■ 閑話 if 月茶
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―――とある日のお昼のアーネンエルベにて……。
アルクェイド(以下ア)「…………なぁ、眼鏡。何か始まるらしいけど、何する気なんだ?」
シエル(以下シ)「あぁ、一通り話のオチがついたからお茶会をする事になったんだ。何でも今まで反省しろという事らしい。……そんな事も判らないで来たのか?」
ア「(開始早々ムッ)あー、そうだったな。すっかり忘れてたぜ、眼鏡となんかと茶なんて飲みたかねぇけど、やれって頼まれた事はちゃんとするタイプだからな、俺は。偉いだろッ?」
シ「では頼むが、さっさと本国に帰ったらどうだ? もしくは世界に散らばる死徒を倒す本業に戻れ」
ア「土下座して頼んできたら考えてやるよ。……それにその言葉そのままお前に返すぞ。いつまでも年誤魔化しやがって。実年齢は二十七かそこらだろ、クソジジィ」
シ「まぁ、その時は先生役として出るさ。大人の男性の魅力というのも女性を引き寄せるポイントになるからね」
ア「……変態教師が。あー、やめたやめた。こんな奴と話すのもウゼェ! なんでこんなモン企画したんだよー、つーか誰が決めやがっ……」
カランコローン♪
ア「……ぉ、なんか別のお客さんが来たみたいだぜ?」
シ「ん? ……おかしいな、今日は此処を全面貸し切りだって聞いたけど。……あぁ、貸し切り主か」
秋葉「……………………」
ア「……………………」
シ「……………………」
秋葉(以下秋)「…………ふんっ」(ストッ←席に素早く着いた)
ア「……おぃ! 何だよ弟! 何も言わず席に着くなよ、一番最後に来たクセに!!」
秋「何だよ、とはこっちの台詞だな。俺だってアンタらが来るって知ってたら来なかったぞ。……じゃ、さっさと初めてくれませんか、先輩?」
シ「はは……もう弟クンは何するか判ってるんだね。でも僕が議長をするの? こういうのは委員長属性の弟くんがやるもんなんじゃ……」
ア「そうそぅ弟! お前『if 姫』の中では一番影薄くって出番少なかっただろ! いっつも双子とか兄貴とかにイイトコ取られまくりだったし!」
秋「(耳を押さえつつ)きーこーえーまーせーん。ワタシガイコクゴワカリマセーン」
シ「……君は確かに『if 姫』の中じゃ弟クンが一番ガキ……いや、年下キャラだからね。でもそういう対応は皆さんにどう見られるかな……」
ア「ガキを誇るのはみっともねぇぞ、弟」
秋「……さっきから先輩方、気になってしょうがないんだけど。確かに俺は確かに役柄は『弟』だけど、アンタ達とは全く関係ない。…………先輩、その呼び方で呼ばないで下さい」
ア「あー? 何言ってんだよ、俺と志貴が結婚すれば弟じゃんっ」
(ザシュッ!!!)
シ「……はいはい、妖怪退治も終わった所で。じゃあ楽しくお茶会始めるから、秋葉くんも落ち着いて。そこで串刺しになってるバケネコに説明したけどもう一度言うね。今日は反省会・感想会、……というより、総仕上げ会。ちょっと不適切だった所やみんなの事についてまとめていくから。だから、今日ぐらいはみんなで楽しく話してみようじゃないか」
秋「そんな事アンタに言われるまでもない(しれっ)。でもな、話し合うって言っても…………」
琥珀「華がなさすぎます! 『女の子五人で仲良く喧嘩しながらお茶会v』というのは絵になるけど、全員野郎でケーキつつきながらトークってのは虚しすぎますよ! なら焼肉大帝都行くとかの方が合ってますって! もしくはお嬢さんのご学友の高田お嬢さんのお兄様がやってるっていうラーメン屋台とか……!」
翡翠「―――兄さん。屋台だと五人は少しキツイんじゃないか……」
秋「……………………」
シ「……………………」
ア「……………………」
シ「……君らは一体何やってるんだぃ?」
琥「アッ、ハイご注文スか!? 遠慮なくドウゾー!!!」
秋「…………琥珀。なんだ、今日はバイトの真似して、俺に毒でも盛るつもりか?」
