アナザーワールドSRS・リプレイ・ワンアンドアナザー
■ 番外編『友情編』 2ページ ■
2005年(仮想リプレイ公開2020年3月21日)




 ●ミドルフェイズ3/鉄 〜口論〜

鉄/重要そうな判定はサクラに任せたいので、俺が航と結界について調べよう。

『AF判定:結界解除の策』
 ・使用能力値:【理知】【幸運】
 ・難易度:25

※「航と共に、古城へ入るための森の結界を解くヒントを得る」演出に成功すること。
 成功した場合、『イベントキー:結界解除』を入手できる。


鉄/時間帯は……継続してホテルで。そろそろ就寝ってときに、航が結界を解くヒントを探して資料を読み直しているときとか。
GM/ではそれで。航とのシーンであることが大前提なので、航と同室のホテルにしよう。
マリアベル/私とサクラ……あとキャシーの3人が一緒の部屋だといいな。女子部屋で、3人も寝られる部屋だったからさっきみんなで遊べたとか(笑)
P-27/では、僕とマスターと先生の3人部屋ですかね。僕が部屋を用意されているかは分かりませんが。
鉄/用意されてるだろ。じゃあ、航がいつまで経ってもパソコンの前で何か唸ってるから声を掛ける。……隠れながら、いきなり。≪インビジブルマン≫。
GM/いきなり声を掛けたのか(笑・航になって)「わあっ、ビックリした」
鉄/さすがにこれ以上は徹夜になる。寝ろ。
GM/「はぁ。前線で戦う鉄は体力仕事だから早く休むべきだけど、僕は後衛だから。心配しなくても……」
鉄/俺は≪武闘家の血≫と≪戦の申し子≫と≪ハスター≫のおかげで体力に自信があるから問題無い。あと≪強化手術:意志≫で意識がハッキリしてるからまだ寝なくてもいい。
GM/「会合のときにコーディネーターが話していたと思うけど、異端の王城に向かうには結界をまず突破しなければならない。以前もその前も、この結界を抜けるだけで脱落者が何人も出てるんだ」
鉄/その事前準備か?
GM/「過去の報告書を照らし合わせて、この魔導書とこの古文書とこの巻物にあるこの呪文を合わせることでより安全に突破できないかと……」 云々。
鉄/≪カバー≫で航が調べてる古文書だか巻物かを奪って、自分もその作業に手伝う。
GM/「鉄、こういうのは得意だったっけ?」
鉄/得意じゃねえな。でも、何もしないよりはマシだと思ってお前はやり始めたんだろ。手伝ってやる。
GM/「鉄は戦うことが仕事で、僕はサポートなんだから、役割分担をしよう」 そんなのやらなくていい、と航は気遣う。
鉄/やっぱり俺はこういうの得意なんだ。≪オールラウンド≫でそれなりにそつなくこなすから。だからやらせろ。
GM/「得意じゃないのにやらせろってよく言えるなぁ(笑) じゃあ、何か気付いたことがあったら言ってくれ」
鉄/…………。得意なんだと嘘をついたが、いざ読んでみても、サッパリだ。
P-27/やっぱり嘘だったんですね、マスター(笑) ならば自分も細やかながらお手伝いしましょう。
GM/「何でもいいから思いついたことを言ってくれるだけで嬉しい」
鉄/思いつくも何も、俺は体力しか自慢できることないし……体力で解決できそうなアイディアは何か……。
GM/「体力。力押し……ふむ、たまにはそういう小細工無しの対策も悪くないかも……」
鉄/実は俺……≪コネ「旧き一族」≫で古い異能の家系だったってことにして、そこで昔、家にあった古文書にも似たような記載があった……って思い出したことがあったとか航に話す。航が適当に分かったっ描写でいこう。【幸運】判定でいく。(ころころ)よし、達成値12で成功。
P-27/お見事です、マスター。この場合は先生が読み解いたということになるでしょうが(笑)

 鉄がかつて暇潰しに読んだという魔術の古文書の記載と、過去の王城征圧(失敗)報告書の記述を照らし合わせる。
 それを基に打開策が浮かばないか。投げ掛けられた航は、いくつもの資料を漁り始める。
 そしてついに……航は、ある方法を思いついた。

GM/「城を守る森の結界がある状態では、異端達が住まう城には辿り着けない。どうやっても森を抜けられず、何も無い平野に戻ってきてしまう」
鉄/本当に、迷いの森なんだな……。
GM/「何も知らずに迷い込んだ敵意の無い人間だったらそれで済む。城を目指して向かう者達には容赦なく刃が襲い掛かる」 具体的なデータは、これだ。

 『イベントキー:結界解除』
 侵入者を拒むダメージバリアの詳細情報を表わすイベントキー。
 指定されたシーンに登場するキャラクター全員に対して、霊力ダメージ30D6点を与える。
 侵入者を排除するダメージロールを一度行なった後は結界が一時的に弱体化するため、数人が結界内に侵入することができる。


P-27/とんでもないダメージですね。食らったらひとたまりもない。
GM/この侵入時点で何人も被害者が出るというのが過去の報告書だ。だが確実に被害者を出せば何十人も侵入できるという。「ああ、鉄が言っていた力押しの方法で、思いついたことがある」
鉄/なんだ?
GM/「GP-01に盾になってもらうんだ。GP-01には、非常に根気強い。鉄以上に体力に自信がある子で、身体能力をいじられているんだ。だから具体的なデータで言うと……」

 ≪不屈≫
 致命傷を受けても立ち上がる[狂戦士]の主特技。
 戦闘不能になった直後に使用。戦闘不能状態から【HP】を1D6点まで回復する。


GM/「それに、僕にはこんな能力もあって……」

 ≪黄泉がえり≫
 死の一瞬を回避させる[霊媒師]の主特技。
 対象が戦闘不能になった直後に使用。戦闘不能状態から【HP】を1まで回復する。


GM/「この能力があるから、GP-01に結界のダメージを全部受けてもらってその間に主要部隊を結界内に通すんだ。これなら強化人間の命ひとつで何とかなるぞ。結界を解くことばっかり考えていたけど、突入して中の結界を張った術者を先に討伐しちゃえばいい話だし、わざわざ頭を捻って解かなくても良かったんだ」
鉄/なるほどそれは良いアイディアだな。
GM/「だろう?」
鉄/とか言うと思ったか、馬鹿。
P-27/……マスター。音も無く先生を殴りましたね。
鉄/お前、「強化人間の命ひとつで何とかなるぞ」って言ったな。GP-01を殺す気か。
GM/そういうことだ。「イタタ……でもこれは良いアイディアじゃないかな。森をじっくり調べて時間を掛けて解除なんてしてたら中の異端らが先に動き出すかもしれないし、大部隊が動くなら先手必勝で突撃した方が。それにGP-01なら命令を拒まない、この作戦の為に出陣するんだから説明すればきっと……」
鉄/他にやり方は無いのか。GP-01を犠牲にするやり方以外で思いつかないのか。
P-27/お二人。その作戦ならGP-01でなくても可能です。確かにGP-01≪不屈≫があって適役かもしれませんが、例えば先生の≪黄泉がえり≫を使えば私が犠牲になっても可能です。
鉄/……誰かを犠牲にするやり方以外で思いつかないのか。
P-27/強化人間と言えど、GP-01は人間なのでしょう? それでしたらホムンクルスの私に使った方が良いのでは?
鉄/何が良いんだ。
P-27/効率でしょうか? 人は死ねばそれっきりですが、私は死んでも補充がききますよ。
GM/「ああ、そうだね、元々P-27はこの作戦が終われば廃棄も予定されていた訳だし……」
鉄/二人とも殴る。
GM/「僕は殴られるの二度目!」(笑)
P-27/私を殴った瞬間に手が痛くなるのはマスターです。≪アンドショック≫。(ころころ)……あ、6。『バッドステータス:重圧』ですよ。
鉄/いってぇ……体がいきなり重くなった(笑) でも謝らない。他に方法は無いのかって言う。
GM/「……はぁ。異端の大群を相手にしに行く以上、大なり小なり被害者は出る。今はその被害者を最小限に食い止めるためのヒントを探してたんだ。戦闘を開始する前から戦力を削がれないようにするためにだよ。GP-01の命と僕の魔力で事足りるならいいじゃないか。この選択肢を外すとなると……君達に代償を払ってもらうことになる」
鉄/具体的には何だ。
GM/PC4人にリソースを負担してもらうことになる。……ここで用意している選択肢は、以下の2つだ。

(1)NPCに犠牲になってもらう。NPCが結界を破る贄になり、死亡。PCは無事な状態で戦闘を開始する。
(2)PCの4人に犠牲になってもらう。PCが多大な代償を払う判定を行なってもらい、【HP】と【MP】が減少した状態で戦闘を開始する。


