アナザーワールドSRS・リプレイ・ワンアンドアナザー
■ 番外編1『友情編』 1ページ ■
2005年(仮想リプレイ公開2020年3月21日)




 ●プリプレイ

オーウェル/夜須庭 航と戦いたい……。どうしてもラスボス戦のリベンジを……。
ユーキ/切実な叫びが聞こえる……(笑)
ドレーク/……またセッションをやるか?
オーウェル/やりたい! オーウェルは倒せないことが確定してしまったけど、何とかして奴と戦うセッションがしたい!

 そんな切実な叫びの中、「オーウェルじゃないPC達が先生を倒す会」が結成された。
 GMもプレイヤー、キャラクターも総入れ替え。雰囲気もガラッと変えてのシナリオが用意されたのだった。


GM/プレイヤーは4人も集まってくれた。『ワンアンドアナザー』本編を前提に、邪神召喚の儀式が行われる数年前の過去編シナリオをやる。簡単にハンドアウトを、というより「こういうキャラを作ってほしい、登場させたい」という要望をまとめてきたので見てほしい。

【レギュレーション】
 PC1:異端討伐で人々を守る退魔組織『教会』のエージェントであること。実質的な主人公の立ち位置とする。異端討伐の任務を受ける、前線系の戦士だと良し。
 PC2・PC3・PC4:設定は自由。PC1と共に、とある異端討伐任務に就く。

 NPC1:『超人類開発研究所機関』の研究者。「先生」という愛称で呼ばれる。PC1と同じ任務に就く男。
 NPC2:『機関』に所属する強化人間。PC1〜4達とNPC1が就く任務に参加する。

 NPC3:報酬さえあれば何でも依頼を受ける『ハンター協会』に所属するハンター。同じく任務に就く。
 NPC4:『機関』の経営者。『錬金術師協会エルス』と協力し合っている(『ワンアンドアナザー』第3話でエルスと機関は交流を絶ったとあるが、このシナリオはまだ協力していた頃の話)


GM/以上の設定でシナリオは進む。GMとしては、PC1の設定だけ縛らせてもらうが他のPCは自由に作成していい。戦闘難易度は高めだが、プレイヤーの選択によって敵が弱体化するギミックを用意している。キャラロールを重視するので、好きに作ってくれ。

 今回のリプレイも、「もしあのセッションをアナザーワールドSRS 4版ルールで再現してみた」という設定のもとで、
当時(2005年3月)の記録をもとに記憶だけで作成した『仮想リプレイ』である。
 シナリオの展開は実際のものを再現しているが、判定ルールや特技データなどは『AW 4版』公式サイトで公開しているものに置き換えている。

 それでは、『ワンアンドアナザー』過去編こと番外編セッションに参加するキャラクター達を紹介しよう。



 船橋 鉄(ふなばし・ひかる)
 クラス:[闘士3/イレギュラー6] ※アイコン「彼氏メーカー」
  体力:16(+5)  反射:15(+5)  知覚:12(+4)
  理知:10(+3)  意志:14(+4)  幸運:12(+4)
  HP最大値:40  MP最大値:24  正気度:7
重要キーワード:末裔  背景:家族に母だけがいる  特徴:無計画である
ボーナス効果:≪コネ「旧き一族」≫  スキルウェポンのイメージ:西洋剣
職業:教会の専業エージェント  性別:男  年齢:24  身長:180cm代  髪色:黒  瞳色:紫
 スキルウェポン→≪両手武器≫
 闘士→≪武闘家の血≫ ≪戦の申し子≫ ≪護りの契り≫ ≪カバー≫ ≪英雄の宣言≫ ≪軍神の知恵≫
 イレギュラー→ ≪トイボックス≫ ≪クイックコート≫ ≪オールラウンド≫ ≪ハスター≫ ≪インビジブルマン≫ ≪デュプリケイト≫ ≪ヘル≫ ≪インドラ≫ ≪シヴァ≫ ≪ソウルデバイス≫ ≪マックスウェル≫
 一般特技→≪強化手術:意志≫

▼鉄の設定
 退魔組織『教会』の専業エージェントをしている男。スキルウェポンは長剣。西洋剣を操る剣士。
 母子家庭で、少年時代から家計を助けるために異端退治で高額の報酬が支払われる『教会』に所属している。既に10年以上も異端退治の経験があるベテランエージェント。
 普段はクールで任務を着実にこなすエージェント然をしている行動を取るが、根は熱血漢で、熱くなると無計画に体が勝手に動くこともある。
 特に、悪逆非道な相手は許さない。冷静沈着に努めているが、本心は「自分の正義のため戦いたい」と常に考えている。
 セッション内の任務に参加したのも、悪い異端を討伐する使命感に燃えているため。


  P-27(ぴー・にー・なな)
 クラス:[感応力師6/世界遣い3] ※アイコン「少年少女好き?2」
  体力: 9(+3)  反射:12(+4)  知覚: 9(+3)
  理知:15(+5)  意志:16(+5)  幸運:12(+4)
  HP最大値:28  MP最大値:30  正気度:10
重要キーワード:人ではないもの  背景:髪が金色だ  特徴:機械的である
ボーナス効果:≪ファンブル無効化≫  スキルウェポンのイメージ:接触による身体破壊
職業:機関のホムンクルス  性別:自由  年齢:自由  身長:自由  髪色:金  瞳色:碧
 スキルウェポン→≪落下する光≫
 感応力師→≪ターニングセット≫ ≪過去視≫ ≪掌の君≫ ≪サイコメトリー≫ ≪肉体復元≫ ≪アンドショック≫ ≪念動障壁≫ ≪念動障壁2≫ ≪空間知識≫ ≪一心同体≫ ≪不変不動≫ ≪結合双生≫
 世界遣い→≪未来視≫ ≪電波受信≫ ≪神性言語≫ ≪バベルの唄い手≫ ≪リバース≫ ≪未来の吐息≫

▼P-27の設定
 『超人類開発研究所機関』が開発したホムンクルス。試験官の中で産まれた人造人間。
 超人的な能力を持つ人外の細胞から精製された『人ではないもの』であり、性別や外見年齢は自由に設定できる。現在は金髪碧眼の容貌に設定されている。口調も丁寧なものに設定され、誰にでも敬語で穏やかな態度で取るように設定されている。全て他者が任意に設定できる。
 外界を知らずに育てられたが、人間社会に必要な知識は叩き込まれているので生活に支障は無い。だが世間を知らない。
 NPC1の夜須庭 航は育ての親。彼経由でセッション内の任務に参加する。


  マリアベル・オガーシュタイン
 クラス:[処刑人2/領域遣い7] ※アイコン「趣味丸出しメーカー」
  体力: 9(+3)  反射: 9(+3)  知覚:12(+4)
  理知:15(+5)  意志:19(+6)  幸運:12(+4)
  HP最大値:26  MP最大値:44  正気度:11
重要キーワード:友  背景:兄弟姉妹に弟がいる  特徴:母性的である
ボーナス効果:≪戦闘力上昇・防御力≫  スキルウェポンのイメージ:大地を操り錬金術で造った土人形使役
職業:舞台女優  性別:女  年齢:24  身長:169cm  髪色:茶  瞳色:青
 スキルウェポン→≪鋼神の鉄槌≫
 処刑人→ ≪血のいざない≫ ≪血の彫像≫ ≪血の宴≫ ≪完全演技≫
 領域遣い→ ≪籠抜け≫ ≪大地の勅命≫ ≪大地の守護者≫ ≪鏡像≫ ≪生命の叫び≫ ≪大地の使徒≫ ≪武装粒子1・2≫ ≪錬金術師の指≫ ≪テリトリー≫ ≪スーパーテリトリー≫ ≪氷河の城≫ ≪成長促進≫
 一般特技→ ≪強化手術:意志≫

▼マリアベルの設定
 舞台女優。テレビや映画ではなく、小劇場で活躍している。演技、歌唱力ともに並み以上の華がある劇団員。ドイツ人。
 大勢いる家族の大半が『錬金術師協会エルス』に所属しており、自身も異能力の扱いに長けているため、家族の影響でエルスに手伝っていたら立派な錬金術師になっていた。
 女優業だけでなく声を生かした仕事もしているが、異能の勉強も好きだし色んな所に旅ができる任務も好きなので気ままに活動している。おっとり、のんびりした性格。
 NPC3のハンター協会所属の子とは友人関係であり、NPC3に誘われたため今回の異端討伐任務に参加した。PC1とPC4とも友達である。
 大地の力を操ることができる能力者。土を変形させたり、自然を操ったりすることで仲間を守る。


