クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 狂演 』 4ページ ■
2022年2月14日




 ●4日目:ローザ教の洋館

KP/ローザ教の施設に到着しました。不気味なぐらい静かです。
実散/静かだ。休館日なのかな?
KP/信者の姿は見当たらず、庭で咲き誇っていた薔薇の花々は全て摘み取られています。
実散/うわっ。これは……準備完了ってこと?
春樹/……中に入ります。聖堂へ、祈りを捧げる場所へ行きましょう!

 ステンドグラスが輝く聖堂の中に入る。すると、一面真っ赤な薔薇が散らばっているように思えた。
 だがそれは、真っ赤な薔薇ではなく血液と血液が付着した何か。
 それが人体を構成していたものであることに気付く。恐ろしい惨状を前に恐怖を覚えるだろう。(SANC 1/1d3)

KP/血塗れで原形をとどめていない血と肉が殆どだが、ところどころ白のローブや薔薇の刺繍が見えることから信者の死体であることが分かる。
実散/わあ!? あまりにもあんまりだ!(ころころ)67、成功。
春樹/ぐっ!?(ころころ)2、クリティカル成功! 見慣れてたのかな……?
KP/実散さんはSANマイナス1、先生はマイナス無しかクリチケ入手のどっちかを選んでください。
春樹/クリチケを貰います!
KP/はーい、クリチケどうぞ。SANは1点減らしてね。聖堂では<目星>と<聞き耳>ロールが振れます。
実散/<目星>で。(ころころ)4、クリティカル成功!
KP/調子が出てきた!?(笑) クリチケどうぞ! ……2人を案内してくれた女性を発見できます。聖堂の中心の一際高く肉と血が積まれた所に彼女の姿がありました。ひゅうひゅうと、か細い息。昨日2人に声を掛けて、この施設を案内してくれた女性信者の姿です。
実散/……まだ、生きてる!
春樹/でも……酷い状態だ!
KP/幸運にも彼女は他の信徒のようにバラバラにされていませんが、バラバラになりそうなぐらい傷ついています。朗らかに笑って見送ってくれた顔も、酷い怪我を負っています。<応急手当>をしないと死んでしまうことは明らかです。
実散/こんなことされていい子じゃなかっただろ、カワイイ女の子だったじゃないか!
春樹/誰だってこんな目に遭っていい人間なんていませんよ!
KP/「どうして……? たす、けて……かみ、さま……」 祈るように縋るように、手を伸ばす血塗れの手。<応急手当>をお持ちの方、どうぞ振ってください。
春樹/<応急手当>をします。(ころころ)78、成功!
実散/さすセン! 幸運にも見つけてくれた! 神様はいる!
KP/的確に春樹先生は止血処置を行い、彼女は一命を取り留めました。ですが早く病院に搬送しないと危ない状態なのは確かです。
春樹/ほっ。……後は、しっかりとした処置をしなければ。
KP/この場で生きている人間は実散さんと春樹さんと、いま助かった女性の3人だけです。あと、<聞き耳>ロールもできるよ。
実散/<聞き耳>をします。(ころころ)35、成功。

