アナザーワールドSRS・リプレイ
■ 『 忘却の彼方になるエゴイスト 』第1話 3ページ ■
2016年3月12日




 ――30年前のこと。上からの命令とはいえ、一方的に人を殺した。
 震える手の中で、彼は自分の感情に愉悦が混ざっていることを知ってしまう。
 「人を傷つけて悦になる? そんなの、人を害して快楽を得る異端と同じではないか」
 いけないことだと少年時代に苦悩した日々。しかし頭の中で引っ切り無しに囁き続ける「それでいいのよ」という女の声。受け入れてしまえばなんてことのない、誘惑の声。

 『ねえ、今まさに……苦悩を共に分かち合っていた友を殺したら、途轍もない快楽が得られるとは思わない?』
 「ああ、思うとも。匠太郎達に殺させる訳にはいかん。殺すなら……傷めつけるなら、榴湖もその娘達もみんなこの俺の手で!」


榴湖/あ、ありがとうございます……(笑)
雪代/そして181点も食らったら死にます。……≪ライフコイン≫で蘇ります。
榴湖/おかえりー!(笑)
GM/一本松は行動済になった直後、≪機関「一族出身」≫を使用。

 ≪機関「一族出身」≫
 機関を創り出した「仏田一族」出身であることを表わすライフパス特技。
 行動済になった直後に使用。即座に未行動になる。このメインプロセスの間、すべての判定クリティカル値−2、ファンブル値+2。


珠希/クリティカル−2だとぉ……!?
GM/つまり全行為判定クリティカル値7、ファンブル値4です。……では、≪EP:範囲攻撃≫で3人に攻撃します。(ころころ)まさかの、出目が6。クリティカルもファンブルもしません。
榴湖/なんとぉ!?
GM/……えええええ。なんか……やだ!
珠希/腑に落ちないですよね、せめてクリティカルかファンブルのどっちかになってほしい(笑)
GM/≪修羅≫を使用して振り直します!(ころころ)出目が8。クリティカルしました。
榴湖/やべーな!(ころころ)回避18です。
雪代/(ころころ)こっちも当たりますね。……≪英雄の宣言≫を使用します! モブも庇います!
GM/ダメージロール!(ころころ)物理ダメージ138点ですね。
雪代/弾かずに戦闘不能。≪不屈≫を使用します!(ころころ)残り【HP】3点で生きてます。
珠希/珠希は待機を宣言します。【MP】が無くて何もできないので。
榴湖/そしたら榴湖が、マイナーアクションで≪興奮剤≫を3本使います。(ころころ)味方全員の【MP】を21点回復します。
珠希/わー、やったー! いっぱい回復したー! ぴょんぴょん!(笑)
榴湖/メジャーアクションで≪肉体復元≫。(ころころ)うわ、出目が酷い! 全部出目が3以下で、38点……。
雪代/……令呪を使ってください!
榴湖/それなら、味方全員の【HP】58点回復します!
GM/雪代くんの【HP】は特技のリソースになるしね、いっぱい回復しておくのは良いことだ。次は、リレーをしていた珠希ちゃんのターンだよ。
珠希/≪乱れ撃ち≫+≪覇魔矢≫+≪幻の射撃≫で攻撃します! 範囲攻撃なので、一本松さんとモブさんに!(ころころ)命中25!
GM/一本松は先ほどメインプロセスを終了したで、クリティカル値は9に戻りました。(ころころ)回避22です。
珠希/命中やった! ダメージロールを……。
GM/ストップ。使えるときに使っておこう、一本松が≪零力射撃≫を使用。命中判定をファンブル化にします。
珠希/……それは打つ手が無い。命中ファンブルになります。
GM/≪重圧撃≫を使用。ファンブルをしたキャラクターと【反射】判定対決をして、負けた対象をバステ:重圧にさせます。珠希ちゃんの≪零力射撃≫を封印する目的です!

