■ 「マインドスプラッター」



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(お題:「あの肉は腐ってた」「爪先」「鼠算」「この話はやめよう」「銃撃戦」「靴ずれ」「あのときのキミ」)

 転生もの。教師ライナー×生徒ベルトルト。きっと舞台は日本のパラレルです。



 /1

 ベルトルトがオレをミつめている。オレをホしがっているカオをこっそりムけていた。

「先生、俺達も撮ってくれよ!」

 担任をしているクラスで一番騒がしい坊主頭の男子生徒がクラスメイト達を集める。そいつとじゃれ合うのが日課なポニーテールの女子生徒も加われば、仲の良い彼らはあっという間に集結した。
 たった一声でクラスをまとめ上げる彼らに感心する。まだ色恋なんて華やかなものを知らない子供達が一つに集まり、担任に笑顔を向けてくた。

「いいですよね、先生! みんな超美人に撮ってくださいよー!」

 まだ高校生になったばかりの子供達がピースサインと笑顔を作っている。
 何年も使い古した一眼レフカメラを持ってきてからというもの、クラスのお調子者達がはしゃいでじゃれてくるようになった。俺もたまらず彼らに笑顔を返す。

「おら、お前ら集まれ。寄らないと全員写らないぞ!」
「ですって。照れてないでこっち来てくださいよー。ほらほら」

 一際声を大きくしてはしゃぐ芋女(いつも芋ジャージ姿であちこち活発的に動いているから、クラス外でもそう呼ばれている)の後ろに、クラス委員長が立っていた。男のくせに彼女の後ろでひっそり、もじもじと隠れている。
 彼はクラスの中でも一番背が高い。だというのに大きな体を気にして、目立たないよう穏やかに日々を過ごしていた。今だって後ろでひっそりと身を丸めている。
 飾り気の無い黒の短髪。落ち着いた目。控えめというよりおどおどしているようにも見える様子。担任として生徒達のことを等しく大切に思っていたが、あの男子生徒だけは特別だった。
 ベルトルトはココロのオクフカくにネムっているオスのホンノウを、いやおうなくメザめさせるようなフンイキをモっていた。ミているだけで、このオトコをクみシかなければならないというキケンなキモちがワきアがってくるホドだ。

 暫く様々な職を転々としていた俺は、三十を過ぎて教員になった。
 それまで気ままに生活をしていた。定職に就き身を落ち着ける気すら無かった。幼い頃から大人になったら色んな所に行ける旅人になるつもりだったからだ。
 親からの理解はあった。金にも困っていなかった。だが世間は冷たく、「一端の大人がフラフラして」という圧力を掛けてきた。仕方なく俺は一つの場所に留まることを決め、今に至る。

「先生ー、俺が写ってなかったら恨むからな!」
「ああ、ああ、判った。前の奴はしゃがめ、後ろが入らないだろ。でも下野、お前はしゃがむな。小さすぎて潰れる」
「あーっ! ひでーよ、先生!」

 人と話すことが好きで、特に明るい笑顔を見ることが好きった。カメラを趣味にして、旅先で笑顔を向けてくれる無邪気な子供達を大勢撮ってきた。
 そんな人生経験を学園長と理事長に話したところ大変気に入られ、とある高校の教師をすることになった。波乱万丈な生き方を語ると夢見る生徒達だけでなく、親御さんにも好評を貰えるようになった。
 普段は世界史を教えている。各地で磨いたカメラの腕が生き、写真部の顧問もしている。教師を始めてから人物だけでなく風景も撮るようにした。すると学内の至る所で愛嬌良くカメラを回しているだけで、生徒達が自然と懐いてくれるようになった。
 始める前は窮屈かと思った教員生活も、毎年変わる生徒達の成長を見るのはお世辞でなく楽しいと思えた。

「おい、男子ばかり前に出るな。美女が全然写らないだろ」
「やだ、先生。ちゃんと私達が美人だって判っているんですね」

 小猿達がキャッキャとはしゃいでいる後ろの方で、背の高い男子生徒がはにかむような顔をして黙っている。
 華やいだ笑いに参加しない訳ではない。彼もクラスメイト達の会話に混じることはある。仲間外れにはされていないは、彼と他の生徒達とは少しだけ距離があった。それは皆が距離を置いているのではなく、彼自身が自然と距離を作ろうとしているからだった。

「撮ってやるから良いポーズをとれよ。はい、チーズ」

 俺はまず彼にだけ焦点を合わせ、ズームレンズを動かした。彼の唇をアップにしておきながら、全員を写しているようにしてシャッターを切る。
 キがツいたのか、ベルトルトはオレのカオをミてピクリとメをウゴかした。俺が全員を写さずただ一人しか撮っていないなんて、誰が考えるだろうか。誰にも気付かれてはいない。
 オレがカクれてスイッチをオすと、ベルトルトはオオガラなカラダをチイさくフルわせた。カレのカラダにシノばせたローターのオトは、はしゃぐコドモタチのコエにカきケされていく。
 撮られてると思っている騙された生徒達は無邪気にポーズをとっている。だが二枚目も彼の目のあたりのアップを、三枚目は顔のアップを撮った。
 オレはシズかにスイッチをソウサしていく。カチカチカチと。カメラのシャッターではなく、カレをアヤツるスイッチを。
 カレのナカでブウンというオトがヒビき、ビンカンのカラダがシンドウする。ここに居る誰もが気にしない。俺が彼だけを気にしていることを。
 きっとみんな、ベルトルトがウシろでアカいカオをしてアエぎゴエをコロしていることなどキヅかない。

