クトゥルフ神話TRPG・リプレイ
■ 『 劇場版 同居人 』 3ページ ■
2021年12月11日




 ●山

 獣道の山を登ると、そこには荒れ果てた平屋のような建造物が、異彩を放ちそこに存在している。
 長年誰も立ち寄らず、手が加えられていないのか、建物の壁にはつたの葉がへばりついている。ドアは開け放たれたままだ。


KP/<聞き耳>をどうぞ。
実散/さくさく行くよ!(ころころ)7、成功。
百合人/(ころころ)53、成功。

 <聞き耳>→実散、百合人が成功。
 平屋の中には人の気配がある。
 こんな音が聞こえる。それは、肉と肉がぶつかり合う音。水滴がぴちゃん、と地面に落ちていく音。汚らわしい漢の荒い吐息の音。声にならない悲鳴を、あぁ、あぁ、と擦れさせている少女の音。
 ぎしりぎしりと揺れる家具の様な音だ。中で、何が起こっているなど、想像に容易い。

百合人/あらら、良い趣味してるねー。確かリンちゃんってまだ10歳ぐらいじゃなかったっけ?
実散/最悪。……最悪。発砲許可を貰いたいぐらいだよ。
百合人/さすがにミチルちゃん、銃は常備してないよね?
実散/日本人で銃を常備してるのは、まずいませんよ。
KP/あ、じゃあ実散は<幸運>ロールしてください。
実散/(ころころ)40で成功。
KP/せっかく<拳銃>80もあるのに武器を持ってないのは嫌なので、本物の銃は持ってないけど代理のものを持っていたことにします。犯人の部屋で殺傷力は無いモデルガンを入手したことにしていいです。
実散/いいの!? 使います!(笑) これ、発砲していいの?
KP/あくまでゲームとしての救済措置なんで、これで撃っても実散は捕まらないことにします。殺したらダメだけど。ダメージは2d10÷2(切上)です。
実散/温情ありがとう〜!

 中に入り、目につくものは瓦礫と埃に塵。ものらしい何某はほとんど存在しなかった。
 窓から差し込む太陽の光が、淡く部屋を照らしだして視界を確保している程度だ。しかし部屋の中心には何かがある。
 それは椅子だ。古ぼけた布製の椅子がそこにはあった。そして少女が後ろ手に縛られ、顔に鈍い青あざを浮かべながら、ぐったりと座り込んでいる。


実散/あれが、凛ちゃん……?

 服は破き割かれている。ひどい乱暴を受けたのだろうか。
 その脇には薄汚い姿をした大男が立っている。髪は金髪のウェーブロング。欠けた歯からよだれを滴らせ、にやり口角を上げる不愉快な存在だった。
 やつが牛山で間違いないだろう。


KP/牛山が<聞き耳>を振ります。(ころころ)……あ、気付きました。「あぁ!? なんだお前!? オレのこと追っかけてたのかぁ!?」
実散/気付いちゃったか〜!
KP/「ひゃひゃひゃ、残念だったなぁ! もうオレ、この子を痛めつけちゃったもんねー! もうちょっと早ければなぁ、遅いんだよバーカ!」
実散/うわ、小物っぽい!(笑) 牛くんは凶器を持ってますか?
KP/こいつ、何も持ってないですね。キックとこぶしで戦うタイプです。
実散/撃ちます。
百合人/判断が早い!?(笑)
実散/部位狙いできますか?
KP/どこを撃つ?
実散/右肩です。利き腕の肩が一番生活に応えるし、あと肩なら貫通したり大量出血しても生きられます。心臓も遠いから安心。
KP/い、生きられるものなんだ……?
百合人/生きられるよ。肩なら槍で貫通しても生きてるって中学時代にお世話になった医者が言ってた。
KP/どこの医者だよ(笑) 拳銃発砲どうぞ。何故なら牛山のDEXは10。DEX13の実散の方が先手だ。
実散/セットアップ射撃!(ころころ)<拳銃>、51で成功!
KP/牛山が<回避>を振ります。(ころころ)失敗。ダメージください。
実散/(ころころ)6点ダメージだね!
KP/食らいました。「いてえええええ!」 そう叫びながら襲い掛かってきます。
実散/ユリちゃんセンパイ! 蹴って!
KP/DEXは百合人:14→実散:13→牛山:10の順番です。まずは百合人の先手だ。
百合人/牛くんに近寄って蹴るね!(ころころ)69、失敗〜! えーんアタシってば乙女だからダメ〜!
KP/本気出せゴリ。
百合人/捻りあげるぞ花園 草摩。
KP/草摩の台詞じゃない! 今の俺は牛山!(一同爆笑) では次は、実散のターン。また撃っていいよ。
実散/センパイ! そのまま引きつけていて!(ころころ)<拳銃>12、成功!
KP/ダメージをくれ。
実散/(ころころ)ダメージ5点!
KP/ギリギリ生きてるし、まだ気絶しない。だから牛山のターン。……牛山の行動、シナリオによるとランダムで決めるんだって。
百合人/花園 草摩を攻撃しろ。
KP/なんでだよ!?(一同笑) ランダムで対象を決めます。(ころころ)ゴリに行く。
百合人/ほら、アタシが盾よ! おいで!
KP/(ころころ)「必殺技! マーシャルパーン、チ」 スカッ。失敗です。
百合人/踊ろうぜ牛野郎ォ!
実散/牛だから猪突猛進に突っ込んできたんだよ……(笑) ラウンド頭で、セットアップ射撃します。(ころころ)99、ファンブル!?
百合人/ここで!?(笑)
実散/今まで出目が好調だったのは戦闘ファンブルのためのフラグだったんだ!(笑) クリチケを使わせて! 3回あるうち1枚ビリィーっと振り直し!(ころころ)73、成功!
KP/(ころころ)だけど牛山が<回避>成功しました。
百合人/なんと!? <キック>いきます。(ころころ)85で失敗、無理! オレの仕事、盾だから!(笑)
KP/お次、実散どうぞ。
実散/当たって〜!(ころころ)55、成功!
KP/牛山の<回避>はさっきしたので、実散はそのままダメージロールをどうぞ。
実散/(ころころ)4点ダメージ!
KP/ダアン! ……バタン。倒れます。
実散/KPが言ってた! このモデルガンでは死なないって!
KP/うん、死なない。実際のHPの数値的にも死んでない。倒れただけだ。
百合人/やったー! 蹴る!
KP/オーバーキルすんな!(一同笑) 結構ギリギリのHPなんだぞ!
実散/でも無抵抗の悪い奴を見ると顔面とか蹴りたくなるよね(笑) よし、すぐ確保ー! ……凛ちゃん、大丈夫!? すぐ駆けつけて治療します!
百合人/リンちゃん怖かったよね〜。でも怖いのはもういないからね。よしよし!

