■ asks.



 ―――まるで女のような事を言うが…………

 その通り、彼はまるで女性のような事を言う。

 ―――君は私がいなくなったら君はどうしてくれる?

 私のサーヴァントのくせに、
 有り得ない事を可笑しそうに彼は言う。

「どうして欲しいの」

 馬鹿にして、笑ってやる。
 無い筈の『もし』を言う奴は本当に馬鹿だから意地悪に答えてあげない。

 ―――私は君に訊ねているんだが?

「じゃあ命令ね。先にアナタが私の質問に答えなさい」

 ―――そんな事に令呪は使うな。

「使わないわよ。そんな馬鹿な事する訳ないじゃない」

 ―――馬鹿と自分で認めたな。

「なによ」

 そんな質問を彼は、必要以上に『その質問』を繰り返した。

 時と場所を変えて
 状況と心情を変えて

 何度も、馬鹿なくらいに馬鹿な質問を何度も。

 ―――私がいなくなったら…………

 何度も訊いてきたから、私も何度も聞き返した。
 ついには「本当に使うから」と脅して
 もっと沢山家事を頼む地獄を見せながら口を割らせる。

 返ってきた言葉は、…………やっぱりどうしようもなく莫迦な言葉だった。

 ―――君は、君のままでいてほしいな。

 そんな、在り来たりで女々しい言葉……。

 ―――君らしくしてくれるなら、何だっていい。

 ―――悲しむ事もなく、そんな時間はいらない

 ―――守って貰える存在がいないのだから、自分の事だけを考えて……



 ―――自分が勝てる事だけを考え



 ―――生きる事だけを



 ……ついに口を割った彼。

 けれど意地悪な私は、彼の質問にはずっと答えなかった。
 その後もずっと、……別れるまで質問してきたけど
 やっぱり答えてあげなかった。

 そして、彼は裏切って去った。

 今、私は彼に問われた何かをする立場にいる。
 そして、私は今考える。

 私はどうするか。
 私はどうするべきか。

 私はどうすれば、彼を喜ばせられるのかを―――。

 ……考える。

 彼が求めていた答えも。
 自分らしい答えも。

 ―――どちらを導き出せるかということも。

 考える。
 意地悪な私は、ずっと訊ねられてきた言葉を一つも考えてやれなかった。

 だから時間を掛けた分

 精一杯

 彼が望む答えを出そう。

 ―――彼が再び私の元に現れるまでに。





 END

 04.9.12