 <聞き耳>→実散が成功。
 むせかえるような血液の匂いが充満している。
 その中で、微かに花の匂いがする。薔薇の匂いだ。

実散/血に勝る匂いなんて凄いね。……ハルセンセイ、その子を連れて外へ。俺は奥に行きますので早く救助をしてあげてください!
春樹/はい。……って、え?
実散/適当に武器を見繕っていければいいな。
春樹/いや……実散くん!? 単独行動をする気ですか!?
実散/早く適切な処置をしないとその子が危ないでしょう? 俺の車を使って行ってください!
春樹/いや、いやいや、応援が来るまで待ちましょう!?
実散/……応援、すぐ来てくれるものなら待ちますよ。でも来てくれないようだから俺が行くだけです。
春樹/いや、でも。
実散/もしかしたら久遠先生とかが同じ目に遭ってるかもしれない。だから、俺は行きますね。その子をよろしくお願いします。
春樹/え、あ、その。
KP/春樹先生、<幸運>を振ってみてもらえますか。
春樹/はい!(ころころ)69、失敗……。
KP/……救急車とか呼びます?
春樹/もちろん呼びます!
KP/(ころころ)救急車は15分後には到着するようです。先生、<医学>ロールをどうぞ。
春樹/彼女、15分はもちますよね!?(ころころ)88、失敗……な、なんで!? ここで失敗はダメだ!
KP/先生、マジでテンパってるな?(笑)
春樹/クリチケを使わせてください! ここで救えないのは、ダメです……! 私は救うための医者ですから!(ころころ)70、成功! この年月の成果をここで生かせなきゃ意味が無い!
実散/必死だ……!
KP/では、先生の必死の応急手当ての甲斐もあり、救急車が来るまでは女性は大丈夫と確信できます。聖堂に女性を安置していることを伝えれば、救急隊員はすぐに駆けつけて搬送してくれるでしょう。なので先生はこの場を離れても大丈夫です。
春樹/良かった……!
実散/……ハルセンセイは医者として役目を果たしてる。だから俺は違うことしなきゃ。そう行って実散は先を急ぎます。
春樹/実散くん……私も後を追いかけます!
KP/もちろん、救急隊員に彼女を引き渡してから実散さんを追うのもありですが。
春樹/……うっ……。
KP/その場合、戦闘が発生した際、1d6ターン到着が遅れるようにします。
春樹/…………。
実散/ちなみに今の実散は拳銃なんて持ってないよ。身一つの拳で突撃だね!
春樹/武器無しの単騎突入じゃん……。
KP/春樹先生がここに居ても居なくても、女性は助かるとKPは明言しておきます。なので、ここの判断は個人の信念や感情ですね。葉月春樹はどうするか、です。
春樹/…………。
実散/葉月 春樹がどうするかで考えて〜。
春樹/…………。効率度外視で動いていいのですかね……?
実散/いいよ。
KP/いいよ。先生が満足する選択をして。
春樹/……たとえKPが「女性はこのままでも助かる」と言ったとしても、救急隊員に直接渡した方が確実に安全。そう一瞬でも判断してしまった。なので……15分間、ここで、ずっと応急手当していても、いいですか?
KP/はい、OKです。
春樹/可能なら……他の人も無事か確認を、無事な人を探したいです。
KP/それは、<幸運>ロールが必要かな……さっきKPは「生きているのは3人だけ」って言ったからね。
春樹/生かしたいです……生きていることが素晴らしいと知れて医者になれたんだから! それを優先したいです!(ころころ)<幸運>17、成功!
実散/凄いっ! 死んだのをセンセイが生かしたのでは!?
KP/(ころころ)3……。血と臓物の聖堂を必死に探すと、先ほどの女性のように辛うじて息のある信者を3名を見つけられました。
春樹/いた! 掘り起こして、また救急隊員が処置できるように整えておきます!
KP/ここの<応急手当>ロールは免除します。ここまでしたらいらんよ……。
実散/凄いよハルセンセイかっこいい! 素敵です! ……怪我人を優先するハルセンセイ、素敵です。「実散ありきのキャラメで生まれたPC」が、「実散を優先しない」という選択をしたことが素敵……!
春樹/シャツが血まみれになってでも救助活動をします。格好良くなんてない、汚い無様な姿ですよ。でもとにかくやります。
KP/「ああ……」 必死に助ける姿を見て、助け出された人はか細い声を上げる。
春樹/声……! 救急車はあと10分程度で来る! 頑張るんだ!
KP/「なんて、うつくしい」
春樹/……美しい? ああ、ステンドグラスか。そうだ、それをちゃんと見ていて! 意識をハッキリ持つことは良いことだ!
KP/その懸命に助けようとする姿が。血に塗れても身が汚れても、必死に命を救おうとするその精神が美しい。そう助けられた人は思いました。救われた4人は、きっと貴方こそ神の使いだと思うことでしょう。
春樹/しっかりと呼び掛けて、4人を救います。……ありがとうございます、神様。彼女達を助けてくれて。
実散/ステンドグラスの光に照らされての、薔薇の中での救助活動……素敵すぎる。
KP/神々しいな……。そんな感じで、先生のシーンは一旦終了させてもいいですか?

 聖堂を出て、教祖の部屋に向かう。
 人の気配の無いエントランス、廊下や階段には血の跡が見えた。血の跡は、施設の奥に続いているようだった。
 教祖の部屋へと血の跡が続く。。扉は開いており、中に入ると所々赤い血が付着していた。それは奥の扉へと繋がっていた。

実散/凶器を持った人がいるのかな。うーん、何か武器になる物はないかな。椅子……時計……絵の額縁……本……なんでもいいから掴んで行く。
KP/<聞き耳>ロールをどうぞ。
実散/(ころころ)57、成功。どこだ……どこだ……?

