アナザーワールドSRS・リプレイ・アウトレイジエリア
■ 後半戦 3ページ ■
2013年11月23日




 ●クライマックスフェイズ/叡斗&統十郎 〜決断〜

 田代真奈の前で、相庭脩駕が話をしている。

「何の本を読んでいるの?」「法律の本?」「……異端犯罪について、調べているの?」「興味があるの?」「そう、弁護士さんのお話に興味がわいたのかしら」
「……弁護士の道も良いかも、ね?」

 違う日、相庭脩駕が看守と話をしていた。とても明るい口ぶりだった。
 また違う日、出張のため関東地方に向かうという職員と話していた。大人しく真面目そうな態度をしていた。
 そして違う日、彼は「友人とスキーに行く」と話していた。明るく無邪気な姿だった。
 忘れてはいけない、赤子のようになんでも口に入れる彼もいれば、いきなり暴れ出す彼もまた存在していた。

 それが、幻想ではない、多重人格の青年の一日達。


GM/これからのシーンは、プレイヤーがしたいことをGMに提示してください。大丈夫、リアルセッション時間の猶予はあと4時間もある(一同笑)

 実際、このクライマックスフェイズにはリアルタイムで2〜3時間ほどかかっていました。
 ですが全てを忠実に再現できないため、リプレイ化にあたりダイジェストでお送りします。


統十郎/柏木くんと会話がしたいな。彼にもこのことを話さないと。……叡斗くんも来てくれるかい?
叡斗/はい。邪魔しないように木に背を預けて佇んでいます。
GM/では、「話があるんだ」と言われた薫は統十郎さんと叡斗くんに連れられて外に出ます。陽向が言っていた通り、あまり顔色はよくありません。悩みに悩んでいる感じだね。
統十郎/柏木くん。これからのことを話しておきたいんだ。これから君がどうしたいのか聞いておきたい。
GM/「…………」 薫は大人しいままです。
統十郎/確認したいんだけどさ、俺達が相庭脩駕の中にいた人格ってことは柏木くんは判っているよね?
GM/「……ああ」 重苦しく頷きます。彼もまた、統十郎さん達が自分らの正体に気付いたあの場にいたからね。「その、どうしたいっていうのは……?」
統十郎/≪贄の儀式≫のことを話すよ。……150人の魂を生贄に、自分が世界を創ることができる力を陽向くんが持っている。それを使うことができるんだけど、君はどうしたい?
GM/「…………」 薫は黙ります。
統十郎/…………。
GM/「…………」
統十郎/…………。
GM/『AF判定:調査「柏木薫」』に成功したのは、統十郎さんでしたよね?
統十郎/はい。
GM/長い沈黙の中、薫はようやく重い口を開きます。「……統十郎と一緒に居たい」
統十郎/…………。
GM/「…………」
統十郎/…………。俺ぇ!?(一同笑)
GM/「なんでそんなに驚くんだ」
統十郎/い、いや……(笑) だって、そのあのね、俺……。
GM/「……すまない」
統十郎/わ、悪いと思う訳じゃないんだ!(笑)
GM/「恥ずかしい話だが、自分の意思を素直に表わすとその一言に全てが集約される。俺は弱者だぞ……そんな不思議な力があると言われても『ああ、そうなんだ』としか思えない。だから……頼れるお前を信頼してついていくのが一番だって思って……」
統十郎/……そっか。
GM/「それに……俺は、お前に惹かれているんだ。それは嘘じゃない。元は同じ人物だと言うが……でも、カオルという魂は間違いなくトウジュウロウという魂のことを好いている」
統十郎/……うん。
GM/「もし統十郎がいなくなると選択をするなら、俺も……それでいい。お前と一緒にいたいんだ」 苦痛そうな顔で、気弱そうに言いますよ。
統十郎/……困ったなぁ。
GM/「すまない。お前の為になれるアドバイスができなくて。俺は男らしく決断ができないんだ。そういう人格ではないらしい……」
統十郎/……判った。君の気持ちは承知した。正直に話してくれてありがとう。
GM/「……正直な統十郎の気持ちを聞かせてはもらえないか?」
統十郎/俺の気持ちか。……150人の魂を犠牲にしてまで自分が望む世界を創りたいとは、思えないんだ。
GM/「……それは……」
統十郎/150人の魂の上に新しい、都合の良い世界を創るのは、耐えられない。俺一人なら消えるという選択肢をしたんだけど、柏木くんも消えることになっちゃうと……それは……。柏木くんには生きててほしいんだよな。困ったなぁ……。
叡斗/……統十郎さん、今にも泣きそう……。
GM/「……俺は、お前といっしょにいたいだけなんだ。生きたいとか、死にたいとか……そんな願望は無いんだ。すまない……」 生きるときはいっしょに生き、死ぬときはいっしょに死ぬと言います。NPC3は従順なヒロイン枠として設定していました。NPC1は≪世界創造≫枠、NPC2は≪贄の儀式≫枠、NPC3は何にも無いけど何でもしてくれる枠なんです。
統十郎/……お、俺……どうしたらいいんだろう……。
GM/じゃあ、最後に。薫は統十郎の腕を引いて、「……俺は、お前自身を愛したんだ。……意味が判らなくても構わない」とだけ言って、また黙り込みます。
統十郎/……統十郎は、大変に照れています! 判らなくなってきた!(笑)
叡斗/……その話を聞いて、僕は腹を括りました。
GM/あれ、腹括った?
叡斗/「150人の犠牲の上に自分の命を創る」と思うから気が引けていたんだ。でも、陽向が「死にたくない」と言っていたのを思い出した。脩駕くんも「自分が自分らしく真っ当な生活を送りたい」とも言っていた。……僕は150人の命に恥じない生き方を……したい。
統十郎/……うん。
叡斗/僕は、150人に恥じない生き方をする。僕が僕としてこの世界に、自分の足で立つ。大勢を踏みつけて立っているのではなく、背負って立つんだ。世界を歪めるのではなく、正しく支えていく人間になるために、棚氷叡斗になる。……一度陽向や相庭くんを止めたというのに頼むというのも情けない話だが、彼らにもそれぞれの足で立つことを願うとしよう。