  サクラ・モルゲンズダット
 クラス:[魔術師3/聖職者3/処刑人3] ※アイコン「つくっちゃっちゃ」
  体力:15(+5)  反射:12(+4)  知覚:12(+4)
  理知:12(+4)  意志:13(+4)  幸運: 9(+3)
  HP最大値:38  MP最大値:35  正気度:8
重要キーワード:同業者  背景:一流の錬金術師だ  特徴:目立ちたがり屋である
ボーナス効果:≪耐久力上昇・各+2≫  スキルウェポンのイメージ:錬金術で大気を凝縮したレイピア
職業:弁護士  性別:女  年齢:27  身長:171cm  髪色:金  瞳色:黒い青
 スキルウェポン→≪魔法剣≫
 魔術師→≪タナトスの足枷≫ ≪法則拡大≫ ≪魔法のローブ≫ ≪賢者の脳髄≫ ≪刻印増強≫ ≪仮初の創造主≫
 聖職者→≪叱咤激励≫ ≪悔改めよ≫ ≪霧暴き≫ ≪十字軍:異端者≫ ≪特権階級≫ ≪情報隠蔽≫
 処刑人→≪薬物調合≫ ≪本能の拐引≫ ≪異端審問≫ ≪闇の勇姿≫ ≪恍惚の唇≫ ≪暗号解読≫

▼サクラの設定
 『錬金術師協会エルス』の中でも上位の錬金術師。一流の武具開発者であり、他組織への売り込みも積極的に行なっている。
 ドイツ人と日本人のハーフ。家柄も良く、小中高大と主席で卒業するほど勉学にも長けたお嬢様育ちの金髪ロングヘア―+眼鏡+黒スーツ姿で他者を威圧する女性。非常に堂々としている。
 エルスで活動している専業錬金術師だが、エルスに所属する前は弁護士をしていた。とにかく凄いぞ! 強いぞ! 実際強いかはともかく(記録が凄まじいカタログスペックだけの可能性も?)。
 NPC4の機関の経営者と交渉し、協力関係を築き上げたのもサクラである。錬金術で大気中の酸素の濃度を操る能力者。


 以上4人のPCが、リベンジ戦セッションに参加することになった。
 この仮想リプレイセッションは、『ワンアンドアナザー』本編よりもシリアス重視のストーリーのため、茶化したプレイヤー発言やギャグ要素は出来るだけ排除している。

 小説テイストの仮想リプレイ、どうぞお楽しみあれ。



 ●オープニングフェイズ/鉄&P-27

 殺せ。

 声が聞こえる。
 両手に両親と手を繋いで歩く無邪気な子供を、殺してしまえと、誘惑の声が聞こえる。

 振り返っても誰も居ない。耳元で囁く者もいない。
 殺せ。殺せ。殺せ。
 ならこれは幻聴か。自分の中から生じた欲望の声か。無意識の殺意が、武器を持てと腕に力を込める。

GM/鉄は【意志】判定、難易度10を。
鉄/(ころころ)達成値10、ぴったり成功。

 頭を振るう。周りには誰も居ないし、武器など手にしていない。無邪気な子供は、家族と共に笑って去っていく。
 謎の声を聞いた鉄は、空港に居た。これから生まれ育った日本を発つ、旅立ちの場に居た。

鉄/時間が来るまで、ベンチに座ってコーラでも飲んでる。早く仕事を終わらせて酒を飲みたいと考えながら。

 腰を下ろして、深呼吸をする。
 どうしてここに居るのか――退魔組織『教会』で異端討伐があるたび駆り出されていたエージェントとして10年以上も活動していた鉄は、仕事があれば世界各国に飛ぶ。空港に訪れることも少なくない。
 一人で待つ時間も慣れたもの。時にはうたた寝することもあるが……。

鉄/……周りを見渡す。何か怪しい影は?

 無い。何も見つからぬまま……「あの声は、気のせいだ」と自分を納得させるしかなかった。
 飛行機の搭乗する時間まで、あと少し。
 そのとき、ようやっと鉄の同乗者が現れた。男は――鉄の友人の航は慌てた様子で座る鉄に駆け寄り、汗だくで息を切らしながら謝罪する。

GM/「ごめんごめん! 電車の乗り継ぎにミスっちゃって予想以上に時間が掛かっちゃったんだ!」
鉄/遅い。
GM/「今、理由を説明したんだけど……」
鉄/あと1分遅れたら一人で行ってやると考えてた。電車が遅れたなら文句は言わないが。
GM/「シンプルに僕の乗り継ぎミスです。ごめんなさい」
鉄/お前と待ち合わせをするといつもこうだ。遅刻を前提に時間を設定しておいて正解だった。
GM/「だからつい遅れても大丈夫だって思っちゃうんだけどねー……」
鉄/死ね。
GM/「直球に暴言は酷いなぁ! 昨日だって寝たの遅いから多少の寝坊も仕方ないというか、聞いてくれよ、昨晩上司がね」
鉄/機内でいくらでも愚痴を聞いてやるから今は汗ぐらい拭け。汚い。
GM/「酷いなぁ、そこまで言わなくても……。でも、愚痴をいくらでも聞いてくれるんだなぁ、優しいな、鉄は」
鉄/殺すぞ。ポカリ買っておいてやったからさっさと飲め。飲んだらさっさと行くぞ。置いて行く。

 軽装で冷徹な鉄は、やや鈍間で大荷物な航を置いてスタスタと歩き始める。
 自分の為に買っておいてくれたというペットボトルを受け取った航は、隠れて微笑んだ後、大声を出しながら友を追いかける。
 二人は友人同士である。能力者による退魔組織のエージェントと異能研究所の研究員の彼らは、いくつか仕事を共にすることがあった。
 性格は似ても似つかない。剣を扱い前に出る戦士と戦う力に乏しい魔法使い、能力も全然違う。
 だが同い年だったからか、正反対の性格が逆に合ったのか、お互いを友と呼ぶような関係の二人は共に行く。

 今回は、『教会』からの大規模な異端討伐依頼である。
 幾度も修羅場を駆け抜けてきた高レベルの能力者でなければ務まらない、危険な仕事だと言われた。
 腕に自信があった鉄は、信頼がおける航と共に舞台となる――ルーマニアを目指す。
 日本からルーマニアの直行便は無いため、ヨーロッパの主要都市を乗り継がなければならない。その道中で、仲間と合流しながら決戦の場へ向かうことになっていた。

 長く、厳しく、生死を懸けた旅になる。
 だが二人の姿を傍から見れば、楽しそうな友人同士の旅行風景にしか見えないだろう。

 実際そうだった。このときの二人には、確かな信頼関係が築かれていた筈だった。


    ◆


 10時間以上を掛けて飛行機がドイツのフランクフルトに到着する。
 そこで仲間と合流する予定だった。合流予定日は翌日。ホテルに宿泊した航は、まず泊まる部屋に鉄を招いた。

GM/「実は鉄に見てほしい研究成果があるんだ。ここでお披露目しておきたい」
鉄/また変な物を造ったのか。
GM/「異能を研究して良い物を造って世に出す、それが僕達の職場だからね。これから会うエルスの二人もそうだろうけど、いやぁ、結構今回のは自信作を持ってきたんだ」
鉄/爆発しないように距離を取る。
GM/「部屋から出て行くなよー! 大丈夫、爆発はしないから……多分」
鉄/自信無いのかよ馬鹿。

 カーテンで閉め切って誰も見ていないホテルの一室にて。
 航はウズマキの中から――棺桶のような物を取り出した。

鉄/棺桶。……嫌な予感しかしない。爆発したら本当に殺すぞ?
GM/「はぁ、本当に爆発したら、航に殺される前に僕も死ぬと思うんだ。棺桶みたいに見えるかもしれないけど、ミイラが入っている訳じゃなくて……ただホムンクルスを眠らせているだけだから」

 航は呪文を唱える。それが起動スイッチだった。
 棺桶のような培養カプセルから現れたのは、どう見てもヒトだった。だが動きの拙さから、人造人間・魔導生命体・ホムンクルスだと鉄の目にも一発で分かる。
 目を開いて動き出したそれは、金髪碧眼の美しい人形。
 男なのか女なのかも分からない、綺麗すぎて人間みがないそれは……微笑み、口を開いた。

P-27/おはようございます。
鉄/お、おはようございます。
P-27/はい。おはようございます。……他に何か言うことはございませんか?
鉄/何か、って……。
P-27/大抵の人は完成度の高いホムンクルスを見たら驚いたり、感嘆の声を上げたり、怖がったりするものですよ。だというのに何も反応をしないなんて、どれだけ感受性が死んでいる人間ですか?
鉄/航。これ。何だ?

