■ 掛け違えた釦
CE,9,27。ヤキン・ドゥーエ自爆。ザラ議長によって拘束されていたアイリーン・カナーバら旧クライン派議員がレジスタンスに救出され地球連合に停戦を申し入れる。
26日に連合軍は巨大ガンマレーザー砲ジェネシスの攻撃により40%以上を撃破。戦意と戦力どちらも失った双方は「休戦」という形で幕を下ろす。連合軍部隊は一部解散。ザフト最高議会も一時解散。オーブは復興へ。
戦闘は終了だ。もう戦い合う理由は無い。戦の心を捨て、武器を捨てろ。戦意を捨てろ。今考える事は一つ、お互い手を取り助け合う事。
救出せよ。この戦の疵痕から。
ひとつでも多くの命を救う為に。
引いたクジには、必ず当たりが付いてくる―――そう思ってるのかね。
嫌味だか感心だか判らない台詞を置いて救護班は散っていく。戦いの中、傷一つ負わずに生き延びた者もいれば激しい負傷を受けた際、コクピットが破損、重傷を負った者もいる。幸運にも前者ですんだので、救護班と整備班の協力をしている。数ヶ月前、メインカメラ目前で爆破された時は自分もあんなにも傷を負ったというのに、今度は完璧な五体満足。頬を抓れば走る痛覚。人に莫迦と叩かれても想う幸福。全てが、喪われる事無く生きている。
その間にもこの時何処かで誰かが命の落としていくかもしれない。又は誰かがこちら側に帰ってきたかも。広い宇宙の小さな密室空間は、一つの野戦病院になっていて多くの人の嘆きも歓声も聞こえていた。こんな世界を作ったのも、元はと言えば全て自分のせい。終わったと告げられた時、咄嗟に自分に出来る事を考えた。いつの間にか『動けるのであれば助けましょう』と、不自由の無かった口が言ってしまっていた。無意識に言った事でも間違いでは無かったし、否定されるような事でも無かった。その一言で皆、生き生きと動き出したのだから、言って良かったと思う。
だが、それでも自分は甘く見ていた。元々臆病だった。……生きていない目を見るのが、辛かった。
寸前で目玉がひっくり返る男。傷を負っていないのに動いていない心臓。逆に血みどろで救出された者。そしてまた逆に、血みどろで助からなかった者……。
目を覆いたくなる。けど覆えば聞こえる周りの声。諦めちゃいけないという前向きな声。その言葉を聞き続けたから……だからこそ自分も諦めずここまで来た。ここまで来たからこうやって生き、立ち、苦しみ考えている。どうしてここまで来てしまったんだろう、僕達の世界は。どうすれば断ち切る事ができるだろう、この無限ループは。―――現実から目を逸らすな。そうだ、その事にもっと早く気付いていれば―――こんな自分でも目覚めていれば――――――もっと、多くの―――。
振るう。頭が壊れてしまいそうだった。
さっきから同じ事を考えている。ぐるぐると問いと答えが回り続けていた。何故人は、から始まる疑問達を追いかけ回している。追いかけていたのにちっとも捕まえられなくて疲れてしまった。……それが、壊れてしまいそうな程続いた。
気を許せばまた始まる後悔の念。
だから無心になる。折角余った命だ、もっと有効に使わなくてはならない。
そう、今は―――この人を助ける事だけを考えるとしよう。
彼が目を覚ました。不器用ながらも血を流した腕に包帯を巻く。汗を掻いていた額を拭き続けた。その甲斐あってか目を覚ましてくれた。
いくら助けようと想いを抱いても、何も出来ずにいた。理想論だけを持っていても実際には誰かを助けたか形に残す事が出来ずにいた。自分を証明させたい―――そんな気持ちである青年を助けたのではない、……ないけれど、そう思われても仕方ないかもしれない。
ただ目を開けた、それだけなのに『自分はよくやった』と心の中で誉めている。看病された彼にはいい迷惑だろう。己の価値を確認する為の餌にされたようなものだ。
それでも、僕はこころからこの人を助けたくて―――。
それでも、僕はだれかに認めてもらいたくて――――。
思わず手を握った。
