■ deep freeze



 /1

 くぐもった声と水音が空間に満たされていく。
 同時にぬちゃぬちゃと淫靡な音を立てながら刺激に耐えていた。
 クロトはシャニの臀部を抱えるようにしながら性器に舌を付け、同じように又シャニもクロトの秘部に自分の舌を当て嘗め回す。
 微かな身長差もあるがシャニが身体を少し捻るようにしてクロトに負担を掛けずにお互いを慰す。

「ひ、ゃ……っ、ぁ、ん……っ……」
「っ…………」

 水音の他は、時々我慢出来ず零れ出す二人の熱い息のみ。
 シャニは休みを与えず動き、クロトの舌はゆっくりだが確実にシャニの官能度を高めていく。
 各々の唾液に染まってもそれぞれ、そして第三者も悦ぶから終わる事の無い。

「ふぁ…………あ……」
「…………ィ……ッ……」

 シャニの攻めに腰を浮かせながらもクロトも懸命に大きく舌を使い動かす。
 無我夢中で部分を吸い立てた。
 それに波を感じたのかシャニは無言で絶頂を迎えた。
 途端、激しくクロトの口に吐き出される。

「ゥンッッ……!?」
「ぁ………………ごめ、クロ……ト……」

 丁度銜えていたクロトは一度口を離し、出された全てを味わいだす。
 堪らず飲み込む事が出来ずに洩れした。
 シャニの目には確認出来なかったが、残念そうに眉を顰める顔が想像出来た。
 零れたものはシャニ自身にまた降り掛かる……。

「は、ぁ…………いっぱい、出た……コレで何度目、シャニ?」
「……わかんない……」

 きゅ、っと目を閉じながら後に残る快感を楽しむ。
 その動作も明らかにクロトより数が多い。
 数え切れない程やってきたしまともな考えもつかないくらいに混乱している。
 それだけ嘗め続けるという動作を繰り替えし続けたのもあるし、お互い感じ合い過ぎたとも言える。

「………………っ」

 悔しくなったシャニは動きを再開した。
 舌の動きだけではなく、今度は指を目の前にあるクロトの中に挿入する。
 いつかの体液でぬるぬるになっている人差し指は簡単に沈んでいった。

「んー……っ!?」
「……」

 笑い声も上げていたクロトが低い唸りを上げた。
 ズブズブと、ゆっくりと中に入っていく指に悶える。
 身体が一気に熱を帯びる、と苦しくなって更に声を張った。
 嘗める目的も忘れている程に高い声を上げる。
 だが指だけではクロトはイかない。
 普段はオルガの、もっと太いものを味わっているクロトだ。只の指一本では達しない。

「ぁ……ダ、め……ッ」
「ちょっと痒い程度だろ……? こんなんじゃ、満足しないクセに……っ」

 シャニの指が雄しく行き来を始める。
 クロトを限界までいかせる事は出来ないが、その寸前で止めるぐらいにならなる。
 けど間近で止められる苦しさも同じように快楽になっている事をシャニは知っている。

「んん、ぅううん…………ーっ!!」

 シャニに来た波が今度はクロトへ。
 再びクロトの元へ、細腰に迫っていった。
 それから何度も。何通りも。

「あ……、は…………」

 口を秘部から離し、ただ声を出すだけの物になりながら昇天した。
 力尽きクロトの身体はシャニの胴体の上でぐったりと動かなくなる。

「ぁ……クロト……もう俺……」

 悲しくもないのに出た涙で顔を濡らしたシャニが小さな声を上げる。
 数度の最高に全身が痙攣している。
 シャニは動きを止めようとしているが、クロトがまだ続ける限り終わらせる事が出来ない。

「もう、……おわり……」
「…………うん……」

 二人は了解し合い、クロトがごろんっとシャニからベッドに倒れ込んだ。
 クロトはシーツによる体温とは違う暖かさに包まれる。
 シャニもクロトという拘束から解放されて息をつく。

「はぁ、は、ぁ……あ………………っ」
「ん、うぅ…………く、んぅ……」

 気を失う前に十分に必死に酸素を取り入れる。
 お互い身体が離れた後も身体の内部に残るものがまだ滲み出し、二人の解放を許さなかった。
 時間が経っても続く、背筋を襲う熱さ。どう藻掻いても取り除く事の出来ないむず痒い感覚に、また身体を重ねようとする。

「シャニ……」
「…………なに……」
「キスしない……? ………………普通に……」
「……うん…………」

 クロトが残り僅かの体力を振り絞り、自分の顔をシャニの顔の方へ持っていく。そこまでが辛かった。近づけばシャニの腕が迎え、深く強く交わう事が出来るのに。

「んん、ぅ……」
「ん…………、……クロト……」

 先程と同じように深く長い口付けを続ける。自身の味がした。甘く感じる筈のキスもどことなく苦さが目立った。どちらも熱い息に口の中が火傷しそうな気分になった。
 それでも続ける。二人の快感が合一するまで―――。



 /2

「…………うー」
「…………む〜」

「す、すっごい夢見た…………あ、おはようシャニ……」
「……俺も見た〜…………、おはよークロト〜」
「おは、……じゃなかったね。あけましておめでとうっ」
「んー? ……あけおめ〜……?」
「そうっ。謹・賀! 新・年! だよっ。一年の一番最初の日、おめでたい日なんだよー」
「……おめでたークロト〜」
「うん、おめでた……なんだけど、僕ちょっと気分が優れないというか……」
「俺も……夢見悪かったから〜?」
「そうかも……折角の新年スタートが変な夢っていうのも何か嫌だね……」
「変な夢じゃない〜。凄い夢だけど変じゃないー」
「そう……? 僕は、……スッゴイ夢だったような……(///)」
「俺とクロトが69してるの、変……? いつもやってるじゃん……」

「………………」
「やってるじゃん〜……」
「まぁ、…………ズバリそうなんだけど」
「じゃん〜〜……」

「……って、何でシャニ、僕と同じ夢見てるんだよ! 怪・奇! とか思わないの!?」
「……ミステリ〜?」
「新年特組! 視聴者投稿方ミステリー番組! 『何故僕達はあの日、同じ夢を見たか?』、太木数子とゲスト達が議論する!!」
「『なんでクロトが俺の上乗って俺のずーっとしゃぶってて、俺もクロトのお尻ずーっとつついてた夢を見たのか』検証番組〜〜……」

「………………」
「けんしょーばんぐみ〜……」
「……放送出来ないね」
「んぐみ〜〜……」

「新年早々馬鹿やってないで、…………そろそろ起きようか」
「投稿写真〜、俺とクロトがヤってる写真〜〜……」
「そんなの撮らない! シャニ、オルガの所行くよ!」
「…………オルガは〜?」
「多分おせち作ってるんじゃない? ほらっ、おっさんにお年玉貰いに行くよ―――!」





 END

 05.1.3