 この山を囲むようにして、警察車両の警報や救急車のサイレンが鳴り響いている。
 いずれ平屋に数十名の警官が突入し、現場を抑える事だろう。


草摩/みちる! 草摩が堂島らを連れてやって来ます。
実散/兄ちゃん〜!
百合人/ナイスタイミングで来てくれるわねー!

 凛は救助隊によって担架で運ばれて、山を下った。きっと彼女は病院に搬送され、安静になるはずだ。
 牛山は数名の警官に抑えられ、現行犯逮捕を受けたようだ。
 手錠をまるで重い枷のようにフラフラと千鳥足で、彼は警察車両に押し込まれていく。
 現場内に慌ただしい空気が流れる中、貴方達には全てをやり終えたという静寂が訪れていた。


KP/おめでとうございます。凛救出と犯人逮捕です!
実散/やったー!
百合人/終わったー!

 貴方達は警察や世間によって大きな称賛を受け、取り上げられるかもしれない。そういったことを好まないのであれば、静かに貴方達は祝われる。
 誘拐事件、さらに連続していた凶悪事件までも解決して見せたのだ。それは素晴らしい成果だった。


実散/有給中の零課の刑事がなんとかしちゃったよー。俺もみんなに褒めてもらおう!
百合人/やったね。きっと褒めてもらえるよ!


 ●後日

KP/安心感と充足感が訪れた探索者達のSAN値が1d3回復する。なお、犯人の牛山 充邦は裁判によって即刻なる死刑が確定したらしい。
実散/妥当な判決だ。普通に死刑になってくれてほっとする。
百合人/さすがに殺しすぎたもんね。4人、いや5人か。
KP/そして……慌ただしかった全部が、ようやっと落ち着いた頃。草摩が「礼二さんと凛が退院した」という報告をしてくるだろう。
実散/本当? 良かったね、すんなり退院できたんだ〜!
草摩/ああ。凛は犯人から暴行を受けていたが……その傷も少しずつ治っている。礼二さんは……打ちどころが悪くて全身に障害が残ったようだが、戻って来た凛を見てとても喜んでいたよ。
サブKP・ピロ/え?
サブKP・きりあき/全身に障害?
実散/全身に障害か……大変だね。でも命あってのものだから良かったと言うべきかな。
草摩/2人揃って退院して、今は家に帰れた。俺は見舞いに行っていたが、2人ともずっと笑顔だったよ。
実散/凛ちゃんも大変だったけど、命あっての親子が再会できたなら、本当に良かった。
百合人/ほんと良かったね〜。
草摩/それで、お願いがある。
実散/なーに?
百合人/なにー?
草摩/礼二さんと凛の家に行かないか。退院した2人に会ってほしいんだ。
実散/断る理由が無いなあ。
百合人/断る理由が無いねえ!
実散/ですよね。えへへってセンパイと笑いますね。
草摩/かわいい。みちるはかわいいってピラミッドの壁にも書いてある。
百合人/ヒエログリフ!?(一同笑)
実散/世界進出しないで(笑)
草摩/……凛は言っていた。「あの絶望という名の闇が覆う中、一筋の光が差し込むように助けにきた人の顔が見えた」と。「だからこそ会ってお礼が言いたい」と。お願いできるか? 明日にでも行かないか?
実散/行こう行こう、ちゃんと挨拶しよう!
草摩/じゃあ、先にムービーを見せる。スマホで動画を見せます。
百合人/おっ、撮ったんだ?
草摩/退院する日、快晴だったから。俺が撮ってあげた。

