■ Craving
/1
口付ける。
舌を出して唇を叩くがきつく結ばれた口は開かなかった。
抱いていた肩は徐々に震え出し、直ぐに我儘な腕が胸を追いやる。
無理に離れさせられた顔は真っ赤に染まって俯かせていた。また口付けようとすると首を振って嫌がった。
……今夜もここまでだ。
クロトは一人でベッドに入ると、……数分後には何事も無かったかのように眠る。
スヤスヤと規則正しい寝息を立てて、……隣で邪な妄想を思い描いているのがいるのも知らず眠る―――。
直ぐ隣に眠っているというのに、何もしないで夜を明かす。
オルガにはつまらなかった。
同時に腹立たしさも沸き上がる。
何故させてくれないのかというクロトに対しての怒りと、……どうしてこんな奴と付き合っているんだという自分に対しての怒りが日を増す毎に沸き起こっていった。
新しく出来た恋人は幼すぎてロクに触れさせてくれなかった。出来てフレンチキス、ただ唇を重ね合うだけのキスぐらいだ。
それはそれで可愛いとは思うが、子供染みたキスはオルガを満たしはしなかった。
告白したのはクロトの方だ。それまでオルガはクロトを「只のムカつくガキだ」か、「うるさいバカ」としか思っていなかったが、告白されて改めてクロトを見てみれば意外と可愛いところもあると徐々に惹かれていった。それなりに自分もクロトの事が好きになっていた。だからクロトの告白はそれまで満たされていなかった心を埋めてくれた。……だが、体は満たしてはくれなかった。
最初は面白半分に待っていた。あのガキはどれくらいで迫ってくるのか、自信はあるのか楽しみにしていた。
だが期待はあっさりと裏切られる。
思った以上にガキだった。……いや確かに見た目からして子供だと思うが、時々赤ん坊を構っている錯覚にさえ陥る。
―――これじゃあ恋人と言う前に兄弟……親子だろ。
隣でぬくぬくと幸せそうに眠るクロトを、どこをどう見れば『恋人』になるだろうか?
そのくせ一端に束縛したりする。
オルガの周りにはそれなりに女性はいた。オルガ自ら誘う事は無かったが、女性から寄ってくる事は何回かあった。だから気分転換になっていた。
しかし今の恋人……クロトは、女性に触れるだけで嫉妬するような奴だ。ちっとも気分転換は出来ずにいる。……一応恋人がいるオルガも『浮気』という言葉は好きではない。出来れば『正妻』と付き合っていきたいとは思う。
色々思う事はある。クロトの子供っぽさは環境が生んだものだし、子供に合わせてやるのも保護者の役割だと―――
―――と、自分で『保護者』と認めてどうする。
……隣では、相変わらず安らかに眠るクロトがいる。
一応という言葉が付いてしまうが、クロトとは恋人同士だ。手を繋ぐ事もあるしキスもする、こうして一緒のベッドで眠っている……クロトはそれで満足していた。
……只、オルガには気に入らなかった。
―――自分はこんなにも葛藤しているのに何でコイツは寝てやがるんだ!
何度口からそれが飛び出そうだったか。自分の我慢強さには拍手を送りたくなる。
こんなにも我慢しているが、報われる事なんてあるのだろうか?
