■ 「 彼の愛を試したい 」



 /1

「俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ」



 /2

 オレは燕青の愛を試したい。

 自分が最低な男であると自覚している。暴力を振るい、言葉でなじり、変質的な行為を強要しておきながら、求めているものは愛に他ならないと断言している。けれどオレの心はどこまでも素直だった。彼を虐げたとしても求めたいと、心の底から思っていた。
 燕青から貰える愛が信じられず、信じるためには、辱める以外に手段が思いつかなかったからだ。

 例えば、オレの制服を燕青に着てもらったことがある。
 体格はともかく背だけならオレとあまり変わらない彼は、最初は冗談のようにオレの制服に腕を通した。そしておどけて「マスターの香りがする」なんて微笑まれたら。
 その日は制服を着させて、全身でオレを感じてもらいながらの自慰を強要した。
 肉体を誇るように闊歩する彼でも羞恥心は捨てていない。オレの毎晩眠るベッドで、オレの制服に身を包みながら、オレを視線と嗅覚で味わって自分を慰めてもらうという命令。顔を赤くしながら、それでも従ってくれた。
 シーツにうもれながら制服の袖を噛み締める彼。性器を擦って快感に酔う姿。物欲しげに強請る目、けれどどこまでも従順に役目を果たそうとする姿勢。
 乱れる様子に一言も声を掛けてやらなくても、燕青は言われた通り一人で絶頂に達した。

 例えば、プラチナブランドと名付けられた黒装を着てもらったこともある。
 襟元まできっちりと締め上げた格好で廊下を歩けば、大勢が燕青を「似合っている!」と褒め称えていた。そう仕向けたオレが嬉しくなるぐらい色男だと皆から称賛されていた。
 だけど皆は知らない。シャツの下には、普段目にする色鮮やかな花々の他に、赤い縄が咲き乱れていることを。
 見よう見まねで亀甲縛りというものを再現させた。お尻にはアナルバイブを突っ込んで、その上から貞操帯を付けて鍵付きのベルトで締め上げてある。そんな状態で廊下を歩かせた。
 隣で一緒に歩くオレはたまにリモコンバイブのスイッチを操作し、伊達男だと褒められる燕青の体を甚振る。
 アブノーマルな行為を強いている自分に酔う。
 同時に、恥辱的な命令にすら従う燕青を目で味わった。
 たまに身を捩らせて笑う姿が可愛らしかった。だから人の目を忍んでキスをした。キスをしながらもバイブの電源は落とさない。
 白昼堂々、廊下での性戯。それでも燕青は言われた通り一人で絶頂に達した。

 例えば、燕青の首を絞めたことがある。
 あまりに彼が優しいので、何をすればオレを拒むのだろうと考えた。その先にあった一つが、絞首だ。
 オレにちんこを突っ込まれてベッドに大の字で倒れる燕青が、息も絶え絶えで天を仰いでいる。その最中、オレは無防備な彼の首に両手を忍ばせた。
 最初は首元を愛撫されるのかと思ったらしくはにかむだけ。だが次第に首に絡む指が呼吸器官を圧迫していくことに気付いて、目を見開いていった。
 その目は、オレの見たかったものではなかったのですぐに終わらせた。謝罪し、「もう絶対にしない」と叫ぶ。燕青を愛したいと思っておきながら窒息させたいだなんていくらなんでも馬鹿が過ぎる。本当に悪かった……と謝罪を重ねると、彼がオレの指を取った。
 指を自分の首元に導いていく。
 そして震えた声で、

「いいよぉ、マスターの好きにして」

 と、誘う。
 なにを馬鹿なことを、とは言えなかった。今もなお突き上げられているというのにその笑顔、首を絞められるというのにその艶笑は……オレを一回りも二回りも昂らせる。
 だから、思い切り首を絞める。許してくれるのだからと指に力を込め、今度は二人して絶頂に達した。
 解放されて咳き込む燕青は、

「マスター、ありがとう」

 と、笑う。

 正直に言えば、理解ができなかった。

 燕青が優しいことは知っている。だけど厳しい武人であることも知っている。
 小柄で端整な顔立ちではあるが、彼だって男だ。凛々しく逞しく誰もが認める伊達男であるのに、どうしてオレの異常につき従ってくれる。
 オレのことを好いてくれているから? オレの行為なら何でもいいと心酔してくれている? そう信じていい? 本当に……?

