■ Traveling!
  「happy life...?」をお読みになった後にどうぞ。



 ―――時は4月。クロトがこんな事を言いました。

「おっさんー、ゴールデンウィークはどこか行かないの??」
「クロトは何処か、遊びに行きたいんですか?」
「うんっ、お休みがいっぱいあるんだから、どこか行けたらいいねーって……シャニも言ってたからっ」

 ねぇ、行かないの? もう一度、二度、何度もクロトは聞いてきます。子供にそう言われて断る理由が何処にあるでしょう。

「それでは、クロトの行きたい所にしましょう。何処へだって連れて行ってあげますよ」
「ホント!? じゃー、オルガとシャニにも相談してくるー!!」

 嬉しそうに笑って、クロトは2人の所に走っていきます。どうクロトは言うんでしょうね、それよりクロトはちゃんと2人に説明できるんでしょうか……。

 そうです、もうすぐ大型連休。何処かに行かなければならないと言っても良いこの休み。彼らは、楽しく過ごせるでしょうか―――?



 愛用の(ちょっと高級感の漂う)車をかっ飛ばして遊園地に向かいます。いつも運転してくれる人はお休みで居ないので、自分で運転しています。数十年前に取った免許での運転―――大分ご無沙汰してました。でも大丈夫です、事故ってしまうなんて馬鹿な真似はこの僕がする訳ないじゃ……なんて僕の自慢話をしても楽しくなんかありませんね。もっと楽しい事が、今日から沢山出来るのですから。

 今日からマイサン達とお出かけです。小さなクロトとシャニは保護者が居なければ何処かに遊びに行ってはいけません。可愛い子には何かをさせろという言葉もあるようですが、それでもまだ2人には早すぎます。
 一人、お兄ちゃんのオルガは……もう僕なんかいなくても大丈夫でしょうが、オルガだけ旅をさせたら金魚の何かのようにくっつくオマケがあります。クロトとシャニと置いてオルガを旅行する訳にはいきません。その逆も然りです。
 とにかく、……4人で楽しく遊園地へ行くことになったのです。

「……くー……」
「すー…………」

 旅行に行きたいと提案したクロトは、後部座席でぐっすり眠っています。長時間車に乗っているのでそれだけで小さな身体には疲れてしまうのでしょうか。一緒にシャニも寝息を立てていました。オルガを挟んで―――。

 残念な事に、助手席に誰もいません。運転の間、話し相手がいないのは悲しいですね。
 艦長さんも誘ったんですが、丁寧に断られてしまいました。彼女もGWぐらいゆったりと暮らしたいでしょう。実家に帰るとかも言ってましたね。命令ではないので連れてきてはいません。

「……んー……」
「……すぅー」

 ……でも、静かに眠る二人の邪魔もできませんし。静かに遊園地までの道を運転します。これは最高の車ですから、雑音なんて一切しません。車の中でもベッドになるんです。

 はぁー、それにしても……羨ましいですねぇ。オルガの両隣には、クロトとシャニが眠っています。
 オルガを枕にして…………あんな体勢辛いと思いますがオルガ曰く『いつもやっているから』で何も文句を言いません。
 その中央にいるオルガは起きていました。が、特に何もしているというのでもなく、窓の外を眺めています。彼の趣味の読書も、車の中では酔ってしまいますから出来ませんし。躰を動かしたら、幸せそうに眠っている2人が目を覚ましちゃいますしね。じっと2人を支えているのも疲れるのでは………………

「オルガぁー……っっ!」
「……?」

 ―――突然、シャニが大声を出しました。
 ミラーで確認してみると、……シャニはまだ目を瞑っています。寝惚けているのでしょうか、……おそらく寝言を言ったのでしょう。オルガも少し変な顔をしますが……

「……」

 オルガは何も言わず、シャニの頭を優しく撫でてやりました。

「おる……が……」

 撫でられて、嬉しいのでしょうか。眠ったままなのにそう言っているように、シャニがふわりと笑いました。
 そして、より深くオルガに寄りつくのです……。クロトはまだ大人しく寝息を立てています…………。何とも微笑ましい絵ですねー。ずっと見ていたいくらいです。

「…………おっさん、前向け」

 じっくりミラーで覗いている僕に、気付かれちゃいました。そうですね、運転手は前を向かなきゃいけません。忘れるところでした。



 そんな光景を何度も繰り返しているうちに、ついに到着しました【フジキュー】。クロトが行きたいと言った遊園地。3人で相談して此処になったようです。

「オラァッ、起きろ!!」
「うー……?」
「いたーい……」

 オルガは車が停まった途端、2人を叩き起こしだしました。ぐっすり寝ていたのに起こされて、シャニは思いっきり顔を顰めました。何も殴らなくてもいいでしょうに……。オルガは優しいのか乱暴者なのかいまいち判りませんね。

「わ、わー……見ておっさん、ジェットコースター!」

 叩き起こされたクロトは、真っ先に遊園地から飛び出しているジェットコースターを見ました。そして目を輝かします。

「えぇ、ジェットコースターですね……」

 騒音と、先の人の絶叫が遊園地の外なのに聞こえてきます。……僕は好きになりませんが、遊びに行きたがっていたクロトは、遊びたくてたまらないのでしょう。

「おっさん! 早く行くよ!!」

 あーはいはい。クロトが急かすように手を引いてくれます。一方オルガは、まだ寝ぼすけさんなシャニを引っ張っていました。オルガは朝からハッキリしっかり者ですねぇ。流石お兄ちゃんです。弟の世話がよくできている。

「オルガー、シャニー! 早く行こうよー!!」
「あぁ、行く!」
「……行く〜……」

 のんびりとしたシャニの声と、……やっぱり嬉しそうなオルガの声。遊園地を楽しみにしていたのはクロトだけではありません。3人が楽しんで頂ければ……それが一番なんです。それだけでも、―――無かった休みを取って遊びに来た甲斐があるんです。



 ―――遊園地の中に入ります。が、此処は何だか華やかさに欠けていませんか……?

「おっさん、甘いね!」
「おさーん、あま〜」

 と言ったら、2人に叱られました。この遊園地は、アトラクションが一つ一つ凝っていて魅力がある。そうクロトに説得されちゃいました。シャニも(今はまだ半分夢の中ですが)賛成して此処を選んだようですし、オルガも楽しそうに辺りを眺めています。もうお土産の方を見たりもしてますね……。
 では、まずはどうするんですか。最初ですから軽く遊べるものがいいですね。

「ドドンパ!」
「フジヤマ〜っ」
「……………………ガンダム」

 おや、シャニの顔がはっきりしてきました。さっきまで寝ぼすけさんでしたが、そうですね、折角遊園地に来たんですから、寝ていたら時間が勿体無いです。
 まぁ時間なんて、こんな遊園地一週間貸し切るくらい僕の力じゃ楽勝なんですが……。

「シャニっ、まずはメインを味合わなきゃ!!」
「んー……じゃそれでもいいー」

 何を乗ると何の言い争いもなく、シャニはアッサリ諦めました。じゃあ一番最初はクロトのやつに行きますか。

「ところで、ドドンパというのはどんな乗り物なんですか?」
「楽しそう〜」
「多分楽しいよっ、おっさん早く行こー!」

 クロトとシャニが僕の手を引っ張って、そのアトラクションへ連れて行ってくれました。オルガも一足遅れて、……まるで後ろから2人を見守るように距離を取って……やってきます。
 クロトが好きってことは、相当元気なアトラクションなんでしょうね。この遊園地でもメインのような気もします。……それに不思議なネーミングセンスですが……。全然知識の無い僕でも乗って構わないのでしょうか?

