クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 つめたい夜のおとしもの 』 2ページ ■
2022年9月11日




 ここは明るい、街中だ。
 貴方もよく知っている、零課から徒歩圏内の街。日の高さから見て午前中だろう。
 小さな子供をつれた親子や老人が、穏やかに流れる時間を楽しんでいる。

KP/すぐに、貴方は見知った人影を見つけます。
草摩/ん……?

 一人は、長い黒髪。日本人としてはありふれた特徴の女性。
 植物研究サークルで最後に見たときから……約4年経っているが、あまり変わらないように見える。
 もう一人は名坂格。赤子を抱いている。

草摩/玲子。……格に似て美人だ。
KP/でしょ!(一同笑) 向こうも草摩さんに気が付きます。(玲子になって)「花園さん、お久しぶりです」
草摩/玲子。久しぶりか。驚いた顔もかわいいな。
KP/「人妻を口説かないでください」
草摩/やれやれの顔も好きだ。綺麗だ。
KP/「ありがとうございます……? そうだ、植物研究サークルもやめてしまったので直接お知らせできなかったんですが……結婚して、今は南玲子と言います。名坂ではなく」
草摩/ほう。照れ顔もかわいいな。格と並んでいる姿を見るとよく分かる。かわいい。
KP/「ああもう、いちいち照れてられない……そういう人でしたっけ?」
草摩/女性だから投げキッスで勘弁な。ちゅっ。
格/草摩さん。いい加減にしてくださいね、人の妹に……。
草摩/俺は自分の弟にもかわいいと言うんだが。
見学者・マーサー/実散はずっとかわいいと言われ続けて育ってきました(笑)
格/今日のおれは……姪っ子を構いつつ、買い物の付き添いです。可愛いでしょう、姪っ子! 「理子」と書いてあやこです。可愛いんですよ。目許が玲子にそっくりで。
草摩/なるほど、かわいいな。
格/でしょ! 草摩さんも抱……いや、やっぱりなんでもないです。
草摩/賢明だ(一同笑) かわいいな、まるで赤子のようだ。
格/赤子なんですよ。手にね、指を置くと、ぎゅっと握るんですよ。
見学者・ピロ/草摩さん、赤ちゃんを高い高い(本当に高い)をしそう。
草摩/ピザみたいに回すかもしれない。

 和やかに話をしていると、急に、辺りが暗くなる。
 真っ暗な世界の中に、玲子の姿だけが見える。

KP/「……花園さん。時間が無いので、手短に申し上げますね」
草摩/ああ。
KP/『突然ですが、貴方から見た名坂格は、どんな人ですか?』

 私から見た兄は、面倒くさい人です。
 こうと決めたら梃子でも動かない頑固なところがあります。
 理屈屋のくせに論理より感情を優先するところがあります。
 目には目を歯には歯を――を地で行く子供っぽいところも。
 兄を説得するのは、多分、物凄く、骨が折れると思います。
 ――でも、花園さん、貴方しかいないんです。
 兄の『罪悪感』を昇華できる人は。
 だから。もし、こんなことをお願いしていいのなら。
 粘り強く対話をしてあげてください。
 戻ってきていいんだって説得してあげてください。
 ――ただ。もし、うまくいかなくても、それはそれで仕方のないことなんだと思います。
 だって兄は、今、とても幸せなんですから。
 どんな形であれ、一度手に入った幸せを手放せなんて……私は言えません。
 でも。貴方なら。別の……「このままでは手に入らなくなってしまう幸せ」を、示すことができるんじゃないでしょうか。

