■ Swear
オルガが読んでいる本がいつもと違う気がした。
いつも読んでいる本を見ているわけじゃないが、大抵文庫本にブックカバーをしている。今読んでいるのはやたらカラフルな表紙で、文庫本サイズじゃない変形型。可愛らしいポップ調のタイトルロゴが見えた。
「なーに読んでんだよ、オルガ」
「―――」
ひっついてみるも、オルガは反応しない。一、二度声を掛けてみてもオルガが反応しないのはいつもの事だ。そんなに夢中になっているものは何か―――興味を持ってクロトはその本を奪い取った。
「っ!? てめ、いきなり何す…………!」
「…………何コレ」
……奪い取った本が意外な物でクロトはまじまじとそれを見た。
小説を好むオルガは細かい字ばかりの本をよく読んでいる。だが今クロトが手にしている本は文が少なく、絵……写真の方が圧倒的に多い。そしてその写真が謎な物ばかりだった。
子猫がじゃれ合ってたり、寝っ転がっていたり……可愛らしく(猫のくせに)ポーズを決めていたりしてる写真。
―――つまり、コレは猫の写真集だ。
「……へー、こんなの読むなんてねー……オルガが」
いつの間にか(瞬間移動?)、シャニもその本を覗き込んでいた。オルガはふてくされて「悪いか」と言う。
「ふぅん……オルガって動物、好き?」
クロトがぱらぱらページをめくりながら尋ねる。……他に言える事が無いのもあった。猫の本を手にしてモビルスーツの話なんて出来ない。
オルガが小動物が好きだなんて……格好につかない気がした。彼ならそんな事問われても否定するに違いない。好きだとしても強がりとか。良い答えだとしても「キライじゃない」ぐらいだろう。……オルガはそういうキャラクターだ。
「好きだけど」
……と思っていたが、あっさりその考えは短く却下された。
クロトが開いているページを見て、―――何だか、優しそうな顔をする。
「……凄く可愛いじゃないか。なんて言うか……和むな」
写真を見ながら幸せそうな顔をしている。
思わず『間抜けな顔』と罵る所だったが、―――オルガのあまりの表情に思わず二人共黙り込んでしまった。
「…………ドコが、好きなんだ?」
「丸っこくって可愛いだろ? 猫独特の雰囲気っていうのも好きだな……尻尾とか、猫耳とか」
最後に、『猫だけじゃなくて動物は基本的に好きだが』と付け足した。
そういえば世話好きで子供好きは動物好きというのを聞いたことがある―――と世話されてる二人は思った。
「ん……どれくらい好き? ちっちゃいのと大きいのとだと……」
「……………………何でそんな事聞くんだ?」
変に思ったのか、逆にオルガが聞いてくる。好きも嫌いも勝手だろう、……そう言いたげな目を向けられて黙った。
「―――じゃあ僕とシャニと猫、どれが好き?」
「……はぁ? なんじゃそりゃ」
クロトの質問に、呆れた声をあげる。オルガは質問を無視して、いつの間にか取り出していた(普段読んでる)文庫本を読み始めた。会話は其処で終了した。答えは出なかったが、シャニもソファにつきウォークマンの電源を入れ目を閉じた。仕方なくクロトは写真集を閉じて普段の行動に戻った。
―――夜。オルガは一人自室で本を読んで過ごしていた。本日4冊目の文庫本が読み終えた所で灯りを消す。
(……しまった、写真集……クロトに預けたままだった)
今更気付いたが、今まで気付かなかったのはそんなに大切な物じゃないという事だ。深く考えないでおこう。
ふとしたキッカケで手に入れた本だった。特別読んでみたいと思って手にした物でもなく、目に入ったから読んでいただけの写真集。二人がいる所で読んでいたのが悪かったのか。
―――おかしいと言えば、『猫が好き』と言った時、ヤケに二人が驚いていた事。
(……別に俺が好きでもいいだろ……)
ベットに入り込み、何気ない事を考えながら睡眠に入る。一人で夜を迎える時はいつもこんな感じだ。
ウトウトして来た頃―――ウィーンと自動ドアが開く音がした。
「……っ」
いきなりの侵入者に、一瞬、身が強張る。
一応鍵は掛けた。という事は合い鍵を持っている奴ということか。
(……て、オッサン自ら俺の部屋には来ないよな……?)