琥「いやぁそんなバレバレな事は流石に俺はしませんよー。今日は本物のアルバイトッス。だって秋葉様小遣いくれないじゃないッスかー。あ、勿論俺達は皆さんのお話後ろで黙って見てますんで、ヨ・ロ・し・くv」
翡「―――宜しくお願いします(深々とお辞儀)」
シ「……はぁ、その様子だと本当に二人にはお給料やってないみたいだね。志貴ちゃんにお小遣いやってないっていうのは判るけど、働いてくれてる二人に出してもいいんじゃないか?」
秋「当たり前だろ、一緒に暮らさせてやってるのにそこまで面倒見られるかっ!」
ア「ヒデェな……ただ働きかよ。コリャ、いつか毒盛られたって文句言われないだろ」
秋「……『アルバイト』さん、何か適当に持ってきてくれ。そうだな、……姉さんが先輩とそこの生き物と愉快な仲間と一緒に食べたっていう特大のストロベリーパイがいいな」
琥「ラジャーッス!」
翡「―――了解しました」
(黙って厨房へ下がる)
ア「……弟。何でそんな事知ってるんだ?」
秋「ここで色々話すためには過去の事も知っておく必要があるから、第一章から第三十二章まで読んでおいたんだ。……しかし、コレ全部読むのどんなに早い人でも時間かかる話だな……」
シ「といってもオリジナルな点は殆どないけどね。もうTYPE-MOONさん関係に怒られてもすぐサイト撤去できるぐらいにそのままの形でSSとして出してるから……本当にコレ、『キャラが違うだけの同じ』話なんだ……著作権なんとかっていうのに怒鳴られても仕方ないね」
秋「多少のパロディなんだから見逃してくれないのか……?」
シ「……今の所そういうのは来てないけど。これからも丸写しにならない程度にパロっていこうね、二人とも」
ア「おーけー。その提案は眼鏡の願い事でも聞いてやるよー」
琥「ハイ、お待たせしましたー! 今日は大サービスしてストロベリーパイにイチゴオレとイチゴサンド付きッス!」
ア「うわぁ、見事にピンクばっか。……やっぱ春だからか?」
琥「はは〜、初期のうちはお嬢さんも苺関係ばっか食べてましたからね。アレは書いてた当時、苺にハマってたからッスね〜、あと管理人の高校生活ってイチゴオレが欠かせないモンになってましたからー」
秋「…………で、なんで今かかってるBGMが『ゴットファーザー愛のテーマ』なんだ?」
翡「―――歓迎会で使用した時、兄さんが特に気に入った曲なので、また……」
ア「気に入ったからってこの曲でメシ食うのはおかしくねぇか? ……ま、いっか。華やかなのは悪くないよな。んじゃ、いただきま〜す!」
秋「ところで翡翠。琥珀の奴、何か変な事してなかったか? ……毒混ぜたりとかしてないだろうな?」
翡「―――今日ぐらいは、しないと思いますが」
琥「だーかーら言ってるだろ翡翠ー! 俺は無い知恵絞ってココだぁって思った時にしか毒盛らないって!!」
シ「……いいのかなぁ、そんな事、本人目の前で言って……」
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ア「……そんじゃさっさと始めようぜ、反省会ってやつをな。でも俺、言っておくけど反省する事なんて一つもないぞ」
シ「それを言うなら僕も……。まぁ、昼間から徘徊している吸血鬼を始末できなかったのは、大いに反省すべき点だけど。ということは反省する事はみんな無いね? じゃあみんなココで聞いておきたいことを存分に言い合おうじゃないか」
秋「じゃあ、先輩。言い出した本人からどうぞ」
シ「ん!? ……んん、いきなり来るか。そうだな、最初だから真面目な質問でも聞いてみるか」
琥「いいじゃないスかー、今日ぐらいハジけちゃっても! って俺は毎日ハジけてるかなー!?」
翡「―――兄さん、後ろで黙って見てるって……」
シ「……あぁいいよ二人とも、好きに発言して。それじゃ志貴ちゃんについてなんだけど。……志貴ちゃん、『沈夢』の時ずっとベットで寝ていたけど、その時、身体はどうしてたの?」
秋「どうしてたって……ずっと寝てた、筈なんだが……?」(秋葉、ヒスコハを見て確認)
