ルリルラノイシュタルトハイ・リプレイ・異次元メルト
■ 第5話 『天運ハピィライフ』 ■
2009年1月8日




 ★オープニング


GM/レオ達と夕食を終えるとチャッピーが「今日はお疲れ様でした。お湯が焚き終わりましたので暖まってください」という顔をします。
翔悟/ありがとう。……みんな、疲れてるしお風呂に入ろうか! これから悲嘆山脈に行くんだし、英雄だけの会話がしたかったんだ!
GM/ではマーリンさんが立ち上がり言います。「男性方が先にお入りください。女の子達は部屋に戻りましょう」
メアリー/ええー……ワタシ、オジチャンと入りたーい!
ビクトル/マーリン、嬢ちゃんを宜しく頼むぞー(笑) 酒飲まされないように気をつけてなー。
メアリー/えーん、オジチャーン!
きずな/たぬぅ……若干沈んだ感じでお兄ちゃんを見送ります。
ヴォルト/……ん? たぬを撫でて見送ります。
GM/……では、レオと男性3人は温泉に入ります。レオは洗い場でくるくる髪をワシャワシャ洗ってますが。3人、湯船に浸かってるよ。
ビクトル/ざばーん。(湯船で気持ち良さそうに)あああぁー……やっとこれで元の世界に帰れるんだな。
翔悟/センセイ、その声の出し方はオジサンくさいっすよー。……そういやセンセイってオレより年下なんすよねぇ?

 翔悟→2002年に18歳。
 ビクトル→2016年に30歳。


翔悟/センパイって呼んでくださいよぉ!
ビクトル/い・や・だ! 死んでもいやだ! ありえんし絶対認めないからな!
翔悟/センセイの時代ってプレステいくつまで出てるんすか? 仮面ライダーって何やってるんですか、電車とかマジ無いっすよねえ!
ビクトル/知るかっ!(一同笑)
翔悟/……ところでさ。センセイって帰る気満々なんだね。メアリーのコトはどうすんの?
ビクトル/……アイツは、庇護する対象であってそれ以外の目で見られねえよ、今のところは。
ヴォルト/『今のところは』か(笑) でも悲嘆山脈の噂の出所も未だ不透明だ。お前らは元の世界に帰るつもりなんだな?
ビクトル/ああ、そのつもりだ。……アイツらだけで作戦遂行は無理だ、とガンドッグチームの顔を思い浮かべます。
翔悟/でもセンセイ、メアリーとチューしてたじゃん。オレ、写メったもん。
ヴォルト/……おめでとう?
ビクトル/おめでとうじゃねえっ!(笑) ……元々、作戦行動中にこの世界に飛ばされてきたんだ。俺の居るべき世界はここじゃない。お前らはどうなんだ?
ヴォルト/もちろん、帰るつもりだ。
翔悟/…………あ。そういやオレ達、帰るために悲嘆山脈へ向かってたんだっけ。
ビクトル/お、お前なぁ!(笑)
翔悟/……なんか最近みんなと居るのが楽しくて忘れてたけど、みんな……元の世界があるんだよね。……イッチーはどうするんだろ。
ヴォルト/……それは、市次第ということか?
翔悟/オレはイッチーと離れるなんて考えられないんだけど。……そういえば、イッチーの意見ってちゃんと聞いたことないな。
ビクトル/……じゃあ、どうする気だ。
翔悟/……。ザバーッと上がります。イッチーの意見、聞いてくる! 浴場を退室します。
ヴォルト/なるほど、アレは判りやすくていいな。そして(ビクトルを見て)お前は判りにくいな(笑)
ビクトル/アレぐらい能天気だとマジで羨ましいぜ(笑) ……そっちのたぬきの嬢ちゃんは、どうなるんだろうな?
ヴォルト/あの子は初めて会ったときから帰りたがっていたぞ。最初に泣きつかれたからな。
ビクトル/ならたぬきの嬢ちゃんは普通に帰って行くんだろうな。メアリーは……。俺は戦場を転々としているし、こっちの世界に来れば確実に危険な目に遭わせてしまう。
ヴォルト/……俺も似たようなことを思う。こちらに来たらアイツは死んでしまう。戦闘で必ず百パーセント誰かが死ぬゲームだし(笑) 
ビクトル/逆に、俺達が死んだらアイツらどうするって話になるしな。
ヴォルト/……つまりは、連れて行けん。どんなに頑張ってもな。
GM/しんみりと男性陣。一方その頃、同じ時間に女の子達は……たぬがお市ちゃんとメアリーの部屋に遊びに来たってことでいい?
きずな/それでいきます。……ションボリした顔で、たぬぅ……。
市/たぬちゃん……淋しい?
きずな/た、たぬ……帰らなきゃいけないこと、ちょっと忘れてたたぬ。お兄ちゃんと離れたくない……けど、おばあちゃんのとこ帰りたいたぬ……。
メアリー/(一方ケロッとした声で)2人は元の世界に帰るの?
市/……私は帰ろうと思う。翔悟さんと別れるのは寂しいけど……彼は未来の人だということは変えられないから。
メアリー/翔悟はどう思っているか判らないよ?
市/そう……だね。ちゃんと翔悟さんの話を聞いてみようかな。……俯きます。
きずな/メアリーはどうするたぬか?
メアリー/(大声で)ワタシはずっとオジチャンといっしょ! オジチャンのコト、大好きだもん!
市/……メアリーちゃんはそう言うと思った(笑)
きずな/……メアリーは強くていいたぬなぁ。
メアリー/メアリーが強いのはオジチャンが居るからだよ! だからオジチャンが居ない世界なんて考えられないんだ。……イッチーだって翔悟のこと、好きなんでしょ? なら翔悟について行ったら?
市/そ、それは難しいなぁ……。でも、元の世界に戻ってもいつか会えるんじゃないかって思う。帰ったとしても、きっと。
きずな/……でもお市、気付いてもらえないかもしれないよ?
市/……それでも私は構わない。
きずな/…………ここって竜宮城みたいだね。いっぱい思い出っていう玉手箱を貰うけど、開けちゃったらぶわってなっちゃう。
GM/複雑だなぁ。――そうしているとマーリンさんがお風呂に入りましょうと誘いに来ます。体を暖めて寝る時間になるんだけど……。夜にパートナー同士だけのシーンを立てたいと思います!

 体を暖め終えたヴォルトときずなは、2人の部屋で、2人だけの時間を過ごしていた。

きずな/……お兄ちゃんの膝の上にいるけど、微妙に元気が無いです。シッポも下がってます。
ヴォルト/7万Gの毛並みが寂しくなってる(笑) ……どうした?
きずな/なんでもないたぬ。……たぬぅ。
ヴォルト/なんでもないのか。
きずな/……お山、近くなったたぬね。
ヴォルト/そうだな。
きずな/…………。もう中の人が若干泣きそうだよ!
翔悟/泣けよっ!(一同爆笑)
きずな/じゃあボロボロと泣き始めます! た、たぬぅ……お兄ちゃんは元の世界に帰るたぬね。
ヴォルト/……涙を手で拭いてあげます。……別れるのは悲しいな。
きずな/たぬもおばあちゃんが待ってるから帰るたぬ……でも……離れるのはイヤたぬぅ!
ヴォルト/……なら、別れるまでの時間、精一杯一緒にいようか。悲しいけど、どうしようもないだろう? 今、一緒にいられる時間を大切にしないか?
きずな/たぬっ……。
ヴォルト/抱きしめます。
きずな/たぬう……?
ヴォルト/別に泣いていいから。
きずな/たっ……たぬうううぅぅ……。
ヴォルト/……俺も悲しくない訳じゃない。だけど、悲しいと思って終わりにしたくないだろう。
きずな/……最初、この世界に来たとき、なんでみんないないたぬか……寂しいたぬって思ったたぬ。なんでたぬだけがここに来なきゃいけなかったのか判らなかったたぬ。でも、ここに来たからお兄ちゃんに会えたたぬね。
ヴォルト/……うん。
きずな/だから、帰るときまで……たぬはもう泣かないたぬ! お兄ちゃんの頭に残っているのが泣き顔だったらイヤたぬ!
ヴォルト/ありがとう……。うん、ありがとう。

 一方その頃。レオの部屋では…………。

「あの。マーリンさんは」
「……はい?」
「マーリンさんは、帰ることができるようになったら……どうしますか?」
「前にもそのことを訊きましたね」
「はい……あっさり返されちゃいました」
「まだ、自分の気持ちが巧くまとまってないんです。ごめんなさい」
「……えっとえっと! マーリンさんの世界は太陽が無いから……太陽が見たいから旅をしていると言ってましたね! ……ボクの世界にも太陽はありません。でも、ボクの国に来てくれませんかっ?」
「…………」
「た、民の人達にはなんとか説得するです!」
「そのうち、きちんと答えを出しますよ」
「あ、は、はい……」
「……あの子達はどんな答えを出すのかしら。ここ、アーカイアに残るか、元の世界に帰るか、それとも。……新しい選択肢は、きっとある筈だから」

