■ Second Contact
―――苦しい。
とにかく苦しい。薬が切れた以外で苦しがるなんて久しぶりだ。
体全体に重石が付けられたみたいに苦しくて、どけようと必死になって逃げるけど厳重に付けられた縄は解く術が無い。
くるしい、くるしいと何度言っても重石が退く事はなかった。
薬が切れること以上に苦しい。頭が痛くなったり体が引きちぎられそうになるあの痛みも嫌だけど、今のこの苦しさの方がもっと嫌だ。
乗っかられて苦しい。
舐められて気持ち悪い。
押しつぶされて、引っ掻かれて、挿れられて、堪らない。
最低にたまらない―――
「ぁ……あ……んあぁあ…………っ!」
突然こんな事されて、何が何だか判らない。
苦しくて、キモくて、
みんなウザくて……
みんな、最低―――っ
どうして僕がこんな事…………?
―――お前、可愛い顔してるな。
突然そんな事を言われて、人影の無い部屋に追い込まれた。
誰もいない場所で倒されて、
一度も見たことも無い奴が覆い重なってきて…………
―――俺のモンになれよ。
顎を上に向けられて、
一度もした事が無かったものを、何度も……。
―――……はぁ、なかなか良かったぜお前。
そう言って奴は去っていった。
……終わってから、脱ぎ捨てられた服を集めるのが辛かった。
…………記憶はみんな断片的なものばかり。
一体何をされたんだか理解できなかった。
只……この状況を把握する限り
―――僕は見ず知らずの奴にヤられたんだな、って事だけは判った。
/1
シャワー室で全てを洗い流す。どんなに運動したってこれほど不快な汗はかいた事が無かった。何度も何分も水を被り続ける。ベトベトしたものは何とかとれたけど、身体の芯まで気持ち悪いものが付いて離れないでいた。……気持ち悪くて動きたくなんかなかったけど、中に出されたものも出さなきゃいけないし……。
「……っ……」
我慢して、歯を食いしばりながら……自分の中に指を入れ込んで掻き出した。一人でこんな事をするなんて―――情けなくて涙が出てくる。けれどシャワー出しっぱなしだから涙は直ぐに排水溝の中へ流れていってしまう……。
「……ぁ……っ」
どうせなら涙と一緒に、そのまま僕もずっと流れて消えたかった。苦しいのは誰かに暴力を振るわれた時の傷じゃない。……あんな事をさせられて僕自身が押し潰されそうで苦しかった。
何だか力も流された気がして尻餅をついてしまう。
体を何度も洗っても、キレイになった気にならない。体の隅々まで流し終えても、……記憶までは流す事は出来ない。
苦しさはずっと続いている……。
「……は……あ……!」
頭を抱えた。
滝のようなシャワーが頭を直撃している。少し痛かったけどそんな痛みであの苦しさは騙す事が出来ない。
もう決定した。……今日あった事は、短い人生の中で最もの過ちだろう。
どうして、僕が、こんな事―――?
―――思い出したくも無い。けど、何度も思い出してくる。
ゲームに夢中になって、移動する時も電源入れたままだった。部屋まで我慢してれば良かったのに、その時はどうしてのポーズに出来なくて歩いたままやっていた。
途中……誰かにぶつかった。
下向いてゲームに熱中していた僕が悪い、それは判る。直ぐに謝ったし、あっちも軽く会釈してきた。
けどぶつかった奴は僕の顔を見るなり腕を無理矢理引っ張って―――
誰もいない部屋に押し込まれて―――
変な事言って―――
とつぜん、―――
「…………………………クロト〜?」
「ぅわっ! ……な、何だよシャニ!」
突然、シャニが顔を出す。いつの間にシャワールームに来ていたんだろう。……足音も聞こえなかったし気配も一切感じられなかった。
慌てて手を後ろに隠した。……丁度指を出した所だったから…………何してたかバレてないと思う。
「……なんか……変だったから……」
「変……? 僕、どこか変?」
……僕よりお前の方が変だと思うけど。
服を着たまま僕が浴びていたシャワーに直撃されているシャニは、どう見たっておかしい。
「……変」
「だから、ドコが変なんだよ!」
「…………変な声出してた」
「っ!!」
今更口を塞いだって何にもならない。でも聴いていたのがシャニだけならいいだろう。……シャニは物凄く鈍いから、きっと何していたか判らない筈。……多分だけど大丈夫……。
もう出る、とシャニに告げると「今度は俺が入る」とその場で脱ぎだした。
……やっぱり僕よりシャニの方が変だ。
―――そうだ、ずっとシャワーを浴びていても仕方がない。
まだどこか気持ち悪かったけどシャニと交代で外に出る事にした。
今の基地に来たのは数週間前。
訳あって僕はこの基地に配属されて色々機械をいじってる。
シャニは初日に出逢った変な奴だった。おっさんが僕と同じ『仲間』だと言って置き去りにしていた奴。
おっさんが立ち去った後、ボーっと突っ立っているだけだった。……耳には音楽の流れたイヤホンを付けていて、その音量がの最大で、とにかくうるさかった。
第一印象は勿論、『変な奴』。僕は滅多に誰かと話なんてしないけど、ついお節介焼いて一言言ったら、……それきり縁づいてしまったらしい。
ずっと、シャニとは何かある度にいっしょにいる。いっしょに飯を食べたり(食堂一つだけだし)、シャワー浴びたり(今さっきみたいなの)、いっしょに寝たり(僕が注意してあげないと床で寝るから)……。
……まぁ、同じ基地の同じ部署に配属されちゃったんだから会うのは当然なんだけど、シャニと僕の遭遇率はとにかく高い。
かといって、仲が特別良いって訳じゃないんだけど……。凄く、微妙な関係だ。
「…………あぁ、指……ふやけてる」
シャワールームを出て、ふにゃふにゃになっている僕の体を見る。
どれくらいシャワールームに居たんだろうか。……それより、僕はどれくらいあの部屋に居たんだろうか?
「……」
思い出したくない。なのに、どうして頭の中はずっとあの時の事しか映してくれないんだろう……?
ちゃんとこの頭を憶えている。
ある見知らぬ男にぶつかって―――
暗いところに連れ込まれて―――
俺のモンになれとか言われて―――
そのまま、―――
「……クロト、やっぱ変……」
「わあああぁぁっ!!! 突然出てくるな! ビックリするだろー!!」
そのまま一歩前進していたら、……シャニと真っ正面から衝突する所だった。
というかシャニ、今さっきシャワー入った所だろ…………!
―――控え室で来る人を待つ。
その時間が来るまで、シャニはソファで(またガンガンに音楽を聴きながら)寝ている。控え室で入り口に近いソファはシャニの定位置になっていた。他に使う人がいないんだからいつ寝てようが誰にも注意されない。
……ソファなんかで寝るより、ちゃんとしたベッドで寝た方が気持ちよいと思うけど、シャニはあのソファがお気に入りらし。アイマスクで表情は読めないけど、何だか幸せそうな寝息を立てている。
僕も、待ち人が来るまで同じようにソファでゲームを再開………………したのに直ぐに止めてしまった。
何だかゲームをする気になれない。
僕は、僕からゲームを取ったら何が残るんだろうと言うぐらいゲームが好きだ。そろそろ今やっているゲームがラスボス近いから、気合い入れて頑張ろう……そう思っていたのに…………やっぱり、今日あった事が気になっている。
「…………あれ…………?」
今日あった事を思い出すと、……体が……何だか熱くなる。思わず携帯ゲーム機も手放して、体を落ち着ける。
この熱さは、中毒症状じゃない……。
―――アツイ………………
シャニの眠っているソファを見る。シャニはアイマスクをしているから、僕が何をしてようが知らない。
……そっと、熱くなっている部分をさすった。
「…………んっ…………」
―――本当に、僕は、どうしちゃったんだろう……?