鉄/GP-01の命を代償に結界を突破する以外の方法……具体的には何だ。
GM/30D6点をPC4人で割り振ってもらう。もし30点のダメージが出たら、4人で30点を分配する。このとき【HP】と【MP】どちらも減らして構わない。
P-27/30D6の期待値は……120点ですか。
サクラ/まあ、少なく見積もっても100点だな。4人×2つのパラメータ=8個に割り振れるから、各々15〜20点のダメージを戦闘前に受けることになる。
GM/GP-01ひとりが犠牲になったなら、PC達の数値変動は無い。なお、マリアベルが作成するモブは対人結界の対象にならないからノーカウントとする。
マリアベル/≪血の彫像≫に全部肩代わりさせる作戦はダメなのねー……。
P-27/マスターをメタ的に説得します。PCの【HP】と【MP】が減るより、NPCに負担を任せられる選択肢があるならそちらが良いと思います。
鉄/メタな考えをするなら、敢えてこの2つの選択肢を出したGMの意図を読む。用意されてるNPCを生かしておくことで何らかのメリットはあるだろう。……それに、犠牲になってもらうというのに、GP-01本人の意思をくんでないのもいただけない。
GM/GP-01なら航が命じれば「はい」って了解するだろう。
鉄/するだろうな……あの感じだと、何も考えずに了解するな。
GM/「使える駒を使わないなんて馬鹿はできないよ。鉄、優しいのも考えものじゃないかな?」
鉄/お前、俺を馬鹿って言うか。
GM/「今の鉄は、少し馬鹿馬鹿しい。これで他に手段があるならGP-01だけ死んでくれとは言わないが、そうでないんだ。僕は万全な状態の君達を異端と戦わせたい。その方が勝率が上がるから。だからGP-01に死ねと命令できるんだよ」
鉄/上がるだろうな、万全の状態なら。……でも、俺のキャラクターとしても、(1)は選びたくない。
P-27/自分は「GMが選択肢を出した」というメタ読みも理解した上で、笑顔で(2)を推しますね。自分が(1)の犠牲になっても構わないとも言います。そういう性格なので。
サクラ/後々この作戦を聞いたなら、サクラは(1)派だろうな。城を攻略が目的なんだから、万全の状態で突入したいと考える。
マリアベル/んー……私は敢えて(1)で。
鉄/なんで敢えて(1)なんだよ。
マリアベル/みんなが(1)を選択してるのに優しくて(2)を貫こうとしてる鉄が見たいから。
サクラ/あ、それ分かる。何が何でも(2)にしようとする鉄のロールが見たい(笑)
GM/期待してるぞ、PC1。……GMの意図を暴露するなら、「仲間である筈の航と『相容れない確執』を描きたいから」が一番の理由だ。
サクラ/ある意味、ここがクライマックスフェイズだな。
鉄/クライマックス、はえーよ……(笑) でも俺は……敢えて我侭で(2)に変更することはしない。
マリアベル/しないの?
鉄/プレイヤー3人が(1)を推してるのに多数決で負けてる側の意見を通すのはどうかと思うぞ。だから、違うロールにする。……航。俺が結界の犠牲になる。
GM/「えっ?」
P-27/何を言っているんです。貴方は主戦力ですよ。
鉄/(1)を、俺を犠牲にしてやると言っているんだ。
GM/「……鉄! 君は自分の任務を忘れたのか? 何度でも言うが、勝率を上げるためにたった一つの駒を切っているだけだよ。チェスのサクリファイスがそんなに気に入らないかい?」
鉄/気に入らないな。
GM/「サクリファイスはチェックメイトに繋げるためにやるんだよ。自爆じゃないんだ。君がそんな決断をして、他のみんなに迷惑が掛かるって思わないのかい? 君を主力として数えて作戦決行しようとしていたパーティーのマリーやサクラのことを考えないのかい?」
鉄/ひとりを犠牲にして進むやり方は選べない。
GM/「どっちにしろ犠牲は出る! 試作品の少年兵とベテランの君の天秤が同じだと思うのか!?」
P-27/そうです。何を考えているのですか。貴方は主戦力です。マスターが居なければ異端の王など倒せません。
鉄/俺が一人で結界の代償を受ける。決めたぞ。(1)を、俺で、実行するんだ。
GM/「我儘という問題じゃないぞ、これは!? 単なる自爆だ、自滅だ、集団自殺でもしたいのか君は!?」
鉄/それが嫌だったら何とか知恵を振り絞って他の方法を編み出すんだな。
GM/「なんっ……!」 ……あー。なんか、鉄が言いたいことが分かってきたぞ……。
P-27/…………。えーと? 私には……GMに「どっちも嫌だから違うやり方を出せー!」って駄々をこねてるようにしか見えないんですが?
サクラ/いや……その通りだよ。この人、駄々こねてるだけだ。
鉄/お互い徹夜しようぜ、航。
マリアベル/……あっ、そういうことかぁ。数分前の伏線回収をここでしちゃうのね(笑) テレビゲームなら無理だけど、TRPGで言いくるめならアリかな?


 ●ミドルフェイズ4/サクラ 〜突破〜

サクラ/夜が明けて、ドイツを出国して、ルーマニアに入国。それで噂の森に向かおう。

『AF判定:森へ突入』
 ・使用能力値:【体力】【意志】
 ・難易度:15

※「森へ突入し、無事城へ到達する」演出に成功すること。
 成功した場合、クライマックスフェイズへ移行できる。
※このAF判定は『イベントキー:結界解除』が無ければ選択できない。


サクラ/早速だけど難易度も低いし、このシーンはさくっと終わらせてしまおうか。……普通の旅行客を装う≪情報隠蔽≫は各組織の≪特権階級≫を駆使したおかげで完璧。無事一同は、件の森までやって来たのだった……。
マリアベル/結構あっという間にやって来ちゃったわね。
サクラ/さあ今日こそ≪異端審問≫のお時間だ。(ころころ)【体力】で達成値13。余裕で成功だ。
GM/では、例の森に到着している。……ちなみに、昨夜の鉄と航の決定は、全キャラ把握してるということで。
サクラ/鉄は馬鹿だな。いや、利口なのか。
マリアベル/優しくて、狡い人ねぇ。
サクラ/馬鹿が過ぎて嫌われるタイプだな。逆に私は好きなタイプだが。
マリアベル/私も。あーゆーとこ、嫌いじゃないのよね。……全キャラ把握してるってことは、GP-01も知ってるのかな? どんな顔してる?
GM/不機嫌そうだ。……自分の役目を奪われるのだから、当然。
サクラ/その自分の役目は命を差し出す生贄なのだが、そこは何も考えないのか。少年。
GM/「……元より、命を差し出す覚悟でこの任務に赴いている。大量の異端と戦って死ぬか、戦う前に盾となり死ぬか、そこに違いは無い」 淡々と話す。
マリアベル/覚悟は出来てたのね。……でも今、とっても不機嫌。
GM/「…………」 鉄を睨んでいる。
マリアベル/出番を奪われて不満、ですって。
鉄/命を投げ出すことに何の躊躇も無い馬鹿の顔なんて見ない。
P-27/マスター。ご自身も命を投げ出すことに何も躊躇も無い馬鹿ではありませんか。無鉄砲で無計画の馬鹿と言われて反論できますか。
鉄/考えからあるから言ったんだ。……で、どうだ、航。
GM/お前は本当に酷い奴だな。
鉄/『ワンアンドアナザー』本編ではもっと鬼畜で無茶を言いまくる連中が大勢いたから。それに比べたら優しいもんだろ?(笑)
GM/確かに……あれは予定に無いNPC説得とか戦闘キャンセルとか頻発する卓だったからなぁ(笑) 航は、森の前にして、結界を見て……「これなら、イケる……!」と言う。「ここを突破するのに考えられる方法は……3つ!」

(1)NPCに犠牲になってもらう。NPCが結界を破る贄になり、死亡。PCは無事な状態で戦闘を開始する。
(2)PCの4人に犠牲になってもらう。PCが多大な代償を払う判定を行なってもらい、【HP】と【MP】が減少した状態で戦闘を開始する。
(3)鉄に犠牲になってもらう。鉄が30D6点のダメージを全部引き受ける演出だが、【体力】・【反射】・【知覚】・【理知】・【意志】・【幸運】の6つの判定でそれぞれ難易度12に全部成功すればノーダメージとする。