草摩/玲子、好きだ。
KP/「全員にそう言ってるんでしょう?」
草摩/玲子が言う台詞は、みちるっぽくて特に好きだ。
KP/「誰ですか? みちるさん……?」
草摩/実散なら、「俺から見た兄は、面倒くさい人です。こうと決めたら梃子でも動かない頑固なところがあります。理屈屋のくせに論理より感情を優先するところがあります。目には目を歯には歯を――を地で行く子供っぽいところも」って言う。……うん、みちるっぽい。
見学者・ピロ/玲子さんをジェネリック実散さんにするんじゃない。
KP/「……あははっ。ならきっと、兄と花園さんは似た者同士なんですね」
草摩/そういうことだ。お互い平行線で、大変な戦いになる。だが、勝つぞ。応援してくれる大好きな玲子がいるなら、百人力だ。
KP/「……はい。花園さんにお任せします」
草摩/この際だから、この場で告白するぞ。
KP/「はい……?」
草摩/『庭師』プレイ中の草摩の初期設定では、草摩は玲子に特別な感情を抱いていた。
KP/「え!?」(笑)
草摩/ほら、『庭師』HO1のみちるがNPCの相模原のことが好きだって設定を明かされてから、「じゃあHO4の俺は玲子のこと好きにしようか」と思ってたけど……直後のシーンで「格の妹だ」とカミングアウトがあったから、「やべっ」と思って言わなかった(笑)
見学者・マーサー/「玲子さん好きな兄ちゃん」が爆誕するかもしれなかった可能性?(笑)
見学者・ピロ/それって……「花園玲子になった世界線」があるかもしれない、ってコト!?(笑)
草摩/俺は好きだったんだな、玲子のことが。……みちるに似ていたから。
KP/「……そうだったんですか。全然、気がつきませんでした。花園さんはみんなにお優しいので、本気にしていなくて……」
草摩/好きだ。そういつも言ってたが? 現にさっきも言ってた。かわいい。好きだ。いっぱいな。……格も。好きだ。好きだから。頑張る。
KP/「……兄を? お好きなんですか? それは、『そういう』意味で……!?」
草摩/ああ。好きだ。
KP/「ぜっっったい伝わってませんよ!」
草摩/何度も言っているんだが……。
KP/「回数じゃありません! 私だから言えますけど、回数ではないんです!」
草摩/慌てる玲子、かわいいな。
KP/「兄のただごとではない人間関係を聞かされて慌てずにいられますか!? いえっ、私には何も言えませんが……『頑張って』と言うのも複雑ですし……」
草摩/かわいい。玲子とずっとこう話していたいな。格の気持ちも判る。
KP/「…………」
草摩/ずっと一緒にいたいだろうな。俺以上にかわいいと思っているのだから。俺もだ。諦めない。
KP/「…………。花園さんの気持ちが伝わるといいですね」
草摩/お前には伝わったか? 俺の「好きだ」が。伝わったなら、格にも伝わる。
KP/「……はい。でも、誰かに似てるから好きと言われても嬉しくないので、ごめんなさい。……それでは、さようなら」
草摩/ああ、じゃあな。ありがとう。
KP/玲子は消え、元のテーブルがある2人だけの部屋に戻ってきます。格は、2人が話していたことに気付いていないようです。
草摩/ただいま、格。玲子と精神世界でハグしてきたぞ。
格/なんて? いつにもまして電波なことを?
草摩/心地良いツッコミだ。ずっと聞いていたい。好きだぞ、格。これからも一緒にいてくれ。
格/おれの可愛い可愛い可愛い姪っ子を見せて草摩さんを絆そう作戦はどうです? 効きました!?
草摩/逆効果だぞ。玲子は、俺の味方だ。
格/……は? ていうか人の妹を馴れ馴れしく呼ばないでくれます?
草摩/玲子、好きだ……って何度も語り合ってきた。そしたら「兄にも好きだって言ってくださいね」ってお願いされたぞ。
格/は? はい?
見学者・ピロ/嘘は言ってないんだよな……(笑)
草摩/ふふ、やる気が出てきた。これから本気でお前を俺のものにする。覚悟しておけよ……?
見学者・マーサー/まるで攻め様のような台詞だ。
格/意味が判らないのでお断りします。
草摩/落ち込むどころかヤル気満々満タンになった。ありがとな、玲子。( ε )-☆Chu!!
格/おいコラ人の妹に何してるんだコラ。
草摩/虚空へのキスだ。
格/草摩さんのキスは時空を越えそうで嫌だ。
草摩/パソコンの先へ届け。
格/シャットダウンしょ。。。
草摩/立ち上げょ。。。再起動(一同爆笑)
格/うーん、これも効き目が無い。……はあ。一応聞きます。かわいい姪っ子、元の世界にはいません。『それでもおれを連れ戻す気ですか?』 あんなにかわいいのに。
草摩/かわいい俺は、あの世界にはいないんじゃないか。こんなにかわいいのに。連れ戻すぞ。
格/えっ、なんて言ってるか意味が判らなかった。もしかして草摩さん自分のことを可愛いって言いました? 言いましたか? 自己評価がおかしい。
草摩/みちるはかわいいだろ。つまり俺もかわいい。
格/実散さんは誰がなんと言おうとおれの中ではカッコイイですよ! 世界一で殿堂入りです、譲らん!
見学者・マーサー/きゃっ。実散、嬉しい!(笑)
草摩/つまり俺もかわいくてカッコイイ。よし。
格/似てない双子が寝言を言うな。
草摩/先刻、格が言っていたことだがここは「夢の世界」。だから寝言は言いまくりだ。
格/クソ、夢から接続したばっかりに……でも夢が一番自我が揺らぎやすいというか、別次元にも深層心理で繋がってるからそこに接続しやすくて……クソッ。
草摩/格は天才だ。あらゆる手段で俺をそうやって見つめている。俺のことが好きな証だな。
格/縁を切るためにやったことなんですけど。話、聞いてました!?
見学者・ピロ/策士、策に溺れてないか? 大丈夫か、格?(笑)