「―――おっさん、死ぬなよ」

 最後に、オルガにそう励まされています。
 全く、遊園地でその台詞が聞けるなんて。オルガは心配性ですねー。



【ドドンパ】
 発射後、わずか1.8秒で時速172km/hの圧倒的な加速力!!!
 思わず腰が浮く0Gフォール、巨大なバンク、垂直上昇、垂直落下のタワー。
 キミはドドンパに耐えられるか!?




 ………………終わりました。
 遊園地の乗り物というのは、あっという間に終わってしまうものです。
 とりあえず、感想を。

 ―――少ない寿命が大幅に短くなった気がします。

 3人はいつだって重力と戦っているのですから、あれくらいの重力は楽勝なんでしょう……。辛そうな表情は、誰一人として見せません。いえ、見せてくれません…………。

「じゃ、次はシャニのだねっ」
「ん〜、フジヤマ〜」

 さっきの絶叫マシーンも何事もなかったように、3人は先を急ぎます。はぁ……元気っていいですね……。
 2人が先に行き、オルガは少し離れて2人の様子を見ています。何処かに勝手に行かないように、広く見ているんでしょうか? ……そんなに警戒しなくてもいいんですけどねぇ。

「おっさん、次ぃ〜」
「は……はい、深呼吸したら落ち着きましたー…………では次は……?」
「さっきシャニが言ってたやつ!」

 今度はシャニが選んだアトラクションですか。おっとりとしたシャニが選んだやつなんですから大丈夫でしょう。
 ん? オルガ、今度は何ですか?

「―――南無」

 まだ僕は死んでませんよ?



【FUJIYAMA】
 最大速度130km/hなど○○○○年当時4項目で
 ギネスブックに掲載されたキング・オブ・コースター。
 そのスリルは何回乗っても初めて乗った時の感動をお約束します。
 光ファイバー、ブラックライト、フラッシュでライトアップされたFUJIYAMA 2の異次元体験もぜひどうぞ。




 ……。

「すきーり」
「こっちも面白かったねー!」

 ……。

「オルガ、どうだった?」
「あぁ、もう一度乗ってもいいな」

 ……。
 勘弁してください……。

「…………おっさん、どーした〜?」
「疲れたの? 年なんだから怠かったら休めば?」

 年のことは言わないでください…………いや、年の問題もあるんでしょうけど。
 子供は何故あぁいった迫力あるアトラクションが好きなんでしょうね。……僕が子供の頃はもっと落ち着いていたと思うんですが。否、僕が子供の頃はこんな所も来なかった気が…………。



「ね、オルガー……腹減った」
「僕も! 空・腹!!」

 シャニが静かに提案すると、クロトが元気いっぱいに発言します。……2人が僕に話しかけてくれないのは、僕がそんなに気分悪そうに見えるんでしょうか。いえ、きっとオルガの方が好きだからですねー……(泣)

「そうだな、何か買ってくる。………………おっさん、何か飲むか?」

 ……あぁあ、オルガは優しい子ですね……。こんな倒れている僕にも気を遣ってくれるだなんて。乱暴者なんて思っていた僕がバカでした。
 クロトとシャニはは全く僕の事を無視しますが、オルガは(たとえ嫌そうでも)声を掛けてくれます。いい子です。あとでこっそりお小遣いとお薬倍にしてあげましょう。

「オルガー! 僕も行くー!!」
「あぁ、じゃあシャニはおっさんと待ってろ」

 オルガが言うと、素直にシャニが頷きました。そして、足早にクロトと手を繋いで、2人は売店へと消えていきました―――。



 ……ベンチに座って2人の帰りを待ちます。
 シャニは、待っている間大人しく座っていました。ベンチで足をぶらぶらさせて、何度もオルガ達の方を見ていました。……やっぱりオルガと一緒の方が良かったんでしょうか……。

「シャニ、楽しかったですか」
「全然〜」

 ……少し残念な答えが返ってきてしまいました。だけどそれは

「まだ2つしか乗ってないし〜、これから〜」

 という、期待の答えでした。
 ちゃんとシャニはこの時間を楽しんでいます。何より僕に笑顔を向けてくれます。その笑顔に、癒されます。
 ……やっぱりみんな、優しい、いい子なんですね。そうです、子供は元気な方がいいんです!

「もう一回、ドドンパ乗りたい〜」

 ……それは3人だけでお願いします。



 2人は早くに帰ってきてくれました。シャニにアイスクリームを、僕にジュースを寄越します。クロトは先にアイスにかぶりついていました。

「ウマいか?」
「美・味!」
「うま〜い」

 ……シャニの言うには、『まだ2つ』です。しかし、僕としてみればもう一日分の……声……を使った気がしますよ……。それは3人も同じようで、2つだけでも乾いた喉を潤すと、美味しいと何度も言って食べました。

「クロトもシャニも、アレは怖くないんですか?」
「全然怖くなんかないよっ、あんなんだったら何十回乗っても大丈夫だよっ」

 力強いコメントを頂きました。……僕が乗ったら耳から全て抜け落ちてしまいそうな遠心力だったんですが。

「……オルガー、俺泣かなかったよー」
「あぁ、いい子だな」

 よしよし、とオルガがシャニの頭を撫でました。
 ……ということは……シャニは少しあのアトラクションが怖かったんでしょうか? 少し、怖い代表の僕の心が晴れます。それでも楽しむ事が出来ない自分が痛いですが。

 くしゃくしゃ、と荒くオルガがシャニの髪の毛を掻きます。普通なら嫌がりそうな行為でも、シャニは喜んで撫でられていました。
 ……こうして見ると、本当の兄弟のようですね。背格好は全然似ていませんが、仲の良さは血の繋がりなんてものには負けません。
 ……もしかしたら、兄弟以上の情かもしれませんが……。いや、それは…………。

「僕もーっ!」

 シャニがずっと『いいこいいこ』されているのにジェラシーを抱いたのか、クロトもオルガに駆け寄りました。

「……クロトは、さっきオルガと一緒にいただろー……」
「えーっ、シャニがやってるなら僕もやるっ」
「……ぅー……」
「オルガ、次は僕の番だよっ!」
「…………」

 アイスを食べながら、……シャニは少し不機嫌そうな顔をしました。駆け寄ってきたクロトは、オルガに強請ってしてもらおうとしています。微笑ましい光景……に違いないんですが…………

「クロト、うざい!」


 ばこっ!