 <聞き耳>→実散が成功。
 施設内も不気味なほど静かだ。生きた気配がしない、と言っても良い。

KP/では実散さん、<目星>ロールをどうぞ。
実散/<目星>で(ころころ)56、成功。

 <目星>→実散が成功。
 ごつん、と足で何か蹴飛ばす。見ると、大きな木箱だった。

実散/…………。拾う。
KP/実散さんは刑事だから分かるか。拳銃などが密輸される際に使用される木箱です。税関で見たね。<幸運>ロールに成功したら使える拳銃をゲットできます。
実散/……ふふっ、犯罪者め〜。悪い子だなぁ!(ころころ)87、成功。
KP/おめでとう、拳銃を1丁ゲットします! 弾も入ってますね。データは自身がお持ちの銃を使ってもらって構いません。
実散/拳銃はね、こんな俺でもマトモに褒められる特技の一つなんだ。ラッキーな俺、今日もラッキーでいてくれてありがとう! みんなの役に立てるぞ〜。しっかり撃てる準備をして、行く!

 奥の扉は開いていた。
 扉を開けると、地下へと続く階段がある。階段にも赤い血の跡があった。薄暗い階段の先は扉があり、それは簡単に開けられそうだ。

実散/迷っていられない。意を決して、扉を開けて先を見る。
KP/扉を開けると、聖堂と同じくらい大きい空間が広がっている。天井もそれなりに高いためか広く感じら。地下聖堂、その中央に棺桶が見える。
実散/綺麗な場所だ。……棺桶の中身、あるのかな?
KP/近付いて覗きますか? 周囲に影は今のところ無いです。薄暗いので隅の方までは見渡せません。あとは<聞き耳>ロールをするともう少し部屋の様子が分かるかも?
実散/気をつけながら中へ……棺桶を見ます。(ころころ)86、失敗。……ゴホッ、う……くっ。
KP/咳き込んでしまって、部屋の様子はよく判らない。
実散/……やめてくれよ、こんな所でバテたくない。俺に自信をつけさせてくれよ……たかひろくんが褒めてくれた俺を、さくくんが尊敬して見てくれている俺を、カッコイイ大人な俺のままでいさせてくれよ。
KP/……そのまま棺桶に近付きますか? では棺桶を覗くと、真紅のドレスを纏い、赤い薔薇に囲まれた久遠美香の姿があります。<聞き耳>、<アイデア>、<目星>か<医学>がそれぞれロールできます。
実散/まず<聞き耳>します。(ころころ)51、成功。胸を抑えながら、もう一回意識を集中させる。
KP/棺桶に敷き詰められている薔薇の匂いが強い。だが、それ以上に強く臭うものがある。血の匂いだ。
実散/エグいねえ。次は<アイデア>ロールをする。(ころころ)41、成功。

 <アイデア>→実散が成功。
 真紅のドレスはよく見ると所々白くなっている。いや、白くなっているのではなく、元々白かったのだ。
 しかし、赤く染まっている。エントランスの惨状を思い出した貴方は白のドレスが血液で赤く染っていることに気付くだろう。(SANC 1/1D3)

実散/(ころころ)41、成功。最後に……<目星>ロール。(ころころ)93、失敗。……口を抑える! 咳き込む……というか、血の匂いにやられて吐き気を催す。
KP/では、生きているかどうかはこの薄暗さでは判らない。
実散/……生きている、まだ生きているに違いない。殺してモノにするような犯人じゃないだろう。……彼女を助けるため連れていこうとします。
KP/実散さんが彼女を棺桶から出そうとした瞬間、「触らないで!」と誰かの声が部屋に響く。
実散/声の方を振り向く。
KP/声のした方を見ると、頭から血を流している立川 重蔵と、刃物を持った城賀 百合が立っていた。
実散/……やっぱり、貴方達が。
KP/立川先生は答えず、虚ろな目で実散さんの方を見ている。彼の様子が気になるようなら<心理学>をどうぞ。
実散/<心理学>します。(ころころ)42、成功。

 <心理学>→実散が成功。
 立川はどうやら洗脳され、正気を失っているように見える。でなければ頭から血を流しているのに立っていられないだろう。
 まともな受け答えは出来ない状態のようだ。