 ●シーン3

格/とりあえず、次からトークテーマはライト禁止です。
草摩/ヘビーな愛を語り合おうじゃないか、逃がさないぞ。逃 ガ サ ナ イ ゾ ……。
見学者・マーサー/SANチェックがお得意か?(笑)
格/怖……ホラーじゃん。1d10どうぞ……。
草摩/(1d10ころころ)5:嘘はどんな場合でも許されないと思いますか?
格/ヘビーな質問リストにしたけど、あまりヘビーになりませんでしたね。
草摩/格。嫌いだ。お前のこと嫌いだ。
格/…………。
草摩/…………。嘘だ。嫌だ。泣く。
見学者・マーサー/おー、兄ちゃんよちよちよち(笑)
見学者・ピロ/自分で自分を傷付ける嘘言っちゃう草摩さん、可愛いな(笑)
格/「草摩さんはそんなこと言わない」ってすぐ思いましたよ(笑) というか、おれを嫌いになったなら話が早かった。そして草摩さんが悲しそうな顔してるの初めて見ました。
草摩/惚れたか? 俺と一緒だと見られる可能性が高まるぞ。
格/惚れないです。特に見たくはないですね……。次の議題にいきましょう。1d10をどうぞ。
草摩/(1d10ころころ)7:誰かを忘れることと忘れられること、どちらが辛いですか? 難しい議題だな。試しに忘れてみよう。
格/試しに忘れてみよう?
草摩/……お前は誰だ!? ここはどこだ!? お前は一体!? お前は、お前は……!?
格/それってそんな自由自在にできることでしたっけ!?
見学者・ピロ/草摩さんだからなあ?(笑)
草摩/お前は……なんて素敵な人なんだ! 好きだ。
格/あ、お帰りは右の扉です。どうぞ。
草摩/……どうだった? 俺は失った愛を再確認してしまったぞ。
格/草摩さんて芸人の方が向いているような、いやでも、この芸だと食っていけねえだろうなあ……。
見学者・マーサー/ホリケンみたいに売ろう?(一同爆笑)
格/刑事を辞めて芸人になるんですか!?(笑)
草摩/刑事しつつ芸人しても俺のことは忘れないでくれよ。格は、俺に忘れられること、つらいか?
格/いえ、別に。全然。おれは自分が覚えてればいい派なので。
草摩/みちると天鴻に忘れられること、つらいか?
格/実散さんには、優秀な部下としておれのこと一生覚えていてほしいですけど……背に腹は代えられませんね。白南さんは、おれのことを忘れた方が幸せでは?
草摩/玲子に忘れられる。つらくはないか?
格/玲子はおれのこと忘れませんけど!?
草摩/つらいんだな。
格/というか玲子と呼ぶな玲子と。
草摩/じゃあクリスティーナ。
格/誰!?(笑) ひ、ひとまず結論を聞きます。……別々の世界で生きていくことになっても、おれは草摩さんのこと忘れませんよ。それで良くないですか?
草摩/良くない。俺は一緒の世界で生きていきたいから、良くない。
格/じゃ、草摩さんが『こっち』に来ます?
草摩/みちると天鴻も『こっち』に来られるか?
格/……全員が「それでいい」と思ったのなら、なんとかしますよ。
草摩/猪狩と神童さんと醒ヶ井さんと百合人先輩と礼二兄さんと凛とオニキスとアヒルと雛とイゴさんも来られるか?
見学者・ピロ/総出!(一同笑)
格/誰!? いや、分かる人もいるけどなんか全然知らない人が多い! 誰!?(笑)
草摩/格、俺がいる世界に戻って来ないか? 初心に戻ってストレートに訊くぞ。
格/……戻りません。おれがやっとの想いで手にした幸せと平凡な日々を手放せなんて、おれのことが好きなら、そんな酷いこと言えませんよね?
草摩/俺がやっとの想いで手にした幸せと平凡の日々を手放したくないから、格を取り戻そうと俺も必死だ。
格/草摩さんの毎日が平凡かどうかは置いておくとして……なるほど。
草摩/俺はやっとの想いで手に入れた。4人が、庭師の事件を終えて、それぞれ自由に生きてたまに会って暮らしている日々。最近になって手に入れた幸せなんだ。手放したくない。必死だ。
格/……じゃ、おれがどんな想いだったか、やっぱり知ってもらいましょうか。やだけど。最後の本を読んでください。やだけど。
草摩/嫌だと言っているけど、読むぞ。
KP/「146/ナ」の本を開くと、真っ暗になる。声だけが聞こえます。格が喋っている声です。

 ――はい、先生。今日もよろしくお願いします。
 前回から今日まで、何事もありません。職場で吐いたり倒れたりもしてませんし、睡眠も充分取れています。
 休日に例の皆さんと会っても、楽しいばかりで。懸念していたような……会った後に調子を崩した、ということもなく。
 順調。きわめて順調ですよ。
 やっぱり零課をやめて正解でした!
 あの場所が……なんか、ダメになっちゃいましたからね。
 休職中に荷物を取りに行って、零課のデスクを見るだけでぶっ倒れたりして。その節はご面倒をおかけしました。いやはや、男のヒステリーなんて、みっともない……。
 ……解離性障害は男女問わず起こるもの。そうでした。ともあれ、順調です。
 最初の……休職したてのカウンセリングのころは酷かったですからね。
 一日中寝て過ごすことがなくなったのはもちろん、不眠もほぼ無くなりました。最近は妹の死に顔を夢に見るでもなし。
 妹を救えなかった無力感に苛まれて、全部ぶっ壊したくなるような衝動もありません。
 以前の職場の関係者を見て、誰と協力しても結局玲子は救えなかったんだとやるせない気持ちになるようなことも……こいつは玲子を救えなかったと責任転嫁したくなるようなことも、今はあんまり。
 良かったです。……もう、誰のことも嫌いになりたくないので……。
 理不尽な感情を理性で抑え込むのもしんどいですし。……疲れます。
 過去のことにしたいです。早く。
 先生の言う通り、退職していた方が楽だったでしょうね。
 退職して、零課のみなさんとも二度と会わない。その方が……早く寛解していたでしょう。間違いなく。
 ……でも、おれには、できなかった。
 妹も、職も、友人も失って。ぬけがらみたいに生きるのは嫌でした。
 自分、けっこう図太いので。生きるだけならいくらでもできますが。たぶん転職しても大成功しますが……。
 執着を捨てるのは難しいです。そればかりの人生でしたから。
 今度、玲子の墓参りに行く予定なんです。
 花は何がいいでしょうね。チューリップは季節外れですし……。