サクラ/おお、なんか増えた。
GM/「航は追い詰められると出来る男」という設定を貰った直後に追い詰めてきたからな……難しいけど成功できないほどではない難易度を、急遽考えた。火事場の馬鹿力をここで発揮した。
P-27/……これ、一度でも判定失敗したら?
GM/死亡だよ。だって(1)の代用なんだから。ちなみに(ころころ)30D6の結果は、114点だ。
サクラ/だいたい期待値で100点以上、見事にそれぐらいだったな。食らったらひとたまりもない。
鉄/さっさとやっていくぞ。【体力】(ころころ)13成功、【反射】(ころころ)12成功、【知覚】(ころころ)15成功、【理知】(ころころ)8……失敗。
マリアベル/あっ、死ん……。
サクラ/その判定に≪悔改めよ≫! 振り直せ!
鉄/サンキュ、(ころころ)【理知】12で成功。【意志】(ころころ)15で成功。【幸運】(ころころ)12で成功。……はい、全部成功。
P-27/……生きた。
GM/たった1回の失敗と、【MP】コスト2点だけで終わっちまった。……か、簡単すぎたかな?
サクラ/いや……難易度12はなかなか難しいよ? それが1回だけ失敗って、相当運が良かったよ。
マリアベル/一度でも失敗したらキャラロストという中で、さくっと終わらせて格好良かったわよ〜。
鉄/案外なんとかなるもんだな。なんとかしてくれたのは……すぐに支援を飛ばしたサクラと、第3の選択肢を作ってくれた航のおかげだな。ありがとよ。
GM/「し、死ぬかと思ったー……鉄が生きていて良かったー……!」
サクラ/鉄が提案しなければ死ぬか半殺しかの二択だった。それを私の2点だけで留めるように航を説得して、運命を切り開いたのは、鉄の力あってのことだ。やはりお前は良い男だな。
鉄/というか、二択だって言われてそのまま二択を選ぶのが癪だっただけだ。搾れば違う選択肢を作れると思ったから。言ってみるもんだな。
GM/最初は本当に二択だけだったけど、前のシーンでピッタリな設定を作られたからなぁ……。これは特別ってことで。
P-27/サクラ様。暫しお休みください。これから本戦なのですから。
サクラ/もちろんだ。……今のうちに≪薬物調合≫で≪興奮剤≫を作っておくかな。一服一服。
P-27/そしてマスター。貴方も暫くお休みください。無事で良かったです。
鉄/お前もすぐ自分を犠牲にするとか言わないで、回避できるかどうか考えてから喋れよ。
P-27/とてもお勉強になりました。ですが、これが通用するのはそう多くないと思います。マスターもあまり先生に無茶ぶりをしないであげてください。
鉄/分かった分かった、この戦いが終わったらいっぱい労ってやるよ。……GP-01の様子は?
GM/「…………」 ここで死ななかったなら、違う戦闘に出るだけのこと。そう言うかのように、特に変化は無い。
鉄/腹が減って不機嫌なら今のうちに何か食べておけ。……適当に残しておいたパンをGP-01にやる。
GM/「…………」 受け取って、もぐもぐ。
マリアベル/食べた。
GM/貰った物は食べる。無言で食べてる。
鉄/なんだあいつ。何がそんなに不機嫌なんだ。
P-27/役目や出番を奪われたから悔しいのでしょう。心の奥ではマスターに感謝しているのではないかと。あとはマスターが生きていてほっとしているとか。
鉄/本当にそう思うか?
P-27/似たような立場である私は出番を奪われて悔しいですし、マスターに感謝してますし、マスターが生きてくれてほっとしておりますので。
鉄/そのニコニコが本物の笑顔なら嬉しがってやるよ。


 ●ミドルフェイズ5

 本当に二十世紀なのか。森を抜けた先は、異世界だった。
 古城が、夜とは違う暗闇の中にそびえ立っていた。
 それほど大きくはない。だが、見た者を圧倒する。霧の中にそびえる典型的な西洋風の古城が、能力者達を恐怖させた。

GM/キャシーが「みんな、準備は良い?」と確認を取る。
鉄/GP-01と一緒にメシも食ったし、いける。
サクラ/一人も欠けることなくここまでやって来ることができた。作成した≪興奮剤≫は私と回復役のP-27で分けておこう。
マリアベル/……この城の中に、異端の親玉がいるの?
GM/何百もの異端を率いる王がいる。彼らを撃退するべく何度も出動したが、未だに成果は得られていない。しかし今回は森に入る前から人員が減ることもない、ほぼ不意打ち状態で相手方に警戒もされずに突撃することができる。このままなら対策を取られることなく戦闘を仕掛けることができるだろう。

 一同は、古城を見上げる。
 「……出撃!」 号令と共に、大勢が駆け出した。

 ――外観だけではなく、城の中も異世界そのものだった。
 侵入者を排除すべく動き出したのは、彫刻――ガーゴイルだ。能力者の存在を察知した石像は、鳥のように羽根を羽ばたかせて舞い降りる。
 ガーゴイルが鳴き声に合わせ、一匹、また一匹と衛兵の影が現れた。知能が乏しいが、その身に魔力を備えた下級異端――レッサーデーモン。悪魔達は奇妙な声で唄いながら、戦士達に襲い掛かる。
 交戦が始まる。衛兵らと衝突した能力者達は、武器をふるい、次から次へと雑魚を蹴散らしていった。

 奥を目指して駆け出した先にも、敵は現れた。
 ゆらりと巨大な影が、地響きと共にやって来る。ドラゴンだった。天井が高いとはいえ城に納まる程度の大きさだが、それでも他とは気迫が段違い。竜が雄たけびを上げれば、戦い続けた一同は怯んでしまう。
 ドラゴンの背後にはいくつもの頭を持つ獅子も現れた。襲撃を察知した魔物が、次々とやって来ている。

GM/戦いながら先を進むキャシーがニヤリと笑いながら言う。「こいつら、迫力満点だけど全然統率が取れてない。人間の目から見ても焦っているのが判るね!」

 奇襲が成功し、人間側に分があるということだった。
 現に部隊は大きな損傷を受けることなく、魔物を一掃していくことができた。恐ろしい筈の衛兵も、悪魔も、ドラゴンや合成獣ですら蹴散らしていく。
 まだ誰も死なせずに戦えている。このままでいけば、今まで以上の成果を上げられる。
 異端の王の討伐も、この調子ならきっと――。

GM/そのとき、前を行く戦士Aの頭が吹っ飛んだ。
マリアベル/あっ。
走っていた戦士Aの首が飛び、体だけが走り抜け、無様に転げ落ちた。それに気付いた戦士Bは立ち止まるが、いつの間にか生首がポーンと飛んだ。
サクラ/……ボスが来たか!
鉄/……犠牲者ゼロの雰囲気を出しておきながら、いきなり殺しやがった。腹立つ。
GM/ボスが来たか……いや、まだボスではない。奴は中ボスで……執事のような格好をした悪魔が、光速の手刀で首を落としただけ。「王よ、このような目覚めになってしまい、申し訳ございません。どうか彼らに……」 転げ落ちた頭を拾った悪魔が、奥に居るとある人物に、血が滴る首を捧げた。

 ――古城の奥に、その人物はいた。
 王らしく椅子に座って待っている訳でもなく、分かりやすい王冠を被っているのでもなく、悪魔に王と呼ばれたモノは……一見、人間と変わらぬ姿をした男は……『眠たそうな目で立っていた』。

マリアベル/なんで眠たそうな目?
GM/不意打ちに成功したから起きたてで寝坊助。「今から戦えば勝算がある!」という演出だ。

 王は、若い男に見えた。燃えるような赤い髪や、生気が無い肌、悪魔に跪かれてる姿を見なければ対話ができる人間に見えただろう。
 眠たそうな目で、城の広間で立ち尽くしている……なんて恰好の的……そう思ったのも束の間。
 捧げられた首の血を、男は啜る。
 その姿はまさしく悪しき人外。人を食らって害する異端に他ならない。
 異端の王が、こちらを向いた。
 その視界に入った者達は、自ら持っていた武器を、首に突き立てた。

 魔王に見つめられた。ただそれだけで、何人もが死を選んだのだ。

GM/彼がこちらを見た途端、皆が自害を始める。一瞬で形勢は逆転した。
サクラ/魅了の異能でも使ったか!?
マリアベル/おそらくは。……対話はできない、言葉でどうこうできる相手じゃないってハッキリ分かっちゃったわね。
P-27/ああ、これは確かに……問答無用で城に突撃して討伐しなければならない異端ですね。目を見ただけで死ぬような相手を放っておくことはできないでしょう。
鉄/……これ以上、殺させない。さっさと、やるぞ。