 そこには、交通事故で重傷を負った中年男性と、怪我はしているけど笑顔で父親の隣に座っている少女の姿が映し出される。
 2人とも安心して肩を寄せ合っていた。
 『皆さん、この度は本当にありがとうございました。ほら、凛も言いたい事があるんだろう? お兄ちゃん達にしっかり言いなさい』
 『お兄ちゃん達……? あ、これに言えばいいんだね? うん! ……ありがとう!』
 彼女は少し恥ずかしそうに、人差し指と人差し指を合わせてこねくり回しながら、最後には向日葵を思わせるような明るい笑顔で貴方達に礼を言う。
 鈴のように可愛らしい声色で、精一杯の気持ちを込めたその一言は、貴方達の激動だった日々の疲れを簡単に取り除いた。SAN1d3回復。


百合人/SAN回復動画だ!
実散/ユーチューブにアップして全探索者を回復してあげたい。

 『お兄ちゃんが私を助けてくれたんだもんね? あまり覚えてないけど、あの時のお兄ちゃんの顔はしっかり覚えてるんだ! ありがとうね!』
 彼女のその微笑みは偽りなく、心の底から年相応の女の子の笑顔だった。本来の彼女は、貴方達という存在によって取り戻されていったのだった。
 奇妙な、しかし得も言われぬ充足感が生活に満ち溢れていった。SAN回復1d6。


KP/動画は以上です。次のシーンで礼二さんの家に向かいます。
実散/……俺の実家に行くんだね。
百合人/かつてミチルちゃん達が住んでいた家か〜。楽しみだね!


 ●鬼嶋家(旧花園邸)

KP/翌日。鬼嶋 礼二と鬼嶋 凛に向かいます。郊外にある庭付き一戸建てです。実散にとっては実家です。
百合人/退院祝いに何か買っていこうか?
実散/そうだね。兄ちゃんに凛ちゃんや礼二さんは何が好きか教えてもらおう。
KP/ワインとジュースがいいのでは? 料理は草摩が作るけど、飲み物までは用意できないから。
実散/兄ちゃんが料理するの?
百合人/寿司屋で兄ちゃんが作るって約束したもんね! 良いワインと良い葡萄ジュースでも買っていこう!
実散/そっか、ご馳走を作ってくれるんだ。俺はお花でも買っていこうかな。兄ちゃん、こういうときにお花は何を買うのがいいの? 兄ちゃんはお花、詳しいよね?
草摩/みちるが好きな花を渡せばいい。
実散/そういうの困るんだけどなー。ちなみに俺に似合う花って何だと思う?
草摩/ガーベラ。みちるには赤いガーベラが似合う。
サブKP・ピロ/赤いガーベラの花言葉は、「神秘」「燃える神秘の愛」「前向き」「限りなき挑戦」。情熱的なイメージの花言葉があると言われています……ってググったら出てきたよ。
実散/へー! ……お花のことはよく判んないから、お花大好きな兄ちゃんがチョイスしたガーベラを持っていこうっと。
KP/そうして鬼嶋家に到着しました。庭には花壇があって、10年前から住むようになった礼二さんの趣味で家庭菜園になってます。裏は小さな山で、そっちには家屋はありません。広いけど郊外で他の家屋やお店が無いためそんなに高い家ではないという設定です。
実散/それでも良い所に住んでたんだね、俺達……。
KP/インターフォンを押せば、扉を開けて出てくる人影がいる。草摩が出ます。
実散/わあ、兄ちゃんがまず出てきた。
草摩/みちるに料理を振る舞うために先に来てたからな。……礼二さんは、交通事故が原因で障害を負って普通に生活できなくなった。
実散/……車椅子生活とか?
百合人/うわ、大変。
草摩/とてもつらい生活を余儀なくされた。俺は礼二さんの周りを整理する手伝いをするため、15日ほど長期休暇を取った。
百合人/きっとそういう理由なら同僚もOKを出してくれるよ。
草摩/ああ、しばらくは休暇をここで過ごさせてもらおうと思う。
実散/礼二さんと凛ちゃんが落ち着くまで、それこそ兄ちゃんが満足するまでそうしようか。俺も何か手伝えることがあれば言ってよ。兄ちゃんの恩人なら、俺にとっても恩人にもなる人でしょ?
草摩/その言葉、凄く嬉しい。礼二さんは俺の理解者なんだ……その礼二さんの頼みを、みちるにも聞いてもらいたい。入ってくれ。
実散/お邪魔しまーす。
百合人/…………。なんか、怖くなってきたぞ?

