■ MOVE ON



何故、あんな所で君に会ってしまったか。

偶然だったのか、必然だったか。

君との再会。

楽しみにしていたものだったか、逢えたらどんなに嬉しいかと思っていたか、

君と今、目があって。

…………ひどく後悔する。



―――君に逢いたくなかった、と。



あの日の自分はもういない。

彼と一緒に笑っていた自分は捨てた筈だった。

今は一人の兵士として。

使い捨ての人形として生きている。

それもまた名誉として、使命として生きていた筈なのに。



―――君は、何故真っ直ぐな目で僕を見る?



その目は、何よりも強い武器。

僕の中に今までになかった強い感情がふくれあがり

そして、崩れた。

忘れていた何かが元に戻った。

気丈さを初め強さが零れ落ちた。

―――僕を使い物にならなくした。

そんな、

昔から、

憧れてた目を、



―――何で、今、なんだ?
こんな姿を、君には、見せたくなかったのに―――。



―――名を呼ばれる。
逢いたくなかった。

こんな自分を、見られたくなかった。
―――名前を呼ぶ。

君だけには。

真っ直ぐで、綺麗な君の目だけには。
『アスラン』
こんな、変わってしまった自分を。

ちっとも変わっていない、君に見せたくなかった。



ずっと想っていた。

君の事だけを想っていた。

あの頃の気持ちはその気持ちだけは嘘じゃないんだ。

友人として、親友として、ずっと見ていた。
逢えなかった日。

いつか逢おうと約束した日。

長く月日が経ち、逢えなかった日。

それでもずっと。

潜んでいた、隠していた感情の中に
―――君は、残っていた。



そして。

今、君が、僕の前に立つ。



あの頃と変わらない真っ直ぐ瞳をした君が。
ずっと見たかった瞳が目の前にある。

ずっと見ていたかった瞳が目の前にいる。

今、自分の置かれてる立場なんて捨てて、再会を喜んだかもしれない。



―――何で、なんだ。

―――どうして、そんな声で僕を呼ぶ。



本当は笑って駆けつけたいんだ。

抱きついて、笑い返してほしいんだ。

昔なら、出来た事だろう?

たったそれだけじゃないか。



たった、それだけが出来ないだなんて。

―――痛む。

自分がここまで病んでいたのかと気付いた胸が。



―――名を呼ばれる。
ずっと。

ずっと、ずっと。

こんな風に君と目をあわせたかった。
―――名を呼ぶ。
真っ直ぐに君の瞳を見つめて。

見つめて。

そして。
『キラ』
大好きな記憶と同じように、語り合い、笑いあいたかった。



―――君と、逢いたくなかった。



―――今も変わらない、彼の声。
好きだと、言ったら。

もしもきみに好きだって告げたら。
―――変わってしまった、僕の声。
それでもきみは今の言葉を私に言ってくれるのか?
『      』
同じ言葉を告げてくれるのか?
素直に、再会を楽しめて。

今、元気にしているかとか。

今、楽しいかとか。

今、僕をどう想っているか、聞ける。

そんな、夢。

そんな、夢に。

これから苦しめられると想う―――。



―――なら、自分を捨てて今、君の元へ―――



それが出来ずに、僕は去った。



胸が、痛い。

潰されるような痛み。

血も流れない、ただ涙だけが流れる痛み。

誰にも見せたくない、

―――君にだけは見せたくない、痛み。

けれど僕は向かう。

今、自分があるべき場所へ。

今、自分を待っている人々の場所へ。

―――愛していた人を残して。



もう二度と、逢えない、―――逢わない事を祈って。



さよなら、なんて悠長な事も言えず。

今までありがとう、なんて感動的な事も言えず。

どうして現れてしまったのか、なんて怒ることも

悲しむことも

それを

振り払ってくれることも

捨て

て―――。

……。



懐かしい記憶が蘇る。

今は、蘇らせる必要はない。

想い出にひたるだけで構わない。

『僕には使命がある』

そんな衝動に駆られ、彼から離れた。

『ごめん』

今の自分らしくない、弱々しい気持ちで。

『でも』

出来れば、無かったことにしてほしかった。



本当の再会がある事を祈り

僕はまた、君の前で銃を弾く―――。





 
End