【行動値】
 魔王:28
 鉄:18
 サクラ:15
 ドラゴン:15
 悪魔:14
 P-27:13
 マリアベル:13
 ガーゴイル×2:13


【マップ】
 エンゲージ1:鉄、P-27、マリアベル、サクラ
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:ガーゴイルA、ガーゴイルB
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:ドラゴン
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:悪魔
 (↑20メートル離れている↓)
 エンゲージ5:魔王


サクラ/ラスボスまで遠すぎる! お城でかいな!?
P-27/そりゃあ、お城ですからね。……ここであのイベントキーが活躍する訳ですか。
鉄/ああ、『イベントキー:戦場の絆』を使えば好きなエンゲージに移動できる。すぐに使えば叩き込める……が、射程を気にした戦いになるな。
GM/ちなみに選べるエンゲージは、エンゲージ1〜5のうちになる。自由に独立エンゲージを形成できる訳ではない。そしてPC達は、以下のボーナスを得ることができる。

 『イベントキー:航』
 1シナリオに1回まで、[霊媒師]の≪黄泉がえり≫を使用可能。
 『イベントキー:キャシー』
 1シナリオに1回まで、[狩人]の≪一網打尽≫を使用可能。
 『イベントキー:GP-01』
 GP-01が庇うという描写により、100点までのダメージ軽減が可能。どれぐらいダメージを庇わせるかはPCが自由に数値を設定してよい。


P-27/1回までの戦闘不能回避と、おそらくガーゴイルを瞬殺できたであろう特技と……相当強いダメージコントロール方法ですね。
サクラ/GP-01生かしたことによって特典が付いたな。
マリアベル/んー……エンゲージどうしよう、誰かしら隣接はしなくちゃいけないのね……。特技の射程を考えると、色々考えるけど、やっぱり……。

【マップ】
 エンゲージ1:なし
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:ガーゴイルA、ガーゴイルB
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:ドラゴン
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:悪魔、P-27
 (↑20メートル離れている↓)
 エンゲージ5:魔王、鉄、マリアベル、サクラ


P-27/全員が同一になるよりは良いと思います。これでいきましょう。
GM/第1ラウンド、セットアッププロセス。【行動値】最速の、異端の王から。特別な≪瞬間思考≫+≪傲慢なる檻≫+≪魅了の魔眼≫を使用。エンゲージ5にいる全員を魅了する。(ころころ)命中21。
鉄/(ころころ)回避15、失敗。
マリアベル/(ころころ)回避16、失敗。
サクラ/(ころころ)回避13、失敗。
GM/全員回避失敗なら、【MP】を減らして、それにより【MP】0になったら気絶になる。
サクラ/……鉄に対して≪叱咤激励≫! 達成値を17にする!
マリアベル/サクラの≪叱咤激励≫に≪大地の勅命≫! 効果に+10して、鉄の回避を27にする!
GM/鉄だけ避けた。ではサクラとマリアベルに……(ころころ)49点の【MP】ダメージ。0になったら気絶する。
サクラ/まあ、余裕でするな。最大【MP】35点だし。
マリアベル/しちゃうね……こっちも【MP】44点だから。
P-27/ダメージ軽減すれば生きられますか? それならこちらの≪念動障壁≫が……。
サクラ/……GM、一斉攻撃だけど、2人分のダメージをGP-01に肩代わりしてもらうことは可能?
GM/可能としよう。49×2=98点のダメージをGP-01が受けることになるけど。
サクラ/……初手でPCが2人落ちるより、このターン生き残る方を考えよう! という訳で、『イベントキー:GP-01』を使用させてもらう!
マリアベル/お願い、庇って!
GM/えー……ゲーム的にはOKなんだけど、普通に物理的な攻撃を身を挺して庇うことを前提にしていたから、どういう演出にしようか。結構迷うな(笑)

 この戦いの中央である異端の王へと駆け寄った鉄とマリアベルとサクラ。
 ゆらりと魔王の視線が標的を定める。その眼に襲われた2人の背筋がゾクリと震えた。凍るような銀色の瞳を見た瞬間、体中の血が全て止まる。
 「気を確かに!」 少年の声に、2人はハッとする。なんとかそれで正気を取り戻した。だが。

GM/無感情に視線を動かしているだけだった異端の王……魔王は、マリアベルとサクラを庇った少年の目の前に立っていた。
鉄/あっ……。

 少年は戦うための刀を手に、迎え討とうとする。
 その暇すら与えない。いつの間にか魔王は少年の目の前にいて、いつの間にか感情の無い目で見下ろしていて。
 いつの間にか手にしていた刀を払い落とし、いつの間にか……GP-01を抱きかかえていた。

 そしていつの間にか、吸血鬼の牙が食らいついている。
 ザクリと鋭い牙が少年の胸を襲い、彼の大半を奪っていった。

GM/GP-01の100点あった生命力のうち98点を奪われる。……残り2点も有効活用してくれ。

 サクラはセットアップに≪本能の拐引≫を使用し、全員をダメージアップ。
 悪魔は≪傲慢の檻≫で範囲化、P-27も≪空間知識≫で範囲を拡大、マリアベルは≪大地の使徒≫で鉄を強化し、ガーゴイル2体は2体とも≪本能の拐引≫で味方全員のダメージを上昇させた。

GM/魔王のメインプロセスだ。≪毒の魔弾≫+≪狂気の世界≫+≪合成:浄化の一撃+落下する光≫でPC4人全員を攻撃。(ころころ)命中17だ。
一同/(ころころ)回避失敗。
鉄/≪英雄の宣言≫を使用! その攻撃を全て俺一人で受ける!
マリアベル/鉄一人への攻撃に≪大地の守護者≫でダメージ0にする!

 少年を食らい、血肉を啜る魔王は……その体をポイと捨てると、手に禍々しい大剣が握っていた。
 炎を纏った剣が踊る。剣から放たれた衝撃波が全員を襲うが、鉄の剣が炎の風を全て切り裂いてみせた。

鉄/魔王に対して≪シヴァ≫+≪軍神の知恵≫+≪両手武器≫+≪インドラ≫で攻撃! ≪ソウルデバイス≫+≪マックスウェル≫でダイス1つを5で固定する!(ころころ)出目が5と3で、命中20!
GM/回避。(ころころ)回避は失敗。ダメージをくれ。
鉄/ダメージロール!(ころころ)物理ダメージ、85点!
サクラ/さすがの高さだ。私は≪タナトスの足枷≫+≪闇の勇姿≫+≪魔法剣≫で魔王に命中判定! 【防御点】を0にしてから(ころころ)命中21!
GM/回避。(ころころ)回避、失敗。
サクラ/(ころころ)26点の防御無視攻撃。食らったら転倒と麻痺が入るぞ。ふふん、悪くないダメージだろう?
GM/≪EP:バステ無効≫により転倒と麻痺は無効化させる。だけど、装甲貫通は痛いな。次に、ドラゴンが10メートル先のエンゲージ4にいるP-27に、≪天空の羽≫+≪浄化の一撃≫で飛び跳ねながら加速して攻撃!

 P-27は回避するが、失敗。ダメージ霊力14点を受けたところで≪念動障壁≫でダメージ11点を軽減した。
 悪魔は≪強化術式≫+≪押し寄せる闇≫で全員を攻撃。全員回避失敗し、ダメージは17点だったが、P-27のダメージ軽減で10点軽減した。
 P-27は待機を選択。マリアベルは≪血のいざない≫でモブを1体作成。ガーゴイル2体はそれぞれ何もしなかったため、P-27が念のために全員の【HP】を15点、全回復した。

GM/クリンナッププロセスになったらトラップが発動。≪オリジナルEP:歪む次元≫、【知覚】判定で難易度11に失敗すると現在いるエンゲージを変更されてしまう罠だ。
マリアベル/わあ!? それキッツイ……!

 【知覚】判定の結果、マリアベルとサクラとモブが失敗してしまう。そしてエンゲージがランダムで変更され……。

GM/サクラの防御無視≪魔法剣≫は「射程:至近」だから魔王のいるエンゲージ5から離れると、きついことになるな……あ。

【マップ】
 エンゲージ1:サクラ
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:ガーゴイルA、ガーゴイルB
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:ドラゴン、マリアベル
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:悪魔、P-27、モブ
 (↑20メートル離れている↓)
 エンゲージ5:魔王、鉄


サクラ/一番遠くに飛ばされたー!? なんだと、私が活躍できないではないか!?
GM/ガーゴイルが喜んでサクラの方を見ている。餌が来たからそっちに行く予定だ。
P-27/……それは、逆に幸運と考えましょう。
マリアベル/そうね……キャシーを巧く使って!