 流暢な口調でニコニコと笑いかけるホムンクルス。
 穏やかで丁寧な口調ではあるが、礼儀はできていない。怪訝な顔をして、鉄は航に問い質す。

GM/「今回、役に立つと思って持ってきた道具」
鉄/航が造ったのか。
GM/「うーん、あくまで開発チームの一員だっただけで……はぁ、実はこれ、失敗作なんだ」
P-27/はい、失敗作です。
GM/「『堕天した神の細胞』を埋め込んで造ったホムンクルス。神の細胞を増殖させて神のクローンを造ろうとしたのだけど、神自身を増やせはしなくって、僕達と同等の異能を持った人形でしかない」
鉄/……何か、壮大な研究をしてないか、お前のとこ?
P-27/そうです、神のクローンなのです。……実を言うとその話はプレイヤーは初耳なので「えっ、そんなに凄いホムンクルスにしていいの?」と今まさに驚いております(笑)
GM/「あー、これは信頼してる鉄だから話す企業秘密だよ。僕の職場には神がいて、その体の一部を頂戴したんだ。その細胞を増やして独立体を生み出そうとしたんだが……現在27体も製造して、27体とも失敗に終わっている」
P-27/名乗り遅れまして申し訳ございません。私は、P-27と申します。神のクローン体27番目ですからそのような呼び方です。判りやすいでしょう?
鉄/…………。失敗って、何が失敗なんだ?
GM/「さっき言ったよ。神ほどの能力を扱えるモノを造ったのに、『コレ』は僕ら異能力者と同等程度の力しか持たなかった。鉄ほどのレベルの能力者はまずいないから強いと言えるけど、兵器としては中の中。より強い物の開発を目指していた機関としては、失敗としか言えない」
P-27/そうです。私はキャラクターレベル9程度の弱さしかございません。神とは言えません。申し訳ございませんね。
鉄/キャラクターレベル9程度って、腹立つ言い方だな。
P-27/おや。怒らせてしまいましたか? 失礼、貴方が弱いと言っている訳ではないのですよ。文脈からその程度はお判りになられるでしょう?

 常にニコニコと笑みを浮かべ、とても柔和な口調を繰り出す人形。
 ……もちろん鉄の怪訝な表情は、続いたままだ。

GM/「今回の異端退治任務で好きに使っていいってお達しが出てるから、鉄の好きに使っていいよ。神レベルの強さは無いけど、戦闘に動員させるには充分な働きを見込める筈だ」
鉄/なんで俺になんだよ。
GM/「だって……僕、そんなに戦闘得意じゃないし。鉄の判断の方が早いと思うし。異端との戦いでは、鉄ほど信頼できる人もいないからさ」
鉄/こいつは自分で考えて動けるだろ。意思がありそうな顔をしてる。俺に任せなくても……。
P-27/もちろん私は必要な知識を得ていますよ。ですが世間知らずなんです。プロフェッショナルには到底及びませんし、ここで経験を積ませてくれませんか?
GM/「ああ、経験と言っているけど、育てる必要なんて無い。こいつは失敗作だから、この任務が終わったらデータを取って廃棄する。高性能AIを積んでる使い捨ての道具みたいに扱ってくれるといい」
P-27/だそうです。開発者がそう言っておりますので、使い捨ての便利アイテムとしてお使いください。
鉄/航、謝れ。
GM/「え?」
鉄/これから一緒に戦う仲間に「廃棄する」とか言って俺がキレないと思うのか。

 ……数秒固まった航は、「ご、ごめんっ!」と鉄に頭を下げた。
 鉄は苛立たしげに「俺にじゃなくて、こいつにだ」と言い放つ。航は友人に窘められた通り、創作物であるP-27へ、人間に対してのように謝罪した。
 謝られた本人は……航以上に数十秒も、固まる。固まったが、口を開くときは温和な笑みを浮かべる。

P-27/ああ、貴方はあれですね。『とても優しい人』というものですね。
鉄/なんだそりゃ。
P-27/人外であるホムンクルスに対して仲間だとか、謝れだとか、人間扱いする人はまずいません。ですがそういった人を題材にした作品の主人公は、総じて『優しい人』と言われます。貴方はそういうジャンルの人なのですね。初めまして、とても優しい人。
鉄/何言ってんだこいつ。
GM/「と、とにかく! 公共機関で移動する際は僕のウズマキに入れるけど、そうでないときは鉄の好きに指示を出していいから。頼んだよ」
鉄/…………。名前。俺は、船橋 鉄だ。
P-27/P-27と申します。改めまして、よろしくお願い致します。
鉄/変な名前だな。
P-27/名前とは違いますね。ナンバーですから。
鉄/……ナンバーで呼ぶのは、何か気分悪い。後で何か名前でも決めておけ。ヒトっぽい名前をな。
P-27/それは、難しいですね。貴方が付けてくださってもよろしいのですよ?
鉄/めんどくせえ。候補ぐらいは考えてやるが、決めるのはお前が決めろ。……握手をする。
P-27/おやおや、わざわざホムンクルス相手に握手なんてするとは。ちなみに僕、触れどころが悪いと爆発しますので。
鉄/なんでだよ!?(笑)
P-27/ほら、なにせ失敗作なので。≪アンドショック≫が発動してランダムバステになってしまうのですよ。運が良くて静電気でバチンッです。
鉄/あぶねーじゃねーか!?(笑)
P-27/呼び方は……鉄様、と言えばよろしいでしょうか。鉄さんの方がいいですかね?
鉄/……好きにしろ。お前の好きでいい。
P-27/マスターというのはどうでしょう。
鉄/マスター? どっちかっていうと航の方がマスターじゃないのか。
GM/「あー……良かったら、鉄がこいつのマスターになってやってくれないか。こいつは前線に出す。僕は基本、後衛だ。同じ前線地に立つ鉄とペアを組んでほしいんだよ」
鉄/……主従関係を組めと?
P-27/強制はしません。その方がお互いのメリットになるのではと私からも提案させていただきますが。縛令呪(ギアス)も使えるようになりますし、呼べばいつでも駆けつけることもできます。便利ですよ?
鉄/分かった。契約しよう。
P-27/……あっさりですね?
鉄/その方が戦力になるんだろ? デメリットは今のところ考えつかんしな。ならさっさと契約だ。握手。
GM/PCが了承し合うなら、契約完了。キャラクターシートの契約欄にお互いの名前を書いてくれ。
P-27/貴方は、スッキリした人ですね。迷いが無い。そういう人は戦場でとても強いです。
鉄/俺は強いぞ。そこそこ大きな戦場を渡り歩いてきた。お前の初陣を引っ張ってやれるぐらいの実力はあるつもりだ。
GM/「ははは……鉄は本当、自信家だよね。凄いよ」
P-27/ええ、本当に凄い人です。……こんなに信頼できそうな人にすぐ会えただなんて、僕はもしかして幸せ者かもしれませんね? ニッコリ。


 ●オープニングフェイズ/マリアベル&サクラ

 マリアベルは、ステージの上で歌っていた。
 美しい歌声に魅了されていく人達。拍手喝采で舞台が終わり、共演者達やスタッフからも称賛が投げ掛けられる。
 ひとつひとつの声を大切に受け取るマリアベルの一日が終わるのは、遅い。深夜とも言える時間、彼女はようやく劇場を出る。
 真夜中の路地。そんな彼女に襲い掛かったのは……。

GM/「マリー! 今日のステージも最高だったよーっ!」
マリアベル/キャシー!? もうっ、驚いた〜。不審者だと思って≪鋼神の鉄槌≫ぶっぱなしちゃうところだったわよ〜。

 キャシー・カーター。アメリカ人、24歳、女性。
 職業はハンター。舞台女優でないマリアベルと共に何度も戦った、霊力の弓矢を操る戦友である。

GM/「いくらマリーがそこら辺の男より強いって言っても一人で夜中を歩いたらダメでしょー! 家までアタシがしっかり送るから!」
マリアベル/そう言うキャシーだって一人で夜に出待ちしてたの? ダメでしょ。
GM/「アタシは襲われるほど可愛くないから大丈夫」
マリアベル/そういう問題じゃない。めー。
GM/「マリー、売れっ子なんだからボディガードぐらいつけたら? 必要無くてもカモフラージュでもつけておいたらきっと色々ラクよー」
マリアベル/うーんー。考えておく。……というか、≪籠抜け≫使ってワープで帰った方が早かったかしら?
GM/「今度からそうしなさい。……あ、でも今日≪籠抜け≫で帰られたらアタシが困った(笑)」

 マリアベルは、戦友のキャシーが近日中に現れることを予感していた。
 理由は簡単。ある異端討伐の任務の日が、明日始まる。彼女と共に戦う任務だ。彼女は仕事のためドイツにやって来たのだ。
 しっかりとステージを見に来てくれたのは、予想外だったが。

GM/「今回の任務は多くの組織が合同で行なう大規模なものだから……マリーも暫くステージが立てなくなっちゃうね。誘って、ごめん」
マリアベル/参加すると決めたのは私。キャシーが謝る必要なんて無いよ。すぐ異端を倒して戻ってくればいいんだから。
GM/「そうだね。大規模だから大勢能力者が集まっているし、あっという間に終わるかも」
マリアベル/そうそう。……そんなに大規模任務って、どんな内容なの?
GM/「後でしっかり確認するけど……。ルーマニアの吸血鬼退治。事前に渡された資料は読んでるでしょ?」
マリアベル/ああ、そうだったかしら……今日のステージのことばかり考えてたからちゃんと読んでなかったわ(笑)

 マリアベルは自宅にキャシーを招く。
 久々の来訪だった。だが元よりキャシーとは仲が良い姉妹のような間柄。家族のように落ち着いた心地で夜は過ぎていく。
 お茶を淹れて、おしゃべりをして、仕事の疲れも忘れて二人きりで話して……。そうして就寝前の穏やかな寝室で、キャシーはマリアベルにある物を渡した。
 腕時計やネックレス、万年筆でもが入っているような、細長い箱。リボンでしっかり綺麗に包装されている、プレゼントボックスだ。