    ◆

GM/今度は、叡斗くんのシーンをしようか。
叡斗/はい。陽向と相庭くんがいる場所に向かいます。
GM/脩駕と陽向の2人だけど……陽向が自分を脩駕と自覚した時点でちょっとぎこちなくなっている。そんなツーショットのところにやってきました。
統十郎/陽向くんが相庭くんに頑張って喋っている感じがする……(笑)
GM/陽向が「あ、叡斗! 外は寒かっただろ?」と、焚火の所に来いよと手招きします。
叡斗/夜になると一段と寒いな。でも吹雪は殆ど収まっていたよ。
GM/「天気が変わる瞬間が怖いよな」
叡斗/ああ、そういうときは雪崩が起こりやすいんだ。明日の朝になったらすぐに出発しようという話をチラつかせつつ(笑) ……相庭くん。
GM/(脩駕になって)「ん……?」
叡斗/相庭くんに、自分達のこと……自分達が相庭脩駕の人格であることを話します。……僕達は、もう一人の君だったんだ。
GM/相庭脩駕の人格の駆除。儀式の暴発。生きている田代真奈には赤子の魂が乗り移り、死んでしまった4人の男性にはエイトとトウジュウロウとヒナタとカオルという魂が乗り移った。……それを聞いた脩駕は、「そっか」と小さく頷きます。
叡斗/……あまり驚かないんだな。
GM/「……あんた達と気持ち良く話せる理由が判った。……だって、自分自身だったんだから。自分と自分が話していたなんて、そりゃあ、気持ち良いに決まってるよな。自分の嫌なものは自分が一番知っているんだから」
叡斗/ああ……。だが僕らは君の人格であったとしても、死んだ人の脳味噌から知識を引き出して体を動かしている。だから君には無い記憶を引き継いで、自分自身として振る舞っていたんだ。
GM/4人は相庭脩駕であるが、相庭脩駕ではないものになっている。そのことを知って、脩駕はひとまず納得はしますが驚きを隠しきれていません。
叡斗/……その事実に気付いてしまった僕達は、これからの自分の処遇を決めかねている。
GM/「それでさっきからあんたら、ずっと悩み顔だったんだ」
叡斗/そうだ。……僕は、棚氷叡斗として生きる≪世界創造≫をしたい。陽向も陽向として生かしてあげたい。それと、脩駕くんも真っ当な相庭脩駕として生きてほしい。
GM/「……オレも?」 そこはちょっと意外という顔。
叡斗/君もだ。
GM/「…………」 叡斗のためにしようという≪世界創造≫だったので、自分が含まれていることに大変驚いています。「……教会の人間がこの島に降り立ったら、ここで漂っている魂を浄化しちゃうと思う。……それまでには≪贄の儀式≫をするよ」
叡斗/うん、ありがとう。