翡「―――はい、お嬢様は起きあがれない状態でしたので、二日間ずっとあの部屋から離れていませんが」
シ「そうじゃなくてさ、体調が悪い時は寝ていた方がいいんだけど。……お風呂とか、どうしてたの?」
琥「いやん先輩ったらエッチッスよ、その質問ー!?」
秋「……お前が言うともっと変に聞こえるぞ。確かに原作の『月姫』だと、♀琥珀が♂志貴の身体を濡れタオルで拭く……というシーンがあったけど、それと同じだったと思う」
ア「……はぁ!? じゃあイッチバンこの中で危なそうなコイツ(→琥珀指さし中)がやってたのか!?」
琥「んなワケないじゃないッスかぁ!(ぷんぷんっ) やってみたいけどその時はモチロン来てもらってましたよ……トキエアネゴに!!」
ア「トキエ……アネゴ?」
シ「えっと、……トキエさん、ていうのは?」
秋「遠野家の主治医をしている時南宗玄の娘、時南朱鷺恵の事だ。あのジジィ自体は変態に違いないが、朱鷺恵さん自体は真っ当な看護婦だ……多分」
シ「……え、多分て?」
琥「……はぁー、それがトキエアネゴもよって純粋さを奪われた、とお嬢さんも嘆いた事があったらしいッス。どんな事されたかは…………『18禁 if姫』が出来た時にでも出てくるんじゃないッスか?」
秋「なっ、そんな事があったのか!?」
ア「……あー、なんか弟が一番ビビってるんだけど……知らなかったんか?」
翡「―――朱鷺恵姉さんは、昔から遠野家で小さい頃から世話を見てくれました。志貴お嬢様が有間に行った後も、時南病院に通院していたので、八年以上の付き合いだと思います」
秋「同性で、正真正銘の看護婦だったら問題ない……でしょう、先輩?」
シ「んー……そうだね。となると翡翠くんも琥珀さんも朱鷺恵さんの知り合いなのかぃ?」
琥「そうッスよっ、俺にとってトキエアネゴは師匠みたいな人でしてねー。アネゴとお嬢さんと、有間の娘さんの都古ちゃんの三人娘が遠野家その他分家にも大人気だったんスよー。何せ遠野本家は二人とも男持っちゃいましたからねー。御館様(槙久)もお嬢さんを引き取った理由って、女の子が欲しかったからじゃないんスかね?」
翡「―――それだけで『滅ぼした』とは考えにくいけど、な……」
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秋「……じゃ、今度は俺から。その、姉さんの事なんだけど。……姉さんのクラスの人気度っていうのはどの程度なんだ?」
翡「―――はい、是非知りたいです」
シ「クラスだとどうかって? ……こういうのは同じクラスの乾くんの方が判るだろうけど。僕の見た所だと、志貴ちゃんは乾くんと弓塚くん以外、喋ってる姿はあんまりいないね」
ア「そだな。『女友達はいないだろ』って四季も言っちゃってるもんなー。……まぁ、あれ推測なんだろうけど、半分当たってるんじゃないか?」
シ「文化祭ではちゃんと色々な人と話している所を見ると、そんなに孤立しているわけじゃないみたいだよ。……おそらく、話しかけられなきゃ、ずっと話さないだろうけど」
秋「……あんまり、付き合いは良くないのか。同性の友達がいないのに、なんで変な男に付きまとわれるんだ、姉さんは」
ア「だって志貴、可愛いじゃん」
シ「うん、そうだ。可愛すぎるのがいけないんだって……」
秋「どういう理由だよソレ! ……あー! 屋敷に連れ戻すんだったらそのまま浅上学園に転校させれば良かったー!!」
琥「はは〜、セーラー服のお嬢さんも可愛いかもしれませんけどねv」
翡「―――また秋葉様の権力の無駄遣いが……」
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翡「―――すいません。質問、宜しいでしょうか」
シ「うん? どうぞどうぞ、どんどん言っていいよ」
翡「ではお言葉に甘えて、シエル様。『空蝉』でお嬢様とアルクェイド様が話していた時に襲いかかってきた死徒は、やはりシエル様が操っていた、……で宜しいのでしょうか?」
秋「本物の月茶と同じできたな……」
ア「あー、そだな。そうだけど、説明してなかったのによく判ったなー」
