■ 男女



 ドミニオンには赤毛の美人がいる。
 背も高く、胸も大きく、色気のある目に綺麗な声は女性の合格点を全てクリアしている。本人の性格はややひねくれ気味だが、深い所まで知らないのが大半だ。何処に行っても男性方にはアイドルと呼ばれるだろう美人がいた。

 そしてもう一人。
 男性で飛び抜けた美形がいる。
 背は平均的だが鍛え抜かれたと言った風の身体に金髪碧眼、端正な顔立ち。口が悪いがそんな事を知っている者はまずいない。女性には比較的人気のある美形がいた。

 その二人が並んで立っていれば、まるで芸術画のような美しい絵になる。
 艶やかな紅い長い髪を靡かせて笑う美女に、碧の宝石の様な眼を揺らしながら不適な笑みを浮かべる美男。
 絵になる二人、揃う事は滅多になかったがそれを目撃出来た者は幸せになれる―――なんていい加減な伝説まで出来てしまった程だった。

 ―――本人達のひねくれ具合をよく知る者立ちにとっては、そんな伝説は笑い話にしか聞こえないが。

 美女から見る美男は、異質な【物】だった。
 理解出来ない所が多すぎる。

 あんなにも美しい外見を持っているのは良い。しかしあの外見が気に入らないのもあった。
 美しさに嫉妬している訳ではない、―――もっと美しくなるだろうに何もしない所に怒りを感じているのだった。

 手入れという言葉を知らない。オールバックに決めているのは彼なりのお洒落だと思うが、ならどうしてもっと良い物を使わないのか。
 無駄に筋肉があるのもアンバランスでどうかと思う。尚かつ、清潔さというものもやや廃れ気味だ。どこをとっても微妙に惜しい。
 体格も最高を目指す美女にとって男の中途半端ぽさが堪らなく嫌だった。
 只、年下に対して面倒見の良い所は惹かれるポイントでもあった。元々彼女は「守ってくれる」人が好みだったので基本的には嫌う要素を彼から見つける事はなかった。

 一方、美男から見る美女も異質だと思っていた。

 見た感じ、気の強そうな女性だと思った。目つきがそれを語っていた。別に口調が厳しかったや直接怒られたのではない、時々見せる睨みつける眼が、身の毛の弥立つ程鋭い事がある。一応戦場にいる彼だが、美女から発せられるオーラはプロの殺気だとも思った程だ。それなのに、いつまでたっても昔の男を気にしている所がある。通りすがりで彼は聞いてしまった。宇宙を眺めながら「……キラ」と呟く女性の声を。気の強い女性だと思っていただけにそのギャップはどうかと思う。勿論それだけで嫌いはしない。
 男だから女神のような美しい体型に見とれる事もある。元々気の強い姉貴肌の女性は好きだった。何せ自分が兄貴肌だから……というのは多分理由に入っているだろう。

 とにかく、美男も美女もお互いを悪くもなく……まぁ良くもないが普通に接している。特に深い気持ちで付き合うつもりはどちらもなく、良い風な『友達』としての付き合いをしていた。しかし、そんな姿を周りは黙って見ている訳がない。

 それは、……二人が『友達』でなければならなかったからもある。

 ……む〜。
 二人が話をすると、熱視線に襲われるからだ。
 ……むむ〜。
 最初に視線に気付くのは美女の方。流石女性は勘が鋭いと言うだけの事はある。

「……見てるわよ」

 ごく普通の、友人同士がするような話題を中断し、若干鈍めの男に教える。

 ……むむむ〜。
 視線が送られている側を向く。
 男が向いた側には、……男の真の恋仲(×2)がいた。
 そこには、闇のオーラが渦巻いている……。

「……見てるな」
「行ってあげなさいよ、寂しがってるでしょ二人とも」
「また言い訳すんのか。アンタとは只の友人だから……って」
「ちゃんと言ってあげなさいよ、『愛しているのはお前達だけだ』ってね。……特にワカメの方、あの呪い方は夢に見そうだわ」
「ったく、……何十回言えば済むんだか」
「何度も聞かなきゃ気がすまないんでしょ。でも私、人で恋路で友人無くすのは嫌なのよ。アンタは気に入ってるんだから……」
「あぁ、俺もアンタの事は―――」
「言わない方がいいわよ? ……嬉しいけど『嫌い』って言っておいた方がいいんじゃない?」
「……」

 美男は美女と別れた。
 友であれば会話もまたの機会にすればいい話。

「……オ〜ル〜ガ〜……」
「……オルガぁ……」
「あーわかったよ、俺はあの女の事は嫌いだって。―――スキなのはお前達だけだよ」

 今日もまた、伝説は深く広がっていく。

 実はあの二人はデキていて、あの笑顔の会話は戦後の幸せ家族計画を練っているんだ、とか。
 美女は美男の弱みを握り、下にしき、奴隷のように扱っている……その姿は女王と呼ぶのに相応しい、とか。
 美男は美女を遊びにしか思っていない、美女が宇宙を眺めながら涙した所を見た事がある者は、男が美女の弱々しい一面をからかっているにすぎない、とか。

 どれも本人達にとってはお笑いにしかならず、
 本人達を知る二人にとっては腹立たしい噂でしかなかった。



「オルガは僕達のものなんだよ!!」
「誰だよー、オルガの変な噂をたてる奴はー!!」





 END

 ……オルフレ大好きです。ノーマルではフレイ大応援。オルシャニ、オルクロを始め、オルフレ、オルナタ……オルガ攻はどれも好物です! アズ受は苦手なのでご遠慮ですが雑食です。 04.3.15