 ―――何を思ったか、シャニがクロトの頭を叩きました。軽く叩いただけなので痛みは無いでしょうが、

「っ!! ……シャニ、抹・殺!!!」

 それでも殴られたということに頭にきたのか、今度はクロトがシャニに―――嗚呼、そんなにハシャいだら……………………


 ぼたっ。


 ……となっちゃうんじゃないでしょうかね。
 ……。
 ……なっちゃいましたが。
 ……。

 ……あぁ、シャニのアイスが……落ちちゃいました。
 地面に、土色のアイスクリームのできあがりです。
 ゆっくりしているシャニは食べるスピードも速くありません。落ちてしまったアイスクリームは、まだまだかなりの量が…………。

「……う……っ……」

 シャニの目から、大粒の涙が零れそうになります。しかし、すかさず、

「ほらっ、俺の食え!」

 オルガが自分のアイスを差し上げました。見るとオルガのアイスは、あんまり食べていませんでした。
 2人に構われていたからでしょうか、自分のを食べれずにいたのでしょう。それともオルガはあんまりお腹減ってなかったんでしょうか……?
 ともかく、オルガは泣こうとするシャニを止めて、無理矢理にでもアイスをシャニの手に持たせました。

「やる、から……泣くなよ」
「ぅ……く…………っ」
「泣くなっ!」

 少し強くシャニを叱って、またシャニの頭を撫でました。シャニはオルガのアイスを頬張り、涙を殺しながら食べ始めます。
 ……本当に一瞬の出来事でした。あまりのオルガの手際の良さに、思わず拍手したくなるような―――。

「………………クロト!!」

 と思っていると、さっきまで優しかったオルガの声は豹変しました。怒鳴られたクロトだけじゃなく、隣の僕も少し驚いてしまいました……。まぁこれも、半ば予想していた結末ですけどね。

「謝れ」
「だ、だって……シャニから殴って……」
「シャニも謝れ。どっちが先やったとか俺は知らない。けど、起こしてしまった原因は2人共ある」

 ……。

「どっちかが気を付ければ、どっちも悲しくならないだろ?」

 ……。

 優しいしかり方でも、怒られてクロトは涙目です。涙目でオルガのアイスを頬張っているシャニも……反省の色が見えました。

「ごめ……んな……さ、い…………」
「俺じゃなくて、シャニにな」
「ごめ…………ん……」

 しゃくり上げながら謝ります。クロトだけじゃなく、シャニも同時に――――――。



 ―――オルガは凄いですね。2人の扱いに関しては天才です。宇宙一です。こればかりは悔しいですが、クロトとシャニについては、オルガに勝てる者はいませんね……。本気でそう思います。
 オルガの言葉が効いたのか、幼い2人はもう仲直りしています。元はクロトもシャニも仲良しさんなんですから、きっかけさえあればどんな方法でも仲直りできるんです。でも、それを直ぐに導き出すオルガは何度言っても言い足りないくらい、凄いです。

「オルガは何処か生きたいアトラクションはないんですか?」

 泣き終え、食べ終えたクロトを抱き上げているオルガに訊きます。クロトとシャニの行きたかったものは済みました。まだ沢山行きたい所はあるでしょうが……順番的にはオルガの番です。

「オルガ……、どこが良い……?」
「…………俺はガンダム・ザ・ライドにさえ行ければ…………」

 あぁ、それはさっきも言ってましたね。では今度はオルガの行きたい場所に行くとしますか。

「さんせ〜」

 オルガのアイスを食べ終えたシャニが同意してくれます。クロトも反対はしていません。もうさっきに不機嫌さは、抱っこされているのに忘れているようです。

「じゃあ行きましょう」
「――――――あぁ!」

 ……確実に。オルガの目は輝いていました。
 いつも2人を連れていたオルガが今は先を歩き出します。そんなに嬉しいんでしょうか?
 オルガがそんなに喜ぶアトラクション、どのようなものなんでしょうか?

 まぁどんなものでも2人はついていくでしょう。僕も、どんな注文も聞いちゃいます。楽しいお遊びをやる日なんです。
 今日は、その為のお休みなんですしね――――――。



 オルガが戦陣を切って辿り着いた場所は―――何だか戦艦みたいな所に来てしまいました。僕から見ると結構……否、「かーなーり」古臭い造りの戦艦です。建物自体が古いというのではなく、数年前のデザインのものなんですが、

「おぉぉ……マジでホワイトベースなのかー…………」
「…………オルガー?」

 ……オルガは、涙目で感動の声をあげていました。
 何でもこのアトラクションは、オルガの大好きな作品の舞台を再現したものらしいです。マニアには堪らない―――と言った所でしょうか。……まぁ、来たがっていた本人が感動しているのでダメ出しするのはよしましょう。

「……はっ……!」

 ……ん?
 オルガはあるものに目を、心を奪われます。それは、―――古代の国の軍服を着たお姉さん―――でした。アトラクションの雰囲気に合わせてのコスチュームなんでしょうが、オルガはその娘さんを見た途端―――顔を赤くしました。まるで一目で恋に落ちてしまったの如く―――。

「……くっ………………!」
「オ、オルガ……?」

 ついには、(感動のあまり……?)オルガが泣き出してしまいました。あのオルガが……泣くなって可愛い弟達に言っていたオルガが……?

「あぁ〜!! オルガをいじめるなー!」

 ―――軍服のお姉さんを見た途端、泣き出したオルガ。それは、意味の分からないクロト達にとっては、…………お姉さんがオルガを泣かした…………にしか見えません。
 オルガのあの涙は、間違いなく嬉し泣きですのでお姉さんは決して悪くはないのですが。
 ……オルガは感受性高くてとても良い子なんですね。そういう事にしておきましょう。…………でもちょっと怖いですよ、オルガ……。

「オルガー……泣くな〜」

 シャニが少し背伸びして、オルガの頭をぽんぽんと叩きます。先ほどまで、ずっとシャニがそうされていた様に。……きっと、『いいこいいこ』と撫でているつもりなんでしょう。

「オルガ……あの恰好イヤ……?」
「いや、そういうんじゃなくて……」
「好きなの……?」
「違……ううん、好き……あ、大好き………………いや、愛してる。」

 ……。
 ……そうですか。
 オルガの目は本気と書いてマジの目です。流石の2人も呆然としていますよ……?

「……あ、はい、始まるようですよ? 入ってくださいね」
「おぅっ!!」

 ……こんなに爽やかなオルガを見たのは久しぶりです。



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 日本最大のガンダムショップも併設されています。



 ―――先に2人と行っていたアトラクションとは全く違う、3Dアクションでした。
 結構危ないシーンの再現などしていて、ガクガク揺さぶられていたせいかちょっと巧く立てません。
 ですが先のジェットコースター同様、重力に慣れている3人は何事もなく先を急ぎます。あれくらいのGは軽々受けているんでしょうか。
 ……ですが、アトラクションは民間の立場でしたから彼らもいつもと違った雰囲気で楽しかったのではないでしょうか。それに、最後に流れた曲が格好良かったです。

「さて、この店は……」

 アトラクションとお店が合体しているようですが、どうやらここは模型市場に来てしまったみたいですね。3人が乗っている機体とよく似たオモチャが沢山並んでいます。数え切れないほどの数が並べられていましたが……