 ・・・・・・・

 申し訳ありません、自分の我儘で。面倒なクライアントでしょう。
 ……おれはあのひとたちが大事なので。玲子の次くらいに。大事な人たちなので。
 うん。だから。あの人たちと友人関係を保つために、零課をやめたのは良かったですね。あれを境に好転しましたし。
 最近は本当に調子がいいので、零課に顔を出すくらいならできるようになりました。
 先日もかき氷をごちそうになりまして。ああ、はい。零課で、かき氷パーティー。……零課、今はもうストッパーがいないんじゃないですかね? ははは。

 ・・・・・・・・・

 薄氷の上を歩いているような気がします。
 何かの拍子に割れたら、おれはどうなるんでしょうね。
 ……望みを……口に出すことも許されないというか、言ったら……全部。ここまで耐えて、耐えて、日常にしたことも全部……無駄になってしまう気がします。

KP/明るくなる。元の白い部屋に戻って来たようです。
草摩/…………。まず、KP。たくさんシナリオで格の心情と本心を晒すように書いてくれて、ありがとうございます。
KP/こっちにきた。こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます。
草摩/「やだけど」が本当に、やだ、だった。泣いてる。
KP/格は「継続してカウンセリングを受けている描写」を今までのセッションでもしています。他の本はこのシナリオのために詰めた内容ですが、このカウンセリングは実はずっとあった設定でした。
草摩/…………。中の人はこの話を見て、気付いてしまったことがあって、戸惑っているんですが。
KP/あ、はい?
草摩/言うべきかな? ……思いついたから、言うべきなのかな……。


 ●シーン4

格/……さて。どういう状況か、あらためて説明する必要もないと思いますが。日常を保つための努力、まさか自分だけが頑張っていたなんて言いませんよね? ね〜っ?
草摩/ああ。
格/……あのときの旅行は、おれの薄氷を叩き割ってしまったんですよ。忘れさせてくれてもいいでしょう……もう。それでは……最後の質問です。『それでも、おれを連れ戻したいですか?』
草摩/それを答える前に。
格/はい。
草摩/いらすとやの画像、あっただろ?



