■ Mastery
「バカ、何やってんだよ!」
宇宙にあがってから数日が経って、いつもの待機所でいつものメンバーはいつもの事をしていた。オルガは椅子に座って飽きない本を読んでいて、クロトは寝ながらゲームに夢中。宇宙空間には当然の事ながら重力がない。体を支えていないと体が浮いてしまう。そんな状況でも構わず、クロトは携帯ゲームに夢中になっていた―――。
ふよふよと、空に漂うクロトの体。自由に飛び交い空に舞っているその人間の姿に、あるモノを思い浮かべた。
―――天使、とかいう世に有り得ないモノ。人型で空を飛ぶと言ってまず思い付くもの。
心が歪んでいるからそんな可愛らしいものを見せられてると―――つい、拈り潰したくなってしまった。
「シャニぃ…………やめッ……!」
浮いてたクロトの腕を引き寄せ、邪魔なウルサイ小物は払う。払った拍子にそれが宙を飛んでいき、壁に激突した。
「ぁっ!? てめ、壊したらタダじゃおかな………………んっ?!」
クロトは自分の身の危険より、ゲーム機の方を心配する。何をされてるかちっとも判っていない。分からせるために、叫びだした口を口で塞いだ。
クロトは驚き、目をギュッと瞑って嫌々と頭を振りたくる。頭の後ろから手で押さえ込んで、動きを封じようとした。口が触れ合いながら目を開くと、クロトは涙目になっていた。心の準備も無いまま呼吸を止められて苦しいのだろう。
「何か……クロトの体って細いから……触りたくなってくる」
いつからか、抱きかかえていたシャニの体も宙に舞っていた。唇を放す。
さっきまで腕から逃れようと必死で抵抗していたが、さっきの口づけで生気を奪われたのかシャニの体を引き剥がそうとはしなかった。涙をため込んだ目を擦り、目の前のシャニを睨む。
「……こ、のぉ……変態……っ」
「オルガほどじゃないよ」
「………………………………シャニ、てめぇ」
部屋の端の椅子で読書をしていたオルガが初めて発言した。……真面目に読書をしていると見せかけて、同じ部屋で天使を突き堕としたシャニをじっくり観察していたらしい。と言っても小さな部屋で大声を出して抵抗していたのだから、気付かない方が可笑しかったりする。
「オルガァッ! 気付いてるんなら助けろよッッ!」
オルガの声で正気に戻ったのか、クロトがシャニの腕の中で藻掻きながら助けを求めた。だが、オルガは
「そんな躰で彷徨いてるお前が悪い」
……と、理不尽な事を言ってニヤニヤ嗤っただけだった。
人が大変な想いをしているのに、とクロトは無性に腹が立った。……だが今は殴りつけに行く余裕もなかった。
「っ、…………元からこういう体なんだから仕方ないだろバァーカ!!」
「…………うるせーな。さっさと黙らせろよ、シャニ」
オルガがそういうと、シャニは頷いて、言われた通りまたクロトの唇に食いついた。
「んぐぅっ!?」
……いつの間にか二人の連係プレイの餌食になってしまっている。再び襲いかかってきた大きな波に翻弄されていた。
「ん……ぅんー……!」
唇を嘗め回される。詰まった息を吐こうと口を開けると、シャニの舌が侵入してきた。……その舌を囓り切ってしまえばいいのに、つい舌で応戦してしまった。
口から口が離れると、今度は頬へ……耳へ……首筋へ舌がまわる。
ぞくり、と背筋が震える。躰全体に電流が走ったように、『気持ち悪い』と反応した。
「動くなよ……」
「う、動いてなぃ…………シャニが、押すから……体が勝手に……」
浮くんだ、とクロトは言い訳する。
が、実際舌に弄ばれて躰を捩っているからだった。必死で弁解するクロトに、シャニの口元が緩む。
「じゃあ……オルガー……手伝って」
「あぁ」
シャニのその声を待っていたというように、オルガが動き出す。即座にクロトの背中に張り付いて、羽交い締めにした。そしてクロトの腕を後ろ手に固定し、赤いシャツを一気にまくりあげた。
「ひ……ッ!」
手の組み方がきつすぎたのか、クロトが悲鳴をあげた。痛みを和らげようと開いた口に、まくり上げた布を挟ませる。
「コレ喰ってろ。……放したら承知しないからな」
「ぅん……っ?」
クロトの口に、赤いシャツの裾をくわえさせた。―――自ら露出させてるようで、なかなか官能的な格好だ。
下のズボンまで脱がされている時には、クロトは抵抗していなかった。もう逃げる事は無理だと感じたのだろう。―――毎度、二人が揃って襲われた時は道は一つしかない。
ただ、いいように犯される。それだけの事だ。
ひんやりと冷たい感覚が襲う。自分のモノに他人の手が触れて、クロトは声をあげた。
「んぅッッ……!」
「くわえてろって言っただろ!」
声をあげれば自然と口は開いてしまう。オルガのキツイ言い方に体をビクリと震わせて、きつく口を結んだ。涎が歯の隙間から流れそうだった。……本気で二人を怒らせれば三日は起きあがれない体になってしまう。それだけは避けたい、と言う通りにする。
腕を後ろで結び終わったオルガが、今度は慣れた手つきでクロトの体を弄び出した。指を突起へとしなやかに動かす。少し焦らすように遊んでからきつく掴んだ。
「んっ、んぅう……っ!」