 ――見せる笑顔をそのままに、一刻も早く『オレを認める言葉』が欲しい。

 咳き込みながら感謝する彼を抱き締める。ありがとうと何度も感謝し、優しく抱いて眠った。
 けれど何故だかその夜、燕青は残念そうに微笑んでいた。不釣合いな言動と笑みがどうしても忘れられない。



 /3

 何故このような行為を興じているのか。全ては、己の見苦しい感情が発端だ。

 元より、オレは小心者だ。
 追い詰められると大胆になって、その面倒な性格が幸して戦場を立てているようなもの。数ヶ月前までは普通の高校生で、人並みに怯えるし、嫉妬もするし、悔しくて涙だって流す一般人だ。
 そんなオレにも好きな人ができて、まさか初めて好きになった人が英霊で、しかも男で。自分を男にしてくれるとは思いもよらなかった。

 少しだけ、幸せだった時間と憎い衝撃を回想しよう。

 その日は燕青と二人きりで過ごした何度目かの夜。正面から抱き締めた燕青が、オレの肉棒でよがり狂っていた。
 背に手を回して抱きつく燕青が可愛くて一度は達した。けど甘えた声を出す彼を見ていたら、またオレのモノは元気になってしまい……無理を承知で二度目を求めた。
 真正面から愛した後だ、更なる快感のために燕青を下に敷く。絶頂を迎えたばかりの彼は脱力しきって枕に突っ伏していた。背を向けた燕青の腰を掴み、ぱっくりと開いた尻穴にオレのモノを宛がう。
 嫌がりもせず燕青は、オレの熱を喜んでくれていた。
 そう、オレのモノを味わってくれている。オレに対して淫蕩にも腰を揺らして誘ってくれていた。オレ自身を求めてくれている。オレのことが欲しいと強請ってくれて、それが嬉しくて、無我夢中で抱こうとした。

 だというのに。
 当然後ろから犯せば見える『ある文字』を見た瞬間。嫉妬の炎に焦がされ、彼の背中に爪を立てていた。

 ――彼の肉体に華麗な絵画を施したという生前の主。
 才能ある彼を拾い、多芸に育て、英霊として残ることになってしまった彼の悲劇を作り出した張本人。
 燕青という人物を語るに外せない人物。ここにはオレと彼の二人しかいないのに、今もなおこうやって燕青の体を支配している何者か。彼の心をも虜にする男の名が、オレの前に現れている。
 会ったことのない男に対する嫉妬! それによる暴走!
 激しく怒りを抱いてしまったオレは……燕青が悲鳴を上げるまで、酷い行為を強いてしまった。
 嫉妬に燃えるあまり美しい肌を傷つけ、非情な言葉で燕青をなじる。
 ――オレが欲しいの? 本当にオレが欲しいの? 本当に? オレでなくてもいいんじゃないか? オレより欲しいものがあるんだろ? オレじゃなくて、燕青が欲しいものは――!
 などという暴言を吐きつけ背中の名に爪を立て、長い黒髪を掴んで……。
 正気に戻るまでの間、燕青の心を嬲り続けた。

 ……心から彼を愛していた。だから彼がオレの所有物ではないと思った瞬間、自分を見失った。
 そんなの許されることではない。負を吐き出してしまったオレはどうしようもなかった。嫌われても仕方ない! 見捨てられたって文句は言えない! 謝ったって許してくれる筈が無く……。
 だというのに、白い肌を青くなるまで甚振られた燕青は…困ったように笑うだけ。そしてオレを抱き締めてくれる。

 そのとき初めて、『真の笑顔』を見た。

 燕青は、普段から陽気に笑う。戦場を駆けるときも自信に満ちた表情で拳を振るう。
 頼れば「この無頼漢を信頼しすぎるんじゃないぞ」と茶化し、それでも満更じゃなさそうに微笑む。窮地に追い込まれたときでも不敵な笑みを崩さず、「侠客らしく殴り合いと洒落こむか」と賑やかに囃し立てることだってあった。
 彼の笑みは決して珍しいものではない。それなのに暴力を振るった夜、『初めて燕青の本当の笑顔を見た』と思ってしまった。

 ……きっとオレを慰めるために笑顔を向けてくれたんだ……!
 そうに違いない。何度も謝った。ごめん、オレは燕青になんてことを、謝って済むものじゃないのに、ごめん……。抱き締めてくれているのに涙と鼻水で彼を汚すぐらい、何度も何度も謝罪を続ける。
 すると燕青から口付けをくれた。
 昂りを生じさせる濃厚なキスではない。心を慰めるための、母の抱擁のようなキスだった。
 ……こんな自分を許してくれるのか? オレを好きでいてくれるのか?
 燕青はオレの手を取ると、その手を燕青の股間に導いていく。

「俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ」

 ――――唐突に、奈落の谷底に突き落とすような一言が襲い掛かった。

 オレの指は剥き出しになった彼のモノへと導かれる。
 いつの間にか彼のペニスは、雄々しく成長していた。
 さっき行為を途中で中断させたから? 意識が飛びそうな動揺のまま勃起した燕青のペニスを握ると、彼は今までに無かった淫靡な声で鳴く。

「マスターは俺を組み敷きながら、ちんぽを硬くしてたよねぇ。知らなかったのかい。じゃあ自覚するといい。あんたは俺を虐げながら気持ち良くなっていた。俺もそれが凄く気持ち良かった。なら……お互い平和になるためにどうしたらいいか、賢い主なら判るだろ?」