 そして貴方達はダイニングへと通される。
 キッチンが併設されているダイニングの様だった。天井には小さめだが煌びやかなシャンデリア、年代を思わせる柱時計など、彼の収益あってか絢爛さを窺い知れる場所だ。
 部屋中央、長机の上には種々の料理が揃い踏みである。どれも野菜がメインになっているようでその彩りの豊かさは一枚の絵画のように思えた。
 鼻腔を刺激する香りは、とても芳醇なものだった。SAN回復1d3。


実散/またSAN値が回復する!
KP/料理は回復アイテムだからな。
百合人/うめ〜!(笑)

 【現在SAN値】
 実散:88まで回復
 百合人:52まで回復


草摩/礼二さんと凛を連れてくる。メインディッシュも持ってくる。みちるは席に座っていてくれ。
実散/はーい。
百合人/手伝えることあったら言ってね、兄ちゃん〜!
KP/草摩は、自分のスマホを料理が並べられたテーブルに置く。スマホスタンドに置いて実散に見やすいようにする。
実散/おや?
百合人/動画?
KP/自分で撮った動画をスタートして、そのままキッチンに向かいます。動画に映し出されるのは、先日動画で見た親子、鬼嶋 礼二と鬼嶋 凛だ。

 『ようこそいらっしゃいました。お待ちしておりましたよ』

実散/なんで動画で挨拶?
百合人/……ちょっと、怖い。

 『お兄ちゃん! いっぱい食べていってね! お父さんの用意したものってね、すっごい美味しいんだよ! お兄ちゃん食べれるだなんて幸せだな』
 『……私は、牛山の車に事故によって、利き腕を失くしました。しかも左腕も痺れています。頭を強く打ったせいで、全身がうまく動かせなくなってしまいました』


実散/……う。
百合人/重症だ……。

『このまま得意の仕事も、趣味の料理もできない。悲しいです。ですが、育て上げてきた凜が生きていたことが本当に救いでした。ありがとうございます』

百合人/……なんでこれを、ムービーで見せるんだ?
実散/ちょっと……緊張してきます。

 『凛。お父さんは、凛があんな怪物に食べ殺されなくてほっとしているよ』
 『凛もだよ! 凛は、お父さんのだもの。レイプだけで済んでほっとしてる! だからお兄ちゃん、助けてくれてありがとう!』
 『失ってから気付く愛という、ありきたりな言葉がありますが。ここ数日、私はそれを実感しました。
 凛は私にとって大事な娘でした。孤児院から食材として引き取った娘ですが、誘拐されて彼女が失われようとしたとき……この身を裂かれるほどの喪失感を味わったのです』


実散/……食材?
百合人/食材……?

 『再会できた今、とても幸せです。幸せなまま、終えたい。また失われるのはもう勘弁ですから。……草摩くん、頼んだよ』
 『ありがとう! 大好き!』
 ――画面の外から現れたアイスピックがこめかみに突き立てられる。


実散/え!?

 さくり、と小気味いい音を鳴らし深々と刺さったアイスピックからは鮮血が伝わり、雫が垂れ落ちる。
 動画全体を真紅に染め上げ、時折滲み出てくる乳白色で半透明の脳漿が、その赤を水彩画のごとく淡くしていくことだろう。
 肉と骨がない混ぜに砕け、交じり合う音が響きわたる。


百合人/は? えっと、え?

 一打一打が儚い命を奪うに事足りる暴力。
 しかし父娘は笑った。狂ったように笑い、笑い、笑うしかなかった。SANC1d6/1d10。


百合人/なに、なにこの映像!?(ころころ)18、成功。
実散/え……え?(ころころ)63、成功。

 【現在SAN値】
 実散:88→82(6点減少)
 百合人:52→46(6点減少)


実散/解釈一致の最大値減少!(笑)
KP/本来であれば<アイデア>からの発狂なんですが、今回は先にシーンの描写からしていきます。

 一周を終えると……『動画を撮っていた人物』はメスを取り出し、側頭部にできた穴に沿って切れ込みをいれる。
 そうして頭頂部を左右に数度揺さぶると、ずるり、と皮が剥げ、真っ白な頭蓋骨が露出するのだった
 慎重にひびの入った頭蓋という器を持ち上げ貴方が見たのは、何十の溝が交差し、ぷるりとしたゼリーの様な弾力と白桃の如き艶。
 細い血管が駆け巡り、赤黒い塊がへばりつく、美しく左右対称に成形された脳みそ、その物なのだ。『彼』は、オリーブオイルを敷いたフライパンを熱し、にんにくの一片とハーブを散りばめる。


百合人/彼……。
実散/彼。……や、やだ。

 溝に沿って彼女の脳みその一部を丁寧に切り出すと、フライパンの上に落とす。
 鮮やかなピンクの脳片は、瞬く間に混じり気のない白子のように変色して、人間のあらゆる道徳を否定し冒涜するように食欲を引き出していくのかもしれない。
 そして、甘美な匂いが、「実際に鼻孔へ」突き刺さる。
 その映像の中で料理を振まっているのは――。
 映像ではない、
キッチンから現れた花園 草摩が、両手に親子を皿に乗せて現れた。SANC(1d8/1d20)。

百合人/ちょまああああ!?
実散/兄ちゃ……兄ちゃん!? え!? は!? はあ!?
KP/SANチェックをどうぞ。
実散/え……あ、あう?(ころころ)21で成功……。
百合人/(ころころ)15で成功……。

 【現在SAN値】
 実散:82→76(6点減少)
 百合人:46→45(1点減少)


実散/ああああああ!? 最大値減少ー!?
百合人/ミチルちゃんが発狂した! 解釈一致!(笑)
KP/ここでやっと処理しますね。一つずつ発狂の内容を確認していくけど……結果は、こうなる。