実散/あはは、洗脳か。凄いことするねえ、実行犯と思わしき城賀ちゃん。洗脳って最近の流行りなのかな?
KP/流行ってたまるか(笑) 「どうして、邪魔をするの。もう少しで最高の美を得られるのよ、邪魔をしないで」
実散/それが動機? 君が罪を犯す理由?
KP/「彼女みたいに美しくなりたかったの! だから彼女に沢山若い女の血を飲ませたわ。そうしたら彼女も美しくなれる! そうして最後に彼女の血を飲めば私はこの世で最も美しくなれるの!」 恍惚とした様子で、城賀は叫びます。
実散/そんなことが、可能とでも? 現代日本でそんなトンデモ学説を信用しちゃう?
KP/「だって、出来るって言ってくれた人がいるの! 実際、言うとおりにしたら肌が綺麗になった! 髪が艶やかになった! 本当に起きたら信じるでしょう!?」
実散/……そうだね、信用しちゃうか。信用して……自分のために久遠先生を食い物にして、大勢の人々を殺しちゃうか。
KP/「そのために私はこの教団を作ったの。人は美しいものに惹かれずにはいられない、美しいものになりたがる、そういう人を集めるのに、彼女は都合が良かったの」
実散/立川先生は?
KP/「立川は赤の女王に心酔していた男よ。美しいものを愛する男。久遠美香を『完璧な赤の女王にしよう』と誘ったら喜んで協力してくれた」
実散/共犯者ってやつ?
KP/「立川は久遠 美香を『完璧な美の存在、赤の女王』にしたかった。私は『完璧な美の存在となった久遠美香の血を浴びて、自身が美しくなる』のが目的。最初は目的が似てたから協力していたけれど、彼女を殺そうとしたら『話が違う』って喚き出したから黙ってもらうことにしたの」
実散/……はあ、ありがとう。判りやすく全部言ってくれて。第三者が聞いても納得の自白だ。スマホで録音した会話をすぐさま零課へ送信します。

 かつん、かつん、と高い足音を立てて、城賀は棺桶の傍に近寄る。
 「ふふ、私の美香。理想の美しさ。心も身体も全て、何もかも……。
 ふふふっ、あははははっ、やっと、やっと私のものになる、彼女の血肉全て余すことなく食べて飲んで身体に入れて……。
 そうして彼女は私の中で生きていくのよ。ふふふふっ、ねぇ、素敵でしょう?」
 狂気と狂喜に満ちた目で、彼女は実散を見た。

