■ To the Light



―――あ、こいつ俺のライバル決定

クラスの奴等がソイツを嫌っていた理由がわかって

俺に対抗できるだけのヤロウがいたって嬉しくなった

だからだろう、奴とずっと、付き合いたくなったのは



「―――え?」

眼鏡の奥の少し潤みがちな目が訴えた

いきなり、意外な事を言ったんだった

最中なのについ手が止まってしまう

「おい……焦らすなよ…………」

熱い息をしながら

意外な事を訴えた

だが、ソレは壊れかけの耳に純分に入ってきてはくれなかった

「―――すまん、聞こえなかった」

「ッ………………もういいよっ」

そう言って抱きついた



おかしいぞ、お前

いつもおかしいってわかっていたけど

最初見た刻から変だとは思ってたけど

なんで周りが嫌いのか、って悩んだ時から狂ってるってわかっちゃいたけど

まだ出逢ってちょっとしか経ってないけど

それでも異常なお前を理解しているつもりだけど



どうしてこんな時に



「ぁ…………」

随分甘い声を吐いてくれる

こんな声は初めてで

勿論こんな事をするのも初めてで

……自分でも何故、初めてにこんな変人を選んでしまったのだろうか



―――提案したのは俺だけど、

―――誘ってきたのは奴だろう?



「痛…………ッ!」

さっきまで俯せにシーツだけを握っていたけど

今ではお互い抱き合うカタチになっている

そんな優しかっただろうか

どっちがこんなコトしたいとイったのか



「は、ああっ…………」

「やべ、俺の方間マジになってきたみたい……」

熱い息が肌にあたる

感じたこともないゾクゾクとした感覚は襲う

聞こえる筈のないドクドクとした他人の鼓動が聴こえる

やっぱり本やビデオけじゃ保健は習えねぇな、と思う



「なんだよソレ……お前はヤル気、なかったのか……」

「いや、言い出したのは俺だったな」

見開いた目から雫

肉を裂かれる痛みか

何だか悪い事をしてしまった気が



するだけ



「―――んっ……」

背中にまわされた腕がきつく

息が出来ないくらい

苦しそうに眉を寄せ

本当は息なんてしてないのか



初めて見た時の『死にかけ』の奴を想い出した



「―――死ぬなよ」

「ハッ…………最中に死ぬって?………………それだけは、免れたいね……」

「はは……俺もこんなんで殺人鬼になりたくねぇな」

……お前は殺人鬼ぽいけどさ

そう言えば、奴はまるで図星のように口を閉ざす

そんなに冗談が嫌いだっただろうか



それとも、本当だったり?

なんて馬鹿なコトを思い付く

らしくねぇ、と呟いて抱きしめてやる



「―――お前も……壊れかけか」

……苦しければ話さなければいいのに

息を殺しながら、噛み締めながら

声を押し出すように、問う

「あぁ? それっぽいな、お前程じゃないけど」

お前は壊れかけっていうより

既に壊れてます、って感じだしさ

……



だから不安になる

違うって言ってくれればラクなのに



「あ、……痛ぇってば…………ッ」

ギュッときつく抱き締め

もう少し締めれば俺が殺人者になるくらし締めてみて

生きているまと実感を味わう

「―――悪趣味」

「どっちが」

生きてるか確認しなきゃならないくらい、不安か

ああ不安だ

だってお前、全然言ってくれないし



「もう一度さっきの言ってくれよ」



……幻聴か

多分そう

確かに、壊れかけの耳で聞いたけど

……おそらくマボロシ

言うときは本当に壊れた時くらいか



じゃあ壊そうか

壊して聞いてみようか



お前が、どう想っているかというコトなんて





END

02.7.28