攻撃を受け何とか爆発から逃れたものの運悪く脱出ポットに穴が空き、酸素欠乏症になってしまったかもしれないというパイロット。見る所、機体は最新型に乗っていたようらしいが、……その機体には脱出機能が不十分だった。人の命の大切さを全く考えず、いかに人の命を脅かす為に作られたか。……それでもポットが昨日したことは彼にとって幸いか? 否、そんなものあって当然なのだから穴が空いてしまったことは不幸か。
彼の姿はまるで異常者のよう。目を開けても視線が一定しない。口も聞けない。でも声を掛けると少し反応するのを見る限りでは耳は機能している。呆然と宙を見やり、だらしなく口を開けている。脳に異常が見られる、と素人心でも思ってしまう不憫さ。……そう思ってはいけないのだろうけど。
きっと自分も、あの時やあんな時そうだったに違いない。ベッドの上で誰かの顔だけを思い浮かべていた。……そうだ、『あの時』の自分は呆然と、どんな事を考えていたのだろう。
何故、自分は生きているのかを考えた。
何故ここに。何でここに? どうやってここに―――。
悩んでも悩んでも、自分一人では解決出来なかった。だから
「―――ここは、どこだ」
と彼が機械音のような感情を含まない声であっても何のおかしなことではない。……それでも、動かないと思っていた指が服の裾を掴まれると驚きで口がきけなくなる。さっきまでの彼の病気がそのまま瞬時に感染してしまったかのように。
「ここは、……病院だよ」
「嘘だな。どこの艦だ。しかも一士官の部屋。誰の部屋なんだ」
「…………うん。実は、ある艦の部屋なんだ。ちゃんとした医療機関だと思った方が混乱させなくていいかなと思って嘘ついたんだけど……」
少しずつ声にメリハリが加わり、人間らしさを取り戻していく。目覚めて直ぐは声を出す事自体が思い出せない人もいるというのに、大変な回復力。見知らぬ彼に感心する。……いや、感心どころではない。驚愕。……全てを読まれてしまうかもしれない恐怖心まで湧いてくる……。
「ある艦…………はぁ、あそこじゃないな。違う所に回収されたか。俺達の悪運も尽きたか、なぁ?」
「……うん……」
服を掴んでいた指が離れ、彼の目を覆った。長い指で彼の表情が隠れる。苦笑い。……啜り泣くような声を殺しながら、彼は泣いていた。
無理も無い。自分が所属していた部隊に逢えないという事は帰る家を失ったと同じような事だ。彼が母艦にどれほど愛着を持っていたかは判らない。けど彼には彼なりの意義がある筈だ。母艦にある自分を証明するもの。それを、失ってしまえば悲しいと思う……だから。
「でもここ……連合なんだろ? じゃあ月基地に帰るんだな。次はいつ出げ……」
「その、知らないようだから言うけど。『戦いは終わった』んだ。終戦協定、結ばれて………………だから、プトレマイオスはもうやられて…………」
「……」
……自分が眠っている間に終わったドラマ。
それは「寝過ごした」という言い訳で片付けられる問題ではない。自分が眠っている間に時代は動き……確実に良い方向へ向かおうとしている。その瞬間を見る事が出来なかったと、彼は―――喜びながら嘆いた。異常者とか脳におかしなとか言ってしまって心の中で謝った。素直に彼は感情を表情に表していた。今ここにいる事に驚きながら、自分を確かめるように叩いて感じ、声を聞く幸福を想い、―――こちらを見た。
「はぁ、終わっちまったのか」
「うん、終わったんだ」
「……ミスったな。あの時死んでおくんだった。何で俺、こんな所にいるんだろう」
「そんなこと………………、運が良かったんじゃ…………うん、生きていてくれて良かった」
「だけど、前……決めた予定だとあそこで死んでおいて、今頃天国でおっさんを虐めるのが夢だったんだけどな」
「それは、…………また今度のお楽しみ、ということで」
「そうだな」
彼の腕が伸びる。
直ぐ傍にいた身体を引き寄せ、抱きしめた。
不安定だった目は何処にも無く、只一直線に僕を見る目―――。
「お前が、生き延びてくれて良かった」
その目は瞳孔が、