 ▼百合人の発狂結果→強迫性障害
 強い不安、こだわりによって日常に支障をきたす疾患。
 細菌を気にして何時間も手を洗う、玄関の鍵を何十回も確かめるなど、さまざまな症状がある。

百合人/何度も「なんだよこれ! なんだよこれ!?」って状況を確認してるとかかな?
実散/解釈一致の発狂です……(笑)

 ▼実散の発狂結果→ADHD
 発達障害の一つ。不注意・多動性・衝動性が主な症状である。
 順序立てた思考がまとまらず、注意力が低下する。また、行動や感情を抑えることが困難になる。

実散/理知的な思考ができなくなる!?
百合人/ミチルちゃん的考えができない!?(笑)
KP/解釈一致の発狂です。
実散/実散は、動画と兄ちゃんを見て……あ……う……って固まってます。
百合人/なんだよこれ、なんだよこれ! 何度も確かめようとしています! おい兄ちゃん! おいおいおい花園 草摩マジかお前!?
実散/……に、兄ちゃん?
草摩/最初の一口は譲ってやるよ。食べよう?
百合人/ば……馬鹿! そんなの言われて食べる奴がいると思ってんのか!?
草摩/食べないのか? 美味しく味付けしているぞ。みちるが気に入る味になってる。
実散/待って。……兄ちゃん、なに、なに……?
百合人/お前、本当に花園 草摩か? 気が狂ってるって言われていたけど、そこまでじゃねえだろ?
実散/…………。
百合人/何考えてるんだ!? こんな所にいられるかー!? オレは出ていくぞー!?
KP/出て行く?

 その場から逃げ去ろうと玄関に向かったとき、その光景に目を疑った。

百合人/えっ!? なに、怖い!(笑)

 眼前に広がっていたのは貴方達の謳歌していた日常のソレなどではなかったからだ。
 それは『壁』だ。城壁のような重厚な岩の壁が、天高く何十、何百メートルも反り立っていたのだ。
 何故いきなり突拍子もなくこのような壁が、どんな魔法を使ったというのだろうか。
 先程までは確かにそこに、日常は存在していたはずなのに。……考える間もなく理解する。私達は、『逃げられない』と。SANC(1d3/1d6)。


百合人/またSANチェックー!?(ころころ)72、失敗!
実散/追い打ちー!?(ころころ)46、成功。

 【現在SAN値】
 実散:76→73(3点減少)
 百合人:45→42(3点減少)