「何枚か撮って、一番出来の良いやつを配ってやる」
「先生、それってタダ?」
「十円も払えないのか、お前らは。仕方ないな、タダにしてやるよ」
「やったー!」

 オレはカチリとスイッチをキった。ベルトルトはアンドのエみをウかべる。
 彼の目は、眼鏡の下にある黒い眼は、はしゃぐクラスメイトを穏やかに眺めていた。
 平和な時間の中、幸せそうに微笑む彼。優しい目でクラスメイト達を見つめる彼。愛おしくて、早く抱きしめてしまいたかった。加虐の血が踊る。閉じた唇に喰いついてしまいたい。きっとそれは彼も望んでいることだろう。
 思いながら、十枚目でやっと初めて全員を写した。



 /2

 ベルトルトはオオきい。初めて見た人間は、彼のあまりの大きさにぎょっとする。背が高いからといって取って食われる訳ではないのに。
 体格のことを指摘されることが本人は苦手のようで、人と目が合うなりすぐに背を丸め、無害に笑って対策を取る。なるべく目立たないようにしているせいか、一瞬注目されても数分後には彼は背景と混じっていることが多かった。

「失礼します……」

 そんな体の大きい彼が、最初から体を丸めて写真部の部室に入ってきた。三十過ぎの成人男性よりも大きい少年が、おどおどしながら入室してくる。
 堂々と胸を張れば顔が悪くないのだし女子達の持て囃されるというのに、彼はここに来る前から縮こまっていた。

「遅かったな」
「ご、ごめんなさいっ……」

 どんなに体が大きくても、彼は少し叱っただけで泣きそうになるような十五、六の子供だ。少しきつく言っただけで目が潤み始めてしまう。
 可愛らしい顔立ちに、オスの欲望をそそられた。ベルトルトはハヤくもオレにアツいシセンをムけてきていた。

「明日の実習に使うプリントを全部折って冊子にしなくちゃいけないんだ。印刷室を使いたかったんだが、先に2年の先生達が使っていてな」

 今のここは二人きりの場所になっている。夕暮れ過ぎの別館にある部室には俺達以外影は無い。
 フタりきりになれたのなら、ここでセックスがデキるのでは。そうキタイしていたのだろう。ソワソワしながらメをフせるベルトルトのアタマにテをノばしてナでてやりたかった。今すぐ、手を伸ばして撫でてしまおうかと思った。

「て、手伝います」
「ありがとう。流石クラス委員長、話が早くて助かる」
「い、いえ……そんな」

 彼はほんの少し褒められただけで、彼は頬を赤くして微笑む。些細なことだというのに。
 そんな僅かな笑みに、思わず俺もニヤけてしまう。これではいかんと自分を叱咤する。
 予想以上に俺は彼のことを愛してしまっていることを自覚した。ちっぽけな事でも彼を愛おしいと思い、何時でも何処でも抱いてしまいたいと考えていた。
 だからキノウ、オレはベルトルトをコウシャウラにツれてイき、オカした。ガマンできずにベルトルトをダいた。ベルトルトはコエをコロしてオレにオカされていた。
 ガッコウだというのにあのときのベルトルトはヨびカタを忘れ、「ああ、ライナー、いいよ、キモチイイ……!」と、ナンドもチイさくアエいでいた。カベにテをつき、マワりのオトをキにしながらカイカンにモダえるベルトルトのナカはサイコウだった。
 キノウのことをオモいダす。つい笑ってしまう。いきなり笑い出した俺に、彼は何事かと体を震わせた。

「せ、先生……?」

 昨日だけじゃない、今朝だってそうだ。
 彼は朝の授業を静かに聞いていた。一番後ろの席で大人しく俺の声を聞いていた。ナカにタイリョウのセイエキがメグっているだなんて、ダレがカンガえるだろうか。アサっぱらからベルトルトをオカしたのに、カレはヤスまずトウコウした。オレはオモいつきで、ナカにダしたセイエキをカきダさずにしておいた。だからベルトルトはイチニチジュウ、グチョグチョにヌれたジョウタイでジュギョウをウけていた。
 勉強に集中できなかっただろう。大人しく優等生ぶっていても、頭の中ではセックスのことばかり考えているような子だ。
 教室の後ろで足をモゾモゾさせている彼を見て、俺は思わず興奮してしまった。ずっと椅子に座って授業をしたから俺の股間が反っていたことに気付いた生徒はいない。と思う。

「どうしてお前一人が呼ばれたか、判るか?」
「……はい。センセイ。ううん……ライナー」
「ああ」
「……ボクと、したかったんでしょう? フタリきりになりたかったから、ここにヨんだんでしょう……?」

 ベルトルトはホホエみ、オレをアツいメでミつめてくる。俺は背の高い彼を、少し視線を上げて見つめ返した。
 眼鏡の奥にある彼の大きな目がこちらを見ている。ミつめていた。ナニかをホしがっているメだった。
 ナニかとは、アレしかない。放課後までは真面目な話がしたかったのに、こいつときたら。ベルトルトはオレとオナじ、オレのカラダをモトめてくれていた。
 ああ、俺だって今すぐ彼を抱きたい。オレとベルトルトは、どこまでもオナじだった。