ヒュンッ、と風を切るような音がすると同時に手を引っ込めた。扉が開き、共に嫌な上司の声がする。
「あー君達、お待たせしました………………シャニ、起きなさい」
「……」
シャニはアイマスクとイヤホンの完全装備を外す。
あんなにヴォリューム高く聴いているのに、どうしておっさんの声が聞き取れたんだろうか……やっぱりシャニって変……?
「はい、ちゃんと起きて下さいね。……大分遅くなりましたが、今日やっと三人目が決定しましたよ」
おっさんは長い話を始めた。
僕とシャニが数日前にこの基地に連れて来られたのは、正式な新型モビルスーツの生体CPUとして選ばれたからだ。殆ど同時に二機のCPUは決まったけど、残り一機はまだ決まっていなかったらしい。それがやっと決まったと……そのパイロットになる奴が今日この基地に来たから紹介しておく。
時間がやたらかかったけど、おっさんはそう語った。
……そういえば、おっさんの後ろの方には一人男がいる。
金髪の男だ、……おっさんも金髪だけど同じ色じゃなかった。
それでも凄く綺麗な髪の男で、体は大きいけど僕達と同じぐらいの年だった。
男。
別の基地から連れて来られたらしい、見知らぬ男。
「彼が、―――彼が君達の新しい仲間になります。君達より少しお兄さんになるんですかね。仲良くやるんですよ。―――これから死ぬまでの『仲間』になるんですから」
そう、最後の方に強くアクセントを置くとおっさんは去っていく。男をこの空間に置いて。
……背はシャニより少し高いぐらい。けどがっしりとした体付きで、今の表情は少し固かったけど……僕なんかより、ずっと大人だと思った。
残された男は、……とりあえず傍のソファに眠っていたシャニに近づく。
「……宜しく」
「……うざー……」
ソファに再度倒れたシャニは、シャニらしい挨拶をした。……一瞬、男の顔つきが強張った。けれど直ぐに綺麗な顔に戻る。視線を上げて、―――今度は僕の方を見た。
新型の生体CPUに選ばれたって事は、やっぱり強いんだよな……。
でも僕より弱いに決まっている。直ぐにレイダーに選ばれた僕よりずっと遅くに決定したんだから弱い筈だ。
……けど僕より大きくて、少し怖いとも思った。目は少し鋭くて、その目つきが余計迫力を出さしている。
僕の知らない、光る目が…………。
「そっちも―――な」
「………………ッ!」
違う。
知らない筈がない。
僕は確実にこの目を知っている。
……宜しくなんて出来るもんか。
此奴は……間違いなく…………
僕を襲った―――
「………………クロト、おかしー?」
「だあああぁぁっっ!!! 何でシャニいっつも瞬間移動するんだよ!?」
ボーっとしてたら目の前にシャニが覗き込んでいた。……って、シャニさっきまでソファで寝転がっていたのに……?
なのに僕が見ている時の動作は、物凄く鈍い。
ゆっくりと振り返って、こちらを眺めている男を見た。
見て、また僕の方を向いて核心をついてくる。
「……クロト。あいつの事がキライ……?」
「キライだよ! だって、アイツは………………!」
僕を、―――。
「………………お前を、何だよ?」
「―――っ!」
男が笑った。
間違いなく笑った。
次に言おうとした言葉を知っていて笑った。
何で知ってるって、―――当然、僕をあんな目にあわせた本人なんだから―――!
「アイツ……なに?」
シャニが判らないと首を傾げる。けれど、それに答える訳にはいかない。
「な、何でもない! …………でも僕はアイツ嫌いだから!!」
「……ふーん……」
それで何故か納得したらしく、シャニは何も言わなくなった。代わりに、シャニが男と話す。
「おぃ、この基地書物庫とか無いのか?」
「……知らない……」
「そっか……基地来るまでに持ってきた本は全部読んじまったからな」
「……おっさんに言えば貰えるんじゃないー?」
「……そんな野郎には見えなかったけどな」
何か、シャニは初対面のくせによく話す。元々アイツからはそんな悪い奴っぽい雰囲気は無い。今が本当に初めて会ったのなら、僕もアイツの事を少しは好きになってやれるかもしれない。
―――けれど、アイツは………………。
「クロト、って言うのかお前?」
「なっ、何で僕の名前知ってるんだよ……!?」
「……此奴が言った」
此奴、と指さされたのは勿論シャニ。何でシャニの奴、そんなに其奴に心許してるんだよ……!
其奴、本当はすっごく悪い奴なんだぞ!
……何故って、言えないけど…………。
「俺、来たばかりだからわかんねぇ事ばかりだと思うけど頼むぞ」
「嫌だ! 絶対お前の事なんか…………!!」
「…………クロト、やっぱ変ー…………」
おかしな奴、とまた笑った。
今度は馬鹿にしたような笑みだったけど、その笑い方にまた腹が立った。
みんな、最低だ―――。
後々知った事だけど
アイツの名前は、オルガって言うらしい。
その名前を知ったのは、ヤられてから三日後の事。
/2
部屋のソファは二つ。必要なのは三つ。
一つを使って僕はいつものようにゲームをしている。けれどゲームに集中しきれない。いつもならこの時間にはとっくにクリアしているのに、集中できないからゲームオーバーになってばかり。
それでも他にする事が無いから同じ事を繰り返す。スタートして、……ロクに画面を見てないから落とされて……、またスタートして。その動作が三桁を越えた時点で、電源を落とした。
シャニは昼寝をしている。もう一つのソファを使って。
……オルガは読書をしている。その一つのソファをで、二人とも静かに…………。
「どうした?」
「……っ……!」
オルガが見ているのに気付いて目を逸らした。仕方なく落とした電源をもう一度付ける。
何度もプレイしたゲームを、……ちっとも進まないゲームをもう一度。そしてまた切る。……やっぱり集中できない。
「ん〜…………」
オルガの声に反応したのか、シャニが唸った。軽く寝返りをして、……また深い眠りに入っていった。
…………よくあんな所で寝られるな、と思う。
いつもソファで不安定な体勢で寝ているけど、疲れないのかなと心配になる。
けど今は、いつもより多く心配してやっている。……さっきからシャニが気になっているのは、大人しく心地よさそうに眠っている直ぐ傍に、―――彼奴が居るから。彼奴から、見張ってやってあげないと―――。
シャニは彼奴がどんな奴か知らないから気を許している。
けど、……本当は酷い奴なんだって教えないと……。
…………何で酷いのか教えられないけど。
「…………何だ? お前も『されたい』のか?」
「誰が…………っ!!」
……オルガに、膝枕をされながら気持ちよく眠るシャニ。出逢って三日目の奴にどうしてそこまで心が許せるのか僕には判らない。
普通に出逢っていれば良かっただろうに
―――どうしても、僕は………………。
仲間としての成績は上々だった。あの重火器系の機体を操るだけあってそれなりに強いし、……僕には敵わないけど、僕が知っているパイロットの中では一番の腕だった。
シャニはいつも本気を出さないからどれだけ強いのか僕は知らない。……けど多分オルガよりは強い。もしかしたら僕よりも…………って、そんな事はどうでもいい。お仲間として一緒にいるが、出来る限りオルガと一緒に居たくない。
「…………そんなに見るなよ」
「っ…………!!」
本に目を通しながら、巫山戯口調でオルガが言う。
別に見たくて見てるんじゃない! 只、シャニが何かされるんじゃないかって心配で…………!!