「……はぁ〜……」

 嬉しい溜息。オルガは一つ一つ、―――とても幸せそうな顔でオモチャ達を眺めていました。その表情に、オルガのこのオモチャに対する熱意が感じられます。でもそんな顔してたら、きっと2人が妬いちゃいますよ……。

「おっさんー! クッキー買ってー!!」
「ハロクッキ〜、ケーキ〜」

 ……お菓子の方に夢中で、オルガの趣味などどうでも良いようでした。



「あ……」

 店内で物色していたクロトは、ある物を発見しました。服です。
 只の服ではありません。……さっきのお姉さんと同じ服装が売っていました。古臭いだなんて失礼な事を言ってしまいましたが、昔から愛されるデザインの軍服でした。

「オルガの好きな服だ……」

 高い所に飾られている服を、クロトは眺めていました。お値段は……普通の衣服より少し高い位です。お金の事なんて全然気にする必要なんてないんですけど。

「……」
「……」

 降りてきたクロトの視線は、僕のとぶかります。目があってしまいました。

「……」
「……」

 もう一度、クロトはあの服の方を見て―――また僕の方を向きます。

「……」
「……」
「……」
「……あの服が欲しいんですか?」
「うんっ!!」

 素直に言えば直ぐに用意したんですけどねぇ。
 ゲームだったら何が欲しい次はコレだといつだって注文するんですが、今回はそうしてきませんでした。きっと照れくさいんでしょうね。……オルガの好きな服を買う訳ですから。
 それは多分、―――オルガに気に入られたいが為の、なんですから。

「ですが、あの服は少しクロトには大きいのでは?」
「あ……っ」

 上の高い所に飾られている服をもう一度見ます。……明らかに大人サイズの服でした。ちっちゃなクロトには少し早いですね。きっとブカブカでしょう。袖からは手が出ない、普通の上着がワンピースになってしまうの差があります。
 ……自分が着られない、ということにクロトはショックを受けたのか、しゅんと頭を下げて俯いてしまいました。
 そんなに辛いのでしょうか……サイズが合わないのなら、合うようにすればいいだけの事なのに。

「オーダーメイドであのデザインと同じものを作りましょう。お家に帰ったらサイズ測りましょうね」
「……え?」
「今日はあれをお土産にする事は諦めましょう。ちゃんとサイズを測って、ビシッと決めた方がカッコイイですよ」
「かっこいい……?」
「はい。カッコイイクロトの方が、オルガも喜びます」

 ……第一、僕はウィンドウショッピングがいまいち好きになりません。愛用のスーツも全て僕の為に作らせたものです。ネクタイもシャツも、今日遊園地まで乗ってきた車も全て僕に合わせて作ったものなんです。なので狂いは全くありません。飽きる事はあっても、不良で捨てる事なんてまずありません。デザインだけ覚えていてあとはきちんと作ってもらえば、クロトだけの、クロトの為の服が出来上がります。その方が絶対良いと思います―――。

「ですから、今は違うおみやげを探しましょう」
「うんっ。おっさん、ありがと!!」

 にっこりと、クロトは笑顔を僕にくれました。満面の笑み。この嬉しさを分けてあげようと、クロトは(CD売り場にいる)シャニの方に駆けて行きました。
 あぁあ…………可愛いですねぇ。オルガがずっと構いたくなるのも判ります。
 で、そのオルガは、

「………………はぁ〜〜〜………………」

 ―――あまりに幸せそうなので、僕には邪魔出来ませんでした。



 沢山のおみやげを買って、一度荷物を置きます。さて、次のアトラクションは何処に行くんですか?

「ねー、観覧車乗ろー」

 あぁ……いいですね、遊園地にしては大人しくて良いものです。ですが、今回は僕はお休みさせて頂きますね―――。

「どうしたの、おっさん……?」

 いえ、僕は……ちょっと速いものと絶叫ものと高い所は苦手なんですよ。え、それって遊園地全部ダメダメですか?
 僕は大人しく待っているんで、3人で仲良く乗ってきて下さいね。

「うんっ、……僕、オルガの隣に乗るよっ!!」

 服を買って貰えると約束してから、ずっとクロトは嬉しそうです。

「俺も……」
「駄目! 僕かオルガの隣に座るんだよっ!」
「……俺もー……」
「却下!」

 ……。
 ……あれ、これって…………同じような記憶が蘇るんですが……。

「3人で座り合えばいいじゃないですか。車の時みたいに」
「バカかおっさん……傾いて落ちるだろ」

 ―――バカは余計ですよオルガ。しかし、……クロトとシャニはどんな小さい事でも喧嘩って出来るものなんですねぇ。

「シャニは一人で座ればいいだろっ! 僕がオルガと一緒!!」
「……う〜……っ」
「ね〜、オルガ、隣でいいよね?」

 独り占めするかのように、クロトがオルガに抱きつきました。
 ですがシャニもそのまま黙っていません。

「オルガぁ〜〜っ」

 シャニはシャニで、オルガの腕を引っ張って自分の方に引き寄せようとします。

「シャニっ、やめろよ!」
「クロトうざい〜〜!!」
「僕はうざくない!! シャニの方がう「ああぁーっっ!!!
 お前等黙って観覧車も乗れないのか!!
 2人だけで乗ってくればいいんだろ!
 喧嘩してるなら俺は乗らねぇぞ!?」



 ……。
 ……よく言いましたオルガ。
 ……。
 ……オルガのしっかり者さには、パパも感激です。
 ……。
 ……すっかり、2人は黙り込んでいます。

 さすがはオルガ……色んな意味で強いですねー。2人が落ち着いた所で、オルガは口を開きます。

「………………2人で隣り合って座ればいいだろ。俺は前にちゃんといるから」
「……オルガ、一緒に乗ってくれる?」
「お前らが仲良く出来るならな?」
「……うんっ」

 クロトが元気に返事をし、シャニもちゃんと頷きました。……さっきもそうでしたが、元は2人共仲良しなんですからオルガが何かしてくれれば直ぐ仲直り出来るんですねぇ。そんなに早くに仲直りできるんですから、いっそ喧嘩自体を無くしてほしいものですが……。

「ホラ、乗るぞ」
「うん、出発っ!」
「……おっさん、ばいばい〜……」

 ハイ、バイバイです。
 3人は手を繋いで観覧車へと向かいます。僕はお留守番です。仲良く観覧車に入っていく姿を僕は眺めていました。
 ―――オルガはモテモテでいいですね。正直今までどこがいいのかサッパリでしたが、オルガの包容力は2人でなくてもホレてしまいそうです。僕もあのオルガの決断力、実践力には………………。
 いえ、勿論冗談ですけど――――――。



【シャイニングフラワー】
 30種類におよぶイルミネーションに高さ50mの大観覧車。
 富士山を見慣れているヒトでも、ここからの眺めには改めてタメ息が出ちゃうかも。
 もちろん夜は、イルミネーションまたたく世界でロマンチックに―――。




 ―――観覧車が一周して終えると、3人は手を繋いでやってきます。入る前、喧嘩していたなんて言っても誰が信じるでしょう。

「楽しかったですか?」
「うんっ! 凄く高かったよー。ね、シャニ?」
「うん〜、いっぱいキスしてもらった〜」
「……おぃシャニ」

 ……。
 ……君達、密室に入ったら、やる事は一つですか。

「次はどうしますか? 今度は何を?」
「……あー……お化け屋敷とか〜、ダメ……?」
「悪霊・退散!」

 ……それはダメです。クロトの言い方からして、器物破損で訴えられる未来が、新人類でもない僕にも見えました。

「オルガは?」
「俺はガンダムさえ行ければ……」

 ……。
 君は1日中彼処に居ても飽きないんでしょうね……。
 でもどこか違う世界にイってしまっているオルガを見るのは辛いので、もう行きませんよ……?