 第2ラウンドセットアッププロセス。ようしゃなく、魔王は……目の前にいる鉄を睨みつける。

GM/≪魅了の魔眼≫発動。(ころころ)命中21で、鉄の行動を奪おうとする。
鉄/(ころころ)……回避18! 避けられない!
サクラ/いいや、ここからでも私のアドバイスは届く! ≪悔改めよ≫、振り直しだ!
鉄/(ころころ)あ、1ゾロでファンブル。
サクラ/おいいいいい!?(笑) 届けよ私の声ー!
P-27/オートアクションで≪未来の吐息≫を使用。マスターの行為判定をクリティカルにします。……マスターをお守りします。

 セットアップにP-27は≪空間知識≫、マリアベルは≪大地の使徒≫。
 悪魔は≪縛鎖≫を鉄に使用し、【行動値】を下げようとする。悪魔と鉄との【体力】対抗判定の結果……。

鉄/(ころころ)げっ!? また1ゾロファンブル!?
マリアベル/鉄、苦戦してる!?
GM/≪縛鎖≫はキツイ特技だぞ。(ころころ)鉄の【行動値】を9も下げる。

【行動値】
 魔王:28
 ドラゴン:20(≪天空の羽≫により【行動値】が上昇)
 サクラ:15
 悪魔:14
 P-27:13
 マリアベル:13
 ガーゴイル×2:13
 鉄:9(≪縛鎖≫により【行動値】が減少)


鉄/やべえ、鈍足になっちまった……。
P-27/これにより【移動力】も減少します。極力、魔王のいるエンゲージから離れたくないですね。
GM/では2ラウンド目の魔王のメインプロセスだ。1ラウンド目と同じ、≪毒の魔弾≫+≪狂気の世界≫+≪合成:浄化の一撃+落下する光≫でPC4人全員を攻撃。(ころころ)命中19だ。
サクラ/(ころころ)よっし、回避クリティカル!
マリアベル/(ころころ)他の3人は回避失敗……。
鉄/……≪英雄の宣言≫2回目を使用! 俺1人で3人分の【HP】ダメージ減少を受け持つ……が。
GM/(ころころ)鉄に、霊力ダメージ47点。
マリアベル/≪念動障壁≫に≪大地の勅命≫を宣言!
P-27/≪念動障壁≫!(ころころ)22点軽減してください、マスター!
鉄/【物理防御点】は10点あるが、【霊力防御点】は3点なので……25点軽減。【HP】23点でまだまだ生きている。
GM/だが、バステ重圧と毒がかかる。重圧は特技使用不可なのでマイナー解除宣言をしないと攻撃ができないぞ。
サクラ/全体で重圧……厄介な敵だ。

 ドラゴンが≪幻惑の衣≫+≪浄化の一撃≫で、射程内にいるマリアベルとP-27に対して攻撃。
 命中し、それぞれ34点の霊力ダメージのブレスを浴びせる。≪念動障壁≫で9点ダメージ軽減をして、2人ともなんとか【HP】1桁で持ちこたえた。
 サクラは待機を宣言。悪魔が≪強化術式≫+≪押し寄せる闇≫で全員を攻撃。全員回避失敗し、P-27のダメージ軽減もあり全員7点ダメージまで減らすが……。

マリアベル/残り【HP】4点でーす!
P-27/……私はダメージを受けて、【HP】0で、倒れます。
マリアベル/大丈夫! 私が作ったホムンクルスモブがP-27を庇う! だからP-27は死なない! でもってマリアベルはこのラウンドでもモブを≪血のいざない≫で作るわ。
GM/ワープした先が運良くP-27のいたエンゲージで良かった。モブ使い捨て戦法が生きたな。

 P-27は≪興奮剤≫+令呪回復で全員の【MP】を24点回復、【HP】を14点回復し、即死圏内から脱出する。
 ガーゴイル2体はサクラがいるエンゲージ1に移動。メジャーで≪覇魔矢≫+≪凶々しき武器≫で攻撃をし、どちらも命中したサクラは……。

GM/ダメージは13点と10点だ。
サクラ/……私にダメージ軽減はいらない! このまま受ける! 【MP】を温存しておけ!
GM/ガーゴイルに噛まれたサクラは毒を受けてしまった。【HP】毎ラウンド1D6点減少はバステ回復特技を使うまで続くから覚えておいてくれ。
鉄/……俺の番は、まずマイナーで重圧を解除。膝をついていたが、立ち上がって……魔王に向き直る。

 鉄は≪ヘル≫+≪両手武器≫+≪インドラ≫で攻撃。≪ソウルデバイス≫+≪マックスウェル≫で命中を確実に上昇させながら、魔王へ命中させようとする。

鉄/命中は!(ころころ)よし、19!
GM/魔王が回避判定……(ころころ)出目が1と4だったので、≪審判:悪≫を使用し、ファンブル値を5にする。よって回避ファンブル化。≪上級異能力≫を使用。
サクラ/……しまった!?

 マリアベルのセットアップサポートも加えた状態で、叩き出したダメージは、物理ダメージ62点+麻痺。

GM/やっぱり鉄のダメージは重いな! では、≪上級異能力≫によって魔王がメインプロセスを得る。
鉄/くそ……反撃してきた……。
GM/ラウンド継続特技の効果を保ったまま、新たに≪力強き隣人≫を使用して攻撃。(ころころ)全員に命中19で当ててみせる。
一同/(ころころ)回避失敗。
鉄/ダメージがひどいカウンターだ!? ……最後の≪英雄の宣言≫を使用! 全員を庇う!
GM/(ころころ)ダメージは霊力60点!
鉄/耐えられない! ……航ッ!

 「僕が鉄を守る!」 航が霊能力により、≪黄泉がえり≫を発動させる。それにより戦闘不能から【HP】1点で鉄は立ち上がった。
 サクラのターンで、近寄って来たガーゴイルに対して≪法則拡大≫+≪魔法剣≫で攻撃を宣言。そのとき……。

サクラ/キャシー! ザコども一掃の援護を任せぞ!

 「まかせて! ……一斉射撃ッ! ってぇー!」 無数の弓矢が発射され、≪一網打尽≫。
 1点以上ダメージが入ったガーゴイル2体は、即死した。

マリアベル/サクラもキャシーもかっこいいー! 凄いわー!
サクラ/あ、クリンナップになったらバッドステータス毒の効果でダメージ受けるんだっけ? ……【HP】1の鉄も?
GM/いや、航が戦闘不能から蘇生特技を使ったのでバッドステータスは全解除になってるよ。
鉄/ありがとな、航……もし毒の1D6点のダメージを受けたらまた戦闘不能になるところだった(笑)

 サクラは2点の毒ダメージを受けたが、まだいけると次のラウンド目に突入。そしてトラップが発動した結果……。

サクラ/【知覚】判定に成功……。いや!? これ、成功してはいけない判定だったか!?
P-27/……【移動力】がどんなに高くても、エンゲージ1とエンゲージ50メートル差がありますからね。このままだと魔王に攻撃できません。
鉄/(ころころ)うおっ!? 【知覚】判定に失敗してしまった……どこに飛ばされるんだ!?

【マップ】
 エンゲージ1:サクラ、P-27
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:なし
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:ドラゴン、マリアベル、モブ
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:悪魔、鉄
 (↑20メートル離れている↓)
 エンゲージ5:魔王