    ◆

統十郎/田代さんとお話がしたいです。
GM/了解しました。真奈は……雪崩が来る前に移動すると言われていたので、移動までゆったりと休んでおりました。その手にはしっかりとメモが握られています。
統十郎/亡くなった旦那さんのメモか。……田代さん。体調はどうですか?
GM/「はい? えっと……渡瀬さん」 視線が一瞬、澤田のネームプレートにいきますが、すぐに統十郎さんの名前を呼びます。「大丈夫よ。もうすっかり元気になったわ」
統十郎/……田代さん。俺が相庭脩駕の人格の一つだったって、気付いていたんですよね」
GM/「……ええ。まさかとは思っていたけど、ある程度は」
統十郎/救助隊は明日の朝に来るそうです。教会のエージェントとして活動していた田代さんに確認したいんですが、俺達が……教会に身柄を拘束されて連行されることだって充分にありますよね。
GM/「ええ。ありうるわ。貴方達は自覚が無くても食人鬼の少年A・相庭脩駕の一つ。人を襲う可能性がある以上、教会は疑いが晴れるまで貴方達を拘束することでしょう。……私だって実は今だって少し怖いのよ」 そう言ってますが、真奈は穏やかな微笑みで茶化すように言います。
統十郎/そうですよねー(笑) 一生研究材料にされるかもしれないし、たとえ解放されても、世界に歓迎されない可能性は充分ありますよね。
GM/「辛い目にも遭うでしょう、普通より窮屈な生活を強いられるでしょう。でも、私の知っている限り教会は……たとえ人間でなくてもより良く生きたい、闇の衝動に打ち勝ちたいと頑張っている子達を全力で応援する団体よ」
統十郎/…………。
GM/「だから、その点に関しては悲観しなくてもいいんじゃないかしら? 貴方達が穏やかなで社会にとけ込める人格であることは、私がちゃんと教会に話してみせる」
統十郎/……もし、田代さんが何でも願いが叶うような力を持っていたとしたら。
GM/彼女は≪世界創造≫が使えることを知らないので能天気に話そう。「そんなお伽噺のような力も世界にはあるって聞いたことがあるわね」
統十郎/田代さんは……旦那さんを蘇らせるとか考えますか?
GM/「考えるわよ。愛する人にもう一度会いたいと思うのが普通だから」
統十郎/……田代さんの旦那さんって、凄く良い人なんでしょうね。まず救助されたら旦那さんの供養をしっかりしてあげたいですね。
GM/「……まあ、そのうち嫌でも会いに行くことになるわよ! でもあの人は何十年先、私がおばあちゃんになるときまで待っていてくれるから、そのときまた会えばいいの!」 バシバシと統十郎さんの背中を叩きながらも彼女は笑います。涙を隠れて拭いながら。

    ◆

GM/さて、そろそろ決断は出たかな? ……君達と陽向が「そろそろ動いた方がいい」と思い始める時間になります。
叡斗/翌日……日が昇る前に、田代さん達を起こして、救援が見つけやすい場所へ移動しようと告げます。
統十郎/食糧や毛布などを手分けして持とう!
GM/では、最後の判定に参りましょう。

 『AF判定:雪崩から逃れる』
  ・使用能力値:【体力】
  ・難易度:10
  ・ラウンド制限:なし

※「雪崩に巻き込まれないように逃げる」演出に成功すること。成功した場合、雪崩による危機を回避して新たな状況に進む。
※このAF判定を行なうと、同一シーン内では他のAF判定は行なえない。