 さっきの言葉とは裏腹に、「ソコに爪を立てて」と強請ってくる燕青。
 『好きだと言う気は無い』とオレを拒絶するような一言を吐いておきながら、「セックスの続きをしよう」と微笑んだ。しかももっと酷くしろ、痛くしろと言う。
 愛情の末に抱いてくれというのではない。
 愛情など無いと言うかのように断った上で、自分を虐げろと煽ってきた。



 /4

 淫具、拘束具、ジョークグッズ……。始めのうちは「こんな物を使っていいのか」と不安で堪らなかったが、その意識は次第に消えていく。
 どうやって一式を揃えたか覚えていない。『愛する燕青を虐げるにはどうしたらいいか?』、少し悩んで調べたら何を買えばいいかすぐ答えが出てきて、いざ触ってみたらどれも楽しかった。

 彼を全身で愛している最中に、彼からの愛を懐疑した。
 彼も「マスターのこと、好きだと言う気は無いよ」と宣言した。愛して抱いていたというのに、その一言。そこで絶てば良かったが、あらぬ形で関係は続いてしまった。

 オレは過激な方法を強いて燕青を弄ぶことで、「オレが彼を束縛している」という充足感を味わう。
 彼は過激な行為の方がいいと強請り、オレの愛を受ける。
 お互い利害は一致している。だから続けよう……そういうことで、オレ達は道を踏み誤り続けた。

 燕青が望んでくれるなら良い。出来ればオレだけを想ってほしかったけど、事あるごとに「俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ」と忠告する。
 じゃあなんで最初抱かせてくれたかというと、「気持ち良くなりたかったから」に他ならない。
 本気で愛していた自分が惨めだったが、だからといって燕青との時間を絶てるほど、オレは強い人間ではなかった。

 さて、今日は二人で共同トイレの個室に入った。

 常にカルデアでは数人のスタッフが施設の維持のため駆けまわっている。24時間スタッフは働いていた、つまりどのタイミングにトイレを使われてもおかしくない。
 だというのにそこを行為の場所として選んだのは、「スリルを味わうため」という理由しかなかった。

 洋式便座に座り、燕青にしゃぶるよう命じる。
 快諾した彼はすぐにオレの足元に跪き、オレのペニスにキスをした。

「いただきます」

 こんな命令に喜びながら、そんな冗談を口にしながら。

 上から眺めるたびに、改めて「燕青は綺麗だ」と思う。
 小柄で中性的な顔。正真正銘男性の肉体は鍛え抜かれ、白い肌には美しい刺青が刻まれている。どこを見ても飽きない芸術品のようだ。
 そんな美しい彼が熱心に、そして愛おしそうにオレ自身に舌を這わせている。……満足感が果てしない!

 隣で従わせたいというより、思う存分目で楽しみたいと思ってしまう。
 出来れば飾って置いておきたいとも考えてしまった。ただ置くだけで自室が華やかになる花瓶のように、オブジェのように。いや、自分の体に置いているのだから、正しくはアクセサリーとして扱いたいのでは……?
 悶々とオレが燕青の顔をオカズに見下ろしている最中も、燕青は亀頭を吸い上げ、体ごと前後に揺さぶっていた。早くも快感に顔を歪めている。
 それではと、彼のお気に入りであるアナルバイブのスイッチをオンにしてあげた。
 貞操帯によって外せずにいる物の衝撃にピクリと反応しながら、それでもオレへの愛撫は止めない。ちゅうちゅうと音を立ててオレの肉棒を味わう。舌全体で堪能した後、喉へ導いていく。
 指示を出す必要など無いぐらい、燕青本位で行為は展開されていた。激しい口での愛撫は、燕青の得意とするものだ。何も言わずに燕青の戯れを受け、オレは彼の黒髪を撫でるのみ。
 けど申し訳無いなと思って頬を撫でる。首元を摩ってあげたとき、喜ぶかのように目を細めた。また耳元を掻い撫でると、満たされたような顔で微笑み、喉でオレを愛おしみ始めた。

 そのとき、キィというドアの開く音が響いた。

 ここは共同トイレなのだから誰かが入ってきてもおかしくない。足音の後、トイレを利用した男性スタッフは大の個室に入ったようだ。
 そして聞こえる衣服の擦れる音、トイレットペーパーを使う軽い音、水を流す音……。
 オレは、まるで音と連動しているように、バイブの振動を高めた。

「んぁッ……!」

 燕青は口をペニスから離し、頬づりするかのようにオレの股間にもたれかかる。
 思わず出てしまった声だが、利用した男性スタッフにはバレていないだろう。流した音の後はバタンという激しいドアの開閉音。何かに気付いたなら一連の音が止まる筈だ。
 だからまさか隣の個室でアサシンのサーヴァントが、常に陽気な笑みを振りまく美丈夫が、アナルバイブで身悶えしているとは思うまい。

