勢に蹂躙される姿が映し出されていた。
 ――村の人数はたった十数名ほど。中にはエルフと共に住んでいる人間もいる。だが押し寄せてきた『彼ら』によって、エルフ達は捕獲され、抵抗した者には容赦ない死が与えられた。
 ――エルフ達が霊力の鎖で縛られ、無力にさせられて、連れて行かれる。村の資産は全て略奪されながら、一つ残らず彼らが居た痕跡を消すかのように。

鉄/(←オーウェルの中の人)……ここでオーウェルの過去設定を再現された(笑)
マリアベル/オーウェルはこの中をマクエールと共に逃げていったのよね。ちなみに国はどこって設定ある?
鉄/「エルフはゲルマン神話を起源に持つ」って書いてあったから、ノルウェー、スウェーデン、デンマークあたり……ということで、オーウェルはノルウェー人にする。
GM/GMはよくノルウェーのことは知らないのだが、とりあえずこの映像はノルウェーのとある田舎の光景ということになった(笑) ……そして月日が経った今、この村は『無い』ものとされている。もう誰も住んでいない、何も残っていないから。

 この記録は、キャシー自らが録画もの(キャシーが自ら目撃し、その記憶をデータにしたもの)である。
 キャシーはこの『人外狩り』に参加したのではない。こっそり尾行し、誰にも気付かれず監視し、息を潜めて眺めていただけだった。
 何故こんな姿を追いかけて見ていたのか、理由は簡単。

 『機関』という組織が、一部で非人道的な行為をしていると噂されていたから。その噂が本当か知りたかったからだ。
 だってキャシーは『機関』に所属している友がいた。友人が悪いことをしているなんて、信じたくなかった。
 もし上からの命令で、仕事だから仕方なく従わされているのだとしたら。記録を取り、口実を付けて、ありとあらゆる手段で助けてやりたい。
 内部から暴露できるようにしてあげなければ。そのためには、まず噂が真実か自分で確認しなければ。
 キャシーは誰かに命じられたからでもなく、そこに利益が絡んでいる訳でもなく、友人の為に自ら巻き込まれにいったのだ。
 たとえ航が暴露を望んでいなかったとしても、巻き込みにいったのだった。

マリアベル/なんだか……キャシーらしい。
サクラ/というか、我々らしいな。友人を率先的に巻き込んで解決策を無理矢理に作り出すやり方は(笑)
鉄/似た者同士なんだな、全員……。

 キャシーは巧くやった。『機関』が「研究素材の調達」という名目で、罪無き人を……「人間ではないもの」というだけで「ヒト」と見なさないものを略奪する姿を、記録に収めることができた。
 この証拠があれば、然るべき場所にこの記録を提出すれば、機関の悪行を世に知らしめることができるだろう。
 しかしキャシーはそれが出来なかった。

 ――映像の中には、強襲・略奪・虐殺行為を命じる司令官がいた。
 ――夜須庭 航、その人である。

鉄/…………。

 その姿は、普通だった。
 上の命令に嫌々従わされているのではない。ごく普通の航が映し出されていた。
 「あー、じゃあ、結界の外には誰も出さないように」
 「エルフとはいえ大人の男は力もあるし、みんな銃殺しちゃっていいよ」
 「女の人は傷付けないようにね。たくさん使える手段があるから。綺麗な状態で持ち帰らないと」
 「箱にぎゅうぎゅうに、詰められるだけ詰めて。少し多くなっちゃったかな? うーん、日本に戻る頃に圧死しちゃうかな?」
 「なら、そんなに数はいらない。適当に何人かいらないの殺していいよ」

 あまりにも普通だった。航自身がこの惨劇を望んで命じているように。
 昂ぶりもなく、悲壮感もなく。いつも鉄達と賑やかに喋っているときのような彼が……事件の中心にいた。