マリアベル/……私、誕生日だったかしら?
GM/「私からマリアベルへのプレゼントだけど、まだ開けないでほしい。絶対に開けちゃダメ」
マリアベル/開けたらダメなの?
GM/「私が居ない所で開けてほしい。どうしても私に会いたくなったり、私が気になったら開けて。私が居るうちや、呼べばすぐ会いに行ける間は開けないで」
マリアベル/……なんだか不吉な予感がする。……よくそういう脚本、あるわね。「私が死んだらこの手紙を読んで」みたいなやつ。それとは、違うわよね?
GM/「あはは、そんな格好つけたもんじゃないって」

 理由を訊いても、キャシーははぐらかす。
 何度問い質しても彼女は答えないだろう。諦めて綺麗なプレゼントボックスを受け取る。
 一見怪しい物ではない。友人であるキャシーが危険な物を贈ってくるとは思えない。ならば、何かしら訳ありなのだろう。
 詳しい追及はせず、箱を胸に抱く。

 『イベントキー:箱』
 キャシーから貰った細長い形のプレゼントボックスを表わすイベントキー。
 ある約束があるため、『イベントキー:歳月』が無ければ「箱を開ける」行動が行えない。


マリアベル/多くの組織が合同で行なう大規模任務。それって、危険なものだと思うの。
GM/「うん。危険なものでしょう。あまり楽観的に臨まないで、覚悟をしておいた方がいいと思う」
マリアベル/覚悟はしてるわ。私も、きっと貴方も。でも、覚悟しているからこそ油断しない。不覚を取らず、絶対に無事で帰ってきましょう。
GM/「覚悟はする、油断はしない。無事に戻ると約束しましょう。お互い死なずに帰るって、約束……」
マリアベル/うん……約束よ。


    ◆


 ――某オフィスビルの応接室にて。
 サクラは取引の全てを話し終え、目の前の人物に手を差し伸べる。
 「貴方達のデータがあっての我らエルスです。今後ともご発展をお祈りしておりますよ」

 握手に応じた人物は、生真面目がスーツを着たような男だ。
 数年前からエルスと取引している異能研究所のトップである。年はサクラより若干上だが、既にいくつも修羅場を潜り抜けてきたような貫録がある。
 なにせ、まだ中年と言うには早い年だというのに所長だ。研究者でもあり、経営者でもあり、そして優秀な能力者である所長自らが営業に応じている。行動力の凄まじさに感動するべきか、それとも単に人手が足りないのか……。

 「ええ、ありがとう。それではよろしくお願いします」

 簡潔に、握手をした男は真っ直ぐとサクラの目を見て口を開く。

GM/サクラは【意志】判定を。
サクラ/(ころころ)達成値10。いきなり?
GM/では「この男は誠実に対応している、信頼できる商売仲間だ」と思えた。でも何か違和感を覚える。何かは、分からない。相手を警戒してみても、上門(かみかど)所長は丁寧に挨拶をして取引の話を終えたら「そういえば……『教会』のルーマニアでの吸血鬼討伐にも、参加なさるようで」と全然関係無い話をし始める。エルスと機関の商売の話が終わったから、世間話のつもりだ。

 ……握手したとき、感じた違和感。あれは何か。
 魔法でも使われたか。仕事の場で? お互い異能を扱う仕事をしているとはいえ、洗脳特技をブチかましてくる礼儀知らずとは思いたくないが……とサクラは隠れて眉を顰める。
 相手、上門所長なる人物を観察する。
 超人類開発研究所機関の所長であり、太古の世から古今東西、星の数ほどある能力を記録し続けてきた膨大なデータバンクの管理者。
 日本の一企業だが、千年以上前から異能に関する書を保管していたという。その情報量は、異能研究においては世界でもトップクラス。エルスのような武器・魔道具開発企業は、その桁違いなデータ量から新商品を開発する。
 現にエルスの商品も機関の協力が無くては半数以上が完成できなかった。同じような組織は多い。本日も、機関無しでは動けない新プロジェクトの打ち合わせだった訳だが。

サクラ/実を言うと、お恥ずかしながらそのルーマニアの討伐任務、まだ全貌を把握しきれてないのですよ。機関も関わっておられましたか。
GM/「詳しい話は後々、機関のコーディネーターからお聞きになることでしょうから、ここでは簡単に。『異端を率いる吸血鬼の王城を、攻略する』。そこに機関も協力しております」
サクラ/ふむ。こう言っては失礼かもしれませんが、研究組織であるそちらが……いえ。
GM/「戦闘には役に立たないのではないか、と仰りたいのも無理はない。不得意であるのは事実です。動員される大半は教会の戦闘専門のエージェントでしょう。ですが今回、新部隊の試運転をさせていただくことになりました」
サクラ/ほう、試験。それはここで私が個人的に聞いても構わないのかな?
GM/「世間話程度なら、構わないでしょう。貴方は共に戦う仲間なのだから」

 取引中は一切手をつけなかった紅茶を、微笑みながら一口、飲んでいる。
 眼光鋭く、真面目一辺倒に思えた所長という男は、案外フランクな人物なのかもしれない。
 社交的でハンサム、そんな魅力溢れる人だからこの若さで評価されているのか。

GM/「戦闘補助ホムンクルスの配備。そして、強化人間の実働をさせていただきます」

 強化人間。――暗示や投薬施術による人為的な精神操作、記憶操作、あらゆる内科的、外科的手術により強制的に超人能力を引き出された兵士。
 人工心肺などの移植によって身体能力を機械的に強化したサイボーグなどもそう呼ばれている。

サクラ/それはそれは、兵器開発をしている我々にとっても浪漫の産物ですね。そこまで至っていたとは、羨ましい。そして先を越されました。
GM/「何体か実戦投入させてもらえることになりましたが、あくまで試運転ですから、まだ何とも言えません。それらを観察する研究員も同行させてもらいます。邪魔にはならないようによく注意しておきます」
サクラ/そうですね。あくまで目的は……異端討伐ですから。
GM/「……エルスの貴方にお話しておきましょう。討伐が第一目的ではありますが、我々は第二の目的として、異端の捕縛も考えています」
サクラ/捕縛ですか。難しいことを。

 異端は人と相いれない。負の感情を求め、餌を食らうように人へ襲い掛かってくる化け物だ。
 そして元々はこの世の生き物ではない。異端を生み出した者達が送り込んだ邪悪なまやかしである。致命傷を与えると、光になって霧散する。遺体が残ることはないのだ。
 死んでは捕らえられない。五体満足だと暴れて襲われる。死なない程度に痛めつけ、拘束するなんて……誰が考えても至難の業だ。

GM/「我々機関は異能を、異形を、ありとあらゆる神秘を記録しています。異端の生態を研究することは、異端の脅威を取り除けるチャンスでもある。一つでも多くの異端を観察し、能力を知り、それらを今後の人々の為に生かしていくことが、我々がより良い未来のより良い世界に残せる責務」
サクラ/素晴らしいお考えだと思います。……実際それが出来るかは、置いておいて。
GM/「異端を率いる王を討伐し、異端による被害を少なくしたい教会の意思を何よりも尊重しますとも。ですが、この機会に多くのデータを徴収するのが我々の大まかな目的です。……それは、貴方達エルスも似たものかと」
サクラ/そうですね。我々も新兵器のお目見えを目論んでおりましたから。
GM/「…………異端の王が捕らえられたら。良い研究材料になるでしょう。難しい話でありますが。やってもらいたいものです」

 難しい、難しい……と言いながらも、部下にはしっかりそう命じていそうだな。現場は大変そうだ。サクラは、自分も紅茶を啜りながら笑う。
 軽い世間話とお茶で休憩し終えた上門所長は、席を立つ。
 綺麗な礼と挨拶で退室する男を、サクラは誠実に見送ろうとした。

GM/【知覚】か【幸運】判定、難易度10。
サクラ/私だけオープニングでこんなに判定させるのか?(ころころ)【知覚】11で成功。

 応接室を去って行き、ドアを開いた先。上門所長を待つ機関の秘書らしき女を見た。
 なんてことはない。部屋の外にもう一人、取引先の人物が上司を待って立っていただけのこと。それはよくあること、なのだが。
 ――金髪の、あまりに美しすぎる女性だった。

 取引先まで来て彼を待っている女性なのだから、秘書に違いないと思った。
 金の華やかな髪色。胸は大きく、艶めかしい体つき。どこの国籍かは分からないが、女のサクラでも目を奪われるような美貌。
 所長に対して親しげに話し掛けていた声も、一瞬しか聞こえなかったが、どこか蠱惑的だった。

サクラ/……機関は日本の企業で、上門所長も思いっきり日本人。なのに秘書は、随分と派手だな。奥方とか? ……傾国の悪女じゃなきゃいいんだがな。


 ●オープニングフェイズ/PC全員

 空港から程近いホテルにある、広々とした貸し会議室。十数人の能力者が集まっていた。
 年齢は様々、肌の色も違う。だが誰もが察していた。皆、一度や二度ならず多くの戦場を駆け抜けてきた者達だと。