躰は行為一つ一つに激しく反応する。それが楽しくて二人は次々と快楽を与えていく。
きつく突起物を掴まれたと思ったら、今度は指の腹で優しく撫でられる。妙にむず痒い。指から逃れようと、体が悶え出した。
下ではシャニが顕わになったクロトのものを激しく愛撫されている。時折指ではない柔らかい感覚に包まれるが、それが何か確認している暇はない。声を出さないように気を遣っているせいか、目を開けていられないでいた。
「……ちょっと……痛い?」
クロトを気にしてかシャニが優しい台詞を投げかけてきた。だがその声とは裏腹に、指は乱暴に動き回っている。荒く、激しい扱いに、直ぐ躰が熱くなってきた―――。
「ぅ……ん……」
呻きではなく、肯定として声を出す。
……微かに笑い声が聞こえた。クロトの声を聞いて、また熱く下の指が動き出す。
「ん…………なんかヌルヌルしてきた…………」
いつの間にか吐き出された液体に、シャニの指が濡れていった。濡れた手をもっと下へ……下へ運び、クロト自身へと突き進ませる。
すると、ぐるんっとクロトの躰が半回転した。
「っ、ぁっ……!?」
驚いてくわえていたシャツの裾が口から離れた。指が入れやすいようにと、躰を逆さにされたのだ。中途半端に重力があるから出来る事だった。体感したことない感覚に、目を見開いて驚く。
「……くわえてろって言っただろ?」
……上の方から、オルガの普段より低い声が聴こえる。
「だ、って……ビックリしたから…………」
「『お仕置き』だな」
オルガはどっかの上司の真似をして、自分のズボンを一気に下ろした。……体が世界と反転しているクロトの目の前に、オルガのモノが現れる。
「っ……!?」
「しゃがむよりヤリやすいだろ?」
そう言うと腰を目の前に突き出して、クロトの口に無理矢理挿入していった。
「ん、……ぅむ……んん……っ」
口一杯に頬張るが、慣れない無重力の感覚に、後ろ手で縛られている。巧くオルガを感じさせる事が出来る筈無かった。
「凄い格好……」
シャニはオルガとの行為を嘲笑って、上空にやってきた下の口へ指を入れた。
「くぅ……っ!」
呻く。口にはオルガのを含みながら、下半身に激痛が走る。苦しくて何度も唸った。けれど指は中へ誘われるようにゆっくりと徐々に奥へと飲み込まれていった。……最初は1本だった指が2本に増え、滅茶苦茶に動かされる。
「ん、んぅ……はぁっ……っ!?」
指だけでイかされる。無惨なやり方に、上下の口のどちらも解放された時には、クロトはボロボロに泣き喚いていた。
「オルガ……先やっていいよ?」
「ぅん……そうだな」
肩で息をしていたクロトの腰を押さえつける。微かに抵抗の色を示すが、それも誘っているようにしか見えない。
「や、ぁ……オルガぁ……っ」
「息吐け」
声を発してから行動にうつるまでの時間は恐ろしく短かった。体を曲げ、一気に宛う。呼吸を整え直す暇も与えられず、クロトは強い衝撃を受け止めた。
「ぃっッ!? あ、ぁあ…………ッ!」
後ろから貫かれる。後ろ手に縛られた腕はまだ解放されていない。全てが空回りして何かにしがみつく事も出来ない。支える力が無いまま、抜き差しが行われた。
「ぁ! ……はっ、……うぅ……ん」
後ろから覆い被さられて、首もとに熱い息が当たった。
「ひ、ぃ……あ……あ……ッッ!」
聴こえるのは耳元のオルガの吐息と、付けっぱなしのゲーム音と、……シャニの小さな笑い声。
何処からか惨い姿を見られてると思うと、余計に興奮して躰が跳ね返る。
「クロト………………っ」
オルガが内部で爆発させると声がする。一呼吸置いて―――、一気に引き抜き、クロトの背中に吐き出された。
「ひぃ……ッ!」
熱が背中に広がっていく。一気に引き抜かれた痛みと、突如背後を襲った熱とで小さな悲鳴をあげた。爆発したオルガの精液がクロトの背中にかけられ………………る筈だった。が、
「………………なんかこういう飴あったよなぁ」
濁った液体が、個体になろうと丸くなって宙に浮いた。
本当に飴玉みたいに飛び散る。……一部がシャニの顔にピシャッと張り付いた。シャニは指で頬についた液体を拭き取り、自分の指を眺めた。
「んー…………これじゃ俺がオルガにかけられたみたいだな」
その指を焦点の合っていない目のクロトに持っていき、―――ゆっくりと舐めさせた。
「ぁんぅ……っ」
ぐったりと床に倒れ込んでいる所に休まずシャニの指が襲う。口内で暴れ出した人差し指をピチャピチャと嘗め回し始めた。
「…………そろそろ呼ばれる時間だったよね」
指を舐めさせながら、オルガに全く関係ない話を始めた。
「ん? あー、AA追ってるってヤツか」
「……クロト、出撃出来るかな……」
……自分自身の事を話されているというのに、クロトは耳を傾けない。虚ろな目でシャニの指を追っている。
口には出さないが、目も躰も次の行為を誘っているように見えた。
「何とかして出撃させるしかないだろ」
「…………その時は宜しく」
今にもしがみついて来そうなクロトを優しく抱き締めて、第二ラウンドに突入した―――。
END
03.8.12