 ……キャシーが作り出した映像は、途中で歪んでいた。
 耳が長い、寿命が長い、魔力が高いぐらいは人間と変わらない人達が泣き叫んでいる光景を見ても歪まなかったのに。
 航が淡々と残虐な命令を下しているのを見て、涙が溢れたのだろう。だから映像が歪んでいた。

GM/キャシーは、この航を忘れることにした。現状を受けとめて、正義感で航を糾弾して罰することもできたが。キャシーは自らに≪アルターマイン≫、記憶改変を行ない、航のことを忘れることにした。だからルーマニアのときも普通に振る舞っていた。
鉄/……キャシーが航に「久しぶり」と言ったのは、久しぶりだと自ら思い込んでいたからか。
GM/しかし、とんでもない記録までは完全に廃棄することはできなかった。キャシーはマリアベルが先に観たビデオレターで言っていた通り、「悩んだ末に記録だけを残して押し付けて逃げ出した」。キャシーが消されなければ二度と公開されない記録にした。
マリアベル/そのキャシーを消したのって……。
サクラ/機関か。……航か。
鉄/…………。
GM/全ての掲示AF判定をクリアーしたので、新たなAF判定を出す。残りのプレイヤー……P-27のターンでクリアーしてくれ。

『AF判定:機関へ行く』
 ・使用能力値:【体力】【幸運】
 ・難易度:15

※「機関に行き、航と会って話をするクライマックスフェイズを作る」演出に成功すること。
 成功した場合、クライマックス戦闘へ移行できる。


GM/この「機関に行き」というのは、サクラが数日前に行った瑞鶴研究所と呼ばれる施設でOKだ。そこに航がいることにする。普通ならアポを取ってから侵入しないといけないが、カードキーがあるのでいつでも潜入できる。……ちなみに今は夜なので、夜に突入というシーンを想定していた。
鉄/今夜、今すぐ行かなくちゃいけないのか?
GM/行かなくてもいい。誘拐されて数日経つ名美の家族は遅ければ遅いほど危うくなるし、航に次会えるのはいつになるか分からないし、カードキーで解除できるロック番号が変更されて使えないカードになるかもしれない。
P-27/厳密なタイムリミットは無いけど、「早い方がいい」と念押しされましたね。
サクラ/とりあえず今やれるのは「名美の家族を救出すること」だ。……本当に救出してやりたいのならな。
鉄/サクラは「救出しなくていい」と言うのか。
サクラ/私は一つずつ確認しているだけだ。救出の義務は無い。偶然彼女を知っただけの鉄がしなければならない理由にはならない。教会のエージェント業と違って、報酬も出ない。しかし相手が強大すぎる。諦める選択肢もあるだろう。
鉄/その選択肢は無い。「お願いだ、助けて」と言われたんだから助ける。研究所にそれっぽい車があって、カードキーがあるから研究所に行けるなら、そこに行って助けて逃げるだけだ。
P-27/それで終われば良い脚本なんですがね。
マリアベル/舞台の脚本ならもう一捻りぐらいは欲しいわね。
鉄/俺は行く。名美は、この≪テリトリー≫の部屋で守ってやっていてくれ。俺が行っている間に安全を確保してやってほしい。
P-27/マスターが行くなら私も行きます。自分が居た研究所とは違うでしょうが、元々研究所生まれですので何か分かることはあるかと。
サクラ/では行こうか。私も行くぞ。……よその研究所潜入なんて楽しそうなスパイごっこ、しない訳があるか!
マリアベル/≪テリトリー≫が万全なのことを確認したら、私も行けるかしら?
GM/マリアベルが戦闘不能になるぐらい弱体化しない限り、≪テリトリー≫のホテルは敵対者に侵入されないことにしよう。
マリアベル/GMからのお墨付きも貰ったことだし、私もついて行くわ。……機関にキャシーを消されたと予想してるけど、死んでなくて確保されてる可能性もあるでしょ?
鉄/じゃあ行くぞ。……待っていろよ、名美。すぐにお母さん達を連れてくるからな。

 「……気を付けて」
 か細い名美の声を背に受け、4人は夜の研究所に向かった。