 『バッドステータス:重圧』
 キャラクターが有形無形のプレッシャーを受けていることを表わすバッドステータス。
 「タイミング:常時」以外の特技が使用不可になる。マイナーアクションで回復。


GM/一本松は【反射】の対決を、≪的抜き≫を使用して【体力】判定に変えます。
珠希/珠希は≪女神のいたずら≫を使用して【幸運】判定に変えます!
GM/(ころころ)クリティカルはしません、達成値は15!
珠希/≪君に幸あれ≫を使います。(ころころ)達成値は17!
GM/珠希ちゃんは重圧にはなりませんでした。という訳で、もしこの中にファンブルが出た人がいたら先生に言いなさーい(笑)
雪代/やだー!(笑)
GM/……なお、さっきの≪重圧撃≫の代償である1D6MPで6が出ました。[狩人]だから【MP】が低くてマジつらい。
珠希/つらいですよねー、[狩人]は【MP】がカツカツになりますよねー、判りますわー!(笑)

【行動値】
 一本松:24
 珠希:17
 雪代:16
 榴湖:14


GM/第2ラウンドセットアッププロセスに、一本松は≪上級処刑術≫を使用。エンゲージを封鎖し、エンゲージ内でのダメージをアップさせます。
珠希/封鎖されたエンゲージからってどう離脱するんでしたっけ?
GM/【行動値】での対決だね。エンゲージを離脱したいときは一本松の2D6+24と対決してもらいます。もしくは飛行状態になればいいんだよ。
雪代/そう簡単に空は飛べませんよ!(笑) 雪代はセットアップで≪黄金の身体≫を使用します。
榴湖/榴湖は≪空間知識≫を使います。
GM/メインプロセスに参ります。先にイニシアチブプロセスで、一本松が≪血のいざない≫を使用。モブを1体作成……というか、倒れていた人をもう1人起こします。

【戦闘マップ】
 エンゲージ1:珠希
 (↑5メートル離れている↓)
 エンゲージ2:榴湖、雪代、一本松、モブ×2


雪代/こ、混戦してきたなー……。
GM/その後に≪EP:範囲攻撃≫+≪戦場の華≫+≪征圧術≫+≪巨大武器≫で、エンゲージにいる4人全員を攻撃します。(ころころ)出目が11、クリティカルです。
榴湖/で、出ますねクリティカル……。(ころころ)ダメだ、回避19。
雪代/(ころころ)こちらも回避駄目です……。
珠希/今使うよ、≪零力射撃≫! 範囲攻撃の切先を逸らすような援護をします!
GM/命中判定、失敗しました。
榴湖/凄い、剣菱さんが何もしない!(笑) 素晴らしいダガーさばきだった!
GM/……NPCが1シナリオ1回使える『異端堕ち』をします! 指定は、≪異端堕ち:未行動化≫で!