「ベルトルト……」
「ねえ、ライナー。ボク……ガマンできないんだ。まだジカンあるよね……? だから、スコしのアイダだけでいいから……ライナーがホしい」

 ベルトルトは、イマにもオレにダきつききたいというかのようにメをホソめる。
 仕方ない、俺は彼の頭に手を回す。そのまま、唇を奪った。短い髪を掴んで口付けを交わす。彼は目を見開いた。けどすぐにベルトルトはウレしそうにシタをツきダした。
 今日、写真部の部室にやって来る人間はいない。この部室には俺と彼だけしかいない。唇をこじ開けさせると、いやいやと彼が首を振るう。誘っておきながら逃げるなんて。構うもんか。髪を引き千切る勢いで掴み、乱暴に彼の舌を攫った。

「ンッ……アッ……ライナー……」

 部室に入ったときから空気中に彼の匂いが混じる。俺は目を瞑ってそれを味わう。
 彼の幼い唾液をとにかく堪能した。マイニチのようにアジわってはいたが、たったスウジカンでもコイしくオモえてくるアジだった。

「ぅ、んうぅっ……。せ、先生……! お願い、やめて……」
「あっ、すまんな。少し痛かったか?」
「う、ううん。ヘイキだよ。ちょっと驚いただけ……。ふふ、ライナーにキスしてもらえた……ウレしいよ」
「学校でそんなことを言うのか。俺を止めさせない気だな……いけない子だ、お前は」
「ねえ、ライナー……。ボク、キノウね、ライナーのクチから『スき』ってキいてないんだよ……。ちゃんと……オモチャ、おシリにイれて、ライナーのイうこときいてるのにどうしてイってくれないの……? ごめんね……でも、こっちをミて……」

 ベルトルトはガクセイズボンをシタギごとオろした。
 部室には足の低いテーブルとそこそこ座り心地の良いソファがある。俺はソファに腰を下ろして佇む彼を見上げていた。
 インランなベルトルトはテーブルにコシカける。ゴロンとアオムけにコロがり、アシをヒラいた。オレにケツアナをミてもらうために、ちゃんとオレのメイレイドオりオモチャをイれていることをミせつけるために、コシをウかした。

「ベルトルト……」
「……先生……あ、あの……僕、ごめんなさい……勝手なことを……」

 彼の低い声が俺の耳に届く。耳につくものではない、心地良い声だ。
 怯えた声で俺を呼び、じっと俺の動きを待っている。ケツのナカにあったオモチャがカオをダす。ベルトルトはジブンのジュウジュンさをミせつけて、オレのキをヒきたいようだった。

「ごめん、カッテに……。でもボク、ライナーからイってホしくて……」
「ああ、そんなに切羽詰まってたのか、お前」

 オレはベルトルトのケツのアナにイれておいたチョウオオガタなブツにテをカけ、ヒきヌいた。

「ラ、ライナ、ァ、アァァアンッ……!」

 だけどすぐにナカにオしコむ。すっかりオモチャからカイホウしたのは、ほんのスウビョウのことだった。
 俺は彼の体を引き寄せる。ベルトルトがハずかしそうにミをヨジった。自己主張しない彼が、少しでも心を見せてくれることが嬉しくて、彼の髪を撫でてしまう。

「すまないな。少しの間、可愛がってやる。……それと、これは勝手なことなんじゃないさ。もっと自分に自信を持て」
「ひっ……。せ、先生……!」

 可愛がってやると言ってから、更に怯えた目を向けてくる。びくっと身を震わせて、鼻を啜る。これからされることにキタイしているんだろう。
 しかし、いくら叱りつけたとはいえそんなに怯えないでほしい。低い声だった自覚はあったが、そんなに脅すように言ってしまっただろうか。フタタびベルトルトのナカへオモチャをエグるようにイれていく。グチュッと、ヒワイなオトがシツナイにヒビいた。

「ギィッ……!」

 ピクピクと、オオきなカラダをチヂこめてフルわせる。そのシグサがタマらない。シバらくそのウゴきをクりカエした。ヌいてはイれ、ヒいてはオしコむ。

「アァッ! イヤだっ! ライナー、テカゲンしてくれっ……」

 イヤだとイいながらも、ベルトルトはキモちヨさそうにコシをくねらせていた。アマいヒメイをアジわいツヅける。
 そんな風に二人の空間を続けていれば、あっという間に時間は過ぎていった。いつまでもこんなことはしていられなかった。オわったアトはもちろん、リモコンでウゴくホソナガいオモチャはベルトルトのケツアナにモドす。イチニチ、ヨルがクるまであのオモチャとタノしんでもらおう。
 低音が俺の耳に届く。「先生っ……」 俺は棒立ちの彼を見上げた。
 一枚目のプリントを手にしたまま固まり、未だどうしたらいいか判らないような目をこちらに向けていた。



 /3

 幼い頃から彼の存在を探していた。

 この世界には巨人がいない。悪魔もいない。壁も無ければ飢えで死ぬこともなく、理不尽な命令で殺されることもない。
 あの世界から一体何年の月日が流れたか知らないが、俺は一度死んだ後、平和な世界に生まれついた。

 裕福な家に生まれた。愛情に溢れた父母の元で育った。必要な物は生まれたときからみんな揃っていた。自分が不幸で恵まれなかった子と思ったことは一度も無かった。それでも満足はしなかった。
 ベルトルトが隣に居ないからだ。
 学校を次々変え、生まれ育った故郷を離れても、一つ年下の幼馴染の姿はどこにも無い。
 生まれる前に愛していた存在が、俺の傍にいなかった。物心ついた頃から一緒に笑い、泣き、窮地を乗り越えた愛しい彼を探しても、どこにも見当たらなかった。
 