……その心配も知らず、シャニはオルガの膝の上ですやすやと眠っているけれど。
「……そんなに気になるか? 俺が」
「お、お前の事なんて…………!」
多分、オルガが言っている気になると今の僕は違う。
もうシャニも見ない、と決めてゲームだけを見る事にした。シャニも僕の気持ちなんて全然判ってくれないし、…………そうだ襲われちゃえばいいんだ! シャニの事なんて知らない! オルガの事なんて、知りたくもないし……!!
「…………嘘つくなよ」
オルガは、……眠るシャニの頭を丁寧に退けて立ち上がった。座っていたソファにシャニをちゃんと寝かせて、自分の上着を掛けてやる。そんな行動は優しいんだな……と見ていると、立ち上がってそのまま僕の元へ……。
「…………っ、な、なんだよ!」
「いや……な、シャニって寝たらまず起きないだろ?」
……言うとおり、シャニは一度寝ると絶対に起きない。今さっき寝返りした時は起きていたかもしれないが、今は規則正しい寝息をしながら、完全に眠りの世界にいってしまっている。絶対に起きないし、起こせない。……いいや、起こすなんて馬鹿な真似誰が考えるか。それくらいシャニはしぶとい奴だけど、………………だけど?
「それまで遊んでようかなって」
「え……? ………………っ!」
―――どさっ。
勢いよくオルガが覆い重なってきた。ソファと、オルガのでかい体にサンドイッチされて息が詰まる……。
「わ……? あ……っ、ばっバカ! 退けよ!!」
ゲームはあっという間に取られて、放り出された。電源は切ったままだったので大丈夫だったけど、ゲーム機の心配なんてしていられなかった。
いくら叩いても全然退かない。どんなにオルガを押しても重い体はちっとも動いてくれない。
「退けー! 変な事すんなー!!」
「変な事ね、……もう何するか分かってんだな?」
「……っ!」
「ならいい、……前の続きしようぜ」
「やっ……!!」
そりゃ服脱いでのし掛かって来たんだからアレだと思うじゃないか! 今のオルガの目は、―――間違えなく三日目のものと同じだし! でも、……僕は男なんだからこんな事は…………!
「黙ってろよ……」
「ぁ……っ!」
乗っていた体が少し退いた代わりに、―――腕が服に入り込んできた。ひんやりと冷たい指が肌をかすっていく……。
「前はこうするとよがりまくってたよな……?」
「違……っ、は……っ、……ぁ……!」
ソファから逃げようとしているのに、馬乗りになったオルガが足を完全に固定していて動けないでいた。締め付けるようで痛いのに、……手は器用に、細かに肌の上を這い回る……。
これじゃあ……三日前と同じ。なんとかしなきゃと思うのに、……ちっとも体が動いてくれない。
「あ…………やっ……」
「お前、そんなに感じやすかったのか?」
「そんな訳…………!!」
無いのに、……オルガの手は僕を反応させる所ばかり弄ってくる。ニヤニヤ笑いながら、敏感な所を、十本しかない指が陥れていく。躰に一つ指が触れる度、出したくない声を全て口に追いやっているようで―――。
「やぁ、……やめぇ……っ!」
「でかい声出すなよ、…………シャニだって起きるかもしれないぞ?」
「なら……っ、やめろよっ……! …………ふぁっ……」
シャニがこんな事で起きないぐらい知っている。オルガよりは……シャニと一緒に過ごしてきたんだ。
けれど、……同じ部屋に人がいるって分かっているのに、オルガは―――。
「ろ……やめ………………やだ……ぁ……」
わざとこんな事をして……。
どうして、こんな………………。
「………………そろそろいいか」
「え、………………っ!!」
オルガの手に掛かるとズボンも一気に下ろされて。
あっという間に力を全てオルガに奪われて……。
オルガの目が、まじまじと僕の下を見て…………。
「ほら……俯せになれ」
「あ……っ」
オルガに言われる通り、ソファの上で四つん這いになる。オルガの声になんか従いたくないのに……自然とそうなって。
そしてその後は、………………。
「……は、ぁ…………あぁあ……ああ……っ!!」
……声も殺す暇も無い行為をずっと……。
―――ほんとうに、どうして僕がこんな目に―――?
―――オルガが去った後、急いでシャワールームに駆け込んだ。
早く流さなきゃ。
慌てて蛇口を捻って出るのは―――冷水。
だけど何でも良かった。水でも熱湯でも体を洗い流してくれるものならば。
冷水が、徐々に躰を冷やしていく。
それでも、……躰の中はまだ熱い。どくどく、ドクドクと中でずぅっと波打っている……。
―――きもちわるい……。
また三日前と同じ惨めな姿を繰り返した。
暫く躰を洗い直した後、自分で中を弄くって、……オルガのモノを吐き出して……。
……ずっと消えてくれない苦しさが躰を回っていて…………
「あ…………ぁ……あ…………」
―――悔しくってその場に崩れ落ちた。
うっすらと、硝子に映る自分の姿が見える。そこには、見苦しい自分の躰しかない。
―――躰に、赤い斑点が付いていた。
虫食いの痕のような傷跡が無数に躰に。
犯された事実を記す刻印が。
「………………ひ……ぃっく…………え……」
涙が流れた。
シャワーの滝に負けないぐらいの涙が―――。
/3
―――どれくらい洗い流せば気が済むんだろう。
冷水が躰に痛い筈。最初は涼しくて気持ちイイって思っていたシャワーも、浴び続けていれば苦痛に変わっていくだろう。
けれど、その苦痛は他のモノに比べれば凄く小さいモノで。そんなの、全然苦しくなんか無くて…………気持ち悪くて……。
―――あとどれくらい苦痛を味わえば解放されるんだろう。
汗も嫌なものはみんな水が追い払ってくれた。
なのに、紅い印はいつまで経っても流れてくれない。
流れてくれるまで、シャワー浴びるつもりなのに…………痛いけど流れるまでは……。
―――オルガもどれくらい僕を痛めつければ気が済むの…………?