 ≪異端堕ち:未行動化≫
 肉体の限界を引き上げ、即座に行動に移ることができる異端堕ち状態。
 行動済から未行動状態になる。


珠希/せっかくですから、2D6振ってどれぐらい【正気度】が減少したか教えてください。
GM/(ころころ)……12点減少しました。
榴湖/6ゾロが出たんですね!? も、もう手遅れだ……(笑)
GM/もう一度、一本松の行動! 同じコンボで攻撃します。(ころころ)えっ、出目が1・1? ……6ゾロ出した後の1ゾロって凄くない?(笑)
雪代/え、ファンブルですか!? きっと一本松さんが不安定なんです!
GM/な、なんということでしょう……せっかくの異端堕ちだったんですが、何もしないまま終わりました。次は、珠希ちゃんのターン。
珠希/回復待ちの待機です!
雪代/雪代も待機します。
榴湖/榴湖はマイナーアクションで≪興奮剤≫を3本使います!(ころころ)味方全員【MP】を21点回復。メジャーアクションは……回復じゃなくて、エンゲージ離脱を試みます。
GM/【行動値】対決だね。(ころころ)クリティカルしません、達成値31。
榴湖/(ころころ)達成値27! 4点差か……。
珠希/パパに≪交わる矢≫を使います!(ころころ)1D6で、6点上昇!
雪代/おお、よく頑張った!
GM/おめでとう、勝利だよ。珠希ちゃんは支援が強いね(笑)
榴湖/今いるエンゲージから10メートル離れます。
GM/では次に、待機をしていた組の行動だ。待機を複数のキャラクターがしていた場合、【行動値】の遅い順からのターンになるよ。
雪代/雪代の方が先だな。惜しげもなく≪獣化≫を使用します。犬になるよ! メジャーは≪乱舞≫で範囲攻撃!(ころころ)3体に命中24で当てます!
GM/わんわんお、なんだ?(ころころ)一本松クリティカルはしません、回避23で当たります。全員当たったね。
雪代/(ころころ)67点の物理ダメージです!
GM/モブ1体が一本松さんに≪他人をかばう≫を使用、庇います。もう1体は問答無用で倒れ、モブ2体はどちらも倒れました。……次は、珠希ちゃんの番だよ。
珠希/まだいける! 信じる! ≪闇纏い≫+≪覇魔矢≫で攻撃します。

 ≪闇纏い≫の発動判定の確認に移行。
 ≪的抜き≫と≪女神のいたずら≫+≪君の幸あれ≫+≪血の媚薬≫の対決の結果、珠希が勝利。≪闇纏い≫のダメージアップは成功した。


珠希/命中判定!(ころころ)21か……。
GM/(ころころ)クリティカルはしません、回避24です。
榴湖/≪血の媚薬≫を使用して、【HP】を16点削って達成値を4点上げます!
珠希/パパありがとう、命中した! ≪圧縮撃≫のダメージロール直前に使います!(ころころ)55点……。
榴湖/2回目の珠希ちゃんの令呪を使用します!
珠希/75点の霊力ダメージです! ダメージが1点でも入ったら、毒になってください。
GM/霊力ですね……バカスカダメージを食らいます。毒を受けましたが、≪EP:バステ≫回復を使用します。(ころころ)1D6のHP代償で、6が出たよ……。
雪代/やっぱりさっきからGMの出目が異常に高いですね!?(笑)

 第3ラウンドに移行。セットアッププロセスで、榴湖が≪空間知識≫を使用した。

GM/イニシアチブプロセスで一本松が≪血のいざない≫を使用。同一エンゲージ内にモブを1体作成。死にかけの配下に「立て」と命令して、無理矢理戦わせます。
雪代/うん……うん、判っていた。
榴湖/榴湖もイニシアチブプロセスで≪血のいざない≫を使用して、モブを至近エンゲージに配置します。事前に抜いておいた自分の血液が入ったアンプルの蓋を開けて、ポタリと落とすと人型の人形以下のモノになります。
珠希/パパ、カッコイイー!(笑)
GM/凄い、能力者っぽい!(笑) 一本松は≪EP:範囲攻撃≫+≪戦場の華≫+≪征圧術≫で、モブも含めて範囲攻撃します。(ころころ)出目9でクリティカル!
雪代/クリティカルしてるよー。(ころころ)……回避失敗、当たります。当たれば死ぬんだけど、どう思います!?
珠希/どう思いますって(笑) ……珠希は同じエンゲージに入られると、攻撃ができないんだ。
榴湖/つまり、もし雪代が戦闘不能になると……やばい?
雪代/雪代が倒れるということは、≪修羅≫を使って未行動化します。するとマイナーアクションで珠希ちゃんのいるエンゲージに入られます。
珠希/私は至近だと一本松さんに攻撃ができない。【行動値】対決でエンゲージ離脱ができたとしても、すぐ追いつかれる。
榴湖/珠希ちゃんじゃなくて榴湖のエンゲージに入ってきたとしても、回復役が戦闘不能になったら……全滅だ。
雪代/つまり、このダメージロールで……全滅するってことなんですよ。
珠希/…………。
榴湖/…………。
雪代/……全員、令呪は1つずつ使用回数が残っているんですよね。≪キメラの翼≫もあるから、全員で逃げられるんだ。その場合、一本松さん1人残って不戦勝になる。
GM/そうなると、君達は生き残れるけどこの村の人々は全滅になるね。
珠希/や、やだー!
雪代/……でも、このまま戦ってもみんな死ぬよ?
珠希/…………。一本松さんの攻撃が雪代くんの急所を掠めようとした瞬間、令呪を発動させてシーン退場させます!
GM/雪代くんは戦闘離脱になります。
雪代/ちなみに、もし受けていたとしたらどれぐらいのダメージですか?
GM/(ころころ)160点物理ダメージでした。
榴湖/も、モブが消し飛んだ……。
GM/そのダメージを、配下達は受けます。モブを戦闘不能にさせた一本松は≪修羅≫を使用。未行動になった一本松は、珠希ちゃんのいるエンゲージに移動。
珠希/き、来ちゃったー!
GM/命中判定をします。(ころころ)命中クリティカルしました。
珠希/珠希は≪異端堕ち:クリティカル値減少≫を回避判定に使います!