 ……そして、ビクトルとメアリーのシーンにうつる。
 メアリーはビクトルの部屋のドアを叩いた。


メアリー/ドアをドンドンドン! オジチャン開けてー!
ビクトル/あー、ハイハイハイガチャッ。ドアノブにぶら下がってるんじゃねーぞー(笑)
メアリー/うふふふふ。
ビクトル/……ああ? どうした、嬢ちゃん。
メアリー/あのね、オジチャン! ワタシ、ずっとオジチャンと一緒に居たいの!
ビクトル/……それは俺の世界に来るか、俺がお前の世界に行くってことか?
メアリー/うん! この世界に残るのもいいけどオジチャンは帰りたいならワタシはオジチャンについて行く!
ビクトル/それは駄目だ。
メアリー/なんでっ?
ビクトル/俺の世界はな、お前が住んでる世界とはだいぶ違う。魔法なんてものは無いし、俺も初めてお前に会ったときギョッとしたぐらいだ。そういうお前が俺の世界に来れば確実に異端扱いされる。
メアリー/……。
ビクトル/しかも魔法が俺の世界で使えるという確証は無いんだぞ。お前が自分で自分の身を守れなくなるかもしれない。それに俺の居る場所は常に戦場だ。お前を守る約束もできない。お前を守る前に死んでしまう可能性もある。そのとき、お前はどうするんだ?
メアリー/でも……危ないのはどこの世界だって同じだよ! メアリーの世界にだって魔法を使ってメアリー達のことイジメようとする人達がいるよ!
ビクトル/……お前の気持ちは、判ってる。ただ……。
メアリー/この世界だってメアリー1人じゃ何も出来ないし、オジチャンが居なくなったら誰がメアリーを守ってくれるの!? たとえオジチャンが死んじゃっても、メアリー1人で違う世界にいるより全然いい!
ビクトル/だが……お前が俺の世界に来て傷付くのは、俺にとって一番嫌なことなんだ。悪いが、お前は元の世界に戻って仲間達と楽しく暮らしてくれや。
メアリー/……キッとオジチャンを睨みつけます! メアリー、絶対諦めないから! メアリーの気持ちは絶対変わらないんだから! ……泣きながら部屋を出て行きます。
GM/……そうして、部屋に取り残されるオジチャン。
ビクトル/…………メアリーの居なくなった部屋で、頭を抱えて考え事をしています。

 ビクトルがメアリーのことを想うと同じ時間。
 ある場所で、ある2人が楽しげに話していた――。

「良い話、聞いたね」
「ヒホヒホ!」
「ああすればジェイの願いも叶うね」
「ヒホヒホヒホ!」
「あっちに行ったら今以上にアタシ、ガンバルよ」
「ヒホー」
「目標が出来た方が何かと動きやすいよねー。今はちょっぴりお腹減ってるだろうけど、もう暫く辛抱してね」
「ヒホ! 菊は、楽しいヒホか?」
「うんっ! ……くだらない学校生活をしているよりも、こっちでお金稼いで笑ってる方が、ずうっと楽しいわよ」

 ……そうして最後。翔悟と市の2人は……。


翔悟/雪ってもう降ってないんですよね?
GM/うん。ジェイが居なくなったから降ってはいないけど残ってはいるよ。その方が画面が美しいし(笑)
翔悟/じゃあ、お風呂上がりであったかいから外で静かにギターを弾いてる。
市/……そこに、トコトコと歩いてきます。
翔悟/真剣な顔で、ボロボロのクリストファーを弾きながら空を見てる。
市/背中に声を掛けます。……翔悟さんは、元の世界に帰りたいですか?
翔悟/ピタリと演奏を止めます。
市/止まったけど言葉を続けます。……私は、帰りたいと思います。その想いはこの世界に来たときから変わっていません。でも……さっき、メアリーちゃん達と話して気付きました。私は、翔悟さんの気持ちを何も聞いていませんでした。……私は翔悟さんが何を考えているのか、聞きたいです。
翔悟/……。月を背に振り返って……逆光の中、言います。
市/はい。
翔悟/オレは一緒にいたい。
市/……。言葉を失います。
翔悟/オレもイッチーの言葉、聞いてない。……本当に帰りたい? それだったらオレは…………。
市/やっぱり……聞いて良かったです。翔悟さんの言葉が聞けて、良かった。私も、一緒にいたいです。でも……私には夢があります。だから、その夢より優先させることはできません。ごめんなさい……。ポロポロと静かに涙を流し始めます。
翔悟/……フラれた。でもこれは、良いフラれ方だ(笑) イッチーが泣いてるのを見て、キメ顔を崩していつものヘロッとした笑顔に戻ります。ポンポンと頭を撫でて……。
市/……。
翔悟/ホントだったらオレ達、出会える筈なかったんだよね。
市/はい、そうですね……。
翔悟/でも、この世界で出会えたんだね。
市/……はい。
翔悟/ギュッと抱きしめます。……運命よりも強い絆があるってそれが判っただけでオレは満足だ。
市/…………はい。泣きやみます。
翔悟/自分の学ランをかけてあげるよ。寒かったね。ペンションに戻ろうか!
市/……そうですね。今度は笑います。
翔悟/手を繋いで部屋の前まで戻ります。じゃあ、おやすみ。
市/翔悟さん。……私には、元の時代に待っている人がいます。もし……翔悟さんが元に時代に帰ったら……今度は私が待ちます。
翔悟/背中でシリアスに聞いてるけど、振り返ったときには笑います。……イッチーが元の時代に戻って、夢を叶えて、その人と幸せになって、子供を生んだり孫が生まれたりして、その子達が全員幸せになるような歌をオレは唄い続けるから。……覚えておいてね。
市/……はい!
翔悟/おやすみ。……部屋に入ってダバっと泣きます。
GM/お市ちゃんは、先にメアリーが大泣きしてるところに帰ってくるのかな。
メアリー/わーんしくしく! ヤケ酒だよ! 絶対諦めないぞー!
市/そんなメアリーちゃんを見たら私も泣いちゃうよ……。メアリーちゃん、そんなに飲んだら体に悪いよ。
メアリー/飲んでも飲んでも飲み足りないよ、だって目から出ちゃうんだもん!(一同笑) いつもだったらオジチャンが止めてくれるのにー!
GM/そんな感じで皆さん、涙の一晩を暮らしてくださ……の前に。お市ちゃん。
市/……はい?


 ★シーン1


GM/お市ちゃんは無人の部屋に立ってます。
市/…………あれ?
GM/泣きべそかきながら就寝したんじゃ……と思いますが、視界の端に白いモヤがかかっています。どうやらここは夢の中っぽいね。
市/これは……霊的なものは感じますか? [歌術知識スキル]で判定してみます。(ころころ)成功。
GM/最初は夢の中と思った……けど、普通の夢じゃないとも思う。部屋にはメアリーはいないし、メアリーの飲み散らかした酒瓶も無ければ荷物も無くなっている銀朱亭だ。
市/め、メアリーちゃん? 部屋から出てみます。皆さんが泊まっている部屋を見ていいですか。
GM/たぬの部屋から声も聞こえないし、ビクトルさんの部屋も無人、レオ達の部屋も居ない。でも……とある部屋に、誰かが居ます。
市/……翔悟さん! 彼は起きているんですか?
GM/いえ、彼ではありません。「……お姉様っ!
市/えっ?
GM/翔悟が居ると思った部屋に入ると、そこには袴姿の女の子――ユカリちゃんが居ます。そしてお市ちゃんの胸にダイブ。
市/え、えっ? ……ユカリちゃん? どうしてここに。
GM/「お姉様! やっと会えました! 会えて良かったです……」とユカリちゃんは再会の涙を浮かべます。
市/どういうこと? 貴方もアーカイアに来ていたの?
GM/「そうです! でもお姉様に会えて良かった! ずっと会いたかったんです、寂しかった……」
市/貴方は……誰かと一緒にいるの?
GM/「はい……この世界に来て、とても良い人に拾われまして。今はその人のお仕事を手伝っています」
市/そうなの……ひとまずユカリちゃんを連れて部屋を出てみます。
GM/「お姉様、どこに行くんですか?」
市/他にも誰か居ないか探してみましょう。
GM/「居ませんよ。だってここは夢の世界ですから」
市/……え?
GM/「お姉様は夢を見ているんです。実際に私と会っているのではありません。私は、貴方に話をしたくて何度も会いに来ていたんです」
市/貴方は今……どこに居るの?
GM/「お姉様は悲嘆山脈の麓のペンションに居るんですよね? でしたら近くに居ます。…………お姉様は、噂を聞いてそこまで来たんですよね。あの世界に帰りたいのですか?」
市/私達のいた世界のことですよね? なら……うん、帰りたいと思ってます。私の居るべき世界はここではないですから。
GM/「帰らないでください!」
市/え? い、いきなりそんなことを言われても。
GM/「あの世界は、数年後に大変なことになります!」
一同/……あっ!