凶器のようなシャワーを止めたのは、―――僕じゃない手だった。……黙って水を浴びているだけじゃ、傷は癒えてはくれなかった。
「…………あ…………」
「……」
目の前には、……いつの間にか居るシャニの顔。いきなり現れた、無表情の顔。
服を着たまま僕の直ぐ傍に立っているから、冷水シャワーをくらっていた。
無言。……それに合わせたのか、僕も声が出なかった。今はシャニに驚いても大声で声も出ない。
……さっきので全部出し切ってしまったみたいで、出てはくれなかった。
「…………見るなよ」
「……」
―――紅い痕を隠す。
シャニは僕の顔しか見ていないから隠しても意味無いと思うけど、……この傷痕は他人に見られたく無かったから隠した。
でも、……傷なんかより僕自身を隠してしまいたい。出来れば何処かに逃げ込みたい。
……彼奴の居ない何処かに―――。
「……見るな……ってば…………」
「……」
痕の次は顔を両腕で隠す。すると僕の腕を掴んだ。力強く掴んだ手は、顔を隠そうとする腕を引いて……。
「見るなよっ、……見るな……ぁ……!」
「……」
……一度、僕の泣き顔を見て、シャニが抱きついた。
―――シャニも冷たい。
冷たいシャワーをずっと浴びていたから長い髪も大きめな服もみんな濡れている。
……でも、僕よりはずっと暖かい……。
「……冷たくない……?」
「……寒い」
「俺も」
「……じゃあ離れればいいだろ」
「離れたら、もっとクロト凍えるだろ……?」
「……」
「……だから、……暖めてあげる…………」
そんな事言うんだったらお湯でもかけてくれればいいのに。
水で濡れた服着てるんだからいっくら暖めてあげるって言ったって変わらないのに。
それくらい少し考えればシャニだって分かる筈なのに。
抱いてくるなんてうざいのに。
……本当に、シャニは、よく、分から…………。
「っ…………ぁあ、ああああ……」
シャニを抱き返して、今度は僕がシャニを抱きしめた。
―――部屋に戻ってきた。けど本当に戻ってきた場所は、僕の場所じゃなくてシャニのベッド。シャニに手を引かれたまま帰ってきた。
今夜はシャニのベッドで眠る。普通なら恥ずかしいと思うかもしれない。けれど今日は何とも思わなかった。……さっきの冷水のせいで感覚が麻痺したとか……?
「シャニ、おやす…………」
おやすみ、と言おうとした時、―――既にシャニは寝息を立てていた。
「……」
すやすやと。規則正しい寝息も聞こえる。……今見ただけだと、もう数時間前に眠りの世界にいってしまったような寝顔だ。
もしや、シャワールームに現れたシャニは眠っていたのだろうか。……普段のシャニがあんなに優しい訳がないし……。
「……おやすみ」
強ち、間違いではないと思う―――。
……帰ってきたベッドは、予想以上に暖かかった。
シャニの体温で暖められたシーツが気持ちイイ。
……さっきまであんな場所で涼んでいたから余計に気持ちイイのかもしれない。
―――いいや、あんな事以外だったらどんなモノだって―――
―――部屋が開く音に目を覚ました。そんな小さな音に反応してしまうのは、完全に眠りに着けないせいだ。
どんなに微かな出来事でも敏感になってしまっている。警戒心がいつもより高い。それもみんな全部…………
「ん? 何だクロト、まだ起きてたのか」
「……寝てたよ、さっきまで!」
…………みーんな、オルガのせいだ……。
時計の針は夜遅くを指していた。こんな時間まで起きていた事は一度も無い。何処を見たって真っ暗な時間。
そんな時間にオルガは帰ってきた……一体、何をしてたんだろ…………。
……って、オルガの事なんて考えるな!
「ちょっと白衣の相手してたんだよ。……まだ薬の効果が曖昧だからな、俺は」
「そんな事……、聞いてないっ!」
「聞きたそうな顔してたくせに」
暗闇の部屋でも分かる。
―――オルガは今、笑っている。僕を馬鹿にしたように笑っているに違いない。そんな顔見たくないから、……灯りがなくて良かった。
「まだそんな調整やらされてんの? 遅くない?」
「慎重にやってんだよ。お前みたいに単純じゃないからな」
「なんだと……っ!!」
「声出すなよ。……シャニを起こすな」
オルガは僕達の眠るベッドの、隣のベッドに腰掛けた。……直ぐ傍にオルガは居る。
……何でオルガ、シャニには優しいんだ? 僕にはあんな酷い事ばかりするのに……!
「シャニ、マジで凄いよな。…………お前があんなに声出してたのにずっと寝てたんだぜ?」
「っ……」
……やっと忘れていた今日の悪夢を、オルガは掘り起こしてくる。
思い出して、……顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。灯りがなくてもオルガも分かっただろう。何で、此奴はそういう事を……!
オルガは、僕の気持ちなんて何にも分からないから……分かろうともしてないから言えるんだ…………!
「…………流石に、この距離だとバレるかな?」
「え、……………………ぁっ!」
少し体を前に傾けて、……僕を隣のベッドに引き寄せた。
「やめろっ! 此処は…………っ」
今度は控え室に居た時とは違う。確かにあの時も近かったけど、……今は直ぐ隣でシャニが寝ているんだよ!?
あの時よりずっと近い所にいるのに……!
「シャニは絶対に起きないだろ……?」
「でも、…………んあぁ……っ!」
躰を力強い腕で締め付けられる。そしてまた細い指が体中に巻き付いてきて……
「やだ……ぁ……や…………っ!」
もう無いと思っていた淫らな声がまた口から飛び出す。恥ずかしいけど、どうしても我慢出来なくてずっと……。
「黙れって」
「そん、な…………ぁあ……っ……」
そう言っているくせに、オルガは僕に声を出さそうとする事ばかりする。……否、してきたのに、今は止めて
「…………何度も言ってるだろっ」
大人しく、唇を重ねてきた。
―――ちゃんと、僕の唇に。
………………え?
―――口が、熱い。
………………あんなに、酷い事ばかりしてきたのに。
―――生暖かい感覚が、全身を痺れさせて……。
………………キス、なんて……。
―――今更……。
「…………あ」
一度、躰の器官が全て無くなればと思った事もある。
今まで口に何を入れられた?
最初は指とか突っ込まれて吐きそうになったんだっけ。
確かその次は確かシャツ噛ませられたんだっけ?
……あぁ、確かオルガのモノも銜えさせられた事もあったっけ……。
でも何だか、今回のは違う。―――全然痛くない。
「……」
「………………ふぁ……ん…………っ」
……何を、してるのだろう……?
―――なんで、……キス……なんか…………?
「……大人しくなったな」
オルガに長く、長いキスをされて力が抜けてしまった。
変な声は全然出なかった。気持ち悪いと思っていた事も、全て忘れてしまいそうだった。……シャニが隣で眠っている事も、みんな……。
「い、一体何飲ませたんだよ……っ!」
「はぁ? お前何言って…………」
あれは一体何だったんだろう。
一瞬、有り得ない感情を抱いてしまった。
オルガに、
―――キモチイイだなんて絶対、感じる筈のない感情を…………―――。
/4
熱い。躰が燃えるように熱い。
自分の躰なのに調整が巧く出来ず、一切言うことをきかなかった。勝手に騒ぎ出す躰。間違いなく一心同体なのに、正常な頭は異常な躰に命令する事が出来ずにいる。
とにかく熱い。躰を冷やしたくてもその方法が何も思い浮かばないし、浮かんだとしてもやるまで躰がついて来てくれない。大量の汗を流し、歯を食いしばり、一点に神経を集中させる。どれだけ苦しんでも熱を外へ放出する事は出来なかった。
苦しい。苦しくて、苦しすぎて―――こんなに苦しいのに死ねなくて。
死んで楽になりたいと何十回考えたか。死のうと思って自分で首を絞めたが、そんな力はもう尽きて、舌を噛んで死のうと思っても、……歯を動かす力さえも無くなっていた。
どうして、―――俺が、こんな…………?