「は……ぁ……ぁぁ……ん!」

 必死に声を押し殺しながら、オレの股間に顔を埋ずめる。
 ペニスで頬を叩いてしゃぶるよう急かしてみた。が、どうやら中が気持ち良いところに当たっているらしく、ちっとも反応はしない。
 便座に座るオレに跪きながら、気持ち良さそうに腰を揺らしている。
 外の音がしなくなったのを充分確認して、オレはバイブのスイッチを更に高めていった。

「ぁぁっ! マスター……!?」

 声が大きい。そんな声よりも大きいヴヴヴヴという音が、トイレ内に反響する。
 それほどアナルバイブが活発であり、ベルトで固定された中で更に燕青を弄んでいくということだった。

「ぁっ、あっ、だめ、そこっ……この姿勢、当たっ……」

 燕青の指が、燕青自身に触れたいと叫ぶように、鍵の付いたベルトを引っ掻き始める。
 だが貞操帯の黒ベルトは全てを圧迫していた。ベルトの上から性器を刺激しようとしても、四方を厚い生地に覆われているため外からの刺激は一切受け付けない。
 刺激を欲しがろうとしていた指は、徐々に、ベルトを外そうとする動きになっていく。
 それも敵わない。下半身の拘束具は鍵が無ければなかなか外れないものだった。強制的に送られる振動から逃れるためには、オレが操るリモコンを奪い取るか、無理矢理ベルトを引き千切るぐらいしかなかった。
 けれど、燕青はそれもしない。力を振るってでもオレから逃げ出すということをしなかった。
 彼が色欲狂いだからか、もしくはオレからの行為を愛してくれているからか。
 後者だと思い込みたかった。

「イく……イっちゃうよぉ、マスターっ……」

 無理矢理に性を高められていく。しかし前を放出することは装着した器具の性質上、不可能だ。
 悲鳴を上げたくても許されない場所で、射精の伴わない快感を強制される。
 涙で目を潤ませつつ、全身を震わせつつも、なんと燕青はオレの玉袋をパクリと食べた。
 そんなもので口を閉ざすのか! 思いもしなかった展開と突然の刺激で、今度はオレの方が悲鳴を上げる。
 本当に嫌なら助けてと言う筈。それも無いってことは……。
 唇で甘くオレの根元を刺激する燕青は、ビクンビクンと痙攣を見せつけながら……一人で絶頂を迎えた。

 端整な顔立ちが、とろんと蕩けている。
 快楽だけに没頭するのように。他の何者に気など無いかのように。
 もうオレが繰り出す快感にしか興味が無いかのように。

 …………おそらく、まだ足りない。

 淫らな苦悶を上から眺めてオレの心が満たされていても、まだ燕青の内側まで支配できたとは思えない。
 トイレの個室で限定的な快楽に呑まれる彼。従順に主の言葉を聞き入れる従者の鑑。……そう言い切るには早いだろう。
 思わず口からあの言葉が出そうになってしまう。……正気を失い、燕青に浴びせてしまった言葉達。――――本当にオレが欲しいの? オレより欲しいものがあるんだろ? オレじゃなくて、燕青が欲しいものは――!

「マスター……凄く、いいよぉ……良すぎて、俺、死んじゃいそうだ…………幸せだよぉ」

 惚けた声にハッとなる。
 いつの間にか右手が、彼の艶やかな黒髪を握りしめていた。それは誰がみても愛おしむ手つきではない。いや、こんな場面を誰かに見せる訳にはいかないのだが。
 すぐにその手を解き、絶頂に酔う彼の頭を撫でる。
 こんなに幸せそうな顔で快楽を満喫していても、まだ燕青はオレを愛する言葉をくれない。だから次に進まなくては。もっと満足させてあげて、本当にオレが繰り出す快感にしか興味が無いかのようにしてあげなくては。

 また撫でる指が、焦る心のせいなのか髪を掴んでしまっていた。



 /5

 燕青が自分を愛してくれているかを試すより先に、本当に自分は燕青を愛しているかを考えるべきだ。

 思い返されるのは……星を見たあの夜の日のことだろう。
 長いガラス張りの廊下にて。吹雪のやんだ夜空を眺めている燕青が居た。
 端麗な彼。星が輝く夜を見上げている。となったら、それはそれは幻想的。何の装飾もいらないぐらい、ただ「綺麗だ」と呟きたくなる世界がそこに広がっていた。

 ――燕青は、星が好きなの?