格/はい、これですね。画像は4つですが、いらすとやの画像が4つのものしか見付からなかったので……。
草摩/4つ目は、俺の本だ。俺の心情が書かれている本を割り込ませておいた。堂々とな。
格/草摩さんの手記ですか!?(一同笑)
見学者・マーサー/堂々すぎる!(笑)
草摩/俺を知りたくないか。読まないか。俺も知らなかったことが知れるぞ。
格/はあ……。では、ラベルに「916/ハ」と書かれている緑の本を、拝読します。えっ、これどうなるんですか?(笑)
草摩/先に言っておく。多分、一般的に「ドン引く内容」だ。
格/えええ……(笑)
草摩/その本を開くと……格は、みちるの姿を見る。ベッドの上、窓の外を見ながら泣いている、子供の頃のみちるの姿だ。
格/えぇーっ!? 実散さんって小さい頃はこんな感じだったんですか!? 守らなきゃ!(笑)
草摩/みちるは子供の頃、とても大人しい性格でな。非常に物静かで引っ込み思案でよく泣いていた。というか、今のみちるは昔の俺の真似をしている。
格/はあ……。
草摩/病気がちで、俺が医者を目指すキッカケにもなるぐらい、大きくなるまで外に出られず……全てを悲観していた。
格/物静かで引っ込み思案でよく泣いていた子が、今のあの実散さんになるまでに積み重ねられた努力を思うと……尊敬の気持ちが湧いてくるな……。
見学者・マーサー/ありがとう! いたるくん、好き!(笑)
草摩/かわいいだろう? 俺はそんなみちるが好きだ。いつも泣いていて、後ろ向きで、でも頑固でどうにか自分の力で頑張ろうとする姿が好きだ。……格の前から、泣いているみちるが消える。
格/ふむ。
草摩/そして現れるのは、頭を抱えている天鴻だ。
格/これ、おれが見ていいやつですか? こういう姿は一番おれに見せたがらない人でしょ。ダメでは?
草摩/ピロさんが「嫌!」って言ったらやめる。
見学者・ピロ/いいよ。天鴻はフリー素材なので(一同笑)
草摩/天鴻は、いつも格のことを気にしている。当然だな。あの事件のことがあって気にしてない奴はいない。格も、みちるも、天鴻も。
格/でしょうね。
草摩/俺以上に格が知っている通りだ。そして最近、天鴻は失恋もしたぞ。
見学者・ピロ/ヴァー!?(笑)
格/それは知ってます。ふわっと……。
草摩/俺は天鴻が好きだから、「俺のものになれ」と言った。だがそれでも天鴻は身を引いたんだ。俺に悪いって。苦しそうに目を瞑ったあの顔をしながら。かわいいな。
格/ハ?
草摩/凄く、かわいい。
格/ハ……?
草摩/頭を抱える天鴻。思い悩む天鴻。考えぬいた後に自分を押し潰す天鴻。かわいいな。
格/……………。後ずさりする。
見学者・マーサー/宣言通りドン引いちゃった。
草摩/苦悩の顔をした天鴻が消える。最後に格の前に現れるのは、カウンセリングを受けているという格だ。
見学者・マーサー/いたるくんが、2人……。
草摩/零課のことであんなに気を病んでいた、あそこまで追い詰められていた格。いや、知っていた。みんなそうだろうとは知っていた。少しずつ回復してくれたことを嬉しく思う。それでも俺達に付き合おうとしてくれた。友人として嫌いたくないから理性で踏ん張っているという格……。
格/え、はい。
草摩/かわいいな。好きだ。……みんなみんな、興奮する。自覚した。ああ、3人目となったら、ようやっとだ。俺が「かわいい。好きだ」と言っていた理由、俺は好きだったんだな、泣いているのが。
格/歪んだサディズムをお持ちの方!?
見学者・ピロ/異端が居たんだ……異端者レベル10の面構えよ(笑)
草摩/ああ、俺はサディストだったようだ。格のカウンセリングを聞きながら「かわいいな……愛おしいな……」とばかり考えていた。
格/医者やめちまえ。
草摩/医者はいいぞ。他人が「弱っているんです……」って近寄って来てくれる。
格/そりゃそうだろうよ。えっ、最悪だな。医者やめろよ。
見学者・ピロ/ばっさり言う!(笑)
草摩/刑事はいいぞ。みちるが「なる」って言うから俺もなったが、事件のたびに人の負の面が露骨に見られる天職だ。
格/マジの異端だ!(笑)
草摩/つまり……今の俺は、格を愛おしくて愛したくてたまらない状態だ。判らないか? 今の格は、俺を遠ざけようとして、俺の好感度を上げていることに。
格/草摩さんが変態だということは判りましたが? おれの好感度は下がってて、元の世界に一緒に帰る可能性もどんどん下がってることに気付かないんですか……!?
見学者・ピロ/難易度エクストリームにしたな、自分で(一同爆笑)
格/ドン引きの顔をしています。……あの、ちょっとこれはズレているなと我ながら思うんですが、お聞きします。
草摩/なんだ?
格/草摩さんって同性愛者だったんですか?
草摩/好きになった人が好きだ。現に玲子のことも好きだぞ。
格/妹に近寄るなクソ変態野郎。
草摩/醒ヶ井さんという零課の先輩の女性がいるんだが、お相手はいるみたいだけど……醒ヶ井さんの困り眉、最高だよな……。
見学者・マーサー/えっ、まさか醒ヶ井さんもその対象なの!? 確かに困り眉がカワイイお姉さんで最高だけど!?(笑)
見学者・ピロ/草摩さんの「好き」のカテゴリが、恋愛しかない疑惑?(笑)
格/先輩にまで迷惑をかけている!? お会いしたことない方ですが逃げて!?(一同笑) ……草摩さんって、てっきり家族愛と友情と恋愛の区別がついてないタイプかと思ってたんですけど。なんかそういうの超えて……ダメなやつでは?