GM/ここに居る全員がキャラクターレベル10程度のベテランだというのが分かる。何度も会った知り合いもいれば、噂に名高い有名人もいるかもしれない。その集合場所に、PC達は居合わせます。
マリアベル/鉄〜! 航〜! サクラ〜! 久しぶり〜、キャシーと合流!
鉄/よう。
サクラ/私とはそれほど久しぶりではないだろう。同じ組織なんだから。
マリアベル/最近ずっと女優業に専念してたから〜。でも平和ボケはしてないわよ、今日だって気合入れてお洒落してきたんだから〜。
鉄/なんでだよ。
サクラ/私もお洒落してきてるぞ。この日の為に新しい礼装を用意した。似合ってるか。似合ってるだろう?
マリアベル/似合ってる〜!
鉄/なんでだよ……(笑)
GM/(航になって)「サクラもマリーも相変わらず綺麗だねぇ。怪我しないように気をつけないと」
マリアベル/航が守ってね。今回もいっぱい守ってくれるんでしょ?
GM/「はぁ、どうだろ。どう見ても僕は前線で女の子を守れるタイプじゃないよ。そういうのは鉄の仕事じゃないかな……」
サクラ/女々しいことを言うな。そこは格好つけて「守ってみせるさ」ぐらい言っておけ。
GM/「嘘は良くないと思うなぁ。キャシーも元気かい?」 (キャシーになって)「航、久しぶり! ……だよね? 最近ずっと会ってなかった気がするけど、ちゃんとご飯食べて元気にしてる?」 キャシーはPC達だけでなく航とも仲の良い友人同士であり、まるで姉弟のような仲の良さを見せる。
サクラ/おっ。航はキャシーと良い仲なのか?
マリアベル/キャシーは男友達が多そうで誰にでも話し掛ける元気な人っぽいわね。
GM/航は率先的に友人を作りにいくタイプではなさそうなので、鉄経由でキャシー達と仲良くなった気がするな。(航になって)「ああ、マリーとサクラに紹介しておこう。そこにいるのは、P-27」 機関が開発したホムンクルスでサポート動員させることを航が説明する。
P-27/ニッコリ笑って、初めまして。
サクラ/お前が……戦闘補助ホムンクルスか。
マリアベル/わあ〜! 凄いわ、本物の人間みたい〜! 綺麗ね! 男性型? 女性型? どっち?
P-27/どちらにも変形できますよ。どちらの方がよろしいでしょうか、ご希望はございますか?
鉄/普通でいい。
P-27/普通というリクエストですが、このシーンに登場しているのが男(鉄)、男(航)、女(マリアベル)、女(サクラ)、女(キャシー)なので間を取って今は男性らしく振る舞っておきますね。
マリアベル/凄い、賢いわ! 私も錬金術師だからホムンクルス造りに手を出したこともあるけど、あれって[魔術師]特化しないと運用が大変だから難しくって。製造されて何歳なの?
P-27/製造自体は数年経っていますが、実際に稼働するのは今回の任務が初めてです。ですから……何歳でしょう?
GM/「はぁー……えーと、2年ぐらいは試験官にいたけど、こうやって稼働するのはまだ1ヶ月ぐらいじゃないかな」 1週間前、鉄に紹介したばかり。鉄のオープニングシーンから1週間が経っている。
鉄/まだ赤ん坊じゃねーか。
P-27/そうです。ある程度知識を詰め込まれ言語機能を搭載されてますが僕はまだ赤ん坊です。優しく扱ってくださいね。
マリアベル/はーい。
P-27/なお僕に触ったら運が悪いと爆発します。失敗作ですので。
鉄/また爆発するのかよ!?(笑)
サクラ/タッチ。
GM/「うわ、積極的に爆発させに行った」
サクラ/本当にするのかと思って。
P-27/≪アンドショック≫発動。(1D6ころころ)1、『腕が束縛でスキルウェポンが使用不可』。触った途端、腕に電流がビリビリと走って負傷します。
サクラ/うおっ。……なるほど、あまりふざけない方がいいな。
P-27/だから言いましたのに。わざわざ危険に飛び込むなんてお茶目な人ですね。ニコニコ。
サクラ/ドクター。機関の上門所長からは試運転に期待していると言っていたぞ。それなのにこんな博打兵器を導入していいのか。何か問題を起きたらドクターの責任問題だぞ。
GM/ドクターって航のことか? 「あー……そうなんだよねー、あんまりふざけないでほしいな、P-27」
P-27/大変失礼致しました。私自身も注意しますが、皆さんもお気をつけて。
マリアベル/そっとP-27にタッチします。
P-27/あ、言ってるそばから。(1D6ころころ)また1、スキルウェポン使用不可でビリビリですよ。
マリアベル/イタタッ。でも、静電気でバチッぐらいね。私これでも武器の扱いには慣れてるし、これぐらいなら平気平気。
サクラ/兵器だけに。
鉄/バカ言ってるんじゃねえ。……兵器扱いするな。ホムンクルスでも一人の人間と同じように扱ってやれよ。
マリアベル/あら。
サクラ/まあ。
マリアベル/そんなこと言っちゃう?
サクラ/鉄らしいと言えばそうだが。
鉄/なんだよ。
GM/「はあ。1週間前から、鉄はずっとこういう態度なんだよ。魔導生命体に造詣が深いマリーとサクラの方が理解してくれるかなぁ、僕の気苦労」
P-27/おや。先生は何か苦労をしておられましたか? こうやって人型を取っているのだから、人だと勘違いしても仕方ありません。それだけ人間らしく巧妙に造れた傑作ということですよ。
サクラ/こいつ、自分で自分のことを傑作だと言ったな。
P-27/傑作ではありませんか? 我ながら良くできた人形だと思いますが。ニコニコ。
鉄/……1週間ずっと胡散臭い笑顔で喋られると気が滅入るな。で、次のシーンまでに……1週間の間にナンバーじゃなくて名前を決めておけって言っておいたのは、どうだ?
P-27/命名は僕ではなく製作者か管理者がするべきだと思いますよ。
GM/「えー……僕はナンバーで呼ぶ方が判りやすくて助かるけどなぁ」
マリアベル/そんなこと言ってると安易にピーちゃんとか呼ぶわよ?
P-27/ちなみにPはパラケルススから取りました。ホムンクルスっぽい頭文字というとそれですから。
サクラ/こいつ、自分で自分のことを傑作だと言う上めちゃくちゃ喋るな。強化人間というから精神が不安定な奴ばかりだと思ったが、わりと安定しているみたいだな。
GM/「えっ? あー……違うよ、サクラ。こいつはただのホムンクルス。強化人間は別」
サクラ/なんだ、まだいたのか?
GM/「えーと、どこに居るかな。別個と来場してる筈……ああ、あそこに居た」

 和気あいあいと再会で盛り上がる中、航はキョロキョロと会場を見渡す。
 会場には多くの能力者達がいる。その端……会場の隅で、誰とも話さず会合の時間まで静かに壁に寄り掛かっていた少年がいた。
 ベテランのエージェントやハンターが集まっている会場で一際若い彼は、異質にも見えるだろう。だが目立たない格好で、静かに佇んでいた。

GM/同じ機関からのメンバーであるP-27がよく喋るキャラだったのに、彼は無口なキャラにする。……黒髪で黒装束、口を一切開かず、少年はただ時間を待って隅で待機している。十代半ばの年なので、おそらくこの会場では最年少だろう。
鉄/声を掛けに行くか。……P-27、お前の知り合いか?
P-27/赤ちゃんな僕は何も知りませんよ。
GM/静かに待機していた少年は、近寄って来た航を見ると頭を下げる。彼が機関の研究員だと知っており、自分が機関の戦闘員であることが分かっているからだ。
鉄/俺は船橋 鉄だ。……航、こいつの名前は?
GM/「えーと、GP-01(じー・ぴー・ぜろわん)」
P-27/ゼフィランサスですね。ということは兄弟はサイサリスとデンドロビウムでしょうか?
鉄/……なんでお前、そんなこと知ってるんだよ?(笑)
P-27/知識はある程度詰め込まれていますから。
鉄/というかまたナンバーかよ。
GM/「その方が覚えやすいしね」
マリアベル/こんにちはー。マリーって呼んでくれると嬉しいわ。お名前は何て言うの?
GM/少年は暫し黙り、「……先ほど、GP-01だと紹介してくれたのを聞いてなかったのですか」とぶっきらぼうに言い返します。
サクラ/おおっ。なんだ、流暢に喋って胡散臭い笑顔満載のホムンクルスと正反対の坊やだな?
P-27/さっきから胡散臭いと言われまくってますね。先生、これは本部に不具合報告しておくべきでしょうか? ニコニコ。
GM/「えー……それは、自主的に修正パッチを当ててくれよー……」 って、NPCが多いからGP-01にキャラロールを交代……するまでもない。GP-01は、挨拶を終わらせると、特に話すことはないという顔でまた黙る。あまり話をしたくないタイプだ。