統十郎/≪神域の耳≫で数キロ先の音を聞きまして、雪崩の兆候の音を拾います!
GM/天気が変わった。吹雪はやんだけど、何かが変わるかもしれないと思います。
統十郎/何かが変わるかもしれないという≪運命の予感≫。そして≪未来視≫、その予感をもとにこれから何が起きるかを見ようとします。
GM/統十郎さんは的確に予想できるね。それに君は、こことは違う世界でその恐ろしい未来を身を持って体験した。あんな目に遭ってはいけないと強く思う。これで難易度は4になります。
統十郎/【体力】で振るよ!(ころころ)達成値14で成功です! みんな、こっちこっちー!
GM/統十郎さんが「こっちに行けば大丈夫だから!」とみんなを誘導します。シズの裏にある九甲田山と言われている山から離れ、深い雪をザクザクと掻き分けていく。天気は回復しているので難なく歩いて行くことができます。
叡斗/しかし、昨日と比べて随分気温が上がっているな。こういうときが怖いんだ。
GM/解説の叡斗さん、ありがとうございます(笑) そうして君達は……平鷲島の海沿い、判りやすく小丘になっている場所へと到着しました。ここで一休みをしようと休憩モードに入ると、陽向がキョロキョロし始めます。2人に「……やる?」という合図を送る。
叡斗/……陽向の顔を見て、小さく頷く。脩駕くんに視線を送ります。
GM/脩駕もその合図に気付いて、コクンと頷きます。(脩駕になって)「……あんた達が叶えたい願いって、何?」 ここで、最終的な決断を聞きましょう。
叡斗/棚氷叡斗、橋守陽向、そして相庭脩駕が……自分の信じる自分がこの世界に立てるように祈ってほしい。
GM/「それでいいんだね。棚氷叡斗、橋守陽向、相庭脩駕の3人が、世界にとって当然のように存在としているものになるということで」
叡斗/ああ。……叡斗は、渡瀬さんの顔を見る。
統十郎/……俺は世界に願うことは無い。だから君達が幸福に生きられる願いを叶えるといい。俺は、その中には入れない。
GM/それを聞いた柏木が、統十郎の方に近寄る。
統十郎/柏木くん。……俺があのとき君にどうしたいかと訊いたときに、「俺と一緒に生きたい」と言ってくれてありがとう。凄く嬉しかったのは本当だよ。
GM/「……うん」
統十郎/でも、ごめん。君と生きていく幸福よりも、犠牲の上で生きることには耐えられない。だから、俺と一緒に死んでほしい。
GM/「……うん」 薫は、静かに頷きます。
統十郎/柏木に対して語ることはないかな。彼に抱きつきます。
叡斗/……叡斗は真っ直ぐその光景を見られないな。心細くもあり、後ろ髪を引かれる想いでもありますが、判ったと頷きます。
統十郎/……GM。今、魔導書って使えますか?
GM/使えるよ。
統十郎/最後に相庭くんの中から食人鬼の人格を出してしまいたいです。
GM/抵抗判定をするので【意志】での対決に勝利できたらOKです。代償は払えるならやってみて。
統十郎/そのために『供給』して回復しましたから。……相庭くんに近寄りまして、魔術を使います。(ころころ)出目が6・5。達成値14。
叡斗/ここにきてクリティカル一歩手前とか!?(笑)
GM/持ってるプレイヤーだな!?(笑・ころころ)……抵抗失敗。統十郎さんが何度目かになる詠唱を唱えると、脩駕の体から青い光が出現します。特に、そのとき引き出された魂は……青色に輝くことなく黒く、赤く、淀んだ禍々しい光でした。
統十郎/やっぱり……君達と一つにならなくて良かったよ。
叡斗/これが……相庭脩駕の中の異端。その魂に対して剣を構える。その魂も僕が背負って生きていこう! 光に一突きします!
GM/叡斗くんが氷の剣で貫くと、光はパンッと音を立てて消えます。呆気なく浄化されます。脩駕はよろめいて雪の上に膝をつきますが、「……始めよう」という一言の中、とある呪文を唱え始めます。同時に、陽向が空に向かって手を掲げます。その瞬間、君達の宣言した願いが……。
統十郎/……あの、GM。メジャーアクションを2回ぐらいできませんか?
GM/やたら具体的な提案だな(笑) 何がしたいの?
統十郎/魔導書を、統十郎と柏木にも使いたいんです。というのも、澤田達の体から俺達の魂を抜き出したいんです。
GM/…………。視界が真っ白く広がっていく。雪原が更に白く染まっていく。完全に世界が書き替わる前。世界が改変されていく瞬間に、叡斗くんは統十郎さんが魔術を使っていることに気付きます。
叡斗/今まで何度も聞いた詠唱に気付いて、振り返ります。……渡瀬さん!
GM/薫の体が先に雪の上に倒れる。その体から抜けた青い光は、先ほどのような禍々しさは無い穏やかな光だ。その光は……統十郎に寄り添うように近づいていく。
統十郎/ありがとう、大好きだよ。……叡斗くん。君にお願いがあるんだ。
叡斗/……なんでも言ってくれ!
統十郎/この体を遺族のもとに返してもらいたい。
叡斗/必ず……必ず返すと約束する!
統十郎/君達の幸せを願っている。……そう言うと、魂が抜けていきます。
GM/統十郎と名乗っていた体は力を無くし、雪原に倒れ伏します。浮かび上がるのは、青い光。
叡斗/……2つの青い光がそのままふわふわと漂っていって……空に溶けるように天へ上がっていくんですね。
GM/その光が上がると同時に、世界が真っ白く、書き替わっていく。
叡斗/……僕は、この事件のことを絶対に……忘れない。白く溶けていく世界の中で、呟きます。


