■ もう2月後半
ゲームも飽きたし(直ぐ恋しくなるけど)シャニも寝てるし、つまんないからオルガでも構おうかなー……
「ねーオル……」
……と思っていた時、盗み見たオルガの顔は、……鬼のような形相だった。
思わず声を掛けられないでいる。途中まで上がった手も頭をかく方に回ってしまって、一瞬だけ向けてしまった目もあちこちに飛び回る。
……オルガが、怒っている。
何で怒っているか判らない。まだ今日は何も悪戯なんかしてないし。昨日の悪戯はあっさりバレて話は終わった筈だし。シャニも悪戯は何一つしてないと思う。(大体悪さしても僕にだけは教えてくれるし) じゃあオルガは別の事で怒っているのか……でもどうしてなのか知らない。
何でそんなにイラついてるんだよ……? 貧乏揺すりなんかして、眉を顰めて、歯はギリギリ軋ってみたりして。
身体全体から怒りのオーラを漂わせていた。オルガを怒らせる原因は……何があるだろう?
オルガの厳しい視線の先には、一枚の紙がある。
……カレンダーだ。もうすぐ月も終わりになろうとしている、少し日付の少ないカレンダー。
カレンダーと睨めっこしてるぐらいだったら、僕と遊んでほしいんだけど……
「……さっきから何ジロジロ見てるんだ、クロト」
突然、オルガの方から名前を呼ばれてビクリと身体が飛び跳ねる。
視線は僕の方へ一切向けず、声だけを掛けられて驚いた。……その声も微妙に怒っている。
「あ……べ、別に!」
咄嗟に何でもないと答えるが、……本当は『何で怒ってるんだよ?』と尋ねたかった。
こんなに堂々とオルガが怒っているなんて……そりゃ何度もシャニと一緒に叱られた事はあったけど、何だかその時とは比べ物にならないものになっている気がする……。
カレンダーを見続けているオルガ。
そのオルガをちらちら見ている僕。
……オルガは「別に」から何も言ってこない。けど、それが逆に気になって仕方ない。
困っている訳でも、助けを求めているようにも見えない。
一体オルガは何に対してそんな怒りを抱いているのか……
そこまでしてしまうものはなんなのか……
オルガ自身の言葉で言ってくれなければ、一生判らないだろう。
「――――――クロト!」
「え、な、なにっ!?」
突然のオルガの大声。身体が強張る。思わず心臓が走り出してしまった。
ちっとも僕の方へ向けてくれなかった目も今度はちゃんと向いている。
意を決したような、そんな目で
「 甘 い 物 好 き だ よ な ―――!?」
……と叫んだ。
……。
……あ?
何で、甘い、もの?
「う、うん僕はチョコとか好きだけど……シャニ程じゃないけどさ……」
お菓子系を始め甘い物は嫌いじゃなかった。で、シャニは味覚がおかしいから甘い物、辛い物何でも食べる。無表情で何でも食べる。……嫌いだったら食べないから、きっと好きなんだろう……。
「じゃあ何で食いたがらない? 食べたくはないのか?」
「う……? 嫌いじゃないんだから食べたいって思う時もあるけど……」
第一、食べ物が食べたい食べたくないは好き嫌い関係なく、その時の勝手だと思う。
そうだって誰もが判る筈なのに、……筈なのに……。
「そうか、じゃあ食いに行くか!」
「え、その、なんで……?」
「今月食ってないからな!」
……。
今月……?
今月って言われてついカレンダーを見てしまう。
今月は……、まだ2月だけど……何で甘い物……。
―――あ。
「オルガ…………もしかして、チョコ欲しかったの……?」
「シャニ起こして外出る準備しろよ! 俺は先に待ってるからな!」
僕の問いかけも聞かずに、そう投げ捨て風に言い放つと、オルガはさっさと外へ立ち去ってしまった……。
「……チョコかぁ……」
そんな物買う暇なかったし、そもそもバレンタイン自体忘れてたし……全然、興味なかった。シャニも何も言わなかったから同じだろう。……存在を知らないという事が無い限り。
でもオルガは違った。
少し、期待していたらしい。
―――僕たちから貰えるチョコレートを。
……これだから夢見がちな文学青年は……。
「……て、ちょっと待てよ! 僕がシャニ起こすなんて無理だよー!!」
END
(……バレンタイン、何も更新出来なかったのであえてネタでやってみる。まだ渡しても食ってもいないのにバレンタインネタです。よくあるお約束風味で「オルガ〜、俺達を食べて〜」「献・上!」でも良かったのですが……チョコレートプレイ万歳。……つか、お題に従ってなくてすいません。兄として、恋人としてチョコを求める……ということで!←逃)
04.2.25