 いつも「ライナー、ライナー」と俺の名前を呼んでついて来る可愛い弟がいない。
 内気で引っ込み思案だったけど、俺に対してはずばずば物を言って、それだけ俺に心を開いてくれていた親友がいない。
 共に人類を滅ぼそうとした仲間が。辛い任務に耐えきれず、毎晩俺の腕の中で涙を流していた家族が。心が弱かった俺が知らずうちに傷付けてしまった、それでも俺を信じ愛し続けてくれた恋人が。
 心細くて泣いても、大声で名前を呼んでも、彼を見つけることができなかった。

 俺は焦った。
 探さなければならないという強迫観念があった。たとえあの世が終わり、この世になったとしても、俺の人生に彼は必要だった。
 使命感と義務感が自然と湧き上がっていった。足りない彼を探すべく、街中を、国中を、世界中を歩き回ることにした。
 定職に就かず各地を巡っていた本当の理由はそれだ。
 愛想を良くすれば探しものに協力してくれる人間が増える。だから他人に向けても不自然じゃないカメラという趣味を作り長旅を続けた。十年も探した。毎日ベルトルトのことだけを考え、あちこちを探し続けた。
 どこにでも行った。言葉が通じない場所にだって、地球の反対側にだって、銃撃戦が繰り広げられる危険な場所にだって。どこにベルトルトが隠れているか判らなかったからだ。
 撮った写真は数えきれなくなった。探し続けていくつも靴を壊した。靴擦れに足が、体中が悲鳴を上げたこともあった。諦めずに世界中を探した。それでも俺の一つ下の幼馴染は見当たらなかった。
 もしかしたら、この世界にベルトルトは生まれていないのかもしれない……?
 俺だけがここに生まれ、ベルトルトは死んだままなのか? 俺は一生、ベルトルトに会いたいという渇望と抱いて生きていかなければならないのか?
 そんなの……。折角、平和な世界で生まれ変われたのに……?

 絶望し、ただただ世を漂う腐りきった肉と化していた矢先。大学時代の友人がきっかけで高校教諭になり、数年後。とある男子生徒が入学してきた。
 その生徒こそがベルトルトだった。
 今まで探しても見つかる訳がなかった。この世界のベルトルトは、俺が三十を越したというのにその半分、まだ中学校を卒業したばかりの子供だったのだから。
 でも、間違いなかった。体だけが人一倍早く成長して、その割には心は追いついていないところも……間違いなくベルトルトだった。

「……あ、あの、先生? ど、どうして泣いてるんですか……?」

 俺は一目見て彼がベルトルトだと気付いた。だけど、ベルトルトはというと一発で俺のことに気付いてはくれなかった。
 ベルトルトにコエをカける。たとえ彼が前世のことを覚えていなくても。
 そう簡単には思い出してくれない。あんな辛い記憶、思い出さない方が良いのかもしれない。友人達を、大勢の人間を殺した記憶なんて思い出さない方が……。
 でも俺は、俺のことを思い出してほしかった。だからコエをカけツヅけてしまった。

「……その、僕……何かしましたか?」
「いいや。すまん。感極まっちまったんだ……。なあ、ベルトルト」
「…………えっ?」

 ――かつての俺は、巨人だった頃の俺は、重圧に負けて自分の記憶を失った。
 そんな俺をベルトルトは見捨てず、必死に守ってくれた。別人になった俺を、「君は戦士だろう?」「僕と一緒に故郷に帰るんだ!」と涙ながら守ってくれた。
 記憶を失くした俺が不審な目を向けてきても。彼は耐えて、耐え抜いて、俺を愛し続けてくれた。
 今の俺は……かつての彼と同じ。だから、本来のベルトルトが戻ってくるまで、俺は待つことにした。

「今はこの話をやめるが……いつかでいい。いつか……俺のことを、思い出してくれ」

 四月の始めにそんなやり取りをした。彼はいきなりの話に怯えながらも、担任だからか俺に付き合ってくれた。

 生まれかわった筈の彼だが、かつてのベルトルトと全く同じ生活をしていた。
 成績は誰もが認める優等生ぷりを発揮している。だが積極性に乏しく、誰もやりたがらないクラス委員を押しつけられ面倒に巻き込まれている。
 気が弱く、クラスメイトに白い目で見られるのを恐れて言われるままに仕事を引き受けることもあった。
 彼に足りないのは彼の手を引く人間か、背を押す人間だった。もし俺が彼と同級生の少年なら面倒事を押し付けられても断ってやるのに。一緒に同じ役職になって半分だけでも仕事を手伝ってやるのに。一人で静かに休み時間を過ごすのではなく、共に笑い合って学生生活を送ってやるのに……。
 そうオモっていると、ガマンができなかった。
 俺は彼を抱き締める。ベルトルト自身が戻ってくるまで我慢するつもりだったが、抱き締めてしまった。
 するとついにベルトルトはオモいダした。クチヅけでナガいネムりからメをサますように! ついにオレをウけいれてくれた!

