■ inバス



「オルガ〜……俺、もう出る〜」
「駄目だ」

 風呂釜から出ようとするシャニの腕をずっと掴んでおく。
 面倒気な顔のまましぶしぶ体をお湯に沈めるシャニ。

「僕も出るー、見たいテレビがあるしさー」
「駄目だって言ってるだろ。ちゃんと暖まってから出ろ」

 クロトにも同様にお湯の中へ引きずり込む。クロトもシャニも、生理的なものには深い関心を寄せない。食事も特別取るという意識もないし、清潔感も言いつけなくては直ぐに捨ててしまいそうだ。
 二人のことを思い、保護者であるオルガ(いつのまにか公式設定)は今夜も喉をならす。

「う〜、テレビ始まっちゃうだろ〜っ! ちゃんと体洗ったし〜!」
「さっき入ったばかりだろ。10秒じゃ暖まらない。肩まで沈めろよ」
「もうあったまったよ! ……脱・出!!」

 オルガの腕を振り払い飛び出…………そうとしたが、あえなく失敗。
 勢いよく飛び出したら滑りやすいタイルの上で半回転し、頭からお湯に再会した。

「……クロト、うざ〜い……」
「ぷはぁっ!! シャニ、お前顔真っ赤だぞ少しは反抗しろって!!」
「……オルガはもっとうざ〜い……」
「ホラ、シャニもそう言ってるだろ!!」
「…………仕方ないな。じゃあ30秒数えたら出てもいいぞ」
「12345678……!」
「早すぎだ! ちゃんと『1秒』で数えろ!!」
「面・倒! オルガだっていつも30秒も数えてないだろ!!」
「…………どーはドーナツーのーどー…………」



 ……と、シャニがある歌を唄いだした。

 曲名は『ドレミの歌』。
 確か、丁度1番が30秒ある曲……だった。

「ほら、シャニはちゃんと30秒数える気だぞ。一緒に歌え」
「むぅ〜……わかったよ、いっしょに唄おうシャニ」
「ん〜……れーはレモンのれー……」

 肩まで二人を沈ませて、オルガは一息つく。



「みーはミイラのみー」
 ――― え ?

「ふぁーはファイトのふぁー」
「おぃシャニ、さっきの間違って……」

「……そーはレミファソラー……」
 ――― 音 階 ?

「……らーはラフレシアー……」
 ――― 鉄 仮 面 ?

「しーはシーチキンー」
 ――― 何 故 魚 肉 !?



「さぁ唄いましょうー……」

 ……。

「30秒経ったよ……」
「…………普通の歌詞で歌え」

「えっ……。
 なに……ドレミの歌にフツーもあるの……?」
「シャニ、今までそれが本物って思ってた……?」
「……どこが違うかサッパリ」

「子供向け歌謡に ラ フ レ シ ア が出る訳ないだろ」
「(゜ДY〉………………〉(  ゜∀Y)つ〃∩ ヘェー」



 ―――とりあえず、サウンドオブミュージック借り直すとするか。





 END

 04.3.11