……。
―――さて、一体これをどう説明するべきだろう。
偶然拾ってきたポット。いつも何か拾い物をする度に呆れられていたせいか、今回もポットを拾ってきた時に「必ず当たりが……」と整備長に言われた。
出てきたのは一人の青年。多くの傷を負い救出された彼。
名前は、―――まだ判らない。金髪の青年。
抱きつかれたまま、質問し……。
「待って下さい。僕と君の関係は何ですか?」
「関係? …………同じ軍にいる者同士か?」
「確かに、そちらも連合で僕も元連合だけど、只それだけじゃ……」
「そうか。元連合か……もう俺達あんな所にいる必要も無いんだな」
「……終わったんだから、脱退しても良いんじゃないかな……」
「そうかじゃあ俺もお前と同じ『元連合』だ。これからどうされるか判らないが、…………で、シャニはどうしたんだ?」
質問は、確実に的を面していき……。
「…………………………違う。多分、勘違いしてる」
「勘違い? 俺が? 何を」
「それは…………でも、僕は君が知っている『誰か』じゃない」
「は……、何言ってるんだ、クロト……?」
「違う。僕は『クロト』じゃない……っ」
「はぁ、何でだよ馬鹿。じゃあお何だっていうんだお前は…………ッ」
決定的な、違いが出る。
僕の、名前は。
「キラ。キラ・ヤマトなんだ」
なんでこんな所で立ち止まっている。
お前のいるべき場所はここじゃないだろう。
なんでこんな所で先に進まないでいる。
お前のいくべき場所はここではないだろう―――。
声を振り切り、手を握った。
ずっと震えていた。大人で、強くて逞しいと思っていた大きな手が恐怖に打ち震えていた。
もうどんな危険からも護られている場所で、ひとり震えている姿。それがあまりにも不憫で悲しく、子供のようで―――偽善者としては手を取らずにはいられなかった。
―――本当に、こんなもの偽善。
何がしたいんだよ、一体。
「……わからない」
あの人の大切なものを奪っていったのは自分かもしれない。自分じゃないかもしれない。けど可能性は拭えない。
あの人は何故泣いている。誰かが悲しみを作ったからだ。
それから、どうにかしてこの手で一人でも多くの人の悲しみが止められればいいな―――と、そんな希望を抱きながら今日まで走り続けてきた。
託された自由という名の力はその為に使ってきたんだ。恐らく正義の彼もそうに違いない。
そんな彼が、拒否した。
危険だなんて言われたりもした。何をされるか判ったもんじゃないだなんて保護者めいた言い分まで聞かされた。
救いたいのにそれは無駄な事だ、さえも言われてしまった。
時に正義を持つ彼の言葉は核心を突いてきて心を痛ませる。
がむしゃらに自由を振り回すだけの自分には出来ない現実を視た目で。
そんな真っ直ぐな瞳に背を向けてまで、死者と話するには意味があるのか。
―――わからないよ、そんな事。
曖昧すぎる自分に吐き気がした。
しただけで、どうも出来ない自分にもまた。
本来此処に来てはいけないことも、此処に来る前に全てが尽きていることも誰もが知っている。
彼が消える前に消えていなければならないのに、何の掛け間違いか手順がずれてしまった。
出来る事なら悲劇が始まる前から狂ってしまえばいいのに、ご丁寧にもややこしい形で前の道が曲がっていく。
往生際が悪い。
自分はあの時死ぬべきだったと思い言った。それは違うと誰かが言っても実際その流れが一番自然で、誰にも迷惑をかけなかった。
……かけなかった……けれども。
本心は違う。
彼の後を追うのは嫌だった。
彼が後から追いかけてくるのが嫌だった。
本当なら消えたくなかった。
先に逝った彼も消えてほしくなかったし、後に逝った彼も消えてほしくなかった。
その流れを何とか変えようと手を伸ばした。
何かが少しでも変わればいい未来。
誰かが消えなくて誰かがいなくならなくて、若しくは、誰もいなくならない世界。
只、それだけを願って縋った手だ―――。
只、彼らの死目が見たくなくてやったことだ―――!