実散/そういうこと聞くの、兄ちゃんの冗談だけで充分。銃を構えて戦闘態勢を取ります。
KP/まずは春樹先生、1d6を振ってください。戦闘参加ターンを決めます。
春樹/(ころころ)5ターン目から参加になりました……。
実散/ハルセンセイ、救助活動を頑張ってるね〜!
KP/次に実散さん、<心理学>か<精神分析>ロールをどうぞ。成功したら立川先生を無力化できます。洗脳を解くって感じですね。
実散/<心理学>します。(ころころ)11、成功。俺から『庭師』HO1の心理学というアイデンティティを奪わせないぞ〜!
KP/出目が良い! では、なんかこう、正気に戻りそうな台詞をください!
実散/掴んできた額縁を投げる。
KP/心理学(物理)!?
実散/立川先生に当たってもいい! 当たらなくても大きな音を立てればいい! 命の危険を覚える程の大きな音を立てます。「催眠解除の方法は命の危機に晒されること」って礼二さんが言ってた!
KP/では……実散さんが投げた額は立川に当たった。(立川になって)「がっ!? あ、ああ……私は!?」 バタン! そのまま意識を失います。
実散/当たってもきっと1d6点ダメージだよ! 大の大人なら死なないよ、死ぬほど痛いけど!(笑) 命の危機を覚える痛さでごめんね〜!
KP/城賀はそんな立川を見て「なんて使えない男……!」と舌打ちします。
実散/俺がそれ以上にデキる男だっただけだよ。
KP/「いいわ、私だけでも! 究極の美を完成させるの! 邪魔しないで……!」 城賀は銃を構えます。戦闘開始です。なお城賀のDEXは11じゃ。
実散/実散のDEXは13です。……あはは、あてずっぽに撃ったら危ないよ! 素人の拳銃の数値にそう言っておきますね。先に城賀ちゃんの腕を狙い撃ちして武器を捨てさせる!
KP/
したら、部位狙いということで<拳銃>−10%でどうぞ。
実散/<拳銃>は84あるので、74以下が出れば成功です。(ころころ)40、成功!
KP/当たります。素人が銃弾避けられる訳が無い。ではダメージをどうぞ!
実散/無造作に前へ突き出した手の甲を、狙う!(ころころ)6点ダメージ! 銃を落とせ!
KP/「うっ!」 素人だしなあ……普通にダメージが入った時点で武器を落としますね。カシャンと握っていた銃が落ちる。「う、うう!? 私の手、手が……!」
実散/さあ、銃が撃てない状態の彼女、どう出る? 突貫? 逃亡? それとも? 早く手を治療しないと歪な形になっちゃうかもよ? お医者さん来るまで大人しくしようか。
KP/……偶数が出たら逃げようとする、奇数なら激昂して向かっていく。(ころころ)4……。実散さんに手を撃たれ、身の危険を感じた彼女は本能的に逃げようとします。追いかけるならDEX対抗ですね。手負いなので実散さんは+10%していいですよ。
実散/それでは70%以下が出れば成功だ。(ころころ)88、失敗。クリチケを使います。(ころころ)12、成功!
春樹/いけ……!
実散/……一瞬、胸がぎゅうううっと苦しくなる。咳き込もうとする。でも……久遠先生は絶対生きてている、ハルセンセイだって頑張ってる真っ最中なんだ! 俺だけ何も出来ない訳にはいかない!
KP/その希望を糧に、実散さんの足に力がこもる。聖堂を駆ける。
実散/俺は、同僚や兄ちゃん達に追いつく! 絶対に俺は、追いついてみせる! ダッシュしてジャンプしてダイブ! 上から男に潰されろ!
KP/「あ、ああっ……!」 実散さんの必死の疾走が、城賀を追い詰める。
実散/……捕まえた 手錠を後ろ手に掛けちゃおうね、ガチャッ
KP/言い方が百合人さんっぽい(一同笑) 手錠の無機質な音が聖堂に響く。女は力なく聖堂の床に座り込む。戦闘終了です。
実散/はーい! 足をネクタイで縛っておこうね〜!
春樹/……良かった……。
KP/あ、では春樹先生、シーンに登場していいですよ。
春樹/実散くんっ!
実散/……わ? その大声は、ハルセンセイ?
春樹/実散くん! 実散くん……! 無事、だね!?
実散/良かったー、センセイがここに来たってことは救助隊が到着したんですね! 早く久遠先生と立川先生の手当をしてくださーい!
春樹/……おーい、こっちだ! 救助隊や警察官を大声で誘導します!
KP/春樹先生が聖堂に駆け込むと、そこには力なく倒れ込む城賀と、頭から血を流して倒れる立川、城賀と拘束している実散さんと、棺桶に入れられた血塗れの久遠の姿を発見できます。立川には<応急手当>、久遠は<医学>をそれぞれロールしてください。
春樹/(ころころ)(ころころ)どっちも成功です!
KP/立川は出血こそ派手でしたが、適切な処置をすれば命に別状はありません。久遠は危ない状態でしたが、春樹先生の救命措置のお陰で一命を取り留めます。助け起こしたことで久遠美香は目を覚まします。
春樹/もう暫く眠っていていいですよ。まだおつらいでしょう?
KP/「あ……たすけてくれたの……あり、が……」 久遠は最後まで言い切ることなく、再び意識を失います。このまま救急隊員に引き渡せば無事に治療されるでしょう。
実散/良かった〜。
春樹/……実散くん。生存者は4名です。私が発見し、ちゃんと搬送されるのを見届けました。
実散/ほんと!? ハルセンセイありがとうございます! ハルセンセイがいなかったら……俺と一緒にラスボス突撃シーンに参加してたら生存者は見つかりませんでしたよ! 本当にありがとうございます。
春樹/…………。疲れましたね、さすがに……。
実散/センセイ、深呼吸しましょ!
春樹/……実散くん、平気顔なんですね。
実散/えへへ、これでも結構ドキドキしましたよ? けど俺、ラッキーな男なんでどうにかなりました

 地下聖堂から移動し、エントランスまで向かうと、救急隊員や警察の姿が見える。
 城賀と立川は応援に来た警官たちによって身柄を拘束、逮捕された。
 生存者の4名、そして久遠 美香は直ちに救急搬送され、適切な治療を受けたという。
 ……だがそれ以外の聖堂に積まれた遺骸は、おそらく身元の特定は困難であると警察官である実散は思うだろう。