翡「アルクェイド様が『結界を張られた』の上に『代行者』とハッキリ述べられてますから。―――シエル様の仕業ですか」
シ「……そういう事になるね。どうしてもアルクェイド・ブリュンスタッドの悪行を志貴ちゃんに見せつけてやりたくて……ちょっと危険な手段だったけど」
秋「危険すぎるぞ、アレは。……アンタのせいでもう少しで姉さんが本物の死徒になってたかもしれないんだぞ!」
ア「おぅよ、もっと言ったれ弟! 外灯の上から操って襲わせたわけだな! 全くキタネェ奴だよなお前は!」
シ「…………殺すぞ」
秋「弟って言うな!!」
翡「―――ところで、アルクェイド様。その『おぅよ』ですが……」
ア「ん? 何か変か??」
翡「いえ、変ではありませんが。口癖なのでしょうか?」
琥「そういや、シエル様もアルクェイド様の事をフルネームで言われますが、何かこだわりでもあるんスか?」
翡「全体的に皆口調も似てるので迷う事があるので、ハッキリしておきたいと思います」
シ「僕がフルネームで言うのは、呼び捨てで言うと変に親しいと思われるからだよ。……ただでさえ志貴ちゃんには誤解されてるんだから」
ア「は? 誤解って何だよ」
琥「……まぁそれはおいといて!! 皆さんにもわかりやすいようボードにまとめてみました! こんなカンジで書いてますっていうの、でわ下の表をドウゾ〜!!」
アルクェイド 真祖の皇子。基本的お坊ちゃん。
口癖は「おぅよ!」「あー?」「〜だぜ」
シエルに対しては「○○眼鏡」……色々バリエーションがある。
ある人に対して「姉貴」「じいや」と呼んでいる。時々、「ロア助」と言う事も。シエル 代行者。眼鏡。
特徴「〜なのかい?」「〜なんだよ」「そうだろう?」「……はぁ」など。
隠し口癖は「殺す」と「死ね」。アルクェイドに対してはフルネームで呼ぶ。
俗称で人を呼ぶ事が多い(「蛇」とか「真祖の皇子」とか)。
二人称は君。時々、貴様を使用。秋葉 「弟くん」「志貴(四季)の弟」等上の二人に言われる。
有彦と羽居には「秋葉ちゃん」と呼ばれる。
一人称は俺。シエルにのみ敬語(年上だから) でも二人称は「アンタ」。
浅上の親友と話している時が唯一の地。志貴に対しても低腰で付き合う。
一応普段は四季を「兄さん」と呼んでる……筈。翡翠 一人称は普段は私、本当は俺。
志貴に対しては「お嬢様」本当の呼び方は「シキ」。四季は呼び捨て。
なるべく使用人語(敬語)を使う。話す前は大抵「―――」を入れる。
でも実際は敬語は苦手らしい。隠れ熱血漢。
地が出ると「ふざけるな!」とか「いいかげんにしろ!」とか叫ぶ。琥珀 一人称は俺。翡翠以上に敬語下手なので微妙な敬語こと、「〜ッス」を常備。
志貴に対しては「お嬢さん」、翡翠と四季は呼び捨てで、あとは様付け。
「♪」が出る時は良くない事を考えてる時らしい。
秋「…………翡翠。琥珀の奴、いつの間にこんな物を用意してたんだ?」
翡「―――それは言えません。極秘任務との事です」
ア「あー、マジだ。翡翠は本当に話す時に『―――』入れてやがるよ」
シ「そういう君も上に書かれた通り、『あー』を入れてるね」
ア「む、……仕方ないだろ口癖なんだから。それにしてもお前、口癖が『殺す』と『死ね』なの!? うっわ、アブネー奴!!」
シ「………そんなに死にたいか吸血鬼っ!!」
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ア「あぁ、そういえば話に触れてなかった事だけど、なんで弟泣いてたん?」
秋「…………は?」
シ「あ、それ僕も知りたいな。『静夢』で志貴ちゃんと乾くんが一緒に帰っていた時、コンビニの前でウロウロしてただろ? アレって何やってたの?」
秋「(ギクッッ)……説明してなかったか」
琥「してないッスね〜♪」
翡「―――ん、兄さんは知ってるのか?」
ア「あー、何だよ一体弟に何があったんだよ!?」
琥「それはですねぇ〜。俺もハッキリ知ってるわけじゃないんですけどね〜♪ 二つ説があるんスよっ!」