マリアベル/……最悪なエンゲージ配置になってしまった。
鉄/い、いや……俺の【移動力】は23メートルだからマイナー移動をすれば魔王には届く……。
P-27/いえ、マスター……シーン間【行動値】減少でマスターは今【移動力】が14メートルしかありません。マイナー移動をしても攻撃が届かないのですよ。
鉄/あ、本当だ!? このラウンドは攻撃ができない……!
GM/それでも魔王の≪魅了の魔眼≫は続く。対象は……もちろん鉄だ。(ころころ)命中18。
鉄/避けさせてくれ!(ころころ)……回避15!
サクラ/≪異端審問≫と≪叱咤激励≫が届けば回避できるのに……射程が足りない!
GM/でもこっちも減少率は3ラウンド目で減っている。(ころころ)鉄の【MP】に……ダメージ25点。
P-27/≪念動障壁≫をさせてください! ……ああっ!? この位置だと、30メートル先だから、≪空間知識≫使用前の≪念動障壁≫が不可能か!?
GM/軽減不可なので、そのまま【MP】を減らしてくれ。
鉄/……【MP】マイナス1で、倒れる。一番近くてダメージを叩き出される俺が倒れた。
P-27/……回復しに行くには、自分が「射程:至近」に行くしかありませんね。ですが……。
サクラ/そのP-27は、一番遠いエンゲージにいる。同じく【MP】回復手段を持っている私も遠い。
GM/回復しに行く前に、魔王がメインプロセスで鉄の【HP】を減らしに行く。そして余ったドラゴンがトドメを刺す。
鉄/俺は、死ぬ。
マリアベル/……死んじゃうわねー。射程が届かないんじゃ、軽減は不可能だし、モブも庇いに行けないしー……。
サクラ/……鉄には死亡してもらい、このラウンドを凌いで、私が運良く魔王を倒せる射程まで近づくラウンドを待つか。
鉄/それがいい。俺が死亡するまでで魔王とドラゴンの手番を潰せる。ガーゴイルはサクラとキャシーのおかげで倒せたんだから、このターンはみんなは回復に専念してくれ。
マリアベル/……そうさせてもらうわ……。
P-27/…………。GP-01に、マスターを庇ってもらいましょう。あと2点ダメージを軽減できますよね。ならマスターは【MP】1点で残るので気絶にならないのでは?
マリアベル/あっ。
サクラ/それだ!
鉄/1点だけ軽減……だと【MP】ピッタリ0でダメなのか。2点軽減すれば……生き残る?
GM/生き残る。GP-01はピッタリ100点のダメージを受けるので、死亡する。
鉄/やっぱり死亡するのか!?
GM/……と思ったけど、【HP】0じゃない100点消費だから、死亡とはちょっと違うんだよな? ダメージはダメージでもGMの想定外の状態なので、この戦闘が終了できたら「死亡じゃないかもしれない判定」をさせてもいいかな?
鉄/頼む!
マリアベル/ぜひそれで!
GM/……禍々しい大剣を構え、時には炎を纏いながら鉄を追い込む魔王。その傍らには、共に鉄と戦う強化人間の姿が。
鉄/……お前、ずっと傍にいて戦ってくれてたのか。
GM/魔王は、鉄を殺すべく睨みつけて剣をふるう……その前に、少年が躍り出た。

 前に出て庇った。そう鉄が思った瞬間に、既に血を吸われ、それでも満身創痍で立ち上がり戦い続けていた少年は……崩れ落ちる。
 異端の王が何をしたのか、どれだけ時間が経っても目視はできなかった。
 男の足元に転がったままの少年は、動かない。ただ鉄が分かることは――「鉄を殺させないために彼が犠牲になった」のだという事実だった。

 既に魔王に血を吸われ、肉を食われ、それでも驚異的な強化を施された肉体で戦場に立っていた彼が、ついに……動かなくなってしまった。
 正気を失いかけ、叫び声を上げながら、鉄は武器を握り締める。
 ……第3ラウンド、クリンナッププロセス開始。

GM/魔王はゆっくりと、鉄に……いや、ここにいる全員に平等に死を与えるべく、狙いを定める。(ころころ)んんんん!? 1ゾロファンブル!?
マリアベル/やったー!
サクラ/よっしゃあ! 運が味方してるぞぉ!
GM/ど、ドラゴンがマリアベルとP-27を攻撃を……。(ころころ)命中17で……。
マリアベル/はーい。私はイニシアチブで≪血のいざない≫をして自分が造ったホムンクルスモブに庇わせます!
P-27/僕は自力で避けます。(ころころ)回避17で受動側優先、避けました!
鉄/そこで自力で避けたか!
サクラ/良い良い!(笑) 私は全力移動で40メートルダッシュ! これで支援特技は全て鉄の射程内だ!
P-27/悪魔をなんとかして……全力でマスターを回復します。魔力も生命力も、全部蘇らせます……!

 悪魔の攻防を乗り切り、P-27は≪興奮剤≫+最後の令呪で【MP】を22点回復、【HP】を16点回復した。
 そうして、【行動値】ラストの、鉄のターン。

鉄/……全力移動。魔王に接近。同じエンゲージに入る。

 それで何もできない。敵を前にして、睨み合うだけである。
 魔王が近寄った鉄に寄った。ゆっくりと歩み出す。「……これで、足元で倒れる仲間から引き剥がすことができた」 そう、鉄の思惑通りに事が進む。
 運命を分けるトラップの影響は……。

鉄/……【知覚】判定、成功! エンゲージ移動は無い!

【マップ】
 エンゲージ1:なし
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:なし
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:ドラゴン、P-27
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:悪魔
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ6:サクラ、マリアベル
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ5:魔王、鉄


GM/セットアップ! ≪魅了の魔眼≫を……鉄に使用!(ころころ)命中19で当てる!
鉄/回避判定!(ころころ)よし! 19で回避!
マリアベル/同値回避!?
サクラ/特技を使う準備をしていたが、よくやったぞ!
P-27/……マスターを殺させはしません。彼が守ったように、私がこれからもずっとお守りします。≪空間知識≫を使用。
サクラ/気力が限界でつらかろう。私の力を貸してやる。≪本能の拐引≫を使用。
マリアベル/鉄の魔力が無くなっても、私の魔力があるから大丈夫! 勝てるわ! ≪大地の使徒≫を使用。
GM/鉄の番が来る前に殺す。鉄とサクラに対して魔王が攻撃。(ころころ)命中21でどうだ。
鉄/(ころころ)回避19が出た!
サクラ/鉄に≪叱咤激励≫! 回避21で、本気で避けろ!(ころころ)私は回避17だが問題無い!
マリアベル/問題無いわね。私がこのラウンドで作った≪血のいざない≫のホムンクルスに、庇わせる。
GM/……さっきからマリアベルのモブの運が良いんだよな(笑) ダメージコントロールがうまい。
マリアベル/うふふ、これでもそこそこの腕の錬金術師だから(笑)
GM/だけど、まだ悪魔がいる……!

 だが、悪魔も、窮地に追い込んでも致命傷までは負わせられない。
 確実にリソースは削られているが、なんとか最後の一手にまでこぎつけることができた。

鉄/魔王に、全力で斬りかかる。≪シヴァ≫+≪ヘル≫+≪両手武器≫+≪インドラ≫+≪コネ「旧き一族」≫。……絶対にこの一撃で仕留める! そのためにみんなでここに来たんだ! ≪ソウルデバイス≫+≪マックスウェル≫を使用した状態で(ころころ)命中18!
GM/(ころころ)出目が1と3……回避、失敗! ここで≪上級異能力≫を使用宣言! 鉄のメインプロセスが終わったら、魔王が再度攻撃を行なう!
鉄/……その前に、お前を落とす。ダメージダイスは……14D6だ。(ころころ)物理ダメージ、85点!
GM/…………。決まった。
P-27/決まった……のですね。

 鉄の両手に握られた剣の一閃が、魔王の身体を切り裂く。
 「今だ!」
 航が声を張ると同時に、霊力を帯びた鎖が魔王の四肢を捉えた。
 微睡んでいるようだった魔王の目が、初めて見開かれる。焦りが見えた。それは既に異端の王を捕らえ、無力化したことの証拠だった。
 キャシーも全員に告げる。「司令塔が落ちたわ! 後は一斉に叩くだけ! ……もう我々が勝利したも同然よ!」

GM/大ボスを倒したところで戦闘は終了……と言いたいところだが。GMはお約束をやりたい。ポチッ。
サクラ/ぽち?
GM/ゴゴゴゴゴ。いきなりの地響き。ダンジョン崩壊だ! このままだと全員城ごと消えるぞ!
マリアベル/どっかで見たような脚本ー!?(笑)
P-27/お約束の脚本ですね(笑) きっと「幻の城が全部消滅するからそれに巻き込まれる」とかでしょうけど!
GM/えーと、では現在位置から難易度を算出するぞ。あと……さっき言ってた「GP-01が生き残るか判定」もこれに組み込もう。

【マップ】
 エンゲージ1:←出口に最も近い場所なので、脱出判定は【体力】で難易度4。
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ2:←出口の近場なので、脱出判定は【体力】で難易度6。
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ3:P-27←出口には走れば余裕で辿り着く場所なので、脱出判定は【体力】で難易度8。
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ4:←少し頑張らないと難しい場所なので、脱出判定は【体力】で難易度10。
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ6:サクラ、マリアベル←危機的状況、脱出判定は【体力】で難易度12。
 (↑10メートル離れている↓)
 エンゲージ5:鉄←最奥のため、脱出は難しいと思われ、脱出判定は【体力】で難易度14。