他に開けられる奴といったら……などと瞬時に対処法が頭の中を駆けめぐる。隠してある銃を取り出そうとした時、暗闇の中で猫の声がした。
―――にゃーん、という猫の声が。
「……は?」
銃で武装した連中など殺伐とした想像をしていたが、一気に気が抜けた。
しかし、軍施設に猫が入り込むわけがない。合い鍵を持って猫が解除するわけもない。
「…………おぃ、誰なんだ…………?」
灯りを付けようとベットから身を起こそうとする。と、人影がベットの直ぐ側までやってきた。―――そこで誰か判った。その人影が、にゃーん、と鳴いた。
「何やってんだ二人共」
「…………」
「――」
そこに居たのは、クロトとシャニだった。
二人ともオルガのベットの脇に立っていて黙っている。シャニは相変わらず無表情な目でオルガを見ていて、クロトは少し俯いていた。
「何しに来たんだよお前ら、もう寝て――――――っ、は?」
……勝手に入ってきた二人を追い返そうとしたが、二人が普段の格好でない事に気付いた。
連合の軍服ではなく、普段身にしているタンクトップ姿。それぐらいならまだいいのだが、
―――何故か二人とも、頭に『猫耳』が。
……。
「シャニ……クロト…………何して……」
「猫だから」
「……はぃ?」
「俺はお前の知っているシャニじゃない。猫だから」
……滅茶苦茶台詞が棒読みだ。台本に書かれた台詞を綺麗に読んでいるようにしか見えない。後ろでクロトが恥ずかしそうにしているのが、暗闇の中でも判る。一体何バカな事しているのだろう。
「はぁ…………猫、なのか」
シャニがにゃーん、と鳴いてみせた。泣き声も、ハッキリ言って棒読みだ。
「で? その猫が何で俺の部屋に?」
折角寝付けそうだったのに……と機嫌が悪そうに言ってしまった。
「―――オルガの大好きな猫だぞ?」
「だからなん…………………………んっっ!!」
クロトが突然抱きつき、擦り寄ってきた。にゃーん、ともう一度鳴く。いきなり目の前に現れたでかい猫に呆然としてしまったが、直ぐにクロトの背中に手を回してやる。―――抱きついて擦り寄ってきてくれたらしてやる事は一つ。
「ん…………っ」
目の前から襲ってきたクロトの顔とオルガ顔とがぶつかった。首を少し傾けさせると、唇を吸ってくる。
「ん……んぅう…………っ」
キスをしながら、オルガはクロトの頭に付いている猫耳を触った。……触られて特に反応を示すわけでもない。ごく普通の(?)猫の耳の形をしたアクセサリーだ。
猫耳アクセサリーを付けて自分が猫だ、と言ってきても、オルガには普段通り夜這いに来たに変わらない。しばらく舌を絡ませ合ってからクロトを剥ぎ取る。
「ぅ……っ?」
もっと求めていたのに行為を中断され、クロトは不服そうな顔をした。
「シャニも…………来いよ」
ずっと見ていたままのシャニに声を掛けた。暫く躊躇ったが、オルガの言葉にシャニがベットに乗る。近寄ってきた猫の頭を優しく撫で、優しく口付けをした。始めは軽く、そして先にクロトにしてやったように舌を侵入させ絡めた。なるべく傷つけないように優しく、尚かつ厳しく。ゆっくり離すと、糸が引いて落ちた。
「ん…………何か……クロトの味がする……」
シャニは強い舌に力が抜けたようで、早くも溶けだしそうな目をしていた。クロトがシャニの口元から零れてしまった涎を舌で拾う。いきなりクロトからの口づけに流石のシャニも驚いたようだ。お互いを舐めあっている姿が―――まるで、毛繕いしている猫のように見えた。
二人の着ている物を剥せる。猫耳のアクセサリーだけは外さず、服だけを脱がせた。―――白いベットの上に、猫が二匹いるようだった。
「一体この耳……どうしたんだ?」
「猫なんだからこういう耳付いてるの当たり前だろ」
……相変わらずその線を曲げないらしい。オルガは笑ってからクロトの手を取り、……既に充分に熱くなっているモノに触れさせた。
「あっ……」
オルガの意思を読み取って、―――クロトはぎこちない手つきで愛撫を始めた。