 「あっ、教会のコーディネーターが来た。みんな、ちゃんと聞こうー!」
 キャシーの言葉に、一同は出入り口へ顔を向ける。退魔組織『教会』の仕事斡旋人が、大勢の前に出て任務の話を始めた。

GM/今回の任務は、ある森に張られた結界内に潜む異端の古城の征圧。人の目や上空のカメラではただの森でしかないが、結界の先は魔物だらけの異界となっている。
サクラ/20世紀後半にもなるのに、まだそんな所が残ってたのか。
マリアベル/世界各国の森や砂漠を全部ヒトが開発してみせない限り、異世界が広がっていないと言い切れないものよ。
GM/既に何回か退魔組織が連合を組んで多くの異端を率いる王を討伐するため乗り込んだが、今のところ良い成果を出せていない。全て返り討ちにあっている。だが完全にやられっぱなしという訳ではなく、少しずつ戦力を減らしながら、結界の先の古城への情報も集まりつつある。討つなら今だ。多くの精鋭を集め、大規模な異端狩りを行なうことになった説明される。
鉄/……倒しに行くのは、吸血鬼だと聞いたが?
GM/非常に凶悪な吸血鬼の王が多くの魔物を率いている。被害も出ている……と渡された被害数を記した書類には、今までの戦いで大勢の能力者が犠牲になっていると記されていた。一目で恐ろしい数字であり、この異端討伐が重要な任務であることを物語っている。

 任務の詳細な作戦会議が始まる。
 会場に居る能力者達の表情は、全員が幾度も戦いを潜り抜けてきたプロの顔になっていた。それは数々の戦場を生き残ってきた鉄達も同様である。
 既に決まっている作戦だけでなく、ここでも多くの意見が飛び交い、大勢の能力者による最善の策を立てた結果――数日後の飛行機を出て、異界に続く例の森へと出撃することになった。

GM/これよりミドルフェイズを開始する。AF判定を3つ用意しているので、好きに演出してもらいたい。

『AF判定:仲間との交流』
 ・使用能力値:【体力】【理知】
 ・難易度:25

※「仲間と交流する」演出に成功すること。
 成功した場合、戦闘に有利になる絆を得ることができる。

『AF判定:結界解除の策』
 ・使用能力値:【理知】【幸運】
 ・難易度:25

※「航と共に、古城へ入るための森の結界を解くヒントを得る」演出に成功すること。
 成功した場合、『イベントキー:結界解除』を入手できる。

『AF判定:森へ突入』
 ・使用能力値:【体力】【意志】
 ・難易度:15

※「森へ突入し、無事城へ到達する」演出に成功すること。
 成功した場合、クライマックスフェイズへ移行できる。
※このAF判定は『イベントキー:結界解除』が無ければ選択できない。


鉄/NPCが3人もいるから、いっぱい演出できそうだな。
GM/今のところみんな仲の良い関係だ。プレイヤーが、NPCを味方につけようとすれば味方につけられる。どんどん話し掛けていってくれ。


 ●ミドルフェイズ1/マリアベル 〜愉快な夜〜

マリアベル/何はともあれ、みんなと仲良くなっておきたいわ。ひとまず交流しましょう! 出発前のホテルで!

『AF判定:仲間との交流』
 ・使用能力値:【体力】【理知】
 ・難易度:25

※「仲間と交流する」演出に成功すること。
 成功した場合、戦闘に有利になる絆を得ることができる。


GM/全員参加の会合が終わり、ホテルで過ごすことになった訳だが。夜更かしでもする気か?
マリアベル/会合が終わったのは夜の7時ぐらいでしょ? まだ夜9時ぐらいならみんな早すぎて寝られないでしょー。だからみんなで……トランプでもしましょ!
サクラ/おお、なんだ、緊張感の無い奴だな。付き合おうじゃあないか。
鉄/寝ろよ。
マリアベル/そう言いながら鉄も付き合ってくれるんでしょ〜? キャシーと航も付き合ってくれるわね? ≪完全演技≫でお願い。
GM/キャシーはもちろん「OK!」 航は……どうかな。偶数が出たら出てくる。(ころころ)あ、6で余裕で出てきた。
鉄/おい航。お前も来い。俺だけに付き合わさせるな。
GM/(航になって)「はぁ、夜更かしは慣れてるからいいけど……。でもこういうの、楽しいから良いよね」
マリアベル/という訳で≪テリトリー≫+≪スーパーテリトリー≫である私の部屋にみんな集合〜。みんなで旅行の夜と言ったらトランプぐらいしないとね? いっぱい楽しんでストレス発散した方が明日元気に戦えるわよ、≪生命の叫び≫。
鉄/子供か。
GM/(航になって)「楽しいからついね。鉄はトランプ得意だっけ?」
サクラ/そこは、実際勝負して決めてもらおう。とりあえず腕試しに大富豪をやってみて、2D6を振って高い順で勝者を決めるぞ。
P-27/こういった知識を実際に披露するのは初めてです。良い経験になりますのでどんどん振っていきましょう。

【トランプで誰が勝つか(2D6)】
 鉄→9
 P-27→9
 マリアベル→6
 キャシー→4
 サクラ→7
 航→9


P-27/おや、ビギナーズラックというものでしょうか。それとも勝たせてくれましたか? そうですよね、初めてやった僕に負けてくださったのですね。ありがとうございます。
サクラ/おーおー、言うなぁこいつー(笑)
マリアベル/初めて遊んだゲームの成功体験は大事だもんね、≪成長促進≫。勝てて良かったわね〜。
GM/(キャシーになって)「アタシが貧民か〜! って鉄と航、しれっと富豪になってるじゃん! グル!?」
鉄/大貧民でどうやってグルになるんだよ……実力も何も、運で勝つしかねえだろ。
GM/(航になって)「ふぅ……大貧民は、二度目からは補正が掛かって勝率が変わるだろうけどほぼ運じゃないかな。もう一回やる?」
マリアベル/もう一回やりましょ! 再行動の≪鏡像≫!
P-27/補正が掛かるというなら、勝者には達成値+1ぐらいのボーナスを、敗者には−1のペナルティでやってみましょう。

【トランプで誰が勝つか 2回戦(2D6)】
 鉄(2D6+1)→7
 P-27(2D6+1)→9
 マリアベル→8
 キャシー(2D6−1)→5
 サクラ→7
 航(2D6+1)→6


P-27/おや、また僕が勝ちました。これは補正もありますが、実力である可能性も浮上してきたのでは?
鉄/調子に乗ってきやがったな、こいつ……(笑)
GM/(キャシーになって)「アタシ、ずっと負けじゃん〜! 革命したい〜!」 (航になって)「さっき富豪だったけど、結局落ちぶれたなぁ……」
マリアベル/私はしれっと勝ち上がっちゃった。
サクラ/私は現状維持、悪くない。酒でもあけて違うゲームでもするか?
GM/(航になって)「えーと……さすがに二日酔いになるまで飲まない、よね? 明日だって異端の調査をするだろうし支障が出ないように……」
サクラ/出ない出ない。私が支障を出すような奴に見えるか。エルスが調合した酔い覚ましもあるから平気だ。みんなも一杯やるか。
鉄/一杯やるかで一杯だけにならなそうだな……自重しろよ。
マリアベル/みんな大人だから飲めるわよね〜?
鉄/……GP-01も誘えば良かったか。今から連れてくる。
サクラ/酒を飲んでトランプやってる大人の部屋に未成年者を呼ぶのか。良い趣味してるな。
マリアベル/みんなが自重するためにも彼も呼んできましょう(笑) 鉄、一緒に行くわ。男の人が誘った方が良いと思うけど〜。≪大地の勅命≫!
GM/GP-01は一人、部屋に居る。大抵の能力者達は部屋が用意されていて、彼はシングルの部屋に居る。
マリアベル/GP-01〜。遊びましょ〜。≪籠抜け≫で移動!
鉄/酔っ払いに絡まれる、可哀想な奴だな。
マリアベル/まだ私、そんなに飲んでないわよー。
GM/ノックをして暫くして、GP-01が不機嫌そうな顔を出した。不機嫌というか、夜に騒ぎに来た大人に不信感全開。
鉄/お前、真面目だな。おい、お前も遊びに来い。
マリアベル/お姉さん達と一緒にトランプで遊びましょ?
GM/「……興味ありません」 断られる。
鉄/判定も無しかよ。
GM/……じゃあ、判定はさせます。難易度は普通ぐらいで……難易度10かな。
マリアベル/(ころころ)あれ? 8で失敗……。
鉄/(ころころ)俺も達成値9で失敗だ。
GM/「用が無ければ、これで」 部屋のドアを閉められます。
鉄/いや待て。用はある。
GM/「何か?」
鉄/遊ぶという用だ。
GM/「……ふざけているんですか」
鉄/ふざけてない……と言おうとしたが、ふざけてるな、どう見ても。でも、そうだな、あれだ、戦いの前に仲間を知る良いチャンスというやつだ。
GM/「何がチャンスだと。そんなの、必要無いでしょう。……仲間なんて」
鉄/仲間とのコミュニケーションの大事さを教えてやる。1時間だけでも付き合ってみろ、なんだかんだ付き合ってみれば楽しいから。もう一回判定をさせろ。
GM/「…………」 凄く不満そうだが、もう一度どうぞ。
鉄/(ころころ)よし、達成値14。成功した。
マリアベル/一気に挽回した! 鉄ってこういうとき頼りになる〜。
鉄/どう見ても俺は交渉が得意ではないんだが……。
マリアベル/でも、こういう子がいると放っておけない性格でしょ?
GM/「…………」 凄く、凄く凄く不満そうだが、GP-01は部屋を出てくる。
サクラ/おっ、まさか本当に少年を釣り上げてくるとはな。一杯するか?
P-27/それでは1人追加ですしゲームもリセットにしましょう。次は何のゲームをするのですか?
サクラ/他にできるトランプゲームというと……ポーカー……いや大人数で初心者がいるとなると、神経衰弱とか七並べとか戦争とか?
鉄/お前は何やりたい。GP-01に尋ねる。
GM/「…………」 凄く、凄く凄く嫌そうな顔をする。何も答える気は無い。
サクラ/ここはコミュニケーションの場だぞ。嫌そうな顔をするな。そういう顔をすると友達失くすぞ。そもそも友達いないのか?
P-27/おや、トランプを一戦しただけで友達を語れると? 浅いですね。
鉄/無自覚に煽るな(笑) ……さっきと同じでいいだろ、大貧民で。GP-01、お前ルール分かるか?
GM/頷く。
マリアベル/キャシー、逆転のチャンスよ。って≪大地の使徒≫で応援するわ。じゃあまた全員2D6で勝負ね!