GM/航とキャシーは自動成功で脱出するが、既に瀕死であり死亡確定とも言われたGP-01は……魔王がいたエンゲージ5にいて、自力で逃亡は不可能。……だから彼を救出する場合、鉄が背負って逃げることになる。なので難易度が+2され……。
マリアベル/鉄は【体力】難易度、16……。
P-27/無理ですね。
鉄/無理とか言うな! やってみなきゃ分からん!
サクラ/そう、やってみなきゃ分からんな。支援特技ぐらいは回してやろう。(ころころ)12で成功!
P-27/(ころころ)難易度が8のところ、9で成功です。
マリアベル/【体力】は苦手なんだけど……難易度12は難しい(ころころ)ううっ、9で失敗。
鉄/難易度16に挑戦。(ころころ)9で失敗。ここは、
P-27/マスターに≪一心同体≫を使用。クリティカルする可能性もありますので(ころころ)達成値13……だいぶ良くなりましたが、16には届きません。
GM/サクラとP-27は逃亡できた。だがマリアベルと鉄は(ころころ)8点の素通しダメージを受けてしまう。
マリアベル/痛っ! 半分【HP】持っていかれた!
鉄/【防御点】無視かよ……でも【HP】はP-27が回復しておいてくれたから、まだ生きていられる。
GM/2回目の挑戦をしていい。一度失敗したから……難易度を−1減少しよう。ただしサクラとP-27がシーンから離れたということで、2人の支援は届かないことにする。
マリアベル/難易度11に挑戦!(ころころ)きゃあっ、7で失敗……。
鉄/難易度15に挑戦。(ころころ)ぐ、出目が走らない……8で失敗だ。
GM/崩落のダメージロール。(ころころ)7点のダメージが入る。
マリアベル/あと【HP】5点……次で死んじゃう。3回目の挑戦は難易度10ね!(ころころ)よし、成功! 脱出できたー。怖かったー!
サクラ/よしよし良くやったぞマリー! よーしよしよしー!(笑)
鉄/難易度14に挑戦。(ころころ)……達成値12。
GM/背負っているものを捨てれば成功して脱出できるぞ。
鉄/言うんじゃねえ。ダメージをくれ。
GM/捨てれば成功できたのに。(ころころ)おっとダメージは、13点。
鉄/一気に入ったな……4度目の挑戦、難易度は13だ。(ころころ)……達成値11で失敗。
GM/GP-01を見捨てれば助かるぞ。
鉄/見捨てない。助ける。
GM/(ころころ)……8点のダメージが鉄に入る。
鉄/うおっ、危なかった。現在【HP】9点だったから、【HP】1点で生き残る。
P-27/……マスター、もう、後がありませんよ……?
GM/ほぼ死体の奴を背負ってボロボロになりながらも城を脱出しようとするのは良いが、次で成功しないと【HP】0になって、崩落にトドメを刺されるぞ。……難易度12の5度目の判定、どうぞ。
鉄/ここで成功すればいいんだ。成功しろ……!(ころころ)達成値11……しない。
GM/「……捨てていって、くれ……」 背負われていてもピクリともしなかったGP-01の口が動く。
鉄/連れていく。助けてやるから黙ってろ。
GM/と言っても……(ころころ)6点のダメージが入るんだ。鉄の【HP】が0になる。
鉄/あっ……。その場で転げるのか。倒れちまった。
GM/「……今からでも俺を捨てて走れば、城から脱出が、間に合う……だから行ってください……」 GM温情ということで、後出しでいいから脱出してほしい。達成値11ならGP-01を見捨てれば助けるから。
鉄/……それは……。
GM/「どうせ、生きて帰っても……また、機関での生活は……。ここで死ねば、ラクだから。元々ここで死にたかったんだ、置いていってください」 そう懇願する。
鉄/お前、ずっと犠牲になりたがっていたのは、そういう理由かよ。

 最後の力を振り絞って、鉄の身体から離れようとする。鉄は走っていってくれ、そう願いを込めて視線を向ける。

 「…………。何か、言いたいことあるか。伝えたいこととか、あるか」

 鉄の問いかけ。
 もういつ死んでもおかしくない容態だが強靭な体力で生き残っていた彼は、無言になるが、また鉄の方を見て、口を開く。
 「遊びに誘ってくれて、嬉しかった。一緒に食事できたのも、猫と遊べたのも、パンをくれたのも、助けてくれたのも……最後まで話し掛けてくれたのも、嬉しかった。……ありがとう」
 伝えたいことと言ったら、それぐらい。

鉄/…………。救いたい。なんとかして救いたい。何か手段はないか。
GM/【HP】は既に0になったので……。
マリアベル/…………。
サクラ/…………。
P-27/…………。航先生、≪黄泉がえり≫をもう一度使えませんか。
GM/一度使ったやつを? もうシーンから逃走したキャラが?
P-27/先生、友人のピンチに駆けつけてくれませんか。先生が頭の良い方だと分かっていますとも。ですが非効率的な行動だとしても全部無視して、窮地のときに何とか出来てしまうその力で、助けようとは思ってくれませんか。
マリアベル/『ワンアンドアナザー』本編の先生を知ってると、そこまでしてくれるかなーって思うけど……。
P-27/自分はその先生は知りません。だから今まで自分が見た先生しか知らないので、その先生ならしてくれるのではないかと。
GM/…………。鉄……だけじゃなく、PC4人全員【幸運】判定で難易度10をしてくれ。全員成功したら、やる。
P-27/ありがとうございます。(ころころ)11で成功。
サクラ/(ころころ)11、成功。
マリアベル/(ころころ)同じく11で成功!
鉄/(ころころ)……10で成功!
GM/「鉄ーッ!」 こっちもボロボロになりながら、航が駆けつける。≪黄泉がえり≫を使用して、航の【HP】を1点まで回復。
鉄/航……!
GM/「早く早く早く! もうこれ以上は、みんな死ぬ……! サクラやマリーやキャシーもこっちで無事だ! 君も居なくちゃ……帰れない!」 これが本当のラストチャンス。難易度は12まで減った。頼む。
鉄/もう……友人までも殺させない!(ころころ)達成値13で成功!
サクラ/おおおーっ!
GM/「こっちだこっちー!」 ……ゴゴゴゴゴ。城が地響きと共に消滅する。その中から航と、GP-01を背負った鉄が出てくる。
P-27/マスターッ!
マリアベル/鉄……良かったぁ!
サクラ/二度ぐらい死んでるが、無事だな!? 早く治療を!
鉄/いいからこいつを、GP-01を……航、救ってやってくれ! お前なら救ってやるぐらい出来るだろ!? 俺はP-27に回復してもらう。でもGP-01はお前じゃなきゃ救えないだろ、頼む。頼んだぞ。ここまで来て救ってやれないとか言ったら殺すぞ。
GM/「き、君……いつも僕にそう無茶ぶりするよなぁ……!」 自分の身体の心配をしろと、さすがに航も怒るぞ(笑)
鉄/お前だからお願いしてるんだよ。……それに、俺を助けに来てくれてありがとう。お前、ずっと前に出ないって言ってたのになぁ。ありがとな……。
GM/「……絶対、彼を救ってみせる。約束するよ」 そう言って航は救護を始める。
P-27/マスターの治療ならこちらが引き受けます。もちろん既にマリアベル様の治療なら終わってます。
マリアベル/私はいいのよ、まだまだ【HP】5点もあるもの〜。
サクラ/残り【HP】5点も重症だろ。全員生き残ったから問題無いがな!


    ◆


 無事、生還した。
 だが負傷した者も多く、王城攻略前までは0人だった死傷者も、魔王との戦いの中で何人も死者が出た。
 脱出の際の怪我人も多い。森の中でキャンプを張って皆が治療に当たる。

マリアベル/キャシー、平気?
GM/(キャシーになって)「アタシはピンピンしてる。それよりマリー、怪我が跡にならないといいんだけど〜、女優なんだから〜!」
マリアベル/P-27が≪肉体復元≫してくれたおかげですぐ元気になっちゃった。帰ってシャワーを浴びれたらもっと元気になるから、気にしないで。
サクラ/私もシャワーを浴びてビールを飲めば元気になるぞ。
GM/「あんた達がいつも通りで良かった……。死傷者は確かに多い、でも、任務は成功だって。一番の脅威であった魔王を討ち取ったことで今後異端事件は大幅に減少するでしょう。力を与えていた親玉を倒す価値は大いにあった筈」
サクラ/そうでなくては、我々が奮闘した意味が無くなってしまうからな。そうでなくては困る!
GM/「そして、多くの異端を……まさか魔王本体までもを捕縛することにできた。今は機関の技術による拘束装置で無力化してるから、これを機に異能研究が大きく進展するんじゃないかって、航が言ってたわ。よくアタシは分からないけど」
マリアベル/そうなの?
GM/「うん。本当ならこの台詞は航に言わせるつもりだったけどNPC救出をしていろと言われたので、アタシが話すことにしたわ」
サクラ/急な役の変更、すまないな(一同笑) しかし……異端の捕縛か。確かに異能研究は進むだろうが……。
マリアベル/……ちょっと怖いこと、言ってるわね。
サクラ/ああ。……『ワンアンドアナザー』本編だと、この研究と開発された兵器があまりに酷いからとエルスと機関が決別する理由になるからな。このときの私はまだ機関を信頼しているが……。
GM/それは数年後の話なので。けれどキャシーも「良い研究をしてくれればいいんだけど」と、少し難色を示す。「でも、今回の作戦が人類にとって大きな収穫になるのは間違いないわ。特にこの周辺の人達は大喜びでしょう」
サクラ/喜ぶべきところでは喜ぼう。そこまでは私も批難しないからな。
マリアベル/ええ。今は後片付けをうまくして、平和に本国に戻りましょうね。そしてみんなで祝杯をあげましょう〜。