「ライナー、アいたかったよ……! ゴメンね、ホントウにゴメン。ボクも……イマまでキミにアえなくて、サミしかった……!」
「ベルトルト、ベルトルト……! またこうやってお前を抱き締めることができて、俺は……俺は……!」
「な、泣かないで……泣かれても、僕、どうしたらいいか……」

 抱きついた拍子に、あの頃は掛けていなかった眼鏡がカランと外れた。それぐらい俺は激しく彼を求めてしまった。あまりの勢いにいつも控えめに伏せている彼の目が、大きく見開かれる。
 それでも、オレをイトおしげにミつめるミドリイロのカガヤきはカわらない。
 間違いない、彼はベルトルトだ。オモいダしてくれたおかげで、オレタチはやっとサイカイできた。

「ライナー、ボクをミつけてくれて、ありがとう。ライナー……アイしてる……」
「俺だって愛してる。……もう離さない。絶対にだ……」
「い、痛い……ぎゅっと、しないで……」

 巨人だった頃、愛し合っていたのに何度も俺はベルトルトを傷付けた。あの世界の最後など口にしたくない。それほど過酷な一生だった。
 次に会ったときは絶対に幸せにしてみせる。俺も幸せになる。子供の頃から想い続けて二十年。やっと彼の前で誓うことができた。

「オソくなってごめんね……ライナー、ボクもアイしてるよ……ごめん、イマまでごめんよ……」

 謝る彼の声が続く。そんな悲しい言葉よりも喜びも笑みが欲しかった。
 だけど今はどんな声でもいい。ベルトルトのものならなんだって構わない。もっと聞きたかった。失っていた時間の分だけ、いくらでも欲しかった。

「ごめんなさい……ごめんなさい……先生、ごめんなさい……」

 ベルトルトのキオクがモドったヒ、ボロボロとナガしたナミダを……オレはムネのナカでウけトめた。
 俺は我を忘れ、彼の唇を奪う。
 いきなりのことで驚いた彼が胸を押し返してきたが、数十年も我慢していた俺は構わず舌を奪い続けた。我慢できる訳がなかった。

 大昔。「自分を見つけてほしい」と言っていたベルトルト。あの言葉は俺に言ったものではなかった。
 でも俺がベルトルトを見つけてやらないでどうする。ついにメグりアえたオレタチは、ムチュウにモトめアった。
 数十年ぶりの彼とのセックス。愛してる、愛してると耳元で囁きながらベルトルトを求める。彼は終始涙を流していた。モチロンそれは、ウレしナミダだった。



 /4

 再会した翌日から、彼が俺を見る目は変わっていた。
 当然だ。教師と生徒の仲ではなく、前世の恋人同士に戻ったのだから。
 愛し合えなかった時間を埋めるため、何度も俺は彼を求めた。恥ずかしい話だが、それだけ俺はベルトルトに固執していた。何時間だって傍に居たいぐらいだった。
 ベルトルトもオレをアイしてくれたからモンダイはナい。だから俺は彼に少し無茶なお願いもした。どんなヨウボウでもベルトルトは「ライナーがしたいなら……」とエガオでウけイれてくれる。そんな押しに弱い彼に甘えていた。
 先日だってそうだ。俺達はよく部室でセックスをするようになった。廊下を過ぎていく生徒達に隠れて、何度も突きまくった。
 部室だけじゃない。体育館の陰で立ったままズボンを下ろして犯したこともある。

「い、嫌っ……やめて、先生……」

 恥ずかしくて死にたいと何度も泣いていたが、それでも彼は俺を受け入れてくれた。
 イヤだとイってもベルトルトは、サイゴに「ライナー、スきだよ……」とイってくれる。ツナがれることをウレしそうにしながら。嫌よ嫌よも好きのうちということなんだろう。
 シダイにベルトルトのホウからユウワクしてきたこともあった。だから調子に乗った俺は、玩具を入れて登校するように命じたこともある。

「そんなの、出来ない……僕、嫌だよ……」

 言いながらも彼はしっかりと俺に命じられた通りのことをする。
 出来ないと言っておきながら、しっかりと尻に性具を咥えさせて、冬でもだらだら汗を流して学校に登校する。息を荒くして俺の言いつけ通りに学校に来る姿が、いじらしくて堪らなかった。
 クラス委員長ということで彼がたびたび職員室に来ても不自然ではない。毎朝、他の教師に判らないように検査する生活も興奮した。

「ライナーだからやるんだよ。ライナーじゃなかったら、ボク、しないんだから……」
「判ってるって。よしよし、良い子だな、ベルトルトは」
「エヘヘ……。スきだよ、ライナー」

 恋人同士の関係に戻った彼に、俺が一人暮らしをしている部屋の鍵を渡したのは……こんな生活を始めてすぐのことだった。
 仕事を終えて学校から部屋に戻ると、食事を用意して俺の帰りを待っている彼が居る。こんなに嬉しいことはない。

「ただいま、ベルトルト」
「おかえり、ライナー。ね、ねえ、カレーをツクったんだ……タべてくれるかな?」
「外でもカレーの良いにおいがしてたぜ。ありがとな」
「う、うん……。その、一生懸命作ってみたんだ……先生の好みが合えばいいんだけど……」
「ベルトルトが作ったものなら俺は好きに決まってるだろ」
「…………。うん……」