 プレイヤー一同、声を上げる。
 その理由は……市の出身舞台『ゴーストハンター02』詳細にて。


市/……どういうこと? 知らないので首を傾げます。
GM/「今日、私のところに来た人が私達の未来のことを教えてくれました。最初はお姉様に会うためだけに探していましたが……。このことをお姉様に伝えたかったんです! お姉様、この世界に残ってください! この世界に居てくれるなら私が貴方を守ります!」
市/……え?
GM/「守れます!」
市/でも……私の気持ちに変わりはありません。強い口調でキッパリと断言します。
GM/「けれど、これから大変なことになるんです! 日本の何万という人々が亡くなります。その1人がお姉様になるかもしれません」
市/……ありがとう。気持ちだけ貰っておきます。
GM/お市ちゃんに断られて、ユカリちゃんは項垂れます。「……私、貴方の近くにいます。本当に会えたとき、もう一度訊きます……そのときまでにどうかお心を変えてください。私は、貴方を守れますから」お市ちゃんから離れ、部屋の奥に下がります。
市/後を追いかけますけど……。

『戦いは好きじゃない。
 だけど、せめて安らかな眠りとともにいけますように。
「おやすみなさい、良い夢を……」』


GM/綺麗な声で呟くと、彼女の姿がパァッと霧のように消えていきます。そうしてどんどんと視界の白いモヤが広がっていく。

 ああ、もしかして朝なのかな――市は他人事のようにそう思った。
 同じ頃、メアリーも夢を見ていた。


GM/――メアリー。ここで今日のランダム運勢を見ましょう。
メアリー/(ころころ)あ、[探知の歌・大地の調べ]だ。ライトアップできるようになりましたー。
GM/さて、メアリーが目を覚ましますと、ここはどうやら夢の世界。白いモヤがかかった無人の部屋で、イッチーも居ません。
メアリー/イッチー居ない? バタバタ探してみます。
GM/……ある部屋にだけ人が居るような気配があった。それは、翔悟の部屋だ。
メアリー/誰か判らないのでコソコソいきます。自分を[隠蔽スキル]で隠しながら……。
GM/どうやら中で人が話しているような気がする。あ、イッチーの声かな? ――具体的に言いますと、例のイッチーとユカリちゃんが話しているシーンを一部始終見ていたということです。
メアリー/バッチリキラーン。壁に耳アリ、障子にメアリー!(一同爆笑)
GM/2人の会話はメアリーには判らない内容だけど、必死に説得しようとする女の子と、それを断るイッチーであることは確かだ。暫く見てると女の子がパーッと消え、続いてイッチーも消えていく。
メアリー/2人とも消えちゃった?
GM/うん。けど、まだメアリーは消えません。貴方は翔悟の部屋の前に居ます。
メアリー/とりあえず色んなところを調べようと……。
GM/いきなりスタッフルームの扉がバンと開きます。そこには、ルーズソックスの女子高生。
メアリー/あ。
GM/「あっ。……は、早く戻してー!」菊が叫ぶとパーンと姿を消します。
メアリー/え、えええ? 今のって……お菊ちゃん……だよねえ?
GM/驚いているところで、貴方の体がどんどん消えていく。この感覚は夢から醒めるのと同じだ……というところでシーンを切ります。


 ★シーン2


GM/朝チュンチュン。メアリーが目を覚ますと、隣のベッドでイッチーが寝ているのを確認できるよ。
メアリー/……イッチー、起きて! 何してたの!?
市/……メアリーちゃん? あれは、夢?
メアリー/メアリーも見てたよ。スタッフルームにお菊ちゃんが居たんだよ!
市/え……彼女が居たの? なんで……?
GM/皆さん起きてください。憂鬱な朝です。
翔悟/おっはー! みんな起きてー! 部屋中に響くような声で、キモチイイ朝だぜー!
ビクトル/お前は朝っぱらからうるせえよ……。
メアリー/その足元にちょこんと。良い笑顔で、オジチャンおはよ! 
ビクトル/あ、ああ……おはよう、嬢ちゃん。
きずな/おはようございます……。ちょっと目が赤くなってます。
市/おはよう、たぬちゃん。
きずな/……お市ちゃんも目赤い。泣いたの? 翔悟がイタイイタイしたの?
市/そうじゃないのよ。翔悟さんのせいじゃないよ。
GM/廊下で話している6人に「朝食ができてますよ、大広間にお集まりください」とガープスさんが看板を持って歩いてくる。
翔悟/朝メシ食べに行こう! ……で、朝食中にイッチーの様子が変だと気付いて話しかけます。どうしたの?
市/実は昨日……夢ではないところで友人に会いました。ユカリちゃんが言ったことを話します。ユカリちゃんに「私が守ります」って言われて……。
翔悟/んだとぉ!?(一同笑)
GM/ビクトルと翔悟は、ユカリちゃんが何を伝えようとしたのか気付いてくれても構いません。……たぬは日本史の勉強をしてたならOKだよ。
きずな/ゴンちゃんが教えてくれたんじゃないかな。
ビクトル/そういや浪人生だった!(笑) ……ああ、そういやジーサンがそんなこと話していたな。
翔悟/……言っていいのかな? 結構イヤな話だけど、いい?
市/……大丈夫です。
ビクトル/第二次世界大戦のことを話します。……全世界が2つの陣営に分かれて全力で消耗戦をする。市街地にも無差別攻撃されるわ、飢饉は起こるわ、男は連れて行かれるわ。(オープニングを思い出して)……確か婚約者も軍人なんだから会えなくなるだろうな。
市/そんな……ことが?
翔悟/だ、大丈夫! 日本滅亡してない証拠がオレだから!(笑)
きずな/ゴハン食べられなくなってタイヘンだったっておばあちゃんが言ってた。お市ちゃん、たぬのゴハンあげる!
メアリー/メアリーのおにぎりも分けてあげる!
ビクトル/今っ!?(笑) これから先の問題だろうが!
ヴォルト/……で、それを知ったからってお前はどうするんだ?
市/……それでも、私の帰りたいという意思は変わりません。
GM/ではそこにチャッピーが事務の顔をしてやってきます。「皆さんのチェックアウトの時間ですが……」
ヴォルト/今日はもう出て行こう。体力は回復したしアイテムも買い揃えたからな。
翔悟/あ、そうだ! 山脈に向かう前に、写メ撮っていいかな?
ヴォルト/…………しゃめ?(笑)
メアリー/シャメってなーに?
翔悟/ハーイ全員集合! ガープスさん、写真お願いしまーす!
GM/「判りました。皆さん集まってください」と中央に集合させます。ハイハイ近寄ってー。
メアリー/オジチャン、抱っこしてー!
ビクトル/ハイハイ……。
翔悟/寄り添ってピースで!
ヴォルト/……ピースって何だろ。
きずな/ピースは平和だってゴンちゃん言ってた!
翔悟/そう、平和のサインだから!
GM/――ピロリン。ガープスさんの腕によって、プロが撮ったような美しいブレの無い写真が出来上がります。ついでに充電も一瞬でしておきました。
翔悟/さっすが。ガープスさん、何でもできる!(笑)
ビクトル/あ、山脈に行く前に俺も買い物してもいいですか?
GM/どうぞ。ガープスさんのお土産コーナーに行けばアイテムが売ってます。
ビクトル/……嬢ちゃん、コレやるよ。[身代わり人形]を買ってあげます。
メアリー/お……オジチャン?
ビクトル/嬢ちゃんはHPを削る技を使うからな。
メアリー/……オジチャン、コレ大切にするね!