シ「二つ……?」
琥「一つは、いつも送迎の車に来てもらってるんで、一切コンビニとか入った事なくて興味本位で下ろしてもらって車には帰ってもらった。そしてお金の払方も判らず、ウロウロして……ぐすん、っての!」
秋「琥珀! いくらなんでも俺だって金の出し方ぐらい知ってるぞ!!」
シ「……実際にやった事は?」
秋「…………中学の体験学習で」
シ「……はぁ、これだからイイトコのお坊ちゃんは……(超ため息)」
琥「二つ目は、送迎車の中でなんとお嬢さんと乾様の仲良く帰る姿を目撃ドキュン! 邪魔したるわっ、で車を下りてコンビニの所で待ち伏せ……でも勝てないって判った秋葉様は……うわーん!?」
秋「こ・は・く!!!!」(画面反転……しばらくお花の綺麗な映像が流れる)
シ「……でもさ、乾くんと帰っていた時の志貴ちゃん心境って、確か『周りに人さえいなければメッタ刺しにしている』って、相当ダークだったと思うけど?」
ア「普段からそんな事考えてんのか志貴……。やっぱ俺を殺したのって地なんかな」
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琥「はいはーい! 質問ッスー!!」
秋「…………お前、今さっき檻髪にやられたばっかなのに、何で復帰してるんだ」
琥「気にしちゃいけませんよー、これでも俺医者なんスから!(関係無い) その、『if姫』は一応アルクェイドさんのエンディングで一件落着したって事になるんスよね?」
ア「へへ、そうだな。まっ、『月姫』が一番正ルートなんだから仕方ない事だなぁ!」
シ「(……フンッ!) だからって君と志貴ちゃんがデキてるってわけじゃないんだよ」
ア「はぁ? なんだよ眼鏡。それ負け惜しみかぁ??」
琥「いやー、だって。お嬢さんったらシエル様のお家にもお泊まりさせてもらってるし、遠野家編はオールクリアだし、弓塚様ともいいカンジになって、四季もロアも助けて、尚かつ有彦との仲が一番人気あるっていうのは問題ありかと……」
翡「―――こういうのを八方美人、と言う」
琥「いやいやぁ〜、『悪女』でもいいんじゃないッスかー?」
秋「……姉さんは、本当に優しすぎるんだよ。誰にでも平等で、いつも優しいけど実際に深く中には入ってきてくれなくて……そのくせご都合主義だから『みんな仲良くしてくれればそれでいい』とか言って……!」
シ「あれは行き過ぎだね。……おかげで何人彼女に騙されたんだ?」
翡「―――自分の喉切られかけても、夜中の学校で刺されても怒りませんからね。……あれは一種病気です」
ア「その割には俺が学校遊びに行くと怒るんだぜ! 不公平だよな!!」
シ「……来るな化け物!!!」
翡「―――そういえば、大きな問題がまだ解決していません」
琥「あら、翡翠。また難しい顔しちゃって……今度は何だ?」
翡「序盤の最大の見せ所、アルクェイド様とお嬢様の共同作戦の―――『混沌』様はどうなされたのですか?」
ア「生きてるよ」
……。
…………。
………………。
シ「なにぃっ!!? 貴様、何でそんな序盤の一番の問題を言わなかったんだ!?」
ア「おぃー、ちゃんと見ろよ。志貴自身『倒してない』って言ってるじゃん」
翡「―――あぁ、確かに言ってます。弓塚様のを追いかける前に『ぶつかった、だけ』と仰ってます」
シ「……どういう事なんだ、アルクェイド・ブリュンスタッド」
ア「お前本当に死徒追ってる仕事してんのか? 本当にあん時はネロ蔵を追い払っただけだったんだよ。……だからさ、あの頃から志貴は誰も殺してないんだよ。秋葉のにーちゃんもロア助もさっちんも、果ては眼鏡が操った死体も一匹も殺してないんだ。私が殺す、とか強気な事言ってるくせに何一つやってないんだよ」
シ「……しかし、吸血鬼を殺す事は出来る。弓塚くんと四季君の『吸血鬼の線』を殺した……まさか」
ア「あー、ネロ蔵を吸血鬼じゃなくしたっつーのは無理だな。だってアイツから獣取ったら何残るんだよ? どうぶつ焼屋か?」
シ「じゃあつまり。……あとあと『混沌』について出すつもりだったけど、タイミングが悪くって出せなかった、だけなんだね」
