■ 関係
熱い息がシーツに当たる。
僅かに白布を沿り言峰の肌に達した。到達した頃には冷息。
温かみの残らない二人の関係を巧く表現しているようだと吐いた主は想う。
口付け一つ落とし、覆い被さる。露出した背骨をなぞる。体勢が崩れぬ様しっかり支えながら口付けを落とす。ぴくん、と可愛らしく肢体が震えた。
じくりと全身が痛み、ギルガメッシュは小さく悲鳴をあげた。
四つん這いのように支えていた膝が崩れそうになったが、そこは手が許さない。抑えつけられ上半身を起こす。背に冷めた体が胸板が当たっていた。
放り出された上着、シャツは完全には脱ぎ捨てられていないがもう裸体に近い。その姿が王には恥辱的で悔しい。膝を折ったままでは辛いと判断し、彼は足を前に放り出した。
胸から顎に手があがってくる。
暖かみの無い肌。熱が移動する。快感を与えている側、与えられている側の熱の行き来が激しく酔わせる。体温だけではない、他物と自身を行き来するモノを感じ、ギルガメッシュは回路を開いた。
流れていく魔。
継ぎ足されていく欲。
古くから伝わる儀式、それこそ滅した時は破滅の待つ当然道理な行為。魔を補ってなければ生きられない使い魔であれば尚更。
……それなのに悲鳴が上がる。無意識に上がる。十分な精に強すぎる衝撃。少しでも解消するように叫ぶ。
言峰の指が唇に掛かる。
ぽろり、音と共に零れた。精と同じくそれは白いシーツに落ちて染みを作っていく。手の骨が角張る。強く握り締める。ぐしゃぐしゃに歪んだシーツ。そんな痛々しい指を意味もなく自分のものと重ねた。
衝動を耐えるために噛み締めた唇から、濡れたものが零れる。
落ちたのは血と、体液。涙もあり、名前も同時に零れ出す。
零れる姿を見てどうしろと言う訳でもなく。やがてくる衝撃のバウンドにするようにこぼれ落ちていく音の数を増やしていった。金の髪がぱらぱらと舞う。身体は熱い腕に抱きとめられる。ギルガメッシュは腕も伸ばした。その手先にしっかりと掴み、最後に、更に強い精を吸い取る。
燃費の悪い躰だ。
十分に満たされながらも悪態突いた。魔が無ければ動けないと根本的な問題だが非常に疲れる。非常に面倒臭い。重要な体温を貯め込む儀式でも全身につく汗に機嫌は損ねて行くばかり。
自身で汚れたシーツから離れ、別のベッドに腰掛けた。
色の戻る赤。力の有る万全の王の眼。
最期に口からの回路から満たされ、全てを切った。瞼を下ろす。そこにはベッドの上で淫れる姿は何処にもなく、何も手出す事無い最強のサーヴァント。鋭い紅い眼は、主でも手をつけられぬ獣と化す。目を瞑る姿は非常に幼いものだが、……マスターはベッドから離れた。
例え幼く眠る姿でも魔を備えた青年の力は計り知れない。自分はもう必要ない。必要な時は又。その時はその時に考え、又肌を合わし体温を交わし精を寄越せばいい。
只それだけのこと。二人は、只それだけの関係。
END
05.9.29