 当然問い掛けたくなるものを、素直にぶつける。
 一人で物思いに耽る彼を邪魔するのは悪かったが、見ているだけで胸が高鳴る彼に近づく手段としてありきたりな疑問を投げた。

「なにせ魔星の生まれかわりってやつだからなぁ。こんな無頼でも星を尊ぶ心ぐらいあってね」

 それは好きってことなのか? 生前から星見は趣味だった?
 何気ない言葉をいくつも投げ掛け近づいていく。手を伸ばせば届く位置まで近づき、もっと彼を知ろうと身を乗り出していた。

「どうだろう。星を眺めることが趣味の生涯だったかどうかも判らない。俺の人生はある人との別れで終わってしまっているから。俺自身のことなんて自分にも判らない」

 己のことなど判らない。その言葉に、高鳴り熱くなっていた胸が一瞬にして凍る。

 ――自分の人生はある人に仕えるためにあり、それだけの人生を歩んだ。
 ――だというのに決別してしまった。その人の為の体だったというのに。

 生前の主の存在に心が縛られ、切なそうに、それでいて空虚な声色で話す燕青。何と声を掛けたらいいのか迷い、硝子の先の空を貴む彼を見つめるだけになってしまう。

「とはいえ、俺はかつての俺とは違う。前の主もいない、俺は新しい俺へと生まれ変わった。生前の俺は別物で、今こうしてアサシンという役目を貰った新しい俺をしっかりと見てくれよ。新しい俺は、あんたの手に委ねられたのだから」

 何か声を掛けてあげたかった。無言が気まずいという気持ちもあったが、少しでも彼の決意と悲哀を拭ってやりたいと思えた。
 何でもいいから話をしよう! 絆を深めるためには、話し合いと時間が必要だ! 夢中になって、あることないことを話す。
 少しでも彼のことを知ろう、そして彼の心が僅かでも和んでくれればいいと信じて。だから捨てたという過去の話ばかりになり……。

「……酷い生涯だったが、主に辛く当たられたことはない。あの方は俺に何もかもをくれた。孤児だった俺を拾ってくれて、武芸だけでなく芸事や言葉も授けてくれて。……どんな人かって? マスターとは全然似つかないよ! やたらと体が大きかったし、年だってずっと上で。……最期は莫迦な人だったけど、俺にとっての主は……」



 ――それからどうやって自室に燕青を連れたのか。
 星を眺めて過去を憂う彼を止めたくて、窓の無い自室に連れ込んだ。『俺にとっての主は』。その先の言葉を掻き消すためにあらゆる力を振るったのかもしれない。

 中断させなければ、『俺にとっての主は、あの人だけ』と言い切られてしまう。
 それだけは許せなくて強引に展開を変えた。
 だって聞きたくなかった! 理由なんて明確だ。……美しい、近づきたい、触れたいと思っていた相手に……間接的に拒絶されたくなかった!
 そもそもオレは……ただ彼が立っているだけで胸が高鳴るぐらい、燕青に惚れ込んでいた! 何でもいいから話をしようと、絆を深めようと必死になるぐらいに!
 そんな人が予期せぬ拒絶を口にしようとしていたとしたら! ……傲慢なオレは権力の全てを使い尽くしてでも、その話から遠ざけたかった。

 真夜中に二人きりの部屋。何度か夢見た状況だったが、悲痛な気持ちで胸がいっぱい。
 夜空と元主の話から引き離すために精一杯。これから何をすべきか判らない。ぐるぐると混乱するオレへ、大らかな燕青から触れてきた。

「さっきのマスター……本性ってやつだったのかな? 切羽詰まると大胆になるとは聞いていたが、本当だったんだねぇ。本当の姿を見せてくれるなんて、従者冥利に尽きる」

 オレの体をそっと正面から抱き、唇を耳元に近づけてくる。
 夜だから籠手を外していた彼の指は、ちっとも無骨じゃない、滑らかで細かった。その指がオレの髪を撫でてくる。そうして固まるオレにそっと、

「あんたは……感傷的になった俺を見てくれる男?」

 息を吹きかけ、体重を預けてきた。

「俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ。でも……マスターの方は、俺のことどう想っているのかなぁ?」

 …………その後のことは、後悔などしていない。
 同じ時代を生きた人間でなくても、燕青という人物を愛したことを誇っている。燕青がオレに優しく手ほどきをしてくれたその夜を、毎日想い返すぐらい、深い愛情を抱いている。

 一回目は、燕青に思うが儘に弄ばれていた。碌な知識も無いオレを気持ち良くさせて、そのお零れで彼は悦んでいた。
 二回目は、少しはリードできた。それでもオレの上に乗っかった燕青に身を任せていたし、彼はイってもオレがなかなかうまくならず、燕青の手淫で処理をさせてしまった。
 三回目は、ようやくキスができた。
 四回目は、オレから「自室に来てくれ」と誘った。まさか誘われるとは思っていなかったらしく、声を掛けられたときのキョトンとした燕青の顔は見物だった。照れる彼なんてあまり見られないものだから、彼が部屋を訪れる前から興奮しきってしまった。
 五回目以降は、もう何があったと言わずとも、優しく心地良い時間を過ごしていた。
 オレも彼に触れることが普通になり、彼もオレを自然に求めるようになり、二人でシーツの中で話をするのが楽しくてセックス無しで共に暮らすようにもなっていた。
 けれどオレは盛り気味だったせいで肉欲を求める方が多い。もう数えきれないほど二人だけの時間を楽しみ、ただただ気持ち良い行為に沈み、幸福に酔いしれて達し、二度目を求める。
 正面から抱き締めるだけに飽き足らず、後ろから彼を貫こうと組み敷いて。