 ★シーン3


GM/――さて、雪は降ってないけど厳しい山脈を登ります。険しい山なので、肉体消耗チェックを行ってください。……そんな感じでゼハーゼハーと山脈を登っていくと……数時間歩いたところで、山小屋のようなものが見えてきます。ペンションだとか大きいものではないですね。
ヴォルト/……アレか?
ビクトル/一応[偵察スキル]で怪しくないか調べてみよう。(ころころ)お、成功。
GM/古臭い山小屋で、他におかしいことはない。やや広めの一軒家だなと思いました。
ヴォルト/もしアレじゃなかったとしても一旦休もうか。
きずな/山小屋まで行きます。……コンコン、入ってますか?
GM/暫く声は聞こえませんが、中から音が聞こえてきます。暫く待つこと数分。パッと顔を出したのは……「お姉様!」
市/あ……もしかして、ユカリちゃん!?
GM/うん、お市ちゃんと似たような格好をした女の子が出てきます。はあはあと息を切らせてやって来て「はい、お姉様……」
市/こんなところに居るなんて……。皆さんにも紹介します。私のお友達のユカリちゃんです。彼女が私の夢に出てきたという子で……。
GM/「ごきげんよう」と挨拶します。「お姉様のご友人方ですね、どうぞお入りください」
翔悟/「お姉様」か。……翔悟の気力消耗チェックが入ります(一同笑)
市/なんで!?(笑)
GM/中に通してもらった小屋は、一応人が住んでいるのであろう一軒家です。それなりに戸棚と机があり、奥の方には部屋がいくつかあるらしい。「出せるものは限られてしまうんですけど……」
市/そんなに気を遣わなくていいのよ。
翔悟/イッチー、オレに敬語じゃない喋り方をしたことない! 隅っこの方で三角座りしてます!(一同爆笑)
ビクトル/お前はたびたびセッション中に悶絶するよな(笑)
市/……そういえば、ユカリちゃん。貴方を助けてくれたって人は今ここに居るの?
GM/「え……はい……居るんですけど、今はちょっと……えっと」モゴモゴとします。
市/……うん?
GM/するとすかさず、奥の部屋の方から「……ユカリ?」と低い男声が聞こえてくる。
きずな/わっ?
GM/ユカリちゃんが慌てます。「す、すみません。少しお待ちになっていただけますか?」
市/あ……はい、いいですよ。
GM/ユカリちゃんは奥の部屋に行ってしまいました。部屋の先は廊下になっているようで少し走っていきますが……すぐに帰ってきます。「皆さんは、例の噂を聞いてやって来たんですよね……。なら、ここが、その終着点になっています」
メアリー/え、ここが?
市/もしかして……ユカリちゃんが歌姫?
GM/「違います。私の……運命の人が歌姫をやっていまして。私は英雄だそうで……」と、頑張って話します。何か違和感に気付いてください。
ヴォルトビクトル/(ころころ)成功!
GM/では、一生懸命必死になってユカリちゃんが言葉を選んでいることに気付きます。
ビクトル/……一生懸命? 何か変な感じがするな。ヴォルトに目配せしてみます。
ヴォルト/ん……? こちらもちょっと黙ります。で、その歌姫は?
GM/「な、中に居るんですけど……ちょっと出られません。でも、皆さんを強力な転移とリンクの歌で元の世界に帰すことはできます」
メアリー/できるんだ!
GM/「で、でも! 今は出来なくて……そうだ、一晩! 一晩でいいんで泊まっていってはくれませんか? 食事は簡素なものしか出せませんけれど……」
ヴォルト/……何か違和感はあるが、ここで変に断れないな。頷こう。
きずな/よろしくたぬー!
GM/では、……すぐに夜は更けていきます。夕飯を食べ終わり、タオル1枚ぐらいの寝床を用意されます。
翔悟/雑魚寝で修学旅行みたいだ!(笑)
きずな/たぬの7万G分の毛並みでお兄ちゃんを暖めるたぬー。
GM/……と、みんなが布団を敷いているとき、ユカリちゃんがお市ちゃんのところへやって来ます。「お姉様……お話をしませんか?」
市/あ……夢で話していたことですね?
GM/「はい。もう一度ちゃんと私のお話を聞いてほしいのです」
翔悟/三角座りから立ち上がって、イッチーの隣に当たり前のように並びます。どーも、イッチーの英雄の翔悟です!(一同笑) オレ運命の人宣言をします。
GM/「あ、はい、英雄さんですか……貴方も一緒にお姉様を説得してくれませんか。お姉様、一旦外に行きましょう?」
市/テコでも動きませんが、ひとまずは彼女の話を聞きましょうか。ユカリちゃんについて行きます。
翔悟/オレは当然のことのようについて行きます。
ビクトル/では……そんな2人を見送ります。
GM/……お市ちゃんと翔悟は山小屋の外に出ます。夜空の下、ユカリちゃんは翔悟の前だとしても変わらず、夢で話していたことをもう一度言いますね。「お姉様、考え直してください。とても悲惨なことになると聞いています……」
市/……でも、私の居場所はあそこなんですよ。待っている人も居るんです。
GM/……そんな会話を翔悟は聞いています。
翔悟/ぶわっ、ハートフルボッコ!?(笑) 待ってる人って親だよね、男じゃないよね!?(一同笑)
GM/じゃ言っちゃお。「手紙の婚約者の方やお母様に会いたいという気持ちは判りますが、お姉様の命が一番大事です!」(笑)
翔悟/気力消耗チェック×3!(一同爆笑) でも最後の言葉は同意しよう!
GM/それでもお市ちゃんは動かないんだよね? ならユカリちゃんは翔悟にも訴えてくる。「お姉様は死ぬかもしれない世界に帰るって言うんですよ……それでも貴方は行かせるのですか?」
翔悟/……オレはイッチーの決めたことなら止めないよ。
市/……翔悟さん。
翔悟/確かに悲惨な時代があったことは事実だけど、その後にちゃんとみんな立ち直って愛や平和を歌ってるよ。そこまで立ち直れるようになったのは、過去でイッチー達が頑張ってくれたからだ。
GM/「それでも、私は……」とユカリちゃんはまだ苦い顔をしています。――さて一方その頃。雑魚寝の4人組のシーンなんだけど、【知力】判定をして何かに気付いてください。
ヴォルトビクトルメアリー/(ころころ)失敗です。
きずな/(ころころ)あ、たぬだけ成功した……。
GM/そろそろ寝るたぬよー、とぬくぬくしている時でした。……奥の部屋で何か魔術が使われている気がする。
きずな/たぬっ? 魔術のことはメアリーに言った方がいいよね、話しかけます……。
GM/いや、メアリーに話しかけようとした時。いきなりたぬきの頭の中にある映像が流れ込んできます。白昼夢のように。
きずな/たぬっ……!?
GM/……誰かがとある部屋で椅子などを蹴倒している。そして殴りかかっている? そんな光景がたぬの頭の中へ……。
きずな/大変な修羅場!? こ、これは、おばあちゃんちで見た……火サス!?
GM/……という訳で、メアリーに話そうとした瞬間「火サス!?」と叫ぶたぬき(一同爆笑)
メアリー/かさす!? かさすって何!?(一同爆笑)
きずな/船越が崖の上でー!?(笑)
ヴォルト/全く何を話しているのかサッパリ判らない!(笑) フナコシって何だ!?
きずな/2時間ドラマの帝王……じゃなくて!(笑) 奥の部屋で魔術、使ってるたぬ!
GM/改めて耳を澄ましてみると、奥の方が騒がしいような気もする。
ビクトル/何が起きてる? ダッシュで見に行きます!
GM/扉をバンッと開くと、そこは長い廊下。廊下の奥へ走っていくと……遠くから走り寄って来る足音が聞こえます。
ヴォルト/……誰だっ?
GM/ダッダッダ……と駆けてくるのは、見たことのない男性。ローブに身を包んだ二十四歳ぐらいの男です。
メアリー/「二十四歳ぐらい」……って(笑)
GM/……全員[回避スキル]で判定を!
ビクトルメアリー/(ころころ)失敗!
ヴォルトきずな/(ころころ)成功!
GM/走って来ながらも魔術を使うローブの男。失敗したビクトルとメアリーを眠らせます!
ビクトル/なにっ! バターンと倒れます!
メアリー/もきゅー。眠りますー。
GM/障害物を減らしてそのまま走り逃げようとする男。……追いかけるなら【敏捷】で判定を。
ヴォルト/しまった、【敏捷】はそんなに高くないん…………待って、[ツンデレ]で絶対成功だ!(笑)
きずな/そうだ! 2人とも眠ってくれてありがとう!(笑)
GM/こ、これは……あーあ(笑) これは仕方ない、[ツンデレ]の効果でヴォルトさんの追いかける行為が絶対成功になります。長いローブをヴォルトさんが掴んだんですね。
ヴォルト/仲間に何をしてくれた!
GM/「うっ……」と呻き声を上げる男。その声がユカリの名前を読んだ男性のものだと判ります。「…………ここから逃げろ」
ヴォルト/えっ? わ、判った。2人を抱えて逃げようとしま……。
GM/ではここで【知力】判定を。
きずな/(ころころ)成功です。
GM/なら普通に気付いていいよ。……逃げろと言うなら何故2人を寝かせた? 「判った」とヴォルトさんが言って力を緩めた瞬間、男は逃げようとした!
ヴォルト/取り押さえます! 何なんだ、お前は……?
GM/また奥の方から誰かの走ってくる音が聞こえる。
ヴォルト/またか? 今度は誰だっ?
GM/タッタッタと走ってくる足は止まらず、貴方達の視界に入ったのは……ルーズソックスの女子高生。
きずな/あっ、お菊ちゃん!?
GM/お菊はヴォルトさん達を見るなり、チッと舌打ちしますが、咄嗟に歌術を使います。
ヴォルト/身構えます!
GM/使用するのは……[支配の歌・唾棄されし者どもの変奏曲]。対象は……逃げようとする男!
きずな/ああっ、そういうことか!
GM/逃げようとしていた男の動きがピタリと止まり、菊の居る方へと移動します。「……アンタ達、この人に用?」
ヴォルト/……さっきの声からして、あの男がリンクの歌姫か。
きずな/なんでお菊はここに居るたぬか?
GM/「この人に用があるからよ。…………アンタ、リンクの歌術を使って!」そう菊が叫ぶと男は何か呪文を唱え、菊と共に消えます!
きずな/あーっ、逃げたー! メアリー、起きるたぬー!
ビクトル/その声に俺も起きます。んん……四方確認して簡易行動で立ち上がります!
メアリー/むにゃー、オジチャーン、結婚……。
ビクトル/(1秒で)しねえから。
メアリー/あれ、ここってまだ夢なの?(一同爆笑)
ヴォルト/オオイ、お前らな!(笑) アイツら逃げたんだぞ、しっかりしろっ!
GM/――さて、翔悟チームはまだユカリちゃんと言い争っているところなんだけど。
翔悟/オレは英雄ですけどなにか!?(笑)
GM/「私も英雄ですよ!」
翔悟/負っけねーぞー! オレはイッチーの英雄ですけど!?
GM/「わ、私だってお姉様を守れるだけの力は……!」とそんな火花を散らせている中、ある部屋の窓からポーンと何かが出てきます。
市/あれ。……あれは?
GM/「ヒホー!」
翔悟/あ、ヒホだ。
GM/ヒーホーと雪だるまのオバケは空を飛んで……ユカリちゃんの隣に着地します。
翔悟/何でお前こんなところにいるんだ……?
GM/その瞬間、パァンと魔術の衝撃が起きます。気付くとそこにはルーズソックスの女子高生と、ローブの男性が立っている。
市/わっ……!
GM/ユカリちゃんが男性の方を見て「ジュドウさん……!」と驚く。同時に、お菊ちゃんの方を見ると怯えたような目をします。菊がパチンと指を鳴らすと、ユカリちゃんの視界もフッと暗くなる。
市/あ……ユカリちゃん!
GM/「なんか知らないけどお話中ゴメンネー。いきなりコイツ逃げ出すんだもん、順序がバラバラになっちゃった。アタシ達を大人しく送っていればいいのに」
翔悟/ワケが判らねーよ、順を追って説明しろ!
GM/「……アンタら来ちゃうだもん。お市ちゃん一人だけは助けたいっていうし。でも……ムカつくなぁ」
翔悟/ムカつくなんて、今時ハヤんねーよ!
GM/「ジェイ、どう思う?」「他の世界を食べに行く前にまずコイツらを潰すべきだヒホ!」「そうだよねっ!」……笑って、ジェイと菊は奏甲に乗りこむ。
翔悟/わあっ!
GM/同じようにユカリちゃんとジュドウと呼ばれた男も、菊に言われるがままに奏甲に乗る。
市/ユカリちゃん……!
翔悟/……イッチー、行くよ!
市/はい! 翔悟さんの手を取って奏甲に乗ります。
翔悟/ユカリちゃんは……撃たない方がいいよね?
市/出来ればそうしてください。友達を撃ちたくはないです……!
GM/3体奏甲が山小屋の前に現れますが……突然、菊が叫び声を上げます。「ちょっと、やめてよぉ!」
翔悟/えっ?
GM/誰かと言い争っている感じでしょうか。でもジェイとは言い争ってるのではなく、菊は1人で叫び、ギッとお市ちゃんを睨みます。
市/私……?
GM/「アンタ! アンタだけなら……助けてやっても、いいわよ?」
市/私だけ? ……翔悟さんはどうなるんですか?
GM/「どうでもいいわよ、大切なのはアンタだけみたいだから!」
市/……その時点で交渉決裂です。私1人では行きません。
GM/その返事を聞いて、菊は誰かに向かって叫びます。「……だってさ! とにかく、大人しくアタシに従いなさいよ!」――ではそこで、残り4人も山小屋から出てきてください。
ヴォルト/よし。たぬを抱えたまま奏甲に搭乗して、翔悟機の前に割り込むようにして入るぞ!
ビクトル/こちらも乗りこみます!
GM/菊が暫く一人芝居をしていましたが、落ち着いて6人に話しかけます。「……アンタらの世界で、一番平和なトコってドコ?」
ビクトル/平和なトコ……?
きずな/どう考えてもたぬきだな。『ほのぼのあったかろーるぷれいんぐ』だし(笑)
GM/ですよね。「どう見たってたぬきのトコロだヒホー!」「そうねえ……ユカリちゃんだったっけ? たぬきの中、調べておいで」
きずな/たぬっ?
GM/すると、たぬきが乗ってるサブコクピット内にあたたかい何かが舞う。蝶々のようなものが蠢いてます。
きずな/何たぬか……掴もうとします。
GM/しかしそれは幻。パァッと蝶々が弾けます。「へえ……アタシ達の時代から十年ぐらい前かぁ。……おいしそうな人が沢山いるね、ジェイ!」
きずな/たっ、たたたたたたぬぅ!?