 いじらしく部屋で待っている彼と食事をするのが、まるで新婚生活をしているようで楽しかった。
 食事の最中も色んな話をする。それから一時間ほど甚振って、なるべく早めに帰すようにしている。部活動に入ったから帰宅は遅くなると親には説明しているようだが、運動部ではない高校生が夜の八時以降まで部活で帰らないというのはおかしいからだ。
 出来るだけ長い時間を二人きりでいたいが、立場的にそれは許されない。生まれてきてしまった世界が悪いと思って我慢をする。
 しかし、この世界には怖いものは少ないんだ。通りすがりに食われて死ぬことも、兵士に首を削がれて殺されることもない。
 こんなに平和な世界でベルトルトと恋人で居られるんだ。この程度の不自由、なんてことはなかった。

「お前が毎日……縛られて授業を受けていると知ったら、みんなどう思うだろうな」

 今日も腹を満たした後で、限られた時間を楽しむ。
 今日の彼は服の下は縄化粧がされ、一日中虐げられた体が熱気を帯びていた。ベッドの上に腰掛けさせてシャツを捲り、ぎちぎちに縛られた肌を撫で上げる。
 びくんと総身を震わせる。これからの行為に早くも期待しているのか、目頭には涙を溜めていた。感情が昂ぶるとすぐ泣いてしまうのはベルトルトらしい癖だった。

「ライナー……ボク、ごホウビがホしいな」
「ああ、ご褒美をやるよ。一日中その格好をしてくれてたんだからな。どうだった?」
「……は、恥ずかしかった、です……」
「何を考えてた?」
「……ずっと、先生のことを……。今のことを……。早く、学校終わってくれないかなって……。うっ、うう……」
「期待してたのか? すぐ抱いてほしかったのか?」
「…………」
「なら言ってくれればトイレでも何処でも抱いてやったのに。今更学校でするのが恥ずかしくなったのか? 先週だって、教室であんな写真を撮ったくせに」
「…………う、うあ、うあああんっ……」
「うっ。すまんすまん、泣くな。相変わらず泣き虫だな、ベルトルトは。よし、全部脱いでくれ。お前が脱いでいく姿が見たい」
「………………」
「脱げよ。お前を抱けないだろ」

 俺の申し出に彼は鈍い動きで服を脱ぎ始めた。最初はあまり気乗りしないのかと思った。だが「シカタないなぁ、ライナーは……」と、ケッキョクはベルトルトもワラって、セイフクのウワギをヌいでくれた。
 気恥ずかしいのか上着を置いた後は、俺に背中を向けて脱ぎ始める。生まれる前から俺に素肌を晒しておきながら、今だって毎日のように抱いてやっているというのに、まるで初めてのように羞恥心を拭えずにいる。

「み、見ないで……」
「今更だ」

 シャツを脱ぎ、ズボンに手を掛け、下着姿になって俺の前に立つ。それからなかなか動かない。いつものようにおどおどしていた。

「全部脱げって言った。言うこと聞けないのか?」
「ッ……」

 強めに言うと、震えながらも丸裸になってくれた。
 日焼けして少し浅黒い肌に縄が走っている。亀甲縛りは体を責めるというより心を辱めるためにしたものだ。効果は抜群のようだ。
 恥ずかしがって背中を向けたままの彼。横顔も可愛くて、我慢できず背中に抱きついた。

「ひっ!?」
「ベルトルト……」

 早く彼を全身で求めたい。汗ばんだ首筋に鼻を付ける。すうっと深く吸い込むと同時にうなじに唇を這わせた。
 彼は驚いて震える。俺の気持ちは抑えられなかった。長年探していたものを手に入れることが出来て、その嬉しさに子供みたいに胸が高まっていた。何度彼を抱いてもこの興奮は止まらなかった。

「ら、ライナー……ウレしいけど、オちツいてほしいな。ボク、ニげないから……ライナーのモノなんだから」
「これが落ち着いていられるか」
「は、離して……」

 唇を小刻みに震わせながら、彼が不安げに俺の動きを待っている。うなじを吸われ、ベルトルトはか細く悲鳴を上げた。
 未だに身を任せることが恐いのか、俺の腕を振り払おうとすらする。
 でもベルトルトは、サイシュウテキにワラってオレをウけイれてくれる。当然だ。だって俺達は恋人同士なんだもの。だからハナしはしない。

「や、やめて……こんな……!」
「こんなの嫌か?」
「ライナー、キミはまったく……ヘンタイってイわれてもモンクはイえないよ……!」
「お前だからするんだよ。誰にだってする訳じゃない。ああ、好きだよ、ベルトルト……」
「……違う……僕は……僕は……!」

 今にも泣きそうな彼の小さな声は、我慢していた俺の本能を熱くさせていった。
 拒否は小さい。唇を少しだけ動かしているだけだ。そんなんじゃ拒否したに入らない。だってコバんでいるくせに、

「いいよ、ボクをモトめて、ライナー……」

 なんて、オレをサソってくるばから、止められるものか。
 扇情的な格好に卑猥な言葉。股間に快感が走っていく。眼鏡の奥の目は震えていた。その目だ。何もかも愛おしい。

「ライナー……ハヤく、チョウダイ……」
「ああ、もちろんだ……」
「い、嫌……」
 
 彼の顎を掴むとぐるりと後ろに向けさせ、唇を奪った。
 俺の腕から逃れようと暴れるが、ベッドに転がしてしまえばこっちのものだった。
 泣きながら嫌々と首を振っている。息が荒い。肩先が喘いでいる。一日汗をかいただろう体がまた汗ばみ、唇だけでなく総身を震わせ始めた。