実散/酷い有様だったもんね。もっと早くどうにかできたら助けられたのかな。
春樹/そうですね……。
実散/……あー、そっか。俺が無理にでも昨日の時点で突貫していたら、城賀ちゃんが黒だと判って確保できれば、信者の人達が救えたのかな。……俺、なんとかできたと思ったけど、やっぱりダメだったのかな。
KP/でもそれは、全てが終わった後のたられば話。
春樹/……そんな上手い人生、ありえませんよ。終わらせた。解決できた。それで良かったと思いましょう。何より実散くんが生きていられた。それだけで良かったと思いましょう。
実散/……ハルセンセイ。センセイらしいお言葉をありがとうございます。
KP/ではそんな話をしていると、2人に声を掛けてくる人が居ます。体のデカい同僚です。「実散さん、大丈夫でした? 怪我してないっすか?」
実散/わあ、たかひろくん! えへへ、元気だよー。こんなに早く駆けつけてくれるなんて嬉しいな〜!
春樹/実散くんの同僚さんですか?
天鴻/あ、初めまして。葉月先生でしたよね、ご無事で何よりです。そして実散さんはもうちょっと『待て』を覚えて……。
実散/あはは。今ね、ハルセンセイに諭されてたところ! そうだ、いたるくんのパソコンに全部証拠のデータを送信しておいたから! いたるくんのことだからもうきっとチェックしてるだろうけどね。
天鴻/はいはい。お疲れのところ悪いんですけど、事情を聴かなきゃいけないんで署までご同行お願いします。……でも事情聴取は夜からなんで、それまでは休んでてください。
実散/はーい、お話するの頑張りまーす。
春樹/しっかりと話させていただきます。……実散くん、優しそうな同僚さんですね。
実散/うん! 俺の大好きな仲間! 頼り甲斐ありそうでしょ〜!
春樹/心配性な人っぽく見えましたから、あまり実散くんは心配かけないように。
天鴻/もっと言って!(笑) じゃあ俺は現場に行くんで。……そう言ってデカい同僚は立ち去ります。これにて一連の事件は幕を下ろします。