「……そうだ。俺、お手洗い行ってくる〜」
「あ、僕もー!!」

 おや、アイスも食べて高い所にいったら近くなっちゃったんでしょうか。シャニとクロトは一緒にレストルームへ走っていきました。

「オルガは行かないんですか?」
「別にいい」
「行ってあげなくていいんですか?」
「あのな…………あれぐらい俺がいなくてもいいだろ」

 ……そうですね。いつまでも子供扱いしてはダメダメです。少し僕は警戒しすぎのようです。
 3人が観覧車に乗っている間、休んでいたベンチに今度はオルガが座ります。その姿には―――少し疲れの色が見えだしました。

 オルガは、おみやげで買った模型(何もこんな所で買わなくても良いと思いますが)の箱を袋から出し、見ていました。見て、眺めて、見回して………………満足すると一人笑って袋に戻す。そしてまた袋から箱を……。

 可愛いあの2人はまだ元気ですが……お兄ちゃんなオルガは人一倍神経を使っていますからね。疲れ方も全く違うでしょう。その溜息をつきながらの姿に、―――少し心配になってしまいます。

「オルガ、楽しいですか?」
「あぁ、最高だ」

 …………質問のタイミングが悪かったです。彼の目には二足歩行ロボットの模型しか見えていませんでした。
 僕が言いたいのは、そんな事ではなく―――オルガ自身が楽しんでいるかのこと。この休みを、充実した時間として暮らしているかのこと―――。

「正直に答えて下さい。……遊びに来て正解でしたか?」
「あぁ。……………………あいつらも楽しそうだしな」
「それは違います」

 オルガにとって、クロトとシャニは大切でしょう。ですが、僕が真に欲しいのは、君が楽しいかどうかの言葉です。

 クロトもシャニは、2人ともこの時間が楽しいと行ってくれました。
 笑ってくれました。僕に笑いかけてくれました。
 ……僕は、この休みを取って良かったと思います。3人の言葉を聞くだけ、完全な自己満足ですが僕は安心したいんです。
 今の時間は無駄ではない事に―――。

「どうですか、オルガ?」

 ……。

「あいつら、楽しいって言ったのか?」

 ……えぇ、笑顔で。

「……そうか」

 オルガは、箱から視線を外し目を閉じて、―――ふぅ―――と安心の息を吐きました。
 本当の意味での休憩―――と同じものを。

「あいつらが楽しいのなら、俺も楽しい」



 ……。
 はぁ、君って人は……。
 ですからそれは、本当に君の言葉なんですか? 2人を気遣っての言葉なんじゃないですか?

 ―――ですが、ゆっくりと開かれた目を見る限り嘘か虚言か、……どちらも同じだという事ぐらい直ぐ判りました。
 そんなにあの子達が可愛いんですかね。2人もあんなに愛されて、―――懐くのも判りますね。

 こんなに愛を持って接してくれるのですから。愛し返さない方が損をしてしまうくらいに―――。



 それにしても―――。

「長いお手洗いですね」
「……だな」

 ベンチに座って5分。
 オルガが箱と袋と格闘すること10分。
 ……僕とオルガの会話が終わって15分。
 30分経っても二人はお手洗いから帰ってきません。

「これって、………………」
「えぇ、あれですね」

 そう、あれです。遊園地お約束の―――
 ―――迷子、ってヤツですか?



「シャニー。あれ面白そうだよー」
「……うん〜?」
「あれ。乗ってみようか?」
「ん〜」
「あ、あっちも変なの! あっちの方で遊ぶ?」
「うん〜」
「うん、そうだね。じゃあ行こうっ!!」
「……俺、パス持ってないよ〜?」
「あれ、僕もだ」
「……お金も無い〜」
「あれー? 僕達今までどーしてたんだっけ……??」
「えとー……オルガが持ってる……パスとか……トイレ行く間持っててって……」
「そうだ、僕も預けたままだ!」
「……お金はぜ〜んぶおっさん持ち………………戻る?」
「戻ろっか。じゃないと遊べないもんっ」
「うん〜」

「……で?」
「で、……って何?」

「オルガ達、どこ?」
「シャニ知らないの?」

「…………おーい、おっさん〜?」
「……おーい、オルガー? …………どこ?」



 ―――まさかのまさかですね。2人まとめて迷子になってしまうなんて。仲良く手を繋いでお手洗いに行ったまでは良かったんですが……。
 お手洗い済ませて、もしくは行く途中に興味を引かれて、……そのまま何処かに行ってしまったんでしょうか。
 オルガと一緒にお手洗いまで駆けつけてみたんでしたが、もう2人の姿は何処にもありませんでした。これは……本当に、迷子になっちゃいましたね。

「どこかアトラクションに入っちゃったんじゃないですか?」
「いや、あいつら何も持ってないから無理だろ」

 ……あぁそうでした。2人はパスをオルガに預けておいたんです。
 中に入るにはパス以外でも出来ますが、2人には心配なので自分用のお財布も持たせていません。何かあるとすぐ落としちゃったりするぐらい、2人ともドジっ子ですから。

 迷子は旅行の醍醐味にも似て、必ずあるイベントのようなものです。ですが、いつも2人を見ているオルガがしっかり者ですから、平気だと思っていたんですが……。そのオルガと離れてしまっては、その考えもダメダメです。
 ……そうですね、オルガだってずっとあの子達を見ているのは疲れます。2人を見守るのは、保護者である僕の役割だったのです。……あぁ、保護者失格ですよこれでは!!

「ったく、あいつら……ちゃんとトイレにも行けないのかよ……」

 ……オルガは、苛立ちを含んだ声で呟きました。まだ2人共小さいんですから……と宥めますが、優しくも厳しいお兄ちゃんのオルガは機嫌を直しません。

 今頃、2人共……泣いてるかもしれませんね。やんちゃ盛りの明るく元気な子供ですが、2人はとても繊細で、寂しがり屋です。寂しくなったら大泣きするかもしれません。今もどこかでそうしているかもしれません。『オルガー!』と……。
 ……何度思い考えても、僕の名前を呼ぶ2人は現れませんでした。せめて妄想の中では懐いてきてくれてもいいじゃないですか…………。

「おぃおっさん、何でアンタが泣いてるんだよ」
「あぁこれは……思いだし泣きってヤツですよ……」

 愛されてる貴男には判らないでしょうね、ふふふ……(泣)