「愛してやる。何年も会えなかったんだ。愛してやるよ、ベルトルト……」
「ウレしいよ、ライナー。キョウもいっぱいボクをアイして」
「ああ。何度でもな。まずは馴らさなきゃだよな? 四つん這いになれよ。いつもみたいにな」
「そ、そんなの僕、してない……。ひっ……!」

 彼はよく泣く。前からそういう奴だった。この世界でも子供の彼は変わらない。
 いつまで涙を流せば止まるのだろう、頬は相変わらず濡れている。泣きながら訴えるような目を向けられ、ますます興奮した。
 しゃくり上げる彼のケツを、俺は引っ叩いてうつ伏せにして圧し乗った。

「ライナー、スきだよ……ハヤく、もっと……チョウダイ……」
「そんなに急かすなよ。全部お前の、見てやるから。身体検査だ」
「んあっ……嫌だ……やだ……恥ずかしいよぉ……」

 剥き出しになったケツを撫でる。突き出た形のいい形の尻が、左右に揺れていた。
 腰を動かし逃れようとするが、俺が彼の頭をベッドに突っ込ませ、腰を上げるように腹の下に俺の足を入れる。がっちりと腕で頭を固定してしまえば、てこでも動かぬような姿勢の出来上がりだ。

「足を開け。少しずつ馴らしてやる」
「許して……僕……」

 すかさず尻に一撃が飛ばす。「ひぃ!」 半端に尻を上げていた体が倒れた。
 大昔、じゃれあってケツを叩きあうこともあった。そのときのようにすれば、ベルトルトはオモいダしたのかケラケラワラいハジめる。激しくしゃくり上げた。
 もう一度「開け」と言いつけると、彼はおそるおそる膝を開いていった。
 すぼまったケツ穴が羞恥と屈辱にひくついている。萎えた男性器が垂れ下がり、内腿と同じくプルプルと震えていた。

「いきなり突っ込んでも辛いだけだしな。もう巨人の体じゃないんだから大事にしないと死んじまう」

 ベッド横から瓶を取り出し、指にどろりとした液体を垂らす。
 ねちゃねちゃと指に馴染ませた後、その指を閉じてしまっているベルトルトのケツ穴に突っ込んだ。

「アアッ……キモチイイよ、ライナー……!」
「そうかそうか、お前は……俺にグチャグチャにされるのが好きだったもんなぁ……」
「ひっ……んあああっ……! やだ、嫌だ、掻き回さないでっ……ぅあ……!」

 細くベルトルトが拒絶をする。
 でもドウジに「キモチイイ、キモチイイよ、ライナー!」とウレしそうにコエをアげてもいる。気持ち良すぎて頭が混乱しているんだろう。忙しなく甘い声を上げて、今から喉が嗄れないか心配になった。

「んぃっ!? や、やだ……そこ……変になる……!」
「ん? ここが……。そうか、こうすると気持ち良いのか」
「嫌だ……それ、嫌だ……先生、嫌だよ、僕、イきたくないよぉ……」

 少しずつ緩んでいくケツ穴。たっぷりと濡らした液体が壁面を摩擦し、まるで自分で濡らしたかのようにぐちゅぐちゅ音を立てる。
 指で突くたびに声を変えて悦ぶ箇所を探し出し、俺はそこを重点的に攻め立てた。額に髪の毛を引っ付けて、耳まで真っ赤にして、彼は首を振るう。

「イきたい……イかせてよ、ライナー……!」

 ベルトルトはあまりのタカぶりにコンワクしているようだった。
 必死に俺の指を止めようと体を捻って腕を伸ばそうとする。だが快楽まみれになった下半身では、何も止めることすらできない。ぐすぐすと涙を啜りながら、ケツの穴を穿られ、ひいひい喘ぐだけ。
 暴走は止まれない。俺は一旦指を引き抜き、俯せから仰向けにして、真正面から彼の体を抱き締めた。上からいくつものキスを落とす。繰り返す。

「ベルトルト、もういいだろ……?」
「あ、あ……先生……嫌っ……」

 全身の緊張を解してから、先走りの液体で濡れた亀頭を秘口に宛てた。

「たんと味わえよ」
「うん、イれて、ライナー……! キミがホしいんだ、ボクをミたして……」

 気持ち良さそうに涙に濡れた顔を正面からじっくり眺めながら、俺は一気に腰を沈めていく。

「ひいっ……!」

 いつもはあまり口を開けずに喋る彼が、喉が見えるほど大きく口を開け、苦痛に顔を歪めた。

「や、嫌だ、助け、たすけっ、て……」

 麻酔なしに生肉を引き裂かれる痛みに、彼は全身から汗を噴き出していた。頭を振りたくって痛みを誤魔化そうとしている。ふんわりしている髪が、額やこめかみにへばりついていた。
 それでも求めてしまうのは、愛があるからこそ。
 ベルトルトの中は熱く心地良い。何より赤い顔をしながら俺に抱きついてくる彼を見ることが、何よりの快楽となっていた。

「あっ、ああっ、んああっ……!」

 かつては生の実感を得るためにお互い身を寄せ合った。自分達は生きているのか。生きていていいのか。お互いの存在を全身で感じたかった。それが初めて俺とベルトルトが結ばれた理由だ。
 いつ死んでしまうか判らない相手を、痛みと快感で結んで傍に留める。地獄の中でセックスを繰り返していた。
 今は違う。通りすがりに喰われて死ぬことなんてない。ただただお互いを愛し合いたいがために、見つめ合いたいためだけに行為を続けることができる。ここは天国だ。