 ●エンディングフェイズ/統十郎

GM/統十郎さんは……右も左も上も下も判らない渦を巻いたよく判らない世界にいます。ここはどこだ、とりあえず現実世界とは違うんだろうなって思う空間です。君はもう、足元にあるとある世界には戻れない。でも、今ならなんでもできるよ。エンディングシーンでやりたいことを言ってください。
叡斗/これが実質、最後のシーンだね……。
統十郎/えーと、じゃあ……由貴乃と話したいです。
叡斗/由貴乃ちゃんと!?(笑)
GM/OKです! 実は、私も由貴乃ちゃんにはエンディングフェイズに演出したいことがありました!(笑)
統十郎/おお、そうなんですか。それやっちゃってください!
GM/……それは、とある世界。由貴乃ちゃんがお友達である女の子・みなみちゃんとおしゃべりをしています。(みなみになって)「ほくとお兄ちゃんがちゃんと国立大学に受かってくれて良かったよ〜!」
叡斗/みなみちゃんは「お兄ちゃんを国立大学に行かせます!」って言ってましたね(笑)
GM/それを聞いた由貴乃ちゃんは「そっか、受かって良かったねー」とお友達と一緒に笑っています。「みなみちゃんのお兄ちゃん、とっても頭良くて優しくていいなー。私にもそんなお兄ちゃんがいたらいいのに」
統十郎/……うん……。
GM/でも、それを聞いたみなみちゃんはこう言います。「あれ、由貴乃ちゃんってお兄ちゃんいなかったの?」「え? いないけど? なんでそんなこと言うの?」
叡斗/……あれ?
GM/「だって……あれ……?」「ん? 変なみなみちゃん」
統十郎/……そうして由貴乃は、みなみちゃんとおしゃべりして、ご飯を食べて、別れます。
GM/由貴乃ちゃんは、自分の住む寮に戻るために一人で歩いています。
統十郎/だけど、そんな由貴乃の進行方向にとある男性が立っています。彼女はそれに何も気付かず、男性を通り過ぎて行く。

 「……君のお兄ちゃんにはなれなかったけど、俺は君の兄って思い続けていいかな。ずっと兄として見守っているからね。幸せになるんだよ」

統十郎/……そう、声を掛けます。柏木くんとは手を繋いでいましょう。
GM/大人なのに。
統十郎/大の大人があえて手を繋ぐ! それが統十郎ポイントです!(一同爆笑)
GM/薫はとっても気恥ずかしそうだけど、君の手を拒んだりはしない。ずっと、ぎゅっと手を繋いで、そして寄り添って微笑みます。そして最後に一言。

 「道端で恥ずかしいことはやめてよ、お兄ちゃん!!!」

GM/……振り返った由貴乃ちゃんは、ハテと首を傾げる。
統十郎/(由貴乃になって)「あれ? 何言ってるんだろう、私……?」(笑)
GM/誰も居ない筈の帰り道。何故彼女は誰もいない空間にそんなことを叫んでしまったのか。それは彼女自身にも判らないのでした……。


