■ Do you love me? OxC
「オルガ。僕の事好き?」
その質問を聞いたオルガは心底驚いた顔を向けた。
ただ好きかどうか質問しただけなんだしそんなに驚かなくていいのに。
質問したクロトも間違った事を言ってしまったかどうか心配になってしまった。
思い返しても可笑しな事は言っていない。一言、『今抱いている奴は嫌いなのか』……たったそれだけなんだから。
「なんだよ、その顔はー……」
「……こんな事しておいて、何言ってんだ?」
眉をひそめてクロトが言い、それにオルガは呆れたようなため息。
それと、逆に質問してくる目を返した。オルガが不思議そうにこっちを見ている。
…………一心にその視線を受けている事に、クロトは幸福を覚えていた。
「別に、聞いてみたかっただけ」
オルガから離れて息を付く。
……行為からまだ時間もそんなに経っていない。身体にはオルガの体温が残っている。
素肌にシーツが絡まり、とても気持ちよかった。微かに残っている彼の息を一人で味わっていた。
「……別に、か」
オルガは一息つくと、離れた二人の位置が元に戻った。クロトの腕を引き寄せて、唇を無造作に重ねる。
「ん……」
目を瞑って応える。触れては離れる、その繰り返しの行為はオルガに主導権を渡してある。
どんな事をしようと、―――クロトは幸せなんだから。
クロトの身体の上にオルガが覆い被さり、―――何十回目かのキスが終わる。
「……苦し、い……」
最後のキスの終わった後にクロトは呟いた。口の中に残る苦さに顔を顰める。
二人の口の間には、唾液の糸で繋がっていた。それをオルガは舌で絡め取る。濡れた舌がクロトの唇に触れて、優しく舐めた。息も苦しい長い口づけにクロトの頬は微かに赤く染まり、瞳は少し潤んでいた。
熱い。溺れそうな程激しい波が押し寄せてくる。
何度も求めてきたし、何度も応えてきた。それにずっと満足してきたし、今もクロトのそんな目を見ていると嬉しくなってくる。
―――素直に嬉しい、だなんて感想は言えないけれど。
オルガはクロトの首に腕を回し、額をくっ付けて顔を覗き込んだ。
「『コレ』だけじゃまだ足りないっていうのか? なんならもっとヤるか?」
オルガは、クロトの上でからかうように笑う。その言い方に、ムッと顔を顰めた。
「こっちが質問してるんだから、答えろよ!」
上に乗っかっているオルガを子供っぽく睨みつける。オルガはそんなクロトを上から見ながら笑うだけだった。
答えようともしない、バカにしたように笑うオルガに腹が立ってクロトはオルガの胴体を蹴り上げた。
「ガハッ! ………………くそ、大人してりゃ可愛いのにバカ!」
「いつまでも乗っかってるからだよ! いいかげんおりろ……ッ」
オルガの身体をどけようと懸命に押すが、上から降ってくる強さには勝てない。
10cm違う体格差にいつもクロトはどんな場面でも負けていた。それが嫌でこんな風に反抗しているのである。
怒ってぷいっと横を向いて顔を背ける。が、両手に頬を掴まれ元の所に戻され……
「痛ッ! 放せバカ……!」
……あっという間に、キスされる。
さっきのキスよりも更に強く、更に深く―――。
「………………なんで、今更そんな事聞くんだ?」
オルガは唇が触れ合う位置で見つめてくる。あまりに近すぎて目が痛い。……目眩がする。
「……だって……、―――オルガから聞いた事ないし」
目がまた泳ぐ。オルガの碧の目を直視していられなかった。
すればする程呑み込まれてしまいそうで、正常な精神を保てなくなる。
そうなったら辿り着く答えは1つ――――――今の今までしていた事になる。
「はぐらかすなよ。…………いっつも……僕の方から好きだとか……キスしたいとか言うけど、……オルガは言ってくれた事ないじゃん」
キスしたいと言えばキスをしてくれるし、
抱きついた時には抱き返してくれるし。
そして今も、こんなバカな事で甘えればずっと見つめてくれている。
―――答えなんて、聞かなくても判ってはいる。
けれど。それでも。
たまには、愛する声で愛する言葉を聴いていたい、と想った。
「………………バーカ。何でそんな恥ずかしい台詞言えるんだよお前は」
またバカと言って、上から包み込むようにクロトを抱き締めた。
そしてとろけるように甘い声で、
呟く。
耳元で聞こえた声にクロトは肩を竦め、瞼を閉じた。
「………………安心した」
「そうか。じゃあもう一回するか」
「む……珍しくサカってんのー?」
「うるせぇバーカ…………」
目と目が合った。碧の目を見つめてしまって、また精神が堕ちていく。
絡め合えば暖かい熱が伝わってくる。
その熱にまた溺れ、抱き寄せてキスをする。
何十回、何百回目かのキスを交わした。
END
オルクロ編。 03.8.5