いや、……このままでは絶対に、……。
「……」
眠るクロトの髪を掬う。……ふわりと笑う寝顔があった。
その表情は愛くるしいと思った。……このままの子供らしさも良いとは思った。
だけど、……このままでは満足は、……。
爆発するのも時間の問題。
―――そして、案外その時が来るのは早かった。
「オルガーっ! ちょっと来てーっ!!」
甲高い声がカラミティの内線から響いた。
丁度体を傾けていたせいでスピーカーが耳に直撃し、クロトの声に頭が痛くなる。
カラミティのコクピット席に座り直ると回線を開いた。クロトの顔が目の前の画面に映った。
「……何だよ、デカイ声で叫ぶな」
「ちょっと来て、手伝って」
画面に映ったのはレイダーのコクピットで今のオルガと同じ作業をしている、赤のタンクトップのクロトの姿だった。きっと調整がわからんとかで呼んだのだろう。オルガはとっくに済ませていた。ハッチを開け飛び出てレイダーのコクピットに向かう。
「ココ……分かんないから…………」
「やれ、ってか」
「どーせオルガもう終わってたんだろ?」
……全くその通りなのだが。
溜息をついて、レイダーの奥に入ってくる。
コクピット席に座るクロトの横につき、いつもしている風に指を動かした。
それに一瞬見ただけだが面倒な作業は全て終わっていた。細かい所が残っていたがどれも直ぐ終わるだろう。
頼りにされているのは嫌ではないし、黙ってクロトの調整を手伝ってやった。
しかし、自分のコクピットではない此処は不思議な感がする。クロトの空気で充満している。……おそらくフォビドゥンにいけばシャニの香りがする……のは当然だろうが。
なんだろう。レイダーがクロトに合わせているのではなく、クロトがレイダーに合わせているのだろうが、この空間自体が、隣のクロトと同じ雰囲気を持っていた。
……傍にいる顔に、気が取られる。
『一応』が付いてしまう恋人の、クロトに。
―――顔が近づきるせいで、余計に。
問題が隣り合わせしている。
ぼーっとオルガの指を追っているクロトの目。
何も考えないで開けている口。
半裸、と言ってもおかしくない薄いタンクトップ姿。
何処をとっても無防備すぎる。欲情した雄がいたら恰好の餌じゃないか。
……そして、その餌を頂こうとしているのにも気付かないのも問題だが。
「……」
調子に乗って、―――つい口付けようとしてしまった。
「……え?」
「……」
クロトがやっとオルガが別の行為をしていたのに察し、振り返った。
暫し、オルガの顔を見つめ―――。
「……ぁ、あーっっっ!!!」
……何をされそうだったのか、咄嗟に判断し、
―――ガンッ!
と、腕を振り上げた。
「ッ……!」
クロトの腕が、オルガの顔に直撃した。
それは照れ隠しの筈が、―――オルガにとっては本当の拒絶にしか見えなかった。
「な、なにすんだよバカオルガ…………っ!」
「……!!」
―――攻撃されれば反撃するのは当然の事。
オルガは無意識のうちにクロトも腹を殴っていた。
強い衝撃を打ち込まれ、がくんっとクロトの頭が垂れ下がる。オルガは慌てて倒れてくる身体を抱いた。……手加減無しに殴ってしまい意識を失ってしまったようだ。
―――あぁ、何て余裕が無い。
最近は喧嘩も手を上げずにいたのについにここまで来てしまったか。
再度オルガは溜息をついた。
腕の中には意識を失ったクロトがいる。……これでも毎日同じ肉体改造を行われている仲間だというのに、殴られただけで気絶してしまうのもどうかと思う。
が、『毎日のように肉体改造』させられていればそれくらいのパンチは出来るのか、と一人納得した。
……まぁ、そんな事は置いといて。
苦しげに眉を歪ませ眠るクロト。
……いつもこんな顔をしてクロトは拒み続けてきた。
少しもそれらしい事はさせてくれず、してくる訳でもなく、子供のお守りのような付き合いをさせられる身にもなって欲しい。
迫るとうざいだの変態だの言って遠ざかり、……それなのに一緒にいたがる。うざいと言いたいのはオルガの方だった。しかし怒ればまたクロトが反論してくる…………。
「……お前が、俺を縛るのが悪いんだろ―――」
ふと自分の口から飛び出た言葉に感心する。
―――縛る、……か?