 □●□■□□   ●→翔悟機、★→ビクトル機
 □▲□▼□□   ▲→ヴォルト機、▼→ジェイ機
 □★□□□□   ■→ユカリ機

GM/険しい山脈なので1マスごとに局地戦のマイナス修正が発生します。ではイニシアチブ判定。(ころころ)こちらは6です。
きずな/(ころころ)ごめん、2!
GM/「先手必勝だヒホー!」歌姫の菊のターン。[呪いの歌]を翔悟機にかけます。(ころころ)成功、翔悟機のダメージ値にマイナス3しました。
翔悟/うわっ、下げにきた!
GM/その後にジェイは[バズーカ]をビクトル機に飛ばします。(ころころ)成功、50ピッタリのダメージ!
メアリー/(ころころ)わ、[左腕]だから……いきなり壊れます。
ビクトル/そこならまだ平気だ。壊す装備は[小盾]にします。
GM/次にユカリちゃんの攻撃を翔悟機に。(ころころ)……失敗。同じく男が翔悟機に[攪乱の歌]ランク2を使用。(ころころ)こっちは成功、命中と回避にマイナス10してね。
翔悟/わあ、どんどん弱体化されていく……?
市/その分を取り戻します! [輝きの歌]ランク3を使用。歌術の効果をレベル分だけ上昇させます。(ころころ)成功!
翔悟/イッチー、残った手番で敵のデータを調べてくれないかな? ……その前に局地戦効果を軽減させるために、1歩敵から離れます。
市/はい。[歌術知識スキル]でお菊ちゃんを調べます。(ころころ)成功です。
GM/お市ちゃんは何度かお菊ちゃんに接触してきたことだし、より詳しく彼女と交感することができますね。……では菊のデータは以下の通り。

 [モラルレス][忌み歌使い][やり手][能力アップ]
 [幻糸の歌]ランク1〜2[攪乱の歌]ランク1〜2
 [呪いの歌]ランク1〜2[パンティ爆発出身]
 [オリジナル能力/イヤボーン]


市/い、[イヤボーン]……?(笑)
GM/『パン爆』では、失敗を大成功にさせるという演出なんですが、今回は[ヤンデレ]の上級技として作りました。……効果は『HPを2D10することで、ダメージをプラス5D10する』ものです。
翔悟/うわ、強力! 歌術は全部オレ達に使ってきたものだね……。では、オレの番なので攻撃します。
GM/2体いるけど、どっちに?
翔悟/イッチーの願い通り、ユカリちゃんを攻撃しません。絆のNGに引っかかっちゃうからね。……だからお菊ちゃんの奏甲に向かって[多目的ミサイル]を撃つ!(ころころ)成功、ダメージは42!
GM/ちゃんとNG行動を気にしてくれてるか、良いなあ。……そのままダメージを食らっておきます。
メアリー/はーい、メアリーの番だね。[神々の雄たけび]ランク6を使用! 菊ちゃんの奏甲に、ランク5と組み合わせた技を使います。[ヤンデレ]を使用して自分に4D10のダメージを食らわせて……(ころころ)菊ちゃんに25のダメージ! 同時に回避修正にマイナス20がきます!
ビクトル/嬢ちゃんサンキュ! ……1マス、ジェイ機から離れて移動し、ジェイ機に[多目的ミサイル]を撃ちます。(ころころ)成功、27点のダメージ!
GM/うーん、後衛の2体はどっちも後ろのマスに下がったか……。
きずな/その方がいいたぬ。お兄ちゃんに[ストラーマイン序曲]ランク4を使用します!(ころころ)成功。お兄ちゃん、いっぱい動けるようになーれ!
ヴォルト/ありがとう、2マス動きます。
きずな/そしてユカリちゃんの歌姫を[歌術知識スキル]で見ます。何が来るか判らないって怖いよね。(ころころ)ギリギリ成功!
GM/ではたぬきが彼を見てみると……様々なことが判ってきます。まず男性の名称は、『野槌のまじない師』。
きずな/わー、『深淵』の人だー(笑)