草摩/格もその一人だ。
格/お断りします……。
草摩/俺が格を好きな理由を明らかにした。俺が格を戻したいという確固たる理由を話した。
格/まあ、はい、はい……? そうですね……?
草摩/公平だな。そうだろ、玲子。俺は頑張っているぞ。応援してくれているか、玲子。うん、任せろ。
格/人の妹とテレパシーを交換しようとするな。
草摩/玲子にな、いや、クリスティーナに言われたんだ。「兄を説得するのは、多分、物凄く、骨が折れると思います」と。
格/クリスティーナって誰だよ。
草摩/玲子と呼ぶなと言われたからクリスティーナにしたんだが?
格/どうしてクリスティーナになってしまったんだ、玲子……(笑)
草摩/俺の開幕ファンブルのせい……(一同笑) クリスティーナは「粘り強く対話をしてあげてください」「戻ってきていいんだって説得してあげてください」って言っていた。「花園さんの気持ちが伝わるといいですね」とも言っていた。
格/多分、そういう意味じゃないと思いますね……。
草摩/彼女から激励を受けている。だからまず、格に伝えた。そして俺は、今も取り戻そうと頑張っている。
見学者・ピロ/草摩さんは嘘がつけないから……(笑)
草摩/幸せなそっちの世界より良い世界がこっちだ、なんて言えない。こっちの世界は玲子はもういない。苦痛に歪んだ格たちのいる世界だ。そして俺がいる。お前にとっては嫌だろう。
格/あっ、はい。一晩あればちょっと考えを整理できるかもしれませんけど、今はちょっとまだドン引きの余波が凄くて……。
草摩/嫌なものだらけの世界だな。そっちに逃げたいのも判る。苦しかったんだから気持ち良いところに生きたがるのも当然だ。
格/…………。
草摩/それでも俺が「お前を取り戻したい」と言うのは、本当の本当に、装飾する言葉なんて何も思いつかないぐらいの本当の意味で……お前と一緒に、みちると天鴻と、つらいこれからを過ごしていきたくて、「戻ってきてくれ」と言うしかない。
格/…………。
草摩/メリットなんて格には無い。色々考えたが、思いつかない。嘘を言って「こっちは楽園だ」と言うこともできた。嘘は言えない。俺はそういう男だ。
格/…………。
草摩/いいところだけを抽出して、お前を誘いこむことも考えた。でも、悪いことが大きすぎたからお前は、そっちの世界に行ったんだろう。分かる。本を3冊も読まされたらな。
格/…………。
草摩/ああ、こっちの世界は悪い。最悪だ。不幸せだ。でも俺は言う。来い。戻って来い。格のいる場所はこっちだ。こっちで俺といっしょだった。その真実しか言えない。そこしか武器が無い。
格/……最悪な世界で、メリットがなくても。……『それでもおれを連れ戻したいんですね?』
草摩/ああ。俺の意思は変わらない。きっとみちるの意思も、天鴻の意思も、玲子の激励の意思も変わらない。変わらないぞ。お前が拒んでも、一生。
格/……武器の選択を間違えませんでしたね。……はは。拒まれたら諦めるだろ、普通。
草摩/諦めないぞ。
格/玲子が……罪悪感と言ったのを、覚えてますか?
草摩/ああ。どういう意味だか、俺にはまだよく判ってない。
格/罪悪感。あるんですよ。みんなそれぞれに苦しいのに、おれだけ抜け出してこんなに幸せになっちゃっていいのかなとか。『そっち』の玲子の冥福を正しく祈る人間が減ってしまったこととか。……だから、「おれのいる場所はそっちだ」っての、大正解です。まさか大正解されるとは思ってなかったクリティカルワードです。
草摩/……なるほど。でもすまないな、俺には気が利いた説得はできなかった。「みんなもそれぞれ苦しいのに」とか「玲子の冥福を」とかじゃなくて、ごめん。
格/そんなことないですよ。嘘が無い人の説得って一番心に響くんですよねぇ……やっぱり草摩さんと実散さん、兄弟なんですね。しょーがねえなあ。しょーがねえから帰ってあげますけど、草摩さんと行く予定だったノイエ銀英伝第四章策謀は他の人と観に行きます。
草摩/なんで? アマプラで旧版を一から見始めたのに。
格/今から旧版を見てたら終わらないでしょ!?(一同爆笑)
見学者・マーサー/OVA銀英伝でそこまで見るの大変なのに!(笑)
見学者・ピロ/先が長いな!?(笑)
格/いや、振った相手と2人で出かけるの嫌なんで……変態と2人で出かけるのも嫌なんで……。
草摩/そうか。友達からよろしくな。
見学者・ピロ/めげない、しょげない、諦めない。
KP/格が手を叩くと、扉が2つ現れます。左は木材で出来た、なんかこう蔦とか絡まってるあたたかみのある扉。右は氷でできた、冷気が漂っている扉。
草摩/銀の鍵なら持ってきてあるぞ。
KP/見事クリティカルヒットした草摩さんにお伝えしますが、左が正解ですが、左の扉は重いです。<STR×5>に成功していただく必要があります。チャンスは3回。3回振ってダメなら右の扉からも帰れますが、そっちは結構エグめのSAN値チェックが入ります。
草摩/STRなら16なので、80%以下成功だ。ホテルに居たヨグソトースの化身よ、声援を頼むぞ。シュタインズゲートの導きだ。(ころころ)36、成功。
KP/お見事。扉が開きます。扉の向こうには、あたたかい森のような景色が広がっている。光の差した森。小鳥が鳴いている。
草摩/出よう。
格/さっ、出ましょ出ましょ。