    ◆


 数日後。PC達はドイツへと戻った。
 航や機関、教会の一同は、捕縛した異端を輸送し日本へと帰国していく。鉄とP-27は、マリアベルとサクラ、キャシーと祝宴をあげようと、すぐに日本に帰らないという選択をした。

 日本に一足早く戻った航からの電話で、鉄は今回の任務が大成功を収めたことを知った。

GM/(電話先の航になって)「僕はまだやることが先に帰ったけど、機関本部の方が万全な治療ができるからね。GP-01を治療するためにも早く戻った方が良かったと考えてたし、鉄との約束を守れそうだよ」
鉄/……パーティーにお前達が参加できないのは、少し申し訳無いなと思った。
GM/「後で個人的に奢ってくれよ」 航の声はとても明るい。任務が成功し、無事皆で帰れたことで晴れやかだからだ。
鉄/ああ。奢る。……それともう一回、何度でも言わせてくれ。ありがとう。お前に何度も救われた。
GM/「…………」
鉄/なんだよ。結界の突破も、魔王と戦ってるときも、城から脱出するときも、ずっと俺を助けてくれただろ。ありがとうって言いたいんだよ。
GM/「普通に感謝されて、こそばゆいよ。……友達だから当然のことをしただけだし……。これは、鉄が帰国したら凄く良い物を奢ってもらいたいな」
鉄/するって言ってるだろ。なに恥ずかしがってるんだよ、殺すぞ。
サクラ/鉄、「殺すぞ」とか「死ね」とかって、全部照れ隠しで言ってるんだな。
GM/「知ってる。……GP-01は何としてでも救ってみせる。大丈夫、こっちにはそれだけの力が整ってる。せっかく鉄達が手に入れてきてくれたものを無碍にしない。GP-01と電話するかい?」
鉄/意識が戻ったならする。でも無理はさせたくないから、安静にしろって言っておいてくれ。
GM/……あ、うん……。
P-27/マスターが電話を切ったところで、≪肉体復元≫を掛けます。【HP】、まだ全回復にはいかないでしょうから。ずっと治療しています。
鉄/お前がずっと看病してくえるんだな。
P-27/回復を任せると言ったのはマスターですから。ニコニコ。……ところでお話があるのですが。マスター、僕を機関から引き抜いてくれませんか?
鉄/いいぞ。
GM/えっ。
P-27/即答ですね。一応理由を説明しますと、この仕事が終わったら廃棄されるかもしれない失敗作だったということもあり機関に戻っても未来は無い気がしますし、それでしたら有効活用してくれたマスターに任せるという厄介払いコースもありだと思いまして。
鉄/そうじゃなくても「俺が気に入ったから引き取った」で航に頼んでおく。航なら分かってくれるだろ。
P-27/……気に入ってくれたですか。嬉しい提案です。しかし本当にマスター、先生に任せっぱなしですね(笑) 
鉄/じゃあ、これでようやく機関が付けたナンバーじゃない名前で呼べるな。何か考えておいたか?
P-27/考えていません。持ち主が考えるべきだと思いましたから。
鉄/持ち主じゃねえだろ……。P-27の外見は、どんな奴だったっけ。
サクラ/金髪碧眼、人間らしくない、人形らしい綺麗な造形だったな。
P-27/どうせ造られし物なら綺麗に作りたくなるものだと思いまして。自由に変化することはできますがね。それこそ女になることも可能なんですよ?
鉄/今更変えられても困惑するだけだろ、そのままでいい。……神様みたいに綺麗だな。神様の名前でも付けよう。GM、この世界の『邪神じゃない良い神様』の名前を教えてくれるか?
GM/えー……待っていてくれ。ドラえもんズ以外の神様って印象に薄いから、以前、マーサーや桐生やすがくが残したメモに……あ、3つぐらいしか書いてないや。

 ・ルージュイル
 ・ブリギットブリード

 ・エーデンアイデイン


マリアベル/……どれが、どんな神?
GM/全然覚えてない……(笑)
鉄/『ワンアンドアナザー』にはドラえもんズしか登場しなかったし、俺もこんな名前が付けられてるって初耳だぞ……(笑) って、ブリギットってドリスのきょうだいの名前じゃ……。
サクラ/あれはブリジットだろう。……ややこしいな、似た名前なのか(笑) まあ、もともとブリギットもケルト神話かどこかの女神だしな。
鉄/実際、鉄も神話や世界についてあまり興味無さそうだし、適当に選びそうだな。……じゃあ「ルージュイル」で。
P-27/そのまま付けるのでいいですか?
鉄/……少しは変えようか。じゃあ、名前っぽく……「ルージィル」はどうだ。
P-27/愛称ルージィル。いいですね。僕だけの名前という気になります。
鉄/じゃあ、これからお前はルージィルで。
P-27/はい。ルージィルです。嬉しいです。ニコニコ。
マリアベル/あ、ニコニコしてる。本当のニコニコっぽく笑えていて、いいわね。
P-27/やはり今までわざとらしいニコニコでしたか?
鉄/胡散臭い笑顔だった。名前を呼ぶだけで自然に笑えるなら、名前を付けた甲斐があるな。
P-27/ええ、ずっとその名前でお呼びください。これからお隣でお世話をすることになりますからね、よろしくお願いしますよ、マスター。
サクラ/鉄が世話をしてやるんじゃなくて、されるのか。良い従者を手に入れたな(笑)
マリアベル/ちゃんと航に「機関から引き抜く手続きをしてくれ」って後でファックスでも送っておくのよ〜(笑)
GM/…………。
サクラ/どうしたGM。何か不満か?
GM/いや……不満というか、えーと……。少し計算外のことが発生して、どうしようかなぁと……まぁ、こうなったなら、いいか……?


    ◆


 航の研究室に、ファックスが届く。
 パーティーを楽しんでいる鉄達からの手紙かと、航はそれを微笑みながら読みふける。だが途中で飲んでいたコーヒーを噴き出し、また、笑った。

 「引き抜き〜!? その手続きまで、僕に押し付けるのかい!? いくらP-27が失敗作ホムンクルスとはいえ、中身は機関の超技術なんだぞ!? まったく、鉄達は……」

 困ってはいるが、怒ってはいない。寧ろニコニコと笑いながら文面を読んでいる。
 そういった無茶なやり取りも、長らく彼らと付き合っているうちに慣れてしまったからだった。

 白い部屋と、ベッドの上には、鉄に任された彼が眠らされている。
 一命は取りとめ、容態は落ち着いた。その連絡を受けた一同はとても喜んでいた。だから航はより力を入れて、彼の治療に専念する。
 とはいえ、航は元々医者ではない。航は航が持てる技術で、彼を蘇らせた。

 「友達の鉄が僕に任せてきたんだから、僕は僕なりに、彼を絶対に生き返らせる。……何をしてでも蘇ってもらうよ」

 無数の機械に囲まれたベッドの上で、少年は横たわっている。
 意識は、あった。だが体はまだ動かせない。強靭な肉体を手にするように強化手術を受けてきた彼は、懸命な処置を施されたが、まだベッドの拘束は解かれずにいた。
 身動き一つできないまま、ぼんやりと白い天井を見やるしかない。

 命は救われた。助かった。もうその身を脅かすものは無い。
 困惑しつつも愉快そうな航の声を聞く……それだけの時間しが過ごせない。

 『どうせ、生きて帰っても』『また、機関での生活は』『ここで死ねば、ラクだから』『元々ここで死にたかったんだ』
 ……そう言った筈だったが、あの男には、届かなかった。
 …………また、ここでの、日々が始まる。

「鉄の奴、P-27が気に入ったからってそのまま貰いますは……って、それよりもP-27の引き抜き申請ってどこの部署に出せばいいんだ? あいつどこの部署が開発したんだっけ? せめて一回は機関に顔を出してもらわないと、あああまた仕事が増えたぁ〜。また徹夜だぁ〜」

 天井を向いていた目が、徐々に見開かれる。
 その開かれた瞼から、涙が零れ落ちた。


 『…………■を、■■から、■■■■■■■■ないのか……』