「まだ不安定だな、―――パターンを変えてみるか」
やっと行動に出だした白衣達が薬を変えてくれた。体中でおかしさを表現した甲斐があった。急いで受け取った薬を飲み干す。……一気に飲み干してみても、躰の熱さは変わらない。……いつまで経っても、いつまでも熱い。
コーディに勝つ為だ、とか無理矢理に理由付けられてあんな薬を飲まされて気分が悪い。―――だが躰は熱く、最高に興奮していた。
今なら俺は何だって出来る。そんな理由も無い自信が無駄に湧いていた。何にその力を発揮しろとも言わず、白衣達は俺を解放する。
力を手に入れても何もするなと言うのか。こんなに躰が熱いのに、そのままでいろっていうのか。
そんな、このままでいるなんて無理だ。何とかしてこの熱を、外に。
この熱を、誰かに。
「……」
誰でも良かった。俺の暴走を受け止められる奴なら。
「………………」
視界に、獲物となるモノが入った。当然、この躰の俺は衝動に駆られた。
……獲物となるモノ。綺麗な赤毛。視線は手にしていたゲームだけに注がれているが、その目は自分好みの色をしている。
それに小柄な身体に、……抱き心地の良さそうな腰。……こんな所に、子供なんて居たのか。
まぁ、子供だろうが何だって良い。
「―――お前、可愛い顔してるな」
今俺に必要なのは餌になる獲物。
……何も気にするな。考える事は、ただ自分自身の為だけを。
携帯ゲームを手から抜き取り、怒って殴りかかろうとしてきた腕を掴む。その腕を掴んだまま人影の少ない部屋に連れ込んだ。予想通り赤毛の子供は抵抗してくる。意味も無く振りかざして来た手をかわし、お返しにこちらから殴りかかる。本当に子供と遊んでいるような感覚になった。……否、真に子供と遊んで殴りはしないか。
「何なんだよお前は…………!」
可愛らしい口から飛び出してきたのは、甲高い声。最初は汚く口走っていたが、押し倒した後、今度は二〜三発腹を蹴ってみた。高いと思った声は無く、獣が呻っているような低いものに変わる。あんなに騒いでいたのにすぐに大人しくなった。
―――おまけに付いてくる、怯えているような目も堪らない。
「何……すんだよ……」
「少し遊べる玩具が欲しかったんだ………………お前……俺のモンになれよ」
……興奮していた。
薬のせいとは言い切れない。全ての原因はあの薬にあるだろうが、今こうやって名前も知らないガキを倒しているのは『俺自身』に原因がある。
可愛い獲物を見つけた。これを逃してなるものか。
―――考える前に熱い身体は身勝手に動き出して今に至る。
既にこちらは出来上がっている。倒されたガキはずっと反抗的な目で睨んでいるが気にするな。この苦しさを誰かに味あわせる事が出来れば何だって良いんだ―――。
「ぁ……あ……んあぁあ…………っ!」
前座も無しに挿れ込む。悲鳴は何度も上がった。痛い痛いと下で藻掻いている。
自分もきついと思ったが構わない。何度も挿れればそのうち慣れるだろう。自分も、……此奴も。
一度入る所まで挿れたモノを引き抜いて、また突き刺す。その度に悲鳴が挙がったが、気にする事も無い。
涙……と血を流しながら苦しむ姿。その姿が余計に俺を興奮させて俺の中の熱を更に大きくさせる……。
泣き叫ぶ躰に、一心の熱を。
「……んっ、出すぞ……!」
「ぇ……ぁ、……あぁあ……!!」
俺が何を言ったのか此奴は理解していないだろう。医務室から感情が高ぶっていた俺は早くに果てた。犯されている側がいっしょにイける筈がない。早くに出してしまった俺を、口を開けたまま……涙を流した目で見ていた。不思議そうに、未だ自分に起きた出来事が理解出来ずに。
―――熱が完全に引いたのは何度目だっただろうか。中に二度、外……背中や腹、顔にかけてやった時には熱は収まっていた。だがそこで終えたのでは気が済まないので、ボロボロになるまでやり続けた。
終わらせた理由は単純。……部屋に漂っているのは自分の匂いだが、……何分臭い。あまりの臭さにやる気も失せた、と言った所だ。
「……はぁ」
此奴の中は狭かったし少し痛がったが、最後の方ではそれぐらいが丁度良かった。何より、その―――最後の方では犯されている此奴自身が自分で動き出したし。
やられているうちに自分のポイントを掴んだのか、無我夢中に腰を使い始めた。……本人は記憶無いだろうが、AVのような台詞も言ってきた。只の通りすがりのガキが、このまま終わらせるのも惜しいぐらい上等なものになっていた……。
「なかなか良かったぜお前……」
情けを掛けるように、裂いて捨てた服を倒れている周りに置いてやる。それだけで俺はそこを離れた。
―――用は熱を放出出来ればそれで良かった。
少し我慢して、シャワーに行って身体の熱を冷やせば良かっただけの話。それだけの話が、この後の生活を大きく変えていくのだから人生は分からない。
……自分の行動に後悔しなかったと言えば嘘になる。見ず知らずの人間を……男を……しかもあんな子供にやってしまった。
だが俺を訴えても俺には戸籍がないから訴えても厄介だろうななんて考えたり、……男が男にやられたとか言えるか? あんなガキが? などと、あまり真剣には考えていなかった。
狭い院での生活だ、どうせそのうちまた会うだろう。……相手の事など知らないと、気楽に考えていた。
―――だからあの時、俺の『仲間』として再会した時は。
「彼が、―――彼が君達の新しい仲間になります。君達より少しお兄さんになるんですかね。仲良くやるんですよ。―――これから死ぬまでの『仲間』になるんですから」
俺を連れてきた男が、俺の『仲間』らしい二人に紹介する。同じ年頃の少年達とは聞いていたが、……俺よりずっと子供な気がする。そうだ、……あの時ガキだとずっと思っていた奴が。
俺の目を見て、怯えていた。
本人は精一杯睨んで威嚇しているらしいが、俺には怯えているようにしか見えなかった。
彼奴が『これから死ぬまでの仲間』? MSの腕は優秀かもしれないけど、……俺にずっと殴られたままだった彼奴が?