 ●エンディングフェイズ/叡斗

GM/続いて、叡斗くんのエンディングフェイズです。叡斗が雪原で少しぼうっと突っ立っていると、陽向が「叡斗! 船が! 船が見えた!」と腕を引っ張ります。
叡斗/ハッ! 海を見てみると……?
GM/救助隊の船が平鷲島に近づいてきているのが目で確認できます。そうして船から降りてくる人物達によって、君達は保護されます。
叡斗/助かった……。
GM/(隊員達になって)「飛行機の乗客だった棚氷叡斗くんと橋守陽向くん、シズの職員である田代真奈さんと……相庭脩駕くんだね? 生存者は4人と通信で聞いている。間違いないね?」
叡斗/はい、間違いありません。……自分達が世界の一員になったこと、渡瀬さんと柏木さんが消えてしまったことを自覚します。
GM/「施設の方は雪崩が起きそうだ!」と、君達はすぐに船に乗せられました。……後々知ったことですが、叡斗くんの話を聞いた隊員が『シズの職員である澤田幸弘さんと乗客の加山邦数さんの遺体を発見』したそうです。施設から離れた雪原に寄り添って倒れていたそうです。きっと爆発で遠くまで飛ばされてしまったのでしょう。不思議と外傷は少なかったようですが。
叡斗/これで2人は遺族のもとに帰れるな……。ところで、NPCの記憶はどこまで覚えられているんでしょう?
GM/全て願いを叶えたPC1の意見を採用します。
叡斗/……それなら、真奈さんは全部忘れてしまうかな。エイトという魂が斎藤律に入ったことも、世界が変わったことも全部。渡瀬さん達のことを覚えているのは……僕達3人だけにしよう。
GM/そうしようか。慌ただしく時間は過ぎていき……すぐに2日経過してしまいました。叡斗くん達は、本土の病院に運ばれます。
叡斗/……あの後、僕もぐっすり眠ってしまいます。
GM/そうして2日後。窓の外は吹雪なんて無い、とっても良い青空。叡斗くんは静かな病室のベッドの上で、平和な朝を迎えられます。
叡斗/……ベッドの上から、ぼうっと窓の外の光景を眺めています。持っている携帯電話の名前も、いつのまにか『棚氷叡斗』になっているんですね。
GM/なっていますね。『斎藤律』という名前は、どこにもありません。君は『棚氷叡斗』という名前が記された学生証を持った、法学部の生徒です。飛行機の乗客名簿にも『棚氷叡斗』という名前があり、警察だか教会だかに色々事のあらましを話す忙しい時間がようやく終わります。
叡斗/慌ただしくてあっという間だったな……。
GM/そんな病室に、陽向がやって来ます。(陽向になって)「おーい、無事かー?」
叡斗/お前の方こそ。もう大丈夫なのか?
GM/「オレは24時間以上寝たらスッキリしたわー。……それとさ、友達の名前、思い出したよ」
叡斗/その中に伊賀崎がいないことを祈るよ。
GM/「え? なんで万ちゃんのこと知ってるの?」
統十郎/普通にいた!(笑)
GM/万里以外には「杜谷」って名前の大学生もいる。
叡斗/ユズルンもか!? そ、そうか……世間とはなんて狭いんだ……(笑)
GM/陽向は君が寝ているベッドの隣に椅子を持ってきて、どかっと座ります。「そういや元気になった真奈さんが言ってたんだけどさ! ……脩駕を診た心霊医師が言ってたらしいんだけど、今あいつの体に入っている魂は模範的な行動をしていた『セルフ脩駕』だけらしいんだ」
叡斗/食人鬼の人格を抑えつけ、人間的な生活を送ることができる理性的な彼……だけになったと?
GM/「ああ。それ以外の魂は確認されなかったって。それと……なんだかあいつ、オレ達が知っている以上に前向きに生きる奴になっていたぜ」
叡斗/…………。
GM/脩駕が人を殺めた過去は変わりません。刑務所での生活はまだ続きます。でも彼の中の何かが変革したということを、真奈も陽向も喜んでいるそうです。
叡斗/……良かった。ずっとそれが気がかりだったんだ。思わず顔を覆います。……彼にもちゃんと面会しに行こう。定期的に会いに行きたい。会いに行ってあげような……。
GM/「……あいつが現実世界で2年前に犯した罪は消えない。その罪は、時間をかけて必ず償っていかなくてはならないもの。でも……なんか、違う生き方ができそうだよな? こうやってオレ達が生きていく道を見つけて、統十郎さん達が旅立っていけたんだから」
叡斗/……ああ……。
GM/「あ、そうだ。とある人からの伝言を貰ってきてたんだった」
叡斗/誰から?
GM/「金髪碧眼の男からの」
叡斗/……ルージィルから……?
GM/『私が力を行使した理由は3つ。1つ目は、異端に殺される田代真奈という女性を救うため。2つ目は、相庭脩駕の暴走を止めるため』
叡斗/相庭脩駕の暴走……?
GM/『完全な食人鬼と化した彼が、世界に解き放たれるのを阻止する必要があった。≪世界創造≫の手段を持つ異端は危険すぎる存在です。その気があればどんな大量殺戮も、欺く神の復活さえも祈ることができたでしょう。彼が思うがまま食事を行ないたいと願ってしまったら、世界中の人々が食い殺される世界だってありえました』
叡斗/その場にいた人間だけでなく、未来の人間達を救うことを目的としていた訳か。
GM/そうだね。
叡斗/でも……セルフ脩駕はそんなこと願わなかった。それどころか、彼は「僕に喜んでもらう為に」ってことしか考えてなかったんだよな。……もう1つは?
GM/『貴方達の魂を救うために』
叡斗/…………。
GM/「……っていうのを、メチャクチャ格好良く言ってたんだよ! 半分以上セリフ忘れちゃったんだけどさ! ……そんな凄い力があるのなら、未来の人間だけじゃなくあの世界に生きていた全員を救ってほしかったよな」
叡斗/だな……。でも、僕達だけでも救われたことを今は噛み締めるべきなんだと思う。
GM/「うん。ありきたりなセリフかもしれないけどさ……統十郎さん達はオレ達の心に今も生きているんだし。真奈さんは統十郎さん達のこと忘れちまったみたいだけど、オレ達は覚えているんだし。オレ達は、統十郎さん達の分もぜーんぶ噛み締めて幸せにならなきゃな」
叡斗/陽向、結構クサいことを言うんだな。
GM/「なんだよそれ! ……なあ、叡斗ってスキーは得意?」
叡斗/行ったことはあるが?
GM/「この世界に住む19歳の男子としたら、冬に遊びに行くのは当然だよな?」
叡斗/……当然扱いか?(笑)
GM/「だから当然……遊びに行こうぜ。付き合ってくれよ。それが普通の人間なら、尚更絶対に」 陽向は、君と一緒に過ごしたいと誘います。
叡斗/……そうだな。行こう。スキーだけじゃなく、お前とは今後も長い付き合いになりそうだ。
GM/「オレ達、元は同じところにいた、一緒の存在なんだ。今更離れるとか無理だし!」
叡斗/ああ。お前は、本当の棚氷叡斗を唯一知る人間なんだ。ある意味自分の存在を確かめるための鏡のようなものなんだから。お前とは本当に今後も長い付き合いになりそうだよ――。