【トランプで誰が勝つか 3回戦(2D6)】
 鉄→6
 P-27→7
 マリアベル→6
 キャシー→9
 サクラ→8
 航→5
 GP-01→8


マリアベル/あっ、そう言ってたら早速キャシーが大富豪になった!(笑)
GM/キャシーが「やったー! ようやく勝てたー!」と喜ぶ。一方で航が「ははは、負けちゃった」と敗北。GP-01は……この中だと出目が高い。富豪ぐらいか。
鉄/お前、やるじゃないか。
GM/「…………」 褒められても調子に乗るようなタイプではない。早く終わりたい、部屋に戻りたいという顔をしている。
サクラ/気難しい奴だな。顔に出して嫌がるのは子供のやることだぞ?
P-27/僕は7……負けでもなく勝ちでもなく、平民ですね。コツが分かってきましたので次の戦いでリベンジできます。
鉄/もう3回もやってるんだぞ、いいかげんにしろ……(笑)
マリアベル/みんなと遊んで、勝ったり負けたりお酒を飲んだりおつまみを食べたり、楽しく夜が過ごせたわね〜。特技を8個使って、『現在難易度:9』になったところで【理知】判定をするわ。(ころころ)……え? ファンブル?
鉄/いきなりファンブルか!?(笑)
P-27/いきなりですね。……何か特技を使いますか?
マリアベル/えー……その、戦闘をしっかりするセッションだと思うしあまり特技回数を減らしたくないなぁ……。ごめんなさい、このまま失敗にします。
GM/初回失敗になった。じゃあマリアベルは大失敗のロールをしてくれ。
マリアベル/気持ち良くお酒を飲んでいたら、自分のベッドにお酒をドバッと零しちゃった! 服もビショ濡れにしちゃった!
鉄/あー、おいおい!?(笑) ホテルのフロントに電話するぞ……。
サクラ/騒ぎ過ぎてしまったな(笑)
P-27/他の部屋の能力者達からも「何してんだ、あそこ」って見られますね。でも楽しかったから良しとしましょう。
マリアベル/はーい、せっかくの楽しい時間に水を差してごめんなさーい……。
サクラ/ビショ濡れだけに。
鉄/何?(笑)
サクラ/ふふふ、なんでもない(笑)
GM/ホテルの人がシーツを何とかする。キャシーもこれには「これで今日はおひらきにしよっかー」と苦笑い。航は「今夜はもう寝るんだよー」と退散準備。GP-01は……白い目で見て、無言で去っていく。
マリアベル/ううっ、何も言えない。こうなったらヤケ酒だー!
サクラ/酒なら付き合うぞー。同じエルス同士、新兵器について夜通し語り合おうじゃないか!
鉄/だからこれ以上飲むなよ(笑)