「バカやってないで、迷子センター行くぞっ」
「バカは余計です。言葉が過ぎますよ、オルガ」

 苛立っていたオルガが、いつもの冷静さを取り戻してきました。

「あのバカ達を連れて行ってくれる親切な人がいればいいんだけどな……」

 ……でも、恐ろしく冷静です。少し(僕に対しても)冷たい気がします。ですけど、そんなしっかり者のオルガが僕は大好きですよ―――。



「オルガー? 何・処!」
「おっさん〜、金よこせ〜」

 てくてく……。

「むー…………オルガのバカ、どこ行ってんだろ」
「お金ないと遊べない〜。おっさん〜」

 とぼとぼ……。

「……うぅ……」
「クロト、泣いちゃダメ〜」
「な、泣いてないよっ! シャニだって泣くなよっ!!」
「……クロトみたいに泣き虫じゃない……」
「嘘吐き! さっき泣いたばっかりじゃないか!!」

 ……ぴたり。

「……うざ……」
「うざくないっ!」
「うざ〜いっ!!」

 ……。
 ……。

「……うざく、ないっ……もん…………っ!」
「…………やっぱりクロト、泣いた〜」
「泣いてないもんっ!! シャニのヴァーカ!!!」

 ……。
 ……。

「…………うん、バカ」
「シャニ……?」
「喧嘩したら、またオルガに怒られる〜?」
「……」

 ……ぎゅ。

「怒られるの……嫌だから…………仲直りしよ……?」
「……うん」

 ……ぎゅっ。
 …………てくてく。

「おーい、オルガ〜? どこ行ったんだよー?」
「……おっさん、カードでもいいよ〜。よこせ〜」

 とてとて……。

「オルガ……」
「オルガぁ……」
「オルガ―――さん?」

 ―――ぴたっ。

「…………え?」
「オルガさんて…………あのオルガさんの事ですか?」
「オルガはオルガだけど……」

「アンタ、オルガの事知ってんの!?」
「……誰〜?」

「えぇ知ってます。知ってますが、―――あぁ、君達はもしかして」
「な、なに……? 何で僕達の事も知ってんの?」
「オルガ、どこか知ってる〜?」
「そ、そうだっ! オルガどこにいるか知ってんなら教えろよアンタ!!」
「知りません」

 がくっ。

「う……ウソツキー!!」
「…………オルガぁ〜」
「はい、私は―――今オルガさんが何処にいらっしゃるのかは知りません。知っているのは、オルガさんの人柄の事ですから」
「……へぇ〜?」
「え、なんで? オルガって有名人なの?」
「いえ、決して」
「そ、そうだよなぁ。…………オルガが有名人だったら僕は超有名人だしねっ!」
「オルガ、地味だし〜」
「そう、地・味!!」
「―――えぇ、あの方は目立たとうともしませんしね。だからと言ってキャラが薄いと言う訳でも無いのですが」
「……キャラ?」

「…………アンタはすっごく目立ってるよ……」
「そうですか?」
「うんっ、緑色の髪だし、目はオレンジ色だし」
「背、オルガより高いかも?」
「オルガ、結構チビだから〜」
「僕達よりは大きいよっ!」

「……そうですね。言われてみれば、私の髪はシャニ君と似てますね」
「でね、目は僕といっしょー!」
「そういえばそうでした。いっしょです」
「ねぇ、アンタ〜。オルガの知り合いなの?」
「えぇ。君達にもちゃんと、『あ』ってますよ」
「そうなの? ……ごめん。僕、全然覚えてない」
「お構いなく。―――この姿で判る方が可笑しいかもしれませんからね」

「でも、オルガの所も知らないの〜?」
「……はい。残念ながら」
「残念〜。またオルガ捜す〜」
「……ではもしや君達はあれですか。―――『迷子』?」
「そう! オルガのヤツ、迷子になってるんだよ!!」
「おっさんも〜。年寄りのくせに迷子になってるんだ〜」
「捜す側の身にもなってほしいよね!」

 ……。

「―――はぁ、そうですね。何で目を離したんでしょうか。あれくらいしつこい人なのに……」
「……何が〜?」

「ねぇアンタ。お金持って無い? オルガ達がみーんな持ってるから僕達遊べないんだ」
「貸してくれれば、おっさんが3倍で返してくれるかも〜」
「僕達がお願いすれば絶・対! 大丈夫だよっ!」
「お得サイズ〜」
「お金は持っていますが、今はオルガさん達と合流するのが一番でしょう。―――とりあえず、迷子センターに行きますか」
「そうだっ。オルガ達、そこにいるかもー!?」
「かも〜」
「…………そうですね。いるかも、です」



 ―――少し歩いて、遊園地のマップの看板がある所までやってきます。もう2人を捜して……結構な時間が経ってますよ。泣きやんでる頃かもしれませんね……。

「迷子センター……遠いですね」
「あぁ、でも早く行くぞっ」

 オルガはさっさと行ってしまいます。こういう時若いっていいですね……。オルガも疲れているでしょうに、……きっと『2人を捜す』という別の力も含んでいるんでしょう。
 しかし、少し待ってください……はぁ、僕の方が疲れてるんですよ……。僕、こう若く見えても本当は(ピ―――)歳なんですから……。

 ……いや、今のは嘘なんですけど。
 ブルーコスモスの盟主は謎でなければいけませんからね。今のは冗談ですよ―――。



「ここが、迷子センター?」
「はい。……残念ながらオルガさんはいませんね」
「うん、おっさんもいない〜」
「では此処で少し待っていてくださいね。―――レイダー。この子達をお願いします」

「……あ? また迷子拾ってきたんかよ。何でもかんでも拾ってくるなオマエ」
「そういうバイトですから。貴男は貴男の仕事なさい」
「あいよっ。…………って誰かと思えばクロトンじゃねぇか! イイモン拾ってきたなぁっ!!」

「…………あの人、何の仕事してんの〜?」
「『子供を遊ばせる』仕事です。さぁ、オルガさんに連絡を取りますのでそれまでは―――」
「子・供!? 僕、子供なんかじゃないよっ。遊んでくれなくったって…………っ!」

「ガキのくせに何言ってんだよ…………ほらっ」

「え? …………………………ぎゃ―――ッッ!!!」

「クロトぉ〜? 何やってんの〜?」

「うあー!! ぁあー!!?
 何やってんだ黒いの……ってああああぁぁ―――!!!」

「MA形態に乗せてやってんだよ、もっと喜べ!!」



「―――シャニ君。アナウンスでオルガさんと保護者さんを呼び出しますよ」
「うん〜どんどん呼び出せ〜」
「それでですね、君の年を聞いておきたいんですが。教えて頂けますか?」
「えっとー………………」



 ……。
 ……。

 ……3分経過。



「…………忘れた」
「そうですか。ではクロトくん「うらぁあああ!!?」……は無理なので、仕方ない。名前だけで呼び出しますか」

「あ、オルガが何歳かなら知ってる〜」
「どうしてオルガさんのは判るのに、自分の年齢は判らないんですか?」
「……わかんない〜。あと、おっさんの年も知ってる〜。(ピ―――)歳だよ〜」
「別に保護者さんの年齢はいいのですが。―――はい、とりあえず呼び出します」
「いっぱい来い〜」
「保護者さんとオルガさんは一人でしょう」
「でも来い〜」