―――誰が仕組んだとも言えない計画は見事、失敗に終わり。
その為に、無関係な彼を傷付ける羽目になる。
「叱られてきたみたいだな」
彼同様、見つめた瞳は的確に心を読んでくる。緑の目まで一緒だ。顔も声も雰囲気も全然違うのにそんな所まで同じ。全く不気味だと思う。
けれど決定的に違うのは彼の目には光が無く、こういうのを「瞳孔の…………た目」と言うんだろう。
死人と口をきくのは一体何度目だ。
「何でも言い当てられちゃう。まるでエスパーみたいで怖いな」
「そう言われたのは初めてじゃないか。お前がどう悪さをするか、ここ数年『お前に』磨かされた技だろう」
「そんなに、悪い事ばかりしてた?」
「あぁ。人の本破いたり、落書きしたり。いつまでもガキみたいに騒いでいた。ガキなのは変わらない、今だってそうだ。戦闘中もギャーギャー悲鳴みたいに上げて、逆に苦しくないのか」
「…………戦場は、夢中だから」
全ての語尾に『多分』と付け、違和感の無いように話を進める。
自分が彼の言う『僕以外の誰か』だと認めた訳じゃない。この調子で話をするのが彼にとって調子の良いものだと悟ったからだ。只それだけの事。
僕の名前は生まれてからあの名前だし。
僕自身は彼の名前を言い当てる事が出来ない。
それでも時間は流れる。この会話は続く。幸せそうに進んでいく。
彼にとっては「漸く掴んだ再会」。
それを潰してしまうのは簡単だ。
けど、彼は違うのだと、そんなものは来ないのだと告げるのはあまりにも不憫だ。
―――もう、二度と手にする事が出来ないものなら尚更。
「でも、それももう終わりだから。もううるさくなんかしないから安心して」
「それはそれで困る。……お前らの騒ぎを止めるのが俺の存在意義でもあったんだけどな……うるさくなくなったお前は、お前じゃない」
「成長してほしくないって? ………………本当に、貴男は、良い人だ」
「何か言ったか」
「ううん」
普段の彼の姿を思い浮かべる。
偽物相手に心の底から笑う彼は眩しかった。いつまでも見ていたい、このままであってほしいと思う程、輝いた表情だった。終戦を迎えた今の世界なら、この人のような笑顔が増える筈だ。とてもそれは喜ばしいこと。
しかし、綺麗な色の眼をずっと受けとめてきた『誰か』は一体何処で何をしているんだろう。
この人の笑顔を一番喜ぶ人は何処へ。
……どうして此処にいてくれないんだ!
たとえ他人でも、嬉しいと笑いかけてくれる事は自分にも幸せを分けてくれる。それが身内だったら嬉しさが倍になる。その人が笑いかけてくれれば彼自身ももっと。
けれど自分には、彼をもっと幸せにしてあげられる力はない。
僕には笑うことが出来ない。……彼を、何一つ知らないのだから。
想うと、切ない。
いつかはこの情景も潰されてしまう。……偽物でも積み上げてしまえばどうなる。
ひとときだと思い、彼と話した。
そのひとときの最期は一体いつだ?
いつになったらその芽を摘まなければならないのか、……自分の独断で植えてしまったものだ。いつか自分で考えなくてはならない。
「なぁ。一体誰に怒られたんだよ、後でソイツ、俺の方に来るぜ? 覚悟しとかないとな……」
「誰でも無いよ、誰も来ないから。…………まったく、凄く心配性だ。何だかお兄ちゃんが出来たみたいだよ」
「あのな、艦長やあの女みたいな事言うなよ。……いや、でも『そうなる』のもいいかもしれない」
ベッドから起きあがり、手を掴まれる。
共に祈るように組まれた指。……どうする事も出来なかった。
「家族になる、か。……記憶は戻らないし、多分あいつらも戻してもくれないだろ……生きてるかもわかんねぇしな。親だって生きてるか判らない。なら」
組まれたのは―――祈るんのではなく、誓う指だった。
「家族になっちまおうか。これからシャニをいっしょに探し当てるまで」
最初から、コレが間違っている事に気付いている。
居もしない彼を見つけたのは、只、甘えたかった。
失敗に終わった、けど―――そんな未来も良いな、と想っただけの話。
夢があった。
想っただけで叶いもしない、努力さえもしなかった夢。
この上ないくらいの幸せ。どこまで時の針を戻せば叶えられるか、考える事も出来ない程有り得ないぐらいの。
どう足掻いてもそこに辿り着く事が無理だった。
どうにかならないか考えた事もあった。無い磨り減った脳で懸命に考えた事も。
結局はどうしようも無い事だ。藻掻いた結果がこれで、最後に手繰り寄せた縄は彼の弱々しい手。
その為に他人を傷付ける。己の欲の為に仕方ない事。