「愛してる、ベルトルト……」
「ひっ……あああっ……んああああ……!」
「気持ちいいか……? そうか、ああ、俺もだよ、ベルトルト……」
「嫌だ、嫌だあ、痛いぃ……誰か……あぁ……あああっ……!」
「俺も愛してる……そう、そうか、ああ、うん、恥ずかしい奴だな、そんなこと言って」
「ひっ……ん、んん、ああっ……! 先生っ、やめて……んぁ、はあああっ……!」

 腰を浮き沈みさせると、ベルトルトは喉を仰け反らせて苦悶の声を上げた。
 体ががちがちに硬直していた体を何度も突き上げる。

「僕、ぁ、はあ、んあっ、やだ……ぁ……! もう、こんなの、したくないよぉ……」

 ケツ穴を犯されているというのに、ベルトルトのペニスは大きく反っていた。「細谷先生、僕……僕……」 心の底から俺の快楽を受けて悦んでいる証だった。
 俺は動きを早くする。するとベルトルトは「ボク、すっごくキモチイイよ、ライナー、ダイスき……!」とキモちヨすぎたらしいだらしないカオをサラす。爪先までピンと伸ばして快楽に浸り、何度も俺を締め付けてきた。

「ナカに、ダして……いっぱい、ライナーのが、ホし……ァアッ……!」
「まったく、そんなに俺が欲しいのか? 毎日可愛がってやるのに……今まで誰にも弄ってもらえず淋しかったもんな……」
「ぁ、ああ……! 中はっ……やめ、ぁ、お尻でなんか、イきたくない……! ひっ、う、ぅうううう……!」

 我慢することなく、絶頂に運ぶ。
 射精の瞬間、更に大きく膨らんだ俺のモノに彼はビクビクと身悶えしていた。俺の体の下でびくんびくんとと悦楽に酔いしれている。

「ぁ、あああっ、いく、いく、ううぅ………!」
「いいぞ、ベルトルト」
「あ、んああっ! 嫌、んああああっ……!」
「そうだ、俺のモノで突き回されてイくんだ……ベルトルト……愛してる……」
「あ、あぁあ、んぁああ…………! 違………僕は、ベル……じゃ……な……。違うっ…………ううううぅ……」
「……愛してる……愛してる……」

 おかしくなるほど責め立ててやると、ついに彼自身も俺の腹の上に放出した。
 ぐったりベッドに倒れる彼の体にいくつもキスをした。付けても付けても痕を付け足りない。
 散々体中を真っ赤にし終えた俺は、背広のポケットに常備している小型カメラを出した。カメラを構え、器官を中心に据える。シャッターを押すとストロボが光った。
 何をされたかを知った彼が、涙を流しながら首をゆるゆると振る。

「あ……ぁ……撮らないで……」
「また記念写真が増えた。そうだ、このカメラ……現像しなきゃだったな。なら全部写真にしてみんなに見せてやろうか」
「や……嫌……やめて……」
「ん? お前そんな趣味あるのか? なんだよ、ああ、すまんすまん、おい、怒るなよ……。ったく、判った。俺達だけで楽しもうな、ベルトルト」

 クスクスとワラってオレにキスをネダるベルトルトがカワイらしい。
 もう何度目か判らない口付け。ベルトルトはこのテンゴクのようなセカイにマンゾクして、マンメンのエみをウかべた。

「ライナー、スキだよ……ダイスきだよ……」「……誰か、助けて……」

 こんなに近くに、何にも恐れるものがなく愛しい人を求め続けることができる。正面に見えるその目からは、ぽろぽろ涙を零していた。
 俺達を縛るものは何も無い世界。何処にだって行ける、閉ざされた壁の中ではない平和な国。海を見に行くことだってできて、明日に怯えて眠らなくったていい。そんな解放的な世界で、再び愛し合える日を夢見ていた。
 これは夢じゃない。何十年も待ちわびていた、ベルトルトを愛していられる現実なんだ。
 薄く開かれる唇から、変わらず愛おしい声が途切れなく漏れている。

 助けて、助けてと。ライナー、スキだよ、ライナーと。ずっとオレのナをヨびツヅけている。
 ひいひいと泣きじゃくりながら。クスクスとワラいながら。

 唇を落とすと恥ずかしがって顔を背けた。そんなに照れ臭いのか。これほどのことをしておきながら。
 逃がさない。構わずキスを続ける。昔と同じ、何十年も探し続けた彼が、俺の愛した彼が確かにそこに居るのだから。
 決して離しはしない。




END

生まれ変わってもベルトルトを愛するライナーはかっこいいし、再会して愛し合うベルトルトはかわいい。15年前に読んだ藍/川/京著の小説『T○RIK○』の冒頭部分が好きすぎて「こういうライベルが読みたい!」と喚いてから早半年。未だに熱が治まらないので書きました。リスペクトしてます。オマージュです。
フォロワーさんからお題を頂いてSSを書く企画をやってみた第7段。お題:「あの肉は腐ってた」「爪先」「鼠算」「この話はやめよう」「銃撃戦」「靴ずれ」「あのときのキミ」。「あのときのキミ」のキミだけ何故カタカナ? 意味を持たせなきゃと考えていたら漢字ドリルの完成です。(採点 各2点)
2014.4.4