 ≪異端堕ち:クリティカル値減少≫
 精神エネルギーを溜め込んで、一気に爆発させる異端堕ち状態。
 行為判定のクリティカル値−5。メインプロセス終了後に【正気度】を1D6減少させる。


榴湖/ここで異端堕ちするか!
珠希/【正気度】は7点あるので、1D6点減少してもキャラロストにはなりません! クリティカル命中でもクリティカル回避をしてしまえばまだ戦える! クリティカル値は7になって……振ります。(ころころ)うそぉ!?
榴湖/え、何?
雪代/……1ゾロ、ファンブルだ。ぎ、≪逆転運命≫で振り直しを……。
GM/ファンブルには≪逆転運命≫不可です。……って、ファンブル!? 一本松が≪重圧撃≫を使用!
珠希/ご、ごめん……!
榴湖/珠希、シーン退場しよう! これはもう運が無かったと思うんだ! 行け、もういい、早く行け! 問答無用で令呪を使ってシーン退場させます!
珠希/珠希は全力で拒絶する顔をします! やだ、パパぁ……!
榴湖/でもマスター権限でシーン退場だ!
珠希/……メインプロセスが終了したので、【正気度】を1D6減少させておきます。(ころころ)2点減少しました。
GM/令呪は発動したので、珠希ちゃんは戦闘離脱になりました。戦闘不能になる前に退場させられてしまたったので、一本松の行動は以上でおしまいです。……そして、1人残った榴湖さんのターンです。
榴湖/……俺、何をするのが正解なんだ?
GM/一本松さんは、1人残った榴湖さんへと視線を向けます。立っている配下も子供達も誰も居なくなった今、榴湖さんに武器を構えて駆け出します。
榴湖/……思いがけず2人っきりだな。

 榴湖はマイナーアクションで≪興奮剤≫を1本使用し、【MP】を6点回復。メジャーアクションで≪肉体復元≫を使用して【HP】50点回復。全快した。
 双方が行動済になったため、クリンナッププロセスに移行……。


GM/クリンナッププロセスは、シーンの切り替えを行なうタイミングでもあります。もしシーン退場を行なったキャラクターが登場したい場合、ここでアクションを起こしてもらうことになります。
雪代/雪代が戦闘に戻ります!
GM/ならシーンへの登場判定を行ないましょう。【幸運】判定で……難しい行為ですね、難易度13で可能とします。
雪代/いきます。(ころころ)≪機関「チルドレン」≫を使用して、達成値20で成功させます。
GM/令呪によってどっかに飛ばされた雪代くんが、部屋の入口に立っています。戻ってきちゃいました。
榴湖/ゆ、雪代!? 予想と違ってビックリするよ!

