■ 後始末



 またいざこざを起こしてきたのか。
 言葉に出さずとも眼が細く笑い、からかいの色を帯びる。揉事などではない、とギルガメッシュはムッとしながら反論した。

「狗が我の言うことをきかなかったのだ」

 付き合うランサーも問題があるな。無駄に魔力を使うな。

「無駄に有り余っているお前には問題無かろう」

 会話は成り立っていなかったが、言峰の微かな唇の動きだけでどんな愚痴が零れかけているか判っていた。いつになっても言うことをきかないサーヴァントだ、と思っているだろうが実際声に出したら手におえない。だから言葉に表さないのだろうが、ギルガメッシュはそんなマスターの見下した考えなど知っていた。それぐらいの戯言に付き合ってやっているから主従内での揉事は起きない。
 いつになったら大人しくなってくれる。
 眼がそう言い笑っていた。最近気に入らない男のせいで魔力の消費が一段と多い。多少減っても不自由はしないが、万全でないと落ち着かない身のギルガメッシュは常にマスターに補給を求める。
 だからそれがどうにかならないか、無駄に魔を使うな、……最近それしかあの光の薄い眼が訴えていない。

「五月蠅い。……………………ん」

 不貞腐れたようだったギルガメッシュの表情が、僅かに動いた。白いシャツを捲り上げる指先が胸を弄ぶ。後ろから絡められた脚が、ギルガメッシュの股間を押し上げた。

「……んっ、…………」

 思わず先をねだるように押し付ける。後ろから伸びてきた手が服の上から撫で回した。
 仏頂面で体を起こすと、ギルガメッシュはシャツを脱ぎ捨て、ベルトを外した。ズボンまで脱いだところでシーツへと引き倒される。唇は上からなぞり掌は中に滑り込む。気持ち良いのか、溜め息をついた。

「ん……、は…………ぁ……」

 自身をゆっくりと舌先でくすぐってやりながら、指先を隙間に滑らす。暫くまさぐっていたが、どうにも脚が邪魔に感じ顔を上げる。ギルガメッシュが脚を持ち上げ、開かれた場所に指を辿らせた。ギルガメッシュ自身を、丁寧に舌で愛撫しながら。

「ん、む…………ぅ……ん……っ」

 まだ閉ざされた場所を、先をなぞり上げると熱い息を漏らす。弄ってやっているうちに、少しずつ蕾が解れてきたのを感じ言峰は一度離した。
 張っている部分を少し乱暴に揉んでやると、呻き声を上げて背を仰け反らす。そのまま促されるまま、ギルガメッシュは体を起こした。うつ伏せになって、臀部だけを高く突き出す。
 淡く開いている部分に唇を触れた。唾液の含んだ舌でなぞる。同時に、腹につかんばかりに反り返っている自身を激しく扱く。

「…………っ!」

 唾液を流し、ゆっくりと行き来する。中が緩むにつれ過敏に音がするようになりギルガメッシュの喘ぎも熱を帯びていった。

「く、ん……ぁ…………こ……言峰……ぅ……」

 反り立つものに手をやれば、我慢できなかった先走りより濡れていた。それに濡れた指先でもってゆっくりとギルガメッシュの中に侵っていく。

「ぅ…………、あ……っ!」

 異物を難無く受け入れられた。中を、段々と奥の方まで進める。中で指を動かすと、ギルガメッシュは苦しげに喘ぐ。震える部分に手を届かせ、指先で弄くりながら更に後ろ側にも手をつける。

「や…………っ………………は……ぁっ」
「足りないのか?」
「あっ……ぅ……!」

 明らかに濡れた声でギルガメッシュが呻く。奥に押し上げてやると、中が跳ねた。すっかり馴染んだ指をゆっくりと行き来させてやると、更に激しさを求めるように腰が揺れる。
 指でも素直に絡み付いてくる。もう前戯はいらない。……が、楽しさについ焦らしたがる。
 何度か行き来をして言峰は指を引き抜いた。腰を押さえ付け、湿っている部分に再び舌を触れる。

「ひ、ぅ…………ぁ」

 わざと音を立てて嬲る。手を滑らせてみれば何度も触れたその場所は硬く反り返り、締まり無く涎を垂らしていた。それでも生温い愛撫を続行する。口が緩く蠢いている場所に唇付けるとギルガメッシュは腰を上げた。元から覚悟を決めていたのか、急かすように押し寄せると、……とっくに硬くなった部分を押し当てる。そのまま、一気に貫いた。

「ぐ、……っ、ぁ…………!」

 悲鳴が歓喜に滲む。全部入り切らないうちから腰を揺すり始め、少し苦笑した。が、すぐに昂ってきた己に促されるように、腰を抱いて打ち付け始める。

「ん、……あっ、あっ……!」

 何度も充分に慣らした。滴るほどに濡れたその場所は、熱く、熱く締め付けていた。突き刺す快楽。強い衝撃に唇を噛み、切なげに息を漏らす。

「……っ………………」

 何度も息を飲み、吐く作業を繰り返した。そして少し遅れて、―――回路の繋ぐ真の電子音が耳に響かせる。

「………………」

 少々遅すぎた魔術回路の接続と思ったが、満足げに息を呑む姿を見る限り構わないらしい。
 元々満たす必要も無かったぐらいの魔力の穴だ。求めているギルガメッシュ本人がそれでいいのだから文句は言えまい。

 放っておけば更に無駄遣いするだろう。そうしたらまたこの時間がやってくる。
 まだ物足りない気がしたが、そう遠くない次の行為を考え、言峰は濡れたシーツへ全身を手放した。





 END

 05.10.1