◆『深淵』
 著者は、朱鷺田祐介。幻想と狂気、運命と絶望が織りなす硬派なストーリーテリングゲーム。超越者に翻弄されながらも自らの人生を「美しく」彩っていく。『夢歩き』という白昼夢をイメージしたシステムがあり、情景豊かなシーンを演じていく。

『野槌のまじない師』は幻術師としての技量に長けているが、魔法の使い方に疑問を感じ罪悪感を感じている。また、ローブで身を隠しているのは足が茶色の獣毛で包まれているから。
 彼の設定年齢はルールブックによると二十四歳。だから「二十四歳ほどの」という曖昧で普通ワカンネーヨという言い方をしたのである。
彼の能力は、以下の通り。
 [病弱][幻糸抵抗力][奇跡的回復]
 [転移とリンクの歌]全ランク[戦闘補助の歌]全ランク
 [攪乱の歌]ランク1〜2
 [深淵出身][オリジナル能力/夢歩き]


きずな/[病弱]ってことは、この人[身代わり]持ってるよ!(笑)
ヴォルト/また庇わせてくるな……。ジェイ機に向かって攻撃する(ころころ)成功、55点防御無視ダメージ!
GM/じゃ、早速能力がバレたんで男がお菊達を庇いまーす。
翔悟/あー……前と同じ光景だー(笑)

 ●□□■□□   ●→翔悟機、★→ビクトル機
 □□□▼□□   ▲→ヴォルト機、▼→ジェイ機
 ★□□▲□□   ■→ユカリ機

GM/ジェイがビクトル機に攻撃。(ころころ)成功したので……こっちも能力がバラされた[イヤボーン]を使います。ダメージは……全部合計で56。
メアリー/(ころころ)当たったのは[胴体]だ……HP10点残して生きてるよ!
GM/次に菊のターン。ビクトル機に[攪乱の歌]。(ころころ)成功、命中値にマイナス10するよ。そして今度はユカリちゃんが目の前のヴォルト機を攻撃!(ころころ)……失敗。
ヴォルト/……よし、かわせた。
GM/男性が、ヴォルト機に[攪乱の歌]。(ころころ)成功、命中値マイナス10。
きずな/今回は、パラメータの下げあいだな……。
市/みんなを強化します。[打撃増加の歌・剣と盾のノクターン]ランク2を、[ルリルランマイク]を使用して全員にかけます。ダメージを3プラスレベル分の効果を(ころころ)MP5消費で、成功! 全員にプラス8です!
翔悟/オレは先に強化されているので13アップします!
市/それと、[現世知識スキル]でジェイの奏甲を調べます。(ころころ)成功。
GM/調べてくれたか。それではジェイの奏甲のデータを公開するよー。奏甲の装備武器は[バズーカ]と[通常爆弾]。ついでにジェイの能力も見せるね。

 [局地戦エキスパート][やり手][レンジャー][加虐/被虐]
 [真女神転生ノクターン出身][オリジナル能力/命運]


市/……めいうん?
GM/『メガテン』に出てくるヒーローポイントのこと。ルリルラ的効果は、『1回のみ、自分または味方のダメージを÷2する』です。
翔悟/まだ使ってきてないよね。そんなら[歌姫アクション/破壊工作]! 2D10MPを消費して防御無視ダメージにします。(ころころ)10点MP消費……[多目的ミサイル]で、[EPP]を重ねてダメージは65の防御無視!
GM/……ここで使わずしていつ使うか。ジェイ、[命運]使用。
メアリー/あ、GM……メアリーの番なんですけど。ユカリちゃん達は操られているから戦闘に参加している感じですよね?
GM/うん、そうだよ。
メアリー/ガープスさんにやったときのように、精神支配で上書きして解放したいんですけど、ダメですか?
GM/……いいですよ、半ばこう来るとは予想していました。
メアリー/じゃあ、[支配の歌・唾棄されし者どもの変奏曲]を使ってユカリちゃんたちを助けます!
GM/菊が「そんなことはさせない!」と歌術で対抗してきます。
メアリー/……その対抗判定を[ヤンデレ]を使ってクリティカルにします。(ころころ)ぷきゃー、通常HPが8だ!
GM/では次、メアリーの歌術が成功するかの消耗チェックをしてね。
メアリー/はい! 更に[ヤンデレ]を使うのでダメージを(ころころ)キャー、死ぬー! でも成功! 
GM/全て成功したか。……これでメアリーはユカリちゃん達を支配することができました。ユカリ機がグラリと揺れ、戦闘を続行できないほど動きが鈍ります。
ビクトル/よし、嬢ちゃんよくやったぞ! こちらはジェイ機に[クラスアーツ@ガンアクション]を使用して、2回攻撃します。1回目……(ころころ)35点ダメージ。2回目は(ころころ)29点ダメージ!
きずな/HPが危ないメアリーを回復させようとします。[花びらの子守唄]を使用。(ころころ)成功、36点回復たぬ!
メアリー/ありがとー! ちょっと元気になったよ。
ヴォルト/……たぬ、すまんが[歌姫アクション/ぷに]って出来るか? それを使って[槍/棒スキル]の成功率を上げてもらえれば[攪乱の歌]を帳消しにできる。
きずな/できるたぬ! 気力チェック2回を行います。(ころころ)成功、お兄ちゃん頑張れ! ぷにっ!
ヴォルト/ありがとう。……ジェイの奏甲に[ハルバート]で攻撃。[加護Aトール]を使用。(ころころ)成功、神の一撃……74点のダメージ、シャドウウェポンで防御無視!
GM/おお、74か……これは大きい。
メアリー/もう庇ってくれる奏甲も無いよ!
GM/うん……ダメージ半減させる能力も無い……けど。
市/……けど?
GM/(暫く計算して)……算出した結果が、残りHP……1(笑)
きずな/1ぃ!? ど、ドングリ投げるたぬドングリ!(笑)
GM/1話と同じになっちゃったね(笑) ……けど、1だけ残ったというとても素敵な状況なので演出しよう!「ジェイ、あれやるよ!」
ヴォルト/なんだ……自爆か?
GM/パチン! ――菊が指を鳴らす。するとパキィイインと何かが割れる音!
翔悟/うわっ! 結界が破れたか!?
GM/それに……[イヤボーン]使用!
メアリー/ええええっ!?
GM/もう誰かのHPを0にするのは不可能と判断したので、蟲化させることにしました。……まず[イヤボーン]の効果を算出。(ころころ)全部で……34点。
市/わあ……GMの出目が高い。
GM/……皆さん。今回第5話、今まで蟲化チェックを1度もしませんでしたよね?
ヴォルト/ああ、しなかったね。
GM/ここでまとめてやるつもりでした。という訳で、悲嘆山脈の濃度10D10プラス34の蟲化ポイントをチェックしてください!
一同/うわーっ!(ころころ)

 一同、怒涛の蟲化チェックを行う。一時は120越えの蓄積蟲化ポイントまで溜まってしまうキャラクターもあり。
 しかし……たぬき以外は全員60オーバーだったにも関わらず、1人も蟲化の異常を発するキャラクターはいなかった。