 第4ラウンド目に移行。「念のために」と、榴湖は≪空間知識≫を使用したが……。

雪代/メインプロセスに入ったタイミングで、榴湖さんに令呪を使ってシーン退場させます! その後に……凄く苦い顔をしながら、自分も≪キメラの翼≫を使用します。
榴湖/退場します……。
GM/かしこまりました。≪死線再来≫を使うことなく、戦闘が終了します。……この≪死線再来≫を使ったら全特技終了、【MP】がついに1桁になるので、こちらも敗北になるところでした。
榴湖/……一本松さんの残り【HP】は?
GM/正直なところ、雪代くんか珠希ちゃんの攻撃があと1回当たればやられていました。
榴湖/……出目次第で、勝てた?
雪代/……あと一撃入れば、倒せてたんだ……。
珠希/爪が……甘かったな……。
GM/戦闘マップに残るのは、榴湖さんの作ったモブ1体だけ。主が近くにいなくなったことで、モブはただの赤い水に戻ります。……エンディングフェイズに参りましょう。


 ●エンディングフェイズ1/珠希&雪代 〜敗北と、確かな決意〜

GM/時刻は既に真夜中の2〜3時。令呪や≪キメラの翼≫で飛んだ先はおそらく、この村の外。君達は戦闘から離脱し、山道で落ち合います。
榴湖/駅まで歩いた方が近い距離に飛んできました。榴湖と雪代が、遅れて珠希のもとにやって来ます。
珠希/パパ! 雪代! ……どうだったの!?
雪代/……駄目でした。すみません。
珠希/……うっ……。ううううう……。何にも守れなかった……あんなに頑張ったのに! 号泣ではなく、絶望して悔し涙を流します!
榴湖/泣いちゃうよな。……泣いちゃった珠希を抱き寄せて、よしよしします。
GM/君達が身を寄せ合っていると……近くの山の空が赤くなっていきます。山火事が起きていることに気付きます。今から消防車を呼べばきっと最小限の被害で済むんじゃないかな。
榴湖/……ひとまず消防車だ。ポケットに捻じ込んでいた携帯電話を取り出します。山火事は最小限食いとめられるが、おそらくもう人はいないな。……剣菱さんが全部連れて行っちゃっただろう。
珠希/……うう、うううっ……。
榴湖/消防車への対応をします。……電話を切って、とりあえず駅の方まで歩く。そこに行けば交番もあるからな。
珠希/……魂が抜けたように何にも言えなくなっちゃう。
GM/交番に辿り着くと「そんな薄着な寝間着でこの1月の深夜を歩いていたの!?」「山火事を報告して逃げてきた人達か!」と、おまわりさんが助けてくれます。すぐに温かいお茶や毛布を用意するよ。外ではウーウーと消防車のサイレンが鳴っている。
珠希/べそべそ、ぐすぐす……。
榴湖/おまわりさんも泣いている珠希ちゃんを見たら「怖かったね」って慰めてくれるだろうね。……はあ、約束はみんな守れなかったか……。どうしたもんか。
雪代/……でもまだ生きてますよ、僕達。
榴湖/そうだな。雪代がいっぱい考えてくれたおかげで、みんな生きてるな。
雪代/……う、うううう、それを聞いたら泣いちゃう。……うわーん! ごめんなさい! 倒せなかった! うえーん!
榴湖/お、おいおいおい……?
珠希/ふええ、ふええええん……!
榴湖/……そんなに泣かれたら、パパも貰い泣きするだろ。