 ……そして、忘れていた嫉妬の炎に身を焦がす。

 一人で星を見上げて思い煩う彼を引き摺って部屋に押し込んだことが、関係の始まり。
 勝手に一人で盛り上がって燕青を暴行したのが、第二の始まり。
 例えば自分を意識してもらうために自分に匂いを嗅がせた。例えば物理的にオレの傍に置きたいから縛りつけた。例えばオレへの懇願が見たいがために首まで絞めた。
 自らに辱めさせたり、拘束したり、呼吸を奪ったり……。こうして考えてみるとオレ達の関係は、無理強いから始まったようだ。
 どれも燕青の心を縛りつけたかったからだ。いいや、正しくは……負けたくなかったからだ。
 愛の頂点に君臨したかったから! ……居座り続ける奴の座に、強引にでも奪いたかったんだ。


 ――共同トイレから自室に戻り、すぐに衣服と拘束具を剥ぎ取った。

 昂る心が止められない。お互い生まれたままの姿で貪り合う。オレは燕青に入口の扉に両手をつかせて、立ったままの彼を犯した。
 アナルバイブを咥え込んでいた孔にブチ込む。バイブに肛虐されていたというのに、いきなりオレの肉棒を突っ込まれても食らいついて離そうとしなかった。
 肛肉が悦ぶように蠢き、両脚をガクガクと震わせている。倒れ込みそうになる体を逃さず、壁に押し付ける。扉にしがみ付きながら、後ろから激しく突かれ、引き抜かれ、また突かれる燕青。絡みつく腸の熱に理性が支配され、暫くは腰の動きが止められそうになかった。
 荒い呼吸のまま腰を震わせ、精液を放とうとする。
 燕青の中で果てようと思った。だが、またあの文字が見えた。背中に刻まれた名前だ。以前と同じように義の字に腹が立ち、爪を立てたくなってしまう。
 それよりもと、燕青の背を白く汚した。

「ぁぁぁっ……。あ、熱い……マスターの……熱いよ」

 長い黒髪を振り乱す燕青。オレが背中を犯すと同時に、燕青も果てる。
 見ると、部屋の扉に精液が掛かっていた。オレに犯されながらも燕青は自分で前を慰めていたらしい。ほぼ同時に果てた彼は、腰の力が抜けて態勢が保てなくなってへたり込んでしまった。

「熱い……奥が……背中が……焼けそうで……」

 オレの精液を放たれた背中は重力に従い流れ落ちていく。
 余計に汚されていく光景に、この上ない充足感を抱く。
 実に身勝手で、独りよがりなものだ。自分が最低な男であると自覚している。変質的な行為を強要しておきながら、こうして求めているものは愛に他ならない。
 けれどオレの心はどこまでも素直だった。彼を虐げたとしても求めたいと、心の底から思っていた。

「ん…………。マスター……今日は、激しいなぁ……」

 振り返る燕青は、存分に堪能したのか、微笑んでいる。あのときと同じ、『真の笑顔』だ。オレの行為を肯定するかのように、背中の文字を穢されながらも笑みを浮かべていた。
 ……その笑みは何だ? 痛くされることが好きだから顔がニヤけているのか? オレの行為を悦んでくれているから? 快楽にやられて、もっともっとと頭が馬鹿になっているだけ? オレだけを、本当に、求めるようになってくれている……?
 気持ち良いのなら気持ち良いと言ってくれ。
 好きなら好きと言ってくれ。
 笑うだけ笑ってその気にさせるだけじゃなく、これが大好きだからもっと欲しいとかオレに強請ってくれ! だって今もこうして全身悦んでいるだろう!?
 しかし思い出されるのは、惚けた脳に刺さったあの台詞。

『俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ』

 微笑みながらも口にしたあの言葉。幸福そうにしながらもオレを拒絶し、試すようなあの言葉。
 今だって言うかもしれない。どうして? たくさん与えた。オレなりの愛を与えた。でもまだ足りないというのか? かもしれない、そうなのかも、どうなんだ、信じていいのか信じられない。
 信じるためには、辱める以外に手段が思いつかない。

 彼は全身に甘い痺れが走っている最中なのか、放り出した指の先まで震えきっていた。
 次はどんな刺激がいいのか。シーツに血が散るぐらいのことをしたらオレの虜になってくれるだろうか。