市/い、いたたた……。
きずな/みんな、大丈夫たぬか……?
ヴォルト/……きずなが無事なのを見てホッとします。
ビクトル/嬢ちゃん、無事か……?
メアリー/げ、元気だよー……あちこち痛いけどぉ。
GM/そうお互いを気遣っていると、ユカリちゃんと男が奏甲の中から頭を押さえながらも出てきます。「お姉様、大丈夫ですか……?」
市/は、はい……良かった。貴方も無事で。
翔悟/とりあえずユカリちゃん達は平気なんだな。近付こう。
GM/どちらも苦しそうではあるけど大丈夫そうです。……それと、ジェイの奏甲はピクリとも動きません。
ヴォルト/ユカリ達が喋れることを確認したら、俺は菊とジェイがどうなったか見に行きます。
GM/奏甲のコクピットは開きません。抉じ開けるなら[鍛冶工作スキル]でどうぞ。
ヴォルト/(ころころ)成功。
ビクトル/こっちも手伝おう。(ころころ)成功。
GM/ビクトルとヴォルトの大人2人がかりでコクピットを抉じ開けると、――その中に、血を吐いて倒れている彼女と、寄り添う彼が居ます。
ビクトル/……。脈を確かめます。
GM/……さっきまであたたかかったんだろうなと思う。ジェイは大人しく隣に居ます。何も言いません。
きずな/奏甲の下から空気を読まずに訊きます。お兄ちゃん、お菊ちゃんとジェイはどうしたたぬー?
メアリー/どうなったのー?
ヴォルト/……。菊は死んでる。
きずな/ぴた。……顔色無く止まります。……なんで?
ビクトル/……『パン爆』世界での能力を使用していたからですか?
GM/うん。具体的に書かれてないけど『失敗を大成功に変えるほどの代償を払う』のが彼女の世界なんだ。……そしてコクピットを覗き込んでいるビクトルとヴォルトは目にします。雪だるまの背中がビキッと割れるのを。
ビクトル/距離をとります。
GM/ジェイの体が変わっていくような気がした。ビキビキと違うものに変化していき、一番最初に貴方達が見た小蟲のようになっていく。
ヴォルト/……蟲化が進んだか。
ビクトル/銃を構えます……。
GM/ビクトルさんが銃弾を撃ちこみ、そしてヴォルトさんがランスで体をぶち抜く。蟲は蟲としての声を出す前に、おとなしくなります。
ヴォルト/……遺体は、菊と共に埋めてやろう。
ビクトル/……胸糞悪いぜ。慣れている2人でやります。
GM/これで戦闘は終了です。……埋葬してやると言ってくれたので、そうしてあげてください。


 ★シーン4


GM/ユカリちゃんは男性を介抱しつつも話を始めます。「……強力なリンクの歌が使える歌姫がいるという噂を流したのは、私です」
市/……貴方が?
メアリー/なんでそんなコトしたの?
GM/「ジュドウさんの世界は夢を見せる世界であるように、私がいた世界にはある能力が……人を操る力があるんです」
きずな/(市を見ながら)たぬ……?
GM/英雄ユカリの能力を公開します。

 [ダブルクロス ウィアードエイジ出身]
 [オリジナル能力/ソラリス]


ヴォルト/……ぶっ!(笑)
ビクトル/『ゴーストハンター』じゃなくて、『ダブルクロス』か!

◆ダブルクロス
 著者は、矢野俊策(F.E.A.R.)。
 『レネゲイド』と呼ばれる未知のウィルスの影響で超常能力者となった少年少女たちが、平凡な日常を守るために非日常の力を駆使して戦うライトノベル的サイキックTRPG。
 通常ステージは現代(平成)とされているが、レネゲイドウィルスは様々な時代に存在するため、平安時代や戦国時代でも超能力者を活躍させることができる。『ウィアードエイジ』は第二次世界大戦前が舞台になる追加ステージである。

 ソラリスとは、空中に薬を散布して幻影を見せる能力を持った者で、ユカリの外見はダブルクロス基本ルールブックの『水晶の瞳』をイメージしている。決め台詞は「おやすみなさい、良い夢を」。


翔悟/ああ、たぬちゃんに見せた蝶々はそれだったのか……。
ヴォルト/だからか! 夢の中で言った台詞も納得した!
GM/「噂は誰かから伝えられたものではなく、私自身が散布して、まるで自然にその話が伝わっているかのようにさせたのです」……つまりはソラリスの能力で空気感染でみんなを洗脳したんです。「なんでこんな噂を流したかと言いますと、みんなを戻す方法がここにあるからです」
ビクトル/転移とリンクの歌で戻れるというのは本当なんだな?
GM/男性がコクリと頷きます。「ここはとても幻糸の濃度が高い。私とユカリは[幻糸抵抗力]があるからこの山でも生きていける。[幻糸抵抗力]が無くても私達の場所まで辿り着けたのなら元の世界に戻すことができる」
きずな/……ホントだったんだ。
GM/ユカリちゃんが言います。「彼がここに居る限り、人々を元の世界に戻すことができるんです。だから彼はなんとかこの力をみんなに知ってもらいたいと思いました。けれども、この世界では情報を伝える手段が無かった……」詳しくは2話参照です。
ビクトル/ああ、確かに情報が届かないから起きた話だったな……。
翔悟/こ、この人、いいひとだ……。
ヴォルト/……なんというか、この2人も難儀だなぁ。別世界から引っこ抜かれて、それでも他人を送るためにこういうことをやってるんだから。
GM/「君達がここを訪れたときに、もう雪だるまと彼女は来ていた。彼らは別の世界に行き、雪だるまの願いを叶えようとしていた。こことは違う強敵のいない世界に行って、その住人達を食らうつもりでいたらしい」
ヴォルト/で、逃げ出したときに俺達に鉢合わせして……俺達が菊の仲間だと思ったと?
GM/「その通りだ。すまない。あらためて訊くが、君達は噂を頼ってここに来たのだろう? なら私は君達の願いを叶えよう」
きずな/じゃあ……おばあちゃんに会えるたぬか?
GM/ユカリちゃんが答えます。「はい、できます」
きずな/たぬ! ……喜んだ後に、お兄ちゃんを見て寂しい顔をするけど、笑います。
ヴォルト/……頭を撫でます。これでやっと帰れるな。
GM/「どうか今日はお眠りになってください……。あと、お姉様」
市/はい?
GM/「……やはり私は、賛成できません」
市/……貴方は、残るんですね。
GM/「……はい。私はここに残ると決めました」
市/なら……私もですよ。
GM/「……」複雑そうな顔をしてユカリちゃんは下がってしまいます。それでは今夜はここでみんなで眠ります。明日の朝にはお別れですよ――。


 ★シーン5


GM/……最後の日です。ユカリちゃんとジュドウが6人の前に立ちます。ユカリちゃんが貴方達の記憶を探り、その光景をジュドウに見せて『任意の場所』を理解した彼が歌術を唱える仕組みです。
きずな/…………。
GM/まず、ヴォルトさんとたぬのお2人から。ユカリちゃんがたぬの前に立ちます。「操られたときに1回見ましたけど、もう一度私に見せてください。貴方の帰りたい場所を思い浮かべて」……貴方の行きたい世界はどこですか?
きずな/……一名小路に帰りたいたぬ。『ゆうやけこやけ』の世界に帰って、神社のあたりに戻ります。
GM/ユカリが目を閉じると……蝶が舞います。そして精神を落ち着かせるエフェクトが発動します。そしてユカリが見た光景を[交感スキル]でパートナーの彼に伝えます。次に、ヴォルトさんを見て「貴方は?」
ヴォルト/……アスガルドがあるところに行きたい。
GM/ああ、クエスターの最終目的地ね。では、精一杯思い浮かべてください。
市/……たぬちゃん、今までありがとう、いいこでね。ヴォルトさんも本当にありがとうございました。
メアリー/抱きついて、たぬちゃんじゃあね。バイバイ!
ビクトル/……ヴォルトに握手を求めます。世話になったな、達者に暮らせよ。たぬきの嬢ちゃんも元気でな。
翔悟/お幸せに、頑張ってくださいね。やっぱ笑っている方がカッコイイッスよ!
ヴォルト/お前らもな。ビクトルに握手をして、翔悟に初めて親指立てる。ありがとう。……そして、きずなを撫でます。
きずな/……たぬ?
ヴォルト/俺はな……やるべきことがあるから元の世界に戻る。だから、やるべきことが済んだらそっちに行けたらいいな。
きずな/ニコッと笑います。約束だたぬよ。ほっぺたにチューします。
ヴォルト/……ああ、約束だ。

 ジュドウがリンクの歌を唄い始める。
 ヴォルトときずなを、今まで見てきたものとは比べ物にならないほどの大きな光が包み込む。2つの光は別々の世界へと消えていく。彼らの姿もそれぞれ違う路へ消え去っていった。