「何……そんなに興奮してたの?」
「あぁ。そりゃ変な生き物がいきなり部屋に現れたらビックリするだろ」
「変じゃない…………猫だよ」
膝元にシャニが寄り、クロトが愛撫しているモノに顔を近づけた。そして躊躇わず目の前にある熱いモノに接吻する。
「ぅ、ん……っ」
それを見てクロトもシャニと同じように口づけた。オルガのモノを二人一緒に慰めている。同時に二つの舌の感触が伝わった。
「っ、……んぅん…………ぁ……」
右からはクロトが、左からはシャニが懸命に舐め回している。舌を使い強く張り付ける。唇を寄せ吸い寄せる。―――オルガは目を細めて、クロトの頭を柔らかく撫でた。
「んあぁ…………ぅむ……んっ」
上から下へ、下から上へと添うように舌が辿っていく。クロトはゆっくりと、シャニは舌全体を使ってオルガのモノを諫めていく。まだ数秒も経っていないのに刺激が強すぎて早くも達してしまいそうだった。
「ふぁ……ゃあ……」
クロトはちろちろと少しずつ攻める。顔を真っ赤にして必死に舌先を動かしていた。逆の方ではシャニが負けずと音を立てて吸い始めていた。…………後ろでずっと自分を慰めながら。
「…………ぁ、くッ……」
前後左右、二倍の刺激に欲望が溢れそうになる。二人の愛撫は本当に猫がじゃれ合っているようだった。
「二人共……もういい…………っ」
二人の顔を剥がそうとする。だが、いきそうになる所をクロトが口全体にくわえた。
「っ……!?」
破裂した欲望がクロトの口を犯した。―――ゴク、と喉の音がした。暫く後味を確かめるようにくわえていた。唇の端からは大量の欲望が溢れ出ている。
「ん……苦……っ」
眉を顰めるクロトの唇に残った液体をオルガが指で拭った。が、シャニは潤んだ瞳でオルガのその指を捕らえると、愛おしそうにそれを吸い取った。
「クロト………………先にシャニを気持ちよくしてあげないか?」
呼吸を整えていたクロトは少し残念そうな顔をしたが、しぶしぶ頷いた。
「何で、シャニからなの?」
むっ、とクロトの顔が膨れる。本当は自分からしてほしかった、と言うようにクロトが羨ましそうに尋ねる。尋ねながらシャニをベットに仰向けに倒した。
「舐めてくれていた間、ずっと自分でいじっていやがった。…………しかも前じゃなくて、後ろを」
「……っ……」
シャニを俯せに倒すと足を上へ開かせた。腰を浮かせ、反り立ったモノの下に、自分で遊んでいたモノがオルガ達の前に顕わになる。クロトが反り立ったモノをきゅっと掴んだ。
「ッ……!」
クロトの不器用な手がシャニをなぞり、揉みくだしていく。
「っ……ぁ……んぅ……っ」
耐えきれなくなったのかシャニが低く悲鳴をあげ始めた。両腕で目を隠してなるべく声が出ないよう、我慢している。シャニは自分で鳴くのをとことん嫌う。責めている側からすればその仕草が一層鳴かせたくなってしまうのだが―――
「ねぇシャニ…………気持ちいい? 痛くない?」
笑ってクロトが尋ねるが、それが余計ダメージになっているようだ。暫くクロトの行為を見ていたオルガも、シャニの秘部に指を当てた。
「ぅあ……っ!」
痛みに唸り、シャニは自分の指を噛む。―――中にオルガの指が出たり入ったりし始めた。自ら足を開いて導いてはいるが、腰に違った力が入り逃げてしまいそうだった。
「ぁ……あ……っ」
抜き差しを行う度にシャニの口から弱々しい声が洩れ出す。―――と、前の方でシャニを慰めていたクロトが突然手を止めた。
「ね、オルガ…………僕もやってみたい」
「ん? 別に構わない………………よな、シャニ?」
冗談ぽく確認を取ってみるが、シャニは顔を隠したまま何も反応しなかった。ぐっと快楽を噛み締めている。……その沈黙を肯定と受け取ってクロトが中指を当てた。
「ぃっ……!」
予告はしたものの、窮屈な其処にシャニはまた悲鳴をあげる。
「……あッ……やだ……ぁ……」
拒絶するシャニの叫びとは反対に、下の口は指を迎え入れるように窄まり、淫らな反応を示した。
「……ああ……う……」