そのフレーズが、何度もオルガの中を駆けめぐり、一つの最低な案に辿り着いた。
―――いっそ、無理矢理開発してやるのもいいかもしれない。
思い立ったオルガは即実行に移した。
レイダーの整備をクロトの代わり終えると、自由時間を貰った。これで今日は呼び出されるような予定は無くなった。直ぐにオルガは自分の部屋から、……いつか使えるだろうと思っていたモノをMSデッキに持ってくる。
相変わらずクロトは気絶したままレイダーのコクピットの奥で眠っていた。
ハッチを閉め、全ての回線は切り外部からの声は一切聞こえない状態にした。バカをして外にもれている事の無いよう、何度も確認した。
その途中にでも眠りが覚めたとしても、また殴ってでも眠らせようと思った。もうオルガには気遣いなどというものはなかった。今まで神経磨り減らして付き合ってきたんだから、今度は俺が好き勝手させて貰う番だ―――と本気で思っていた。
目を閉じて眠っている身体を抱き起こし、クロトのズボンのベルトを外した。
―――流石にここまで揺らされれば起きると思ったが瞼は閉じられたまま。
コクピットに座らせ、浅く腰掛けるような状態にして背中側に両腕を回し縛り付けておく。
これでもう逃げられない。
次に両脚を開かせ、左右の肘掛けに乗せて膝のところで縛り付けた。
中央が露わになった。なかなか面白い絵だ。
半裸で縛り付けられている姿にされているなんて、目覚めたクロトの第一声は、
「ぇ……ぁ…………な、何してんだよ、この変態ッ!!」
……だろう。
正にその通りだったのだが。
「ほ、解けよっ! 何で、こんな事……ッッ!」
クロトの両手は背後で拘束され、足は肘掛けに開かれるように固定されている。最初に服を剥かれていたクロトは完全に剥き出しになっていた。
足首から下をばたつかせて抵抗を示したが、少しきつめに結んだ紐は緩む事が無く無駄な努力に終わった。自分で解く事は出来なければ当然助けを求めてくるが、
「見るなよっ、バカ……っ! 早く解、………………っ!」
……オルガは笑ってその叫びを聞くだけだった。直ぐに頭を振るって耐えるクロトの股間に、手を伸ばし、クロトの突き出していたモノをつまみあげた。
「痛っ……や、め……っ!! 触んなよ……っっ!」
右手の指が、こりこりと転がすように嬲る。
悲鳴のような声を無視して、オルガはゆっくり右手でまわし、擦っていく。そして反対側の手は、自分で触れた事はないだろう下の入り口に指を入れた。
ほんの少し、指を挿入しただけでクロトは高い悲鳴を上げた。上を向かされていた顔を下へ向けて、何をされているか確認した。そこでやっと、オルガが自分の敏感な所を弄くり回しているのに気付いた―――何故そんな事をするか判らなかったが。
「な、んで……そんなの……」
右手では中央をつつきながら、左手で入り口をなぞる。自分で弄って遊んだ事も無い場所に、オルガは初めて触れていた。最初は何度も優しく指を這わせておいて、段々と中へ入り込んでいく。
やがて熱を帯び始め、真っ赤に広がり染まっていく。
「は、ぁ……っ、……やだ……やめ……ろぉ……っ」
息が詰まるのか、くすぐったいのが気に入らないのかクロトは辛そうな呼吸で抵抗する。無理な体勢で縛られていて、敏感な所を扱かれながらの挿入―――どこをとっても辛いだろう。
だがオルガは気遣う事はしなかった。
理由は、最初と同じ。
「最初から素直にやらせてくれればこんな事しなくても済んだのにな」
「ぇ……? なに………………ぁあっ!!」
いきなり、二本指を差し込んだ。
クロトには絶叫を上げるほど苦しい一撃だったが、オルガには至福の時だった。更に熱い奥へと差し入れ、上下させる。
まだいかせるのには遠い距離だが、異物が自分の中で動いているのに、クロトは絶叫した。
「あ、ぁ……っ、痛、痛ぃ……!」
縛られた体を揺する。何とか逃れようとしたが逆に揺する事によりオルガの上下運動を助けていた。何も動かさなくてもクロトは自分で自分をいたぶっているようだった。
下だけでは辛いだろうと、剃り立ち始めているクロトにも力を入れる。
より刺激を与えるよう扱いて、直ぐに達せられるように指で嘗め回す。
だが達する前にオルガは全て指を引き抜いてクロトが落ち着くのを待った。
「はぁ、……オルガぁ……?」
怯えたような目で見上げる。
その目が十分可愛いとは思った、が…………そんな目が欲しかった訳ではない。