GM/……夜中の山火事は幸いすぐに鎮火したそうです。しかし寝静まっていた村は、跡形も無く燃えて灰になったらしい。あまりに危険ということで暫く村には立ち入りはできないそうだ。
榴湖/うん……。
GM/翌日、自宅に帰ることができた君達に教会からご連絡があります。……仕事斡旋人のおばさんからです。
雪代/ああ、もう1人いたおばさんの方……。
GM/「山火事で大変な目に遭ったことはニュースで見ました。こちらもおざなりなまま皆さんを二与郷村に向わせてしまい、その後の対応も散々なもので申し訳ありません」 おばさんは本当にすまなそうに頭を下げます。
雪代/……貴方達のせいじゃないですよ。全部僕達の不足の至るところです。気にしないでください。
GM/それでもおばさんは謝罪とお詫びをします。「ちなみに、仕事を依頼したときにもう1名男性がいらっしゃったでしょう?」と、おじさんのことを言います。「あの方は、心臓発作で亡くなったと今朝告げられました。お酒をたくさん飲んで寒い夜に帰宅途中……急激な体温の変化に体が追いつかなかったとのことです」
珠希/……消された!
榴湖/消されたな……。教会が機関と繋がっていることは知っちゃったから良い顔ができないよ。もう教会の仕事を受けるのも、やめた方がいい。
雪代/じゃ、じゃあ……誰があの人を止めるんですか!? 機関に太刀打ちできる組織なんて……!
榴湖/その組織が機関に繋がってたら意味が無いだろ。
雪代/でも、教会でもそのことを知らない人がいるじゃないですか! もっと信頼できる人だけを集めて……何かできないんですか!?
榴湖/お前、あんな怖い目に遭っておきながらまだ……。
珠希/……確かに怖い目には遭ったけどね。一番怖くてつらいのは、村の人達を助けられなかったことだよ……。罪の無い人が、あんな、勝手な……! こんなの見て見ぬふりしてずっと生きていくなんて、私にはできないよ!
榴湖/珠希……。自分達がどうにかできないか、か……。
雪代/……まだやれること、あると思います!
珠希/まだ知らない人、たくさんいるよ! こっちの味方に引き込める人がいるよ!
榴湖/……探すの、きっと大変だぞ。
珠希/機関が全部おかしいんでしょ!? 誰かが何かしないとずっとこのままだよ!?
雪代/知っちゃったからには、何かしないと。それに……約束を果たさないで、そのまま生きていくんですか。
榴湖/うっ……。
雪代/約束を果たさないままだと榴湖さんもつらいけど、果たされないままの一本松さんも……多分つらいんじゃないんですか。
榴湖/……お前ら、剣菱さんにあんな怖い目に遭わされたっていうのに優しいな。
雪代/元上司ですから!(笑)
榴湖/パパは珠希達がこんなに勇敢な子だったなんて知らなかったぞ。
珠希/私のは無鉄砲って言うんだよ(笑) でも、これからは無鉄砲じゃなくて勇敢な人になれるように頑張るから、パパも……。
榴湖/恥ずかしくないパパにならないとな。……ああ、これからも教会のお世話になろう。けど今回の報酬は受けない方向でいこうな。
GM/真っ当なおばさんは君達の心労をとても判っているつもりなので、その後も誠実に対応をしてくれます。
雪代/……今日の夕飯は景気づけに焼肉にしましょう! それからどうするか考えるんです!
榴湖/そうだな、今日は肉でいいな。……この先、難しいと思うけどなんとかしなきゃだな。