―――瞬時に考えていた。俺はあの時こんな事を言ったと思う。―――俺のモンになれ、と。あの時限りの言葉で言ったつもりだったが、……これから死ぬまで付き合うと分かれば――――――本当に俺のモンにするか、と。
「……オルガって、冷たい……」
「あ……?」
ソファでくつろいで本でも読んでいた時。突然、何を言い出すかシャニは俺に近づくなりそう言った。
近づいて、……白い手でペタペタと触ってくる。手や胸ならともかく、……額、頬と顔までバシバシ触ってきた。
「何してんだ……?」
「こんなに冷たいのに…………何で暑がってんの?」
……少し改造してある制服を、『暑いから腕を切った』と解釈したらしい。確かに暑かったのは本当だが、身体の熱さは一時的なもの。戦闘時興奮させる薬の試薬品で暴走して、そして―――。
「……別に暑がってなんか無い」
「……ふぅん」
そう答えるとあっという間に、シャニは眠りだした。
―――俺の身体を、枕代わりにして。
「……」
揺さぶっても起きる気配は無い。シャニは一度寝ると起きないという習慣をその時知った。それから何度か俺はシャニの枕にさせられる羽目になる。
あの暴走から三日後。他の一人が昼寝中に行動を起こす。
あれから何故か懐いてきたシャニを世話していると、……クロトが睨みつけてきた。……俺を見て何を考えているのか。
「……そんなに気になるか? 俺が」
「お、お前の事なんて…………!」
「…………嘘つくなよ」
……シャニの頭を丁寧に退けて立ち上がる。座っていたソファにシャニをちゃんと寝かせて、自分の上着を掛けてやる。そして、ゆっくりとクロトの元へ……。
「…………っ、な、なんだよ!」
「いや……な、シャニって寝たらまず起きないだろ?」
―――理由は何だって良い。遊べればどんな訳だって作ってみせる―――。
「前はこうするとよがりまくってたよな……?」
「違……っ、は……っ、……ぁ……!」
そのまま抱く。
敏感な所を軽く弾くと簡単にクロトは反応した。思うが儘抱いた。……否、抱いたなんて優しい表現が合わない。―――犯し尽くしたとでも言うべきか。
「ほら……俯せになれ」
「あ……っ」
声を掛ければ、何だってしてみせる。言われた通りクロトは俺に尻を見せて、ソファの上で四つん這いになった。あんなに反抗しているのに、……流されやすい性格なのか自然と俺の言う事を聞くようになっていた。なら俺はその期待に応えてやらなければ、………………。
「……は、ぁ…………あぁあ……ああ……っ!!」
……三日前に切れたそこは先日よりは通りやすく、ずっと熱い。
「シャニが……起きるぞ……っ」
「うあ、あ……ぁあ……!」
シャニの存在を気にしながら、……それでいて派手に喘ぐクロト。
……純粋に可愛いと思う。こんな不純な遊びに純粋も無いと思うが、必死になって喘いでみせるクロトは俺が今まで見てきたものの中で一番だ。
「……もっと……乱れてみろ……っ」
「ぁ、あ―――……っ」
―――遊べる。長い時間、飽きずに遊べる玩具だと改めて思った。
……俺一人、研究で取り残されている。最後に三機の生体CPUとして選ばれた俺はあの二人よりも不自由だった。
成功した所で自由にはならないが、何かある事に変な物を飲まされたり注入されたり。……腕と足の指には針だらけだ。
そして、相変わらず身体は―――熱い。一段と熱い。折角クロトで熱を出しきったと思ったが、また溜まってしまってはあの行為に何の意味があるのか。
―――俺の気分転換、それでしか無いか。
夜遅くまで実験に付き合わされ解放される。
帰って来ても安らかに眠れる筈がない。……一人ヌくのも悲しい、と思っている部屋に戻ると、クロトが目を覚ましていた。
「ん? 何だクロト、まだ起きてたのか」
「……寝てたよ、さっきまで!」
無気になって言い返すクロト。……俺を見る目は変わらず被虐心を誘うような可愛らしい目をしていた。数時間前された事でまた怖がってるのか。だがあんな事をされて完全に俺を突き放さない所を見ると、……満更じゃないだろう。
……じっと見つめてくる目は俺を誘っているのか?
自意識過剰かもしれないが、俺を求めているように見えた。でなければあんな嬉しそうに、また可愛く喘がないだろう―――と勝手な言い分を創造していく。
「まだそんな調整やらされてんの? 遅くない?」
「慎重にやってんだよ。お前みたいに単純じゃないからな」
「なんだと……っ!!」
「声出すなよ。……シャニを起こすな」
……シャニ、と言われて余計に頬を膨らませる。―――自分は病んでいる、と自覚するくらいその姿は愛らしい。
「…………流石に、この距離だとバレるかな?」
「え、……………………ぁっ!」
少し躰も熱いし、……今日したばかりだがまぁ良いだろう。どうせ切れるのは俺じゃない。―――壊れるのはクロトだ。
「やめろっ! 此処は…………っ」
クロトがどう思おうが構わない。前よりずっと近場にシャニがいる、その事に抵抗を感じているらしいが、同じ部屋であんなに喘いだくせに何を今更だと思う。
「シャニは絶対に起きないだろ……?」
「でも、…………んあぁ……っ!」
それでも自分を保とうと暴れる。
静かな夜、―――普通なら少し騒げば起きるだろうにシャニは身動き一つしない。……いや、すぴー……と規則正しい寝息はしているが目は開かない。居ないようで居る。聞いているかのようで聞いていない。曖昧なシャニの存在が、クロトの感情と感度を左右していた。
「やだ……ぁ……や…………っ!」
何度も聞いたクロトの淫らな声。何度も聞きたくて声を絞り出させていた。
声を我慢して、それでも微かに出てくる声。それもみんなこの可愛い唇から出てるんだよな―――。
そう考えるとその唇が溜まらなく愛しくて―――キスをしていた。
「……」
「………………ふぁ……ん…………っ」
―――今まで一度もしてこなかったキスを。
……そりゃそうだ、……別に俺達は恋人でも無いんだし。関係も『仲間』と言うのもあやしい仲だ。それに、何度も俺のを銜えた口に自分から重ねるのもどうかしている。
……だけどこの時はしてみたかった。
「…………あ」
間の抜けた声。暴れまくっていた身体が一瞬にして止まった。
……そのまま、クロトの肌を……首筋に味わいながら痕をつける。剥いた肌には前に付けた紅い斑点が付いていた。痛々しいと思う程紅い傷痕だった。
「……」
……俺が医務室に呼ばれていた時シャワールームに行っただろう。……その時この痕は見たのだろうか? そして、どう思ったのか……。噛み付くような真似は何度かしたらしいが、……キスは初めてだった。
俺がクロトにするのが、ではなく。
……クロトが誰かにキスされる、が。
「……あ……ぁ」
「……クロト?」
クロトはさっきのキスで力が抜けてベッドに倒れてしまっていた。倒れて、……まるで魂が抜かれてしまったような目をしている。
名前を呼ぶと、……ゆっくりと視線が俺の方に向かう。……俺の姿を見るなり怯えたあの小さな目とは違う、……もっと可愛らしいと思う目つき。
―――もっと、と縋るような。
「い、一体何飲ませたんだよ……っ!」
「はぁ? お前何言って…………」
何も意味が込められていないキスに、そこまで興奮するものか?