「猫だから『にゃ』って言わなきゃダメって言ったのはシャニだったよね?」
クロトの細い指がぬるりと第二関節まで沈んだ。
「ん、……簡単に入くね…………一本じゃ物足りない?」
人差し指も合わせて挿入すると、二本の指を曲げ広げ、こねくり回し始めた。
「んあッ……にゃ……ぁあ……!」
「そんなに締め付けないで……指が痛いから……さ……?」
シャニは痙攣し、ぱくぱくと小さな唇が開く。
「……ぁッ……ぃ、にゃ……あ…………っ!」
首を激しく振りたて、髪が大きく揺れる。シャニが頂点を迎えようとしたその瞬間、クロトは突然愛撫を中止して指を引き抜いた。シャニは狼狽し、すがるような瞳がクロトに向けられた。
「オルガ、………………」
クロトはオルガを呼んで、シャニの腰を少し持ち上げる。声に導かれて、オルガがシャニの中に身体を沈める。一気に深く埋め込んだ。
「んあぁ…………にゃあ、ぁ……んん……!」
無意識に逃げ出す身体を押さえて、前で反り立っているシャニのモノを愛撫してやる。
「ゃっ、にゃぁん…………あぁっ…………!」
既に苦痛はなく、全てを受け入れてくれている。上から見おろすクロトが悲鳴をあげるシャニの口を、自らの口で塞いだ。
「んっ、んぁ…………クロ……っ…………」
「……にゃあ……ぁ…………ッ」
シャニは堪らなくなったのか、きゅっと目を瞑り、クロトを引き寄せ抱き締める。激しい動きと、クロトの接吻の息苦しさに辛そうにシーツを掴むが、オルガは構わず突き上げた。
「んぅっ……ぁ…………にゃぁ…………っ」
「ゃぁ…………にゃあ…………ん、ぁ…………」
猫達が甘い泣き声を繰り返す。我を忘れて二人は絡み合っていた。
「ぃ……く…………すまん、シャニ……ッ」
びくびくと、と揺れる二人を、追い上げる。中で、オルガはその熱い欲望を解き放った。
「ぁ、……にゃ、ぁ……あぁあ―――……っ!」
突然シャニの身体が硬直し、ものすごい締め付けが襲った。シャニの背が反らされ、切なそうな声が部屋に響いた。
―――早朝、……まだ日が上がらない時刻。オルガが目が覚めてまずした事はアズラエルに文句を言いに行くこと、だった。
「おはようございます、オルガ」
まだ暗い中出迎えてくれたアズラエルは、胡散臭い笑みを浮かべていた。相変わらずのスーツ姿や、何時寝ているのかといった疑問が沸いたが、とりあえず言いたかった事だけ尋ねた。
「―――二人に何しやがった?」
「別に僕は昨日二人に手を出してはいませんが? 何したって、それは君の方なんじゃないのかぃ?」
……その返答に、ヤハリ、と溜息が出た。
「…………言い間違えた。『二人に何吹き込みやがった?』 変なコト言ってバカなアクセサリー渡したのテメェだろ」
そこまで言うと、バレバレですかぁ〜と観念したような顔をした。……その表情が妙に芝居臭いのがムカつく。
「いえいえ、ただ僕は『オルガは猫好きだから猫になれば好きになってくれるかもしれませんよ』と言っただけですから」
「嘘つくな! あの二人がそんな事素直に従うと思ってんのか!!」
只でさえ写真集を見られた時非難の言葉を浴びられそうだったのに、そんな事を聞いても「うざい」「きもい」「ヴァカ」と罵られるだけだ。アクセサリーを提供したのは間違いなくアズラエルだろう。昨日そうするようにし向けたのも、……きっと……。
しかしどうすればあんな洗脳出来るか。変なコスプレを平気でする程あいつらもバカじゃない筈。……例えば『オルガをヤってこないとメシ抜き』や『お仕置きで薬抜き』と言われたのか。単に『罰ゲーム』かもしれない。
「でも、楽しかったでしょう? 是非写真に撮っておきたい可愛らしさだと思いません?」
……それは激しく思うが。
「……あんな物を用意したアンタの事だから、写真ぐらい撮ってると思ったんだが」
「ん、それが、―――流石に僕も本気でやるとは思わなくって」
残念です、と笑顔で肩を落とした。
「とにかく、僕は本当に一言言っただけですからね。有り得るとしたら一つだけでしょう?