ア「そういう事! 計画性無いよなー。……そもそも『if 姫版遠野家のコンゲーム』をやるために悪役チームと被害者生かしたって話じゃねぇか」
秋「……でも、良かった。姉さんは『殺人貴』じゃないんだな……」
琥「んー? そういや弓塚様を吸血鬼にしたのって四季なんスか、ロアさんなんスか?」
シ「あぁきっと、弓塚くんはロアに血を吸われたんだね。連続吸血事件を起こしていたのは『蛇』だけど、四季君は別に事件を犯してるんだ。……志貴ちゃんの『夢のような夢の現実』で死体が沢山出てきてなかったかぃ?」
秋「……その時の姉さんは死体を見ても随分落ち着いていたみたいだけど、アレは?」
ア「それはレンがふざけすぎて変な夢ばっか見せたから、ホンモノなのか認識出来なかっただけだ。……レンも俺との夢だけ見せりゃいいのにさぁー」
シ「……バカは放っておいて。もしくは志貴ちゃんが完全に双子の片割れである四季君と同調して『人殺し』の感覚(?)が鈍ってたのかもしれない。……遠野家は殆ど死徒同じだからね」
秋「……人聞きの悪い事は言わないで下さいよ、先輩。血を求めて彷徨い歩くあんな外道共と一緒にしないで下さい。……ただ俺達は、ちょっと食事の中に血が入ってるだけで……」
琥「吸ったら我慢できなくなりますけどねーっ、今は献血で我慢してもらってるんスよ四季も秋葉様も。これで好物がレバニラ炒めっつーのも判りますね!?」
ア「複雑な吸血鬼事情だなぁ。……一体、ロア助達は何やってんだか」
シ「……そうだ、肝心な所を聞いていない。何故『蛇』を助ける必要があった?」
ア「あー、まだ言ってんのか眼鏡。そりゃ、お前が『蛇』嫌いなのも判らないでもないけど……。志貴はな、俺達が騒いでいたせいで……簡単にいえば『精神不安定』ってヤツ? 四季のせいでもあるんだろうけど、意識(夢)が混同しやすくなって、……いつの間にかふよふよしていた『蛇』と同調した。そん時ロアは最初、自分をも殺せる『直死の魔眼』に興味があってそれを部下(死徒)に出来たらいいなー、って思ってたんだけど(『空蝉』にて)」
翡「―――偶然見てしまった意識の主が、探していた『純粋』だった。と?」
秋「……そういう事になるのか。姉さんは腹は少し黒めだけど、人を簡単に信じたりと純粋……っていうか、鈍感な所があるし」
琥「『朴念仁』でスからね〜、元が!」
ア「それに志貴はなんか、一緒の意識を持った人は自分の分身って思ってるから殺したくないんだってよ」
琥「もしくは、お嬢さんはロアさんのコト好きとか……」「「「「それは有り得ない!!!」」」」
琥「……なんでみんな一緒に怒るかな(翡翠まで……/泣)」
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秋「……質問、いいか?」
シ「ん? さっきからどうしたんだぃ、秋葉くん。なんか暗くなっちゃって……」
秋「その……『プラネタリウム』で姉さんが……ん、だな……同級生の弓塚って男は、姉さんの、……」
ア「はー? 何言ってんだ弟、ハッキリ言えよ」
琥「あっ、わかった! 秋葉様気になるんスね、弓塚様とお嬢さんがキスしちゃった仲? っていうのがー!」
翡「―――っ!?」
秋「さっき誰とも付き合ってないっていう話したけど……コレって……」
シ「……くそっ、あの時もう少し早く駆けつけていれば僕が倒してたというのに…………」
ア「ざーんねん! 志貴とさっちんはキスしてねぇよ!」
琥「…………へ、やっぱそうなんスか?」
翡「―――(ホッ)」
ア「あったりまえだろー、俺という者がいるのにさー! ……というのも、するシーンで過去形になってないだろ。判りづらいかもしれないけど、やってないモンはやってねぇよ」
翡「では、……する前に、吸血鬼の線を殺されたのですね」
ア「そうっ! レンの見せた『夢』ではサービスで『した仲』っぽく書いてるけど、結局はやってない事にしといてくれ!」