 ――見せる笑顔をそのままに、一刻も早く『オレを認める言葉』が欲しい。

 考えるよりも先に、燕青の長い髪を掴んでベッドに放った。ふと何故か涙が流れたが、きっと考え過ぎて興奮した脳が混乱したからだろう。



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『俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ』



 強がりを真に受けた少年は、嫉妬の炎に身を焦がして俺を抱く。品行方正な天下のマスター様とは思えない、無様で素直で強欲な支配者。
 俺も素直で強欲に生きたかった。生前は出来なかったから好きなことをする。好きになった少年を、好きなように愛する。それこそ無様な姿になっても、俺は藤丸立香の愛を試したい。

「燕青。ほら、お尻を上げて。もっと気持ち良くしてあげるから」

 自分が最低な男であると自覚している。暴力を振るわせ、言葉でなじらせ、変質的な行為を強要しておきながら、求めているものは愛に他ならないと胸に秘めている。けれど俺の心はどこまでも素直だった。彼の在り方を潰してとしても求めたいと、心の底から思っていた。
 何故ならマスターから貰える愛が信じられず、信じるためには、辱める以外に手段が思いつかなかったからだ。



「燕青。前にオレが『勝手にオナニーしちゃダメだよ』って言ったの、覚えている? 忘れてたよね。さっきオレに許可なくシコってたもの」

 数日前までの藤丸立香は、そんな威圧的な台詞なんて言えなかっただろう。
 だが支配者を気取る彼は、呆然とする俺を乱暴にベッドへ放った。
 おかげ頭からシーツに突っ込む。なかなかの責め苦に動けなくて柔らかなベッドに突っ伏していると、マスターはすかさず濡れた俺の体を撫で回してきた。

「お仕置きしてもいいかな、燕青。ちんこの先から管を入れるの、やってみようか? ちょっと痛いかもしれないけど『痛いぐらいがいい』って言ってたのは燕青だし。オレ、頑張るよ」

 慣れない言葉責めも様になっている。元から加虐家の才能はあったから、開化したらとんでもない変態暴君になってしまうかもしれない。
 しめしめと、喘ぎながらもほくそ笑む。

 ところで。
 彼は間違いなく俺の背に執着しているらしく、事あるごとに尻の割れ目から大きな刺青まで指を這わせてきた。今は本人の体液で濡れているだろうに。そんなの気にせず、ぐったりと伏せる俺の肌を堪能していた。
 肌。刺青。背中。彼が好きなもので思い当たるのは沢山ある。
 マスターはよく「俺の肌が綺麗だ」と褒めてくれた。生前仕えていた主も、滅多に褒めてくれなかったくせに、「お前の肌は白く美しい」と言ってくれていた。
 昔の主ですら褒めてくれたものだ、唯一自分に自信があるものなので、今の主にも愛してもらえるのは嬉しかった。

 だって……最期は莫迦な人だったけど、『俺にとっての主は……実の父親以外の何物でもない』。
 血は繋がらないが、孤児だった俺に多くを与えてくれた大切な親だった。『辛く当たられたこともない』。本当の親子ではないからと虐げられることもない、やや傲慢なところを除けば出来た人と言えた。
 俺は甚振られたことはない。虐げられたこともなかった。だけど見てもくれなかった。話を聞いてもくれなかった。
 一方で今、俺を犯している彼は、俺の話を聞いてくれる。見てもくれる。……今の主は、前の主と何もかも違う。
 立場はもちろん背格好も、振る舞いも、主人ということだけが同じで、全く違う彼。
 それがとても嬉しかった!
 些細な違いではなく、何もかも違うところが嬉しかった。
 つまり自分は『主人という存在』に恋した訳じゃないってこと。全く別の個性に惹かれ、彼の元に仕えたということ。そんな少年に褒められて照れる自分がいて、部屋に来てくれと誘われて悦ぶ自分がいて、強く激しく抱かれて満足する自分がいる。それが実感できたのが嬉しかった。
 正真正銘恋をして、『真の笑顔』を見せてしまうぐらいには!

「燕青。別のこと考えているだろ?」

 元より第二の人生を歩むならば違う道を進もうと決めていた。だから……今までに無かった我儘を突き通したくいる。
 ――甚振られたことがなかった。なら、散々甚振って俺を使ってほしい。
 ――虐げられたことがなかった。なら、滅茶苦茶に虐げて俺に新たなものを与えてほしい。
 ――物言いで主の理念を変えるなどできたことがなかった。なら……今度の生では主を、好きになった少年を、俺の物言いで変貌させてみたい!