―――僕の言葉を本当に信じて二人は実行した、とか」
「……」
「つまり、君により好きになってもらいたかった―――ワケですね」
にこにこと、気味の悪い笑みで言った。勝手な解釈付きで。
……。
「――――――有り得ないだろ、それは」
一言、言い残してアズラエルの部屋を去る。去り際にアズラエルが頭にくる台詞を二、三個言っていたが無視する。
―――自分の部屋に戻る廊下で、一段の顔が熱くなったのに気付いた。
(………………有り、得ない、だろ。そんな事……)
頭を振るってアズラエルの言葉を忘れようとして、激しく壁に頭をぶつけた。
どれだけ自分が動揺していたかを物語っていた。
そういえばあの夜、猫が忍び込んできた時鍵が掛かっていた……先程の鍵はアズラエルの部屋に行く際に掛けたものだが、あの時はどうやって開けたのだろう。
(……やっぱりオッサンのもんか)
ぶつぶつ一人で考えながら、部屋のドアを開いた。
乱雑な部屋。電気は付けていないからまだ暗い。暗闇の中、壁を手で這って帰ってくる。
―――そんな中、まだ猫が二匹眠っていた。
身体を丸くして、本物の猫のように重なり合って、気持ちよさそうに眠っていた。
「…………」
廊下で向かっている最中に文句を起こして文句を言おうと考えてた。のに、思わず言葉を失った。
―――あまりの、可愛らしさ、に。
「…………甘過ぎだな俺」
アズラエルにあんな事言われて、少しでも『嬉しい』と思ってしまって、……自分に嫌気がさした。
「ぅ……う……オルガぁ?」
部屋に戻ってきて直ぐ、猫二匹が目覚めた。
その隣に腰掛け、乱れた猫の髪を梳く。
「すまん、起こしちまったか」
「…………」
シャニが腕を引いてくる。何だと思って身を屈めると、肩を引き寄せた。オルガはバランスを崩してシャニの上へ倒れ込む。
「うぁ……っ」
倒れ込んだ所に、クロトが上へ乗りかかってきた。……昨日の続きみたいに。
「おぃ、もう朝だぞヤメ…………」
「ったく! 何処行ってたんだよ!!」
「……ホントに、いきなり消えやがって……」
言葉を言い終える前に、二人は次々と文句を言ってくる。こっちが文句を言いたいぐらいなのに、我慢して口を接ぐんだ。
「まだ時間あんだから、黙って寝てれば良かっただろ」
今度は、二人揃って口を紡ぐ。
「…………オルガと一緒に寝たかったんだよ…………」
―――それがまるで、主人の帰りを出迎えた猫のようで。
「………………もう一度、寝よう?」
そう言うと、クロトがシーツをムリヤリかぶせてきた。……一応上司に会いに行くということで軍服に着替えていたが、そのまま。
「時間的に今ヤったら危ないんじゃないか?」
「別に『しよう』って言ってるわけじゃなくて…………その」
クロトが弁解する前に、優しく抱き締めた。シャニも、手を伸ばしてくる。
オルガは伸ばした手に自分の手を重ねて、そっと目を閉じた。
END
03.8.29