 2人が扉を出ると、背後の扉はすうっと消えていった。
 「まっすぐ歩いたら着きますよ」と格が言う通り、暫く歩いていくと、2人が歩く道は徐々に光に包まれていく。

草摩/格。いるか。
格/いますいます。もう勝手にどっか行ったり……今日は、しませんよ!
草摩/……意見をいきなり変えて混乱するみちると天鴻のことを思いながら、帰れよ。しっかりそこは釘を刺す。
格/凄い。草摩さんが先輩みたいなことを言った。本当に30代男性だったんだ……感動。
草摩/大人だからな。
格/はは。……快く送り出してくれたお二人にも、個別にしっかり謝罪します。

 いつものようにふざけて話して歩いていくと、自分達の意識も真っ白になっていく。
 夢の目覚めと似ている、と貴方は思った。

草摩/サンキュー、玲子。格を取り戻した上にお前のかわいい顔と話が出来て、満足な時間だったぞ。
KP/玲子もどこか遠く次元の向こうで、困った顔して笑っていることでしょう……。


 ●エンディング

 声が聞こえる。
 ――――まさん。
 ――摩さ――……。

格/草摩さん! おはようございまーす!
草摩/目ぱち。むくり。
KP/ここは見覚えのある病院です。具体的に言うと、ミ=ゴ氏を壁ドンして顎クイした所です。『こっち』に戻ってくるにあたり、『あっち』の見越病院の謎機械を利用してあーだーこーだしておりまして。それで、着地点がここになったという訳です。
草摩/さすが天才メカニック。ミ=ゴのメカを解明したのか?
格/そうです。天才なので。
草摩/俺も<博物学>でよくする(一同笑)
KP/ミ=ゴ氏は草摩さんのトランクに詰められたので見越病院は空き家になっています。そこを勝手に使ってる感じと思っていただければ。
見学者・ピロ/トランクに詰められた見越、あの後どうなったんだろう?
草摩/トランクなら俺の汚部屋にあるぞ。
見学者・マーサー/(オニキスになって)「なんぞ、このトランク? つんつん」
見学者・ピロ/ちゃんと閉めておかないと不幸な百合人さんがSANチェックしてしまう!(笑)
草摩/ところで格。目覚めのキスは……?
格/枕としろ。
草摩/ティーンズラブ小説の表紙みたいな直前キスを枕にしました。
格/カメラを意識するな!(一同爆笑) どうですか、体調は?
草摩/最高だな。目覚めてすぐ格の顔が見られた。こんなに嬉しいことはない。
格/大丈夫そうですね。あ〜……そうそう。今回はご面倒をお掛けしました。なんか……お礼を言うのも違う気がするんですが、なんかこう、思いの丈を見せつけられたので。
草摩/ああ。
格/えーと。ともあれ。おれが『こっち』に戻って来たのは偏に草摩さんの頑張りによります。お疲れさまでした。おれひとりだと、どんなに罪悪感はあっても「こっちの方がいいじゃん」で落ち着いてましたしね。
草摩/……すまない、お礼を言わせるのは違うな。何度も言うが、俺は俺の我儘で格を取り戻したかった。
格/はい。
草摩/みちるが、天鴻が、眠る玲子が……そう、いくらでも言えた。でも言えなかった。最終的には結局……『俺がお前と一緒に居たかったから』。これが最大の理由だったから。
格/…………。
草摩/たとえお前が「気持ち悪いだ」なんだと俺を嫌うことになっても、俺は……格と居たかったんだよ。本当にそれだけだった。大した言い訳をできなくて、ごめん。
格/えー、気にしてたんですか? はは! 別に人が内心で何を想おうと自由じゃないですか。まあでも、変態趣味は表に出さないのが社会性だと思いますし……。おれは社会性のある草摩さんの方が付き合いやすくて好きですね〜。友人付き合いという意味でですが。
草摩/ああ、あの本を読まない限りは平気だろう。あの本のこと、忘れさせてもいいか?
格/嫌です。身の危険を感じるので。記憶ある上で、じゃないと今後も友達付き合いはしませんからね。
草摩/そうか。……そうだな。
格/だいたい、そんなこと言うならおれもカウンセリングの記憶は草摩さんから消したいですよ。……それでも、草摩さんが選んでくれたから、おれはここにいるんです。
草摩/格。みちると天鴻を好きでいてくれ。
格/あの2人のことはずっと大好きですが……そういう意味じゃないですが……。
草摩/どういう意味でもいい。圧にしたくないと最初は思ったが、圧にしておきたい。格がいなくなったら2人も悲しむ。キレる。
格/えっ?
草摩/俺が顕著に表に出しただけで、2人もお前を取り戻すことができるならしただろうよ。格ロスト救済セッション、みちると天鴻も参加したがっただろうよ。現に今日、仕事を休みにして見学席に来てくれたんだから。
見学者・マーサー/それな。
見学者・ピロ/それな。
格/えぇ〜、ほんとに……? そうかなあ……そうなんですかねえ。なんか、実際こっちに戻ってきたら、すっきりしたような気もしてます。1ヶ月、『あっち』を楽しんできましたが。……いや、本当に楽しかった。聞いてくださいよ、玲子の結婚式に出たり姪っ子ができたときの感動はこれサビなんで何回でも話せますね!
草摩/何回でも聞くぞ。
格/楽しかった……ので、あれ以上あっちにいたら、いよいよ戻れなくなっていた気がします。しっかり満喫して、戻って来たので。リフレッシュ休暇……のような、気持ちです。
草摩/そうか。
格/草摩さんが社会性を身に付ける努力してくれたならおれは嬉しいので、それなら、ノイエ銀英伝第四章策謀も一緒に行っていいかなって思わなくもないです。
草摩/やったー! 旧版の話もしていいか!
格/いいですよ。旧版を殆ど見てませんが……。
草摩/大丈夫だ、あんな長いの見なくていい(一同笑) 銀英伝、面白いけど長すぎだろ……。
格/最初の巻とラインハルトのプロポーズシーンとヤン提督のプロポーズシーンだけGEOでDVDを借りて見ました。両手いっぱいに薔薇をかかえて顔が見えなくなるラインハルトが見たいので、ノイエもそこまでやってくれると信じて投資してます。ていうかアマプラで見れるなら見るか……。
草摩/ヒーローじゃない古谷徹も出ていていいぞ。
格/古谷徹が出てるんですか!?
見学者・ピロ/古谷徹はフォーク准将だよ(笑)
見学者・マーサー/主人公格じゃない古谷徹キャラは貴重だよね〜(笑)
格/……おれ、草摩さんとこんな感じで、くだらねー話ばっかりしてるの好きなんですよね。あんまり言いたくないけどおれ、他に友達いないので……絶対に草摩さんを「友達」の枠外に出したくねぇ。
草摩/出さなくていい。ふとラインをして、映画を見に行ける距離感。仕事をして、「あれってなんだ?」と質問できる同僚。貴重だぞ。
格/…………。『ブレット・トレイン』、まだやってるかな。この映画を知った瞬間「草摩さんと行きて〜」って思っちゃって。伊坂幸太郎原作のあれです。
草摩/ああ、ブラピ主演のやつだな。行くか?
格/今から行きましょう。はい近くの東宝席を取った〜。
見学者・ピロ/早い!(笑)
草摩/DEX19の俺より早い。行くぞ。
格/ちょっと埃っぽいベッドでしたね! 埃を払って行きましょうね!
草摩/パッパッ。……2人で映画を見に行ける。嬉しいぞ。幸せだ。
KP/突発的に映画を見に行く。元通りの2人に、着地することができました。これからも庭師事件が起こり、人が死に、後遺症に苦しむ最悪の世界で、小さな幸せを拾って、生きていくのでしょう。
草摩/この幸せで勘弁してほしいと思いながら、生きていくぞ。