オルガが欲しかったのは、少し間違った方向だとしても『恋人』同士の繋がりだ。
強姦ばかりではいくら盲目なクロトでも飽きられるだろう。
それではつまらない。
縛り付けてでも手に入れたかったものは、もっと深いものだ。
簡単に楽にさせはしない。今までしたかった事を全てこの場で実践してもらうつもりだった。
「お前が気持ち良くなって貰わないと困るんだよ」
その為には、より淫乱にクロトにはよがって貰わなければ。
/2
漂わせるのは淫猥な香り。
すっかりコクピット内はクロトの匂いで充満していた。吐き出してしまった精の香りと微かな血、拷問によって席に僅かだが血液が付着している。
「あっ、ぁ……!」
何度も逃げようと身体を動かしたがきつめに結ばれた手と脚は動かない。身動きのとれないまま、オルガに散々玩ばれていった。露出し、反り立っているクロトのモノと晒け出された口にはより淫らに見せる液体が流し込まれている。滑潤液は浸透し、異物は抵抗無く中に入っていった。本当に濡れているような中央を更にぐちゃぐちゃしていくのは、オルガの指だった。
「い、ぁ……!……やっ、オ、ル……ぁ……!」
「気持ち良いか……?」
オルガは身を乗り出して、クロトの熱っぽい吐息を肌で感じながら中央の孔をいたぶっていた。腹につくぐらい反り立っている男性器も同時につついて戯んでいる。
クロトの鳴き声も喘ぎもオルガにとっては楽しいものだった。もし声を出されるのが嫌なら猿轡でもさせて黙らせるだろう。他にも何か脅して『声を出してはいけない』なんていう意地悪なゲームだってしたっていい。
……けれど、オルガはクロトの事が本当に好きだった。
好きだから、どんな喘ぎ声でも全て聞いていたい。
それに、大切に思うからこそ簡単に『処女』を奪ったりしないのだ。
今何度も指を行き来させているのはより深く味わってもらう為。
クロトは女性を味わった事も無いだろうし、それ所か一人で遊ぶ事も無かっただろう。……まさかだと思うが、子供はどうやってつくるものなのか知っているのかも怪しい。
そんなガキにこんな『初めて』は酷だとは思った。
しかしそれは『運が無かった』で片づけて貰うしかない。
―――こんな酷い男を束縛したがったお前が悪いんだ、と。
「ぅ、……うぁあ……あ……っ!」
オルガの指が身体を壊していく。
指が跳ねる度にクロトの身体もビクリと震え、絡む指をはね除けるように激しく上下する。
もう数度も精を放っていた。
苦しいからかそれとも悔しいからか、クロトの目からは幾度も涙が溢れた。が、オルガにはそれが快感に溺れての涙に見えた。嬉し涙にも見えた。きっと気持ち良いから流しているんだろうと思った。
クロトが涙を流す度に、流れた頬に口付けをする。濡れた道を舌が舐め取る。
顎を掴み自由にクロトの身体を操り、何度もオルガは至る所に口付けた。
「ゃ……ぅん、ん……や……ッ」
嫌がろうが、オルガは構わず口付ける。
「思った通りだ、やっぱりお前……カワイイな」
クロトがボロボロに崩れていく姿、それがオルガにとってのお気に入りの一つだった。
理由は、―――やはり一番興奮している時、泣いているクロトを見てしまったからだろう。
薬を与えられて気分が高くなっている時、薬が切れて自分が自分で無くなる時に―――常に一緒にいるクロトは涙を流している時がある。それが何度も続いてしまったからか、クロトが喘ぎ、悶えているのを見ているとオルガは気分が良くなった。
余計、泣かせて求めさせてみたい。サディストの考えがクロトを責める指を操っていた。
「やだ……やめ……ろ……っ、やめ……!」
「……」
だからか、抵抗の言葉もいつもなら腹が立つのに涙を流し、「やめて」と助けを求めながらだと逆にもっとと強請っているように見えた。
もう重傷だ。自分の良い方へ身勝手に解釈してしまう、そんな幻を見るようになってしまった。
「そんな事、言ってられなくなるぜ……?」
「ひ、ぁ……っ!!」
一度クロトから離れると、火照ったクロトの身体を見下ろす。十分に濡れた身体に今、快楽を教え込めば最高を感じられるだろう。そう思い次の仕掛けを取り出す。
オルガは準備していた軟膏を指に塗りたくった。
―――そして、その指をクロトの秘孔に深々と突き刺さした。
「っ! く、うぅ……っ」