 ●ミドルフェイズ2/P-27 〜日々〜

P-27/さっきの判定の続きを、自分が引き継ぎましょう。交流して経験値を積むのも立派な勉強ですから、とまだ就寝しないで出歩くことにします。

『AF判定:仲間との交流』
 ・使用能力値:【体力】【理知】
 ・難易度:25

※「仲間と交流する」演出に成功すること。
 成功した場合、戦闘に有利になる絆を得ることができる。


P-27/とは言え、一人で出歩いては「交流」になりませんから、どなたかシーン参加をお願いします。出来ればヤケ酒してない人が。
マリアベル/ちょっとファンブルを反省してますので、不参加で〜(笑)
サクラ/マリアベルの酒に付き合うと言ってしまったので、サクラも不参加で。キャシーも一緒にいると思うので、女子組は不参加かな?
鉄/じゃあ俺と……航と、GP-01を出そう。男だけのシーンだな。
GM/P-27はどっちにもなれるらしいが。翌日にしてもいいし、数日経ってもいいことにする。ただし飛行機に乗ってルーマニアには行かないように。その前にしなくちゃいけないAF判定があるからな。
P-27/異端の大群と戦うためにも事前調査をするでしょう。その間の前線部隊は鍛錬をしていることでしょう。という訳で、修行をしているんでしょうね。マスターは。
鉄/修行をさせられた。
P-27/航先生やGP-01も鍛錬に付き合ってくれるんじゃないですか。鍛錬が終わったら一緒に食事をするんじゃないですか。そこで交流です。
GM/鉄の鍛錬に付き合わされた航が「はぁ、疲れたー」って言いながらレストランで食事をすると。……P-27って食事できるのか?
P-27/人間の真似なら得意ですので。必要ありませんが。
サクラ/必要無くても食事を一緒に取ってくれるんだ。
鉄/ドラえもんだってドラ焼きを食べるしコロ助もコロッケ食べるんだからP-27も食うだろ。
P-27/ドラえもんと同格にしていただけるなんて光栄ですね。
鉄/……喜ぶところなのか、そこは?(笑) GP-01も食べる、よな?
GM/GP-01は普通の人間なので鍛錬が終わったら黙々とカレーでも食べてるよ。黙々と。
マリアベル/もぐもぐ、もぐもぐ(笑) ほら、食べてるだけじゃなくて交流してー。
P-27/……ところで、先生とマスターはどのように出会われたのですか? 友人関係と伺っておりますが。≪過去視≫です。
鉄/…………。俺が好きに語っていいか?
GM/いいよ。
鉄/研究者なのに研究成果が出なくてベソベソ泣いてるこいつを蹴飛ばして仲良くなった。
P-27/それは……仲良くなれる要素があるのですか?(笑)
鉄/航はやれば出来る奴なんだ。でもエンジンが掛かるまでが長くて、俺が蹴飛ばしてやる気を出させたらそれなりの研究者になれた。俺が無茶ぶりすれば大抵のことは泣きながらなんとかしてみせるからな。火事場の馬鹿力が凄い奴なんだって評価されたんだ。
GM/「自分がこんなにも追い詰められなきゃ何も出来ないタイプだって、教えられたのは鉄のおかげだよ」
P-27/夏休みの宿題は最後までやらないタイプですか。
鉄/よくそんな知識を持ってるな、お前(笑) 航は実力もあるし、ひらめきも凄いが、それが平時に使えない。だから俺が適度に引っ叩いてやって、そのおかげで……という設定にする。
GM/そういう設定にされた。こいつ、遅咲きの研究者だったんだ(笑) 「いやあ、あのとき鉄に貰った激励の言葉は今も忘れられないよ」
P-27/どのようなお言葉だったのですか?
GM/「それはー……えー……えーとー……」
鉄/…………。覚えてないのかよ。
GM/そう簡単に良い台詞なんて思いつかねーよ(笑) 「お、覚えてる! 覚えてるけど……ここで言っても全然良い言葉じゃないから言えないなあ……!」
P-27/忘れたの誤魔化しましたね。
鉄/誤魔化したな。
GM/「忘れてない! 秘密なだけだから! いやほんとに鉄には感謝してるんだって!」
鉄/こいつ、雰囲気からして友達少なそうだろ。だからなんか友達になってやったらいつの間にか付き合いが長くなった。
P-27/そういうマスターも友達が多そうには見えませんがね。
鉄/あん?
P-27/ニコニコ。
GM/「鉄は、友達多いと思う。ちょっと怖いけど、何も成果が出なくて落ち込んでいた僕に声を掛けてくれたし、マリーみたいな凄く可愛い子とも気兼ねなく話すし、サクラみたいに堂々とした人とも物怖じせず対応してるし……すぐにP-27とも打ち解けるし」
鉄/…………。コーヒーぶっ掛けていいか?
GM/「照れ隠しにそれは、ちょっと……(笑) 急遽、失敗作のホムンクルス実戦配備が決まってどうしようと慌てたけど、鉄が一緒に見てくれるなら何とかなると思ったよ。まあ、ちょっと口が悪いし手が早いのは玉にキズだけど……」
鉄/コーヒーぶっ掛けようとする。
GM/うわあっ!? 早速!?(笑)
鉄/失敗作失敗作って、うるせえな。俺の機嫌を逆なでて楽しいのかテメーは。
マリアベル/あ、そっちなのね。
サクラ/怒るの、そっちなんだよなぁ。
鉄/言われて嫌なことぐらい知っておけよ。ったく。
P-27/…………。いえ、その。別に僕は失敗作と言われても嫌ではありませんよ。事実ですし。そういうPCの設定で提出したのは自分ですし(笑) どちらかと言うと急遽実戦配備なんだなと驚いてました。
GM/それは……元々シナリオでは「機関の強化人間が配備」だけだったところをPCでも機関キャラが参加することになったから、急遽シナリオ変更した。まさか人造人間がくるとは思わなかった(笑)
鉄/俺はP-27を蔑ろにする発言には怒るキャラでいく。
サクラ/それはとても良い方針だと思う。……サクラもマリアベルも、錬金術師で兵器開発の組織だからかホムンクルスに対しては道具のように考えているからなぁ。
マリアベル/私、実はモブ作成の従者操作のキャラメなの……。配下PCを使い捨てで戦うタイプだから、P-27とは仲良くするけど根っこの部分ではアイテム扱いしちゃうかもしれない……。
P-27/…………。マスターは滅多にいない人種ですね。
鉄/そうか? 俺は普通の人間だ。
P-27/正式稼働して1ヶ月。それまでは研究所の試験官の中で、培養液の中で2年間を過ごしました。失敗作ですから、なかなか外に出られなかったんですよ。研究員の皆さんはたくさんいましたが、その中にマスターのような人はおりませんでした。
鉄/それは……予想がつく。みんな白衣着た航みたいな奴だろ。
GM/「僕も研究員だから白衣は着てるけど……(笑)」
P-27/この1週間、マスターは色々なことを教えてくださいましたね。
鉄/普通に生活してただけだ。……何を教えたっていうんだ。
P-27/色々ですよ。貴方が普通に接してくれていること、それは僕にとっては新鮮で、どれも勉強になります。≪リバース≫の演出です。これからも貴方にとっての普通のまま、僕に世界を教えてください。ニコニコ。
鉄/その取って付けたようなニコニコはやめろよ。
P-27/穏やかな口調で笑顔を浮かべて接する人は好印象を持たれやすいのです。これは円滑に交流を図るテクニックですよ。これはうまく表情を作っている、≪肉体復元≫ですね。……食事を終えたなら、散歩でもしませんか? きっともう夜ですけど。
GM/「夜の散歩か。のんびりできていいね。……と言っても僕、ここら辺に何があるか全く知らないけど」とボヤく航。
鉄/そんなの俺も知らん。みんな日本人だろ。ドイツのこの辺の事情なんて知るか。
P-27/残念ながらルーマニアの地理に関しては知識を積め込んでいたのですが、単なる経由国のドイツは勉強不足ですね。≪空間知識≫ですぐさま周囲の状況を判断しつつ、散歩をします。
鉄/まあ……ただの散歩だから、どうにでもなるだろ。……適当に腰を下ろせる公園とかないか。
GM/あったことにする。ちょっと市街を出た普通の公園。遊具があったりするからそこに腰掛けて話すぐらいはできる。
鉄/自販機でジュースやコーヒーを買って渡す。ほらよ。航とGP-01にもやるぞ。
P-27/ありがとうございます。……公園だから、猫でもいませんかね?
GM/じゃあ、黒猫を発見した。
P-27/猫がいましたね。マスター、あの猫で面白いことをしてください。
鉄/はあ?(笑)
P-27/僕の周囲には猫で面白いことをする研究者は一人もいませんでした。マスターなら新鮮で勉強になることをしてくれると信じています。期待してますよ、どうぞ。≪未来の吐息≫!
鉄/なんだよその無茶ぶりは(笑) 夜に黒猫か……ちょっと怖いな。あー、猫と掛けまして、怪談話と解きます。その心は、どちらもキャーと(キャット)となります。
サクラ/えっ、天才?
マリアベル/サクラが、ガチ声で驚いてる(笑)
P-27/……凄い、いやぁ、マスターは、凄いです。まさか10秒で応じるとは(笑)
GM/散歩に付き合わされているGP-01は、少し離れた所でコーヒーを飲みながら無言。ただ航は「凄い……凄いよ鉄、やっぱり君は凄い人だ……!」。
鉄/いやそこまで言われても!? あんまり嬉しくないしそろそろ判定してもらいたいなぁと!?(笑)
P-27/いえマスターは凄い人ですよ、今の凄さが分からないんですか。私がこの素晴らしい一幕の解説を致しましょうか?
鉄/やめろ解説する必要無いし恥ずかしいから! ここは普通に猫と遊んで楽しかったとかのシーンにしろ!(笑)
P-27/そうは言ってもですねマスター。ほら僕、猫に触れたら猫爆発するかもしれないし。≪アンドショック≫で。
鉄/そこは上手く制御できたことにしろよ……(笑) 令呪を使うぞ。お前は誰の命も奪わない。これでいいか?
P-27/えっ。
GM/令呪消費。3つあるうち1つ消しておいてくれ。
P-27/……マスター。そういう大事な決断は、事前に相談をしてからに行なってください。そしてあまり具体的でないギアスは効果が発動しにくいことをご存知ないのですか? 令呪は立派なリソースなのですよ?
鉄/おー。さすがにこういうときはニコニコできないんだな。そっちの方がお前っぽくていいぞ。
P-27/……貴方は、酷い人ですね。どうしてここでニヤニヤ笑うのか、よく判りません。電波ですか。理解不明です……≪電波受信≫。
GM/じゃあ、そんなP-27の足元に黒猫が近寄ってくる。触れても、爆発はしない。……静電気みたいのが走って猫が驚くかもしれないが。
鉄/おい猫、逃げるなよ。もう少しそいつと遊んで行け……それともGP-01に抱っこされたいか?
GM/GP-01は無言で見下ろして猫を拒む。
鉄/その猫をサッと拾ってGP-01に手渡す。
GM/猫を抱いたら……「これを、どうしろと……?」という顔で訴えてくる。鉄を睨む。
鉄/人間と付き合うの苦手みたいだから、猫と仲良くできるタイプなのかと思って。猫は嫌いか?
GM/好きとか嫌いとかじゃなく……だけど投げ捨てたりはしない。
鉄/航。この野良猫、拾ってお前の猫にしろよ。こいつらの反応とか、楽しいことになりそうだから。
GM/(航になって)「えー、いきなりだなー……まあ、僕も猫は嫌いじゃないしそこの野良猫が許してくれるなら世話しちゃおうかなー……」
P-27/……意味の無い散歩どころか、戦略的にはマイナスですよ。まったく……と飲み終えた空き缶を≪念動障壁≫でカキーンとゴミ箱に入れて【理知】判定をします。(ころころ)達成値12で成功です。
GM/酒を飲んでトランプで遊び、一方では酒を飲み明かし、一方では散歩で話し合った。仲間との絆を深め合ったPC達は、『イベントキー:戦場の絆』を手に入れる。

 『イベントキー:戦場の絆』
 全員とのコミュニケーションが取れたことで、戦場でも仲間と臨機応変に対応できることを表わすイベントキー。
 戦闘で【体力】判定(難易度:10)に成功すれば、GMが許可する好きな配置エンゲージから戦闘をスタートすることができる。


GM/猫を抱いた航が、笑う。「ただの散歩だったのに、なんか楽しかったなー。今度はキャシーとサクラとマリアベルも呼ぼうか」
鉄/いや、駄目だろ。……女の子を夜間に歩かせるのは駄目だろ。
P-27/マスター。あの3人は「女の子」という年齢ですか?
鉄/お前、それ絶対3人の前で言うなよ。……女の子を夜に歩かせるのは駄目だ。何もせずに送ってやるんだぞ。分かったか、航?
GM/「な、なんでそういうこと僕に言うかなー(笑)」

 そろそろホテルに戻ろう。誰かが言い出した号令に、4人は夜道を歩いて行く。
 航は黒猫を抱きながら、「うちの子になるかい?」と尋ねた。首輪の無い野良猫は、4人にニャーと肯定する。
 ホテルに戻り……こっそり連れ帰り……翌朝、女性陣にカワイイカワイイと構われまくった猫は、鉄によってシンプルに「クロ」と名付けられた。

P-27/名前……付けろと言われましたが、自分もマスターに付けられたいかもしれませんね。いえ、考えるのが億劫だからという訳ではないですよ。……本当に。