実散/……兄ちゃん?
草摩/みちる。
実散/その……兄ちゃん、なんだよね? 思わず震えて、涙を流して言う……。
草摩/みちる。俺が一番好きだった顔になってくれて、嬉しい。
実散/ぅっ……!? あ、後ずさり、する。……ボロボロと泣き始めながら。
百合人/ミチルちゃんを庇うように立つ! ……お前、本当に花園 草摩なんだよな?
草摩/偽物の俺っているものなのか? 俺は花園 草摩だ。
百合人/なんでこんなことをする!? 礼二さんは恩人で、凛ちゃんは仲良しの娘さんじゃなかったのか!?
実散/せ、センパイが全部言ってくれる……俺は何も言えなくなってる……。
草摩/礼二さんは恩人で、凛は仲良しな子だったよ。でも凛は食材だったんだ。礼二さん自身がそう言っていた。
百合人/はあ?
草摩/凛は礼二さんの本当の娘じゃない。礼二さんは、食材として凛を孤児院から引き取った。礼二さんはカニバリズムの人でな。いっぱい人を引き取って、人肉を食べる人だった。
百合人/は、はあ!?
草摩/凛は食用として育てられた子だったんだよ。食材だ。育て上げた家畜や野菜を食す事に何か罪悪感や違和感を覚えることはない。
実散/なに……言ってるの?
草摩/みんなが言ったんだぞ? 天鴻や格や醒ヶ井さんも言っていた。「人間は殺してはいけない。殺したら怒られる。殺さなかったら偉い」。
百合人/人間じゃなきゃ、殺してもいいって!?
草摩/違うのか? マグロの寿司を食べるためにはマグロを殺すだろ? 苺のタルトを作るためには苺を土から引き千切るぞ?
百合人/おっ……お前っ、そこまで、馬鹿だったのかよ!?
実散/…………。兄ちゃん。なんで、壁なんか作って、俺達を閉じ込めたの。壁がどう作ったとか、理性的な質問は無しにして……まず、ここから出して。
草摩/みちる。せっかく俺達、有休を2人で取ったんだ。しばらくはここで暮らそう。みちるに食べてもらいたいものがあるんだ。俺の料理。礼二さんはいくらでも使っていいって言ってくれた。
実散/……いくらでも、って。
百合人/何を……。
草摩/礼二さんは「もう自分は好きな料理ができない。1人では食材を調達することも、愛する娘を上手に料理してあげることもできない」と言った。そう言って絶望した礼二さんは、愛する凛と「いっしょになる」ことを選んだ。
実散/……いっしょ?
草摩/俺に食材全て託して、全部混ざり合っていっしょになることの素晴らしさをいっぱい教えてくれた俺に話した。みちるにも……判ってほしい。だからここでいっぱい礼二さんの食材を食べ……。
百合人/やめろよ。嫌がってるだろ。
草摩/嫌なのか? 嫌だとはみちるは言ってないが。
百合人/この顔を見て嫌がってるかどうか判んないのかよ? お前、言われなきゃ判らないのか!? 言われないことは何一つ判らないのか!?
実散/……センパイ……。
草摩/言われなきゃ、判らない。そりゃそうだろ。言われたことは判る。人は殺すな。そう天鴻たちに教わったから俺は……。
百合人/「凛ちゃんは人じゃない、食材だ」って言われたから、頷いた!? お前の脳味噌は 考える機能が無いのかよ!? 善悪の判断ぐらい一人でしやがれ! なんでそんなことも他人任せにしてるんだ!
草摩/……大声出さないでくれ。困る……。
百合人/ミチルは困ってるだろ!? 苦しんでるだろ!? 嫌がってるだろ!? 大好きな弟の顔色ぐらい言われなくても察してやれよ!
実散/……っ……。
百合人/かわいいとか大好きとか言っておいて、自分勝手に自己中心的に散々愛でておきながら……何一つ理解してあげないのかよ!?
実散/…………。
草摩/……みちる。俺のこと嫌いなのか? 俺のこと、嫌いになったのか?
百合人/言ってやれよ。
実散/……う……?
百合人/それでもまだ嫌いじゃないって言うなら、嫌いじゃないよって、ハッキリ言ってやれよ。
実散/……う……うう……?
草摩/みちる。俺のしてること、ダメか? 俺のこと、嫌いか?
実散/……う……。
草摩/……どうしていつもみたいに「しょうがないな」とか言って、許してくれないんだ?
百合人/ミチル。言えよ。
実散/……ぅ……ううう……。
百合人/…………。
実散/……………………。に、兄ちゃん……さすがに、これは……ダメだよ……。
草摩/…………。
実散/俺……兄ちゃんの、だいたいのことは、許してきたけど、これは……許せなくなっちゃうよ……嫌いに、なっちゃう……。
草摩/目をかっと見開いて実散を掴む。その場で犯します。
百合人/ちょっ!?
実散/えっ!?
草摩/嫌いになるなら、好きにさせるまでだ。好きにさせる方法は知ってる。いっぱい俺でみちるを満たせばいい。
百合人/ばか!?
草摩/そうやっていくつも夜を過ごした。だからまた同じことをする。
実散/……兄ちゃん……!
草摩/抱く。抱き潰す。嫌いになったとしてもそうすればまたみちるは俺を好きになってくれる。
百合人/ばかばかばか……! ふざけんな!? やっぱお前狂ってやがる!?
KP/『剛力百合人は身動きができない』 消します。
百合人/消されました。
実散/え。……消された?
KP/実散は、目の前から、剛力百合人を消された。そう思った。
実散/……は?
KP/その間に犯します。
実散/え? ……え……?

 「15日間。俺は休みを取った。15日経ったら出勤しなきゃだ。15日間で、判ってもらう。判らせてやる。
 食事は礼二さんが用意したものしか食卓に出さない。理性では食べてなるものかと思うだろうけど、きっといつか判ってくれて、手を出してくれる筈だ。
 俺はそれまで頑張る。共に暮らそう。いっしょになることの素晴らしさが判る筈だ。
 みちるは俺を理解してくれる筈だ。
 これから俺達は、再び俺達の家に住む、大事な大事な『同居人』なんだから」


KP/そう言って、実散をテーブルの上で犯します。


 クトゥルフ神話TRPG 『同居人』




KP/導入が終了したので、これより、クトゥルフ神話TRPG『同居人』を始める事とする。
百合人/なに。
実散/なに。
百合人/なに?
実散/なに?
KP/これから『同居人』スタートです。オープニングフェイズ、お疲れ様でした。
実散/うふふ。
百合人/うっそだろ。
実散/あのさあ。
百合人/あのさあ。
KP/はい。
実散/花園 草摩ァ!(一同爆笑)