「こら、ちゃんと集中して……オレだけに集中して」

 ……誰かにこのことが気付かれたなら。まんまと掌の中で転がされるマスターが憐れだと言うだろう。
 軽蔑されるだろう、貶されるだろう、従者失格だと座へ昇華されるかもしれない。だとしても満足している。前の主とはまったく違う主のもとで、俺はお傍に仕えさせてもらっている。その事実だけで天にも昇る。昇華など、ちっとも怖くない……。

「後はさ、そうだな……ずっと飾っておくアレ、またしようか。縛って机の上に置いておくやつ。今度は何時間ぐらい放置されたい? 何時間ぐらいならお仕置きになるかな……アレ、燕青も好きだろう? いつも涎を垂らして悦んでくれてさ、好きなんだよね、燕青」

 ちっとも怖がらない俺の肌は、きっと真っ赤に燃え上がっている。花も龍も涙を流しているに違いない。
 シーツに顔を埋ずめていると、説明の途中にも関わらず、彼は俺の尻穴にまた指を何本も挿れ始めた。
 脱力しきって腰を振るうこともできない。口から漏れるのは唸り声ばかり。けれど、快楽にやられた嬌声に違いなかった。
 マスターは既に俺の弱点がどこなのか経験で把握している。賢い彼はたとえ俺が体を痺れさせていても、再度鼻水を啜って悦ぶ的確な場所を甚振ってきた。

「好きなんだよね、燕青……」

 コツン、コツンとイイところを刺激してくる。そのたびにチカチカと目の前が輝いた。
 良すぎる感覚だ。辛いが、嫌いじゃない。指でクイクイと突かれるたびに俺の声が出て、その反応に勘づいたマスターが、まるで俺を楽器に見立てて嬲り始める。
 目を閉じてその苛みを受ける。瞼を伏せているというのに目の前がキラキラと光る。強すぎる衝撃を受けると星が散るような輝きが瞼の奥に生じるというが、まさにそれだ。
 おかげで否応にもあの夜のことを、そして始まった幸せな交接の日々を思い返して、愉悦に浸る。
 この少年が、力を強いてでも俺を愛そうという姿勢に、愉悦を見出す……。

「好き、なんだよね、燕青。好きだよ。なあオレは本当に燕青のことが好きなんだよ。燕青の色んな姿が見たいぐらい。燕青が乱れて恋しむぐらい。……だからさ、燕青もオレのこと好きだって言ってくれないかな。こんなにたくさんのことをしているんだよ。好きだって、なあ、好きだって言ってくれたっていいじゃないか!」

 指を挿れただけでイくなんて。そんな陳腐な台詞が過ぎって、掻き消えた。
 オレはゆっくりと腰を左右に揺らす。

「なあ、燕青に優しくしたいよ。でも不安だから力づくでこんなことを……。オレも燕青をみんなと同じように優しくしてあげたいんだ。束縛する男ってダメだろ? けれどオレ、本当に燕青のことが大切で、大好きだからつい……。なあ! 好きだって、なあ、好きだって言ってくれたっていいじゃないか! じゃないとまた酷いことしちゃうぞ!? 好きなんだろ、信じていいんだろ、なのになんで言わないんだよオレのこと好きだって言ってくれよ燕青!!」
『俺はマスターのこと、好きだと言う気は無いよ』

 ――――――だって言ったら優しくされるじゃないか。そしたら生易しいだけの関係になっちまう。
 それは嫌だ。こんなに愛してもらっているのだから、もっと俺だけの虜になってくれないと。
 『手に入らなくて、もがいて愛に必死になる主が良い』。
 『一従者の俺に振り回される主であるといい』。
 その一心で今世の俺は最後まで、最期まで、主を束縛する。生前の俺と現界した俺は別人。忠実に主人へ仕える俺なんてこの場所には存在しない。
 『殺してでも束縛をやめない』? いや、そんな怖いことは冗談でしか言わない。……けれど『藤丸立香を壊してでも』、束縛をやめる気は無かった。

「燕青!!!」

 自ら中を抉らせてくる。マスターの暴力が破裂する。それを堪能する。前の主には決して無かったもの、オレにわざわざ感情を晒して与えてくれるもの……。愛憎に満ちた刺激を受ける。最高に気持ち良い。
 これは『俺の物言いで変わってしまった平凡な少年』。
 『俺の一言で』『俺の力で』『主の在り方を変えていく』という事実。
 達成されたことを実感し、酔いしれ、絶頂に達し、切ない声を上げてしまった。違う意図があったと気付かれては困る。「もっと好きに動いてほしい」と強請ったように喘ぎ声を上げる。
 まだ自分のものではないことに激昂するマスターは、優しい顔を完全にかなぐり捨て、グリリと腸内を抉る。
 更に充足感が爆発していった。




 END

オレに従順、でもオレのものではない、愛する新宿のアサシンを束縛したい。
頂いたアンケート結果とお題→「下半身をじっとりゆっくり責めたてて/星に恋する/立ちバック/義の字に嫉妬/助けてが言えない/首を絞める/道具プレイ/新殺をアクセサリー扱いする/ヤンデレ!」 
2017.4.29