 ●後日談:平穏な日々

KP/後日、入院していた久遠が無事に退院したという知らせを受けます。彼女は「お礼がしたい」と2人を自宅に招きますね。
実散/わあ〜、嬉しい!
春樹/回復できて良かった。ゆっくりとお仕事に復帰してほしいですね。
KP/(久遠になって)「花園さん、葉月先生。先日は大変ご迷惑をお掛けしまって……お二人が居なければ私は……」
実散/いえ、ご無事で何よりです。これ、お土産のイチゴです。あまおうだよ、食べて!
春樹/フルーツ盛り合わせとかじゃないんだ(笑)
KP/「城賀さんと立川先生の話は聞いたわ。なんて……なんてことを……」 そう言って久遠は言葉を詰まらせます。
春樹/……まずはお体を休ませてくださいね。ゆっくり心身を休めてください。
実散/ご飯、ちゃんと食べてます? 久遠先生の好きな物、ばくばくいっぱい食べちゃいましょ?
KP/「ええ、ちゃんと食べてるわ。早く本調子にしないと、患者様達が待ってるもの」
実散/もし一人で食べるの心細いなら、俺がお手伝いしますよ?
KP/「あら、ナンパ?」
春樹/実散くん。それ、ナンパですよ。
実散/あはは、ナンパかも? でも俺は純粋に久遠先生を元気にしたいだけです〜。
KP/「ふふ、お上手。……ありがとう」 そう笑った彼女は、貴方達が見てきた表情の中で一番美しかった。
春樹/……何が綺麗かなんて人それぞれだと思いますが、安心したときに見せてくれる『生きている笑顔』。それが一番美しいものだと私は思いますよ。
実散/うん、その通り! 久遠先生の素敵な笑顔を見せてくれてありがとうございます!
KP/「本当に、ありがとう」 和やかに会話を弾ませる3人でしたとさ。……ちなみに、元のシナリオだと生存者なんていないです。でも、案内したNPCぐらいは助かる道があっても良いかなって思ったのと、春樹先生のロールが良かったので生存者を増やしました。
春樹/シナリオ改変、ありがとうございます!
実散/KPありがとうです! 最高でした!
KP/素敵ロールプレイにはご褒美があるべきかなと。あと……実散さんの精神的な成長が見られてめっちゃ良かった。『庭師』の時みたいな、ちょっと借り物のような精神的強さじゃなくて……実散さん自身が強くなってる感がしました。
実散/えへへ、嬉しい。
春樹/休んで良かったですね。
実散/うん、やっぱカフェでの休憩から、一気に卓の空気が変わりましたね。
春樹/そのカフェのシーンでこのセッションを終わらせたいかな。カフェでの2人で始まり、カフェでの2人で終わりたいです。
KP/いいですね。では、その後……事情聴取とか諸々終わって、また2人でいつもお茶をしているカフェに訪れたと。
春樹/……少し、昔のことを語らせてください。
実散/はい。
春樹/私が実散くんと初めて出会ったのは18年前。研修医1日目のことです。
実散/18年前……俺が14歳のときのことですか。
春樹/私はなんとなく医大に行き、なんとなく成績を収め、なんとなく経験を積み、なんとなく医者として過ごして、なんとなく生きる……そう漠然と、茫然と、無意識に人生を送ろうとしていました。
実散/なんとなくで医者になれるなんて、優秀ですね……。
春樹/INT:17でEDU:19ですから、優秀だったんですね。それはそれで良い人生で、きっと他の人も「偉大だ」と褒めてくれたことでしょう。それは不幸ではない、でも幸福でもありませんでした。
KP/優秀で何でも出来ちゃったから、逆に熱意が持てなかったのかな……。
春樹/あの頃はなんとなく生きていました。研修1日目も明日しなきゃいけない課題のことを考えたり、事務的で上の空でした。
実散/うわのそら……。
春樹/そんな風に淡々と自分に課せられたものをこなしている私は……病院の廊下で、花が一輪落ちているのを発見しました。見舞いの人が落としたと思っていたら、花弁がある病室まで点々としていたことに気付きました。
実散/ヘンデルとグレーテルかな?(笑)
KP/待て、それは草摩さんの罠だ(笑)
春樹/病室に入ってみると、満開でした。白いベッドのシーツには色とりどりの花々が引き詰められていて、ベッドの下にも花が溢れて咲いていました。
実散/多い多い多い! 兄ちゃんそんなに持ってきたの!?(笑)
春樹/花が咲くベッドの上には、少年が一人眠っていました。一瞬、葬式場を思い出しました。「死んでいる!?」と一瞬悪寒が走りました。……でも、胸は上下していました。
実散/息があった。
春樹/生きている。良かった。そう思いました。ほっとしました。……そのとき、気付いたんです。生きていると、ほっとする。生きていることは、大事なこと。……なんでそんな当たり前すぎることに、自分は実感が湧いてなかったんだ。愕然としたんです。
実散/……あまりに些細なことすぎる。
春樹/一瞬にして「死」を味わい、「生きている」と安心した。その落差に「してやられた」んですね。……この安心感を他者に分け与え、命を救い、健康にしてあげられる医者とは凄い存在なのでは? 私はそんな人間になれたら素晴らしいのでは? 気付いたこの日から、なんとなくは、やめました。
実散/……めっちゃ良い話じゃないですか。
KP/一人の人生が変わった、いや目覚めた話ですね。
春樹/なお、このあと草摩は看護婦リーダーのおばちゃんにめっちゃ怒られた。