GM/――次に、ユカリちゃんはビクトルさんの方を向きます。「貴方達の行きたい世界はどこですか?」
ビクトル/2016年、8月9日。作戦行動をしていた……エルトロスに!
GM/ユカリちゃんはビクトルさんの記憶を覗いて、見たこともない悲惨な所に驚きます。「本当にそこでよろしいのですね……?」
ビクトル/ああ。硝煙と銃声があるところが俺の居場所だ。
GM/メアリーの方にも向きます。「貴方は?」
メアリー/ワタシは、オジチャンと一緒に……!
ビクトル/(声を遮るようにして)嬢ちゃん! 自分の世界に帰んな。
メアリー/ヤだ!
ビクトル/……首から指輪のネックレスを出します。コレ、ずっと持ってるからよ。お前はお前の世界に帰れ。
メアリー/ユルセルームに……。でもっ! メアリーはどんなに言われたってオジチャンと一緒にいたいのっ!
ビクトル/嬢ちゃん……。
メアリー/……。
ビクトル/……。
メアリー/……。
ビクトル/…………言っておくが、何があっても俺は責任をとりきれないかもしれないんだぞ。
メアリー/自分のコトぐらい……自分で責任とる!
ビクトル/……。
メアリー/……。
ビクトル/……あーあ。いっつもいっつもワガママ言いやがってよ! ……抱き上げます。
メアリー/オジチャン!? お……オジチャン、だぁいすきーっ!
GM/「……貴方は、彼と同じ世界に行くのでいいんですか?」
メアリー/ハイッ! もう一生離れませんっ!
GM/では、敢えてユカリちゃんはメアリーの世界を覗かない。貴方の思い出の中のものとします。
翔悟/メアリー、やったなこのー! このこのこのー!(笑) お幸せにー! 
メアリー/ありがとー、超幸せになるー! イッチーもちゃんと自分のキモチに正直になりなよ! メアリーみたいに!(笑)
市/ビクトルさんも今までありがとうございました。メアリーちゃんとお幸せに!(笑)
ビクトル/アンタもな、大和撫子も……自分の意見を抑えるのもホドホドにな。
翔悟/センセイ、ありがとうございました! 本物の先生にするかのように頭を下げます。
ビクトル/お前にも世話になったが……もうちょっと落ち着いて大人になれよ。
翔悟/……オレの方が年は上なんだけどな。
ビクトル/俺は絶対に認めんからなっ!(笑)
翔悟/センセイ、いつかどこかで会うこともあるかもしれませんけど、お幸せに。ビシッと敬礼ごっこをします!
ビクトル/……まったくもう。逆だっての、敬礼は右手だ!(一同爆笑)

 メアリーを抱いたビクトルを眩い光が包み込む。
 1つの光が、2人の向かう世界へと1本の路で繋がっていた。


GM/――ユカリちゃんはお市ちゃんの世界を知っているので敢えて記憶を覗きません。翔悟の方を見ます。「貴方の世界は……」
翔悟/東京です。
GM/……横浜じゃなくて?
翔悟/新宿駅にいたから。何年とも言いません。それと、イッチーを先に飛ばしてもらえますか。
GM/はい。その前にユカリちゃんが貴方の記憶を覗きます。「とても、豊かな世界ですね。これが未来……」
市/……ユカリちゃん、貴方もどうかお元気で。
GM/涙ながらにお市ちゃんを見て頷きます。「はい、お姉様……ごきげんよう」
市/深くお辞儀をします。翔悟さん、ありがとうございます。
GM/それでは、お市ちゃんの体をリンクの光が包み込みます。
市/翔悟さん…………本当に、待ってますからね。
翔悟/……消える瞬間に、イッチーの手を掴んで一緒に飛びます!
一同/ああああああぁーっ!(笑)

    ◆

GM/エンディングは1話のオープニングの逆で、男性陣を中心としたシーンを演出します。ヴォルトさんは今、どこにいる?
ヴォルト/アスガルドのそば……我々、クエスターの最終目的地に。
GM/多くのクエスターたちが夢見た大地が目の前に広がっているんですね。ここに来ることが、彼らに会う前の一番の夢でした。そしてやっと辿りつくことができました。
ヴォルト/他人の力だがな……。
GM/でも、全ての人が果たせない願いを叶えたんですよ?
ヴォルト/ああ。……そこには剣が刺さっていて、引き抜くと瘴気が消えていくんだ。
GM/……カツカツとひとり前へ進んでいく。
ヴォルト/この世界に蔓延る瘴気も、戦争も、きっと……アイツの世界には無いんだ。

「きずな…………今、会いに行く!」
「…………うん、待ってるよ」


    ◆

GM/犯罪の街、エルトロス。あっちでは仕事をしないパトカー、こっちではいかがわしいお店で下世話な男達が何か取引をしている、そんな世界です。
ビクトル/現在、作戦行動中です。そのいかがわしい店から出てくるマフィアの男をライフルのスコープ越しに見ています。……俺が発砲したと同時に全員突入しろ。
GM/ガンドッグチームの一員が「了解した」と無線で応じます。
ビクトル/数秒経ったのちに、銃弾が発射され……標的が倒れます。
GM/次の瞬間、キャーという女の悲鳴があがる。そして店を取り巻く声は男達の怒声へと変わっていく……。
ビクトル/全員突入! ふぅ、俺の仕事はこれで終わ…………あれ? なんでバックパックが膨れてるんだ? 中を見ると……。

「ぷはーっ! オジチャン、お仕事お疲れサマ!」
「お前っ!? おとなしく家で待ってろって言っただろうがぁー! まったくお前は何度も何度も荷物に入り込みやがってー!」
「オジチャンのコトが心配だったからイザとなったらメアリーがエーイって出てこようと思ったの!」
「そんな状況に陥らねーっつーの! ……あ、撤退命令が来た。お前、おとなしくしてろよ――ッ!?」

   
 ◆

GM/翔悟が目を開くと、アニメや映画でしか見たことないような古めかしい日本が広がっています。ここは、翔悟の世界から八十年前の東京です。
翔悟/ヒューッ、あれがモガか! これからの時代、パツキンはツライねー!
市/あ、あの……翔悟さん?
翔悟/オレ、東京って言ったからね。嘘言ってなーい!(笑) ……一晩考えたんだけどさ。やっぱり前にも言ったけど、ラブアンドピースじゃん? 幸せになる人って多いほうがいいじゃん?
市/……はい。
翔悟/イッチー、幸せになりたいじゃん? オレも幸せになりたいじゃん? 日本全国幸せになりたくね? 世界中……幸せになれたらサイコーだと思わない?
市/それは……一番だと思います。
翔悟/で、イッチーがワガママ言うなら、オレもワガママを言うことにした。だから、イッチーの世界に一緒に行く!
市/……そっか。それを聞いて笑います! でも私の世界に来たのはいいですけど、これからどうするんですか?
翔悟/うーんと、そうだな……オレはこれから日本で何が起こるか知ってるんだよね。これから起きる戦争の悪いところは日本にも結構あるんだ。
市/はい……。
翔悟/さっきも言ったよね、「世界中が幸せになればいい」って。……あと、オレが[特命転攻生出身]だってことは知ってるよね?
市/はい?
翔悟/推奨行動『理屈をこねる奴を大声で黙らせる』があるんだよ。ということで……今から国会議事堂に行ってくる!(一同爆笑)
市/え、ええええぇっ!? だ、大丈夫ですかっ?
翔悟/イッチー、ついて来てくれるよね? ――手を出します。
市/……あ。
翔悟/オレは、運命よりも強い絆を信じるよ!
市/……はいっ!
翔悟/国会議事堂に2人で駆け込みます! [ルリルランマイク]も持ってる! クリストファーも生きてる!
市/そこで私が歌術でライトアップ!(笑)
翔悟/[歌姫アクション/破壊工作]で政治の仕組みを破壊する!(一同爆笑) イケイケのノリノリで、国会議事堂でワーワー言ってる政治家達の前にギターを持って現れます! [ルリルランマイク]で効果は4倍!(笑)

「戦争なんてくだらないぜ、オレの歌を聞けえぇ――っ!」

   
 ◆

ビクトル/(モノローグ風に)――2016年。仕事でちょっくら日本に来たビクトル。お約束の通り荷物にメアリーが入っていてちょっとゲンナリ(笑)
メアリー/ワタシを連れて行かないだなんてヒドーイッ!(笑)
GM/(モノローグ風に)「あー、お客様ー、ゲートはこちらになりますー」……と言ってるゴンちゃん。
ビクトル/ゴンちゃん、空港に就職したのか!?(気を取り直してモノローグ風に)――ふと、空港にある大きなテレビ画面を見たビクトル。そこには、あるニュース番組が放映されていた。『サクジツ、ノーベル平和賞を受賞された石巻翔悟元首相は』……あれえっ!?(一同爆笑)
メアリー/ええっ、これが翔悟なのぉ!?(笑)
きずな/(モノローグ風に)『奥方の石巻市さんと共にノルウェーの会場入りしました……受賞席には元首相の愛したギター、クリストファー十七世が』(笑)
ビクトル/……空港で、ポカーン。
きずな/(ゴンちゃんになって)「お客様、ゲートをお通り下さいー」

 空港中に、いや日本全国に、いやいや世界中に笑顔を振りまく仲睦ましい老夫婦……石巻翔悟と石巻市の、とても幸せそうな笑顔が全世界に映し出されていた。
 少しだけ歴史の変わった未来に、誰もが羨む強い絆に結ばれた2人の笑顔が――。


GM/――というところで『ルリルラ・ノイシュタルト〜異次元メルト』、これにて終わりになります! お疲れ様でした!
一同/お疲れ様でしたぁーっ!




『ルリルラ・ノイシュタルト〜異次元メルト』 完