……面白がって何度もしてみた。
「やっ……」
どこを口づけても、可愛らしい声を出す。本当に同年代の男かと疑ってしまうぐらい可愛い。キスをするのは唇だけじゃなく、頬や瞼、手や首にも。
「ひゃ……っ!」
……中でも耳は特別弱く、舐め上げると特に高い声をあげた。
「そんなトコ……っ、舐めるな……!」
「じゃあ何処が良いんだ」
「……え……」
聞き直すと、……クロトはもじもじさせて
―――『口にして』……なんてお願いしてきた。
腕を、俺の背中に回して―――。
素直すぎる反応に驚きながらその願いを聞き入れ思う存分キスをしてやった。
「……ん……は……ぁ…………」
逃がさないように顎を抑えた。だがクロトは逃げる所か自分からしてくるように唇に引っ付いてくる。
クロトは相当キスが好きみたいだ……。
俺も飽きずに相手にしているくらいだが…………。
「―――好きだ」
「ぇ……っ?」
キスの途中の突然の告白に、戸惑いの色を見せる。
勿論嘘だ。この場を盛り上げる為に言ってみた台詞、…………なのだが、クロトは顔を真っ赤にして俺の目を見てきた。
「好き…………って、いきなり何だよ……?」
「別に。何か言いたくなっただけだ」
数日前に適当に拾った玩具に愛着が湧いてしまった。クロトにしてみれば自分をボロボロにして扱う俺に言われても虫酸が立つ
「………………僕も……好き…………」
……だろうに。
なんか、恥ずかしい台詞を言ってきた。
「……」
言ったのはほんの一瞬。直ぐに黙り込んで俯いた。
「……へぇ、どこが好きなんだ?」
「……わかんない…………お前……酷いことしかしないし…………良いとこなんて……何も無いのに…………」
「お前は、只『こんな事』したいだけなんだろ?」
「…………それは……」
「あぁ、思う存分してやるよ。―――お望みじゃなくてもな」
無駄に長くなった話はこれぐらいにして、続きを始めよう。より熱くなったクロトの中央に、自分のものを押し込む。
「……ひ……っ、……ぁ……」
油断していたのか、いきなり入ってきた異物にか細い声が応える。自分を忘れて、……無理に犯されている相手の背中に腕なんか回してきて
抱きついて、声を上げた。……ホントに可愛いな、と思う。
―――気付けばクロトを愛でる言葉しか思いつかずにいる。
今までとは違った風に抱く。
何も考えず己の為だけに犯し続けてきたのとは違い、キスをして抱きついてきた腕を拾ってやって―――
「ぁ……ルガ、……オルガぁ……ッ!」
「っ……」
叫ぶ声も全て受け止めてやって
「はぁ……っ、……あ、……ぁあ……」
熱いモノを、永遠と与え続けてやる―――。
死んだように眠るクロトを見た。ぐったりと倒れているが、―――涙を流しながら寝ているのだから生きてはいた。
頬には枯れる事のない涙が流れ続け、川は出来ている。……一日中泣いているのにまだ泣き足りないのだろうか。
涙を指で拭いてやりながら考えた。……何度俺は、クロトの事を愛らしいと思ったのか。
最初は、只熱を止めたかっただけだ。興奮していた身体を抑えたかっただけ。クロトにとっては不条理な理由で傷つけられ、俺も傷つけたというのに。
全てが、辻褄の合わない。身体を合わせて何度目かになるが、何一つ得たものはない。
―――躰の熱は、また薬を与えられればやってくるのだから。
「…………少し、やりすぎたかな」
「……………………そう思ってるなら何で止めないの?」
「……っ!?」
声に、体中が震えた。―――別の隣からする声に、恐怖で殺されそうになった。
「シャ……ニ……!?」
「宥めるの……結構難しいんだからね…………またシャワーのとこで泣いてたら、今度は……許さないよ……」
むくり、……とベッドから起きあがる。その距離は、手が届く近さだ。
……本当に眠っていたと思っていた。シャニが起きたらまたクロトの反応が楽しいかもしれないと思ったが、……実際起きた後の対応は一切考えていなかった。
しかも今起きてもクロトは寝ているし。
「お前、いつから起きていたんだ……?」
「……そうだな、オルガが膝から俺の頭下ろした時から……かな…………?」
「……」
全然気付かなかった。
……確かに膝枕で寝ている相手を動かしたら普通は起きる。だが、いつでも冬眠しているシャニならそれぐらいでは起きないと踏んでいた。
……実際にあの時確認して、寝息をかいていたのを見てからクロトの元へ……。さっきだってシャニが寝ていると思っていたから…………。
「……ねぇ、何でこんなに泣かせるの……?」
「……さぁな」
シャニは、二度も隣でクロトが無理矢理やられるのを聞いていた訳だが、……何を考えて聞いていたのか。表情からでは、何一つ読みとる事は出来ない。
「……オルガ、最低……?」
「…………まぁな」
「……今度、ちゃんと話しなよ……」
「あのな、今更どうしろって言うんだ」
無表情は、淡々と言葉を綴る。
シャニはシャニなりにクロトの事を気掛けているようだが、直接的なアドヴァイスは何もしてないようだった。
何か考えているのか。いや何も考えていないのか。……シャニの場合、どっちもあり得る。
「じゃあオルガはどうする気だったの……?」
「……」
俺の場合、……何も考えていない方だった。自分勝手な解釈で人を陥れたのだから。
「このままクロト……泣かしたまま死ぬまでいっしょ…………?」
「………………そうかもな」
そんな関係、あってはならないか―――……?
「今度、俺クロトと話してやるよ……?」
「……何を」
「ん……オルガの事とか……? オルガと話せとか……デートでもしてみる? ……とか…………」
デート?
それほど俺達に似合わない言葉は無いだろう?
―――強姦から始まる愛、なんて。
「俺は別にクロトと『恋愛』する気なんか……」
「『好き』なのに……? あんなに好きって言っておいて」
「……あんなに?」
「何度も言ってたくせに…………」
第三者に言われて、……また躰が震えた。
自分の知らない所で、……自分が何かをしている。調整のきかない躰は何だってする。
熱い躰を操って犯してみたり……記憶の無いところで、好きだと言わせてみたり。
「……だから、少し考えろよ……」
熱は完全に引いている。
考えるなら今だろ、とシャニは眠りながら言った。
/5
苦しがっていた。
自分の不幸を認めたくなくて、誰かに苦しさをぶつけたかった。無理矢理に気持ちを高められたのも苦しかったし、この状況が永遠に続いていくのを考える事も苦痛だった。
この痛みを誰かにぶつけたい。出来る事なら譲りたい。分かち合いたい。
出来る筈もないのに身勝手にそう思った。思いながら、ずっと苦しがる時間が長い…………。
じゃあ俺は、誰かにこの感情を解ってもらいたかっただけだと―――?
……でも、それぐらい楽に我慢出来ただろう? 今までだってそうやって生きてきたんじゃないか……。
堪えきれなかったのは、何故。
俺の欲を切ってしまったのは? 元に戻らない理性を切ってしまったのは、全て、……………………。
―――目を開けると其処にはオルガがいた。つまり、……今僕はオルガの隣で寝ているということだ。
「っ……」
驚いて飛び起きようとする。けど身体が動かない。
さっきまで何をされたか……よく覚えてないけど、きっとまた酷い事をされたんだ。……だって全然身体が言うことをきいてくれないでいる。
もしかして今、紐で縛られている?