 ●エンディングフェイズ2/榴湖 〜早い再会〜

GM/2日経ったら一本松が榴湖さんに会いに行きたいです。
榴湖/ひぃ、そうだった!(笑) 2日後というと交番のお世話になって、家に帰ってきて……寝た次の日ですね?
GM/教会からの電話があった翌日だね。現在のお仕事である薬局からも「事情は判っている」ということで本日はお休みを貰いました。
榴湖/お言葉に甘えて1日休みを貰えて正解だった……筋肉痛が遅れてきた(一同爆笑) とはいえ、さすがにゴミ出しぐらいは行こう。
GM/燃えるゴミをゴミ捨て場に出しに行く榴湖さん。すると、居るよ。
榴湖/スウェットとサンダル姿でゴミ袋を持って……ハッ!?(笑)
GM/運転手のいる黒い車の中から一本松が出てきます。
榴湖/け、剣菱さん!? ……お、おはようございます? 慌てて下がった眼鏡も上げる!(笑)
GM/(一本松になって)「教会に用があってこの辺に来たついでだ。お前の住所も聞いてきたんだぞ」 普通ならエージェントの住所なんてプライバシーの問題で絶対教えません。けど、それすら可能にしちゃうと思い知らせるために来ました。
雪代/し、調べ上げられてる……ああ、癒着(笑)
榴湖/榴湖は間違いなく「報復しにきた」って思いますよ! あ、あの……ついに俺も処刑……ですかね?
GM/「何を言う」 ニタリと笑いながら一本松は言います。「お前は正式に機関を退職した身じゃないか、俺が手を掛けたらおかしい。それにお前は人間だ。ここに現住所があるんだし、二与郷村の鬼じゃないのに狩る必要は無いだろう?」
榴湖/……ポカーン。み、見逃してくれるんですか?
GM/「ここで『見逃す』と明言しなければ、お前達はいつ狩られるかという恐怖に怯えて暮らすことになる。これぐらいは考慮してやらないとな」
榴湖/で、でも……ここ、わりと遠いですよ? それなのにわざわざ来てくれたんですか? 何て言ったらいいか……。
珠希/そこに登場していいですか!? 今日は学校をお休みしたってことで、スーパーで買い物をいっぱいして帰ってきたときに2人を見かけたことにします!
雪代/一緒にスーパーの袋を両手いっぱい持ってます(笑)
珠希/あれパパ、どうしたの……ハッ!? 飛び出して行きます! パパに変なことしてないでしょうね!?
榴湖/だ、大丈夫だからっ!(笑)
GM/「変なことをしないと言いにきたんだよ、お嬢さん」 一本松は車に戻っていきます。
珠希/そ、そうですか。わざわざありがとうございます……ぶすーっ。そのうち、窮鼠猫を噛まれて死んじまえー!(笑)
GM/ぶすーっとしてる、可愛い(笑) 「……悪あがきをするのもいいが、大概にしておけよ。だがまたこんな異端に会うことがあったなら、殺してくれ。殺せるものならな。楽しみにしてるよ」
榴湖/なっ……貴方を異端なんて思ったことなんかねーよ! そこまで人間やめてるとは思ってねーからな!
GM/思ってないんだ(笑) 一本松を乗せた黒い車は発車します。
榴湖/あ、なんかヤバイこと言った気がする。見ろよ、周囲にいるおつきの人達の顔!(一同笑)
雪代/大丈夫ですよ、みんなモブだから!(笑)
珠希/……パパ! 気を取り直してブランチにするよ!
雪代/焼肉の次の朝は冷しゃぶです!
榴湖/ぼ、ボリュームが凄いな(笑) それじゃあ……剣菱さんのお言葉に甘えて、もう暫く悪あがきしてみようか。

 クスクスと笑いながら一本松は黒塗りの車に戻った。後部座席に乗った一本松は、ずっと目を伏せて笑い続けている。
 車の中には、彼の弟である匠太郎が座っていた。榴湖の言う通り、外の3人を睨みつけている。だが一本松の顔を見て、キョトンとした声を出した。

「……ねえ。なんで一兄さん、そんな顔してるんだ? 苦しそうな顔なんかして」

 30年前と同じ、忌まわしい声に耐える苦痛の表情。
 一瞬だけ見せてしまった一本松は、すぐにと笑みを浮かべ直す。

『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ』
「何のことだ?」
『殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ』

 誘惑に負けた今でも、耳の中で響き続ける声。止まらない闇の衝動。
 一本松は頭を振るう。そして数分前のことを思い出した。「殺してくれ。殺せるものなら」 何故そんなことを旧友に言ってしまった? 何気なく口から零れた、あの懇願の正体は……。



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  〜 忘却の彼方になるエゴイスト 〜





END

第2話に続く

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