 アナザーワールドSRS
   『 アウトレイジ エリア 』   END





GM/以上で、『アウトレイジエリア』終わりになります。お疲れ様でーす!
叡斗統十郎/お疲れ様でーす!
叡斗/いやあ、楽しかった! めっちゃ悩んだ! 算数の計算以外でこんなに頭を使うなんて!(笑)
統十郎/何度も悩んじゃってすみません! まさかまさかの設定で頭が煮えてました!(笑)
GM/本当にお疲れ様ですよ……。私は戦闘ではなくて話し合いでのクライマックスが大好きなのでこんなシナリオを考えてしまいました。だけどこういうシナリオって、同じぐらいトークで盛り上がるのが好きな人と、ぶつかり合ってもいい仲じゃないとできないという人を選ぶシナリオだから……2人とご一緒できて嬉しいです!
統十郎/ありがとうございます! 色々我儘を言った気もしますが、楽しかったです。今回は統十郎だったからこのようなエンディングになりましたが、キャラクターが違ったら「自分は生きたい!」と言えたんでしょうね。
叡斗/統十郎さん、優しかったな〜。でも叡斗も自分一人だけだったら消滅を選んでいたと思うよ。
GM/……じゃあ、ここでネタ明かしをしておこうか。オープニングフェイズで叡斗と陽向が飛行機で会話をしていたというのは、幻想です。2人が話し合っていることに不都合は起きません。だってお互い同一人物だから。
叡斗/2人で同じように錯覚してるんですね。「叡斗は陽向とこういう会話をした」「陽向は叡斗とこういう会話をした」ってお互い間違っているから……。
GM/もしその場に『相庭脩駕ではない第三者』がいたなら、「それは嘘だよ。そんな会話してないよ。それ脳内会話だよ」と言ってくれるけど、残念ながら飛行機の乗客は全員死んでいるので2人の会話にアリバイを話せる人はいません。……柏木薫も『相庭脩駕ではない第三者』ではないからね。それは、統十郎さんのオープニングにも言えます。
統十郎/統十郎と柏木の電話は、二人が錯覚し合っている幻想だから……真実だと立証できる人がいないと……。
GM/そう、「統十郎は薫と電話をする夢を見て」「薫は統十郎と電話をする夢をみた」。だから不都合が起きなかった。お土産のことを知っているのも2人なら当然なんです。4人の会話は、1人が描いた妄想に過ぎないから。
叡斗/ふむ、なるほど……。
GM/このシナリオにギミックは、「実はキャラクターシートのイラスト欄が入れ替わるというエクスチェンジネタ」と思わせておいて、「実は違います! もう一つそれ以外に入れ替わりネタがあるんだよ!」というものでした。TRPGシナリオでは「実は……」を2つ入れておくといい法則が私の中であったので、それを今回も実践してみたんです。
叡斗/まんまと騙されました!(笑)
GM/女性PCになった場合、相庭脩駕の中にあった女性の人格が女性の死体に入ったということになりました。キャラクターロールを拘束するシナリオだったけど、楽しんでもらえたなら嬉しいです。
統十郎/いやー……煮えた煮えた。途中で頭がピーピー鳴ってましたよ(笑)
叡斗/ていうかさ、ルージィルさんはさぁ……本当に、本当にさぁ……(笑)
GM/何度も言ってるけど、ルージィルさんは150人の命を救うことができないんだよ。異端に殺された命ではないから。もし「異端の仕業で飛行機事故が起きた」なら時間を巻き戻せるんだけどね。
叡斗/本当にさぁ! ルージィルさんはさぁ! 万里のときでも頭を抱えさせられたしさぁ!(笑) 陽向はそのうち「万ちゃんとは高校がいっしょだったんだよ」って言いそうで怖いよ!