気付いてから在り来たりで一番大切なものを思い浮かべる。
それと同時にその他人も。
「――――――僕は、そんなに似ているの?」
呟いた。
一番想っていた疑問を口にする。
……多分、彼の視ている『誰か』なら承諾していた所だろう。
彼と『誰か』がどんな関係かとっくに知っている。同僚・戦友以上の、家族になりたいと思う程の強い絆があるという事を。
そんな絆で結ばれていたなら、何故間違ってしまったのか。
偽物と誓いを交わしてしまいそうになるくらいに。
これが、誰かが『居なくなる』って事だ。
「そっくり? 見間違えるくらい? ……もう居ない『誰か』だって信じ込むくらい」
虚しい。
凄く悲しい。
他人のことだったのに切なさに重みに押し潰されそうになる。
その度に―――皆が幸せであったらいいのに、と在り来たりで一番大切な言葉を心に描いた。
指を取った。
手を握った。
始終笑顔でも、唯一苦しげだった器官はまだ震えている。
騙しきれていない箇所が悲鳴をあげていた。
思い込んで、自分に嘘をついて―――それでも掴みたかったものは。
「………………本当は、あんまり似ていない」
情けない言葉を呟いた。
「背はそれくらいだった。けどお前よりもっと軽かった。アイツは抱き上げても感じないくらい、足りなかった。……軽すぎたかもしれない、地に足がつくような重さじゃなかった」
お互い、掛け違ったものなんて確認するまでも無い。
自分はこれから先の見えない未来を行く。
彼はもう決まっている終末へと向かう筈だった。
「……だからアイツは飛んでいったのか?」
例外なくこれからもそうなる。
今に決まった事じゃない、―――そう、約束付けられた事。
「生きてる重さを考えなかった。そんなもの作られないうちに出てきて、騒いで、ガキみたいに俺の前で喚いて―――それだけで終わった」
彼が息を吐く。相変わらず眼には光は一切無く、死体が出歩いた話はあっさり終わりを告げようとしている。
「アイツは……俺達は、一体―――何がしたかったんだ。俺達は少しでも早く終わらせようと生み出された物で―――少しでも邪魔できれば良いと思われ生み出されて」
「―――それでも最期には意味を見出したかった。意味が無いものなんて無いと信じたかった。なのに、……何度問いても、結局俺達の起源はソレで」
―――。
「このまま……間違えさせてくれても良いじゃないか。お前はアイツで、アイツはお前で。新しい『幸せ』で過ごしていく―――今後を。そんなスタートを切らせてくれても、良かったんじゃないか」
「……でも、僕には進むべき道がある。これから僕の前に現れる人達がもう決まっている。―――貴男の出番は、もう無い」
まだ彼は問う。
意味があるのか無いのかを。
けどこんなに大きく広げられた問いも答えられる事はなく、
――――――――――――最期は、簡単にやって来た。
数日後、彼は消える。
終戦後……記念すべき新世界一日目にして。
苦しみ、苦しみ抜いて謎の死を遂げる。
そんな最期も彼自身は知っていた筈。
救いようのない最期に、果てには悲しみや不憫所か違うものが込み上げてきた。
それは言葉に表す事は出来ない。
そういえばやっと僕は理解出来た。
彼がずっと言っていた「あそこでいっておけば」の意味。
まだ残った謎は沢山ある。
半端に終わった推理劇が胸に詰まったまま終わりを迎えようとしている。
最初から分かり切っていて、願いによって招いた違う結末。
それは苦しい目に遭うという結末。
そんな目に遭ってでも、彼が変えたかった姿、
本当は何だったんだろう。
END
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変な話ですが、つまり言いたい事は「よくも糞脚本書いてくれたな種スタッフ」になるという。
常夏に何らかの意味があると信じハマりました。大層なドラマがあると信じて。かつてのガンダム界に描かれた強化人間の悲劇が語られるのではないかと思って。それがただのプラモ売る為のなんちゃって中ボスだったってときゃー、ハメられた我らはどーすんのよみたいなEDに何度キレかけたことか。でも夢見た後付設定はマンセーなものばっかで困ったネ、もっとやってくれー。……けど後付やる度に、本編の糞具合が判ってナエー('A`) そんな話。
話自体思いついたのは放映終了直後。どうにか変な話でも形にしたいな思ってやってみました。おかげでクリスマスとかネタ蹴っ飛ばしちゃいました。それは去年やったからいいやんということで。
04.12.28