 ぴんぽんぱんぽーん。

『××区からお越しのムルタ・アズラエル様(ピ―――歳)様』
『シャニ君(?歳)とクロト君(?歳)が迷子センターでお預かりしています』
『繰り返します、ムルタ・アズラエル様(ピ―――歳)様…………』



 ……。



 ……。



 ……。



「………………………………あれ〜? 今、おっさんの声しなかったー? 気のせいー?」
「……えぇ、私にも聞こえました」

「クロトは……「飛べっ、クロトン!!」「ふみゃああぁぁぁっっ!!!」……聞いてないか」

「―――ちゃんと聞こえましたよ。確かに、何かとても大きな、悲しい嘆きが―――」



 ―――ふぅ、今日は雲一つ無い青空ですねぇ。

「あぁ、悪くはないな……」

 木達が僕達を歓迎しているように風に揺れサラサラとう美しい楽器を奏でます。自然の音楽隊ですね。その演奏に合わせるかのように、小鳥達がさえずり始めました。途中で、川の水音が可愛らしく彩ります。そう―――今日は家族でピクニックに来たんですね……。

「……ここ、遊園地だぞ?」

 深呼吸すると、それだけで悪いモノを浄化してくれるようなそんな世界です。こんな素晴らしい森を歩いていると、クマさんが出てきそうですね。嗚呼、あんな所に……話しかけてきてくれたらお友達になってあげるんですよー、オルガー…………。

「おぃ、おっさんしっかりしろ!!!」

 ……。
 …………。
 ………………。

「……はっ、オルガ! クマさんは一体いずこへ!?」
「熊なんていねぇよ……いいかげん目ぇ覚ませ」

 ……どうやら、僕は夢の世界に行ってしまったようです。そうです、ここは遊園地で……ハイキングに来たのではないです。周りには絶叫マシンやら機械が沢山……しかし、どうして僕はあっちの世界にいってしまったんでしょうか?

「自分で勝手に気失ったんだろ……放送聞いて」

 あぁそうですね……。
 放送聞いたら目の前が真っ白になっちゃったんです。
 ××区からお越しのムルタ・アズラエル(ピ―――歳)様………………って!!!

「今すぐブルコス機動隊を出動させなさい! あの放送を聞いた者は全員抹・殺!ですよ!!」
「……今のって、遊園地中に聞こえたと思うんだが」
「此処にいる人たちは全員です!!」
「何か苦情が来ても知らないぞ……」
「僕が許します!!」

 周辺の家屋にも聞こえたかもしれませんので、そこも手をうっておきましょう。あれは機密事情の一つなのです! 知られてはならぬ事なのですよー!!

「じゃあ俺も『抹・殺!』か? 俺も殺すのか?」

 ……。
 …………。
 ………………。

「そんなことできる訳ないじゃないですか!」

 何て恐ろしい事を言うんでしょう、僕がオルガ達を殺すなんて事出来ないと知ってるくせに!オルガ、悪い子です。オルガはそんな事言う子じゃない筈です。マイナス2000点です!

「アンタが抹殺だー言ったんだろ……」

 そ、そうでした。あぁ僕自身を抹殺しなければ……。まだまだ僕にはやる事があるのに……志半ばで……GWの家族旅行で(ピ―――)歳の生涯を終えるだなんて……。嗚呼、走馬燈のように楽しい想い出が……。

「とにかくっ! 彼奴等は迷子センターにいるみたいだし、さっさと迎えにいくか……」
「だ、ダメです!」

 歩き出すオルガを止めます。今すぐ行ったら、迷子センターの周りの人たちに見られた時『あー、あの人が(ピ―――)歳なのね』と思われるじゃないですか!
 僕はクリーンでナウなイメージで通ってるですよ? より一層さっきので放送とプラスで怪しまれるじゃないですか!!!

「……………………」

 ……。
 ……あれ?
 オルガの事ですから、僕がこう食い上げれば、何か言いかかってくると思ったんですが……。逆に大人しいです。それが怖く見えるんですが……。

「あぁそうか。じゃあここで待ってろ。……自分の立場と子供の気持ちを天秤に掛けるような奴とは思ってなかったぜ……」
「えっ!?」

 い、いえ別に、2人の子を軽んじている訳ではないのですよ……?

「一人で行ってくる」

 あー、オルガ? 青筋なんて立てて行かないで下さい……。

「………………アンタには失望した。最初っからだけどな」
「行きます!! さっきのは忘れて下さい!」

 僕は忘れていました……ここでは、軍事産業理事や、ブルーコスモスの盟主などという肩書きは仕事場に置いてきたんです。今は、愛溢れる息子達の保護者……いえ、お父さんなのです。もうプライドとか関係ありません! 必要なのは、―――己を捨て愛に生きる、そう愛なのです!!

「行きますよオルガ! 何モタモタしてんですか!!」
「……」

 オルガが物凄く何か言いたそうな顔をしてますが、今はクロトとシャニを迎えに行くのが先です! オルガとは、後で沢山お話しましょう。言いたい事は全て聞いてあげるんです。
 それが、おそらく父親としてあるべき姿なのですから―――!!



「……クロト〜」
「……」
「……生きてる〜?」
「…………瀕・死………………」
「クロト、ぴくぴくしてる〜。面白いー?」
「面白くない!! 変なのに乗せられて死にそうだったんだぞー!!」
「……でも、キャーキャー言ってた……」
「悲鳴だよ、悲・鳴! 思いっきり嫌がってんだよ!!」

「はぁ〜ん、クロトン。面白くなかったんなら、もう一度回してやるぜー?」
「いいいいいぃ!! じゅーぶん楽しかったから!!」
「そっか。じゃあ楽しかったならもっとやってやるよ」
「イーヤーだー!!」
「何でドドンパとかFUJIYAMAが大丈夫なのにダメなんだよ〜、そりゃー」

 ぎゃあぁぁあぁああぁ…………。



「…………クロトばっかり、つまんない〜」
「シャ〜ニさんっ、宜しければいっしょにご本読みませんか?」
「ん〜?」
「レイダーみたいに楽しい事できないんですが、シャニさんといっしょに本読みたいんです♪ 沢山ありますよ〜、シンデレラとかぁ、赤ずきんちゃんとかvvv」
「……俺、もっと面白いのがいい〜」
「あっ、笑えるやつですかぁ……? 狂言とかやりましょうか。見よう見まねなんですけど☆」
「…………本読むんだったら、オルガが読んでるようなやつがいい〜」
「えっとぉー。だとすると小説ですねー。……あっ、こんなのどうでしょう???」

 ばばんっ

『淫奉の新妻 スクール水着仕様愛のメイドホテル with妹ナース』

「コレでいいですか???」
「うん〜、オルガが読んでたやつ〜」
「は〜い、読みますよーvv」

「………………フォビ。青少年に悪影響を与えるものは反対だった筈では?」
「実践してみなければ良いのです! シャニさん、これからする事はやっちゃダメダメですよ!」
「え〜、オルガといつもやってるからヤー」
「駄・目です! ちゃんと知識を再確認する為に読みますが、やっちゃダメなんです!」
「……う〜……」