秋「……しかし、それだと弓塚先輩は姉さんにイイトコまでいかせてもらって、後は捨てられたって事になるんだな……」
翡「―――いくらなんでも可哀相ですね。かといってされても困りますが、それだとやっぱりお嬢様は悪女説に……」
シ「弓塚くん、……といえばサブキャラクターの瀬尾晶くんの事だけど」
秋「……(ピクッ)」
シ「随分、瀬尾君と志貴ちゃんは仲良いみたいだね。しかも何度も二人っきりで会ってるみたいじゃないか。……アーネンエルベで」
ア「なんか金蔓ってカンジもするけどな。志貴、オゴリっぱなしだろ。金ねぇのによくやるよな」
翡「―――犬属性の為せる技ですか」
琥「あー、俺こんな話知ってるッスよ〜! なーんとお嬢さんは、瀬尾様と毎年デートしてるんすよ〜!!」
秋「なっ、なんだと!?」
琥「時には一緒にクリスマスを過ごす事になったらしいッスよ! ……かぁ〜羨ましいったらありゃしないっ!!」
翡「―――それは、相当仲が良くないと出来ないな……」
秋「……せ、瀬尾……っ! 今度会った時は八つ裂き……いや十七裂きだ……!!」
シ「えー、……秋葉くんが変な呪い言ってるけど、それ多分夏のお盆の頃も一緒にデートするんじゃないかぃ?」
琥「あぁ、よく知ってますね!」
シ「んー、外伝で思いっ切り其処が舞台の『夢』を見てたからなぁ。……しかし、少ない小遣いで某埋め立て地に行くとは、文学少女の鏡だね」
翡「―――文学、なんでしょうかアレは」
シ「文学だろうね。どんな形といえど、どうやら合体で出る程、経験のある物書きみたいだし……それなりに本出してるみたいだし」
ア「へぇ〜、志貴って作家なのか。スゲー!!」
シ「……莫迦は知らぬが仏」
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ア「そういえばよー、メガネー」
シ「……いいかげん『眼鏡』という呼び方はやめてくれないか。アルクェイド・ブリュンスタッド」
ア「んじゃカレーさ。志貴がさー、有彦って奴んちに行った時、変な金髪の馬みたいなガキがいたんだけど、それってお前の連れなんじゃないか?」
シ「……あぁ、セブンの事か。そうだよ、アレがあんな所にいたなんて僕も後々知ったけど……まさかあんな所にいたとは……」
秋「じゃあ、家出させる程の事を前にしてたという事と捉えて……?」
シ「いやいや、そんなに酷い事はやってないよ。ただ肉体改造させただけだし。……全く、セブンがいなくなったおかげで第七聖典が使えずにロアと戦う羽目になってしまって、コレは反省すべき事だね」
ア「はは、どうせ第七聖典なんて使っても俺に勝てねーくせに!」
シ「…………本気で殺すぞ」
琥「あぁ、連れといえばアルクェイド様の弟分のレン君って、よくお嬢さんの部屋に来ますね〜。相当気に入ったみたいッスね?」
翡「―――む」
秋「……翡翠にとっては『朝のライバル』か?(不機嫌そうに) しかし姉さんは窓から何でも入れるし……ったく、鉄格子でも付けてやろうか……」
ア「無駄だって。俺がかるーく曲げちまうから。でもレンは飼い猫としていい役はってんじゃねぇか。『癒し系』でいいだろ、そんぐらい」
琥「半ズボンは目の保養になるって言いますからね〜♪」
翡「―――時々お嬢様の趣味が判らなくなる……」
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ア「……あ、何か暗くなってきたな」
シ「うん? 結構話し込んだからね。そうだな、じゃあこの辺でオヒラキにしようか」
秋「……ま、ケーキのコトには特に触れず、食って飲んで話し合うってのは結構楽しかったな」
琥「えぇ、やっぱ本音トークっつーのもいいでしょ!?」
秋「……琥珀、お前最初と言ってた事違わないか」
翡「―――実に充実した時間でした」
琥「では〜、最後に定番『一体誰が悪いかでショウ』とかしますか?」
秋「……そんな事したってみんな『姉さん』って言うに決まってるだろ? やっても意味無いぞ」
ア「ん? なんだよみんなって……お前ら、志貴の事、嫌いなんか?」