    ◆


実散/あの、見学者の2人……。これ、本当に、『同居人』なんです?
百合人/それよ。
サブKP・ピロ/え、ぶっちゃけ言っていいっすか?
KP/いいですよ。ぶっちゃけて。
サブKP・ピロ/こんな展開知らん。
サブKP・きりあき/私も知らない。
実散/ですよねー!?(一同笑)
百合人/オリジナルじゃねーか!(笑)
サブKP・ピロ/いや、前半は同じなんですよ。牛島逮捕までは大筋ほぼ同じ。
サブKP・きりあき/そう、前半は同じなんですけど……兄ちゃんのところ以外は。兄ちゃんのところは本当に知らない!
サブKP・ピロ/「その辺は草摩お兄ちゃんのフレーバーかな〜」ぐらいに思っていた時期が私にもありました。
百合人/これ……『同居人』に見せかけたオリジナルシナリオになってる、ってコト……!?
KP/劇場版ですから。既に『同居人』を通過しているきりあきさんとピロさんにも楽しんでいただけるようセッティングした劇場版ですから。
実散/我々が遊んでいたのは『同居人』ではなく、『劇場版 同居人』という別物だった……!?(笑)
サブKP・きりあき/いやあ、まさかこういう意味だったなんてね!(笑)
サブKP・ピロ/劇場版なら何やっても良い訳じゃないんですよ!?(笑)
サブKP・きりあき/あ、あの……鬼嶋は食材になったんですか? あのラスボスの鬼嶋が……?
KP/はい。草摩が親子を皿に乗せて食卓に持ってきました。礼二さんと凛は食材だから草摩は人間は殺してません。セフセフ。
サブKP・ピロ/セフセフ、じゃねーんですよー!(笑)
実散/あの……礼二さん、どうやら本物の『同居人』ではラスボスらしいですけど、実散にとっては全然会ったことない良いおじさんですよ……?
百合人/カニバリズムの人ですけど。
KP/礼二さんは良い人ですよ。娘を大事にしてたし。
サブKP・きりあき/本来、鬼嶋は事故の怪我は軽傷で、利き腕を失くしたり車椅子生活になんてなりませんよ……(笑)
サブKP・ピロ/「鬼嶋は後遺症が残るぐらい重傷」とか、ビデオレターが出てきた辺りから「我々の知ってる同居人と違うな?」って思ってました(笑)
実散/というか、ここが実家設定って何!? 神話生物の本がいっぱいある家って何なの!? 俺は生まれ育った家で何をされている!?
KP/レイプされたのでは? 名推理。
実散/推理でもなく事実だよ!(笑) ……正直この展開は萌えたので、このままエロールをしてもいいかもしれない。
KP/了解です。この後エロールをしてから、本編を始めます。