何度目だか覚えていないほど長い責め方に変化が現れた。クロトの内側に擦り込ませるようにオルガがある物を注入していく。勿論抵抗してみせたが気絶してしまった時から勝てる訳がなかった。為されるが儘、クロトは歯を食いしばり痛みを堪えるしかなかった。
大量に塗っておいたローションが新たな薬を流し落としてしまいそうだったが、オルガはありったけを軟膏を指に染みこませるとクロトの中を練り込ませる。
自分の意志では動かせない脚が勝手にピクピク動いていた。
オルガが指を引き抜いた時には、ちゅぷ、という水っぽい濡れた音がした。直後のクロトの口は誘うように蠢いている。
「なに……塗ったんだよ……?」
「よくこーゆーシーンで出てくるだろ、……『淫乱になる薬』とか言うヤツだ。そのうち効いてくる」
「ぇ……っ」
と言ってもクロトはそんな話も知らなかった。
でも知らないからで済ませられる話ではないようだった。
―――飲めばいきなり身体が熱くなって誰でもいいから突っ込んで欲しくなる薬―――オルガが出したのはそんな便利な物ではなかった。単に、少し痒みが発せられるというもの。
しかしそれが敏感な所に効けばどうなるだろう。
尚かつ、塗られた側は手が使えないとしたら……。
「……ぁ…………あ……っ」
暫くして、予想通りクロトの身体がうねり出した。
自由に身動きできない下半身を何とかして動かそうとしている。
軽く掻く事も出来なくて、何かを求めるように動き出した。
「あ……、っぁ……う……」
懸命に身体を揺するが自分だけでは満足いかない。
息を吐いて、少しでも痒みを押さえようとするが、大量に塗りたくった中はそう簡単には収まらないでいる。
「……どうしたんだ?」
自分が実行した、分かり切っている質問をわざと掛けた。こう変化する事を予想して虐めているのだ。だが質問には意味がある。
クロトを本当の中から壊していくという、重要な意味が―――。
「あ、やだ……っ!!」
「何が嫌なんだよ?」
オルガはニヤニヤ笑いながら、クロトの身体の変化を楽しんでいく。
苦しそうに喉を仰け反らせて何度か喘いだ後、クロトは叫んだ。
「……中がっ、……ヘン…………なんだよ……っ!」
「変? どうゆう風に?」
「何か、……熱くっ、て……! …………痒ぃ……っ」
「そうか、…………じゃあ俺にしてほしい事があるんじゃないか?」
クロトの腰が動く。雌が雄を引きつけるダンスのようだ。
その時の文句を、オルガは言わせたかった。
しつこくクロトに問い質す。
「…………助け……て…………」
「あぁ助けてやる。で、どういう風に助けてほしいんだ?」
「…………何でもいい……っ、だから……ッ、…………入れて…………!」
―――じぃん―――と熱い物が込み上げてきた。
言葉にならない感情、欲……全て愛するクロトにぶつけてみたい、それがオルガがずっと内に秘めていた願いだった。
それが、どうやらやっと叶うようだ。
「何でもいい、か。………………コレとかどうだ?」
オルガはベルトを緩めズボンを下ろす。
既に成長しきったオルガ自身が顔を出した。
だが、クロトは見ていない。目を強く瞑り、沸き上がる快楽を抑え付けようと一人で戦っていた。
笑って、オルガは卑猥に濡れている入り口に自身をあてがう。
軽く擦り付けてやると、クロトは動けないなりに早く早くと強請ってきた。
「……はやく……いれて……」
脚も強制的だが開いて、薬の助けがあったとしてもそんな台詞を言えば止まる必要はない。―――壊れるまで貫こう。
「ちゃんと、味わえよ―――っ」
最初から開かれた入り口に、オルガは一気にぶつけた。
拒みはしなかった。たとえ縛られてなくても今の混乱したクロトなら脚を自ら開いているだろう。
「―――あ、ぁあぁ……っ!!」
クロトの声がコクピット内に高く響く。
オルガは前屈みになり、届く所まで突きつけた。肉を裂く音も水っぽさが耳に届く。それでもクロトは激痛を感じ、叫び声を上げていた。
「や、あぁっ……! ぃっ! ……痛……もぅ……やめ……っ!」
「ぐちゅぐちゅじゃないか……痛い訳ねぇだろが……っ!」
早いうちからローションと愛撫で慣らした所は、どんな淫乱な女に負けないくらい気持ちよかった。
それでも締め付けはしっかりくる。拒みもせず受け入れるだけの身体、―――最高だった。
強い振動を与え、何度も突き上げる。最初にしてはどこもハードなやり方だったが難なく受け入れられた。強く犯されて涙は流れるが、達しようとする動きもあった。
……それは、クロトは元々淫乱だったからだろうか?