シ「……いやぁ、嫌いじゃないけど。でも志貴ちゃんが可愛すぎるから悪いんだよ」
ア「あー、同じ事二回も言ってやがる。……事実だけどよ」
翡「―――ですが、間違ってはいません」
琥「でわでわ〜究極の質問にいきたいと思います! 正直お嬢さんは誰が好きなんでしょうか!?」
翡「―――兄さん? その質問は先でしたんじゃ……」
琥「いやいやー、さっきのは『結果的「if 姫」ではお嬢さんは誰とくっついたの? 答:誰とでも付き合ってません!』で終わっただけだって! 予測でさ、一体誰が本命なのかなーって!」
秋「……とりあえずあのバカ兄達は却下だろ!」
ア「うわぁ、まずは潰しやすい身内から潰しておくって事か……」
シ「じゃあ芽は潰しておこうか。……『蛇』は有り得ない。絶対に」
琥「でもそうッスかね? 確かに御三家(アルク&シエル&秋葉)様は思う存分イチャついてくれましたけど、乾様はいっつもイイトコでお嬢様を守ってくれてますし。四季とお嬢さんは一番仲良さそうに話すじゃないッスか。それにロアさんもキスされて脈有りだったし、弓塚さんがキスし損ねたって事は、……一番いい線までいったのはロアさんと翡翠だなー……?」
翡「―――っ!? 兄さん、なんで俺が……?」
琥「だってー、『午睡の夢』で抱き合ってたじゃんかー!!」
翡「あ、アレはシキが……!」
秋「翡翠! お前俺が外出てる時に何て事を……!」
ア「つーかそん時俺もメッチャロア助探しに頑張ってた時期じゃないか! 抜け駆けしやがって!!」
シ「……彼女が弱っていたあの時、一番傍にいられたのは君だったもんね翡翠くん。……自分が病気の時懸命に看病されたらそりゃ頼りたくも………なる、ね」
琥「しかも自分からお嬢さんを抱いちゃったんスよ! 我が弟ながらハラショー!!」
……。
翡「―――――――――――――――言いたい事はそれだけか」
琥「……ぁ?」
翡「馬鹿かお前ら誰だって相手がアイツじゃなくても人が倒れたら助けてやるのが普通だろ第一シキが弱ってた原因はお前らが変にアイツを振り回してたせいだろが化け物三匹+α自分勝手な解釈ばっかしやがってふざけんじゃねぇゾゴルァ!!!」
琥「……………………」
ア「……………………」
シ「……………………」
秋「……………………(ハッ!) その、翡翠。今のは…………」
翡「悪いがさっきのは撤回しないからな! ―――では、申し訳ありませんが先に失礼致します」
カランコローン♪(←帰りドア)
ア「……行っちゃったな」
シ「……えーと、琥珀お兄さん? アレが翡翠くんの『地』ってヤツですね?」
琥「……そういうトコッス。翡翠は反転……じゃなくて元に戻ると一番手がつけられませんからね。しかし俺、『+α』かぁ〜(泣)」
シ「その、秋葉くん。……当主権限とか使って無理に発言撤回とかさせないようにね。今日くらいは見逃してあげな……」
琥「兄貴の俺からも宜しく頼もうッス。師匠から受け継いだ本場の暗黒拳使ってこられたらマジで困りますよ〜」
秋「……なんだ、師匠って」
琥「秋葉様が知らなくても仕方ないと思うんスけど。翡翠は正式に遠野家使用人になる前、『お嬢様付き使用人の心得』を学ぶために何年か修行してきたんスよ。……両儀っていう古いお家で何年もお嬢様付きの使用人をやってる男性から……」
ア「……で、その人も暗黒拳の使い手ってワケ?」
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ア「……じゃあ、なんか最後ゴテゴテしちゃったけど、俺もそろそろ行くかなー。なんか随分話し込んじゃったし」
シ「それじゃあ、僕も失礼するよ。そろそろ巡回の時間だからね」
秋「……俺もそうしよう。翡翠とは、……普段通り付き合うから」
琥「頼みましたよ秋葉様〜、そんなに拗ねないと思いますんで。では皆さんお気をつけて! またの出番まで、さよぉならー!!!」
…………ちゃんちゃん?
END
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03.3.9