『 つめたい夜のおとしもの END-TREE「かなしい夜のひろいもの」 』




格/お疲れ様でした! お付き合いいただいてありがとうございます!
見学者・マーサー&見学者・ピロ/お疲れ様でしたー!(ぱちぱちぱち)
草摩/ありがとうございました。格、おかえり。
格/連れ戻していただいてありがとうございます……。あ、<図書館>の判定に成功したらの話をします。ラベルの数字、分類番号なんですよ。916はルポルタージュ、599は育児、146は臨床心理学です。本の内容を番号で振り分けてるんです。
草摩/ジャンルなんだ? なんかかっこいい数字じゃなかった。
格/例えば日本文学(現代の作家)は913.6なので、伊坂幸太郎の著作は「913.6/イ」になります。カタカナのところは著者名の頭文字を取る場合が多いですね。今回の場合は名坂の「ナ」と南の「ミ」がありました。草摩さんの本は花園の「ハ」にしました。
草摩/へー、勉強になる! 「本の画像では4つあるけど3つだけ」を突然改変してすみませんでした。それなのにラベルをすぐ考えてくれて嬉しかった!
格/本がまさかそんな風に利用されると思わなくて、すっごい楽しかったです(笑)
草摩/「格のカウンセリングを見て思いついた」ことの話をします。……格が3つの本を見せたのって、「俺を遠ざけるため」「俺を嫌いにさせるため」の意図だと思ったんですよ。
格/はい。
草摩/実際シーンが悲しくて苦しくて泣いていたんですけど、最初に決めた「格を取り戻す」ゴールは変えたくなかったので、どうにかして草摩を諦めないようにする理由を考えたとき……「草摩はこれに快楽を覚えればいいのでは?」と思いました(一同爆笑)
格/今までの草摩さんの描写からして違和感が無いのが凄いやばい(笑)
草摩/あと……見学席からの声、ありがたかったです。あれのおかげでゴールを目指せたのもあったので。
見学者・ピロ/あそこからクリティカルヒットを出すの、本当に凄かったです。
見学者・マーサー/発想が良かった〜!
格/カウンセリングのところ、「本当にどうしよう? これを入れるのか本当に?」って一番胃を痛めながらシナリオを準備してたんですが 開示しないと「格の動かし方がもうこの先わからぬ……」と思って入れさせていただきました。なんか……クリティカルに拾っていただけて、「ギブ!」じゃなくてカウンターパンチをありがとうございます。
草摩/格を元の世界に帰させるメリットが何も思いつかなかったのは、マジ。場合によってはさらに帰らさせたくなくなる情報開示もしてしまったし。
格/草摩さんの本を読んだときはここからどうやって「帰りたい」に気持ち持って行こうか、本当に悩みました!(笑) でも、そのありのままで勝負してくださったのが本当に効きました。
見学者・マーサー/これからも飲み会してください!
格/そう! これで普通にできる! ヤッター!
見学者・ピロ/今日のセッションを見届けてから次の予定をご相談しようと思ってた! 飲み会をしましょう(笑)
草摩/あ、そういや格の家族構成……というか過去設定、あんな風だったんですね?
格/過去設定は、今回のセッションをするにあたって作りました。「現代で兄妹が生き別れになる理由、何……?」と思って考えて、名坂夫妻は「玲子の誘拐事件がなければ離婚しなかった」ということにしました。今の格の家族構成は父・母(後妻)・自分(家は出ている)です。
見学者・マーサー/まあ、現代日本なら妥当に両親離婚が原因でしょうね。
草摩/喋れないという肉体的ストレスや一家離散の精神的ストレスもあれば、南玲子が宗教にハマるのも無理はないな。
格/そう。玲子が宗教にハマるキッカケを作ろうと思うと、とりあえず不幸になってもらうしかなくて……つらかった。
草摩/ちなみに、草摩の家族構成は、みちる(弟)だけです。親はどっちも俺達が20歳過ぎた頃に同時に亡くなりました。
格/なんだってぇ……。
草摩/事故死か事件死か、よく判らない。なんかサキュバスの家らしいですよ、花園家。
格/なんて?
草摩/きっと草摩が色ボケなの、血なんだと思います。
格/色ボケ!(笑) サキュバスなら仕方ないなぁ……いや、加虐趣味は仕方なくないですからね!?
見学者・ピロ/まあ、でも双子は謎のフェロモン出てますからね。確信(笑)
見学者・マーサー/実散はフェロモンが出ていて、だからやたらと神話生物に対してクリティカルするらしいよ。
格/格は実散さんに心酔していますが、それはご本人の人間性に心酔しているのだと言い張ります!
見学者・マーサー/わーい、格くんの評価が嬉しい〜
草摩/やたらと草摩が接触とか性的な言動を好むの、サキュバスの血のせいか。説得力ある設定になってしまったな……。
格/草摩さんのフェロモンが効かなくてすみません!
草摩/好きな食べ物で落とそう。格、好物は何だ?
格/食べ物にあんまり執着なくて、美味しければなんでも好きだしマズければイヤって感じですね。食わずに生きていけるならそれで……だからその格に「あれ作ってくださ〜い」と言わせた草摩さんは凄い。
草摩/以前パイを作ってくれとリクエストしてくれたとき、実は凄く嬉しかった(笑) みんな、作るから食べてくれ。これからもな。




END

花火を見に行く約束を果たす卓へ続く

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