それとも、やられる前に変な物でも食べさせられた?
まさか、オルガの魔法で金縛りに……?
……色々な理由を考えてみたけど、動けない本当の訳はもっと簡単なもので―――オルガが、僕を抑え付けているだけ。
腕を僕の身体に回して、抱きついているだけ。たった、それだけ―――。
「ッ…………このぉ……っ」
眠りながらもオルガは僕の身体に引っ付いたまま離れない。いつも嫌な事をしてくる時の恰好だ。身動きできないよう腕で身体を挟んでる。片腕で首をがっちりと技を掛けているから凄く苦しい。でも目の前に顔があるから逃げたら直ぐにバレる。
目の前にいるのは間違いなくオルガ。オルガは僕の嫌いな奴で、僕の天敵で、……見たくもない筈の奴。フツーならそう思うだろう。それなのに自然と今は……………………オルガの腕に抱かれ、キスされている今はそんな事全く思いつかなかった。
「……オルガ……」
……キスってものは好きな人とやるもんだと思っていた。
オルガやシャニはどう思っているか知らないけど、僕はそう思っている。僕の中での常識はそれだ。だから大嫌いなオルガとは絶対にしちゃいけない。
……なのにオルガがしてきて、……僕も何度かしたいと思っているということは…………
オルガは、僕を
僕は、オルガを
………………………………。
―――いや、そんな簡単に片づくものか。
「はっ、離せよオルガ……っ」
声を掛ける。……キス……してくるって事は眠っているように見えても起きているのだから話は出きる筈だ。それでもオルガは腕を離さない。
……思った通りオルガは起きてはいたけれど、僕の言葉は一切聞いていなかった。…………目を開けても、光はまだ指さない。
元々電気の無い暗い空間だけど、オルガの目が僕を見ていないぐらいは気配で分かる。……ずっと、変な目で見られ続けてきたせいか特にそういった気配は分かった。今のオルガは、……只僕を逃がさないよう抱いているだけ。
それ以上の事をしてくるかと思っていても何も無く。僕をぎゅっと抱いて、まるで枕みたいに扱っている。
「……僕は抱き枕じゃないんだぞー……っ!」
「……あぁ、知ってる」
「あ……ッ」
その黙り方に、その頷き。一瞬、―――僕の気持ちも全て知っているような返事に見えてしまった。
判ってるくせに止めようとしないなんて。……やっぱり僕、馬鹿にされてる……?
「知ってんなら……離せって!」
「…………」
オルガは黙ったまま、動かない。
……開かれた目は今一体何処を向いているのだろう?
僕を見ていない目は、何かを考えるように動いていた。
その代わりに動かない腕に躰。嫌いな奴だったら傍にも居たくないだろうに。……人を物扱いするぐらいだったら、そんな大事そうに抱えなくてもいいだろうに。
「オルガ……ぁ……」
「…………」
その腕は何を意味しているんだろう。
一体、何を……?
―――まさか、僕をベッドから遠ざけない為に…………?
「オルガは……何したいんだよ……っ」
……一人話しかけても、何かが帰ってくる様子じゃない。此奴が、抱いていたいなんて思う訳ないけど。好きでも無いのにそんな事しないで欲しい。
今、こうやってオルガの腕に抱かれているのは熱くて、……暖かくて。キスされる事も全然嫌じゃなくなる。
嫌いじゃなくなる。
それは…………とても困ることだ。
「誤解……するだろ…………」
「誤解?」
「そうだよっ、…………何にも思ってないなら……少しはそれっぽくしろよっ!」
……そう、只の遊びぐらいだったら憎しみの目で見られるのに。中途半端な目で、…………誤解するような口付けをされる。
それは苦痛だ。僕の常識を、全て破られるようで。
「それっぽく……というと?」
「そ、それは………………。とにかく、オルガは冷たいんだか優しいんだか判らないから……っ」
「つまり嫌いだったら乱暴に扱え、好きだったら甘えさせろ……とか?」
オルガは妙に飛躍した話をした。言い過ぎかもしれないけど、……そうとも言う。
「そ、そう……僕の事、何とも思ってないんだったらキスなんてするな……!!」
「…………わかった」
―――僕の耳には、最後にオルガの声が聞こえた。理解したと、わかったという意味の声が。
それなのに、キスをしてくる。大人しく、―――ちゃんと、僕の唇に唇を重ねてきた。
「…………………………」
……一体これは何度目のキスだろう?
それと、……一体何のキスなんだろう?
こんなにも口が、躰が熱くて、あんなに酷い事ばかりしてきたのにその優しくて生暖かい感覚が、全身を痺れさせてくるこれは。
―――あの時のものと同じで…………
『好き』と間違えてしまったあの時とそっくりで………………
「ぷは………………ッ」
……さっきのキスは長かった。
とにかく長いものは、躰をおかしくさせる。躰は本当に火がついているかというくらいに熱いし、どくどくと胸は走り続けている。その激しい鼓動はずっと立ち止まる事も無い。
「―――困ったな」
長かったキスが終わった後、全然困っているようには見えなかったがオルガが口走る。ここ数日間の僕の台詞なのにオルガが言った。
「好きなのに乱暴にしか扱えない俺は、どうしたらいいんだ?」
「え……?」
「初めて会った時から好きだったとか―――……一目惚れだとしたらどうすればいい?」
―――最初は本当に。……なんにも考えてなど無かったと思う。
自分にだって考えというものを持って生きてきた筈なのに、半分頭を壊されたら正常な思考なんて無いも同然で。
助けて欲しいと縋り付いた。誰でもいいからと、通りすがりの誰かを。
そう思っていた。何の因縁も運命も感じない相手だと思っていたのに。
―――今は何故、愛おしいと思う。
そうだ、何もかも愛おしいと思う。
何度俺は心で此奴を褒め称えた?
男のくせに可愛いと何度思った。
赤いふわふわとした髪が綺麗だと思った。
どんな目つきでも俺を見てくる青い目も、男の割に事有る事に泣き喚く声も、くるくる変わる表情も―――?
―――それじゃまるで、一目惚れの様だが、まさにそれかもしれない。
「お前を知った時、もう既に好きになっちまったんだ」
「ぅ……そんなの………………どこが……?」
「どこにだろうな。まぁ簡単に言うと……全部―――」
……つい、見つめていると口付けたくなる。了承を得る前に独りでに素肌に口付ける。
……すると力の抜けた声が口から漏れ出した。真っ赤に髪の毛と同じ色に染まる頬は段々と熱も帯びてくる。
「みんな―――好きになったんだ」
熱を感じたと同時、……その言葉に何かが切れた。
一体、どこまで済まされる話なのか―――判らない。
数日間、ずっと苦しめられてきた事は癒えないかもしれない。
ずっとオルガの事は許せないかもしれない。
……この夜が終わってオルガと離れたら、またオルガの事を憎むかも。
けれどそれは僕の常識を破壊した。
その言葉が触れた瞬間、何だかくすぐったくて―――自然と、安心が零れだした。
END
或人様に捧げます、キリバン【1500】小説です。
1/04.3.25 2/04.3.30 3/04.3.31 4/04.4.2 5/04.4.13