「ひぁ、…………んあ……っ!」
いつの間にかオルガは達していた。あまりの早さに笑って、早めに己を引き抜く。と同時に白濁液が溢れ出てくる。クロトは途切れた息を吐いているが、もう意識を失いつつあった。
それなのに何とか保っている中―――
「ま、……やだ……抜かないで……」
―――痒みを抑えるのには足りないのか、さっきまで挿れられて嫌がっていたというのに更に次を求めてきた。
「もっと欲しいのか……?」
「うんっ……! ……まだ……」
頷く。必死になって首を動かすクロトがおかしくてオルガは笑った。
まぁコレも全部計画通り。
オルガは一息ついた後、固く結んでおいた肘掛けの拘束を解いてやった。ついでに背中側にまわされていたものも解く。……久しぶりに前にやってきたクロトの腕は、赤黒く変色していた。
クロトは拘束が解かれた腕を真っ先にに自分の股間にまわす。
「おぃ、一人で楽しむな」
腕を叩くと素直に行為を止める。……段々従順になってきていた。
今度はオルガが座ると膝の上にクロトを座らせる。そして先のように脚に手を回し、M字に開かせた。『前は弄っててもいい』と言うと、早速クロトは自分自身を慰めに入った。
オルガは先ほど吐き出し濡れた場所を再度つつく。
「ぁ……っ」
驚いたような、否、嬉しそうなか細い声を出す。
「まだ挿れてほしいんだろ?」
「っ、……うん……」
「じゃあもっと強請ってみろよ」
最初はおずおずしていたが、自分で穴を開いみせた。
強調させるように臀部を左右に開いて見せる。
クロトは自分で腰を持ち上げ、オルガを導いた。
「オルガ……ここ……もっと……突っ込んで……」
……聞いて、オルガの口元が緩まった。
―――よく、そんな恥ずかしい台詞が言えた。
感心すると、オルガは細い腰を抱き、再度クロトの中に身を沈めた。
「―――あ、ぁあ…………ぁあっ!」
今度は奥までしっかりと挿入された。完全に銜えた後に動き出す。
前ではクロトの意識も無く指が己を慰める為に動く。
「はっ、……すげぇ……っ!」
歯止めがきかなくなり、オルガは激しく身体を揺さぶった。
とにかくキモチイイ。その一言に尽きる、と。
身体の中が熱い。苦痛の呻き声はとっくの昔に甘い声に変わっていた。
口からは涎を垂らしながら悶絶した。
「あ、ぁあ、あっ……、あぁ―――!」
―――二度目の射精は、洩れる事なくクロトの中に解き放たれた。
引き抜かれ、クロトは狭いコクピットの壁に寄りかかる。
……股に熱い液体が滴り落ちる。オルガのものなのか、自分が出した精なのか、血なのか確認する余裕も無かった。
「―――ぅ……あ……ぁっ……は……」
身体の力が抜け、ずるずると倒れていく。
自分の中が少しずつ変化していくみたいだった。熱でどんどん溶かされて形を変えていく様。
「あ……オル……が……」
名前を呼ぶと余計に溶かされていく。
突然襲った熱……訳も分からず犯されてしまった熱に戸惑ったが徐々に慣れていく。
……この熱は無くてはならないものだ、と理解していく。
「オルガ……もっと…………」
痙攣した身体の中は、未だに早い鼓動をうち続けていた。
―――そして数週間が経つ。
クロトは、身体がどくんっと波打つのが判った。
場所はレイダーのコクピット。……初めてオルガに『陵辱』されてからもう大分日が経っている。もうあの時の匂いはすっかり無く、誰も判らないぐらい変わり映えのないものになった。
あれ以降、コクピットではオルガとやらないし縛ったり変な薬を塗ったりする事もない。……それなりに夜ベッドでしたりする事があるが、普通の性交渉だった。あんな激しい事はしてこない。それなりにクロトも気持ち良いとは思うが、特別な気は持っていない。それはまだ自分が子供だからだろう。
それでも、急に欲しくなる時がある。
それが、レイダーに着いた時。
コクピットに入り、ハッチを閉め席に着く―――と心臓が激しく高鳴るようになった。早く戦いたいという前からあった気持ちではなく、…………あの日の感情がそのまま蘇るようになってしまったのだ。
「…………ぁあ…………」
クロトは席に着くと、一人で声を我慢しながら、する。
脚は肘掛けにかけ、指をズボンの中に入れて、より激しい妄想を思い浮かべながらする。
「は……っ、ぁ……オルガぁ……っ!」
思い浮かべるのは、『一応』なんかじゃなく正式に恋人になったオルガの姿。
ベッドで抱いてくれるようになったオルガは、告白する前に知っていた彼とは比べ物にならないくらい優しい。一つ一つを気遣ってくれる、無理のないクロトにとって理想の恋人だった。
それだけに、最初に出逢った姿のギャップが忘れられない。
着実にクロトの中に芽生えてきたのは、普段は眠っている邪な心。
普通のクロトなら恥ずかしくて言えない想いが日を増す毎に大きくなっていく。
そんな欲が爆発するのも時間の問題。
―――それもまた、案外早めに解決する問題だろう。
END
或人様に捧げますキリバン【666】小説です。 前編04.3.13 後編04.3.16