実散/でしょうね!(一同爆笑) 兄ちゃんはあれ毎回やるから毎回怒られるんですよ! そして毎回そのお説教を横で聞く俺! 勘弁してほしかった!(笑)
草摩/みちるはかわいい。花にも負けない。かわいい事実は消せない。
実散/俺がかわいいのは判ったからいいかげん怒られることを覚えて!(笑) ……俺、ハルセンセイの凄く影響を与えていたんですね。
春樹/実散くんには感謝してますよ。実散くんにとっては迷惑な話しですね。何も知らない、言われても何だという話ですし。
実散/ほへ……俺、寝てただけだもんね。……それにあの頃の俺、何も喋らなかった。
KP/喋らなかったの?
実散/子供の頃の実散、喋らない子供だと思うんですよ。「笑顔は兄ちゃんの真似。本当の笑顔は涼ちゃんに出会って教えてもらった」という設定があるくらいなんで。……物静かで無口で陰鬱で根暗で、表情もあまり動かさない病人だったと思います。
春樹/研修医のときも、何度か貴方を診察しに行きましたね。……貴方を生かしてあげたい、元気にしてあげたい、そう思って診察してました。やっぱり医者としての私は実散くんを見て生まれたんだと思います。
実散/小さい俺、ハルセンセイにいっぱい失礼なこと言ったでしょ? 「俺なんか見て楽しい?」とか。毎日苦しくて八つ当たりしたこともあったんじゃないかな。
春樹/そうですね……でもあのとき毎日苦しそうにしていた少年が、今は大人になってニコニコ笑ってくれている。とても嬉しいです。さて、本題に入ります。
実散/う? 本題ですか?
春樹/実散くんは、私の人生を変えた恩人なんです。たとえ身勝手に私が貴方を恩人と思っているだけだとしても。
実散/……はい。
春樹/医者の私をこうして生んでくれたのは実散くんです。その私がいたことで……4名を生かすことができました。5人以上の人間が、実散くんに生かされている。つまり実散くんは、いなくてはならない人なんですよ。
実散/…………。
春樹/実散くん、貴方はもっと自信を持って生きてください。
実散/…………。もしや。俺のちょっと投げやりな言動に、ハルセンセイ、傷ついてました?
春樹/ええ。勝算はあったのでしょうが、貴方の突入は暴走に思えた。私はそれにとても苦しめられました。何より貴方の「俺なんか」という口癖は、正すべきです。
実散/……よくヤメろって言われます〜。
春樹/貴方に救われた人間が多い。これは事実である。理屈や道理を大事にする実散くんには良い説得力になりませんか? 「俺は生きるべき人間なんだ」と自分を説得する材料として、どうぞ私、葉月 春樹をお使いください。
実散/…………。改善、します。前向きに検討します。
春樹/それ、本当にしてくれます?
実散/本当に! しますって! 健闘もします! ……ありがとうございます。俺のことを想って、俺を生かそうとしてくれるセンセイ……尊敬します。大好きです!
春樹/ええ。私も実散くんが大切で、大好きです。しっかりと覚えておいてくださいね。そうしていると息子がご来店するとか。
KP/「パパ〜!」
実散/みのるくん!? わあ、みのるくんだー! おっきくなったね〜!
KP/「みちるおにいちゃんだ! こんにちわ!」
実散/こんにちはー! ぎゅうっ! えへへ、ほっぺたぷにぷにカワイイ〜!
春樹/……実散くん。したかった話は以上なんですが、これから手伝ってほしいことがあります。実成は実散くんのことが大好きなので、一緒に遊びに行ってください。
実散/パパの出番、奪いません?
春樹/「大好きなパパと過ごせる時間」より、「大好きなパパと大好きなみちるおにいちゃんと過ごせる時間」の方が息子のためになると思いませんか?
実散/あはは、確かに〜。パパのお手伝い、いっぱいしますね!
KP/「みちるおにいちゃんと遊べるの!? いっしょにお出かけできるの!? やったー!」
実散/うん、1日俺といっしょだよ〜! ご飯は何が食べたい? 美味しいのいっぱい食べようね〜!
KP/「みちるおにいちゃん! おっきくなったらおれとけっこんしてね!」
実散/うん、いいよ〜!
KP/安請け合い(笑) 実成くん、実散さんは「みちるおにいちゃん」だけど草摩さんは「そーまおじちゃん」って言いそう(一同笑)
実散/好意を寄せられるのが嬉しいので実散は大喜びですよ。大人になっても俺のこと好きだったら来てね〜!
KP/15年後、47歳の実散さんにプロポーズしにいく実成青年ですか?
春樹/フラグ建設してるじゃないか。
百合人/15年経っても忘れられなかった人もいるからな。
春樹/そんな訳で待ち合わせのカフェを出て、家族の時間を……平和な時間を過ごします。なお、1日遊んだ後にまた疲れて眠ってしまった実散くんにキスをする春樹はいる模様。
実散/この穏やかな状況でもキスするの!?
春樹/しますが何か?
KP/春樹先生さあ……!(笑) 「わーい! おれ、みちるおにいちゃんにちゅーするー!」
実散/この年でキスできるみのるくんはかわいいね!(笑) じゃあ、みんなで遊びに行こうか。出発〜!




『 狂演 』

END


草摩と天鴻が大量殺人事件に挑む『絶貌の群れ』に続く

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