    ◆


実散/………………。
百合人/ミチルちゃん、ずっと固まってる。
実散/ずっと、黙ってるよ……。というか言葉が……マジで出ない……。
KP/テーブルの上に押し倒してそのまま犯してましたが……気が変わって、実散を抱き上げて、ベッドまで連れて行きます。かつて実散が使っていた寝室のベッドに寝かせる。
実散/かつての自分のお部屋で……!?
KP/そして、百合人はいつの間にか……何故かベッド横の椅子に腰かけている。
百合人/居ていいの?
KP/気付くと椅子に縛られて動けない状況だ。
百合人/うわっ。オレにセックスを見せつけるプレイでもするの? いい趣味してるね、兄ちゃん。
草摩/判ってほしいから。みちるに判らせるために、見ていてもらう。
百合人/……そうかい。エッチにはうるさいよ、オレ?
実散/…………。あの……さっき「エロールしてもいいかも」とプレイヤー発言しましたが、ビックリするほど実散としての言葉が出なくなってます。
百合人/SAN減少で最大値を出しまくったからだね。
草摩/みちる。
実散/…………。ベッドの上に連れて来られた後も、震えて黙ったままま寝かされます。
草摩/震えてるな? 寒いのか。暖めてやる。抱き締める。
実散/…………。抱き返すことも、できない……。むしろ震えて、イヤ、って押しのけるかな……恐怖で。
草摩/イヤなら、イヤじゃなくなるまで抱けばいい。
百合人/……あのさあ。本当に、兄ちゃん……弟のこと、大事にしてるんだよな?
草摩/もちろん。
百合人/即答なんだよな……。
草摩/みちる。……みちる。
実散/………………。動けないよ……。
草摩/そうか。本当にあの頃に戻ってきてくれたみたいだ! 嬉しい!
実散/う!? うわあああああ……(笑)
百合人/おい……そんな台詞、あるかよ(笑)
草摩/腰、浮かせろ。指を、実散の縁へとなぞっていく。
実散/……っ、ん……。
草摩/舌、出してくれ。キスしながら抱こう。キスハメは気持ち良いんだ。気持ち良かったもんな?
実散/……ぅ……ん……。
草摩/お前みたいにうまくキスできないけど。一生懸命なところは好きだって言ってくれたからな。いっぱいさせてくれ。キスしながら、中を馴らしていく。
実散/………………。
草摩/時間はいっぱいあるんだ。じっくりほぐしていこう。
実散/……っ……っ……。
草摩/お腹が減ったら……俺の料理を食べよう。最初は嫌かもしれないけど、礼二さんの食材の素晴らしさがすぐ分かる筈だ。
百合人/……嫌がるよ、絶対。
草摩/舌、出してくれ。……んっ、もうこんなに入るようになった。みちるの中は俺の形を覚えてくれているんだな。
実散/……ぁ……。にいちゃ……兄ちゃん……。
百合人/へたくそ
草摩/……下手か?
百合人/全然気持ち良くなってなさそうじゃん。オレならもっとキモチ良いキスしたよ 実際それで虜になったヤツを知ってる〜
草摩/どうすればいい?
百合人/ええ〜、オレに教えを乞うの? もっとおねだりしてくれなきゃ、やだ
草摩/教えてくれ。良い料理を出すから。
百合人/嫌な食材を出すフラグじゃん……。教えてあげてもいいよ。あのマンションでずっと同居させてくれた訳だし、同居人のよしみで教えてあげる。
草摩/みちるにキスしながら、訊く。
百合人/……もっと「好きだ」って言ってやればいいじゃん。それ、特効薬だよ。「お前の為にしてるんだ」って。「本当に好きなんだ」って。だから馬鹿みたいなことしてるんだって。そう言えば、洗脳完了するかもよ?
草摩/洗脳。
百合人/そう、洗脳。
草摩/やっぱお前。危険だ。消えろ。
百合人/消えました。
実散/え……?
KP/部屋から百合人が居なくなります。
実散/……また消された。なんで消えるんだ?
草摩/でも、アドバイスは聞こう。みちる。好きだ。押し込む。中まで貫く。
実散/うッ……! あ、ぐ、あ……!
草摩/あ、キツ……。言いながら、ぐぐっと挿入する。
実散/ああああ……。押し広げられる。奥まで開かれる。深い所までこじ開けられる……。
草摩/……んっ。
実散/結腸の手前の、窪んだ部分をゆっくりと突かれる。突かれる……。
草摩/ほら、もっと突いてやる。
実散/……涙が、だらだら、溢れる。
草摩/かわいい。泣いてるの。かわいいぞ。
実散/痛いから。……いつもとは違う、乱暴さだから。泣く。身体を貫く快楽に頭は痺れる。
草摩/俺にしがみついて良いぞ。楽になれ。
実散/……つらいな……心の中でそう思う。言葉はさっきから全然でないけど、体が痛いというつらさもあるけど、とにかく、今の……よく判らない状況が、つらい。
百合人/…………。
実散/兄ちゃんが……なんか遠くに行って見えないみたいで……つらいな。
草摩/ああ、きもちいい。みちる、もっと締めろ。
実散/つらいな……つらいな……。身体の痛みと心の痛みで、泣く。
草摩/ガンガンと突く。
実散/ぼろぼろと泣きながら、ガクガクと体を揺らす。
草摩/…………。俺はイった。みちるは?
実散/……果てている。
草摩/喉、乾いただろ。水、持ってきてやる。水分はちゃんと飲まないとな。
実散/…………。
草摩/美味しい食事も出してやる。約束したからな。俺が元気にしてやるって。
実散/…………。
KP/草摩は去りました。百合人は拘束されてない状態でシーンにいていいですよ。
実散/…………。なんでセンパイが現れたの、とかも言えないだろうな。
百合人/オレは言うけどね。なんで? ……まあ、いっか。そんなことよりもするべきことあるからね。ミチル。
実散/……はい。
百合人/中の、出してやるよ。ちょっと足、開いて。後処理するね。
実散/……っ。
百合人/水ぐらいは飲ませてくれるって。体の中、洗い流そ? うがいするだけでも気分転換なるよ。
実散/…………はい。
百合人/きっと兄ちゃんには何か理由がある。ハウダニット、考えるの、ミチルちゃん好きだろ?
実散/……っ……。
百合人/考えよう。頭を使おう。思考停止するとそのままゲームオーバーっぽくなるじゃん? 何かしら解決の糸口は用意される筈だ。
実散/…………。
百合人/「このまま「兄ちゃんが狂いました。俺達はそれに巻き込まれました。バッドエンド」だと思う? そんな人生なんて、させる訳ないだろ。神様が。
実散/……神様……。
百合人/オレがこうしてミチルちゃんの前にいる理由、まだ判ってないって。そうだろ? オレがどうしてミチルちゃんの前にいるか、まだ、判んないだろ?
実散/……えっと?
百合人/ミチルちゃんにはまだ探ってないことあるんだよ。それを解明してみなよ。そしたら別のものも偶然見つかって……何かイイコト、起こるかもよ?
実散/…………。
百合人/……沈んでいた頭、少しは前向きになってきた? オレも混乱してるよ。でも何も喋れないミチルちゃんを後半戦に連れていかなきゃいけないだろ。だから、奮い立たせてるんだよ。
実散/……センパイ……。
百合人/だってほら、オレ、ミチルちゃんといっしょに住んでるんだし? これぐらいアドバイスしてもいいじゃん? 
実散/……う。ごめん、な、さい。センパイ……。
百合人/よしよし。
実散/センパイだって怖がってたのに、俺ばっか……気遣われて。センパイだって……逃げ出したいぐらい、怖かったですよね!
百合人/超怖い。今だってどうしたらいいか判んない。判んなかったら、どうする?
実散/……判んない謎を、解く。そうすれば、スッキリします。
百合人/解ける謎だといいね。
実散/……そうだと信じて、立ち向かいます。……前向きで、笑って、勇気ある行動をする、そういう人が、俺は……好きだったんです。……今も好きです。
百合人/そっか。
実散/そう。涼ちゃんのことを思い出して、同じぐらい前向きで一生懸命な兄ちゃんのことを思い出して……。
百合人/うん……。
実散/好きな人のために頑張って笑顔で走って行った間戸くんのことを思い出して、苦しんでもきっと前向きに未来に向かっている天鴻くんと格くんのことを思い出して……立ち向かうと、心に決めます。
百合人/よくできた後輩だ。守りたくなっちゃうね! そういう勇ましい姿を見てると命に懸けて守りたくなっちゃう! じゃあ、動き出そう。
実散/はい。……後半戦セッションへ向かいます!