GM/怖いといえば、「統十郎さんが由貴乃ちゃんの兄設定」って言われたときは内心ドキドキしたよ。多分由貴乃ちゃんは通信オペレーター的なバイトをしていて、それ経由でシズの看守さんとお話していて、そのやり取りを脩駕が見ていた……ということにしておいてください! 私は渡瀬兄妹大好きです!
統十郎/あ、ありがとうございます〜。エンディングで由貴乃に一言伝えることができて良かったです。
叡斗/≪神託≫が持てる[聖職者]の由貴乃ちゃんと、≪電波受信≫が持てる[世界遣い]の統十郎さんが兄妹っていうのも、凄く納得できるよね(笑)
統十郎/これからも由貴乃は「お兄ちゃんってそういうことするよね〜」って、いるのかいないのか判らないことをたびたび言いそうだ(笑)
叡斗/……そういえば、僕達には食人鬼としての欲求ってあるんですか? 何かを食べたいという衝動に襲われるような描写はありませんでしたけど。
GM/PCだからありません……というざっくりとした理由もありますが、『セルフ脩駕』には食人鬼としての自覚が無いように、相庭脩駕の魂の中には『食人鬼の人格』と『食人鬼ではない人格』がいます。食人鬼ではない人格がエイトとトウジュウロウという人格と、カオルという何の素質も無い一般人の人格。でも前半戦でラスボスとして出てきた人格や赤子、ヒナタには食人鬼の衝動があります。
叡斗/陽向にもあるんだ!?
統十郎/前半戦のエンディングで、陽向くんが柏木くんを食べていたもんな……。
GM/陽向は今後【意志】判定に成功していかなければいけないでしょう。……でも、陽向の隣には叡斗くんという心の支えがあるんだから何も問題無いと思うよ。
叡斗/いざとなったら陽向は僕が殴って止める!(笑)
GM/吸血鬼の話になるけど、「愛が足りないと飢えが増す」って言葉もあるぐらいだし(笑) ちなみに、前半戦で「雪崩に巻き込まれていなかったらどうなっていたか?」だけど。雪崩から逃げた君達は、薫を食っている陽向を発見します。一般人の人格である薫を食っている異端の陽向、というののが現実になったことで、「異端に殺される人を助けるルージィル」が現れます。
統十郎/ルージィルさんと直接会えたんだ?
GM/ルージィルの口から説明をして、後半戦に突入へ……という流れになってました。伝聞の陽向と違ってルージィルと直に話せばもっと確信的な話を早くに聞けたでしょうね。「全員が相庭脩駕である」と知っているルージィルは、君達の正体を匂わせる会話を挟む予定でした。
叡斗/そういや……本当の世界的には弁護士をやっていたのは斎藤家だったんだよな。それが棚氷家になってるなんて不思議だ。
GM/きっと数代前の人が棚氷という名に改名するようなことが起きたんだよ、というやんわりとした改変になってるよ。
叡斗/これからも異端事件の弁護士として、この世界の支えになるように頑張ります!
GM/見守っていてね、統十郎さん。
統十郎/俺はときどき≪神託≫や≪電波受信≫でポイッとやって来るよ!
GM/……今後の『AW』の≪神託≫や≪電波受信≫の声が統十郎さんのものであるという設定が出来上がりました(笑)
統十郎/「やぁ、俺だよ〜! GMのアドバイスを持ってきたよ〜!」
叡斗/隣で腕を組みながら聞いてる柏木さんがいるんですね!(笑)
GM/……≪電波受信≫って、「どうでもいいこと」を話してくることもあるって設定なんだよね。
叡斗/うわ、さすが統十郎さん……どうでもいいことも言ってきそう。
統十郎/「ねえ、知ってる? マシュマロってマシュマロウの木からできてるわけじゃないんだよ〜」
叡斗/ええい、早く重要な情報をくれ!(一同笑)




END

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