 ―――早足のオルガを一生懸命追いかけ……やっとセンターへ辿りつきました。ふぅ、オルガは歩いていたようですが、こっちは走ったせいで動悸息切れが……これも年ですねぇ……流石は(ピ―――)……。

「別について来なくてもいいんだが……」
「いいえ! その提案は却下です! 保護者が子供を守らなければ! 僕は目覚めましたよ!!」

 さぁ、感動の再会ってやつですよー!
 ずっとクロトとシャニは泣いて僕達を待っているのです!
 迎えに来た途端、喜びの笑顔を向けてくれるに違いありませんね。『オルガー、遅いー』と。……。
 ……どう考えても僕の出番は無いようですが。



「おーい、クロト。シャニー?」

 心の準備も出来ていないのに、オルガはさっさとセンターの中に入っていってしまいます。

「おや、オルガさんに保護者さん。意外と早かったですね」
「あ、……その。迷子がここにいるって放送で聞いたんですが」

「僕の子です!!!」「……黙れおっさん」

「えぇ、そんなに心配しなくとも、そこにいますよ」

 眼鏡の青年が、視線だけで二人の居場所を教えてくれます。その視線の元へ僕達も駆け寄りました。そこには……。

「……うえぇえん……オルガぁ……」

 予想通り、泣き喚くクロト。しかしそれは、恐怖に頬を濡らした姿で……。

「『A男はびしょびしょ濡れた柔らかいB子の花園をなぞり、狂おしいまでの愛を贈った―――』」
「……ねぇフォビぃ〜。A男のとこ、『オルガ』に置きかけて読んで〜?」
「判りましたぁ。でも、オルガさんにやらしても、自分でやってもダメダメですからね?」
「(とりあえず)りょーかい〜」

 ……。



「見ての通り、元気です」

 ……青年の言うとおり、元気には変わりないですが若干一人、無事ではないようですね……。

「レイダー、クロト君を離してやりなさい。フォビ、本読みは中断です。親御さん方の登場です」
「あ……そっ、そうです! 僕が2人の親です!!」

 人が沢山(?)居る場所で、僕はハッキリと宣言しました。これでもかという程大声で、我が身を見せつけてやりました。(ピ―――)歳のダンディーパパでいいではないですか! 寧ろそれは素晴らしい事ですよ!!

「はー、仕方ねぇな。もっと遊びたかったんだけな〜っ」
「……僕で……遊ぶ……な…………」

「みゅ、ザンネンですぅ。シャニさんと、もぅおっっといっしょにいたかったんですが……」
「……話の続き、気になる〜」
「ですねっ。そうだ! この本はシャニさんに特・別♪ プレゼント☆ ですvv」

 さぁ。家族が再び揃いました。
 もう絶対に離ればなれになってはいけません。僕はやっと判ったんです。一緒に居てこそそれは家族。バラバラになったとしても、またこうして再結成できることがまた家族!
 今、こうして抱き合い再会したのは僕達が家族だという証拠なのですね―――!

「オルガ〜、抱っこしてー」
「……クロトが死にそうなんだ。シャニ、我慢しろ。おっさんにでも抱っこしてもらえ」
「え〜……おっさん変な場所ばっか見てるからヤ〜」

 では、次のアトラクションに行きましょうか。僕達は常にいっしょです。苦しい所でも、どこでもついていきますよ!
 3人が、求める場所だったらどんな場所だって―――!!

「行くぞ」
「お〜」
「……進・撃…………」
「……クロト。無理すんなよ……?」

 迷子事件ごときで僕達のハピィライフは邪魔させませんよ―――!!



 ―――お日様が沈む頃。
 橙色に空が染まる時、僕は又、車を走らせていました。

「くー……」
「すー……」
「………………」

 トランクの中にはクロトとシャニのお菓子。それとオルガの機動戦士でいっぱいです。そして3……朝と同じようにオルガを挟んで2人は眠っています。
 朝からのハードなアトラクションの連続、迷子の後も沢山、色々なものに乗りました。ずっとはしゃいで疲れてしまったんでしょうね。今の寝顔がそれを語っています。
 今ばかりは、オルガも目を瞑っていました。シャニはセンターの方に貰った本を抱き、クロトはオルガの機動戦士を一体手にしています。そうした2人をオルガは抱き、―――3人は眠っていました。

 なんて安らかな寝顔。なんて可愛らしい寝顔なんでしょう。……とても幸せそうな寝顔です。
 一日、楽しかったんですね。何度も喧嘩して泣いていた姿も、今では薄れています。
 迷子の時も沢山泣いたんでしょうね。でもそれ以上の想い出がそれを忘れさせたんでしょう。
 悪かった事など、全て忘れてしまうようなとても楽しい時間を彼らは過ごしたんでしょうね―――。

「すー……」
「くー……」
「………………」

 いつまでも見ていたい寝顔です。この目に、その幸せを、ずっと焼き付けておきましょう―――。

「……おっさん、前向け」

 …………おや、起きてたんですかオルガ。
 ですが、実はこの車! オートモードにしておけばハンドルを離しても運転ですきるんですよ! ホラッ!!
 前の車との感覚を丁度良く開けて、安全な速度で勝手にやってくれるんです。軍事産業理事の椅子は確かですよ!(関係無)

「……じゃあ何で運転してるフリなんてしてるんだ?」

 だってお父さんというものはは『頑張って眠気を我慢しちぇ家族を外敵(車)から守る』もんでしょう? それをしている僕は、まるでお父さんみたいじゃないですか!!

「……あっ、そう」

 ―――再度、オルガは目を瞑ります。そして、……2人と呼吸を合わすように寝息を立て始めました。
 ハンドルを手に、目は3人の元に、僕はずっとそれを休みの間、眺めていました。



 ―――そして、ここからは後日の話です。

「おっさ〜ん、本読んで〜」

 強請ってきました。
 シャニが強請ってきました。
 シャニが何と強請ってきました。
 シャニが何と、僕に、本読みを強請ってきました……。

 ……………………なんと! いつも読書じゃオルガがやっていたのに、あのシャニが! この僕に!!?

「……おっさんシカトー? ……かんちょーさんのトコ行こ……」
「待ちなさい! 読みます、読みますよー、あぁ何てパパらしい!!」

 仕事なんて放っておいて、ここは家族サービスをするべきなんです! ……隣でサザランが物凄い目つきで睨んでいますが、そんなのは気にしませんよっ。

 膝の上にシャニを載せて本を開きます。……って、シャニは随分細かい字の本を読むんですね、優秀ですよ。
 タイトルは、……………………。



 ―――又後日。

「オルガー! コレ、オルガの好きな服ー!!」
「……」

「おっさんに作って貰ったんだっ。オルガ、こーゆーカッコ、大好きだろっ?」
「……」

「……何……? 僕じゃ似合わない……? その……スカートとか、はいた事ないからさぁ……」
「……」

「……って、わぁっ、オルガ鼻・血! 塵紙、止血ー!!」
「……クロト。今夜から寝る時はその格好でいてくれ」
「えっ?」





 END...?

 藤縞ハルト様から、キリバン【5000】の「ムルタパパ奮闘 GW旅行」でした。 04,5,25