■ cry



気づけば真っ暗闇
僕は其処に立っていた

いつから此処にいるのか
どうしてこんな所にいるのか
そもそも此処は何処なのか僕には解らない

目の前は暗くて
頭上も足元も何も見えない

此処は静かで何も無い場所
うるさい場所は嫌いだけど
此処は静かすぎて不気味だった

暗くて何も見えない
けれど僕自身の手と
あの明るい髪の色は暗闇の中でもしっかりと見えた

オルガだ

あの後ろ姿は間違いなくオルガだった
何も無い暗闇の中しゃがみこんでいる

こんな暗い所じゃ落ち着いて本も読んでられないだろうに
オルガは其処に座り込んでいた

でも近寄って見てみると
本なんか持っていなかった

じゃあ一体こんな所で何をしているんだろう?

「オルガ」

直ぐ後ろに立って声を掛けてもオルガは振り向かない
ずっと一人で何かを言っている
でも独り言にしては声が大きすぎるし変な奴……ってからかおうとした
けどオルガはしゃがみ込んだまま
何かを叫んでいる

「オルガ」

もう一度名前を呼ぶ
まだオルガは振り向いてくれない
そのオルガもよく聞いてみると
今の僕みたいに何度も「クロト」と名前を呼んでいた

それは真後ろに立っている僕に言った言葉じゃなかった

「オルガ」

もう一度
名前を呼んでも目の前のオルガの耳には届かない

僕は此処にいない存在なんだろうか
それとオルガの方が違う存在なんだろうか……?

「……オルガ」

後ろを振り返らない
俯いて、何かを見ながらずっと叫んでいる

顔がぐしゃぐしゃになりながらも
ずっと僕の名前を叫んでいる

僕が後ろで精一杯声をはっているのに
オルガは振り向いてくれない
ずっと僕の名前を呼び嘆いている

そっちの方向には僕はいないのに泣いている



……泣いている?



薬が貰えなくて苦しくても涙なんて見せなかったオルガが?
小説に感動したって口では言っているのに涙は流さなかったオルガが?

何で僕の名前を呼ぶ
それだけの事に泣いてるの?



どう、して?



「クロト……ッ! 目を……あけろよ…………!」





意味の判らない事を口走っている
ずっと泣いていたオルガの身体は力無く崩れていき倒れ

……血だらけで倒れる僕に涙を零した





END

(ウチのオルガはどんな感動的な小説でも泣かないです。
某オフィシャルブックで涙流してたオルガは認めません。いやアレも可愛いですけどね……オルガは普通に泣かないキャラだと思うんですが。
逆にクロ&シャニはびーすか泣きそう。それを宥めるのがお兄さんオルガの役目ということで)
04.1.30